説明

脱進調整装置および鍵盤楽器の音量制御装置

【課題】通常のアコースティックの鍵盤楽器への後付けが容易でありながら、アコースティックの鍵盤楽器に優れた消音機能等を付加する。
【解決手段】このグランドピアノの消音装置は、押鍵動作時にジャック12と当接する通常のレギュレーチングボタン23に加え、消音演奏時にジャック12と当接するレギュレーチングバー223を有している。ここで、このグランドピアノは通常のアコースティックグランドピアノであり、ジャック小12Bにはその先端部のみに突起12Baが設けられている。このようなアコースティックグランドピアノにおいても、レギュレーチングバー223は、レギュレーチングボタン23がジャック小12Bの突起12Baと当接するタイミングと同時にジャック小12Bの回動中心側の位置に当接するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器のジャックの脱進を調整する脱進調整装置および鍵盤楽器の音量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピアノ等の鍵盤楽器においては、通常の演奏と押鍵しても打弦しない消音演奏とを切換可能にしたものがある。このような鍵盤楽器の消音演奏時においては、押鍵に応動して回動したハンマが弦に当たる直前にハンマシャンクをストッパに当接させて打弦音の発生を抑止すると共に、鍵等の動作をセンサで検知し、押鍵に対応した音高及び強弱でなる楽音を電子的に発生させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−319452号公報
【0004】
ところで、上述した消音演奏可能な鍵盤楽器においては、単にストッパを配置しただけでは、鍵盤楽器の演奏不能状態を招くことがある。これは通常のピアノでは、接近(鍵を非常に低速で押し下げた場合のハンマーと弦との最小距離)が2mm程度であり、この値に接近を設定して消音演奏状態で押鍵すると、ジャックがハンマローラから脱進する前にハンマシャンクがストッパに当接することとなり、ハンマシャンクがジャックとストッパとの間に挟み込まれることがあるからである。これを防止するためには、ジャックがハンマローラから脱進するタイミングを早くして接近を大きくする場合もある。しかし、このように、鍵盤楽器の演奏不能状態を避けるためにハンマローラからジャックが脱進するタイミングを早くすると、通常演奏時の鍵盤のタッチ感が変化してしまう。
【0005】
そこで、図11に示すように、通常のレギュレーチングボタン1に加えて、ジャック2におけるレギュレーチングボタン1と当接する先端部2aよりも回動中心側の突起2bに当接する第2のレギュレーチングボタン3を設け、これらの2種類のレギュレーチングボタンを使い分けることにより、レギュレーチングボタン当接後のジャック2の運動速度を変えてハンマ4の接近位置を拡大する鍵盤楽器が提案されている。この鍵盤楽器では、脱進開始タイミングを変更することなく、接近を拡大できるので、消音演奏時における鍵盤の鍵タッチ感を大きく損なうことがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通常の一般的なアコースティックグランドピアノにおけるジャックのジャック小には、その先端部には上記先端部2aと同様の突起部が設けられているものの、この先端部よりも回動中心側の突起2bは設けられていない。したがって、上記のように突起2bに当接する第2のレギュレーチングボタン3を備えた消音装置における脱進調整機構を、既にユーザによって使用等されている通常のアコースティックグランドピアノに後から取り付ける場合(以下、後付けという)、通常のジャックを突起2bおよび先端部2aといった2つの突起部が形成されたジャック小を有するジャックに交換する必要がある。このようなジャックの交換作業は煩雑であり、またジャックの交換によってアクション機構全体を再整調する必要が生じ、煩雑な整調作業も行わなくてはならない。
【0007】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、通常のアコースティックの鍵盤楽器への後付けが容易な鍵盤楽器の脱進調整装置および鍵盤楽器の音量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る鍵盤楽器の脱進調整装置は、複数配列された鍵と、当該各鍵の動作に応じて移動するジャック、および移動する前記ジャックのジャック小の先端部分にのみ設けられた突起部に当接して当該ジャックの移動方向を変えるレギュレーチング部材を有する打弦アクション機構とを備える鍵盤楽器において、前記ジャックの運動速度を調整する脱進調整装置であって、鍵の配列方向に延在するシャンクレールに対して回動自在に取り付けられたブラケットと、前記ブラケットに対して取り付けられ、前記ブラケットの回動に応じて前記ジャックの運動範囲の位置と、該位置から待避した位置との間で移動可能に設けられ、前記運動範囲の位置に配置された場合に前記ジャック小における前記突起部と異なる部位に当接して前記ジャックの運動速度を変える第2レギュレーチング部材と、前記第2レギュレーチング部材を駆動し、前記運動範囲の位置および前記待避した位置のいずれか一方の位置に前記第2レギュレーチング部材を選択的に保持する駆動保持機構と、前記駆動保持機構による前記第2レギュレーチング部材の保持位置を調節する調節機構とを具備することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、第2レギュレーチング部材がジャック小の先端突起部以外に当接することにより、当接後のジャックの回動速度が通常の鍵盤楽器よりも速くなり、この結果脱進開始タイミングを変更することなく、接近を通常時よりも拡大することができる。したがって、打弦前にハンマーの動きを規制するストッパ等を設け、該ストッパを用いることにより消音や弱音を行う消音装置に適用した場合、ハンマシャンクがジャックとの間に挟み込まれる等の打弦アクション機構の不具合が抑制され、通常の演奏と同様の演奏性を維持することができる。また、脱進開始タイミングは通常の演奏と同様であるため、つまり通常のアコースティックピアノに近い鍵タッチ感を維持することができる。また、この構成によれば、上記のような優れた機能を提供するために、一般的なアコースティック鍵盤楽器に用いられる先端部のみに突起が設けられたジャック小を交換する必要がなく、当該脱進調整装置を既に使用されている一般的なアコースティックの鍵盤楽器に後から取り付ける場合の作業を簡易化することができる。
【0010】
また、本発明に係る鍵盤楽器の音量制御装置は、複数配列された鍵と、当該各鍵の動作に応じて移動するジャック、および移動する前記ジャックのジャック小の先端部分にのみ設けられた突起部に当接して当該ジャックの移動方向を変えるレギュレーチング部材を有する打弦アクション機構とを備える鍵盤楽器に設けられる音量制御装置であって、前記打弦アクション機構による打弦を阻止もしくは打弦力を弱める位置と、当該阻止もしくは弱める位置から待避した位置との間に移動可能に設けられる打弦力制御手段と、鍵の配列方向に延在するシャンクレールに対して回動自在に取り付けられたブラケットと、前記ブラケットに対して取り付けられ、前記ブラケットの回動に応じて前記ジャックの運動範囲の位置と、該位置から待避した位置との間で移動可能に設けられ、前記運動範囲の位置に配置された場合に前記ジャック小における前記突起部と異なる部位に当接して前記ジャックの運動速度を変える第2レギュレーチング部材と、前記第2レギュレーチング部材を駆動し、前記運動範囲の位置および前記待避した位置のいずれか一方の位置に前記第2レギュレーチング部材を選択的に保持する機構であって、前記打弦力制御手段が前記打弦アクション機構による打弦を阻止もしくは打弦力を弱める位置にある場合に、前記第2レギュレーチング部材を前記運動範囲の位置で保持する駆動保持機構と、前記駆動保持機構による前記第2レギュレーチング部材の保持位置を調節する調節機構とを具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通常のアコースティックの鍵盤楽器への後付けが容易でありながら、アコースティックの鍵盤楽器に優れた消音機能等を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る消音装置を備えたグランドピアノのアクション機構近傍を示す側断面図である。
【図2】消音演奏時における前記グランドピアノのアクション機構近傍を示す側断面図である。
【図3】前記消音装置の構成要素である駆動機構および調節機構を示す分解斜視図である。
【図4】前記調節機構を示す分解斜視図である。
【図5】前記駆動機構および前記調節機構を示す側面図である。
【図6】前記調節機構を示す分解斜視図である。
【図7】前記消音装置の構成要素であるレギュレーチングバーの位置調整時における前記調節機構の動作を説明するための図である。
【図8】前記消音装置の変形例を示す側断面図である。
【図9】前記消音装置の他の変形例を示す側断面図である。
【図10】前記消音装置のその他の変形例を示す側断面図である。
【図11】従来の消音装置を備えたグランドピアノのアクション機構近傍を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
A.グランドピアノのアクション機構
まず、図1は本発明の第1実施形態に係る消音装置(音量制御装置)が装着されたアコースティックグランドピアノの1つの鍵の動作に応じて駆動されるアクション機構を示す側断面図である。ここで、同図に示すように、このアクション機構(打弦アクション機構)は、鍵10と、この鍵10の動作により駆動されるウイペン11と、このウイペン11の動作により駆動されるジャック12と、このジャック12により駆動されて弦Sを打撃するハンマアセンブリ13とを備えている。そして押鍵により鍵10の後端側(図の左端側)が上昇し、そこに固定されたキャプスタン14がウイペン11を押し上げるようになっている。
【0014】
鍵10は、バランスピン105によって回動自在に支持されており、このような鍵10の複数が図の紙面垂直方向である左右方向に並設され鍵盤が構成される。演奏者により鍵10の前端部(図の右側)が押下されると、鍵10はバランスピン105を支点として図中時計回りの方向に回動するようになっている。さらに、鍵10の後端部には、バックチェックが設けられている。符号15は、サポートレールであり、サポートレール15の端部(図の左端部)には、ウイペン11の左端部が回動自在に支持されている。ウイペン11の自由端(図の右端)には、略L字形状のジャック12がその屈曲部分近傍で回動自在に取り付けられている。ここでジャック12は、斜め上方に向けて延在するジャック大12Aと、このジャック大12Aに対してほぼ直交するジャック小12Bとから構成されている。ジャック小12Bの先端部には、レギュレーチングボタン23と当接する突起12Baが設けられている。
【0015】
また、ウイペン11の中央部には、支柱16が取り付けられ、支柱16の上端部にはレペティションレバー17の中間部が回転自在に取り付けられている。レペティションレバー17の右端部には、上下方向に向けて貫通する長孔17Aが形成され、長孔17Aには、ジャック大12Aの上端部が挿入されている。
【0016】
符号18は、鍵盤の配列方向に亘って延在するシャンクレールであり、シャンクレール18には、ハンマアセンブリ13の基部を構成するハンマフレンジ19が固定されている。ハンマフレンジ19の左端部には、先端部にハンマヘッド20が固定されたハンマシャンク21が上下方向に回動自在に取り付けられている。ハンマシャンク21の基端部下面には、ローラー22が取り付けられている。ローラー22の下面は、レペティションレバー17の長孔17Aに挿入されたジャック大12Aの上端面と僅かな隙間を持った状態でレペティションレバー17の上面に当接させられている。
【0017】
シャンクレール18には、複数の鍵10の配列方向に亘って延在するレギュレーチングレール119が支持されている。レギュレーチングレール119の下部には、ジャック12に対応してレギュレーチングボタン23が設けられている。
【0018】
上述した構成は、従来知られたアコースティックのグランドピアノと同様であり、以下、このようなグランドピアノに容易に後付けすることができる消音装置について説明する。
【0019】
B.消音装置
本実施形態に係る消音装置は、ストッパ機構(打弦力制御手段)30と、レギュレーチングバー(第2レギュレーチング部材)223と、レギュレーチングバー223を後述する消音演奏時の位置と、通常演奏時の位置との間で移動させる駆動機構300と、消音演奏時におけるレギュレーチングバー223の位置を調節するための調節機構305とを備えている。
【0020】
B−1.ストッパ機構
ストッパ機構30は、鍵10の配列方向を軸方向とする軸33Aを有しており、この軸33Aにハンマストッパ33が固着されている。また、ハンマストッパ33の右側面には、ハンマシャンク21が当接する緩衝材33Bが取り付けられている。ここで、軸33Aは、所定角度の範囲で回転可能になされている。
【0021】
この構成の下、図1に示す状態から軸33Aが回動させられると、図2に示すように、ハンマストッパ33が回動し、緩衝材33Bがハンマシャンク21の移動範囲に位置するようになされている。この状態で、鍵10が押下された場合、図2中2点鎖線で示すように、ハンマヘッド20が弦Sを打撃する前にハンマストッパ33によりハンマシャンク21の回動が阻止されるようになっている。このような位置にハンマストッパ33が配置されている状態が、鍵10を押下操作しても弦Sがハンマヘッド20に打撃されない状態、いわゆる消音演奏状態である。
【0022】
一方、ハンマストッパ33が図1に示す位置に配置されている場合には、図1中2点鎖線で示すように、ハンマヘッド20の回動が阻止されずに弦Sが打撃されるようになっている。このような位置にハンマストッパ33が配置されている状態が、鍵10の押下操作に応じて弦Sが打撃される状態、いわゆる通常演奏状態である。ここで、軸33Aを駆動する駆動機構としてはワイヤやモータ等の公知の機構を用いることができる。
【0023】
B−2.レギュレーチングバー
図1〜図3に示すように、レギュレーチングバー223は、グランドピアノの左右方向(図1および図2の紙面垂直方向)に延在する部材であり、その下面には消音演奏時にジャック小12Bにおけるその回動中心と突起12Baとのほぼ中間位置(以下、ジャック小の中間位置という)に当接する緩衝部材223aが設けられている。繊維性のひも、フェルト、発泡スポンジ、発泡ゴム、クロス、フェルト等の粘弾性体から構成される緩衝部材223aは、グランドピアノの左右方向に延在する円柱状の部材である。ここで、レギュレーチングバー223は、グランドピアノ全体に延在する1つの部材であってもよいし、音域毎に複数設けるようにしてもよい。例えば、低音域、中音域および高音域毎にそれぞれ2つのレギュレーチングバー223、つまり合計6つのレギュレーチングバー223を設けるようにしてもよく、レギュレーチングバー223を設ける数は任意である。
【0024】
B−3.駆動機構
このようなレギュレーチングバー223は、駆動機構300によって通常演奏時の位置(図1参照)と消音演奏時の位置(図2参照)との間を移動させられられるようになっている。駆動機構300は、グランドピアノの左右方向である鍵10の配列方向に延在するレギュレーチングロッド150を有している。レギュレーチングロッド150は、シャンクレール18にネジ153により固定されたロッド支持部154によって回転自在に支持されている。図3ではレギュレーチングロッド150の両端を支持する構造となっているが、これに限らず、レギュレーチングロッド150の中間部分の1または複数箇所にロッド支持部154を設けて支持するようにしてもよい。
【0025】
レギュレーチングロッド150の一端には、レギュレーチングロッドレバー151の上端が取り付けられている。図1および図2に示すように、レギュレーチングロッドレバー151の下端は、リンク部材152の一端と回転自在に結合されている。このリンク部材152が図示せぬ駆動機構により図1および図2の略左右方向であるグランドピアノの前後方向に移動させられることにより、レギュレーチングロッドレバー151が回動させられると、これの上端に取り付けられたレギュレーチングロッド150がその位置において回転させられるようになっている。
【0026】
レギュレーチングロッド150の複数箇所(図3では両端の2箇所)には、後述する調節機構305を介してレギュレーチングバーブラケット(回動部材)161の一端が回転自在に取り付けられている。レギュレーチングバーブラケット161は、レギュレーチングロッド150が挿入結合される結合部161aと、結合部161aからアクション機構側である図1および図2の左側に延びるアーム部161bと、アーム部161bの先端から下方側に延び、その下端部にレギュレーチングバー223を保持する保持部161cとから構成されている。このようなレギュレーチングバーブラケット161は、レギュレーチングロッド150の回転に伴ってレギュレーチングロッド150を中心として回動させられるようになっている。
【0027】
この構成の下、図1に示す通常演奏状態からレギュレーチングロッド150が図1中反時計回りに回転すると、これに伴ってレギュレーチングバーブラケット161が反時計回りに回動させられる。このようなレギュレーチングバーブラケット161の回動により通常演奏状態よりもレギュレーチングバー223が下方側に位置する消音演奏状態となる(図2参照)。このような位置にレギュレーチングバー223が配置されている場合には、鍵10の押下操作に応じて運動するジャック小12Bの中間位置にレギュレーチングバー223に当接するようになっている。本実施形態では、このような消音演奏状態において、後述する調節機構305を適宜操作することにより、ジャック小12Bの中間位置がレギュレーチングバー223の緩衝部材223aに当接するタイミングとジャック小12Bの先端突起12Baがレギュレーチングボタン23に当接するタイミングとが同時であるように設定している。
【0028】
一方、図2に示す消音演奏状態からレギュレーチングロッド150が図2中時計回りに回転すると、これに伴ってレギュレーチングバーブラケット161が時計回りに回動させられる。このようなレギュレーチングバーブラケット161の回動によりレギュレーチングバー223は上方に移動させられ、鍵10の押下操作によるジャック12の移動範囲から待避した位置に配置される(図1参照)。
【0029】
B−4.調節機構
次に、上述したように駆動機構300によって通常演奏状態もしくは消音演奏状態の位置に保持されるレギュレーチングバー223の位置を調節することが可能な調節機構305について図4および図5を参照しながら説明する。図4および図5に示すように、調節機構305は、上述したレギュレーチングロッド150へのレギュレーチングバーブラケット161の取付位置を調整することによりレギュレーチングバーブラケット161に保持されるレギュレーチングバー223の位置調整を行う機構であり、回動部材160と、固定部180と、レギュレーチングスクリュー(操作部材)170とを有している。
【0030】
回動部材160は、レギュレーチングバーブラケット161と結合されている。ここで、回動部材160は、結合部161aの下部の支点160bを中心として回転自在に結合されており、両者は支点160bを中心として互いに相対回転が可能になされている。回動部材160は、その演奏者側(図4中右側)の一端部が結合部161aに結合されており、他端側にはレギュレーチングロッド150の軸方向に屈曲して延在する屈曲部160cが形成されている。屈曲部160cには、後述するレギュレーチングスクリュー170が挿通させられる挿通部160dが形成されている。
【0031】
固定部180は、レギュレーチングバーブラケット161に形成された挿通孔161dと連通する挿通孔180aが形成されており、レギュレーチングロッド150は挿通孔161dおよび挿通孔180aを挿通させられるようになっている。ここで、挿通孔161dの内周面にはレギュレーチングバーブラケットブッシンググロス161eが接着されており、レギュレーチングロッド150はこのレギュレーチングバーブラケットブッシンググロス161eに対して固着されていない。すなわち、レギュレーチングバーブラケット161はレギュレーチングロッド150に対して回転可能になされている。これに対し、固定部180は、挿通孔180aを挿通させられるレギュレーチングロッド150に対してネジ180bによって取付固定されており、レギュレーチングロッド150に対する相対回転ができないようになされている。
【0032】
固定部180は、その演奏者側の面180cが上述した挿通孔180aの部分から下方側に延在しており、その下端側にはレギュレーチングスクリュー170が螺合されるネジ孔180dが形成されている。
【0033】
レギュレーチングスクリュー170は、その皿部170aが演奏者と反対側に、先端部170bが演奏者側となるように上述した挿通部160dにパンチングクロス170eを介して挿通させられるとともに、螺旋状の溝が形成された先端側がネジ孔180dに螺合されている。図6に示すように、レギュレーチングスクリュー170が挿通・螺合された状態で、屈曲部160cと皿部170aとを覆うようにレギュレーチングスクリューキャップ170cが嵌め込まれている。これにより、屈曲部160cはレギュレーチングスクリュー170の皿部170aと結合され、皿部170aの移動に伴って屈曲部160cが移動するようになっている。すなわち、固定部180の面180cから突出したレギュレーチングスクリュー170の先端部170bを調整者が回転操作することにより、レギュレーチングスクリュー170がその軸方向に移動させられ、この移動に伴って屈曲部160cが移動させられるようになっているのである。このように屈曲部160cを移動させることにより、レギュレーチングバー223の位置調節を行うことができるが、これについては後述する。
【0034】
C.演奏時の動作
次に、上記構成の消音装置を備えたグランドピアノの演奏時の動作について説明する。
【0035】
C−1.通常演奏
まず、通常の演奏を行う場合には、図1に示すように、ストッパ機構30はハンマシャンク21の移動範囲から待避した位置に配置され、レギュレーチングバー223は、ジャック小12Bの移動範囲から待避した位置に配置される。
【0036】
この状態で、鍵10が押下されると、鍵10に取り付けられたキャプスタン14がウイペン11を突き上げ、ウイペン11を反時計回りに回動させる。これに伴い、このウイペン11の自由端に回動自在に取り付けられたジャック12のジャック大12Aがローラー22を突き上げ、ハンマシャンク21を時計回りの方向へ回動させる。この後、ジャック小12Bの先端突起12Baがレギュレーチングボタン23に当接すると、ジャック大12Aが時計方向に回転してハンマシャンク21に取り付けられたローラー22から離間する。ジャック12から離間したハンマシャンク21は、その慣性力により回動を続け、ハンマヘッド20が押鍵された鍵に対応する弦Sを打撃する(図1において2点鎖線により示す)。その後、跳ね返ったハンマヘッド20はバックチェックにより保持される。
【0037】
次に離鍵が行われると、ハンマヘッド20はバックチェックから解放される。さらに、押鍵時とは逆にウイペン11が時計方向に回動し、ジャック小12Bとレギュレーチングボタン23との係合状態が徐々に解除され、ジャック12が反時計方向に回動してジャック大12Aがレペティションレバー17によって支持されているローラー22の真下側に移動し、押鍵前の初期位置に戻る。なお、以上の動作は従来のグランドピアノと同様である。
【0038】
C−2.消音演奏
次に、消音演奏時の動作について説明する。消音演奏を行う場合には、図2に示すように、ストッパ機構30はハンマシャンク21の移動範囲の位置に配置され、レギュレーチングバー223はジャック小12Bの移動範囲の位置に配置される。
【0039】
この状態で鍵10が押下されると、通常演奏の場合と同様にキャプスタン14がウイペン11を反時計回りに回動させ、ジャック大12Aが、ローラー22を突き上げ、ハンマシャンク21を時計回りに回動させる。この後、ジャック小12Bの中間位置がレギュレーチングバー223に、先端突起12Baがレギュレーチングボタン23に同時に当接する。これによりジャック12は、ハンマシャンク21に取り付けられたローラー22から離間する。この後、ジャック12から離間して回動を続けるハンマシャンク21は、ハンマヘッド20が弦Sに当たる手前でハンマストッパ33に当接し(図2において2点鎖線により示す)、反時計回りの方向に跳ね返される。その後の動作は通常演奏の場合と同様である。
【0040】
上述したように消音演奏時においても、ジャック小12Bの中間位置および先端突起12Baがレギュレーチングバー223の緩衝部材223aおよびレギュレーチングボタン23に当接するタイミング(脱進開始タイミング)は通常演奏時と同じであるが、ジャック小12Bの中間位置がレギュレーチングバー223に当接するため、ジャック12の回動支点から回動力点までの距離が通常演奏時よりも短くなる。したがって、ジャック12の回転速度および回転量(回転角度)が大きくなる。このようにジャック12の回転速度が大きくなった場合のジャック大12Aの上面の運動に着目すると、垂直方向に作用する駆動成分よりも水平方向に作用する駆動成分が大きくなり、すなわちジャック12が速い速度で運動し、これによりローラー22の下部から早く抜け出し、通常演奏時よりも上昇量が少なくなる。この結果、消音演奏時における接近は、通常演奏時よりも大きくなり、ハンマシャンク21がジャック12とストッパ機構30との間に挟み込まれるといったことが抑制され、通常演奏時と同様の演奏性を維持することができる。この際、上述したように脱進開始タイミングは通常演奏時と同様であるため、通常演奏時、つまり通常のアコースティックピアノと鍵タッチ感がほとんど変わらない。
【0041】
D.レギュレーチングバーの位置調節
上述したように本実施形態に係るグランドピアノでは、レギュレーチングボタン23と先端突起12Baが当接するタイミングと同時にレギュレーチングバー223をジャック小12Bの中間位置に当接させることにより、連打性や鍵タッチ感を損なうことのない消音演奏を可能としている。しかしながら、当該消音装置をグランドピアノに後付けする時やメンテナンス時には、消音演奏時における接近の距離を調節するといった作業を行う必要があり、また上記のようなタイミングで緩衝部材223aがジャック小12Bの中間位置に当接するように調節が必要となり、これらの場合にはレギュレーチングバー223の位置を調節する必要がある。本実施形態では、このようにレギュレーチングバー223の位置を調節するために、上述した調節機構305を設けており、以下、レギュレーチングバー223の位置調節時の操作、ならびにその時の調節機構305の動作について図5および図7を参照しながら説明する。
【0042】
まず、初期状態として調節機構305が図5に示す位置にあるとし、この状態からレギュレーチングバー223を上方側に移動させる場合について説明する。この場合、調整者は面180cから演奏者側である前面側(図の右側)に突出するレギュレーチングスクリュー170の先端部170bを回転操作し、ネジ孔180dによるレギュレーチングスクリュー170の螺合位置を先端側に移動させる。つまり、先端部170bを回転操作して、その操作量に応じた分だけレギュレーチングスクリュー170を図の左側に移動させ、皿部170aと面180cとの間の距離を長くする。このようにレギュレーチングスクリュー170を移動させると、図7(a)に示すように、皿部170aの移動に伴って屈曲部160cが図の左側に移動させられる。
【0043】
ここで、回動部材160は、レギュレーチングバーブラケット161と回転自在に結合されており、かつレギュレーチングスクリューキャップ170cによって皿部170aと一体になされているため、レギュレーチングスクリュー170の軸方向に沿って移動させられる。つまり、回動部材160は延在方向が水平方向に維持されたまま移動させられることになる。このように回動部材160が水平状態を維持したまま左側に移動させられると、これに結合されるレギュレーチングバーブラケット161は、レギュレーチングロッド150を中心として図中時計回りに回動させられる。ここで、レギュレーチングバーブラケット161と、回動部材160とは支点160bを中心として回転自在に結合されているので、両者が相対的に回動することにより、レギュレーチングバーブラケット161の回動変位と回動部材160の水平方向への変位が許容される。
【0044】
このようにレギュレーチングバーブラケット161が時計回りに回動させられると、保持部161cに保持されたレギュレーチングバー223が上方に移動する。ここでのレギュレーチングバー223の移動量は、調整者による先端部170bの回転操作量に応じたものになるため、調整者はレギュレーチングバー223が所望量移動するように先端部170bを回転操作すればよい。このように調節機構305は、レギュレーチングスクリュー170の操作量に応じてレギュレーチングロッド150に対するレギュレーチングバーブラケット161の取付位置を調整し、これによりレギュレーチングバー223の位置を調節している。なお、このようにレギュレーチングバー223を上方に移動させれば、消音演奏時にレギュレーチングバー223と突起12Bbが当接するタイミングが図5に示す状態よりも遅くなる、つまり脱進開始タイミングが遅くなるので接近が狭くなる。
【0045】
一方、図5に示す初期状態からレギュレーチングバー223を下方側に移動させる場合には、調整者は先端部170bを上方側に移動させる場合とは逆方向に回転操作する。これにより、ネジ孔180dによるレギュレーチングスクリュー170の螺合位置を皿部170a側に移動させる。つまり、先端部170bを回転操作して、その操作量に応じた分だけレギュレーチングスクリュー170を図の右側に移動させ、皿部170aと面180cとの間の距離を短くする。このようにレギュレーチングスクリュー170を移動させると、図7(b)に示すように、皿部170aの移動に伴って屈曲部160cが図の右側に移動させられる。ここで、回動部材160の移動方向は、上述したようにレギュレーチングスクリュー170の軸方向に沿ったものとなる。このように回動部材160が図の右側に移動させられると、これに回転自在に結合されるレギュレーチングバーブラケット161は、レギュレーチングロッド150を中心として図中反時計回りに回動させられる。したがって、保持部161cに保持されたレギュレーチングバー223が先端部170bの回転操作量に応じた分だけ下方に移動する。なお、このようにレギュレーチングバー223を下方に移動させれば、消音演奏時にレギュレーチングバー223と突起12Bbが当接するタイミングが図5に示す状態よりも早くなる、つまり脱進開始タイミングが早くなるので接近が拡大する。
【0046】
E.効果
本実施形態に係る消音装置によれば、消音演奏時において、脱進開始タイミングを変更することなく、接近を通常演奏時よりも拡大することができ、ハンマシャンク21がジャック12とストッパ機構30との間に挟み込まれるといったことが抑制され、通常演奏時と同様の演奏性を維持することができる。また、脱進開始タイミングは通常演奏時と同様であるため、通常演奏時、つまり通常のアコースティックピアノと鍵タッチ感がほとんど変わらない。また、本実施形態に係る消音装置では、上述したような優れた消音機能を提供するために、レギュレーチングバー223に円柱状の緩衝部材223aを設け、消音演奏時に、ジャック小12Bの突起12Baがレギュレーチングボタン23に当接するタイミングと同時に緩衝部材223aをジャック小12Bの中間位置に当接させることができるようにしている。したがって、ジャック12は、通常のアコースティックグランドピアノに用いられるジャックをそのまま使用することができ、図11に示すように2つの先端部2aの突起および突起2bを有する特殊なジャックを用いる必要がない。したがって、通常の一般的なアコースティックグランドピアノに当該消音装置を後付けする場合にも、ジャックを交換するといった作業が不要であり、またジャック交換に伴うアクション機構の整調作業も行う必要がなく、後付け作業が容易である。
【0047】
また、上記のように円柱状の緩衝部材223aをジャック小12Bの中間位置に当接させることにより、両者が点接触することになる。すなわち、ジャック小12Bの突起12Baとレギュレーチングボタン23との接触状況と近似した接触状況となり、このように点接触させることによって通常演奏時と比して鍵タッチ感が大きく変化してしまうことを抑制することができる。
【0048】
また、この消音装置では、調節機構305により消音演奏時にジャック小12Bの中間位置に当接するレギュレーチングバー223の位置調節を行うことができる。上述したようにこの消音装置は、一般的なアコースティックグランドピアノに対してジャック交換等の煩雑な作業を行うことなく、容易に後付けすることができる。ここで、市販されている多種のアコースティックグランドピアノでは、製造メーカや機種によってジャックの形状が若干異なっていたり、ジャックと他のアクション機構の部材との位置関係が若干異なるといったこともあり得る。上述したように、この消音装置では、消音演奏時にレギュレーチングボタン23が突起12Baに当接すると同時に(もしくはその前に)緩衝部材223aがジャック小12Bの中間位置に当接するように各部材を配置する必要がある。本実施形態では、当該消音装置が上記優れた消音機能を提供できるような適切な状態での後付けを容易にするために、これらの機種間のジャックの形状等の差を調節機構305によるレギュレーチングボタン23の位置調節によって吸収し、これにより様々な機種のアコースティックグランドピアノに対する後付けを適切かつ容易に行うこと可能としている。
【0049】
また、上記の調節作業のために調整者が回転操作するレギュレーチングスクリュー170の先端部170bは、面180cの演奏者側に突出している。つまり、本実施形態では、調整者により操作される先端部170bは、このグランドピアノのアクション機構を構成する各部品よりも演奏者側の位置に、演奏者側に向けて配置されているのである。したがって、鍵盤アクション機構をピアノ本体から取り出すことなく、上述したようなレギュレーチングバー223の位置調節作業を行うことができる。
【0050】
また、消音演奏時のレギュレーチングバー223の位置を正確に調整するためには、実際に押鍵してハンマアクション機構を作動させることにより、緩衝部材223aとジャック小12Bの中間位置との当接タイミングのチェックや、接近の寸法等のチェックを行うことが要求される場合がある。このような場合にも、本実施形態では、鍵盤アクション機構をピアノ本体に収めたまま調節作業を行うことができるので、鍵盤アクション機構を出し入れするといった煩雑な作業が不要となり、作業時間を短縮できる。
【0051】
また、本実施形態では、レギュレーチングバー223を保持するレギュレーチングバーブラケット161は、アクション機構よりも演奏者側の位置、すなわちある程度レギュレーチングバー223の保持位置と離れた位置に延在するレギュレーチングロッド150を軸として回動するようになっている。したがって、調節機構305による位置調節は、ほぼ上下方向であるジャック小12Bの回動方向と沿った方向でレギュレーチングバー223の保持位置を調節することができるようになっている。このようにジャック小12Bの回動方向にほぼ沿った方向への位置調節を可能とすることにより、上記のように消音演奏時に適切なタイミングで緩衝部材223aがジャック小12Bの中間位置に当接するように調整することが容易となる。
【0052】
F.変形例
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のような種々の変形が可能である。
【0053】
(変形例1)
上述した実施形態においては、ストッパ機構30によってハンマシャンク21の運動を阻止して消音演奏を実現する消音装置を備えたグランドピアノについて説明したが、これに限らず、上述した構成のグランドピアノにおいて、ストッパ機構30を用いずに弱音演奏を可能とする弱音装置に本発明を適用することも可能である。具体的な手法は次の通りである。
【0054】
上述したように、レギュレーチングバー223にジャック小12Bを当接させると、通常演奏時よりもジャック12の回転速度が大きくなる。ジャック12の回転速度が大きくなると、ハンマアセンブリ13に対する上方向への駆動成分が減少するとともに、脱進の終了が早くなるので、ハンマアセンブリ13に押鍵による操作力が直接的に伝達される時間が短くなる。したがって、ハンマアセンブリ13による打弦時の回動速度が減少し、通常の演奏よりも弱い打撃力で弦Sを打撃する。これにより、ストッパ機構30を用いずに通常の演奏よりも音量の小さい弱音演奏が可能となる。
【0055】
また、ストッパ機構30を用いてハンマヘッド20による打弦を阻止するのではなく、ストッパ機構30を用いてハンマヘッド20による打弦力を弱めて音量を小さくする弱音装置に本発明を適用することも可能である。
【0056】
(変形例2)
また、上述した実施形態では、レギュレーチングバー223に円柱状の緩衝部材223aを設け、消音演奏時に該円柱状の緩衝部材223aをジャック小12Bの中間位置と当接させることにより両者を点接触させるようにしていたが、このような形状のものに限るものではない。例えば、図8に示すように、円柱状の緩衝部材223aに代えて、円筒状の緩衝部材323aをレギュレーチングバー223に設けるようにしてもよい。このような円筒状の緩衝部材323aを設けた場合にも、上記実施形態と同様に緩衝部材323aをジャック小12Bの中間位置に当接させることにより上記実施形態と同様の優れた消音機能を提供することができる。また、半円柱状の緩衝部材を用いるようにしてもよいし、半円筒状のの緩衝部材を用いるようにしてもよい。
【0057】
また、図9に示すように、円柱状の緩衝部材223aに代えてレギュレーチングバー223の下面側から下方側に突出する突条部423を設け、その突条部423を覆うようにフェルト、クロス、発泡スポンジ、発泡ゴム等の粘弾性材424を、該粘弾性材424の下端側が曲面形状となるように設けるようにしてもよい。このような突条部423およびこれを覆う粘弾性材424を設けた場合にも、上記実施形態と同様に粘弾性材424の曲面形状の下端側をジャック小12Bの中間位置に当接させることにより上記実施形態と同様の優れた消音機能を提供することができる。
【0058】
また、図10に示すように、円柱状の緩衝部材223aに代えてレギュレーチングバー223の下面側に複数の弾性材523a,523b,523cの積層構造により構成される緩衝部523を設けるようにしてもよい。ここで、弾性材523a,523b,523cは、各々その弾性率が異なっており、その弾性率は最もジャック小12B側に配置される弾性材523aが最も小さく(最も柔らかく)、次に弾性材523bの弾性率が小さく、ジャック小12Bから最も離れた弾性材523cの弾性率が最も大きくなるような順序で配置されている。すなわち、3つの積層配置された弾性材523a,523b,523cは、柔らかい弾性材ほどジャック小12B側に配置されるようになっている。このように押鍵時のジャック小12Bとの当接部側から順に弾性率が大きくなるように弾性材523a,523b,523cを配置した緩衝部523を用いることにより、ジャック小12Bが緩衝部523に当接した際に、柔らかい層から確実に撓んでゆき、最後に最も硬い層によってジャック小12Bがはじき返されるという挙動をより確実に行わせることができる。すなわち、ジャック小12Bの突起12Baとレギュレーチングボタン23の接触状況と近似した接触状況を模擬することができ、これにより通常演奏時と比して鍵タッチ感が大きく変化してしまうことを抑制することができる。
【0059】
(変形例3)
また、上述した実施形態においては、本発明をグランドピアノに適用した場合について説明したが、これに限らず、アップライトピアノなど他の鍵盤楽器に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…鍵、12…ジャック、12Ba…先端突起、13…ハンマアセンブリ、20…ハンマヘッド、21…ハンマシャンク、23…レギュレーチングボタン、30…ストッパ機構、150…レギュレーチングロッド、151…レギュレーチングロッドレバー、160…アーム部、161…レギュレーチングバーブラケット、170…レギュレーチングスクリュー、170b…先端部、180…固定部、223…レギュレーチングバー、223a…緩衝部材、300…駆動機構、305…調節機構、323a…緩衝部材、423…突条部、424…粘弾性材、523…緩衝部、523a,523b,523c…弾性材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数配列された鍵と、当該各鍵の動作に応じて移動するジャック、および移動する前記ジャックのジャック小の先端部分にのみ設けられた突起部に当接して当該ジャックの移動方向を変えるレギュレーチング部材を有する打弦アクション機構とを備える鍵盤楽器において、前記ジャックの運動速度を調整する脱進調整装置であって、
鍵の配列方向に延在するシャンクレールに対して回動自在に取り付けられたブラケットと、
前記ブラケットに対して取り付けられ、前記ブラケットの回動に応じて前記ジャックの運動範囲の位置と、該位置から待避した位置との間で移動可能に設けられ、前記運動範囲の位置に配置された場合に前記ジャック小における前記突起部と異なる部位に当接して前記ジャックの運動速度を変える第2レギュレーチング部材と、
前記第2レギュレーチング部材を駆動し、前記運動範囲の位置および前記待避した位置のいずれか一方の位置に前記第2レギュレーチング部材を選択的に保持する駆動保持機構と、
前記駆動保持機構による前記第2レギュレーチング部材の保持位置を調節する調節機構と
を具備することを特徴とする鍵盤楽器の脱進調整装置。
【請求項2】
前記第2レギュレーチング部材の前記ジャック小と当接する部分は、当接する側が突出する曲面形状となっていること
を特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の脱進調整装置。
【請求項3】
前記第2レギュレーチング部材は、前記鍵の動作に応じた運動時の前記ジャック小との当接部に異なる弾性率の弾性体が複数積層された弾性体積層部を有しており、該弾性体積層部は各前記弾性体が前記ジャック小と当接する部分側ほど弾性率が小さくなる順序で配置されていること
を特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の脱進調整装置。
【請求項4】
前記駆動保持機構は、前記打弦アクション機構よりも演奏者側における前記鍵の配列方向を軸として回動する回動部材を有しており、前記第2レギュレーチング部材は当該回動部材の回動端側に保持されていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鍵盤楽器の脱進調整装置。
【請求項5】
調整者により操作される部材であって、調整者の操作に応じて前記調節機構を動作させる操作部材をさらに具備し、当該操作部材の操作部分は、前記打弦アクション機構よりも当該鍵盤楽器の演奏者側の位置に、演奏者側に向けて配設されていること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の鍵盤楽器の脱進調整装置。
【請求項6】
複数配列された鍵と、当該各鍵の動作に応じて移動するジャック、および移動する前記ジャックのジャック小の先端部分にのみ設けられた突起部に当接して当該ジャックの移動方向を変えるレギュレーチング部材を有する打弦アクション機構とを備える鍵盤楽器に設けられる音量制御装置であって、
前記打弦アクション機構による打弦を阻止もしくは打弦力を弱める位置と、当該阻止もしくは弱める位置から待避した位置との間に移動可能に設けられる打弦力制御手段と、
鍵の配列方向に延在するシャンクレールに対して回動自在に取り付けられたブラケットと、
前記ブラケットに対して取り付けられ、前記ブラケットの回動に応じて前記ジャックの運動範囲の位置と、該位置から待避した位置との間で移動可能に設けられ、前記運動範囲の位置に配置された場合に前記ジャック小における前記突起部と異なる部位に当接して前記ジャックの運動速度を変える第2レギュレーチング部材と、
前記第2レギュレーチング部材を駆動し、前記運動範囲の位置および前記待避した位置のいずれか一方の位置に前記第2レギュレーチング部材を選択的に保持する機構であって、前記打弦力制御手段が前記打弦アクション機構による打弦を阻止もしくは打弦力を弱める位置にある場合に、前記第2レギュレーチング部材を前記運動範囲の位置で保持する駆動保持機構と、
前記駆動保持機構による前記第2レギュレーチング部材の保持位置を調節する調節機構と
を具備することを特徴とする鍵盤楽器の音量制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−203765(P2011−203765A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158498(P2011−158498)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2001−57117(P2001−57117)の分割
【原出願日】平成13年3月1日(2001.3.1)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)