説明

脱鉛処理方法及び脱鉛処理装置

【課題】 処理液中に溶出した鉛が合金材の表面に再付着するのを防止することができる脱鉛処理方法を提供する。
【解決手段】 鉛を含有する合金材4を処理槽24内に収容された処理液に浸漬して、合金材4に含まれる鉛を処理液に溶出させて除去する脱鉛処理方法である。合金材4及び電極30を処理槽24内の処理液に浸漬した状態で、合金材4及び電極30をそれぞれ陽極及び陰極として、合金材4と電極30との間に所定電圧を印加する。これにより、処理液中に溶出した鉛と合金材4との電気的な反発が生じることによって、合金材4への鉛の再付着を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銅合金材などの合金材に含まれる鉛を溶出して除去する脱鉛処理方法及び脱鉛処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水栓金具には、例えば青銅や黄銅などの銅合金材が用いられており、この銅合金材には、切削性を高めるために鉛が含有されている。しかしながら、水栓金具に鉛が含有されたままであると、水栓金具の使用時にこの鉛が水道水中に溶出してしまい、人体に悪影響を与えるおそれがある。
【0003】
そこで、このように鉛が溶出するのを防止するために、水栓金具の製造工程において、水栓金具の表面に含有される鉛を除去する脱鉛処理が行われている(例えば、特許文献1参照)。この脱鉛処理では、水栓金具をアルカリ水溶液に浸漬することにより、水栓金具の表面に含有される鉛がアルカリ水溶液中に溶出して除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−72683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の脱鉛処理を継続して行うと、水栓金具からの鉛の溶出によってアルカリ水溶液中の鉛濃度が上昇し、これにより、水栓金具をアルカリ水溶液から取り出す際に鉛が水栓金具の表面に再付着するおそれがある。また、このように鉛が再付着した場合には、脱鉛処理を複数回繰り返して実施することにより、再付着した鉛を再度溶出させて除去しなければならず、処理効率が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、処理液中に溶出した鉛が合金材の表面に再付着するのを防止することができる脱鉛処理方法及び脱鉛処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の脱鉛処理方法では、鉛を含有する合金材を処理槽内に収容された処理液に浸漬して、前記合金材に含まれる鉛を前記処理液に溶出させて除去する脱鉛処理方法において、
前記合金材及び電極を前記処理槽内の前記処理液に浸漬した状態で、前記合金材及び前記電極をそれぞれ陽極及び陰極として、前記合金材と前記電極との間に所定電圧を印加して、前記合金材への鉛の再付着を防止することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の脱鉛処理方法では、前記処理液はアルカリ水溶液であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の脱鉛処理方法では、鉛を含有する合金材をアルカリ水溶液に浸漬して前記合金材に含まれる鉛を溶出させるアルカリ処理工程と、このアルカリ処理した前記合金材を水に浸漬して洗浄する第1次水洗処理工程と、この洗浄した前記合金材をリン酸水溶液に浸漬して前記合金材の表面に皮膜を形成するリン酸処理工程と、このリン酸処理した前記合金材を水に浸漬して洗浄する第2次水洗処理工程と、を含む脱鉛処理方法において、
前記アルカリ処理工程においては、前記合金材及び電極を前記アルカリ水溶液に浸漬した状態で、前記合金材及び前記電極をそれぞれ陽極及び陰極として、前記合金材と前記電極との間に所定電圧を印加して、前記合金材への鉛の再付着を防止することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の脱鉛処理方法では、前記合金材は銅合金材であり、前記銅合金材と前記電極との間には、0.8〜1.2Vの直流電圧を印加することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の脱鉛処理装置では、合金材に含まれる鉛を処理液に溶出させて除去するための脱鉛処理装置であって、
前記処理液が収容された処理槽と、前記処理槽内の前記処理液に浸漬された電極と、前記処理槽内の前記処理液に浸漬された前記合金材と前記電極との間に電圧を印加するための電力供給装置と、を備え、
前記合金材を前記処理槽内の前記処理液に浸漬した状態で、前記合金材及び前記電極をそれぞれ陽極及び陰極として、前記電力供給装置によって前記合金材と前記電極との間に電圧が印加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の脱鉛処理方法によれば、合金材及び電極を処理槽内の処理液に浸漬した状態において、合金材及び電極をそれぞれ陽極及び陰極として、合金材と電極との間に所定電圧が印加される。処理液中に溶出された鉛イオンはプラスに帯電されているので、上述のように電圧を印加することにより、鉛イオンと合金材とが電気的に反発するようになり、合金材の周囲における鉛濃度が低下するようになる。これにより、脱鉛処理が終了して合金材を処理槽から取り出す際に、処理液中の鉛が合金材の表面に再付着するのを防止することができる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の脱鉛処理方法によれば、処理液はアルカリ水溶液であるので、合金材をアルカリ水溶液に浸漬することにより、合金材に含まれる鉛をエッチングによってアルカリ水溶液中に溶出させて除去することができる。アルカリ水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液、リン酸ナトリウム水溶液などを用いることができる。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の脱鉛処理方法によれば、合金材及び電極を処理槽内のアルカリ水溶液に浸漬した状態において、合金材及び電極をそれぞれ陽極及び陰極として、合金材と電極との間に所定電圧が印加される。アルカリ水溶液中に溶出された鉛イオンはプラスに帯電されているので、上述のように電圧を印加することにより、鉛イオンと合金材とが電気的に反発するようになり、合金材の周囲における鉛濃度が低下するようになる。これにより、アルカリ処理工程が終了して合金材をアルカリ水溶液から取り出す際に、アルカリ水溶液中の鉛が合金材の表面に再付着するのを防止することができる。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の脱鉛処理方法によれば、銅合金材と電極との間には、0.8〜1.2Vの電圧を印加するので、銅合金材への鉛の再付着を効果的に防止することができる。
【0016】
また、本発明の請求項5に記載の脱鉛処理装置によれば、合金材及び電極を処理槽内の処理液に浸漬した状態において、合金材及び電極をそれぞれ陽極及び陰極として、電力供給装置によって合金材と電極との間に所定電圧が印加される。処理液中に溶出された鉛イオンはプラスに帯電されているので、上述のように電圧を印加することにより、鉛イオンと合金材とが電気的に反発するようになり、合金材の周囲における鉛濃度が低下するようになる。これにより、脱鉛処理が終了して合金材を処理槽から取り出す際に、処理液中の鉛が合金材の表面に再付着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による脱鉛処理方法に用いられる処理装置を示す概略図である。
【図2】図1の第1脱鉛処理装置を拡大して示す概略図である。
【図3】脱鉛処理工程の流れを示すフローチャートである。
【図4】(a)は、実施例1における水栓金具の表面の状態を撮影した写真を示す図であり、(b)は、(a)の水栓金具の一部を拡大した写真を示す図であり、(c)は、比較例における水栓金具の表面の状態を撮影した写真を示す図であり、(d)は、(c)の水栓金具の一部を拡大した写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う脱鉛処理方法及び脱鉛処理装置の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による脱鉛処理方法に用いられる処理装置を示す概略図であり、図2は、図1の第1脱鉛処理装置を拡大して示す図であり、図3は、脱鉛処理工程の流れを示すフローチャートである。
【0019】
図1を参照して、図示の処理装置2は、鉛を含有する銅合金材(例えば、黄銅や青銅など)から形成された水栓金具4の製造工程において、水栓金具4の表面から鉛を溶出させて除去する脱鉛処理工程(後述する)に用いられる。この処理装置2は、第1脱鉛処理装置6、第1次水洗処理槽8、第2脱鉛処理装置10、第2次水洗処理槽12及び湯洗処理槽14を備えている。
【0020】
また、この処理装置2に関連して、脱鉛処理すべき水栓金具4を天井から吊り下げた状態で運搬するためのコンベヤ16が設けられている。このコンベヤ16は、天井に設置されたレール18と、レール18に沿って所定方向(図1において矢印で示す方向)に移動するハンガ20と、を有している。ハンガ20は銅などから形成され、このハンガ20には、脱鉛処理すべき水栓金具4を着脱自在に係止するための複数のフック22が設けられている。
【0021】
第1脱鉛処理装置6は、処理液としてのアルカリ水溶液、本実施形態では水酸化ナトリウム水溶液が収容された第1処理槽24及び予備槽26を備えている(図2参照)。これら第1処理槽24及び予備槽26は、相互に隣接して配設されている。水酸化ナトリウム水溶液の濃度は28〜38mL/Lであり、その液温度は47〜53℃である。第1処理槽24内の水酸化ナトリウム水溶液には、ステンレスから形成された電極30が浸漬されている。第1処理槽24の外部には電力供給装置32が配設され、この電力供給装置32により、ハンガ20及び電極30をそれぞれ陽極及び陰極として、ハンガ20と電極30との間に所定の直流電圧(例えば1.0V)が印加される。ハンガ20のフック22に水栓金具4を係止すると両者は電気的に接続されるので、上述のように電圧が印加されることによって、水栓金具4及び電極30をそれぞれ陽極及び陰極として、水栓金具4と電極30との間に上記所定の直流電圧が印加されるようになる。
【0022】
また、第1処理槽24と予備槽26とを連通する循環流路34が設けられ、この循環流路34にはポンプ36及びフィルタ38が配設されている。ポンプ36の作用によって、予備槽26内の水酸化ナトリウム水溶液が循環流路34を通して第1処理槽24内に供給されるとともに、第1処理槽24の上端開口部から溢れ出た水酸化ナトリウム水溶液が図2中の矢印Pで示すように予備槽26内に流れ込む。
【0023】
予備槽26内の水酸化ナトリウム水溶液には、ステンレスから形成された一対の電極40,42が浸漬されている。予備槽26の外部には電力供給装置44が配設され、この電力供給装置44により、一対の電極40,42間に所定の直流電圧(例えば4.2V)が印加される。このように電圧が印加されると、水酸化ナトリウム水溶液中に含まれている鉛イオン等が電解処理により電極40,42に析出され、これにより水酸化ナトリウム水溶液が浄化処理される。従って、上述のように水酸化ナトリウム水溶液が循環されることにより、第1処理槽24内の水酸化ナトリウム水溶液中の鉛濃度が低減されるとともに、水酸化ナトリウム水溶液中の不純物がフィルタにより除去される。
【0024】
第1次水洗処理槽8は第1〜第3水槽46,48,50を備え、これら第1〜第3水槽46,48,50にはそれぞれ水洗処理用の水が収容されている。
【0025】
第2脱鉛処理装置10は、処理液としてのリン酸水溶液が収容された第2処理槽52を備えている。リン酸水溶液は、例えば濃度3.8〜6.2mL/Lのリン酸水溶液が用いられ、その液温度は47〜53℃である。
【0026】
第2次水洗処理槽12は第4及び第5水槽68,70を備え、これら各水槽68,70にはそれぞれ水洗処理用の水が収容されている。また、湯洗処理槽14には湯洗処理用の温水が収容されている。
【0027】
図3をも参照して、上述した処理装置2を用いた脱鉛処理工程の流れについて説明する。本実施形態の脱鉛処理工程においては、アルカリ処理工程、第1次水洗処理工程、リン酸処理工程、第2次水洗処理工程及び湯洗処理工程がこの順に行われる。脱鉛処理すべき水栓金具4は、コンベヤ16によって第1脱鉛処理装置6、第1次水洗処理槽8、第2脱鉛処理装置10、第2次水洗処理槽12及び湯洗処理槽14の順に運搬される。
【0028】
まず、アルカリ処理工程が行われる(ステップS1)。このアルカリ処理工程では、水栓金具4を第1処理槽24内の水酸化ナトリウム水溶液に例えば270秒間浸漬することにより、水栓金具4の表面に含有されている鉛がエッチングにより水酸化ナトリウム水溶液中に溶出されて除去される。なお、上述のように水酸化ナトリウム水溶液が循環されることにより、水酸化ナトリウム水溶液中に溶出された鉛は予備槽26内の一対の電極40,42による電解処理によって浄化処理されるので、第1処理槽24内の水酸化ナトリウム水溶液中の鉛濃度が低減されるとともに、水酸化ナトリウム水溶液中の不純物がフィルタ38により除去される。
【0029】
また、水栓金具4を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した状態において、水栓金具4及び電極30をそれぞれ陽極及び陰極として、電力供給装置32により水栓金具4と電極30との間に上記所定の直流電圧(例えば1.0V)が印加される。水酸化ナトリウム水溶液中に溶出された鉛イオン(Pb2+)はプラスに帯電されているので、鉛イオンと水栓金具4とが電気的に反発するようになり、水栓金具4の周囲における鉛濃度が低下するようになる。これにより、アルカリ処理が終了して水栓金具4を第1処理槽24から取り出す際に、水酸化ナトリウム水溶液中の鉛が水栓金具4の表面に再付着するのが防止される。
【0030】
なお、水栓金具4と電極30との間に印加される電圧は0.8〜1.2Vであるのが好ましく、0.9〜1.1Vであるのがより好ましい。電圧が1.2Vを超えると、水栓金具4の周囲における鉛濃度は低下するが、銅合金材に含まれる金属成分(例えば、銅や鉛、亜鉛、スズなど)がアルカリ水溶液中に少し溶出するようになる。また、電圧が0.8Vよりも低いと、水栓金具4の周囲における鉛濃度が充分に低下せず、水栓金具4の表面に鉛が少し再付着するようになる。
【0031】
次いで、第1次水洗処理工程が行われる(ステップS2)。この第1次水洗処理工程では、まず、水栓金具4を第1水槽46内の水に浸漬して1段目の水洗処理を行い、次いで水栓金具4を第2水槽48内の水に浸漬して2段目の水洗処理を行い、更に水栓金具4を第3水槽50内の水に浸漬して3段目の水洗処理を行う。第1〜第3水槽46,48,50内の水への水栓金具4の浸漬時間は、例えば合計80秒である。
【0032】
続いて、リン酸処理工程が行われる(ステップS3)。このリン酸処理工程では、水栓金具4を第2処理槽52内のリン酸水溶液に例えば150秒間浸漬することにより、水栓金具4の表面にリン酸塩の皮膜を形成する。なお、第2処理槽52内のリン酸水溶液を浄化処理する際には、ステンレスから形成された一対の電極(図示せず)をリン酸水溶液中に浸漬し、これら一対の電極間に所定の直流電圧(例えば12V)を印加することにより、リン酸水溶液中に含まれている鉛イオン等が電解処理により電極に析出される。
【0033】
更に続いて、第2次水洗処理工程が行われる(ステップS4)。この第2次水洗処理工程では、まず、水栓金具4を第4水槽68内の水に浸漬して1段目の水洗処理を行い、次いで水栓金具4を第5水槽70内の水に浸漬して2段目の水洗処理を行う。第4及び第5水槽68,70内の水への水栓金具4の浸漬時間は、例えば合計54秒である。
【0034】
その後に、湯洗処理工程が行われる(ステップS5)。この湯洗処理工程においては、水栓金具4を湯洗処理槽14内の温水に浸漬して湯洗処理を行う。湯洗処理槽14内の温水への水栓金具4の浸漬時間は、例えば27秒である。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の脱鉛処理方法では、アルカリ処理工程において、水栓金具4及び電極30をそれぞれ陽極及び陰極として、水栓金具4と電極30との間に上記所定の直流電圧を印加することにより、第1処理槽24内の水酸化ナトリウム水溶液に溶出した鉛が水栓金具4の表面に再付着するのを防止することができる。また、このように鉛の再付着を防止することによって、アルカリ処理工程の処理回数を少なく(例えば1〜2回程度)することができ、処理効率を高めることができる。
[実施例及び比較例]
本発明の効果を確認するために、次のような実験を行った。実施例1として、図1に示す処理装置を用いてアルカリ処理工程を行った。アルカリ水溶液として濃度33mL/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用い、その液温度は50℃であった。予備槽内の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した一対の電極はステンレス製のものを使用し、これら一対の電極間に4.2Vの直流電圧を印加した。脱鉛処理すべき水栓金具として、黄銅から形成された細長いパイプと、真鍮合金材から形成されるとともにこのパイプの両端部にハンダ付けにより接続された一対の取付金具と、を有する水栓金具を使用した。第1処理槽内の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した電極はステンレス製のものを使用し、水栓金具を第1処理槽内の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した状態で、水栓金具及び電極をそれぞれ陽極及び陰極として、水栓金具と電極との間に1.0Vの直流電圧を270秒間印加した。
【0036】
この実施例1においては、アルカリ処理後に水栓金具を第1処理槽から取り出してその表面を調べたところ、図4(a)及び(b)に示すように、鉛の再付着による黒色の変色箇所は見当たらなかった。
【0037】
また、実施例2として、水栓金具及び電極をそれぞれ陽極及び陰極として、水栓金具と一対の電極との間に1.2Vの直流電圧を印加してアルカリ処理工程を行った。他の実験条件は実施例1と同様である。
【0038】
この実施例2においては、アルカリ処理後に水栓金具を第1処理槽から取り出してその表面を調べたところ、鉛の再付着による黒色の変色箇所は見当たらなかったが、表面の一部が僅かに赤色に変色していることが確認された。この赤色の変色は、黄銅の金属成分の一部(例えば、銅や亜鉛など)が水栓金具の表面から水酸化ナトリウム水溶液中に僅かに溶出したことによるものと考えられるが、実用に耐え得るレベルであった。
【0039】
また、実施例3として、水栓金具及び電極をそれぞれ陽極及び陰極として、水栓金具と電極との間に0.8Vの直流電圧を印加してアルカリ処理工程を行った。他の実験条件は実施例1と同様である。
【0040】
この実施例3においては、アルカリ処理後に水栓金具を第1処理槽から取り出してその表面を調べたところ、表面の一部が鉛の再付着によって僅かに黒色に変色していることが確認されたが、実用に耐え得るレベルであった。
【0041】
更に、比較例として、水栓金具と電極との間には直流電圧を印加せず、それ以外は、実施例1と同様の実験条件でアルカリ処理工程を行った。
【0042】
この比較例においては、アルカリ処理後に水栓金具を第1処理槽から取り出してその表面を調べたところ、図4(c)及び(d)に示すように、表面の一部に鉛の再付着による黒色の変色箇所が確認され、実用に耐え得るレベルではなかった。
【0043】
以上、本発明に従う脱鉛処理方法及び脱鉛処理装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0044】
例えば、本実施形態では、水栓金具4を銅合金材から形成したが、鉛を含有する他の種類の合金材、例えば真鍮合金材などから形成してもよい。
【0045】
また例えば、本実施形態では、第1処理槽24内の水酸化ナトリウム水溶液に1本の電極30を浸漬したが、2本以上の電極を浸漬するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
4 水栓金具
6 第1脱鉛処理装置
8 第1次水洗処理槽
10 第2脱鉛処理装置
12 第2次水洗処理槽
14 湯洗処理槽
24 第1処理槽
30 電極
32 電力供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛を含有する合金材を処理槽内に収容された処理液に浸漬して、前記合金材に含まれる鉛を前記処理液に溶出させて除去する脱鉛処理方法において、
前記合金材及び電極を前記処理槽内の前記処理液に浸漬した状態で、前記合金材及び前記電極をそれぞれ陽極及び陰極として、前記合金材と前記電極との間に所定電圧を印加して、前記合金材への鉛の再付着を防止することを特徴とする脱鉛処理方法。
【請求項2】
前記処理液はアルカリ水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の脱鉛処理方法。
【請求項3】
鉛を含有する合金材をアルカリ水溶液に浸漬して前記合金材に含まれる鉛を溶出させるアルカリ処理工程と、このアルカリ処理した前記合金材を水に浸漬して洗浄する第1次水洗処理工程と、この洗浄した前記合金材をリン酸水溶液に浸漬して前記合金材の表面に皮膜を形成するリン酸処理工程と、このリン酸処理した前記合金材を水に浸漬して洗浄する第2次水洗処理工程と、を含む脱鉛処理方法において、
前記アルカリ処理工程においては、前記合金材及び電極を前記アルカリ水溶液に浸漬した状態で、前記合金材及び前記電極をそれぞれ陽極及び陰極として、前記合金材と前記電極との間に所定電圧を印加して、前記合金材への鉛の再付着を防止することを特徴とする脱鉛処理方法。
【請求項4】
前記合金材は銅合金材であり、前記銅合金材と前記電極との間には、0.8〜1.2Vの直流電圧を印加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱鉛処理方法。
【請求項5】
合金材に含まれる鉛を処理液に溶出させて除去するための脱鉛処理装置であって、
前記処理液が収容された処理槽と、前記処理槽内の前記処理液に浸漬された電極と、前記処理槽内の前記処理液に浸漬された前記合金材と前記電極との間に電圧を印加するための電力供給装置と、を備え、
前記合金材を前記処理槽内の前記処理液に浸漬した状態で、前記合金材及び前記電極をそれぞれ陽極及び陰極として、前記電力供給装置によって前記合金材と前記電極との間に電圧が印加されることを特徴とする脱鉛処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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