説明

脳血流量算出プログラム、記録媒体および脳血流量算出方法

【課題】分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量を求めるに際し、低侵襲的又は非侵襲的で且つ簡便な手法により得られた放射能カウント値を用いて、精度の高い脳血流量を求めることができる脳血流量算出プログラム等を提供する。
【解決手段】薬剤(123I−IMP)の第1回投与後における55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値と複数の脳内放射能カウント値とを説明変数とし、予め記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。入力された被験者の脳内放射能カウント値を取得された重回帰式に適用して当該被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する。入力された脳内放射能カウント値と推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき当該被験者の脳血流量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Split dose法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を行うための脳血流量算出プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、局所脳血流量が変化する疾患の診断には、単光子放出コンピュータ断層撮影(Single Photon Emission Computed Tomography : SPECT)等の核医学画像診断法が利用されている。例えば、脳血流SPECTで行われている代表的な負荷試験としてDiamox(登録商標)負荷試験があり、血流直線性の優れた123I−IMP(N-isopropyl-p-[123I]iodoamphetamine)がトレーサとして用いられている。特に、1日という短時間に連続2回の123I−IMP SPECTを用いた分割投与法(split dose techniqueまたはone-day protocol)によりDiamox(登録商標)負荷を行い、安静および負荷状態での局所脳血流量分布を求める検査法が用いられている(非特許文献1参照)。
【0003】
図38(A)および(B)は123I−IMP脳血流SPECTを用いた従来の分割投与法のプロトコールを示す。図38(A)および(B)で横軸は時間であり、図38(B)の縦軸は脳内放射能(カウント値)である。図38(A)に示されるように、まず、123I−IMP(111MBq)の第1回目静注(intravenous injection : i.v.)を行う。以下、第1回目静注時を時間0とし、時間0からの経過時間を用いて説明する。第1回目の123I−IMP静注から持続動脈採血が6分経過後まで行われ、ダイナミック(dynamic)SPECT(図38(B)で示される1st.SPECT)が施行される。8分経過後にDiamox(登録商標)を静注する。24.5分経過後に、123I−IMP(111MBq)の第2回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図38(B)で示される2nd.SPECT)が施行される。図38(B)では、この時の第1回目の123I−IMP静注による残存放射能(バックグランド)が点線で示されている。
【0004】
脳血流量算出には、上記脳血流SPECTでの持続動脈採血を必須とするMS(Microsphere model)法が、その精度の高さにより評価されていた(非特許文献2参照)。
【0005】
次に、123I−IMP(以下、「IMP」と省略する。)を用いたIMP・MS(Microsphere model)法による局所脳血流算出法について説明する(非特許文献3参照)。一定の条件の下で、IMP静注後t分の脳組織内放射能Cb(μCi/g)は、式1Aのように表される。ここで、tは5分または6分とすることが好適である。
【0006】
【数1】

【0007】
ここで、Fは脳血流量(ml/100g/min)、Ca(t)は時間tにおけるIMPの動脈血中濃度である。IMP静注直後からt分まで、動脈から一定の採血速度R(ml/min)で持続的に動脈血を採取したとする。t分間に得られた動脈血(R・t(ml))の全放射能をA(μCi)とし、動脈血中のIMP代謝産物を除いた真のIMPの割合をNとすると、N・Aはt分間採取した動脈血中にあるIMPの放射能になる。測定中、脳血流量Fを一定とすると、以下の式1Bが得られる。
【0008】
【数2】

【0009】
式1Bは、持続的に動脈血を採取することにより脳血流を模倣し、t分間採取した動脈血の放射能によりIMP静注後t分の脳組織内放射能Cbを模倣することで、Cb/FとN・A/Rとが等しいものとして導かれている。式1Bより、以下の式1Cを得ることができる。
【0010】
【数3】

【0011】
IMP静注後t分の脳組織内放射能CbはSPECTを用いて測定し、t分間に得られた動脈血の全放射能Aはウェル型シンチレーションカウンタで測定される。しかし、両者の計数効率が異なるため、その補正(クロスキャリブレーション:Cross calibration)を行う係数が必要となる。図39は、クロスキャリブレーションの測定を説明するための図を示す。図39に示されるように、まず、円筒ファントム160に、123I溶液(7.4〜14.8kBq/mlに調整したIMP−クエン酸緩衝液(0.1mol/l))を入れる。続いてSPECT機器162で撮像する。ここで、収集条件、回転半径、ステップ、画像処理等は臨床における撮像条件と同一にて行なう。次に、再構成画像にてROI(位置は外周に近い所、形状は任意、大きさは10pixel以上)を設定し、1pixel当たりのカウント数S(count/pixel)を求める。最後に、円筒ファントム160内の123I溶液を試験管164に1.0ml取り、ウェル型シンチレーションカウンタ166で放射能W(cpm)を測定する。クロスキャリブレーションを行う係数(クロスキャリブレーションファクタ:CCF)は、以下の式1Dにより示される。
【0012】
【数4】

【0013】
式1Cを脳組織100g単位で表し、さらに種々の補正等を加えた実際に脳血流量を求める際に用いられる式は、5分間持続動脈採血の場合、以下の式1Eとなる。
【0014】
【数5】

【0015】
ここで、分母のA’は採血動脈血1.0mlのカウント数(cpm)、(5R+D)は希釈補正のための項であり、5Rは採血速度Rで5分間の採血により吸引器(注射器)内に吸引された動脈血の量、D(Dead Space)は腕から吸引器までの延長チューブ内に吸引された動脈血の量である。希釈補正のための項は、採取開始から5分経過後には、動脈血が吸引器内と延長チューブ内とにあるため設けられた。A’・(5R+D)でt分間に得られた動脈血(R・t(ml))の全放射能Aとなる。Nは上述した動脈血中のIMP代謝産物を除いた真のIMPの割合であり、オクタノール抽出率である。オクタノール抽出率Nは個人差があるものの、平均的に80%程度(0.8)と考えるものとする。
【0016】
SPECT撮像を行いたいのはt=5分の時点であるが、3次元撮像のため実際には30分後に撮像している。そこで、IMP静注後t=5分の脳組織内放射能Cbを、Cb=S30・(H/H30)として調整している。ここで、S30は30分におけるSPECTROIカウント(counts)、Hは5分における全脳カウント(counts)、H30は30分における全脳カウント(counts)である。例えば、(H/H30)=1/2の場合、Cb=S30/2と半分に調整する。あるいは、10分〜30分に撮像して、(10+30)/2=20分の時のS20とH20とを用いて、Cb=S20・(H/H20)として調整してもよい。以上のようにして得られたCbを上述のクロスキャリブレーションファクタCCFで割ればよい。式1Eでは整理したため、分母に30分における全脳カウントH30およびクロスキャリブレーションファクタCCFが現れている。
【0017】
式1Eに一例として、R=1.03(ml/min)、D=0.5(ml)、A’=53,214(cpm)、S30=53.6(counts)、N=0.8、H=41,750(counts)、H30=45,700(counts)、CCF=0.00051を代入すると、F=41.1(ml/100g脳/min)となる。
【0018】
以上のように、IMP・MS法では持続動脈採血を行い、採取した動脈血の放射能を測定する必要があった。近年、脳血流量算出において、精度は劣るが簡便である1点動脈採血法(ARG(autoradiography)法)も利用されている(非特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述した脳血流SPECTでの持続動脈採血を必須とするMS法では、脳血流量算出のために対象患者に対する検査において6分間持続動脈採血が必要となるため、侵襲性を伴うという問題があった。その手技は病院施設等の臨床現場において煩雑性が高いため、スタッフへの負担が大きいという問題があった。上記ARG法では低侵襲的ではあるものの、脳血流量算出における精度が劣るという問題があった。
【0020】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより安静時または負荷時における脳血流量の算出を求めるに際し、低侵襲的または非侵襲的で且つ簡便な手法により得られた放射能カウント値を用いて、精度の高い脳血流量を求めることができる脳血流量算出プログラム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明の脳血流量算出プログラムは、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を行うための脳血流量算出プログラムであって、1st.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値が記録された脳内放射能カウント値記録部と、該被験者についてmicrosphere法における所定時間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値が記録された動脈血中放射能カウント値記録部とを用いるものであり、コンピュータを、前記脳内放射能カウント値記録部に記録された複数の脳内放射能カウント値を説明変数とし、前記動脈血中放射能カウント値記録部に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する重回帰式取得手段、1st.SPECT中における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する脳内放射能カウント値入力手段、前記脳内放射能カウント値入力手段により入力された脳内放射能カウント値を前記重回帰式取得手段により取得された重回帰式に適用することにより、対象となる被験者についてのmicrosphere法における所定時間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する推定手段、前記脳内放射能カウント値入力手段により入力された脳内放射能カウント値と前記推定手段により推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する脳血流量算出手段として機能させるための脳血流量算出プログラムである。
【0022】
ここで、この発明の脳血流量算出プログラムにおいて、前記重回帰式取得手段における重回帰分析の説明変数として、所定のトレーサの第1回投与後における所定時間経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値をさらに用いることができる。
【0023】
ここで、この発明の脳血流量算出プログラムにおいて、前記重回帰式取得手段における重回帰分析の説明変数として、所定のトレーサの第1回投与後における所定時間経過後に一点動脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値をさらに用いることができる。
【0024】
ここで、この発明の脳血流量算出プログラムにおいて、前記1st.SPECT中の被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値は、所定のトレーサの第2回投与時に測定された脳内放射能カウント値を基準とした相対値を用いることができる。
【0025】
ここで、この発明の脳血流量算出プログラムにおいて、前記脳血流量算出手段により算出された脳血流量に基づく脳血流量画像を表示する脳血流量画像表示手段をさらに備えることができる。
【0026】
ここで、この発明の脳血流量算出プログラムにおいて、前記脳内放射能カウント値入力手段により入力された脳内放射能カウント値に基づく収集画像を表示する収集画像表示手段と、前記収集画像表示手段により表示された収集画像上に所定の形状を設定させ、該所定の形状内に所定の閾値に基づくROIを設定するROI設定手段と、前記ROI設定手段により設定されたROI内又は任意の領域内について、前記脳内放射能カウント値入力手段により入力された脳内放射能カウント値に基づく時間・放射能曲線を表示する時間・放射能曲線表示手段と、前記時間・放射能曲線表示手段により表示された時間・放射能曲線上に所定の範囲を設定させ、該所定の範囲における矢状断面方向の収集画像を表示する矢状断面方向収集画像表示手段と、前記矢状断面方向収集画像表示手段により表示された収集画像を用いて所定の範囲を設定させ、該所定の範囲における画像再構成後の横断面方向の断層像を表示する再構成後断層像表示手段とをさらに備えることができる。
【0027】
この発明の脳血流量算出プログラムは、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を行うための脳血流量算出プログラムであって、1st.SPECT中及び2nd.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された脳内放射能カウント値が記録された脳内放射能カウント値記録部を用いるものであり、コンピュータを、前記脳内放射能カウント値記録部に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値における第1回目静注による残存放射能カウント値として、第2回目静注から所定の経過時間までは1st.SPECT中における所定数の経過時間における脳内放射能カウント値から単回帰した放射能カウント値とし、該所定の経過時間後は該所定の経過時間における単回帰した放射能カウント値でプラトーと推定する残存放射能推定手段、前記脳内放射能カウント値記録部に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値から前記残存放射能推定手段により推定された残存放射能カウント値を引いた値を2nd.SPECT中における第2回目静注による脳内放射能カウント値と推定する2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定手段、前記2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定手段により推定された2nd.SPECT中における第2回目静注による脳内放射能カウント値に基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する脳血流量算出手段として機能させるための脳血流量算出プログラムである。
【0028】
この発明の記録媒体は、本発明のいずれかの脳血流量算出プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【0029】
この発明の脳血流量算出方法は、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を行うための脳血流量算出方法であって、1st.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値が記録された脳内放射能カウント値記録部と、該被験者についてmicrosphere法における所定時間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値が記録された動脈血中放射能カウント値記録部とを用いるものであり、前記脳内放射能カウント値記録部に記録された複数の脳内放射能カウント値を説明変数とし、前記動脈血中放射能カウント値記録部に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する重回帰式取得ステップと、1st.SPECT中における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する脳内放射能カウント値入力ステップと、前記脳内放射能カウント値入力ステップで入力された脳内放射能カウント値を前記重回帰式取得ステップで取得された重回帰式に適用することにより、対象となる被験者についてのmicrosphere法における所定時間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する推定ステップと、前記脳内放射能カウント値入力ステップで入力された脳内放射能カウント値と前記推定ステップで推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する脳血流量算出ステップとを備えたことを特徴とする。
【0030】
ここで、この発明の脳血流量算出方法において、前記重回帰式取得ステップにおける重回帰分析の説明変数として、所定のトレーサの第1回投与後における所定時間経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値をさらに用いることができる。
【0031】
ここで、この発明の脳血流量算出方法において、前記重回帰式取得ステップにおける重回帰分析の説明変数として、所定のトレーサの第1回投与後における所定時間経過後に一点動脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値をさらに用いることができる。
【0032】
ここで、この発明の脳血流量算出方法において、前記1st.SPECT中の被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値は、所定のトレーサの第2回投与時に測定された脳内放射能カウント値を基準とした相対値を用いることができる。
【0033】
ここで、この発明の脳血流量算出方法において、前記脳血流量算出ステップで算出された脳血流量に基づく脳血流量画像を表示する脳血流量画像表示ステップをさらに備えることができる。
【0034】
ここで、この発明の脳血流量算出方法において、前記脳内放射能カウント値入力ステップの後に、前記脳内放射能カウント値入力ステップで入力された脳内放射能カウント値に基づく収集画像を表示する収集画像表示ステップと、前記収集画像表示ステップで表示された収集画像上に所定の形状を設定させ、該所定の形状内に所定の閾値に基づくROIを設定するROI設定ステップと、前記ROI設定ステップで設定されたROI内又は任意の領域内について、前記脳内放射能カウント値入力ステップで入力された脳内放射能カウント値に基づく時間・放射能曲線を表示する時間・放射能曲線表示ステップと、前記時間・放射能曲線表示ステップで表示された時間・放射能曲線上に所定の範囲を設定させ、該所定の範囲における矢状断面方向の収集画像を表示する矢状断面方向収集画像表示ステップと、前記矢状断面方向収集画像表示ステップで表示された収集画像を用いて所定の範囲を設定させ、該所定の範囲における画像再構成後の横断面方向の断層像を表示する再構成後断層像表示ステップとをさらに備えることができる。
【0035】
この発明の脳血流量算出方法は、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を行うための脳血流量算出方法であって、1st.SPECT中及び2nd.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された脳内放射能カウント値が記録された脳内放射能カウント値記録部を用いるものであり、前記脳内放射能カウント値記録部に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値における第1回目静注による残存放射能カウント値として、第2回目静注から所定の経過時間までは1st.SPECT中における所定数の経過時間における脳内放射能カウント値から単回帰した放射能カウント値とし、該所定の経過時間後は該所定の経過時間における単回帰した放射能カウント値でプラトーと推定する残存放射能推定ステップと、前記脳内放射能カウント値記録部に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値から前記残存放射能推定ステップで推定された残存放射能カウント値を引いた値を2nd.SPECT中における第2回目静注による脳内放射能カウント値と推定する2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定ステップと、前記2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定ステップで推定された2nd.SPECT中における第2回目静注による脳内放射能カウント値に基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する脳血流量算出ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明の脳血流量算出プログラム等によれば、重回帰式取得部は、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値と脳内放射能カウント値記録部に記録された複数の脳内放射能カウント値とを説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。脳内放射能カウント値入力部は、1st.SPECT中の所定の期間における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する。推定部は、脳内放射能カウント値入力部により入力された上記対象となる被験者の脳内放射能カウント値を重回帰式取得部により取得された重回帰式(切片bおよびb〜b10の回帰係数を有する重回帰式)に適用することにより、対象となる被験者についてのMS法における所定時間、好適には6分間(5分間でもよい。以下同様)持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する。発明者らは、比較のために対象となる被験者についてMS法における6分間持続動脈採血も一点静脈採血と共に行い、動脈血中の放射能カウント値を測定しておいた。対象となる複数の被験者について推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値の分布と、対象となる複数の被験者について実際に6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値の分布とは良く相関していることがわかったため、臨床応用に適するという効果がある。脳血流量算出部は、脳内放射能カウント値入力部により入力された脳内放射能カウント値と推定部により推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する。以上のように、使用した患者因子を脳内SPECT変化量および123I−IMP投与55分時点における一点静脈採血の放射能カウントとし、全体として1時間以内で検査を終了させることができる。このため、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を求めるに際し、一点静脈採血による低侵襲的で且つ簡便な手法により得られた放射能カウント値を用いて、精度の高い脳血流量を求めることができる脳血流量算出プログラム等を提供することができるという効果がある。
【0037】
さらに、本発明の脳血流量算出プログラム等によれば、重回帰式取得部は、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における8分経過後に一点動脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値と脳内放射能カウント値記録部に記録された複数の脳内放射能カウント値とを説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。この場合も上記一点静脈採血の場合とほぼ同様に、脳血流量算出プログラムの各機能を用いることができる。推定部により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値)と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値との比較によれば、両者の分布は良く相関しているため、臨床応用に適するという効果がある。このため、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を求めるに際し、一点動脈採血による低侵襲的で且つ簡便な手法により得られた放射能カウント値を用いて、精度の高い脳血流量を求めることができる脳血流量算出プログラム等を提供することができるという効果がある。
【0038】
加えて、本発明の脳血流量算出プログラム等によれば、重回帰式取得部は、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における脳内放射能カウント値記録部に記録された複数の脳内放射能カウント値を説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。この場合も上記一点静脈採血および一点動脈採血の場合とほぼ同様に、脳血流量算出プログラムの各機能を用いることができる。推定部により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値との比較によれば、両者の分布は良く相関していることがわかったため、臨床応用に適するという効果がある。このため、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を求めるに際し、非採血という非侵襲的で且つ簡便な手法により得られた放射能カウント値を用いて、精度の高い脳血流量を求めることができる脳血流量算出プログラム等を提供することができるという効果がある。
【0039】
以上より、本発明の脳血流量算出プログラム等によれば、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を求めるに際し、低侵襲的または非侵襲的で且つ簡便な手法により得られた放射能カウント値を用いて、精度の高い脳血流量を求めることができる脳血流量算出プログラム等を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】123I−IMP脳血流SPECTを用いた本発明の実施例1における分割投与法のプロトコールを示す図である。
【図2】本発明の実施例1における脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20等を示す図である。
【図3】脳内放射能カウント値記録部12に記録された1st.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を例示する図である。
【図4】実施例1における重回帰分析を行って得られた回帰係数を示す図である。
【図5】実施例1における推定部23により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値との比較(相関)を示す図である。
【図6】78症例について重回帰分析を行った結果を示す図である。
【図7】重回帰分析で用いた放射能カウント値と予測値との相関を示す散布図行列を示す図である。
【図8】推定部23により推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値(予測値)と観測値との比較を示す図である。
【図9】図8の縦軸(観測値)と横軸(予測値)との差(残差)の分布を示す図である。
【図10】図8に示された観測値の分布を示す図である。
【図11】78症例についての重回帰分析の検討を行った結果を示す図である。
【図12】図11でP値が小さいもの、言い換えれば予測値に影響を与える確率が高い5個の説明変数を取り出して、78症例についての重回帰分析の検討を行った結果を示す図である。
【図13】図12で選択された説明変数(x、x、x、xおよびx10)を使用した重回帰分析で用いた放射能カウント値と予測値との相関を示す散布図行列を示す図である。
【図14】図12で選択された説明変数(x、x、x、xおよびx10)を使用して推定部23により推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値(予測値)と観測値との比較を示す図である。
【図15】図14の縦軸(観測値)と横軸(予測値)との差(残差)の分布を示す図である。
【図16】図14に示された観測値の分布を示す図である。
【図17】図14に示された予測値の分布を示す図である。
【図18】123I−IMP脳血流SPECTを用いた本発明の実施例2における分割投与法のプロトコールを示す図である。
【図19】実施例2における重回帰分析を行って得られた回帰係数を示す図である。
【図20】実施例2における推定部23により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値(横軸)と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値(縦軸)との比較(相関)を示す図である。
【図21】123I−IMP脳血流SPECTを用いた本発明の実施例3における分割投与法のプロトコールを示す図である。
【図22】実施例3における推定部23により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値(縦軸)と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値(横軸)との比較(相関)を示す図である。
【図23】脳血流量算出プログラムおよび脳血流量算出方法の一例の動作を示すフローチャートである。
【図24】対象となる被験者のデータを選択する際の表示画像を示す図である。
【図25】脳血流量算出プログラムが起動された直後の表示画像を示す図である。
【図26】ROIを設定している状態の表示画像を示す図である。
【図27】スレショルド(threshold)ROIを設定している状態の表示画像を示す図である。
【図28】時間・放射能曲線の表示画像を示す図である。
【図29】図28の一部を拡大した表示画像を示す図である。
【図30】収集画像を表示した状態の表示画像を示す図である。
【図31】断層像を表示した状態の表示画像を示す図である。
【図32】脳血流量画像を表示する表示画像を示す図である。
【図33】本発明のプログラムを実行するコンピュータ1の内部回路140を示すブロック図である。
【図34】123I−IMP脳血流SPECTを用いた従来の分割投与法のプロトコールの問題点を示す図である。
【図35】123I−IMP脳血流SPECTを用いた分割投与法のプロトコールにおいて、本発明の実施例6で用いる残存放射能の推定法を示す図である。
【図36】本発明の実施例6における脳血流量算出プログラムおよび方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図37】本発明の実施例6における脳血流量画像を表示する表示画像を示す図である。
【図38】123I−IMP脳血流SPECTを用いた従来の分割投与法のプロトコールを示す図である。
【図39】クロスキャリブレーションの測定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の脳血流量算出プログラムの概要は以下の通りである。まず、MS法による被験者についての所定時間、好適には6分間(5分間でもよい。以下同様)持続動脈採血で測定された動脈血中の放射能カウント値と、同被験者についての1st.SPECT中における所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値とを測定する。これらのデータは複数の被験者について予め蓄積しておく。本発明の脳血流量算出プログラムは、これらの蓄積したデータに基づき重回帰分析を行って重回帰式を求める。次に、脳血流量算出の対象となる被験者について1st.SPECT中における所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値と、同被験者について一点静脈採血による低侵襲的な手法、一点動脈採血による低侵襲的な手法または非採血による非侵襲的な手法により得られた放射能カウント値とを各々上記重回帰式に適用することにより、MS法による当該被験者についての6分間持続動脈採血で測定され得る動脈血中の放射能カウント値を予測する。この予測された動脈血中の放射能カウント値と上記測定された複数の脳内放射能カウント値とに基づき、脳血流量を算出する。即ち、本発明の脳血流量算出プログラムの特徴は、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を求めるに際し、侵襲的な6分間持続動脈採血を行わず、代わりに一点静脈採血による非侵襲的な手法、一点動脈採血による低侵襲的な手法または非採血による非侵襲的な手法により得られた放射能カウント値等に基づき、重回帰式により6分間持続動脈採血を行った場合の動脈血中の放射能カウント値を予測し、当該予測に基づき安静時または負荷時における脳血流量(実施例6は負荷時)を算出する点にある。以下、各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
実施例1では一点静脈採血による低侵襲的な手法により得られた放射能カウント値を用いて脳血流量を算出する場合について説明する。図1(A)、(B)は123I−IMP脳血流SPECTを用いた本発明の実施例1における分割投与法のプロトコールを示す。図1(A)に示されるように、まず、123I−IMP(111MBq)の第1回目静注を行う。以下、第1回目静注時を時間0とし、時間0からの経過時間を用いて説明していく。まず、ダイナミックSPECT(図1(B)に示される1st.SPECT)が施行される。次に、8分経過後にDiamox(登録商標)を静注する。24.5分経過後に、123I−IMP(111MBq)の第2回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図1(B)に示される2nd.SPECT)が施行される。図2(B)では、図30(B)と同様に、この時の第1回目の123I−IMP静注による残存放射能(バックグランド)が点線で示されている。55分経過後に、薬剤(123I−IMP(111MBq))投与の反対側の手(例えば右手から投与した場合は左手)から一点静脈採血を行う。採血した静脈血から放射能カウント値を測定する。以上のように、使用した患者因子は脳内SPECT変化量および123I−IMP投与55分経過時点における一点静脈採血の放射能カウントであり、全体として1時間以内で検査は終了する。即ち、検査は低侵襲的で且つ簡便な手法で行うことができる。
【0043】
図2は、本発明の脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20等を示す。図1において、符号1は本発明の脳血流量算出プログラムを実行するコンピュータ、2はコンピュータ1に接続されたディスプレイ等の表示装置、10はコンピュータ1に接続されたディスク等の記録装置である。記録装置10には本発明で用いる重回帰式を求めるための種々のデータが記録されている。符号12は記録装置10に記録された、1st.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値が記録された脳内放射能カウント値記録部である。符号14は記録装置10に記録された、上記被験者についてMS法における第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値が記録された動脈血中放射能カウント値記録部である。本発明の脳血流量算出プログラムで用いる重回帰式を得るため、上記の予め測定された第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血結果を用いるが、一度重回帰式を得ておけば、図1のプロトコールに示されるように本発明の脳血流量算出プログラムを実行する際に6分間の持続動脈採血による測定結果は必要ない。
【0044】
次に、撮像条件について説明する。撮像器は3検出器型SPECT装置(Toshiba (登録商標)GCA9300A/GMS5500-DI)を用い、ファンビームコリメータを使用した。各ファンビームコリメータから回転中心までの距離は132mm(最小値)で固定した。脳内SPECT変化量については撮像器が脳正面に値するフレームである9フレームを使用した。Matrixは64×64で、6゜×20×2/2×20×3(=6゜×1200)の連続収集を行い、4゜×1800に再構成した。120゜/75sec×2
addition(120゜ 往復 /2’30”)(実際は、120±3゜および反転時のタイムラグがあり、1往復/約2’43”かかる。)。 使用薬物(所定のトレーサ)は123I−IMP(111MBq)×2 Diamox(登録商標)1000mgである。撮像対象は脳血管障害等であり、123I−IMP投与にて脳血流定量検査を施行した延べ78症例である(術前・術後、Follow up症例を含む)。詳しくは、男55例(年齢33才から83才で平均63.8才(33−83y.o.m:63.8y.o.)、女23例(年齢36才から84才で平均62.0才(36−84y.o.m:62.0y.o.)である。撮像結果は脳内放射能カウント値記録部12に記録した。重回帰式を得るための6分間の持続動脈採血は全例に対して施行し、動脈血中放射能カウント値記録部14に記録した。予測のための55分経過後の1点静脈採血は78例に対して施行し、各サンプルの放射能カウント値は適宜記録装置10内に記録してある。これらの人数は一例であり、本発明の脳血流量算出プログラムの適用に際し、これらの人数に限定されるものではない。
【0045】
図3は、脳内放射能カウント値記録部12に記録された1st.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を例示する。図3で縦軸は脳内放射能カウント値、横軸はフレームであり、上記9フレームの撮像結果が示されている。上記9フレームは、具体的には第1回目の123I−IMP静注から1.35分後、4.05分後、6.75分後、9.45分後、12.15分後、14.85分後、17.55分後、20.25分後、22.95分後(1st.SPECTにおける所定時間経過毎)の脳内放射能カウント値となっている。図3では白黒表示となるため明瞭ではないが、原図では複数の被験者毎に脳内放射能カウント値を色分けして表示している。
【0046】
図2に戻り、本発明の脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20内に示される重回帰式取得部(重回帰式取得手段)21は、図1で示されるプロトコールについて説明した、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における55分経過後(所定時間経過後)に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値と脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の脳内放射能カウント値とを説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。一般に、重回帰式はyを目的変数、xを説明変数、bを回帰係数(bを切片)とすると、以下の重回帰式2で与えられる。
【0047】
【数6】

【0048】
ここで、重回帰式取得部21は、例えば説明変数xを55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値とし、説明変数x(i=2〜k)を脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の(例えば上記9フレーム分。ここでk=10)脳内放射能カウント値とし、目的変数yを動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値として、脳内放射能カウント値記録部12および動脈血中放射能カウント値記録部14に記録されたデータについて重回帰分析を行う。図4は実施例1における重回帰分析を行って得られた回帰係数を示す。図4に示されるように、回帰係数b(切片)は524.2023、説明変数x(55分経過後の一点静脈採血)に対応する回帰係数bは1.496654、説明変数x(1.35分経過後の脳内放射能カウント値)に対応する回帰係数bは−3.05188、・・・、説明変数x10(22.95分経過後の脳内放射能カウント値)に対応する回帰係数b10は5.692109等と得られた。
【0049】
図2に戻り、本発明の脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20内に示される脳内放射能カウント値入力部(脳内放射能カウント値入力手段)22は、1st.SPECT中の所定の期間における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する。ここで、対象となる被験者とは、侵襲的な6分間持続動脈採血を行わず、代わりに55分経過後の一点静脈採血による低侵襲的な手法により得られた放射能カウント値を用いて脳血流量を算出する対象となる被験者の意味である。所定時間経過毎とは、例えば上述した9フレームにおける各経過時間毎とすればよい。
【0050】
続いて、本発明の脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20内に示される推定部(推定手段)23は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された上記対象となる被験者の脳内放射能カウント値を重回帰式取得部21により取得された重回帰式2(上記切片bおよびb〜b10の回帰係数を有する重回帰式2)に適用することにより、対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する。図5(A)、(B)は実施例1における推定部23により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値との比較(相関)を示す。発明者らは、比較のために対象となる被験者についてMS法における6分間持続動脈採血も一点静脈採血と共に行い、動脈血中の放射能カウント値を測定しておいた。図5(A)で、横軸が推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値であり、縦軸が同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値である。図5(A)において、正方形(原図では赤正方形)は対象となる複数の被験者について推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値の分布であり、菱形(原図では紫菱形)は対象となる複数の被験者について実際に6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値の分布である。図5(A)に示されるように、両者の分布は良く相関していることがわかる。図5(B)の回帰統計に示されるように、例えば重相関係数R=0.828219となり両者には非常に良い相関が認められるため、重回帰式2を用いた推定部23による推定は臨床応用に適することがわかる。即ち、重回帰式取得部21により得られた上記回帰係数を有する重回帰式2は、MS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を十分に推定(予測)することができるものである。従って、重回帰式2に用いられた上記各説明変数の採り方は単なる一選択例ではなく、上記推定(予測)を顕著に成功させることができた本質的な選択といえる。なお、図5(B)では観測数=64となっており、上述した症例数=78と差が生じているが、これは観測数を適宜任意抽出したためである(以下同様)。
【0051】
続いて、本発明の脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20内に示される脳血流量算出部(脳血流量算出手段)24は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された脳内放射能カウント値と推定部23により推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する。背景技術で説明した式1Eを再掲する。
【0052】
【数7】

【0053】
ここで、背景技術で説明したように、A’・(5R+D)はt分間に得られた動脈血(R・t(ml))の全放射能A、即ち持続動脈採血した場合の動脈血中の放射能カウント値となる。従って、当該項に推定部23により推定された動脈血中の放射能カウント値を用いればよい。S30・(H/H30)はIMP静注後t=5分の脳組織内放射能Cbであるため、脳内放射能カウント値入力部22により入力された脳内放射能カウント値を用いればよい。採血速度R=1.03(ml/min)、オクタノール抽出率N=0.8、クロスキャリブレーションファクタCCF=0.00051は、背景技術の値をそのまま用いてもよく、適宜設定し直してもよい。以上により、脳血流量算出部24は、対象となる被験者についての脳血流量Fを算出することができる。
【0054】
上述の説明では1st.SPECT中の被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値は、実測値を用いた。しかし、薬剤の第2回投与時に測定された脳内放射能カウント値を基準とした相対値を用いることもできる。例えば、図1(B)に示される1st.SPECT中の実測値が3000、4000、5000等であり、2nd.SPECTの最初の時(図1(A)に示される第1回目の123I−IMP静注から24.5分経過後の第2回目の123I−IMP静注時)の脳内放射能カウント値が10000であった場合、この10000を基準(例えば1)として、先の3000、4000、5000等を各々0.3、0.4、0.5等という相対値にしてもよい。実際には病院施設毎に撮像器の感度が異なるため、このような相対値(比例値)を用いる方が脳血流量算出プログラムの頑強性(頑健性:robustness)が高い場合もある。
【0055】
図6は、78症例について重回帰分析を行った結果を示す。図6の左上の表に示されるように、重相関Rは重相関係数を表し、R=0.934062であることから、重回帰式2の当てはまりが極めて良いことを示している。重決定R2は決定係数Rを表し、R=0.872472であることから、実測値の変動の内、約87%は重回帰式2で説明できることがわかる。補正R2は自由度修正済み決定係数を表し、この決定係数=0.853438であることから、説明変数の影響を割り引いて考えた場合、実測値の変動の内、約85%は重回帰式2で説明できることがわかる。標準誤差は観測値と予測値との差(残差)の標準偏差を示す、いわゆるY評価値の標準誤差を表し、標準誤差=3093.073である。観測数=78である。図6の下の表において、第1列の「切片」、「静脈」の下の81.37は重回帰式2の説明変数xの値であり、以下244.11から1383.28は各々説明変数x(i=3〜10)の脳内放射能カウント値である(x〜x10で9フレーム分)。第2列は重回帰式2の回帰係数であり、切片b=−2717.49、b=1.739875、b=0.261201、...、b10=0.734727となっている。第3列は第2列の回帰係数の推定誤差である標準誤差、第4列は重回帰式2の(偏)回帰係数のt検定であるt値、第5列は第4列のt値とt分布とから求めた両側確率のP−値、第6列および第7列は第2列の回帰係数の95%信頼限界の下限値と上限値とを示す。第8列および第9列は各々第6列および第7列と同じである。
【0056】
図7(A)は重回帰分析で用いた放射能カウント値と予測値との相関を示す散布図行列であり、図7(B)は説明のために図7(A)の一部を拡大した散布図行列を示す。図7(A)に示される散布図行列において、(1、1)要素に示されるグラフの横軸は各被験者について55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値であり、縦軸はその放射能カウント値となった人数(度数)である。図7(B)の拡大された(1,1)要素のグラフに示されるように、度数分布はほぼ正規分布となっていることがわかる。
【0057】
図7(A)に示される散布図行列において、(2,2)要素から(10,10)要素の各対角要素に示される各グラフにおいて、横軸は、上記要素の順に各被験者について測定された1st.SPECT中における第1フレームから第9フレームの脳内放射能カウント値であり、縦軸はその人数(度数)である。例えば、図7(B)の拡大された(2,2)要素のグラフに示されるように、当該要素は薬剤の第1回投与後1.35分(81.37s)経過時フレーム(第1フレーム)における脳内放射能カウント値(横軸)とその人数(縦軸)とを示す。(2、2)要素から(10,10)要素の各対角要素のグラフに示されるように、いずれも度数分布はほぼ正規分布となっていることがわかる。
【0058】
図7(A)に示される散布図行列において、(11,11)要素に示されるグラフの横軸は各被験者について予め測定された第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血されたサンプルの放射能カウント値であり、縦軸はその放射能カウント値となった人数(度数)である。度数分布はほぼ正規分布となっていることがわかる。
【0059】
図7(A)に示される散布図行列において、(1,2)要素に示されるグラフは各被験者について55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値(説明変数xの値。縦軸)と各被験者について測定された1st.SPECT中における第1フレームの脳内放射能カウント値(横軸)との相関を示す。拡大された図7(B)の(1,2)要素を参照されたい。同様に、(1,3)要素から(1,10)要素に示されるグラフは、上記要素の順に、各被験者について測定された55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値(縦軸。各要素に共通)と各被験者について測定された1st.SPECT中における第2フレームから第9フレームの脳内放射能カウント値(各要素の横軸)との相関を示す。最後の(1,11)要素に示されるグラフは各被験者について測定された55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値(縦軸)と各被験者について予め測定された第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血されたサンプルの放射能カウント値(横軸)との相関を示す。いずれも良い相関を示している。
【0060】
図7(A)に示される散布図行列において、(2,3)要素から(2,10)要素に示されるグラフは、上記要素の順に、各被験者について測定された薬剤の第1回投与後1.35分(81.37s)経過時フレーム(第1フレーム)における脳内放射能カウント値(縦軸。各要素に共通)と各被験者について測定された1st.SPECT中における第2フレームから第9フレームの脳内放射能カウント値(各要素の横軸)との相関を示す。最後の(2,11)要素に示されるグラフは各被験者について測定された薬剤の第1回投与後1.35分(81.37s)経過時フレーム(第1フレーム)における脳内放射能カウント値(縦軸)と各被験者について予め測定された第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血されたサンプルの放射能カウント値(横軸)との相関を示す。いずれも良い相関を示している。以下、図7(A)に示される散布図行列における(3,4)要素から(3,11)要素、(4,5)要素から(4,11)要素等も上記と同様であるため、説明は省略する。図7(A)に示される散布図行列の下三角要素は上述した上三角要素における縦軸と横軸とを入れ替えた表示となっているため、説明は省略する。
【0061】
図8は、推定部23により推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値(予測値)と観測値との比較を示す。図8で横軸は、推定部23が重回帰式2を用いて推定した対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値、縦軸は同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値(観測値)である。図8に示されるように、両者は非常に良い相関を示している。従って、重回帰式取得部21により得られた上記回帰係数を有する重回帰式2は、MS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を十分に精度よく推定(予測)することができることがわかる。このため、侵襲性を伴うMS法における6分間持続動脈採血は省略可能であるということが検証されたものと考えられる。
【0062】
図9は、図8の縦軸(観測値)と横軸(予測値)との差(残差)の分布を示す。図9で横軸は残差の放射能カウント値、縦軸はその度数である。参考のために正規分布を重ねて示した(原図では赤色の曲線)。一部の度数を除き、全体として残差0を平均とする正規分布に近いことがわかる。
【0063】
図10は、図8に示された観測値の分布を示す。図10で、横軸は被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値、縦軸は当該放射能カウント値となった被験者の数(度数)である。図9に示されるように、観測値の分布はほぼ正規分布となっていることがわかる。
【0064】
図11は、78症例についての重回帰分析の検討を行った結果を示す。図11の右上の表において、データ数(観測数)、重相関係数R、決定係数R、標準誤差(Y評価値の標準誤差)および自由度修正済み決定係数に関しては図6の左上の表と同じであるため説明は省略する。図11の右上の表ではこれらに加えて、ダービン・ワトソン比を示す。ダービン・ワトソン比は2に近いため、残差を時系列としてみた場合に相関はなく、ランダムであるといえる。図11の下の表(回帰係数の有意性の検定と信頼区間)において、第1列は図6の第1列と同様に、第1列の「定数項」、「静脈」の下の81.37は重回帰式2の説明変数xの値であり、以下244.11から1383.28は各々説明変数x(i=3〜10)の脳内放射能カウント値である(x〜x10で9フレーム分)。以下同様に、第2列は図6の第2列と同じく重回帰式2の(偏)回帰係数であり、第3列は第2列の(偏)回帰係数の推定誤差である標準誤差、第4列はデータを標準化して分析を行った場合の標準回帰係数、第5列は重回帰式2の(偏)回帰係数のt検定であるt値、第6列は第5列のt値とt分布とから求めた両側確率のP値、第7列は両側検定で危険率を5%とした場合のt値であるt(0.975)、第8列および第9列は第2列の(偏)回帰係数の95%信頼限界の下限値と上限値とを示す。図11はモノクロとなっているため判別できないが、P値(対応する説明変数が0となる確率)が小さいもの(第1列の説明変数が、静脈(x)、406.85(x)、1057.8(x)、1220.54(x)および1383.28(x10)であるもの)は赤く表示されている。
【0065】
図12は、図11でP値が小さいもの、言い換えれば予測値に影響を与える確率が高い5個の説明変数(上記x、x、x、xおよびx10)を取り出して、78症例についての重回帰分析の検討を行った結果を示す。図12の左上の表に示されるように、データ数は78であり、重相関係数R=0.924422となり図11の重相関係数Rよりやや低くなったが、重回帰式2の当てはまりの良さにさほど変化はないことがわかる。決定係数R=0.854555となり図11の決定係数Rよりやや低くなったが、それでも実測値の変動の内、約85%は重回帰式2で説明できることがわかる。自由度修正済み決定係数=0.844455となり図11の自由度修正済み決定係数よりやや低くなったが、説明変数の影響を割り引いて考えた場合、実測値の変動の内、約85%は重回帰式2で説明できることがわかる。標準誤差=3186.457となり図11の標準誤差よりやや大きくなった。ダービン・ワトソン比は図11の検討結果よりやや2より大きくなったが2に近いため、残差を時系列としてみた場合に相関はなく、ランダムであるといえる。
【0066】
図12の中段の表は分散分析表を示す。当該分散分析表に示されるように、回帰直線に従う変動の行(回帰)と従わない変動の行(残差)とに分け、回帰の行で、偏差平方和(4295268853)は重回帰式2の目的変数yの平均値からの偏差の二乗和を表し、この値を自由度(5)で割った値が不偏分散(859053770.5)となる。残差の行で、偏差平方和(731052441.5)は残差側の偏差の二乗和を表し、この値を自由度(72)で割った値が不偏分散(10153506.13)となる。両者の不偏分散の比がF値(観測された分散比)=84.60661となる。F値がFの境界値(F(0.95)。5%水準の値)=2.341828より大きいことから、回帰係数の効果は有意であることがわかる。P値は1%といった棄却域と比較して十分小さいため、1%水準で有意である。
【0067】
図12の下段の表は、図11の下の表と項目はほぼ同様であり、第1列は上述のように図11でP値が小さい説明変数(x、x、x、xおよびx10)を取り出してある。第2列は重回帰式2の(偏)回帰係数であり、第3列は第2列の(偏)回帰係数の推定誤差である標準誤差、第4列はデータを標準化して分析を行った場合の標準回帰係数、第5列は第2列の(偏)回帰係数の分散比であるF値である。具体的には、F値は第2列の(偏)回帰係数を第3列の標準誤差で割った値の2乗となる。図12の右上の表に示されるように、変数選択の方法は説明変数が0から出発して順次説明変数を増やしていく変数増加法を用いた。F値の選択基準値=2と示されるように、重回帰式2を作成しつつ、各(偏)回帰係数のF値が2以上の説明変数を取り込んだ。図12の下段の表のF値の列に示されるように、説明変数x、x、x、xおよびx10のF値はすべて2より大きくなった。このため、図12の右上の表の選択された変数の数に示されるように説明変数は5個(静脈採血による1個xと1st.SPECT中における対応フレームの脳内放射能カウント値による4個x、x、xおよびx10)選択された。
【0068】
図13(A)は、図12で選択された説明変数(x、x、x、xおよびx10)を使用した重回帰分析で用いた放射能カウント値と予測値との相関を示す散布図行列であり、図13(B)は説明のために図13(A)の一部を拡大した散布図行列を示す。図13(A)に示される散布図行列において、(1、1)要素に示されるグラフの横軸は各被験者について55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値であり、縦軸はその放射能カウント値となった人数(度数)である。図13(B)の拡大された(1,1)要素に示されるように、度数分布はほぼ正規分布となっていることがわかる。
【0069】
図13(A)に示される散布図行列において、(2,2)要素から(5,5)要素の各対角要素に示される各グラフにおいて、横軸は、上記要素の順に各被験者について測定された1st.SPECT中における上記説明変数x、x、xおよびx10に対応する各フレーム(第3、第7、第8および第9フレーム)の脳内放射能カウント値であり、縦軸はその人数(度数)である。例えば、図13(B)の拡大された(2,2)要素のグラフに示されるように、当該要素は薬剤の第1回投与後406.85分経過時フレーム(第3フレーム)における脳内放射能カウント値(横軸)とその人数(縦軸)とを示す。(2、2)要素から(5,5)要素の各対角要素のグラフに示されるように、度数分布はいずれもほぼ正規分布となっていることがわかる。
【0070】
図13(A)に示される散布図行列において、(6,6)要素に示されるグラフの横軸は各被験者について予め測定された第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血されたサンプルの放射能カウント値であり、縦軸はその放射能カウント値となった人数(度数)である。度数分布はほぼ正規分布となっていることがわかる。
【0071】
図13(A)に示される散布図行列において、(1,2)要素に示されるグラフは各被験者について55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値(説明変数xの値。縦軸)と各被験者について測定された1st.SPECT中における第3フレームの脳内放射能カウント値(横軸)との相関を示す。拡大された図13(B)の(1,2)要素を参照されたい。同様に、(1,3)要素から(1,5)要素に示されるグラフは、上記要素の順に、各被験者について測定された55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値(縦軸。各要素に共通)と各被験者について測定された1st.SPECT中における第7フレーム、第8フレームおよび第9フレームの脳内放射能カウント値(各横軸)との相関を示す。最後の(1,6)要素に示されるグラフは各被験者について測定された55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値(縦軸)と各被験者について予め測定された第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血されたサンプルの放射能カウント値(横軸)との相関を示す。いずれも良い相関を示している。
【0072】
図13(A)に示される散布図行列において、(2,3)要素から(2,5)要素に示されるグラフは、上記要素の順に、各被験者について測定された薬剤の第1回投与後6.75分(406.85s)経過時フレーム(第3フレーム)における脳内放射能カウント値(縦軸。各要素に共通)と各被験者について測定された1st.SPECT中における第7フレーム、第8フレームおよび第9フレームの脳内放射能カウント値(各横軸)との相関を示す。最後の(2,6)要素に示されるグラフは各被験者について測定された薬剤の第1回投与後6.75分(406.85s)経過時フレーム(第3フレーム)における脳内放射能カウント値(縦軸)と各被験者について予め測定された第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血されたサンプルの放射能カウント値(横軸)との相関を示す。いずれも良い相関を示している。以下、図13(A)に示される散布図行列における(3,4)要素から(3,6)要素、(4,5)要素から(4,6)要素等も上記と同様であるため、説明は省略する。図13(A)に示される散布図行列の下三角要素は上述した上三角要素における縦軸と横軸とを入れ替えた表示となっているため、説明は省略する。
【0073】
図14は、図12で選択された説明変数(x、x、x、xおよびx10)を使用して推定部23により推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値(予測値)と観測値との比較を示す。図14で横軸は、推定部23が重回帰式2を用いて推定した対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値、縦軸は同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値(観測値)である。図14に示されるように、両者は非常に良い相関を示している。従って、重回帰式取得部21により得られた上記説明変数(x、x、x、xおよびx10)に対応する回帰係数を有する重回帰式2は、MS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を十分に推定(予測)することができることがわかる。このため、侵襲性を伴うMS法における6分間持続動脈採血は省略可能であるということが検証されたものと考えられる。
【0074】
図15は、図14の縦軸(観測値)と横軸(予測値)との差(残差)の分布を示す。図15で横軸は残差の放射能カウント値、縦軸はその度数である。参考のために正規分布を重ねて示した(原図では赤色の曲線)。一部の度数を除き、全体として残差0を平均とする正規分布に近いことがわかる。
【0075】
図16は、図14に示された観測値の分布を示す。図16で、横軸は被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値、縦軸は当該放射能カウント値となった被験者の数(度数)である。図16に示されるように、観測値の分布はほぼ正規分布となっていることがわかる。
【0076】
図17は、図14に示された予測値の分布を示す。図17で、横軸は被験者について図12で選択された説明変数(x、x、x、xおよびx10)を使用して推定部23により推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値(予測値)、縦軸は当該放射能カウント値となった被験者の数(度数)である。図17に示されるように、予測値の分布はほぼ正規分布となっていることがわかる。
【0077】
以上より、本発明の実施例1によれば、一点静脈採血による低侵襲的な手法により得られた放射能カウント値を用いて脳血流量を算出することができる。123I−IMP脳血流SPECTを用いた実施例1における分割投与法のプロトコールでは、まず、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図1(B)で示される1st.SPECT)が施行される。次に、8分経過後にDiamox(登録商標)を静注する。24.5分経過後に、123I−IMP(111MBq)の第2回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図1(B)で示される2nd.SPECT)が施行される。55分経過後に薬剤投与の反対側の手から静脈採血を行い、採血した静脈血から放射能カウント値を測定する。以上のように、使用した患者因子は脳内SPECT変化量および123I−IMP投与55分時点における一点静脈採血の放射能カウントであり、全体として1時間以内で検査は終了する。即ち、検査は低侵襲的で且つ簡便な手法で行うことができる。
【0078】
記録装置10には本発明で用いる重回帰式2を求めるためのデータが記録されている。脳内放射能カウント値記録部12には、1st.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値が記録されている。動脈血中放射能カウント値記録部14には、上記被験者についてMS法における第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値が記録されている。本発明の脳血流量算出プログラムで用いる重回帰式2を得るために、予め測定された第1回目の123I−IMP静注から6分間の持続動脈採血結果を用いるが、一度重回帰式2を得ておけば、図1のプロトコールに示されるように本発明の脳血流量算出プログラムを実行する際に6分間の持続動脈採血による測定結果は必要ない。撮像結果は脳内放射能カウント値記録部12に記録した。予測のための8分経過後の1点動脈採血は76例、55分経過後の1点静脈採血は68例に対して施行し、各サンプルの放射能カウント値は適宜記録装置10内に記録してある。
【0079】
重回帰式取得部21は、上記プロトコールについて説明した、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値と脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の脳内放射能カウント値とを説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。一般に、重回帰式はyを目的変数、xを説明変数、bを回帰係数(bを切片)とすると、上述した重回帰式2で与えられる。重回帰式取得部21は、例えば説明変数xを55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値とし、説明変数x(i=2〜k)を脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の(例えば上記9フレーム分。ここでk=10)脳内放射能カウント値とし、目的変数yを動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値として、脳内放射能カウント値記録部12および動脈血中放射能カウント値記録部14に記録されたデータについて重回帰分析を行う。
【0080】
脳内放射能カウント値入力部22は、1st.SPECT中の所定の期間における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する。ここで、対象となる被験者とは、侵襲的な6分間持続動脈採血を行わず、代わりに55分経過後の一点静脈採血による低侵襲的な手法により得られた放射能カウント値を用いて脳血流量を算出する対象となる被験者の意味である。所定時間経過毎とは、例えば上述した9フレームにおける各経過時間毎とすればよい。
【0081】
推定部23は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された上記対象となる被験者の脳内放射能カウント値を重回帰式取得部21により取得された重回帰式2(上記切片bおよびb〜b10の回帰係数を有する重回帰式2)に適用することにより、対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する。発明者らは、比較のために対象となる被験者についてMS法における6分間持続動脈採血も一点静脈採血と共に行い、動脈血中の放射能カウント値を測定しておいた。対象となる複数の被験者について推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値の分布と、対象となる複数の被験者について実際に6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値の分布とは良く相関していることがわかった。重相関係数R=0.828219となり両者には非常に良い相関が認められるため、重回帰式2を用いた推定部23による推定は臨床応用に適することがわかる。即ち、重回帰式取得部21により得られた上記回帰係数を有する重回帰式2は、MS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を十分に精度よく推定(予測)することができるものである。従って、当該重回帰式に用いられた上記各説明変数の採り方は単なる一選択例ではなく、上記推定(予測)を顕著に成功させることができた本質的な選択といえる。
【0082】
脳血流量算出部24は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された脳内放射能カウント値と推定部23により推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する。背景技術で説明した式1Eで、A’・(5R+D)はt分間に得られた動脈血(R・t(ml))の全放射能A、即ち持続動脈採血した場合の動脈血中の放射能カウント値となる。従って、当該項に推定部23により推定された動脈血中の放射能カウント値を用いればよい。S30・(H/H30)はIMP静注後t=5分の脳組織内放射能Cbであるため、脳内放射能カウント値入力部22により入力された脳内放射能カウント値を用いればよい。採血速度R=1.03(ml/min)、オクタノール抽出率N=0.8、クロスキャリブレーションファクタCCF=0.00051は、背景技術の値をそのまま用いてもよく、適宜設定し直してもよい。この結果、脳血流量算出部24は、対象となる被験者についての脳血流量Fを算出することができる。以上より、本発明の実施例1によれば、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を求めるに際し、一点静脈採血による低侵襲的で且つ簡便な手法により得られた放射能カウント値を用いて、精度の高い脳血流量を求めることができる脳血流量算出プログラム等を提供することができる。
【実施例2】
【0083】
実施例2では一点動脈採血による低侵襲的な手法により得られた放射能カウント値を用いて脳血流量を算出する場合について説明する。図18(A)、(B)は123I−IMP脳血流SPECTを用いた本発明の実施例2における分割投与法のプロトコールを示す。図18(A)に示されるように、まず、123I−IMP(111MBq)の第1回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図18(B)に示される1st.SPECT)が施行される。次に、8分経過後にDiamox(登録商標)を静注する。この8分経過後(所定時間経過後)に、薬剤(123I−IMP(111MBq))投与の反対側の手(例えば左手)から一点動脈採血を行う。採血した動脈血から放射能カウント値を測定する。24.5分経過後に、123I−IMP(111MBq)の第2回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図18(B)に示される2nd.SPECT)が施行される。図18(B)では、図1(B)と同様に、この時の第1回目の123I−IMP静注による残存放射能(バックグランド)が点線で示されている。以上のように、使用した患者因子は脳内SPECT変化量および123I−IMP投与8分経過時点における一点動脈採血の放射能カウントであり、全体として1時間以内で検査は終了する。即ち、検査は低侵襲的で且つ簡便な手法で行うことができる。
【0084】
撮像条件および撮像対象は実施例1と同様であるため、説明は省略する。撮像結果は実施例1と同様に、脳内放射能カウント値記録部12に記録した。重回帰式2を得るための6分間の持続動脈採血データは、実施例1で動脈血中放射能カウント値記録部14に記録したデータを用いた。あるいは、実施例1と同様に全例に対して施行し、動脈血中放射能カウント値記録部14に改めて記録してもよい。予測のための8分経過後の1点動脈採血は76例に対して施行し、各サンプルの放射能カウント値は適宜記録装置10内に記録してある。これらの人数は一例であり、本発明の脳血流量算出プログラムの適用に際し、これらの人数に限定されるものではない。
【0085】
実施例2においても実施例1とほぼ同様に、図2の脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20内に示される重回帰式取得部21等の各機能を用いることができる。図2の重回帰式取得部21は、図18で示されるプロトコールについて説明した、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における8分経過後(所定時間経過後)に一点動脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値と脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の脳内放射能カウント値とを説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。当該重回帰式の形は、実施例1における重回帰式2と同様であるが、各回帰係数bは異なってくる。重回帰式取得部21は、例えば説明変数xを8分経過後に一点動脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値とし、説明変数x(i=2〜k)を脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の(例えば上記9フレーム分。ここでk=10)脳内放射能カウント値とし、目的変数yを動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値として、脳内放射能カウント値記録部12および動脈血中放射能カウント値記録部14に記録されたデータについて重回帰分析を行う。図19は実施例2における重回帰分析を行って得られた回帰係数を示す。図19に示されるように、回帰係数b(切片)は−538.821、説明変数x(8分経過後の一点動脈採血)に対応する回帰係数bは1.803811、説明変数x(1.35分経過後の脳内放射能カウント値)に対応する回帰係数bは4.571971、・・・、説明変数x10(22.95分経過後の脳内放射能カウント値)に対応する回帰係数b10は−0.12704等と得られた。
【0086】
図2の脳内放射能カウント値入力部22は、実施例1と同様に1st.SPECT中の所定の期間における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する。ここで、対象となる被験者とは、侵襲的な6分間持続動脈採血を行わず、代わりに8分経過後の一点動脈採血による低侵襲的な手法により得られた放射能カウント値を用いて脳血流量を算出する対象となる被験者の意味である。所定時間経過毎とは、例えば上述した9フレームにおける各経過時間毎とすればよい。
【0087】
続いて、図2の推定部23は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された上記対象となる被験者の脳内放射能カウント値を重回帰式取得部21により取得された重回帰式2(上記切片bおよびb〜b10の回帰係数を有する重回帰式2)に適用することにより、対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する。図20(A)、(B)は実施例2における推定部23により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値(横軸)と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値(縦軸)との比較(相関)を示す。発明者らは、比較のために対象となる被験者についてMS法における6分間持続動脈採血も一点静脈採血と共に行い、動脈血中の放射能カウント値を測定しておいた。図20(A)で、正方形(原図では赤正方形)は対象となる複数の被験者について推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値の分布であり、菱形(原図では紫菱形)は対象となる複数の被験者について実際に6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値の分布である。図20(A)に示されるように、両者の分布は良く相関していることがわかる。図20(B)の回帰統計に示されるように、例えば重相関係数R=0.852719となり両者には非常に良い相関が認められるため、重回帰式2を用いた推定部23による推定は臨床応用に適することがわかる。即ち、重回帰式取得部21により得られた上記回帰係数を有する重回帰式2は、MS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を十分に推定(予測)することができるものである。従って、当該重回帰式2に用いられた上記各説明変数の採り方は単なる一選択例ではなく、上記推定(予測)を顕著に成功させることができた本質的な選択といえる。
【0088】
続いて、図2の脳血流量算出部24は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された脳内放射能カウント値と推定部23により推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する。脳血流量の算出方法は実施例1と同様に式1Eに基づき算出するため、説明は省略する。上述の説明では1st.SPECT中の被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値は、実測値を用いた。しかし、薬剤の第2回投与時に測定された脳内放射能カウント値を基準とした相対値を用いることもできる。この点は実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0089】
以上より、本発明の実施例2によれば、一点動脈採血による低侵襲的な手法により得られた放射能カウント値を用いて脳血流量を算出することができる。123I−IMP脳血流SPECTを用いた本発明の実施例2における分割投与法のプロトコールでは、まず、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回目静注を行う。ダイナミックSPECT(図18(B)に示される1st.SPECT)が施行される。次に、8分経過後にDiamox(登録商標)を静注する。この8分経過後(所定時間経過後)に、薬剤(123I−IMP(111MBq))投与の反対側の手(例えば右手から投与した場合は左手)から一点動脈採血を行う。採血した動脈血から放射能カウント値を測定する。24.5分経過後に、123I−IMP(111MBq)の第2回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図18(B)に示される2nd.SPECT)が施行される。以上のように、使用した患者因子は脳内SPECT変化量および123I−IMP投与8分時点における一点動脈採血の放射能カウントであり、全体として1時間以内で検査は終了する。即ち、検査は低侵襲的で且つ簡便な手法で行うことができる。
【0090】
実施例2においても実施例1とほぼ同様に、図2の脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20内に示される重回帰式取得部21等の各機能を用いることができる。重回帰式取得部21は、上記プロトコールについて説明した、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における8分経過後(所定時間経過後)に一点動脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値と脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の脳内放射能カウント値とを説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。当該重回帰式の形は、実施例1における重回帰式2と同様であるが、各回帰係数bは異なってくる。重回帰式取得部21は、例えば説明変数xを8分経過後に一点動脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値とし、説明変数x(i=2〜k)を脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の(例えば上記9フレーム分。ここでk=10)脳内放射能カウント値とし、目的変数yを動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値として、脳内放射能カウント値記録部12および動脈血中放射能カウント値記録部14に記録されたデータについて重回帰分析を行う。
【0091】
推定部23は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された上記対象となる被験者の脳内放射能カウント値を重回帰式取得部21により取得された重回帰式2(上記切片bおよびb〜b10の回帰係数を有する重回帰式2)に適用することにより、対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する。推定部23により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値との比較によれば、両者の分布は良く相関していることがわかる。重相関係数R=0.852719となり両者には非常に良い相関が認められるため、重回帰式2を用いた推定部23による推定は臨床応用に適することがわかる。以上より、実施例2における自重回帰式取得部21により得られた上記回帰係数を有する重回帰式2は、実施例1と同様に、MS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を十分に推定(予測)することができるものである。従って、当該重回帰式2に用いられた上記各説明変数の採り方は単なる一選択例ではなく、上記推定(予測)を顕著に成功させることができた本質的な選択といえる。
【0092】
脳血流量算出部24は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された脳内放射能カウント値と推定部23により推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する。脳血流量の算出方法は実施例1と同様に式1Eに基づき算出するため、説明は省略する。上述の説明では1st.SPECT中の被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値は、実測値を用いた。しかし、薬剤の第2回投与時に測定された脳内放射能カウント値を基準とした相対値を用いることもできる。この点は実施例1と同様であるため、説明は省略する。以上より、本発明の実施例2によれば、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を求めるに際し、一点動脈採血による低侵襲的で且つ簡便な手法により得られた放射能カウント値を用いて、精度の高い脳血流量を求めることができる脳血流量算出プログラム等を提供することができる。
【実施例3】
【0093】
実施例3では非採血という非侵襲的な手法により得られた放射能カウント値のみを用いて脳血流量を算出する場合について説明する。図21(A)、(B)は123I−IMP脳血流SPECTを用いた本発明の実施例3における分割投与法のプロトコールを示す。図21に示されるように、まず、123I−IMP(111MBq)の第1回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図21(B)に示される1st.SPECT)が施行される。次に、8分経過後にDiamox(登録商標)を静注する。24.5分経過後に、123I−IMP(111MBq)の第2回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図21(B)に示される2nd.SPECT)が施行される。図21(B)では、図1(B)と同様に、この時の第1回目の123I−IMP静注による残存放射能(バックグランド)が点線で示されている。以上のように、使用した患者因子は脳内SPECT変化量のみであり、全体として1時間以内で検査は終了する。即ち、検査は非採血であるため非侵襲的であり且つ簡便な手法で行うことができる。
【0094】
撮像条件および撮像対象は実施例1および2と同様であるため、説明は省略する。撮像結果は実施例1および2と同様に脳内放射能カウント値記録部12に記録した。重回帰式2を得るための6分間の持続動脈採血は、実施例1で動脈血中放射能カウント値記録部14に記録したデータを用いた。あるいは、実施例1と同様に全例に対して施行し、動脈血中放射能カウント値記録部14に改めて記録してもよい。
【0095】
実施例3においても実施例1および2とほぼ同様に、図2の脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20内に示される重回帰式取得部21等の各機能を用いることができる。図2の重回帰式取得部21は、図21で示されるプロトコールについて説明した、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の脳内放射能カウント値を説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。当該重回帰式の形は、実施例1および2における重回帰式2と同様であるが、各回帰係数bは異なってくる。重回帰式取得部21は、説明変数x(i=1〜k−1)を脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の(例えば上記9フレーム分。ここでk=10)脳内放射能カウント値とし、目的変数yを動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値として、脳内放射能カウント値記録部12および動脈血中放射能カウント値記録部14に記録されたデータについて重回帰分析を行う。
【0096】
図2の脳内放射能カウント値入力部22は、実施例1および2と同様に1st.SPECT中の所定の期間における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する。ここで、対象となる被験者とは、侵襲的な6分間持続動脈採血を行わず、脳内放射能カウント値入力部22により入力された放射能カウント値を用いて脳血流量を算出する対象となる被験者の意味である。所定時間経過毎とは、例えば上述した9フレームにおける各経過時間毎とすればよい。
【0097】
続いて、図2の推定部23は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された上記対象となる被験者の脳内放射能カウント値を重回帰式取得部21により取得された重回帰式2(上記b〜bの回帰係数を有する重回帰式2)に適用することにより、対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する。図22は、実施例3における推定部23により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値(縦軸)と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値(横軸)との比較(相関)を示す。発明者らは、比較のために対象となる被験者についてMS法における6分間持続動脈採血も行い、動脈血中の放射能カウント値を測定しておいた。図22(A)で、正方形(原図では赤正方形)は対象となる複数の被験者について推定(予測)された動脈血中の放射能カウント値の分布であり、菱形(原図では紫菱形)は対象となる複数の被験者について実際に6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値の分布である。図22に示されるように、重相関係数R=0.7529となり、両者には非常に良い相関が認められるため、重回帰式2を用いた推定部23による推定は臨床応用に適することがわかる。以上より、重回帰式取得部21により得られた上記回帰係数を有する重回帰式2は、MS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を十分に推定(予測)することができるものである。従って、当該重回帰式2に用いられた上記各説明変数の採り方は単なる一選択例ではなく、上記推定(予測)を顕著に成功させることができた本質的な選択といえる。
【0098】
続いて、図2の脳血流量算出部24は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された脳内放射能カウント値と推定部23により推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する。脳血流量の算出方法は実施例1および2と同様に式1に基づき算出するため、説明は省略する。上述の説明では1st.SPECT中の被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値は、実測値を用いた。しかし、薬剤の第2回投与時に測定された脳内放射能カウント値を基準とした相対値を用いることもできる。この点は実施例1および2と同様であるため、説明は省略する。
【0099】
以上より、本発明の実施例3によれば、非採血という非侵襲的な手法により得られた放射能カウント値のみを用いて脳血流量を算出することができる。123I−IMP脳血流SPECTを用いた本発明の実施例3における分割投与法のプロトコールでは、まず、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図21(B)に示される1st.SPECT)が施行される。次に、8分経過後にDiamox(登録商標)を静注する。24.5分経過後に、123I−IMP(111MBq)の第2回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図21(B)に示される2nd.SPECT)が施行される。以上のように、使用した患者因子は脳内SPECT変化量のみであり、全体として1時間以内で検査は終了する。即ち、検査は非採血であるため非侵襲的であり且つ簡便な手法で行うことができる。
【0100】
実施例3においても実施例1および2とほぼ同様に、図2の脳血流量算出プログラムの機能ブロック図20内に示される重回帰式取得部21等の各機能を用いることができる。重回帰式取得部21は、上記プロトコールについて説明した、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の脳内放射能カウント値を説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する。当該重回帰式の形は、実施例1および2における重回帰式2と同様であるが、各回帰係数bは異なってくる。重回帰式取得部21は、例えば説明変数x(i=1〜k−1)を脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の(例えば上記9フレーム分。ここでk=10)脳内放射能カウント値とし、目的変数yを動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値として、脳内放射能カウント値記録部12および動脈血中放射能カウント値記録部14に記録されたデータについて重回帰分析を行う。
【0101】
推定部23は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された上記対象となる被験者の脳内放射能カウント値を重回帰式取得部21により取得された重回帰式2(上記b〜bの回帰係数を有する重回帰式2)に適用することにより、対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する。推定部23により推定(予測)された対象となる被験者についてのMS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値と、同被験者について実際にMS法における6分間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値との比較によれば、両者の分布は良く相関していることがわかる。重相関係数R=0.7529となり両者には非常に良い相関が認められるため、重回帰式2を用いた推定部23による推定は臨床応用に適することがわかる。以上より、実施例3における自重回帰式取得部21により得られた上記回帰係数を有する重回帰式2は、実施例1と同様に、MS法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を十分に推定(予測)することができるものである。従って、当該重回帰式2に用いられた上記各説明変数の採り方は単なる一選択例ではなく、上記推定(予測)を顕著に成功させることができた本質的な選択といえる。
【0102】
脳血流量算出部24は、脳内放射能カウント値入力部22により入力された脳内放射能カウント値と推定部23により推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する。脳血流量の算出方法は実施例1と同様に式1Eに基づき算出するため、説明は省略する。上述の説明では1st.SPECT中の被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値は、実測値を用いた。しかし、薬剤の第2回投与時に測定された脳内放射能カウント値を基準とした相対値を用いることもできる。この点は実施例1および2と同様であるため、説明は省略する。以上より、本発明の実施例3によれば、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を求めるに際し、非採血という非侵襲的で且つ簡便な手法により得られた放射能カウント値を用いて、精度の高い脳血流量を求めることができる脳血流量算出プログラム等を提供することができる。
【実施例4】
【0103】
実施例4では、上述した脳血流量算出プログラムと、脳血流量算出方法とについてフローチャートおよび表示画像を用いて説明する。便宜上、実施例1(1点静脈採血)の脳血流量算出プログラムを例にとり挙げる。他の実施例2および3についても同様に説明できるため、説明は省略する。
【0104】
図23は脳血流量算出プログラムおよび脳血流量算出方法の一例の動作をフローチャートで示す。図24ないし32は脳血流量算出プログラムの動作、出力等を説明するためのディスプレイ等の表示装置2(後述)に表示される表示画像を示す。以下の図24ないし32の説明において、同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため、重複する説明は省略する。以下、図23に示されるフローチャートと図24ないし32に示される表示画像とを適宜用いながら説明する。図23に示されるように、まず、上述したプロトコール(図1)について説明した、薬剤(123I−IMP(111MBq))の第1回投与後における55分経過後(所定時間経過後)に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値と脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の脳内放射能カウント値とを説明変数とし、動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する(重回帰式取得ステップ。ステップS10)。重回帰式は上述した重回帰式2で与えられる。例えば説明変数xを55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値とし、説明変数x(i=2〜k)を脳内放射能カウント値記録部12に記録された複数の(例えば上記9フレーム分。ここでk=10)脳内放射能カウント値とし、目的変数yを動脈血中放射能カウント値記録部14に記録された動脈血中の放射能カウント値として、脳内放射能カウント値記録部12および動脈血中放射能カウント値記録部14に記録されたデータについて重回帰分析を行う。
【0105】
次に、図23に示されるように、1st.SPECT中における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する(脳内放射能カウント値入力ステップ。ステップS12)。図24は、対象となる被験者のデータを選択する際の表示画像を示す。図24(A)は、対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を記録した検査フォルダを示す。図24(A)に示されるように、検査フォルダ内には、被験者毎に脳内放射能カウント値を記録したファイル(例えば、ファイル名がP001等)がある。当該ファイルには、撮像器のカメラを回転させながら360゜収集した3次元の生の脳内放射能カウントデータであるダイナミックプロジェクションデータ(収集画像)が記録されている。カメラは(顔)正面からスタートして、ある度数ステップで回転する。仮に2検出器で180゜を2分で回転(1フレーム分)すれば、(顔)正面にはカメラが2分毎に来ることになる。例えば20フレーム撮像すると、2分、4分、6分、、、と2分経過毎(所定時間経過毎)に被験者の正面収集画像のみを取り出すように設定することができる。図24(A)に示されるように、マウス等の入力操作部149(後述)で所望の被験者の収集画像を記録したファイル(例えば、ファイル名P001)をクリックして選択する。この結果、図24(B)に示されるように選択されたファイル名40および入力データ形式等が表示される。ここで、OKボタン41をマウス等の入力操作部149でクリックすると脳血流量算出プログラムが起動され、選択された被験者の例えば正面収集画像が入力される。
【0106】
続いて、図23に示されるように、脳内放射能カウント値入力ステップ(ステップS12)で入力された脳内放射能カウント値に基づく収集画像を表示する(収集画像表示ステップ。ステップS14)。これは図2の機能ブロック図20内に示される収集画像表示部32(収集画像表示手段)の機能に相当する。図25は、脳血流量算出プログラムが起動された直後の表示画像を示す。図25(A)は、重回帰式取得ステップ(ステップS10)で取得した重回帰式2の回帰係数等を示す。図25(A)の欄50に示されるように、f1で示される列は重回帰式2の回帰係数bに対応し、その値は−6.18238と表示され、その下に経過時間が1.35と表示されている。f1で示される列の右側のf2で示される列は重回帰式2の回帰係数bに対応し、その値は9.43639と表示され、その下に経過時間が4.05と表示されている。以下同様であるため説明は省略する。図25(B)は、収集画像表示ステップ(ステップS14)で作成され表示された収集画像51を示す。
【0107】
図23に示されるように、収集画像表示ステップ(ステップS14)で表示された収集画像51上に所定の形状を設定させ、該所定の形状内に所定の閾値に基づくROIを設定する(ROI設定ステップ。ステップS16)。これは図2の機能ブロック図20内に示されるROI設定部33(ROI設定手段)の機能に相当する。図26は、ROIを設定している状態の表示画像を示す。図26に示されるように、ROItype61のボックスの中からマウス等の入力操作部149でクリックすることにより、所定の形状として楕円ROI60を選択させ設定させることができる。ROItype61としては、楕円(Ellipse)の他に多角形(Poligon)または矩形(Rectamgle)を選択させ設定させることができる。他の形状を用いるように変更することができることは勿論である。図26のE:静脈カウント62(=6977)は、選択された被験者の55分経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値を示す。当該放射能カウント値は、所望のファイルに記録しておき自動的にE:静脈カウント62に表示することもでき、この表示画像中でE:静脈カウント62の欄に手入力することも可能である。図27は、スレショルド(threshold)ROIを設定している状態の表示画像を示す。スレショルド(threshold)ROIは、上述のように設定させたROI60の内部に、必要に応じて定義される。より詳しくは、図27に示されるように閾値レベル(Threshold Level(%))のボックス70をマウス等の入力操作部149でクリックし、ボックス71にキーボード等の入力操作部149から所望の閾値レベル(%)を入力し、GOボタン72をマウス等の入力操作部149でクリックすることにより、スレショルドROIを定義することができる。ここで、所望の閾値レベルの値とは、脳内放射能カウント値の最大値を100%とした場合の所望の閾値の%をいう。この結果、図27の収集画像51に示されるように、定義されたスレショルドROIが網掛けして(脳内放射能カウント値が50%以上の部分に網掛けして)表示される。
【0108】
図23に示されるように、ROI設定ステップ(ステップS16)で設定されたROI60内または任意の領域内について、脳内放射能カウント値入力ステップ(ステップS12)で入力された脳内放射能カウント値に基づく時間・放射能曲線(Time Activity Curve : TAC)を表示する(時間・放射能曲線表示ステップ。ステップS18)。これは図2の機能ブロック図20内に示される時間・放射能曲線表示部34(時間・放射能曲線表示手段)の機能に相当する。図28は時間・放射能曲線の表示画像を示す。図28に示されるように、PLOTボタン80をマウス等の入力操作部149でクリックすると、時間・放射能曲線81が表示される。図29は図28の一部を拡大した表示画像を示す。図29に示されるように、ボックス90内に安静時(1st.SPECT)におけるフレーム番号(図29では6。第1回目の123I−IMP静注から14.85分後)をキーボード等の入力操作部149から入力し、ボックス91内に安静時におけるフレーム番号(図29では9。第1回目の123I−IMP静注から22.95分後)をキーボード等の入力操作部149から入力して、Linear Fitボタン92をマウス等の入力操作部149でクリックすると、上記第6フレームから第9フレームの脳内放射能カウント値に基づく近似直線93が表示される。即ち、ボックス90および91は直線近似範囲を指定するために用いられる。時間・放射能曲線表示部34は、近似直線93を指定された直線近似範囲である上記第6フレームから第9フレームの4点における時間・放射能曲線81を直線回帰することにより求める。近似直線93は図1(B)等で点線により示された残存放射能(バックグランド)に相当する。
【0109】
図23に示されるように、時間・放射能曲線表示ステップ(ステップS18)で表示された時間・放射能曲線81上に所定の範囲を設定させ、該所定の範囲における矢状断面方向の収集画像を表示する(矢状断面方向収集画像表示ステップ。ステップS20)。図30は収集画像を表示した状態の表示画像を示す。これは図2の機能ブロック図20内に示される矢状断面方向収集画像表示部35(矢状断面方向収集画像表示手段)の機能に相当する。矢状断面方向収集画像表示部35は矢状断面方向収集画像を作成する範囲(所定の範囲)を設定させるために、時間・放射能曲線81上の安静時(1st.SPECT)の領域に上記収集画像を作成する範囲の開始位置(直線S1。原図では赤色で示す。)をマウス等の入力操作部149でStartスクロールバー100を左右へ適宜ドラッグすることにより設定させ、終了位置(直線F1。原図では緑色で示す。)をマウス等の入力操作部149でFinスクロールバー101を左右へ適宜ドラッグすることにより設定させる。さらに、矢状断面方向収集画像表示部35は時間・放射能曲線81上の負荷時(2nd.SPECT)の領域に上記収集画像を作成する範囲の開始位置(直線S2。原図では赤色で示す。)をマウス等の入力操作部149でStartスクロールバー100を左右へ適宜ドラッグすることにより設定させ、終了位置(直線F2。原図では緑色で示す。)をマウス等の入力操作部149でFinスクロールバー101を左右へ適宜ドラッグすることにより設定させる。安静時における上記範囲の指定の開始は、例えば時間・放射能曲線81上の安静時の領域をマウス等の入力操作部149でクリックすることにより行うことができる。負荷時における上記範囲の指定の開始も同様である。矢状断面方向収集画像表示部35は、Projectionボタン102がマウス等の入力操作部149によりクリックされると、上述のように設定された安静時における収集画像を作成する範囲(直線S1からF1)の収集画像を作成して図30の符号103で示される安静時収集画像として表示し、上述のように設定された負荷時における収集画像を作成する範囲(直線S2からF2)の収集画像を作成して図30の符号104で示される負荷時収集画像として表示する。ここで、負荷時収集画像104を作成する際、近似直線93により推定された残存放射能(バックグランド)を用いて減算補正を行っている。矢状断面方向収集画像表示部35は、図30に示されるスクロールバー105をマウス等の入力操作部149で適宜左右にドラッグさせることにより、安静時収集画像103を横方向(水平方向)に回転させて表示し、同時に負荷時収集画像104も横方向に回転させて表示することができる。スクロールバー105による収集画像の回転機能は、収集画像のデータの確認のために用いることが好適である。
【0110】
図23に示されるように、矢状断面方向収集画像表示ステップ(ステップS20)で表示された収集画像を用いて所定の範囲を設定させ、当該所定の範囲における画像再構成後の横断面方向の断層像を表示する(再構成後断層像表示ステップ。ステップS22)。図31は断層像を表示した状態の表示画像を示す。これは図2の機能ブロック図20内に示される再構成後断層像表示部36(再構成後断層像表示手段)の機能に相当する。図31に示される安静時収集画像103において、上下(頭頂から小脳まで)の範囲(所定の範囲)をマウス等の入力操作部149を適宜操作させて設定させる。自動的に、負荷時収集画像104においても安静時収集画像103において設定させた範囲と同じ範囲が設定される。次に、図31に示されるReconボタン110をマウス等の入力操作部149によりクリックさせると、再構成後断層像表示部36は、設定させた範囲における安静時収集画像103の画像再構成後の横断面方向の断層像111と、設定させた範囲における負荷時収集画像104の画像再構成後の横断面方向の断層像112とを図31に示されるように表示する。画像再構成方法は既存の逆投影法、高速逐次近似画像構成法(Ordered Subset Expectation Maximization : OSEM)等を用いればよい。図31に示される横断面方向の断層像111および断層像112は横断面方向の輪切図であり、スクロールバー113をマウス等の入力操作部149で適宜左右へドラッグさせることにより、再構成後断層像表示部36は頭頂から小脳までの上下スライスを切り替えて表示すること、即ち、輪切図を上下方向に切り替えて表示することができる。この際、断層像111と112とは同時に切り替えて表示される。スクロールバー113による輪切図を上下方向に切り替えて表示する機能は、所望のスライスを確認するために用いることが好適である。必要に応じて図31に示されるReformatボタン114をマウス等の入力操作部149でクリックさせることにより、断層像111等における前傾方向の角度補正が可能となる。
【0111】
図23に示されるように、脳内放射能カウント値入力ステップ(ステップS12)で入力された対象となる被験者の脳内放射能カウント値を重回帰式取得ステップ(ステップS10)で取得された上記重回帰式2に適用することにより、対象となる被験者についてのmicrosphere法における6分間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する(推定ステップ。ステップS24)。これは図2の機能ブロック図20内に示される推定部23(推定手段)の機能に相当する。
【0112】
続いて、脳内放射能カウント値入力ステップ(ステップS12)で入力された脳内放射能カウント値と推定ステップ(ステップS24)で推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する(脳血流量算出ステップ。ステップS26)。これは図2の機能ブロック図20内に示される脳血流量算出部24(脳血流量算出手段)の機能に相当する。最後に、脳血流量算出ステップ(ステップS26)で算出された脳血流量に基づく脳血流量(Cerebral Blood Flow : CBF)画像を表示する(脳血流量画像表示ステップ。ステップS28)。これは図2の機能ブロック図20内に示される脳血流量画像表示部31(脳血流量画像表示手段)の機能に相当する。図32は脳血流量画像を表示する表示画像を示す。図32に示されるGOボタン120をマウス等の入力操作部149でクリックさせることにより、脳血流量画像表示部31は脳血流量算出部23により算出された脳血流量を用いて、定性的なカウント値に基づく断層像111、112を各々定量的な値に基づく定量画像(CBF画像)121、122へ変換し、表示することができる。図32に示される定量画像121、122が、本発明の脳血流量算出プログラムにより予測された対象となる被験者についての脳血流量を示す画像である。図32に示されるスクロールバー123をマウス等の入力操作部149で適宜左右へドラッグさせることにより、脳血流量画像表示部31は定量画像121、122の上下方向(横断面方向)のスライスを切り替えて表示することができる。
【実施例5】
【0113】
図33は、本発明の脳血流量算出プログラムを実行するコンピュータ1の内部回路140を示すブロック図である。図33に示されるように、CPU141、ROM142、RAM143、画像制御部145、コントローラ146、入力制御部148および外部I/F部150はバス151に接続されている。図33において、上述の本発明の脳血流量算出プログラムは、ROM142、ディスク10またはDVD若しくはCD−ROM147等の記録媒体(脱着可能な記録媒体を含む)に記録されている。ディスク10には、上述した脳内放射能カウント値記録部12、動脈血中放射能カウント値記録部14等を記録しておくことができる。脳血流量算出プログラムは、ROM142からバス151を介し、あるいはディスク10またはDVD若しくはCD−ROM147等の記録媒体からコントローラ146を経由してバス151を介しRAM143へロードされる。画像制御部145は、収集画像表示部32、時間・放射能曲線表示部34、矢状断面方向収集画像表示部36、脳血流量画像表示部31等により表示される種々の表示画像の画像データをVRAM144へ送出する。表示装置2はVRAM144から送出された上記データ等を表示する。VRAM144は表示装置2の一画面分のデータ容量に相当する容量を有している画像メモリである。入力操作部149はコンピュータに入力、指定等を行うためのマウス、キーボード等の入力装置であり、入力制御部148は入力操作部149と接続され入力制御等を行う。外部I/F部150はコンピュータ(CPU)141の外部と接続する際のインタフェース機能を有している。
【0114】
上述のようにコンピュータ(CPU)141が本発明の脳血流量算出プログラムを実行することにより、本発明の目的を達成することができる。脳血流量算出プログラムは上述のようにDVD若しくはCD−ROM147等の記録媒体の形態でコンピュータ(CPU)141に供給することができ、脳血流量算出プログラムを記録したDVD若しくはCD−ROM177等の記録媒体も同様に本発明を構成することになる。脳血流量算出プログラムを記録した記録媒体としては上述された記録媒体の他に、例えばメモリ・カード、メモリ・スティック、光ディスク、FD等を用いることができる。
【実施例6】
【0115】
実施例6では、非侵襲的な手法により得られた放射能カウント値を用いて脳血流量を算出する他の方法について説明する。非侵襲的な手法により得られた放射能カウント値を用いるという点では同じ技術上の意義を有するものである。実施例1の図1(B)、実施例2の図18(B)および実施例3の図21(B)に示されるように、第1回目の123I−IMP静注による残存放射能(バックグランド。点線で示す。)が第2回目の123I−IMP静注による放射能カウント値に加算される。従って、第2回目の123I−IMP静注による放射能カウント値を正しく求めるためには、残存放射能(バックグランド)を引く(差分をとる)必要がある。このため、残存放射能(バックグランド)を精確に推定することが重要となる。
【0116】
図34は123I−IMP脳血流SPECTを用いた従来の分割投与法のプロトコールの問題点を示す。図34に示されるように、まず、123I−IMP(111MBq)の第1回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図34(B)に示される1st.SPECT)が施行される。次に、8分経過後にDiamox(登録商標)を静注する。24.5分経過後に、123I−IMP(111MBq)の第2回目静注を行い、ダイナミックSPECT(図34(B)に示される2nd.SPECT)が施行される。図34(B)では、この時の第1回目の123I−IMP静注による残存放射能(バックグランド)が点線で示されている。図34(B)に示されるように、脳内放射能をy、時間をxとすると、従来は1st.SPECT中における4点から単回帰により求めた回帰式y=ax+bを残存放射脳を表すものと推定していた(単回帰モデル)。しかし、実際には図34(B)に示されるような患者A(単回帰モデルによる推定値より高い残存放射脳を示す者)、あるいは逆に患者B(単回帰モデルによる推定値より低い残存放射脳を示す者)等も存在しているため、単回帰モデルでは臨床的に合わないという問題があった。単回帰モデルの回帰式では残存放射能が上昇を続けるため、上記差分を取り過ぎるという問題もあった。
【0117】
図35は123I−IMP脳血流SPECTを用いた分割投与法のプロトコールにおいて、本発明の実施例6で用いる残存放射能の推定法を示す。分割投与法のプロトコールは図34に示される上述したプロトコールと同様であるため、説明は省略する。1st.SPECT中および2nd.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された脳内放射能カウント値は、上述した各実施例と同様に脳内放射能カウント値記録部12に記録されているものとする。図35に示されるように、脳内放射能カウント値記録部12に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値における第1回目123I−IMP静注による残存放射能カウント値として、第2回目123I−IMP静注から所定の経過時間(24.5分+x)までは1st.SPECT中における所定数(図35では4点分)の経過時間における脳内放射能カウント値から単回帰した放射能カウント値(回帰式:y=ax+b)を用いる。即ち、24.5分経過後から24.5分+xまでは単回帰モデルを用いる。所定数としては経験的には4点分が好適であるが、4点に限定されるものではない。一方、所定の経過時間(24.5分+x)後は、所定の経過時間における単回帰した放射能カウント値(y)でプラトー(y=y)になるものと推定する(残存放射能推定手段)。所定の経過時間(24.5分+x)としては、経験的には30分〜40分が好適であり、特に35分が臨床的にはよい結果を得られやすい。
【0118】
以降の処理は従来技術と同様であり、脳内放射能カウント値記録部12に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値から残存放射能推定手段により推定された残存放射能カウント値を引いた値を2nd.SPECT中における第2回目123I−IMP静注静注による脳内放射能カウント値と推定する(2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定手段)。2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定手段により推定された2nd.SPECT中における第2回目123I−IMP静注による脳内放射能カウント値に基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する(脳血流量算出手段)。脳血流量算出手段としては、例えば、予め脳血流量とSPECT値との関係を計算して表(テーブル)にしておき、その後、テーブルルックアップの手順でSPECT値から脳血流量を得るIMP−ARG法等を用いればよい。
【0119】
図36は、本発明の実施例6における脳血流量算出プログラムおよび方法の処理の流れをフローチャートで示す。図36に示されるように、脳内放射能カウント値記録部12に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値における第1回目123I−IMP静注による残存放射能カウント値として、第2回目123I−IMP静注から所定の経過時間までは1st.SPECT中における所定数の経過時間における脳内放射能カウント値から単回帰した放射能カウント値とし、該所定の経過時間後は該所定の経過時間における単回帰した放射能カウント値でプラトーと推定する(残存放射能推定ステップ。ステップS30)。次に、脳内放射能カウント値記録部12に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値から残存放射能推定ステップ(ステップS30)で推定された残存放射能カウント値を引いた値を2nd.SPECT中における第2回目123I−IMP静注による脳内放射能カウント値と推定する(2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定ステップ。ステップS32)。2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定ステップ(ステップS32)で推定された2nd.SPECT中における第2回目123I−IMP静注による脳内放射能カウント値に基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する(脳血流量算出ステップ。ステップS34)。
【0120】
本発明の実施例6についても、実施例4と同様に表示画像を用いて説明することができる。以下では便宜上一部の表示画像のみに関して説明する。図37は、本発明の実施例6における脳血流量画像を表示する表示画像を示す。図37において実施例4の図32と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図32に示されるように、残存放射能として、所定の経過時間までは近似直線93(この場合は単回帰モデルによる直線)とし、所定の経過時間後はプラトー直線93Pとしている。上述した差分を取った結果は、時間・放射能曲線94として表示されている。
【0121】
以上より、本発明の実施例6によれば、脳内放射能カウント値記録部12に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値における第1回目123I−IMP静注による残存放射能カウント値として、第2回目123I−IMP静注から所定の経過時間(24.5分+x)までは1st.SPECT中における所定数(図35では4点分)の経過時間における脳内放射能カウント値から単回帰した放射能カウント値(回帰式:y=ax+b)を用いる。一方、所定の経過時間(24.5分+x)後は、所定の経過時間における単回帰した放射能カウント値(y)でプラトー(y=y)になるものと推定する。所定の経過時間(24.5分+x)としては、経験的には30分〜40分が好適であり、特に35分が臨床的にはよい結果を得られやすい。以上のように、所定の経過時間(24.5分+x経過)後は残存放射能はプラトー(y=y)になると推定することにより、単回帰モデルにおける差分を取り過ぎるという問題を解消することができ、臨床的に合わせることができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の活用例として、分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を求める場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1 コンピュータ、 2 表示装置、 10 記録装置、 12 脳内放射能カウント値記録部、 14 動脈血中放射能カウント値記録部、 20 機能ブロック図、 21 重回帰式取得部、 22 脳内放射能カウント値入力部、 23 推定部、 24 脳血流量算出部、 31 脳血流量画像表示部、 32 収集画像表示部、 33 ROI設定部、 34 時間・放射能曲線表示部、 35 矢状断面方向収集画像表示部、 36 再構成後断層像表示部、 40 ファイル名、 41 OKボタン、 50 欄、 51 収集画像、 60 ROI、楕円ROI、 61 ROItype、 62 E:静脈カウント、 70、71、90、91 ボックス、 72 GOボタン、 80 PLOTボタン、 81、94 時間・放射能曲線、 92 Linear Fitボタン、 93、93P 近似直線、 100 Startスクロールバー、 101
Finスクロールバー、 102 Projectionボタン、 103 安静時収集画像、 104 負荷時収集画像、 105、113、123 スクロールバー、 110 Reconボタン、 111 安静時収集画像103の画像再構成後の横断面方向の断層像、 112 負荷時収集画像104の画像再構成後の横断面方向の断層像、 114 Reformatボタン、 120 GOボタン、 121、122 定量画像、 140 内部回路、 141 CPU、 142 ROM、 143 RAM、 144 VRAM、 145 画像制御部、 146 コントローラ、 147 CD−ROM、 148 入力制御部、 149 入力操作部、 150 外部I/F部、 151 バス、 160 円筒ファントム、 162 SPECT機器、 164 試験管、 166 ウェル型シンチレーションカウンタ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0124】
【非特許文献1】西村恒彦編集、「改訂版最新脳SPECT/PETの臨床−脳機能の検査法」、2002年6月20日発行、株式会社メジカルビュー社。
【非特許文献2】西村恒彦編集、「SPECT機能画像 定量化の基礎と臨床」、1999年7月10日発行、株式会社メジカルビュー社。
【非特許文献3】久田欣一、古舘正従、佐々木康人、小西淳二著、「最新臨床核医学(改定第2版」、平成6年2月10日発行(第4刷)、金原出版株式会社。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を行うための脳血流量算出プログラムであって、1st.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値が記録された脳内放射能カウント値記録部と、該被験者についてmicrosphere法における所定時間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値が記録された動脈血中放射能カウント値記録部とを用いるものであり、コンピュータを、
前記脳内放射能カウント値記録部に記録された複数の脳内放射能カウント値を説明変数とし、前記動脈血中放射能カウント値記録部に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する重回帰式取得手段、
1st.SPECT中における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する脳内放射能カウント値入力手段、
前記脳内放射能カウント値入力手段により入力された脳内放射能カウント値を前記重回帰式取得手段により取得された重回帰式に適用することにより、対象となる被験者についてのmicrosphere法における所定時間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する推定手段、
前記脳内放射能カウント値入力手段により入力された脳内放射能カウント値と前記推定手段により推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する脳血流量算出手段として機能させるための脳血流量算出プログラム。
【請求項2】
請求項1記載の脳血流量算出プログラムにおいて、前記重回帰式取得手段における重回帰分析の説明変数として、所定のトレーサの第1回投与後における所定時間経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値をさらに用いることを特徴とする脳血流量算出プログラム。
【請求項3】
請求項1記載の脳血流量算出プログラムにおいて、前記重回帰式取得手段における重回帰分析の説明変数として、所定のトレーサの第1回投与後における所定時間経過後に一点動脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値をさらに用いることを特徴とする脳血流量算出プログラム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の脳血流量算出プログラムにおいて、前記1st.SPECT中の被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値は、所定のトレーサの第2回投与時に測定された脳内放射能カウント値を基準とした相対値を用いることを特徴とする脳血流量算出プログラム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の脳血流量算出プログラムにおいて、前記脳血流量算出手段により算出された脳血流量に基づく脳血流量画像を表示する脳血流量画像表示手段をさらに備えたことを特徴とする脳血流量算出プログラム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の脳血流量算出プログラムにおいて、
前記脳内放射能カウント値入力手段により入力された脳内放射能カウント値に基づく収集画像を表示する収集画像表示手段と、
前記収集画像表示手段により表示された収集画像上に所定の形状を設定させ、該所定の形状内に所定の閾値に基づくROIを設定するROI設定手段と、
前記ROI設定手段により設定されたROI内又は任意の領域内について、前記脳内放射能カウント値入力手段により入力された脳内放射能カウント値に基づく時間・放射能曲線を表示する時間・放射能曲線表示手段と、
前記時間・放射能曲線表示手段により表示された時間・放射能曲線上に所定の範囲を設定させ、該所定の範囲における矢状断面方向の収集画像を表示する矢状断面方向収集画像表示手段と、
前記矢状断面方向収集画像表示手段により表示された収集画像を用いて所定の範囲を設定させ、該所定の範囲における画像再構成後の横断面方向の断層像を表示する再構成後断層像表示手段とをさらに備えたことを特徴とする脳血流量算出プログラム。
【請求項7】
分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を行うための脳血流量算出プログラムであって、1st.SPECT中及び2nd.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された脳内放射能カウント値が記録された脳内放射能カウント値記録部を用いるものであり、コンピュータを、
前記脳内放射能カウント値記録部に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値における第1回目静注による残存放射能カウント値として、第2回目静注から所定の経過時間までは1st.SPECT中における所定数の経過時間における脳内放射能カウント値から単回帰した放射能カウント値とし、該所定の経過時間後は該所定の経過時間における単回帰した放射能カウント値でプラトーと推定する残存放射能推定手段、
前記脳内放射能カウント値記録部に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値から前記残存放射能推定手段により推定された残存放射能カウント値を引いた値を2nd.SPECT中における第2回目静注による脳内放射能カウント値と推定する2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定手段、
前記2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定手段により推定された2nd.SPECT中における第2回目静注による脳内放射能カウント値に基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する脳血流量算出手段として機能させるための脳血流量算出プログラム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の脳血流量算出プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項9】
分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を行うための脳血流量算出方法であって、1st.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値が記録された脳内放射能カウント値記録部と、該被験者についてmicrosphere法における所定時間持続動脈採血により観測された動脈血中の放射能カウント値が記録された動脈血中放射能カウント値記録部とを用いるものであり、
前記脳内放射能カウント値記録部に記録された複数の脳内放射能カウント値を説明変数とし、前記動脈血中放射能カウント値記録部に記録された動脈血中の放射能カウント値を目的変数とする重回帰分析により得られた偏回帰係数を有する重回帰式を取得する重回帰式取得ステップと、
1st.SPECT中における対象となる被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値を入力する脳内放射能カウント値入力ステップと、
前記脳内放射能カウント値入力ステップで入力された脳内放射能カウント値を前記重回帰式取得ステップで取得された重回帰式に適用することにより、対象となる被験者についてのmicrosphere法における所定時間持続動脈採血により観測され得る動脈血中の放射能カウント値を推定する推定ステップと、
前記脳内放射能カウント値入力ステップで入力された脳内放射能カウント値と前記推定ステップで推定された動脈血中の放射能カウント値とに基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する脳血流量算出ステップとを備えたことを特徴とする脳血流量算出方法。
【請求項10】
請求項9記載の脳血流量算出方法において、前記重回帰式取得ステップにおける重回帰分析の説明変数として、所定のトレーサの第1回投与後における所定時間経過後に一点静脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値をさらに用いることを特徴とする脳血流量算出方法。
【請求項11】
請求項9記載の脳血流量算出方法において、前記重回帰式取得ステップにおける重回帰分析の説明変数として、所定のトレーサの第1回投与後における所定時間経過後に一点動脈採血により得られたサンプルの放射能カウント値をさらに用いることを特徴とする脳血流量算出方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載の脳血流量算出方法において、前記1st.SPECT中の被験者についての所定時間経過毎に測定された複数の脳内放射能カウント値は、所定のトレーサの第2回投与時に測定された脳内放射能カウント値を基準とした相対値を用いることを特徴とする脳血流量算出方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかに記載の脳血流量算出方法において、前記脳血流量算出ステップで算出された脳血流量に基づく脳血流量画像を表示する脳血流量画像表示ステップをさらに備えたことを特徴とする脳血流量算出方法。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれかに記載の脳血流量算出方法において、前記脳内放射能カウント値入力ステップの後に、
前記脳内放射能カウント値入力ステップで入力された脳内放射能カウント値に基づく収集画像を表示する収集画像表示ステップと、
前記収集画像表示ステップで表示された収集画像上に所定の形状を設定させ、該所定の形状内に所定の閾値に基づくROIを設定するROI設定ステップと、
前記ROI設定ステップで設定されたROI内又は任意の領域内について、前記脳内放射能カウント値入力ステップで入力された脳内放射能カウント値に基づく時間・放射能曲線を表示する時間・放射能曲線表示ステップと、
前記時間・放射能曲線表示ステップで表示された時間・放射能曲線上に所定の範囲を設定させ、該所定の範囲における矢状断面方向の収集画像を表示する矢状断面方向収集画像表示ステップと、
前記矢状断面方向収集画像表示ステップで表示された収集画像を用いて所定の範囲を設定させ、該所定の範囲における画像再構成後の横断面方向の断層像を表示する再構成後断層像表示ステップとをさらに備えたことを特徴とする脳血流量算出方法。
【請求項15】
分割投与法を用いた脳血流SPECTにより脳血流量の算出を行うための脳血流量算出方法であって、1st.SPECT中及び2nd.SPECT中における被験者についての所定時間経過毎に測定された脳内放射能カウント値が記録された脳内放射能カウント値記録部を用いるものであり、
前記脳内放射能カウント値記録部に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値における第1回目静注による残存放射能カウント値として、第2回目静注から所定の経過時間までは1st.SPECT中における所定数の経過時間における脳内放射能カウント値から単回帰した放射能カウント値とし、該所定の経過時間後は該所定の経過時間における単回帰した放射能カウント値でプラトーと推定する残存放射能推定ステップと、
前記脳内放射能カウント値記録部に記録された2nd.SPECT中の脳内放射能カウント値から前記残存放射能推定ステップで推定された残存放射能カウント値を引いた値を2nd.SPECT中における第2回目静注による脳内放射能カウント値と推定する2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定ステップと、
前記2nd.SPECT脳内放射能カウント値推定ステップで推定された2nd.SPECT中における第2回目静注による脳内放射能カウント値に基づき、対象となる被験者についての脳血流量を算出する脳血流量算出ステップとを備えたことを特徴とする脳血流量算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図23】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図38】
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【図39】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図37】
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【公開番号】特開2011−47834(P2011−47834A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197482(P2009−197482)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年2月28日 社団法人日本医学放射線学会発行の「日本医学放射線学会雑誌(NIPPON ACTA RADIOLOGICA)の第68回日本医学放射線学会総会抄録集」に発表
【出願人】(000149837)富士フイルムRIファーマ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】