説明

腎周囲脂肪蓄積抑制剤

【課題】、腎臓の周囲に脂肪が蓄積することを抑制し、循環器系疾患のリスクを低減する。
【解決手段】ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌を培養して得られる菌体、その培養物を有効成分とする腎周囲の脂肪蓄積抑制剤に関する。また、このような有効成分を含有してなる腎周囲の脂肪蓄積抑制用飲食品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高血圧、糖尿病、高脂血症、さらには動脈硬化性疾患の病態として広く認識されつつある腹腔内内臓脂肪の蓄積のうち、特に腎周囲脂肪の蓄積を抑制し、腎周囲脂肪を減少させる腎周囲脂肪の蓄積抑制剤に関し、詳細にはラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の培養物及び/又は菌体を有効成分として含有する腎周囲脂肪の蓄積抑制剤に関するものである。またラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌を培養して得られる培養物及び/又は菌体を添加した腎周囲脂肪の蓄積抑制用飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腹腔内内臓脂肪の蓄積は肥満者のみならず、非肥満者においても糖負荷時の血糖値や血清コレステロ−ル値、トリグリセリド値と正相関を示し、さらに収縮期血圧、拡張期血圧とも正相関し、糖尿病、高脂血症、高血圧などの疾患の極めて頻度の高い基礎病態であることが示されている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。従って、内臓脂肪の蓄積を抑制することは、内臓脂肪の蓄積によってもたらされ影響をうける種々の病態の治療及び予防を可能にすると考えられる(例えば、非特許文献3参照。)。
【0003】
特に、腎臓では多くの活性物質(ホルモン、オータコイド、神経伝達物質など)が産生・放出されており、これらを総称して腎臓ホルモンとも称されている。特に、プロスタグランジンは血圧調節やナトリウム代謝に、またトロンボキサンは血管収縮などに関与している。その他にも、昇圧系の出発物質であるレニンや、赤血球産生系のエリスロポエチンなども腎臓で産生される。このように、内分泌系においても重要な機能をもつ腎臓の周囲に内臓脂肪が蓄積すると、様々な代謝異常が生じるといわれており、特に生活習慣病といわれる循環器系疾患に関与する生体調節機能が阻害される。
【0004】
また、内臓脂肪の蓄積とインスリン抵抗性との関連についても盛んに議論されてきており、内臓脂肪の蓄積によってもたらされる症候群は、内臓脂肪の蓄積を上流にしてインスリン抵抗性を中間に介し、あるいはこれと独立してもたらされるものと認識されている。
なかでも、腎臓の周囲に脂肪が多いと、インスリン抵抗性を介して循環器系疾患のリスクが高まることが示されている(例えば、非特許文献4参照。)。腎周囲の内臓脂肪量は他の腸管の内臓脂肪量より少ないが、腎周囲の内臓脂肪の蓄積が循環器系疾患に大きな影響を与えることを示すものである。
したがって、腎周囲の内臓脂肪を増加させないことは、その他の腸管脂肪などと比較しても循環器系疾患の予防の観点で極めて重要である。
【0005】
現在、内臓脂肪減少の手段としては運動療法、食事療法、行動療法そして薬物療法が用いられている。このうち薬物療法については中枢性に食欲を抑制する薬剤が開発され、その他にもβ3アドレナリン受容体刺激薬や消化管からの脂肪吸収の抑制薬などが試みられている。しかし、これらいわゆる抗肥満薬においては内臓脂肪、なかでも、腎臓周囲の内臓脂肪減少に対する有効性は確認されておらず、腎臓周囲の内臓脂肪の減少をもたらす有効な薬物療法は確立していない。ましてや、日常の食事の形、あるいはサプリメントとして摂取することのできる食事療法は現在まで確立していない。
一方、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)は、発酵乳等に用いられている乳酸菌である。ラクトバチルス・ガセリとビフィドバクテリウム・ロンガムの混合培養物を糖尿病モデルマウスに投与し、糖尿病症状改善に寄与するかを試験した例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、腎臓周囲の内臓脂肪減少に対する有効性を確認したものではない。また、アスペルギルス・オリゼーなどのカビ培養物、ストレプトコッカス・フェカリスなどの乳酸菌培養物及び酵母を含む内臓脂肪蓄積防止用組成物又は肥満治療用組成物が開示されているが(例えば、特許文献2参照)、3種をそれぞれ培養して混合するので製造が煩雑となるが、本発明は、ガセリ菌単体であり製造が容易であるという利点がある。
【特許文献1】特開2000-252770号公報
【特許文献2】特開2004-99539号公報
【非特許文献1】Fujioka,S.,et al.:Metabolism 36:54-59,1987
【非特許文献2】Matsuzawa,Y.,et al.:Progress in Obesity Research,p309-312,1990
【非特許文献3】Bray,G.A.,Obesity Research,Suppl.4,425S-434S, 1995
【非特許文献4】D. Rudman & P. W. Shank, Endocrinology, vol.79, 565-571, 1966.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ヒト腸管内に定着性を有する乳酸菌の研究を行っていたところ、腸管内定着性を有する乳酸菌、特にラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌を培養して得られる培養物及び/又は菌体を投与すると、これらの微生物は腸管内に定着することによって宿主に作用し、腎周囲の脂肪蓄積を抑制する効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌を培養して得られる培養物及び/又は菌体を有効成分とする腎周囲の脂肪蓄積抑制剤を提供することを課題とする。
また本発明は、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌を培養して得られる培養物及び/又は菌体を含有する腎周囲の脂肪蓄積抑制用飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ヒト腸管内に定着性を有する乳酸菌の研究を行っていたところ、発酵乳から分離された乳酸菌やヒト由来の乳酸菌の中で、特にラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)が、高いヒト腸管内定着性を有していることを見出していたが、さらにこのラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)が、従来知られていなかった腎周囲の脂肪蓄積を抑制することを見出して上記課題の解決に成功し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌を培養して得られる培養物及び/又は菌体を有効成分とする腎周囲の脂肪蓄積抑制剤に関する。さらに、本発明は、このような有効成分を含有してなる腎周囲の脂肪蓄積抑制用飲食品に関する。
【0009】
したがって、本発明は、下記の構成からなる発明である。
(1)ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の培養物及び/又は菌体を有効成分とする腎周囲脂肪蓄積抑制剤。
(2)ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)が、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055又はラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)JCM1131である前記(1)記載の腎周囲脂肪蓄積抑制剤。
(3)ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌を培養して得られる培養物及び/又は菌体を添加した腎周囲脂肪蓄積抑制用飲食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の培養物及び/又は菌体を有効成分とする腎周囲脂肪蓄積抑制剤、さらに、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌を培養して得られる培養物及び/又は菌体を有効成分とする腎周囲脂肪蓄積抑制用飲食品を提供することができる。
本発明によって提供される腎周囲脂肪蓄積抑制剤及び腎周囲脂肪蓄積抑制用飲食品は、古来より、発酵乳やチーズ等に利用されてきた乳酸菌であるラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)を用いるので毒性及び副作用がなく腎周囲脂肪蓄積抑制用のサプリメントとして、また、腎周囲脂肪蓄積抑制用の飲食品として日常摂取することができ、きわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者らは、発酵乳やヒト由来の数多くの乳酸菌のうち、胃酸耐性が高い、低pH条件下での生育が良好である、ヒト腸管へ高い定着性を示す、ヒト腸管細胞親和性を示す、胆汁酸耐性がある、腸管内に定着する、食品に適用した際に生残性が高く、香味、物性も優れている菌株の選定を進めてきた。次に、ヒト腸管へ高い定着性を示す乳酸菌の中で、腎周囲脂肪の蓄積を抑制するという条件を設定して選定を進め、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri) に属する乳酸菌が、腸管内に定着することによって腎周囲脂肪の蓄積を抑制する効果を有することを見出した。
上記の条件に合致する菌株として、ラクトバチルス・ガセリに属する乳酸菌のうち、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055株及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)JCM1131株を選択することができた。なお、SBT2055菌株は、寄託番号FERM P-15535として、独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センターに寄託されている。また、JCM1131菌株は独立行政法人理化学研究所の公開菌株である。
【0012】
特に、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055株は、ヒト腸管細胞に高い親和性を有し、経口で投与した時、生存して腸管内に到達することができ長期間腸管内に常在することが可能であり、腸管内生育することで宿主に作用し腎周囲脂肪の蓄積を抑制する効果を有する。体外から投与したラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌が腸内に定着し、このような生理効果を示すことは全く知られておらず、本発明者らによって初めて明らかにされた。
【0013】
さらに本発明では、上記の菌に限らずヒトや発酵乳から分離されるラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)であって、腸内に定着し、上記の作用を示すものであれば、いずれのものでも使用できる。ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の変異株であって、上記の作用を示すものも使用することができる。
【0014】
次にこれら乳酸菌の培養方法を記す。本発明のラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の培地には、乳培地又は乳成分を含む培地、これを含まない半合成培地等種々の培地を用いることができる。このような培地としては、脱脂乳を還元して加熱殺菌した還元脱脂乳培地を例示することができる。培養法は、静置培養又はpHを一定にコントロールした中和培養で行うが、菌が良好に生育する条件であれば特に培養法に制限はない。菌体は、乳酸菌培養の常法に従って培養し、得られた培養物から遠心分離等の集菌手段によって分離されたものをそのまま本発明の有効成分として用いることができる。また、菌体として純粋に分離された菌体だけでなく、培養物、懸濁物、その他の菌体含有物や、菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。
【0015】
さらに、製剤化に際しては製剤上許可されている賦形剤、安定剤、矯味剤等を適宜混合して濃縮、凍結乾燥するほか、加熱乾燥して死菌体にしてもよい。これらの乾燥物、濃縮物、ペースト状物も包含される。また、菌体や培養物の作用を妨げない範囲で、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、懸濁剤、コーティング剤、その他の任意の薬剤を混合して製剤化することもできる。剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤等が可能であり、これらを経口的に投与することが望ましい。
【0016】
投与量は、投与対象者の症状、年齢等を考慮してそれぞれ個別に適宜決定されるが、通常成人1日当たり、乾燥物として0.5〜10gであり、これを1日数回に分けて投与するとよい。乳酸菌の含有割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量等に合わせて適宜調節すれば良い。例えば剤型が液体の場合には、1×105cells/ml〜1×1010cells/mlとすることが好ましく、固体の場合には、1×105cells/g〜1×1010cells/ g とすることが好ましい。このようにして摂取することによって腸管内に定着し所望の効果を発揮する。
【0017】
また、本発明の有効成分は、飲食品の製造工程中に原料に添加しても良い。飲食品としてはどのような飲食品でも良く、その例として、乳飲料、発酵乳、果汁飲料、ゼリー、キャンディー、乳製品、マヨネーズ等の卵加工品、バターケーキ等の菓子・パン類等の食品をあげることができる。生菌体として利用する場合には、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の菌株またはその変異株の菌体自体、および上記乳酸菌の菌体を培養して得られた発酵乳、チーズ自体、さらに、これらの菌体、発酵乳、チーズ等を素材として使用し、パンやスナック菓子、ケーキ、プリン等にしてもよい。
【0018】
これらの腎周囲脂肪の蓄積抑制剤あるいは、腎周囲脂肪の蓄積抑制用飲食品は、腎周囲脂肪の蓄積抑制能を有するので、前述した腎周囲脂肪の蓄積により引き起こされるさまざまな病態の予防、治療、改善に非常に有益となり得る。
乳酸菌体は、古来、発酵乳やチーズの製造に用いられており、本発明の腎周囲脂肪の蓄積抑制剤あるいは腎周囲脂肪の蓄積抑制用飲食品は安全性に問題はないという特徴がある。
【0019】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
(ラクトバチルス・ガセリ培養物粉末の調製、1)
還元脱脂乳培地(13重量%脱脂粉乳、0.5重量%酵母エキス含有)を95℃で30分間殺菌した後、ラクトバチルス・ガセリSBT2055株菌体を接種し、37℃で16時間培養し、得られた培養物を凍結乾燥してラクトバチルス・ガセリSBT2055株培養物粉末を得た。これは、そのまま本発明の腎周囲脂肪蓄積抑制剤として使用し得る。
【実施例2】
【0021】
(ラクトバチルス・ガセリ培養物粉末の調製、2)
還元脱脂乳培地(13重量%脱脂粉乳、0.5重量%酵母エキス含有)を95℃で30分間殺菌した後、ラクトバチルス・ガセリJCM1131株菌体を接種し、37℃で16時間培養し、得られた培養物を凍結乾燥してラクトバチルス・ガセリJCM1131株培養物粉末を得た。これは、そのまま本発明の腎周囲脂肪蓄積抑制剤として使用し得る。
【0022】
[試験例1]
(ラクトバチルス・ガセリ培養物の投与と脂肪重量の測定)
実施例1で得られたラクトバチルス・ガセリSBT2055株(LG SBT2055)培養物粉末及び実施例2で得られたラクトバチルス・ガセリJCM1131株(LG JCM1131)培養物粉末を、表1に示すAIN-76Gに準拠したLG SBT2055食及びLG JCM1131食として各々配合してラットに投与し、腎周囲、精巣上体、腹膜後腔の3部位の脂肪蓄積を試験した。一方、95℃で30分間殺菌した還元脱脂乳培地を凍結乾燥して、コントロール粉末を作成し、AIN-76Gに準拠した表1に示すコントロール食に配合した。
4週令フィッシャー系雄ラット30匹に、コントロール食を自由に摂取させて1週間飼育した後、10匹ずつ3群に分け、1群は引き続きコントロール食を、別の1群にはLG SBT2055食を、さらに別の1群にはLG JCM1131食を自由に摂取させてさらに4週間飼育した後、開腹して、腎周囲、精巣上体、腹膜後腔の3部位の脂肪組織を、はさみとピンセットで分離摘出し、その重量を測定した。また、3部位の脂肪組織総重量を測定した。
なお、3群に体重、摂食量、糞重量の差は認められなかった。
【0023】
[表1]
(g/kg)
───────────────────────────────────
コントロール食 LG SBT2055食 LG JCM1131食
───────────────────────────────────
カゼイン 125 125 125
コントロール粉末 200 - -
LG SBT2055培養物粉末 - 200 -
LG JCM1131培養物粉末 - - 200
DL-メチオニン 3.0 3.0 3.0
ラード 90 90 90
コーン油 10 10 10
ミネラル混合 35 35 35
ビタミン混合 10 10 10
重酒石酸コリン 2.0 2.0 2.0
セルロース 50 50 50
α-コーンスターチ 150 150 150
コール酸ナトリウム 1.5 1.5 1.5
コレステロール 5 5 5
ショ糖 318.5 318.5 318.5
───────────────────────────────────
合計 1000 1000 1000
───────────────────────────────────

【0024】
腎周囲、精巣上体、腹膜後腔の3部位の脂肪組織重量及び脂肪組織総重量を測定して得られた結果を図1〜4に示す。これによると精巣上体の脂肪組織の重量はコントロール食摂取群とLG SBT2055食摂取群及びLG JCM1131食摂取群との間では有意な差は認められなかったが、腎周囲、腹膜後腔の脂肪組織及び脂肪組織の総重量は、コントロール食摂取群と比較してLG SBT2055食摂取群及びLG JCM1131食摂取群は有意に減少していた。すなわち、ラクトバチルス・ガセリ SBT2055培養物粉末及びラクトバチルス・ガセリ JCM1131培養物粉末を添加した食品は、腎周囲の脂肪組織重量を顕著に減少させることが確認された。
以上の結果から、ラクトバチルス・ガセリの培養物粉末を添加した食品は、循環器系疾患のリスクが高まることが示されている腎周囲の脂肪組織重量を顕著に減少させる効果があることが明らかとなった。
【実施例3】
【0025】
(錠剤の製造)
ラクトバチルス・ガセリSBT2055株菌体の液体培養物を4℃、7,000rpmで15分間遠心分離して滅菌水による洗浄を行い、これを3回繰り返して洗浄菌体を得た。これを凍結乾燥処理して菌体粉末を得た。この菌体粉末1部に脱脂粉乳4部を混合し、この混合粉末を打錠機により1gずつ常法により打錠して、本発明のラクトバチルス・ガセリSBT2055株菌体200mgを含む錠剤を調製した。
【実施例4】
【0026】
(発酵乳の製造)
ラクトバチルス・ガセリ SBT2055株菌体をMRS液体培地(Difco社)にて培養した。対数増殖期にある各培養液を、0.3%の酵母エキスを添加した10%還元脱脂乳(115℃、20分滅菌)に1%接種し、マザーカルチャーを作成した。これに10%の還元脱脂乳を添加して、100℃にて10分間加熱したヨーグルトミックスに2.5%添加して調製した。37℃で発酵を行い、乳酸酸度0.85に到達した時点で冷却し、発酵を終了させ、本発明の腎周囲脂肪蓄積抑制用発酵乳を得た。
【実施例5】
【0027】
(散剤の製造)
ラクトバチルス・ガセリ SBT2055株菌体をMRS液体培地(Difco社)5Lに接種後、37℃、18時間静置培養を行った。培養終了後、7,000rpmで15分間遠心分離を行い、培養液の1/50量の濃縮菌体を得た。次いで、この濃縮菌体を、脱脂粉乳10重量%、グルタミン酸ソーダ1重量%を含む分散媒と同量混合し、pH7に調整後、凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥物を60メッシュのフルイで整粒化し、凍結乾燥菌末を製造した。第13改正日本薬局方解説書製剤総則「散剤」の規定に準拠し、この凍結乾燥菌末1gにラクトース(日局)400g、バレイショデンプン(日局)600gを加えて均一に混合し、本発明の腎周囲脂肪蓄積抑制用散剤を得た。
【実施例6】
【0028】
(スティック状健康食品の調製)
実施例1で得られたラクトバチルス・ガセリSBT2055株培養物粉末30gに、ビタミンCとクエン酸の等量混合物40g、グラニュー糖100g、コーンスターチと乳糖の等量混合物60gを加えて混合した。混合物をスティック状袋に詰め、本発明の腎周囲脂肪蓄積抑制用スティック状健康食品を製造した。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】脂肪組織の総重量を比較した結果を示した図である。(実施例1、2)
【図2】精巣上体の脂肪組織重量を比較した結果を示した図である。(実施例1、2)
【図3】腎周囲の脂肪組織重量を比較した結果を示した図である。(実施例1、2)
【図4】腹膜後腔の脂肪組織重量を比較した結果を示した図である。(実施例1、2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト腸管へ高い定着性を示すラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)の培養物及び/又は菌体を有効成分とする腎周囲脂肪蓄積抑制剤。
【請求項2】
ヒト腸管へ高い定着性を示すラクトバチルス・ガセリが、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)SBT2055又はラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri) JCM1131である請求項1記載の腎周囲脂肪蓄積抑制剤。
【請求項3】
ヒト腸管へ高い定着性を示すラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)に属する乳酸菌を培養して得られる培養物及び/又は菌体を添加した腎周囲脂肪蓄積抑制用飲食品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−153741(P2007−153741A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346696(P2005−346696)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】