説明

腐敗性廃棄物の醗酵装置

【課題】被処理物から発生する水蒸気や臭気を醗酵棟内に拡散させることなく、しかも被処理物中に含まれる水分量の調整を可能とすることにより、醗酵処理の迅速化と高効率化を図る。結露による建物への影響を低減する。
【解決手段】醗酵槽本体2の上部開口2aをカバー体10によって覆い、被処理物Bの表面との間に水蒸気の拡散防止空間12を形成する。醗酵槽本体の両側にコンクリート製のダクト13を連設し、連通路14を介して拡散防止空間と連通させ、水蒸気を拡散防止空間から排気ダクトに吸引させる。カバー体両側のチェーン11を切返し装置3のスプロケット6,7に噛合させることにより、切返し装置をカバー体の内側に潜り込ませた状態で稼働させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醗酵槽を用いた腐敗性廃棄物の醗酵装置に関し、詳しくは、醗酵槽内に収容された腐敗性廃棄物を効率良く醗酵させる醗酵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腐敗性廃棄物たる被処理物を醗酵槽内で醗酵処理する場合、一般に次のようにして行われる。すなわち、図6の概念構成図に示すように、醗酵棟内に設置した醗酵槽Aに被処理物Bを収容し、例えば掻き揚げ部材付きのコンベア式切返し装置Cを醗酵槽Aの投入端Dから排出端Eにかけて長手方向に往復走行させ、切返しを行いながら被処理物Bを順次排出端側に移動させる。醗酵槽内の被処理物Bは、移動に伴い、醗酵前期、醗酵中期、及び醗酵後期の被処理物となり、最終的に醗酵産物として取出される。
【0003】
醗酵槽内で醗酵を効率良く行うには、各醗酵過程で、被処理物に十分な空気が供給されるとともに被処理物の水分量を調整する必要がある。空気の供給は、上記切返しによる大気接触と、醗酵槽の下方や側方からの強制的送気を採用可能であることから、これを制御することは必ずしも困難ではない。
【0004】
一方、醗酵槽内での被処理物の水分調整は、専ら、醗酵熱による水蒸気の蒸散に頼らざるを得ない。醗酵槽は上部開口が開放されているため、醗酵に伴って発生する水蒸気は、そのまま醗酵棟内に自然放散される。こうした自然放散は、水蒸気の蒸散量が醗酵棟内の大気環境によって大きく左右され、各醗酵過程における被処理物の水分調整が容易でない。例えば、醗酵槽内の被処理物表面は常温の大気と常時接触しているため、冬場のように温度が低い場合には、水蒸気の一部が被処理物表面に結露して被処理物表面を内部とは異なる湿潤状態にする。この結果、水蒸気の放散が妨げられ、品温と水蒸気蒸散量の低下から醗酵を遅らせる要因となる。
【0005】
これを防止する一つの手段として、化石燃料やヒータなどを用いて被処理物を外部的に加熱あるいは加温することが考えられる。特許文献1には、比較的小型の醗酵槽ではあるが、醗酵槽に外部光熱源を採り入れるための採光手段を設ける一方、醗酵槽内部にこの採光手段から採り入れられた熱を蓄熱するための蓄熱手段(蓄熱媒体等)を設けるようにした醗酵促進装置が提案されている。
【0006】
また、醗酵槽内の被処理物から放散される水蒸気は、多大な量になる。放散された水蒸気は、拡散し、建屋の骨組材や構造材の表面だけでなく隙間に入り込んで結露し、建物の耐久性を損なう。醗酵棟の換気口や窓あるいは出入り口を介して棟外に放出するにも限りがある。臭気の放出が公害問題となる市街地周辺の醗酵棟では、醗酵棟を閉め切って醗酵処理を行わなければならないことから、水蒸気と臭気の捕集手段を設け、これに対応している。
【0007】
特許文献2には、堆肥棟内を大気中へ開放する換気通路に、大気側へ向けて送風する送気手段とフィルタユニットとを設け、送気手段の送風能力を発生するガス量に応じて大小に調節可能とした堆肥棟の除臭装置が開示されている。また、特許文献3には、醗酵槽の上方に臭気捕集フードを設置し、発生した臭気をこの臭気捕集フードから換気口を経て脱臭装置に導くようにした技術が提案されている。
【特許文献1】特許公開2005−263563号公報
【特許文献2】特許公開2004−250298号公報
【特許文献3】特許公開2002−234783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の上記先行技術はいずれも臭気の捕集を主目的とするものであるが、水蒸気も併せて捕集される。しかし水蒸気の蒸散量や醗酵熱を維持するために、熱源を醗酵槽外もしくは醗酵槽内に配設する技術は、設備に費用がかかるばかりでなく比較的頻繁なメンテナンスも必要となり、しかもランニングコストが嵩む。
【0009】
また、水蒸気や臭気は、醗酵槽上部の広い開口から一旦放散されると、醗酵棟内空間の全域に拡散する。このため、醗酵棟内空間の一領域に換気通路や臭気捕集フードを配設し、吸引手段によって吸引したとしても、捕集できない水蒸気や臭気が残り、これらが徐々に醗酵棟内空間に蓄積され、醗酵棟内空間に充満することになる。いったん、醗酵棟内に充満した水蒸気や臭気は、ますます捕集が困難となる。
【0010】
水蒸気や臭気の捕集にあたり、吸引力を高めるため大容量の吸引手段を用いるとしても、水蒸気の蒸散量を制御するには至らないばかりでなく、依然として捕集しきれない水蒸気や臭気が多く残りがちで、電気代などのランニングコストも嵩むことになる。
【0011】
本発明の目的は、従来の醗酵槽を用いた醗酵処理技術が抱える上記した問題点を解消することにある。すなわち、本発明は、醗酵槽内の被処理物から発生する水蒸気や臭気を醗酵棟内に拡散させることなく発生直後に捕集し、しかも被処理物中に含まれる水分量の調整を可能とすることにより、醗酵処理の迅速化と高効率化を図るとともに、水蒸気が結露することによる建物への影響を低減することのできる、醗酵装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は次の構成を備える点に特徴がある。
すなわち、本発明装置は、腐敗性廃棄物より成る被処理物を収容する醗酵槽と、この醗酵槽の被処理物投入端から排出端にかけて走行し、被処理物の切返しを行いながら被処理物を順次排出端側に移動させる切返し装置とを備えた腐敗性廃棄物の醗酵装置の改良に係るものである。
【0013】
本発明の腐敗性廃棄物の醗酵装置において、醗酵槽は切返し装置を走行させるための軌道と、醗酵槽本体の上部開口を覆うことにより醗酵槽内に堆積された被処理物の表面と間に醗酵熱によって被処理物から発生した水蒸気の拡散防止空間を形成するとともに両側端部にチエーンが取付けられたカバー体と、醗酵槽本体の両側に隣接して形成された排気路と、この排気路と上記拡散防止空間とを連通させるため醗酵槽本体の両側壁に長さ方向に連続もしくは不連続に形成された連通路と、拡散防止空間内の水蒸気を含んだ空気を連通路から排気路を介して外部に排出する吸引手段とを備える。
【0014】
上記切返し装置は、前後部の左右上下四隅部にスプロケットが回動自在に取付けられ、これらのスプロケットをカバー体の上記チェーンに噛合させることにより、カバー体内に潜り込んだ状態で上記レール上を走行する。
【0015】
上記醗酵槽は、上部開口のうち、被処理物の投入口近傍を除く部分が全てカバー体によって覆われる。これにより、醗酵槽内に堆積された被処理物の表面とカバー体裏面との間には、醗酵熱によって被処理物から発生した水蒸気の拡散防止空間が形成される。そして、水蒸気をこの拡散防止空間を介して醗酵槽外部に排出させる。ここで拡散防止空間から捕集、排出される水蒸気は、臭気成分をも含む。
【0016】
拡散防止空間内の水蒸気は、例えば醗酵槽両側壁上部に拡散防止空間と連通する連通路を持つ排気路から吸引して、醗酵槽外部に排出される。この連通路は、醗酵槽の長さ方向に沿って連続もしくは不連続に形成され、拡散防止空間の水蒸気の捕集量が醗酵槽の長さ方向において調整される。排気路には、連通路に部分的な閉塞手段を設け、醗酵度合いに応じて閉塞手段の閉塞度合いを調整することにより、醗酵槽内の当該部分の水蒸気の吸引量を調整することもできる。
【0017】
切返し装置は、醗酵槽の天端部に敷設したレール上を走行することにより、醗酵槽の上部開口端に沿って醗酵槽の長手方向に往復動する。切返し装置の前後部の左右上下四隅部に設けられたスプロケットは、カバー体の両側端部に取付けられたチェーンと噛合することで、切返し装置がカバー体内に潜り込んだ状態で走行するのを可能にする。
【0018】
カバー体は、柔軟なシート材であるのが望ましいが、醗酵槽の上部開口をほぼ水平に覆う基本位置と、チェーンが切返し装置のスプロケットに噛合されることにより部分的に上方に盛り上がる位置との間で変位可能なものであれば、その素材あるいは構造の如何を問うものではない。例えば、所要幅の剛性シート材を醗酵槽の長さ方向に多数連設するようにしたものであっても良い。また、カバー体は、幅方向のずれを規制するため、前後端に長さ方向に引張する何等かの手段を講じるようにしても良い。
【0019】
排気路は、醗酵槽本体の上部両側に一連に形成されたコンクリート製のダクトによって構成し、醗酵槽本体の側壁上部に醗酵槽本体の長さ方向に沿って形成された連通路によって拡散防止空間と連通させることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、次の効果を奏する。
醗酵槽の上部開口をカバー体によって覆うと共に切返し装置をこのカバー体の内部に潜り込むようにして走行させることにより、被処理物表面上方に、被処理物より発生する臭気成分を含む水蒸気の拡散防止空間を形成し、この拡散防止空間と連通する醗酵槽本体両側の排気路を介して上記水蒸気を含む空気を外部に排出させるようにしたので、水蒸気や臭気を醗酵棟内空間に放散させることがない。しかも、水蒸気は、発生直後に拡散防止空間より外部に排出されるので、効率良く捕集させることができる。
【0021】
拡散防止空間は、水蒸気や臭気が滞留する間もなく外部に排出され、しかも醗酵熱の輻射熱によって暖められた空間になることから、水蒸気が被処理物表面で結露しにくくなり、被処理物表面あるいはカバー体裏面にも結露を生じにくい。
【0022】
水蒸気は、発生するかたわら拡散防止空間から素早く醗酵槽外に導かれ、醗酵熱も処理槽から逃げにくくなるので、醗酵を阻害する外的要因が少なくなり、醗酵処理の短縮化を図ることができる。また、拡散防止空間への吸引力を調整することにより、被処理物表面の乾燥度合いを調整でき、醗酵処理の適正化に貢献できる。更に、排気路と拡散防止空間との連通路を部分的に閉塞可能とすることにより、上記吸引量の調整とあいまって醗酵度合いに応じた水分調整が可能となり、より適切な醗酵処理を行うことができる。
【0023】
醗酵棟内の広い空間に拡散した水蒸気や臭気を捕集するのとは異なり、狭い拡散防止空間から水蒸気や臭気を捕集するので、従来ほどに大容量の吸引手段を使用する必要がなくなり、プラント全体の製造費用及びランニングコストの低減に貢献できる。また、醗酵槽に機構部材を設置するものでもないから、メンテナンスも必要最小限で済む。
【0024】
醗酵棟内に水蒸気が拡散することがないので、結露による醗酵棟の耐久性を損なう要因を取り除き、建物の耐用年数を一般の建物と同等に維持できる。
【0025】
カバー体の両側端に取付けたチェーンを切返し装置の前後部の左右両側に設けたスプロケットに噛合させるようにしてあるので、カバー本体を幅方向にずらすことなく切返し装置をカバー体の内側に潜り込むようにして確実に走行させることができ、醗酵槽の外部に切返し装置を設けながらもカバー本体による拡散防止空間の形成に支障を生じさせることがない。
【0026】
カバー本体は、チェーンとスプロケットとの噛合関係によって、醗酵槽の上部開口をほぼ水平に覆う基本位置から切返し装置の上方に盛り上がる位置へと部分的に変位するだけであるから、柔軟なシート材、あるいは多少の剛性を有するシート片を多数連設した部材などによって比較的容易に製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を、図1から図5を参照しつつ詳説する。
図1は、本発明の一実施形態に係る醗酵装置の概略構成図である。図中、符合1は、長さ80m、幅3m、深さ1.5mの細長い直方体形状をした一般的なコンクリート製醗酵槽であり、内部に被処理物Bが収容され、底部から強制的に空気が被処理物内に送られて被処理物の醗酵を行う。符号2は被処理物が収容される醗酵槽の本体部であり、符号2aは醗酵槽本体2の開放された上部開口であり、符号3は醗酵槽1の天端に沿って敷設した左右一対のレールである。
【0028】
符号4は上記レール3に案内されて醗酵槽1の長手方向に走行する切返し装置であり、下部に設けられたバケット付きのコンベア5によって前方の被処理物Bを掻き揚げ、これを後方に落下させることで、ゆっくりとした速度で走行しつつ被処理物Bの切返しを行う。
【0029】
切返し装置4には、それぞれ前面部と後面部の上下左右四隅に、スプロケット6a〜6d,7a〜7dが回動自在に取付けられている。下部のスプロケット6a,6b,7a,7bには、背後に押し付けローラ8,9が対を成すように同様に回動自在に取付けられている。これらのスプロケット6,7は、切返し装置4の走行動作に同期して駆動し、切返し装置4の進行方向に対して時計方向に回転する。
【0030】
符号10は醗酵槽本体2の上部開口2aを覆うカバー体であり、ビニールシートなどの柔軟なシート材によって、醗酵槽1の投入口2bよりやや離れた位置から醗酵槽本体2の排出口2cにかけての上部開口2のほぼ全域(幅方向及び長さ方向の全体)を覆う大きさに形成されている。
【0031】
カバー体10のシート材は所定ピッチごとに撓み性を有する柔軟な素材から成る横架フレームによって補強されていても良い。さらに、カバー体10は全体を一枚のシート材によって形成しても良いが、所要長さのカバー片を醗酵槽の長手方向にキャタピラ状に多数連設したものであっても良い。
【0032】
カバー体10には、その両側端部にこれに沿うようにしてチェーン11が取付けられている。左右一対のチェーン11は、切返し装置4の前記したスプロケット6,7と噛合する幅に位置している。また、カバー体10の前後方向両端部は、醗酵槽1の天端に、カバー体10が長さ方向にある程度のゆとりを持つようにして固定されている。常時、長さ方向に引張するようなテンションをかけるようにしてあっても良い。
【0033】
上記カバー体10と醗酵槽本体2に堆積する被処理物Bとの間には、水蒸気を含む空気の拡散防止空間12が形成されている(図4と図5参照)。この拡散防止空間12の醗酵槽投入側に位置する前方端はカバー体10によって閉じられており、一方、排出側に位置する後方端は開放されている。
【0034】
醗酵槽本体2の長手方向に沿って、拡散防止空間12の片側には吸気ダクト15が形成されており、他方の片側には排気ダクト13が形成されている。吸気ダクト15および排気ダクト13は連通路14を通じておのおの拡散防止空間12に連通している。図示する例では、吸気ダクト15および排気ダクト13は醗酵槽本体2と一体にコンクリート製によって形成されている。
【0035】
排気ダクト13は基端部側が連結ダクト(図示省略)に接続さており、醗酵棟外に引き出された連結ダクトは吸引ユニットに接続されている。連通路14は比較的に狭い通路であり、醗酵槽本体2の長手方向に沿って連続的にあるいは不連続的に形成されている。
【0036】
上記装置の使用状態を説明する。
醗酵槽本体2に被処理物Bを投入し、所定量になったところで切返し装置4を稼働させる。切返し装置4は、当初、カバー体10の始端方向から後退させてカバー体内に潜り込ませてある。すなわち、カバー体始端両側のチェーン11を先ず切返し装置後部の下部スプロケット7a,7bに噛合させ、次いで後部の上部スプロケット7c,7dから切返し装置4の屋根を跨いで前部の上部スプロケット6c,6dを経て下部スプロケット6a,6bへと順次受け継がせることによって、切返し装置4の前方部と屋根部及び後方部は、カバー体10を被った状態になる。この状態で、醗酵槽本体2は、被処理物Bの投入口近傍と排出口近傍を除き、その上部開口2aがカバー体10および切返し装置4の底部によって覆われる。
【0037】
切返し装置4は、カバー体10を醗酵槽本体2の上部開口2aを塞ぐ位置から一端持ち上げて再度上記塞ぐ位置に復帰させて醗酵槽1の長手方向を進退動するが、この動作によってカバー体10が幅方向にずれてしまうことはない。切返し装置10がレール11に沿って移動すること、カバー体10が切返し装置4の下部スプロケット6a,6b,7a,7bに案内されて醗酵槽天端表面に復帰すること、及びチェーン11の内側に平行レール3,3が敷設されてチェーン11の幅方向のずれを抑止するからである。
【0038】
切返し装置4は、醗酵槽本体内の被処理物Bの堆積量が少ない稼働初期にあっては、前進と後退を小刻みに繰り返し、徐々に醗酵槽本体内の被処理物Bの量を増やすとともに醗酵を進めてゆく。この点は、従来の切返し装置を持つ醗酵槽においても同様である。ただ、本発明装置にあっては、醗酵槽本体2がカバー体10によって覆われ、切返し装置4がカバー体内に潜り込んだ状態で切返しを行う点が異なる。そして、被処理物Bは、従来は醗酵槽本体内を排出口方向に移動する間にゆっくりとかつ醗酵度合いを考慮することなく処理されるが、本発明装置にあっては、急速で適切な醗酵が行われる。
【0039】
本発明装置にあっては、図4と図5に見られるように、カバー体10によって覆われた拡散防止空間12とその周囲の環境構造が醗酵に大きな影響を与える。醗酵槽本体2の上部開口2aがカバー体10(もしくはカバー体10及び切返し装置底部)によって覆われることによって、醗酵槽本体内に堆積する被処理物Bとカバー体下面との間に拡散防止空間12が形成されている。
【0040】
吸引ユニット(図示省略)が稼動されると、この拡散防止空間12は、排出ダクト13と連通路14を介して吸引力を受ける。この吸引力によって、上記吸気ダクト15および拡散防止空間12の後端(排出口2c)を通じて空気が拡散防止空間12の内部に導入され、吸気ダクト15から排気ダクト13に向かう強い流れが形成される。
【0041】
被処理物Bの醗酵熱によって蒸散し始めた水蒸気は、上方のカバー体10によって外方への蒸散が阻止されており、拡散防止空間12を吸気ダクト15から排気ダクトに向かって流れる強い空気流によって連通路14を通って排気ダクト13に吸い込まれることになる(図4、図5参照)。
【0042】
発生した水蒸気が、狭い空間とはいえ、ほとんど拡散防止空間12に滞留する暇がなく、素早く排気ダクト13に導かれることから、被処理物Bの表面は乾燥し、更なる水蒸気の発生を促す。被処理物Bの堆積層内部は、上記空気流によって冷やされるわけではないから、従来通りの高温状態を保持している。
【0043】
吸引ユニットの吸引量を適宜調整することにより、単位時間当たりの水蒸気の捕集量を変化させることができることから、被処理物に含まれる水分調整が可能となる。これにより、醗酵の進行度合いによる適切な水分量への調整が可能となる。また、吸引量を少なくして空気流を弱くすると、被処理物Bの醗酵熱による輻射熱が拡散防止空間12に溜まり、カバー体10を暖めるので、水蒸気がカバー体裏面に結露することはない。
【0044】
切返し装置4が稼動しているときにも、水蒸気の吸引を行って構わない。水蒸気(臭気を含む)は、醗酵槽外にほとんど漏れ出すことがないので、醗酵棟の内部空間の環境を汚したり、悪影響を生じさせたりすることはない。
【0045】
排気ダクト13および吸気ダクト15の連通路14には、これを長さ方向に部分的に閉塞する遮蔽板を開閉自在に取付けるようにしても良い。また、拡散防止空間12の両端の解放部分にはフィルタを取付けることもできる。
【0046】
醗酵が進み、被処理物中に含まれる水分量が少なくなった箇所などでは、水蒸気の蒸散も少なくする必要がある。こうしたときに、遮蔽板を閉じて当該箇所の被処理物表面の極度の乾燥を抑える。蒸散された水蒸気は連通路14を通じて排気ダクト13に吸引される。
【0047】
なお、上記実施形態の装置において、被処理物の醗酵に必要な空気や水分の供給は、例えば醗酵槽の本体底部や両側壁下部などに醗酵用の空気を供給する空気供給管路を敷設するなどした空気供給手段を設け、また、切返し装置に水分の散布手段を搭載するなどして行われる。
【0048】
本発明装置に用いられるカバー体は、長さ方向に分離、結合可能な複数なパーツによって構成されるものであっても良い。また、醗酵が完了して醗酵槽本体の排出口に至った処理物は、適宜の手段により、醗酵槽本体から除去され、所定の場所に移送される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る醗酵装置の概略構成図。
【図2】図1の装置にあって切返し装置が醗酵槽本体を排出口側に移動した状態を示す装置の構成図。
【図3】図1と図2に係る本発明装置に用いられる切返し装置とカバー体との関係を示す概略構成図。
【図4】図2の醗酵槽の長手方向を横切る縦断面図。
【図5】図2の醗酵槽の長手方向を横切る縦断面図。
【図6】従来装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0050】
1−醗酵槽、2−醗酵槽本体、2a−醗酵槽本体の上部開口、2b−投入口、2c−排出口、3−レール、4−切返し装置、5−コンベア、6,7−スプロケット、10−カバー体、11−チェーン、12−拡散防止空間、13−排気ダクト、14−連通路、15−吸気ダクト、A−醗酵槽、B−被処理物、C−切返し装置、D−投入端、E−排出端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐敗性廃棄物より成る被処理物を収容する醗酵槽と、この醗酵槽の被処理物投入端から排出端にかけて走行し、被処理物の切返しを行いながら被処理物を順次排出端側に移動させる切返し装置とを備えた腐敗性廃棄物の醗酵装置において、上記醗酵槽は、切返し装置を走行させるための軌道と、被処理物が収容された醗酵槽本体の上部開口を覆うカバー体であって被処理物の表面との間に醗酵熱によって被処理物から発生した水蒸気の拡散防止空間を形成するとともに両側端部にチエーンが取付けられたカバー体と、醗酵槽本体の両側に隣接して形成された排気路と、この排気路と上記拡散防止空間とを連通させるため醗酵槽本体の両側壁に長さ方向に連続もしくは不連続に形成された連通路と、拡散防止空間内の水蒸気を含んだ空気を連通路から排気路を介して外部に排出する吸引手段とを備え、上記切返し装置は、前後部の左右上下四隅部にスプロケットが回動自在に取付けられ、これらのスプロケットをカバー体の上記チェーンに噛合させることによってカバー体内に潜り込んだ状態で上記軌道上を走行することを特徴とする腐敗性廃棄物の醗酵装置。
【請求項2】
前記カバー体は、醗酵槽の被処理物投入口端に近い部分を除く醗酵槽の上部開口をその長手方向及び幅方向の全体にわたって覆い、上部開口をほぼ水平に覆う基本位置から前記チェーンが切返し装置のスプロケットに噛合されることにより上方に盛り上がる位置に部分的に変位する請求項1記載の醗酵装置。
【請求項3】
前記カバー体が、柔軟なシート材よりなる請求項1記載の醗酵装置。
【請求項4】
前記排気路は、醗酵槽本体の上部両側に一連に形成されたコンクリート製のダクトで、醗酵槽本体の側壁上部に醗酵槽本体の長さ方向に沿って形成された連通路によって前記拡散防止空間と連通する請求項1記載の醗酵装置。
【請求項5】
前記排気路は、醗酵槽本体両側壁に形成された連通路を長さ方向に部分的に閉塞するための閉塞手段を備える請求項4記載の醗酵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−95766(P2009−95766A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269891(P2007−269891)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(302061738)株式会社セイグ (5)
【Fターム(参考)】