腐食もしくは防食環境の数値解析方法及び装置
【課題】媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法において、限定された検討対象物部位の材料分極特性を知りうる場合に、信頼性の高い解析を行うことができる解析方法を得る。
【解決手段】検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、解析分極特性決定工程において、未知である解析セグメントを挟む位置関係にある一対の材料分極特性が既知の解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。
【解決手段】検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、解析分極特性決定工程において、未知である解析セグメントを挟む位置関係にある一対の材料分極特性が既知の解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法に関するとともに、その方法を実施するための数値解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の解析は、腐食もしくは防食環境の数値解析における一つのステップで使用することが提案されている。
例えば、特許文献1において、発明者らは、電流流出源から媒質を介して流入対象物へ電流が流入する場内に検討対象物が存在する腐食環境の数値解析において、一つのステップに、この解析を使用する。
この文献に開示の解析手法においては、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントとみなして解析を進めるのに標準的な材料分極特性を使用し、この標準的な材料分極特性を、検討対象の電気的環境条件から決まる各解析セグメントの位置に応じた電位差分だけ電位方向にシフトさせて、各解析セグメントの材料分極特性(当該明細書では解析に使用する解析分極特性と記載している)を特定している。
【0003】
【特許文献1】特願2006−161264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、材料分極特性は、検討対象物と、検討対象物が接する媒質(例えば土壌)の界面に関する特性であるため、検討対象物の周囲環境(例えば、含水率、比抵抗、pHや含有イオン等)が変化する場合、材質が同一であってもその特性が変化する。即ち、位置によって環境が異なると、その位置の材料分極特性も変化する。そして、この材料分極特性は、第一義的には現場での測定により得る必要がある。
【0005】
材料分極特性を測定しようとすると、この作業は、解析対象が土壌中に埋設された埋設管の場合、具体的には、プローブ(検討対象物である埋設管と同材質でできたテストピース)を土中に挿入し、当該埋設管と短絡して土壌となじませた後、埋設管と切り離し、プローブだけについて分極特性を測定する作業となる。
【0006】
この点からすると、上記特許文献1に記載の手法は改善の余地がある。例えば、検討対象物における限定された部位で、実際に、材料分極特性を測定することができる場合に、限定された部位で測定により得られた材料分極特性を、どのように解析において使用するかについては、未だ明確に技術は確立されていない。
【0007】
本発明の目的は、媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法において、限定された検討対象物部位の材料分極特性を知りうる場合に、その既知の部位の材料分極特性を使用して、信頼性の高い解析を行うことができる数値解析方法を得るとともに、その方法を実施する数値解析装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法の第一の特徴手段は、検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
前記特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、
前記解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、
前記解析分極特性決定工程において、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定することにある。
【0009】
この解析方法にあっては、例えば、現場にて検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を測定する。そして、特定工程において、その限定箇所に関してはその測定された特性で、材料分極特性を特定する。次に、解析分極特性決定工程において、特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定し、流出入分布導出工程において、解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求めるのであるが、前記解析分極特性決定工程において、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。
このようにすると、以下に実際の数値解析結果からも判るように、解析結果として、離散度の低い、現実的な結果を得ることができる。
【0010】
この方法に使用する数値解析装置は、以下の構成を取ることとなる。
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析装置の特徴構成は、
検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段と、
前記解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段とを備え、
前記解析分極特性決定手段が、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するものとなる。
【0011】
この数値解析装置では、入力手段に、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される。
そして、解析分極特性決定手段が、入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定し、解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める。ここで、解析分極特性決定手段は、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。結果、上記数値解析方法で説明した効果を得ることができる。
【0012】
上記した、未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するに、
解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定することが好ましい。
このようにすることで、さらに現実に即した数値解析を行うことができる。
【0013】
この数値解析方法を実施するための数値解析装置は、先に説明した装置において、
解析分極特性決定手段が、未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するに、
解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するものとすることとなる。
【0014】
さて、上記の目的を達成するための、媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法の第二の特徴手段は、検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
前記特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、
前記解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、
前記解析分極特性決定工程において、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定することにある。
【0015】
この解析方法にあっても、例えば、現場にて検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を測定する。そして、特定工程において、その限定箇所に関してはその測定された特性で、材料分極特性を特定する。次に、解析分極特性決定工程において、特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定し、流出入分布導出工程において、解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求めるのであるが、前記解析分極特性決定工程において、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。
このようにすると、例えば、検討対象物が多数の直管を複雑に接続して構成される配管網等である場合にも、その検討対象物の形状を代表した現実的な解析結果を得ることができる。
【0016】
そして、この方法に使用する数値解析装置は、以下の構成を取ることとなる。
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析装置の特徴構成は、
検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段と、
前記解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段とを備え、
前記解析分極特性決定手段が、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するものとなる。
【0017】
この数値解析装置では、入力手段に、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される。
そして、解析分極特性決定手段が、入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定し、解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める。ここで、解析分極特性決定手段は、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。結果、上記数値解析方法で説明した効果を得ることができる。
【0018】
さて、これまで説明してきた距離の関数としては、距離に反比例する関数とすることが好ましい。
この関数を採用することで、現場の状況に最も近い結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この実施形態の説明にあっては、まず、本願に係る腐食もしくは防食環境の数値解析装置1の構成に関して、まず説明するとともに、装置1における処理を説明して本願に係る腐食もしくは防食環境の数値解析方法について説明する。
さらに、その後、本願に係る数値解析方法の有用性について実施した数値解析結果の比較を説明する。
【0020】
1 腐食もしくは防食環境の数値解析装置
この装置1は、所定のソフトウェアをコンピュータに格納することにより、ソフトウェアとコンピュータを成すハードウェアとの共働により実現される。その機能ブロック図を図1に示すとともに、当該図面に、装置に入力される入力情報及び装置から出力される出力情報を示した。
【0021】
図1に示すように、本願に係る腐食もしくは防食環境の数値解析装置1は、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントsからなる連続体とする解析モデルMと、媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で測定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段2と、入力手段2に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントsの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段3と、解析分極特性決定手段3で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段4とを備えて構成されている。
【0022】
ここで、解析モデルM、媒質の電気的物性及び測定された検討対象物部位の材料分極特性が、数値解析装置1の入力情報となる。解析モデルMは、後に、図3において説明するように、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントsからなる連続体とした場合の、連続体の形状、解析セグメントの分割方法(解析セグメントの数、大きさ等)が具体的な入力情報となる。通常解析セグメント数は、100〜10000に及ぶ。そして、その連続体に於ける各解析セグメントの位置、各解析セグメント間の位置関係、さらに、各解析セグメントの電気的な接続関係(どの解析セグメントと直接電気的に接続されているか)等の情報が、自動的に得られることとなる。
【0023】
一方、少なくとも、検討対象物から媒質への電流の流出入分布が、数値解析装置の出力情報となる。この出力情報は、解析手法上、図5等に示すように、各解析セグメントsの位置(セグメント番号)に対応した電位及び電流密度の形態を取る。
【0024】
解析分極特性決定手段3は、入力手段2に入力された入力情報に従って、全ての解析セグメントsの材料分極特性を決定する。
本願にあっては、この解析分極特性決定手段3において、材料分極特性が未知の解析セグメントs1について、その解析セグメントs1の材料分極特性を決定するのに独特の方法が採用されている。
【0025】
決定に関して、まず、材料分極特性が検討対象物の限定部位に関して測定されている場合、その入力に従って、その部位に対応する解析セグメントs0の材料分極特性は、その入力情報をそのまま使用する。このような材料分極特性が既知の検討対象物部位の数は、少なくとも3箇所存在するものとし、解析対象とする解析セグメントsの数は少なくとも5箇所となる。即ち、材料分極特性が未知の解析セグメントsの数が少なくとも2箇所は存在する場合を対象とする。
【0026】
未知の解析セグメントs1については、図2に示すように、当該材料分極特性の未知である解析セグメントs1を挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知の解析セグメントs00の材料分極特性のみを使用して、距離の関数で重み付けして、当該未知である解析セグメントs1の材料分極特性を決定する。ここで、直近一対とは、「未知の解析セグメントs1を含み、それを挟んで最寄に存在する材料分極特性が既知の解析セグメントs00が成す対」を意味する。
この処理において、距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントs1の材料分極特性を決定する場合に、解析セグメントsの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けを採用する。さらに、この距離の関数は、距離に反比例する関数とされている。
【0027】
未知の解析セグメントs1全てについて、解析分極特性決定手段3が順次分極特性を決定していくことにより、全ての解析セグメントsの材料分極特性を決定することができる。
図2に示す例は、A地点およびB地点に関して、その地点の材料分極特性が図の吹出しに示すように現場測定等により判明している場合に、C地点の材料分極特性を決定する例を示している。
【0028】
この手法は、数式的には下記のように書き下すことができる。
材料分極特性が既知の解析セグメントまでの、接続系統に沿った距離Lに応じた重み係数を距離の関数としてw(L)で与えるものとする。即ち、ある電流密度qが与えられたとき、C地点でのその電流密度qの決定材料分極特性は、Eを電位として以下の式に従うものとする。
q=(w(La)×fa(E)+w(Lb)×fb(E))/(w(La)+w(Lb))
ここで、fa(E)、fb(E)は、夫々、A地点の材料分極特性、B地点の材料分極特性であり、La,Lbは、夫々、C地点とA地点との接続系統に沿った距離、C地点とB地点との接続系統に沿った距離である。
本願にあっては、直近一対の材料分極特性が既知の解析セグメントs00の材料分極特性のみを使用する。この点が、解析上、非常に重要であるが、この理由は、数値解析結果の比較の項で説明する。
【0029】
流出入分布導出手段4は、解析分極特性決定手段3で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める。
この電流の流出入分布の導出に際しては、検討対象物のみが場内にあるラプラス場に関して、検討対象物を一の境界とし、他の境界は無限遠にあるとして、数値解析を実行する。この時、各解析セグメントsの材料分極特性が、各解析セグメントsの位置において、その部位における非線形の境界条件となる。その後、解析においては、連続体全体で、この境界に於ける電流の流入・流出量が均衡するように解析して電流の流出入分布を求める。この数値解析においては、公知の非線形の境界条件を取り扱うことができるラプラス場を対象とするソルバーを使用する。ソルバーは、各解析セグメントsそれぞれの電位、電流密度を出力する。
【0030】
2 腐食もしくは防食環境の数値解析方法
上記数値解析装置により使用される解析方法の処理手順を示したのが、図3である。
解析は本願に係る数値解析装置を使用して、以下の順に進める。
【0031】
2−1 解析モデルの数値解析装置内での構築
入力手段2に検討対象物の形状情報、解析セグメントの数等を入力し、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントsからなる連続体とする解析モデルMを装置内に構築する(ステップ#1)。この結果、装置1側で、連続体の形状、その連続体に於ける各解析セグメントsの位置、各解析セグメントs間の位置関係、さらに、各解析セグメントsの電気的な接続状態(どの解析セグメントsと直接電気的に接続されているか)等の情報が自動的に生成される。
【0032】
2−2 媒質の電気的物性入力
解析に使用する媒質の電気的物性を入力する(ステップ#2)
【0033】
2−3 検討対象物の限定箇所の材料分極特性入力
予め、現場での測定等で判明している、検討対象物の限定箇所の材料分極特性を入力する(ステップ#3)。
この入力操作に従って、数値解析装置1側で、材料分極特性が既知の解析セグメントs0と、未知の解析セグメントs1とが判明する。各未知の解析セグメントs1について、当該未知である解析セグメントs1を挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知の解析セグメントs00が特定される。また、一対の既知の解析セグメントs00と未知の解析セグメントs1との間の接続系統に沿った距離が特定される。
ここまでは、作業者が数値解析装置1に対して行う操作を伴う動作であり、以下の処理は、数値解析装置1内で自動的に実行される処理である。
【0034】
2−4 解析に使用する材料分極特性決定工程
解析分極特性決定手段3は、入力手段2に入力された入力情報に従って、全ての解析セグメントsの材料分極特性を決定する(ステップ#4)。
【0035】
この工程において、材料分極特性が入力情報として検討対象物の限定部位に関して特定されている場合、その部位に対応する解析セグメントs0の材料分極特性は、その入力情報をそのまま使用する。
未知の解析セグメントs1については、当該未知である解析セグメントs1を挟む位置関係にある直近一対の材料分極特性が既知の解析セグメントs00の材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、当該未知である解析セグメントs1の材料分極特性を決定する。
この処理において、距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントs1の材料分極特性を決定する場合に、解析セグメントsの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けされる。さらに、この距離の関数は、距離に反比例する関数とされる。
【0036】
2−5 電流流出入分布の導出工程
流出入分布導出手段4は、解析分極特性決定手段3で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める(ステップ#5)。
このようにして得られた、各解析セグメントsに関する電位、電流密度を出力することで、先に説明した電流流出入分布を得ることとなる。
【0037】
3 数値解析結果の比較
本願手法及び装置の有用性を証明するため、二つの解析モデルについて、実際に解析を実行した。図4は、最も単純化された解析モデルである直線モデルの構成及び、このモデルで使用した限定された検討対象物部位での材料分極特性を示したものであり、図5、図6は、それぞれ、解析結果(電位分布及び電流密度分布を共に含む)を示したものである。
図7は、中央に折れ部を有する解析モデルである折線モデルの構成及び、このモデルで使用した限定された検討対象物部位での材料分極特性を示したものであり、図8、図9、図10、図11は、それぞれ、解析結果(電位分布及び電流密度分布を共に含む)を示したものである。
【0038】
3−1 直線モデル
図4に、この直線モデルの構成を示す。Φ2cm,長さ10cmの円柱形セグメント(解析セグメントの一例)を直線状に連続体として配置し、10mおきに材料分極特性が既知とした。それぞれの点の材料分極特性を、図4に対応して示した。
この直線モデルの解析において、これまで説明してきた媒質の電気的物性である土壌比抵抗は5000Ω・cmとした。
既知の解析セグメントの材料分極特性から未知の解析セグメントの材料分極特性を得るのに、下記の二つの解析条件を検討対象とした。
(1)全て(4点)の既知の解析セグメントの材料分極特性を使用し、距離の関数を、解析セグメント間の直線距離(このモデルでは接続系統に沿った距離ともなる)の関数とする。
(2)未知の解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、既知の解析セグメントの材料分極特性のみを使用し、距離の関数を解析セグメント間の直線距離の関数とする。
さらに、これらの解析において、距離の関数としては、距離の1/2乗から距離の3乗に反比例する関数とした(以下、同じ)。これら距離の関数の差は、図に示した。
【0039】
解析結果
(1)の解析条件の結果が、図5である。
この結果から判るように、距離の関数としては、距離の1乗に反比例するものが、最も現実的な解を与える。
しかしながら本解析条件では、1乗に反比例する近似を与えた場合においても、電流密度が材料分極特性が既知の解析セグメント付近で離散的(解析値に解析セグメント間で大きな飛びがある)となる。
【0040】
(2)の解析条件の結果が、図6である。
この解析条件を使用して解析した結果、材料分極特性が既知の解析セグメント付近において離散的となる現象が(1)の解析条件の結果に比べてかなり緩和される。また、この場合も、距離の1乗に反比例する方法が最も現実的な解を与える。
【0041】
3−2 折線モデル
図7に、この折線モデルの構成を示す。Φ2cm,長さ10cmの円柱形セグメントを連続体として配置し、連続体の中央部を45°の角度で折れ曲がる構造である。このモデルの両端点及び両端点から5mの位置において、材料分極特性が既知とした。それぞれの点の材料分極特性を、図7に対応して示した。
この直線モデルの解析においても、これまで説明してきた媒質の電気的物性である土壌比抵抗は5000Ω・cmとした。
【0042】
既知の解析セグメントの材料分極特性から未知の解析セグメントの材料分極特性を得るのに、下記の三つの解析条件を検討対象とした。
(3)全て(4点)の既知の解析セグメントの材料分極特を使用し、距離の関数を、解析セグメント間の直線距離(このモデルでは接続系統に沿った距離と異なる)の関数とする。
(4)未知の解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、既知の解析セグメントの材料分極特性のみを使用し、距離の関数を、解析セグメント間の直線距離(このモデルでは接続系統に沿った距離と異なる)の関数とする。
(5)未知の解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、既知の解析セグメントの材料分極特性のみを使用し、距離の関数を解析セグメント間の接続系統に沿った距離の関数とする。
【0043】
解析結果
(3)の解析条件の結果を示したのが図8である。
直線モデルの解析結果と同様、距離の1乗に反比例するものが、最も現実的な解を与える。また、距離の1乗に反比例する近似を与えた場合においても、電流値が材料分極特性が既知の解析セグメント付近で離散的となる。
【0044】
(4)の解析条件の結果を示したのが図9である。
折線モデルにおいても、材料分極特性が既知の解析セグメント付近において離散的となる現象が(3)の解析条件を採用する場合より緩和される結果を得た。また、本解析条件を用いて解析を実施した場合においても、距離の1乗に反比例する方法が最も現実的な解を与える。
【0045】
(5)の解析条件の結果を示したのが図10である。
(4)の解析条件の結果と(5)の解析条件の結果を比較すると、マクロ的にはほぼ同様な結果となっている。
解析結果について、(4)の解析条件の結果と(5)に解析条件との結果の差が小さいことから、距離の1乗に反比例する場合について節点番号51付近の値を拡大した結果を図11に示す。
図11より、接続系統に沿った距離で決定した場合、既知の解析セグメントまでの直線距離を使用する場合に比べて、尖度が改善されていた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法において、限定された検討対象物部位の材料分極特性を知りうる場合に、その既知の部位の材料分極特性を使用して、信頼性の高い解析を行うことができる解析方法を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】数値解析装置の機能ブロック図
【図2】材料分極特性が既知の解析セグメントから未知の解析セグメントの材料分極特性を決定する場合の説明図
【図3】解析フローを示すフロー図
【図4】直線モデルの構成及び、このモデルにおける材料分極特性が既知の解析セグメント及びその材料分極特性を示す図
【図5】直線モデルにおいて(1)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図6】直線モデルにおいて(2)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図7】折線モデルの構成及び、このモデルにおける材料分極特性が既知の解析セグメント及びその材料分極特性を示す図
【図8】折線モデルにおいて(3)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図9】折線モデルにおいて(4)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図10】折線モデルにおいて(5)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図11】折線モデルにおいて(4)(5)の解析条件を使用した場合の接点番号51付近の結果を示す図
【符号の説明】
【0048】
1 数値解析装置
2 入力手段
3 解析分極特性決定手段
4 流出入分布導出手段
s 解析セグメント
M 解析モデル
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法に関するとともに、その方法を実施するための数値解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の解析は、腐食もしくは防食環境の数値解析における一つのステップで使用することが提案されている。
例えば、特許文献1において、発明者らは、電流流出源から媒質を介して流入対象物へ電流が流入する場内に検討対象物が存在する腐食環境の数値解析において、一つのステップに、この解析を使用する。
この文献に開示の解析手法においては、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントとみなして解析を進めるのに標準的な材料分極特性を使用し、この標準的な材料分極特性を、検討対象の電気的環境条件から決まる各解析セグメントの位置に応じた電位差分だけ電位方向にシフトさせて、各解析セグメントの材料分極特性(当該明細書では解析に使用する解析分極特性と記載している)を特定している。
【0003】
【特許文献1】特願2006−161264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、材料分極特性は、検討対象物と、検討対象物が接する媒質(例えば土壌)の界面に関する特性であるため、検討対象物の周囲環境(例えば、含水率、比抵抗、pHや含有イオン等)が変化する場合、材質が同一であってもその特性が変化する。即ち、位置によって環境が異なると、その位置の材料分極特性も変化する。そして、この材料分極特性は、第一義的には現場での測定により得る必要がある。
【0005】
材料分極特性を測定しようとすると、この作業は、解析対象が土壌中に埋設された埋設管の場合、具体的には、プローブ(検討対象物である埋設管と同材質でできたテストピース)を土中に挿入し、当該埋設管と短絡して土壌となじませた後、埋設管と切り離し、プローブだけについて分極特性を測定する作業となる。
【0006】
この点からすると、上記特許文献1に記載の手法は改善の余地がある。例えば、検討対象物における限定された部位で、実際に、材料分極特性を測定することができる場合に、限定された部位で測定により得られた材料分極特性を、どのように解析において使用するかについては、未だ明確に技術は確立されていない。
【0007】
本発明の目的は、媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法において、限定された検討対象物部位の材料分極特性を知りうる場合に、その既知の部位の材料分極特性を使用して、信頼性の高い解析を行うことができる数値解析方法を得るとともに、その方法を実施する数値解析装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法の第一の特徴手段は、検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
前記特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、
前記解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、
前記解析分極特性決定工程において、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定することにある。
【0009】
この解析方法にあっては、例えば、現場にて検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を測定する。そして、特定工程において、その限定箇所に関してはその測定された特性で、材料分極特性を特定する。次に、解析分極特性決定工程において、特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定し、流出入分布導出工程において、解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求めるのであるが、前記解析分極特性決定工程において、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。
このようにすると、以下に実際の数値解析結果からも判るように、解析結果として、離散度の低い、現実的な結果を得ることができる。
【0010】
この方法に使用する数値解析装置は、以下の構成を取ることとなる。
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析装置の特徴構成は、
検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段と、
前記解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段とを備え、
前記解析分極特性決定手段が、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するものとなる。
【0011】
この数値解析装置では、入力手段に、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される。
そして、解析分極特性決定手段が、入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定し、解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める。ここで、解析分極特性決定手段は、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。結果、上記数値解析方法で説明した効果を得ることができる。
【0012】
上記した、未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するに、
解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定することが好ましい。
このようにすることで、さらに現実に即した数値解析を行うことができる。
【0013】
この数値解析方法を実施するための数値解析装置は、先に説明した装置において、
解析分極特性決定手段が、未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するに、
解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するものとすることとなる。
【0014】
さて、上記の目的を達成するための、媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法の第二の特徴手段は、検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
前記特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、
前記解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、
前記解析分極特性決定工程において、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定することにある。
【0015】
この解析方法にあっても、例えば、現場にて検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を測定する。そして、特定工程において、その限定箇所に関してはその測定された特性で、材料分極特性を特定する。次に、解析分極特性決定工程において、特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定し、流出入分布導出工程において、解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求めるのであるが、前記解析分極特性決定工程において、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。
このようにすると、例えば、検討対象物が多数の直管を複雑に接続して構成される配管網等である場合にも、その検討対象物の形状を代表した現実的な解析結果を得ることができる。
【0016】
そして、この方法に使用する数値解析装置は、以下の構成を取ることとなる。
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析装置の特徴構成は、
検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段と、
前記解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段とを備え、
前記解析分極特性決定手段が、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するものとなる。
【0017】
この数値解析装置では、入力手段に、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される。
そして、解析分極特性決定手段が、入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定し、解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める。ここで、解析分極特性決定手段は、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する。結果、上記数値解析方法で説明した効果を得ることができる。
【0018】
さて、これまで説明してきた距離の関数としては、距離に反比例する関数とすることが好ましい。
この関数を採用することで、現場の状況に最も近い結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この実施形態の説明にあっては、まず、本願に係る腐食もしくは防食環境の数値解析装置1の構成に関して、まず説明するとともに、装置1における処理を説明して本願に係る腐食もしくは防食環境の数値解析方法について説明する。
さらに、その後、本願に係る数値解析方法の有用性について実施した数値解析結果の比較を説明する。
【0020】
1 腐食もしくは防食環境の数値解析装置
この装置1は、所定のソフトウェアをコンピュータに格納することにより、ソフトウェアとコンピュータを成すハードウェアとの共働により実現される。その機能ブロック図を図1に示すとともに、当該図面に、装置に入力される入力情報及び装置から出力される出力情報を示した。
【0021】
図1に示すように、本願に係る腐食もしくは防食環境の数値解析装置1は、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントsからなる連続体とする解析モデルMと、媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で測定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段2と、入力手段2に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントsの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段3と、解析分極特性決定手段3で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段4とを備えて構成されている。
【0022】
ここで、解析モデルM、媒質の電気的物性及び測定された検討対象物部位の材料分極特性が、数値解析装置1の入力情報となる。解析モデルMは、後に、図3において説明するように、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントsからなる連続体とした場合の、連続体の形状、解析セグメントの分割方法(解析セグメントの数、大きさ等)が具体的な入力情報となる。通常解析セグメント数は、100〜10000に及ぶ。そして、その連続体に於ける各解析セグメントの位置、各解析セグメント間の位置関係、さらに、各解析セグメントの電気的な接続関係(どの解析セグメントと直接電気的に接続されているか)等の情報が、自動的に得られることとなる。
【0023】
一方、少なくとも、検討対象物から媒質への電流の流出入分布が、数値解析装置の出力情報となる。この出力情報は、解析手法上、図5等に示すように、各解析セグメントsの位置(セグメント番号)に対応した電位及び電流密度の形態を取る。
【0024】
解析分極特性決定手段3は、入力手段2に入力された入力情報に従って、全ての解析セグメントsの材料分極特性を決定する。
本願にあっては、この解析分極特性決定手段3において、材料分極特性が未知の解析セグメントs1について、その解析セグメントs1の材料分極特性を決定するのに独特の方法が採用されている。
【0025】
決定に関して、まず、材料分極特性が検討対象物の限定部位に関して測定されている場合、その入力に従って、その部位に対応する解析セグメントs0の材料分極特性は、その入力情報をそのまま使用する。このような材料分極特性が既知の検討対象物部位の数は、少なくとも3箇所存在するものとし、解析対象とする解析セグメントsの数は少なくとも5箇所となる。即ち、材料分極特性が未知の解析セグメントsの数が少なくとも2箇所は存在する場合を対象とする。
【0026】
未知の解析セグメントs1については、図2に示すように、当該材料分極特性の未知である解析セグメントs1を挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知の解析セグメントs00の材料分極特性のみを使用して、距離の関数で重み付けして、当該未知である解析セグメントs1の材料分極特性を決定する。ここで、直近一対とは、「未知の解析セグメントs1を含み、それを挟んで最寄に存在する材料分極特性が既知の解析セグメントs00が成す対」を意味する。
この処理において、距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントs1の材料分極特性を決定する場合に、解析セグメントsの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けを採用する。さらに、この距離の関数は、距離に反比例する関数とされている。
【0027】
未知の解析セグメントs1全てについて、解析分極特性決定手段3が順次分極特性を決定していくことにより、全ての解析セグメントsの材料分極特性を決定することができる。
図2に示す例は、A地点およびB地点に関して、その地点の材料分極特性が図の吹出しに示すように現場測定等により判明している場合に、C地点の材料分極特性を決定する例を示している。
【0028】
この手法は、数式的には下記のように書き下すことができる。
材料分極特性が既知の解析セグメントまでの、接続系統に沿った距離Lに応じた重み係数を距離の関数としてw(L)で与えるものとする。即ち、ある電流密度qが与えられたとき、C地点でのその電流密度qの決定材料分極特性は、Eを電位として以下の式に従うものとする。
q=(w(La)×fa(E)+w(Lb)×fb(E))/(w(La)+w(Lb))
ここで、fa(E)、fb(E)は、夫々、A地点の材料分極特性、B地点の材料分極特性であり、La,Lbは、夫々、C地点とA地点との接続系統に沿った距離、C地点とB地点との接続系統に沿った距離である。
本願にあっては、直近一対の材料分極特性が既知の解析セグメントs00の材料分極特性のみを使用する。この点が、解析上、非常に重要であるが、この理由は、数値解析結果の比較の項で説明する。
【0029】
流出入分布導出手段4は、解析分極特性決定手段3で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める。
この電流の流出入分布の導出に際しては、検討対象物のみが場内にあるラプラス場に関して、検討対象物を一の境界とし、他の境界は無限遠にあるとして、数値解析を実行する。この時、各解析セグメントsの材料分極特性が、各解析セグメントsの位置において、その部位における非線形の境界条件となる。その後、解析においては、連続体全体で、この境界に於ける電流の流入・流出量が均衡するように解析して電流の流出入分布を求める。この数値解析においては、公知の非線形の境界条件を取り扱うことができるラプラス場を対象とするソルバーを使用する。ソルバーは、各解析セグメントsそれぞれの電位、電流密度を出力する。
【0030】
2 腐食もしくは防食環境の数値解析方法
上記数値解析装置により使用される解析方法の処理手順を示したのが、図3である。
解析は本願に係る数値解析装置を使用して、以下の順に進める。
【0031】
2−1 解析モデルの数値解析装置内での構築
入力手段2に検討対象物の形状情報、解析セグメントの数等を入力し、検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントsからなる連続体とする解析モデルMを装置内に構築する(ステップ#1)。この結果、装置1側で、連続体の形状、その連続体に於ける各解析セグメントsの位置、各解析セグメントs間の位置関係、さらに、各解析セグメントsの電気的な接続状態(どの解析セグメントsと直接電気的に接続されているか)等の情報が自動的に生成される。
【0032】
2−2 媒質の電気的物性入力
解析に使用する媒質の電気的物性を入力する(ステップ#2)
【0033】
2−3 検討対象物の限定箇所の材料分極特性入力
予め、現場での測定等で判明している、検討対象物の限定箇所の材料分極特性を入力する(ステップ#3)。
この入力操作に従って、数値解析装置1側で、材料分極特性が既知の解析セグメントs0と、未知の解析セグメントs1とが判明する。各未知の解析セグメントs1について、当該未知である解析セグメントs1を挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知の解析セグメントs00が特定される。また、一対の既知の解析セグメントs00と未知の解析セグメントs1との間の接続系統に沿った距離が特定される。
ここまでは、作業者が数値解析装置1に対して行う操作を伴う動作であり、以下の処理は、数値解析装置1内で自動的に実行される処理である。
【0034】
2−4 解析に使用する材料分極特性決定工程
解析分極特性決定手段3は、入力手段2に入力された入力情報に従って、全ての解析セグメントsの材料分極特性を決定する(ステップ#4)。
【0035】
この工程において、材料分極特性が入力情報として検討対象物の限定部位に関して特定されている場合、その部位に対応する解析セグメントs0の材料分極特性は、その入力情報をそのまま使用する。
未知の解析セグメントs1については、当該未知である解析セグメントs1を挟む位置関係にある直近一対の材料分極特性が既知の解析セグメントs00の材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、当該未知である解析セグメントs1の材料分極特性を決定する。
この処理において、距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントs1の材料分極特性を決定する場合に、解析セグメントsの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けされる。さらに、この距離の関数は、距離に反比例する関数とされる。
【0036】
2−5 電流流出入分布の導出工程
流出入分布導出手段4は、解析分極特性決定手段3で決定された材料分極特性を使用して、検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める(ステップ#5)。
このようにして得られた、各解析セグメントsに関する電位、電流密度を出力することで、先に説明した電流流出入分布を得ることとなる。
【0037】
3 数値解析結果の比較
本願手法及び装置の有用性を証明するため、二つの解析モデルについて、実際に解析を実行した。図4は、最も単純化された解析モデルである直線モデルの構成及び、このモデルで使用した限定された検討対象物部位での材料分極特性を示したものであり、図5、図6は、それぞれ、解析結果(電位分布及び電流密度分布を共に含む)を示したものである。
図7は、中央に折れ部を有する解析モデルである折線モデルの構成及び、このモデルで使用した限定された検討対象物部位での材料分極特性を示したものであり、図8、図9、図10、図11は、それぞれ、解析結果(電位分布及び電流密度分布を共に含む)を示したものである。
【0038】
3−1 直線モデル
図4に、この直線モデルの構成を示す。Φ2cm,長さ10cmの円柱形セグメント(解析セグメントの一例)を直線状に連続体として配置し、10mおきに材料分極特性が既知とした。それぞれの点の材料分極特性を、図4に対応して示した。
この直線モデルの解析において、これまで説明してきた媒質の電気的物性である土壌比抵抗は5000Ω・cmとした。
既知の解析セグメントの材料分極特性から未知の解析セグメントの材料分極特性を得るのに、下記の二つの解析条件を検討対象とした。
(1)全て(4点)の既知の解析セグメントの材料分極特性を使用し、距離の関数を、解析セグメント間の直線距離(このモデルでは接続系統に沿った距離ともなる)の関数とする。
(2)未知の解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、既知の解析セグメントの材料分極特性のみを使用し、距離の関数を解析セグメント間の直線距離の関数とする。
さらに、これらの解析において、距離の関数としては、距離の1/2乗から距離の3乗に反比例する関数とした(以下、同じ)。これら距離の関数の差は、図に示した。
【0039】
解析結果
(1)の解析条件の結果が、図5である。
この結果から判るように、距離の関数としては、距離の1乗に反比例するものが、最も現実的な解を与える。
しかしながら本解析条件では、1乗に反比例する近似を与えた場合においても、電流密度が材料分極特性が既知の解析セグメント付近で離散的(解析値に解析セグメント間で大きな飛びがある)となる。
【0040】
(2)の解析条件の結果が、図6である。
この解析条件を使用して解析した結果、材料分極特性が既知の解析セグメント付近において離散的となる現象が(1)の解析条件の結果に比べてかなり緩和される。また、この場合も、距離の1乗に反比例する方法が最も現実的な解を与える。
【0041】
3−2 折線モデル
図7に、この折線モデルの構成を示す。Φ2cm,長さ10cmの円柱形セグメントを連続体として配置し、連続体の中央部を45°の角度で折れ曲がる構造である。このモデルの両端点及び両端点から5mの位置において、材料分極特性が既知とした。それぞれの点の材料分極特性を、図7に対応して示した。
この直線モデルの解析においても、これまで説明してきた媒質の電気的物性である土壌比抵抗は5000Ω・cmとした。
【0042】
既知の解析セグメントの材料分極特性から未知の解析セグメントの材料分極特性を得るのに、下記の三つの解析条件を検討対象とした。
(3)全て(4点)の既知の解析セグメントの材料分極特を使用し、距離の関数を、解析セグメント間の直線距離(このモデルでは接続系統に沿った距離と異なる)の関数とする。
(4)未知の解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、既知の解析セグメントの材料分極特性のみを使用し、距離の関数を、解析セグメント間の直線距離(このモデルでは接続系統に沿った距離と異なる)の関数とする。
(5)未知の解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、既知の解析セグメントの材料分極特性のみを使用し、距離の関数を解析セグメント間の接続系統に沿った距離の関数とする。
【0043】
解析結果
(3)の解析条件の結果を示したのが図8である。
直線モデルの解析結果と同様、距離の1乗に反比例するものが、最も現実的な解を与える。また、距離の1乗に反比例する近似を与えた場合においても、電流値が材料分極特性が既知の解析セグメント付近で離散的となる。
【0044】
(4)の解析条件の結果を示したのが図9である。
折線モデルにおいても、材料分極特性が既知の解析セグメント付近において離散的となる現象が(3)の解析条件を採用する場合より緩和される結果を得た。また、本解析条件を用いて解析を実施した場合においても、距離の1乗に反比例する方法が最も現実的な解を与える。
【0045】
(5)の解析条件の結果を示したのが図10である。
(4)の解析条件の結果と(5)の解析条件の結果を比較すると、マクロ的にはほぼ同様な結果となっている。
解析結果について、(4)の解析条件の結果と(5)に解析条件との結果の差が小さいことから、距離の1乗に反比例する場合について節点番号51付近の値を拡大した結果を図11に示す。
図11より、接続系統に沿った距離で決定した場合、既知の解析セグメントまでの直線距離を使用する場合に比べて、尖度が改善されていた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して検討対象物から媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法において、限定された検討対象物部位の材料分極特性を知りうる場合に、その既知の部位の材料分極特性を使用して、信頼性の高い解析を行うことができる解析方法を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】数値解析装置の機能ブロック図
【図2】材料分極特性が既知の解析セグメントから未知の解析セグメントの材料分極特性を決定する場合の説明図
【図3】解析フローを示すフロー図
【図4】直線モデルの構成及び、このモデルにおける材料分極特性が既知の解析セグメント及びその材料分極特性を示す図
【図5】直線モデルにおいて(1)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図6】直線モデルにおいて(2)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図7】折線モデルの構成及び、このモデルにおける材料分極特性が既知の解析セグメント及びその材料分極特性を示す図
【図8】折線モデルにおいて(3)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図9】折線モデルにおいて(4)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図10】折線モデルにおいて(5)の解析条件を使用した場合の結果を示す図
【図11】折線モデルにおいて(4)(5)の解析条件を使用した場合の接点番号51付近の結果を示す図
【符号の説明】
【0048】
1 数値解析装置
2 入力手段
3 解析分極特性決定手段
4 流出入分布導出手段
s 解析セグメント
M 解析モデル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法であって、
検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
前記特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、
前記解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、
前記解析分極特性決定工程において、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する腐食もしくは防食環境の数値解析方法。
【請求項2】
未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するに、
解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する請求項1記載の腐食もしくは防食環境の数値解析方法。
【請求項3】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法であって、
検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
前記特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、
前記解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、
前記解析分極特性決定工程において、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する腐食もしくは防食環境の数値解析方法。
【請求項4】
前記距離の関数が、距離に反比例する関数である請求項1〜3のいずれか一項記載の腐食もしくは防食環境の数値解析方法。
【請求項5】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析装置であって、
検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段と、
前記解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段とを備え、
前記解析分極特性決定手段が、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する腐食もしくは防食環境の数値解析装置。
【請求項6】
前記解析分極特性決定手段が、未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するに、
解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する請求項5記載の腐食もしくは防食環境の数値解析装置。
【請求項7】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析装置であって、
検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段と、
前記解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段とを備え、
前記解析分極特性決定手段が、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する腐食もしくは防食環境の数値解析装置。
【請求項8】
前記距離の関数が、距離に反比例する関数である請求項5〜7のいずれか一項記載の腐食もしくは防食環境の数値解析装置。
【請求項1】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法であって、
検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
前記特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、
前記解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、
前記解析分極特性決定工程において、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する腐食もしくは防食環境の数値解析方法。
【請求項2】
未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するに、
解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する請求項1記載の腐食もしくは防食環境の数値解析方法。
【請求項3】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析方法であって、
検討対象物の限定箇所で当該部位の材料分極特性を特定する特定工程と、
前記特定工程で得られた材料分極特性を使用して、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定工程と、
前記解析分極特性決定工程で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出工程とを実行するに、
前記解析分極特性決定工程において、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する腐食もしくは防食環境の数値解析方法。
【請求項4】
前記距離の関数が、距離に反比例する関数である請求項1〜3のいずれか一項記載の腐食もしくは防食環境の数値解析方法。
【請求項5】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析装置であって、
検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段と、
前記解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段とを備え、
前記解析分極特性決定手段が、材料分極特性が未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する腐食もしくは防食環境の数値解析装置。
【請求項6】
前記解析分極特性決定手段が、未知である解析セグメントを挟む位置関係にある直近一対の、材料分極特性が既知である解析セグメントの材料分極特性のみに基づいて、距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定するに、
解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、前記未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する請求項5記載の腐食もしくは防食環境の数値解析装置。
【請求項7】
媒質内に存在する検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とみなし、電位と電流の関係を表す材料分極特性を使用して前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める腐食もしくは防食環境の数値解析装置であって、
検討対象物を電気的に接続された複数の解析セグメントからなる連続体とする解析モデルと、前記媒質の電気的物性と、検討対象物の限定箇所で特定された当該部位の材料分極特性とが入力される入力手段と、
前記入力手段に入力された入力情報に従って、全ての前記解析セグメントの材料分極特性を決定する解析分極特性決定手段と、
前記解析分極特性決定手段で決定された材料分極特性を使用して、前記検討対象物から前記媒質への電流の流出入分布を求める流出入分布導出手段とを備え、
前記解析分極特性決定手段が、既知の解析セグメントの材料分極特性に基づいて、解析セグメントの接続状態により決定される接続系統に沿った距離の関数で重み付けして、未知である解析セグメントの材料分極特性を決定する腐食もしくは防食環境の数値解析装置。
【請求項8】
前記距離の関数が、距離に反比例する関数である請求項5〜7のいずれか一項記載の腐食もしくは防食環境の数値解析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−249562(P2008−249562A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92563(P2007−92563)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】
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