説明

腕カバー

【課題】ほこりや毛髪などを吸着し難い腕カバーを提供する。
【解決手段】腕カバーの胴体部分1を構成するフィルムまたは布を、有機高分子材料によって形成し、かつ、帯電防止加工を施す。特に、帯電防止剤が練り込まれたポリエチレンからなるフィルムによって胴体部分1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕カバー(アームカバーとも呼ばれる)に関するものであり、とりわけ、衛生的であることを求められる作業現場において装着される腕カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
腕カバーは、液体や固体が衣服の袖口等に触れて汚れるのを防ぐために装着されるものであるが(例えば、特許文献1)、食品工場など、衛生的であることが求められる工場では、逆に、作業者の上着の袖などを製品に触れさせないという目的からも、装着が求められる。
また、比較的安価な費用で効果的な衛生管理を行う場合には、薄いポリマー製フィルムにて簡素に作った腕カバーを用い、使い捨てすることによって該腕カバーの衛生が保たれる。
【0003】
しかしながら、本発明者らが、上記のような衛生管理のために用いられる腕カバーの使用状況を詳細に検討したところ、腕カバーを構成する布やフィルムの材料によっては該腕カバーが帯電してほこりや毛髪などを吸着し、該腕カバーを装着した作業者が腕を加工中の製品やトレイに接近させたときに、吸着されていた毛髪等が該製品やトレイに移る場合があるということがわかった。
このような現象が工程で起きると、製品のパッケージに毛髪等が封入されてしまい、工場の衛生管理が問われるような問題にもなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−4116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、本発明者らが着目した上記問題を解決し、ほこりや毛髪などを吸着し難い腕カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)フィルムまたは布からなる筒状の胴体部分を有する腕カバーであって、
前記フィルムまたは布が、有機高分子材料からなりかつ帯電防止加工が施されたものである、前記腕カバー。
(2)前記筒状の胴体部分がフィルムからなる、上記(1)記載の腕カバー。
(3)前記フィルムが、帯電防止剤が練り込まれたポリエチレンからなるものである、上記(2)記載の腕カバー。
【発明の効果】
【0007】
本発明の腕カバーは、その筒状の胴体部分を構成するフィルムまたは布が、有機高分子材料からなりかつ帯電防止加工が施されている。これによって、当該腕カバーは、安価で軽くて丈夫であるという有機高分子材料の特徴を持ちながらも、全体として静電気を帯び難いものとなっており、ほこりや毛髪などを吸着し難く、製品への毛髪等の混入を抑制することができる。
【0008】
特に、当該腕カバーの円筒状の胴体部分の材料をポリエチレン製のフィルムとし、該フィルムの表面に帯電防止加工を施すことによって、当該腕カバーを安価で大量に生産することが可能になり、コスト上、使い捨て腕カバーとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の腕カバーの一実施例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の腕カバーを、実施例に沿って詳細に説明する。
図1に形態の一例を示すように、当該腕カバーは、全体の形状自体は従来公知の種々の腕カバーと同様であって、腕を通すため筒状の胴体部分1を有し、該胴体部分は両端に開口部2、3を有するものである。該胴体部分1は、有機高分子材料からなるフィルム、または、有機高分子材料からなる繊維や糸を用いて形成した布からなり、これらフィルムや布は、本来的には材料に起因して強く帯電する性質を持っているが、帯電防止加工が施されているので、全体として帯電し難い腕カバーとなっており、ほこりや毛髪などを吸着・放出し難いものとなっている。
【0011】
筒状の胴体部分は、有機高分子材料を押し出して成形したフィルム、または、有機高分子材料からなる繊維や糸を用いて形成した布からなる。布は、織物、編み物、不織布などであってよい。
これらフィルムや布に用いられる有機高分子材料は、従来公知の腕カバーや衣服の材料として利用可能なものであればよく、特に限定はされないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ポリ塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴムなどが汎用的で好ましい材料である。
【0012】
筒状の胴体部分は、シート状のフィルムや布を円筒状に巻いて接合したものや、筒状に編んだものであってもよいが、有機高分子材料からなるフィルムを円筒状に押し出し成形したものを胴体部分に用いれば、安価な腕カバーを得ることができ、使い捨てが可能になるので好ましい。
有機高分子材料からなるフィルムのなかでもポリエチレンフィルムは、安価で、耐水性、耐薬品性に優れ、強靭であり、好ましい材料である。
ポリエチレンフィルムのなかでも、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、柔らかいので使用時の感触が良く、特に直鎖状低密度ポリエチレンは機械的強度が高く、腕カバーとして好ましい材料である。
前記胴体部分を構成するフィルムや布の厚さは、必要とする機械的強度に応じて適宜決定すればよいが、20μm〜100μm程度が好ましい。また、そのなかでもLLDPEなどのポリエチレンフィルムを用い、使い捨て用とする場合には、20μm〜40μm程度が好ましい厚さである。
【0013】
本発明において用いられるフィルムまたは布に施される帯電防止加工は、有機高分子材料に対する従来公知の帯電防止加工技術を参照してよく、例えば、フィルムや布を構成するための有機高分子材料に、予め、帯電性を低下させる添加剤(界面活性剤、電気伝導度の大きい炭素、金属、金属酸化物の粒子や繊維など)を練り込んでおく方法や、フィルムや布に対して表面に帯電防止剤を塗布する方法などが代表的なものとして挙げられる。
特に、ポリエチレンフィルムに対しては、帯電性を低下させるための前記添加剤を原料の段階で練り込んでおく方法が一般的であり好ましい方法である。
帯電性を低下させる添加剤の組成や、原料ポリエチレンへの添加方法、添加量、混練〜成形法、または、ポリエチレンフィルムまたは布の表面への帯電防止剤の塗布方法、ポリエチレンフィルムの表面への帯電防止層の形成方法などは、従来技術を参照してもよい。
【0014】
当該腕カバーの各部の構成や形状、例えば、筒状の胴体部分の全体のプロフィール(中間部分が両端部よりも膨らんでいるか、手首側の外径が肩側の外径よりも細いか、全長にわたってストレートであるか)、縫製上の構造、開口部を絞るための構造、全長、内径などは、従来公知の腕カバーの構成を参照してもよい。以下に、好ましい例を挙げる。
【0015】
当該腕カバーの長さは、手首の付近だけを覆う短いもの、前腕(手首から肘まで)を覆う一般的なもの、手首から肘を越えて上腕までを覆うものなどであってもよい。
前腕を覆う場合、当該腕カバーの長さは、限定はされないが、385mm〜415mm程度が好ましい。
【0016】
筒状の胴体部分は、柔軟なフィルムまたは布からなるので、その断面形状(長手方向に垂直に切断したときの断面の形状)は不定であるが、該胴体部分の胴体周囲を最も拡張させたときの断面形状が円形であることが好ましい。
該胴体部分の口径は、限定はされないが、190mm〜210mm程度が好ましい。
また、該胴体部分の口径は、図1のように、全長にわたって同じ寸法とすれば、製造がより容易になり、また、使用時にも方向を選択する手間が省けて好ましい態様である。また、手首側の口径を小さくするなど、口径寸法が均一でない態様としてもよい。
【0017】
当該腕カバーは、実際の製品では、使用者の腕の長さ、腕の太さに応じて、小、中、大など、異なるサイズのものを提供してもよい。
【0018】
当該腕カバーを装着したときにずれないように、胴体部分1の両端の開口部2、3には、図1に示すように、弾性的に収縮する構成を付与し、開口部を手首や腕にフィットさせることが好ましい。
開口部を弾性的に収縮させる構成は、従来公知の腕カバーの構成を参照すればよいが、例えば、開口部を全周取り巻く紐通し用のパイピングが設けられてその内部に輪ゴムが収容されている構成(これは、開口部に該開口を取り巻くように輪ゴムを配置し、該輪ゴムを内部に収容するように端部を折り返し熱圧着してパイピングとすることによって得られる)や、開口部にゴム紐を縫い付けて収縮させる構成などが挙げられる。なかでも、前者の輪ゴムをパイピングに収容する構成は、安価でかつ製造が容易であり、使い捨て用としては好ましい構成である。
【0019】
当該腕カバーの色は特に限定はされないが、例えば、食品加工工程において、万が一、当該腕カバーが粉砕・混練装置等に混入した場合、当該腕カバーに目立つような着色をしておけば、混入の事実を知らなくても発見され易くなる。このような点からは、胴体部分を構成するフィルムや布、開口部を収縮させるための輪ゴムなど、当該腕カバーを構成する全ての部品は、目立ちやすい有色であるのが好ましい。特に、青色は、青色の食材が少ないことから、食材の中に混入しても目立ちやすく、事故発見のためには好ましい色である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によって、腕カバーがほこりや毛髪などを吸着するといったことが解消され、例えば、食品加工を行う工場において、製品へのほこりや毛髪の混入を抑制することが可能になった。
【符号の説明】
【0021】
1 筒状の胴体部分
2 一方の開口部
3 他方の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムまたは布からなる筒状の胴体部分を有する腕カバーであって、
前記フィルムまたは布が、有機高分子材料からなりかつ帯電防止加工が施されたものである、前記腕カバー。
【請求項2】
前記筒状の胴体部分がフィルムからなる、請求項1記載の腕カバー。
【請求項3】
前記フィルムが、帯電防止剤が練り込まれたポリエチレンからなるものである、請求項2記載の腕カバー。

【図1】
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【公開番号】特開2012−251272(P2012−251272A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126742(P2011−126742)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(591145483)原田産業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】