説明

腕支持具

【課題】作業者の腕を上方へ上げた状態に好適に支持できると共、構成が簡単で使い勝手が良く、作業者への装着性が良い腕支持具を提供すること。
【解決手段】上腕部を載せた状態に保持できるように凹状部を備える腕受け部10と、腕受け部10を下から支持するように、上端部21が腕受け部10に固定され、下側が作業者の胴体前面に倣って位置するように上下方向に延びる支持部材20と、支持部材20の上下方向の中途部に設けられ、作業者の胴体の脇下から腰までの間の中途部に巻かれた胴ベルトへ装着される上部の装着部30と、支持部材20の下端部に設けられ、作業者の腰も巻かれた腰ベルトへ装着される下部の装着部40とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上方の対象物に対して作業をする作業者やカメラマン等の腕を、上方へ上げた状態に保持できる腕支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
ブドウ等の農作物が棚栽培されている場合の農作業は、手及び腕を長時間に亘って上げたままで行うことが多く、疲労が蓄積しやすい作業になっている。また、農作業の他にも、下から見上げて腕を上げつつ行う作業は、重労働になっている。さらに、ビデオ映像を撮影するカメラマンは、カメラのブレの発生を抑制しつつ、長時間にわたって腕を上げた状態を維持する必要がある。
【0003】
これに対して、スイング支点を中心に回動する腕載せ台を、弾性部材であるバネによって梃子の原理で付勢して、作業者の腕を上げる肩掛け式腕支え補助装具が開示されている(特許文献1参照)。
この補助装具の場合、構成が複雑になって軽量化や低価格化が難しく、作業者に対しての装着性の向上が難しいものと考えられる。また、機構が複雑であるため、自由度がないものと考えられる。
【0004】
なお、この補助装具の場合、通常のバネによる弾性力を用いているため、バネの変位に比例して発生力(付勢力)が変化する。このため、作業者の腕を上げるための付勢力が、腕の位置によって変化し易いことになる。つまり、腕が最も上がった状態の最も付勢力を必要とする位置では、その付勢力がかえって極端に落ちてしまうことになり易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−107861号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
腕支持具に関して解決しようとする問題点は、構成が簡単で使い勝手が良く、作業者への装着性が良い腕支持具が提案されていない点にある。
そこで本発明の目的は、作業者の腕を上方へ上げた状態に好適に支持できると共、構成が簡単で使い勝手が良く、作業者への装着性が良い腕支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる腕支持具の一形態によれば、上腕部を載せた状態に保持できるように凹状部を備える腕受け部と、該腕受け部を下から支持するように、上端部が前記腕受け部に固定され、下側が作業者の胴体に倣って位置するように上下方向に延びる支持部材と、該支持部材の上下方向の中途部に設けられ、作業者の胴体の脇下から腰までの間の中途部に巻かれた胴ベルトへ装着される上部の装着部と、前記支持部材の下端部に設けられ、作業者の腰に巻かれた腰ベルトへ装着される下部の装着部とを具備する。
【0008】
また、本発明にかかる腕支持具の一形態によれば、前記腕受け部は前記支持部材の上端部に対して、角度調整可能に固定されていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明にかかる腕支持具の一形態によれば、前記支持部材は長尺の柄状に設けられ、上端部が前記腕受け部を受けて支持するように前方へ屈曲され、下端部が作業者の胴体に沿うように緩く後方へ屈曲されていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明にかかる腕支持具の一形態によれば、前記上部の装着部及び前記下部の装着部は、前記胴ベルト及び前記腰ベルトが差し込まれる隙間となる挟持部を備えることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明にかかる腕支持具の一形態によれば、前記上部の装着部に設けられた上部の挟持部は、前記胴ベルトが上から差し込まれる状態となるように上方に開いて形成され、前記下部の装着部に設けられた下部の挟持部は、前記腰ベルトが下から差し込まれる状態となるように下方に開いて形成されていることで構成されていることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる腕支持具の一形態によれば、前記挟持部は、前記支持部材と、該支持部材にボルトとナットで固定される薄板状の挟持片とによって設けられ、該挟持片の固定位置が調整できるように前記支持部材には長孔が設けられていることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる腕支持具の一形態によれば、前記上部の装着部の挟持片は前記支持部材の前面側に固定され、前記下部の装着部の挟持片は前記支持部材の後面側に固定されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の腕支持具によれば、作業者の腕を上方へ上げた状態に好適に支持できると共、構成が簡単で使い勝手が良く、作業者への装着性が良いという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る腕支持具の形態例を示す斜視図である。
【図2】図1の形態例の作業者への装着状態を示す側面図である。
【図3】図1の形態例の使用状態を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の腕支持具に係る最良の形態例を、添付図面と共に詳細に説明する。
この腕支持具は、上方の対象物に対する作業者やカメラマン等の腕を、上方へ上げた状態に保持できるものである。図2には、片腕を支持するように一つの腕支持具を作業者に装着した場合を示してあるが、二つの腕支持具を作業者に装着して両腕を支持してもよいのは勿論である。
【0015】
10は腕受け部であり、上腕部1を載せた状態に保持できるように凹状部11を備える。凹状部11は、本形態例のように平板をU字状或いはC字状に曲げることで形成することができる。本形態例の腕受け部10の曲げ板12の内面には、スポンジ等の緩衝部材13が貼られており、作業者の上腕部1を受けるクッションとなっている。なお、腕受け部10の形態は、これに限定されるものではなく、上腕部1を受けて滑り落ちることを防止できる凹状や溝状或いは実質的に凹部を形成するストッパ状の形態部分を備えればよい。
【0016】
また、この腕受け部10は、後述する支持部材20の上端部21に対して、角度調整可能に固定されている。本形態例では、図2に示すように、ボルト14と蝶ナット15とによって、腕受け部10が支持部材20に固定されており、蝶ナット15を緩めることで、腕受け部10の角度を適宜調整できるようになっている。これにより、種々の作業に合わせて好適に対応できる。
この腕受け部10は、上方が開放されているため、緊急時等には、腕を容易に外すことができ、使用時の安全性を好適に確保することができる。
【0017】
20は支持部材であり、腕受け部10を下から支持するように、上端部21が腕受け部10に固定され、下側が作業者の胴体2の前側面に倣って位置するように上下方向に延びるように設けられている。
本形態例の支持部材20は、長尺の柄状に設けられ、上端部21が腕受け部10を受けて支持するように前方へ屈曲され、下端部22が作業者の胴体2に沿うように緩く後方へ屈曲されている。
【0018】
この支持部材20は、軽くて剛性の高い部材によって構成することができ、例えばアルミニウム製とすることができる(図参照)。これによれば、支持部材20は、容易に屈曲できるものではなく、腕を固定状態に支持できる。
なお、支持部材20の材質や形態は図に示したような形態例に限定されることはなく、撓みにくい剛性を高めた構造であれば、他の材質や形態にしてもよいは勿論である。例えば、樹脂材でもリブ構造を適宜に設ければ、軽くて剛性の高い支持部材20を構成できる。また、この支持部材20としては、パイプ材料を加工することで形成される部材でも構成でき、一方のパイプに対して径の小さなパイプが挿入される構成とすることで、長さ調整が可能となる形態にすることもできる。
【0019】
30は上部の装着部であり、支持部材20の上下方向の中途部に設けられ、作業者の胴体の脇下から腰までの間の中途部に巻かれた胴ベルト31へ装着される部分になっている。
40は下部の装着部であり、支持部材20の下端部22に設けられ、作業者の腰も巻かれた腰ベルト41へ装着される部分になっている。
これらのベルト31、41としては、車のシートベルトに使用されているような布ベルトを用いることができる。なお、これに限らず、革製のベルトや樹脂製のベルトであってもよい。
【0020】
以上の構成を備える腕支持具によれば、作業者の腕を上方へ上げた状態に好適に支持できると共に、構成が簡単で使い勝手が良く、作業者への装着性が良い。
従って、ぶどう栽培の作業やカメラマンのための腕支持具として好適に利用でき、作業者の負担を好適に軽減することができる。また、腕を固定状態に保持できるため、例えばカメラのブレや揺れを好適に防止できる。
【0021】
そして、本形態例の上部の装着部30及び下部の装着部40は、胴ベルト31及び腰ベルト41が差し込まれる隙間となる挟持部32、42を備えていることで構成されている。
また、この上部の装着部30に設けられた上部の挟持部32は、胴ベルト31が上から差し込まれる状態となるように上方に開いて形成され、下部の装着部40に設けられた下部の挟持部42は、腰ベルト41が下から差し込まれる状態となるように下方に開いて形成されていることで構成されている。
【0022】
このように形成されていることで、差し込む操作だけで、本発明にかかる腕支持具を作業者に容易に装着することができる。また、胴ベルト31は下方へずり落ち易いので、上方に開いた上部の挟持部32によって好適に受けることができる。
なお。本形態例のような差し込む形態に限定されず、適宜の着脱機構によって、作業者に容易に装着できる構造としてもよいのは勿論である。例えば、樹脂製のバックルによって、ベルト31、41と支持部材20とを連結するようにしてもよい。
【0023】
また、本形態例の挟持部32、42は、支持部材20と、その支持部材20にボルト34、44とナット35、45(蝶ナット)で固定される薄板状の挟持片33、43とによって設けられている。そして、その挟持片33、43の固定位置が調整できるように、支持部材20には長孔23が設けられている。
【0024】
これによれば、作業者の体形に合わせて、或いは作業内容に合わせて、支持部材20に固定された腕受け部10の位置を適宜調整できる。
なお、強度等に問題がなければ、挟持片33、43の方に長孔を設けてもよい。さらに断続的に位置調整をできるように、所定の間隔を置いて複数の孔を支持部材20或いは挟持片33、43に設けてもよい。
【0025】
また、本形態例の上部の装着部30の挟持片33は支持部材20の前面側に固定さ前記下部の装着部40の挟持片43は支持部材20の後面側に固定されている。
これによれば、支持部材20を、胴ベルト31や腰ベルト41で好適に支持でき、腕を支持した状態で動かないように好適に保持できる。
【0026】
次に、図3に基づいて、本形態例の腕支持具の使用形態例を簡単に説明する。
図3(a)は、手及び前腕3の部分を腕受け部10について立てた状態にして作業する場合を示している。この状態では、より高い部分の対象物について手先がとどき、作業をすることができる。
【0027】
これに対して、図3(b)は、手及び前腕3の部分を腕受け部10について伏せた状態にして作業する場合を示している。この状態では、図3(a)の状態と比較してより低い部分の対象物について作業をすることができる。この際、支持部材20は適宜傾斜などして、手先の位置が調整されることになる。支持部材20は、ベルト31、41に支持されているだけであり、その位置的な自由度が高く、支持部材20の多少の傾斜は適切に吸収され、安定した状態になる。
従って、より広範囲の対象物について作業をすることができ、作業者にとって使い勝手がよい。
【0028】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0029】
1 上腕
2 胴体
3 前腕
10 腕受け部
11 凹状部
12 曲げ板
13 緩衝部材
14 ボルト
15 ナット
20 支持部材
21 上端部
22 下端部
23 長孔
30 上部の装着部
31 胴ベルト
32 挟持部
33 挟持片
34 ボルト
35 ナット
40 下部の装着部
41 腰ベルト
42 挟持部
43 挟持片
44 ボルト
45 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腕部を載せた状態に保持できるように凹状部を備える腕受け部と、
該腕受け部を下から支持するように、上端部が前記腕受け部に固定され、下側が作業者の胴体に倣って位置するように上下方向に延びる支持部材と、
該支持部材の上下方向の中途部に設けられ、作業者の胴体の脇下から腰までの間の中途部に巻かれた胴ベルトへ装着される上部の装着部と、
前記支持部材の下端部に設けられ、作業者の腰に巻かれた腰ベルトへ装着される下部の装着部とを具備することを特徴とする腕支持具。
【請求項2】
前記腕受け部は前記支持部材の上端部に対して、角度調整可能に固定されていることを特徴とする請求項1記載の腕支持具。
【請求項3】
前記支持部材は長尺の柄状に設けられ、上端部が前記腕受け部を受けて支持するように前方へ屈曲され、下端部が作業者の胴体に沿うように緩く後方へ屈曲されていることを特徴とする請求項1又は2記載の腕支持具。
【請求項4】
前記上部の装着部及び前記下部の装着部は、前記胴ベルト及び前記腰ベルトが差し込まれる隙間となる挟持部を備えることで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の腕支持具。
【請求項5】
前記上部の装着部に設けられた上部の挟持部は、前記胴ベルトが上から差し込まれる状態となるように上方に開いて形成され、前記下部の装着部に設けられた下部の挟持部は、前記腰ベルトが下から差し込まれる状態となるように下方に開いて形成されていることで構成されていることを特徴とする請求項4記載の腕支持具。
【請求項6】
前記挟持部は、前記支持部材と、該支持部材にボルトとナットで固定される薄板状の挟持片とによって設けられ、該挟持片の固定位置が調整できるように前記支持部材には長孔が設けられていることを特徴とする請求項4又は5記載の腕支持具。
【請求項7】
前記上部の装着部の挟持片は前記支持部材の前面側に固定され、前記下部の装着部の挟持片は前記支持部材の後面側に固定されていることを特徴とする請求項6記載の腕支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−284094(P2010−284094A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139133(P2009−139133)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(508137925)
【Fターム(参考)】