説明

腰部装具

【課題】体型の違いに対応できると共に使用中の違和感を低減することを実現する。
【解決手段】重量物としての歩行補助装置における駆動ユニット3を支持するべく剛体からなるフレーム7を腰部に固定するべく、腰部に巻くための腰部保護帯4を布製とし、その外側に可撓性プレート5を設け、その外側に押圧プレート6を設け、剛性を順次高めた両プレートを介してフレームを固定する。フレームの剛性感が中間体で緩和されて腰部保護帯に伝わるため、装着状態での姿勢変形時にフレームによる圧迫感を装着者が感じることを防止できる。また、腰部保護帯が身体形状に応じて容易に変形するのに対してフレームは変形しないため、体型の違いに対する変形差を中間体により弾性変形にて吸収することにより、数種類のサイズ違いのフレームを用いることができ、量産化による低コスト化を実現し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物を腰部により支持するための腰部装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外傷や疾病、あるいは加齢による筋力低下で自力歩行が困難となった人のために、股関節や膝関節にアクチュエータを装着し、アクチュエータが発生する動力で下肢の運動を補助するようにした歩行補助装置が種々提案されている。従来、これらの歩行補助装置は、ベルト等を締め付けて大腿部および下腿部に固定する装具を介してアクチュエータを下肢に固定することが一般的であった。
【0003】
また、歩行補助装置にあっては、腰部にベルトを回して腰部側の装具を装着している。その場合には、直立姿勢の維持に対する補助力をも好適に発揮し、しかも装着時の圧迫感が軽減されることが好ましく、そのような要求に対応できるようにした歩行補助装置がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
なお、装具の腰部への装着にあっては腰部への負担をできるだけ軽減する必要があり、例えば腰用サポータを適用することが考えられる。腰用サポータとしては、中腹部を過度に圧迫することなく、背当て部に有効に圧力をかけて背骨を矯正できる、としたものがある(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−634号公報
【特許文献2】特開平8−317947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、歩行補助装置の装具(外骨格装具)を体(腰部)に装着する場合には身体形状に合うというフィット性が重要である。そのようなフィット性を高める手法として、従来の医療装具において例えば熱可塑性樹脂材からなる部材を用い、使用者の身体に当てて直接型取りしているものがある。それにより、使用者毎に高いフィット性を有する装具を提供することができ、使用感が良くなる。
【0006】
しかしながら、使用者毎に型取りするため、手間がかかるばかりでなく単品生産と同様になってコスト高になるという問題がある。また、上記腰用サポータを適用しようとしても、その背当て部が腰部位を広く覆う略ひし型形状に形成されていると共に背当て部の柔軟性の方向を制限する複数のリブが設けられているため、姿勢によってはその剛性感を違和感として受けてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、体型の違いに対応できると共に使用中の違和感を低減することを実現するために本発明に於いては、重量物を支持するべく剛体からなるフレーム(7)を腰部に装着するための腰部装具(1)であって、前記腰部を保護するために巻く腰部保護帯(4)と、前記腰部保護帯(4)と前記フレーム(7)との両者間に介装される中間体(5・6)とを有し、前記腰部保護帯(4)が身体形状に追従可能な柔軟性を有し、前記フレーム(7)が前記腰部の各個人による大きさの違いを所定量許容して部分的に外囲する所定の形状に形成され、前記中間体(5・6)が、前記フレーム(7)と前記腰部保護帯(4)との両者間の剛性を有すると共に、前記腰部保護帯(4)と前記フレーム(7)との変形差を弾性変形により吸収する手段(6・10)を有するものとした。
【0008】
特に、前記中間体(5・6)が、前記身体側に配設されかつ前記腰部の外周形状に合うように変形し得る可撓性の身体側プレート(5)と、前記身体側プレート(5)の外側に配設されかつ前記身体側プレート(5)よりも高い剛性をもって前記身体側プレート(5)に対して部分的に当接するようにされた外側プレート(6)とを有すると良い。また、前記腰部装具(1)が、前記フレーム(7)により支持された前記重量物に対して身体との間に介在させる保護パッド(13)を一体的に有すると良く、また、前記腰部保護帯(4)が、背中に当たる部分が最も積層数が多く、その左右に至るにつれて積層数が減らされた多層構造(4a・4b・4c・4d)に形成されていると良い。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によれば、重量物を支持するために剛体からなるフレームを用いる場合に、腰部に巻く腰部保護帯とフレームとの間に中間体を設け、その中間体をフレームと腰部保護帯との中間の剛性とすることにより、フレームの剛性感が中間体で緩和されて腰部保護帯に伝わるため、装着状態での姿勢変形時にフレームによる圧迫感を装着者が感じることを防止できる。また、腰部保護帯が身体形状に応じて容易に変形するのに対してフレームは変形しないため、体型の違いに対して両者間に変形の違いによる差(隙間)が生じても、その変形差を中間体により弾性変形にて吸収することができ、装着者の体格の違いに対してある程度の幅をもって許容し得る大きさのフレームを用いることができる。これにより、例えばS・M・Lの3種類の大きさの違うフレームを用意するだけでほとんどの人に装着可能になるため、個人別に形状を合わせたものに対して部品の共通化による低コスト化を実現し得る。
【0010】
特に、中間体として、可撓性の身体側プレートを設け、その外側であるフレーム側に身体側プレートに部分的に当接しかつ身体側プレートより剛性の高い外側プレートを設けることにより、腰部保護帯とフレームとの剛性の違いを中間体により順次変化させることができると共にフレーム側の押圧力が外側プレートを介して身体側プレートに伝わるようになるため、剛体からなるフレームによる圧迫感が直接的に身体に伝わることを防止し得る。また、保護パッドを設けて、フレームにより支持する重量物が身体に直接当接することを防止することができる。また、腰部保護帯を背中に当たる部分が最も積層数が多い多層構造とすることにより、背中の凹みに対応させることができ、腰部保護帯の装着状態の安定化を促進し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明が適用された歩行補助装置の人体(二点鎖線)への装着状態を示している。この歩行補助装置は、腰部装具1と、下腿部装具2と、補助動力を発生する駆動ユニット3とから構成されており、腰部に腰部装具1を装着し、大腿部に大腿部装具2を装着し、腰部装具1に支持されかつ両装具1・2同士を連結するように設けられた駆動ユニット3が発生する回転トルクを大腿部装具2を介して大腿部に伝えることにより、低下した筋力を補う力を人体に与える機能を備えている。
【0012】
腰部装具は、図2に併せて示されるように、腰部に巻き付けるための例えば布製の腰部保護帯4と、腰部保護帯4の外側に配置された身体側プレートとしての可撓性プレート5と、可撓性プレート5の外側に配置された外側プレートとしての左右一対の押圧プレート6と、それら押圧プレート6の外側に配置されたフレーム7とにより構成されている。なお、可撓性プレート5と押圧プレート6とにより中間体が構成されている。
【0013】
腰部保護帯4にあっては、背中に対応する部分が最も厚くなり、長手方向中央部から両端部に至るにつれて順次薄くなるように多層構造に形成されている。例えば同じ素材及び厚さの布を用い、図3に示されるように、腰部保護帯4の全体を形成する長尺の布4aと、それよりも短い布4b及びさらに短い布4cと、背中の中央部分に所定の幅で当たる大きさの布4dとを左右対称となるように重ねて腰部保護帯4を形成する。これにより、腰部回りにおける背中部分の凹み形状に対応することができ、腰部に巻いた状態の腰部保護帯4が安定化する。なお、腰部保護帯4の両端部には面ファスナーが設けられており、腰部への巻き付け長さを腰部のサイズ違いに容易に対応可能にしている。
【0014】
可撓性プレート5は、例えば合成樹脂材の成形品からなり、布製の腰部保護帯4に対しては剛性が高いが、外力により腰部に巻き付くように変形可能な柔軟性を有するものである。本図示例では、可撓性プレート5は、腰部の背中部分及び左右の側方部分を外囲する長さの弧状に形成され、その長手方向中央部をフレーム7の中央部にピンなどで結合されてフレーム7と一体化されている。
【0015】
押圧プレート6は、可撓性プレート5よりは高い剛性を有する合成樹脂材の成形品であって良く、腰部における大腿部の付け根部分を覆うような長皿状に形成されている。フレーム7の内周面であって上記付け根部分に対応する位置にはばね材からなる弾性支持体10が取り付けられており、その弾性支持体10に押圧プレート6の中央部が固着されている。弾性支持体10はフレーム7の長手方向(腰部の周方向)に撓むように形成されている。このようにして、押圧プレート6は、フレーム7の内周面に対してシーソー運動し得るように設けられている。
【0016】
フレーム7は、押圧プレートよりも剛性が高い剛体として例えば金属製であって良く、腰部の背中部分及び左右の側方部分を外囲する弧状をなし、その内方に上記した腰部保護帯4・可撓性プレート5・押圧プレート6を受容し得る大きさに形成されている。
【0017】
駆動ユニット3にあっては、腰部の左右側部に位置するようにフレーム5により一体的に支持された一対のアクチュエータ8と、各アクチュエータ8により駆動されかつ左右の脚の各外側に延在するように設けられた一対のアーム9と、アーム9の下端部にて前後方向に延出された延出アーム9aを介して支持された大腿部用パッド11とが設けられている。大腿部用パッド11は、図1に示されるように、大腿部の前後で当接するように左右のアーム9毎に前後一対設けられている。
【0018】
なお、アクチュエータ8には図示されないバッテリから電力が供給されており、脚を前後いずれかに動かすと、その動きがアーム9を介してアクチュエータ8内で検出され、その検出値に応じてアクチュエータ8内のモータが回転し、その回転トルクがアーム9を介して動かした脚の大腿部に伝わり、歩行時の補助力が発生する。
【0019】
アクチュエータ8は、フレーム7の左右の各端部にヒンジ12を介して支持されている。アクチュエータ8のヒンジ12による傾動方向は脚の側方の方向であり、体型の違いにより大腿部に当たる大腿部用パッド11の位置が身体の側方に対してずれて、それによりアーム9が側方に傾動しても対応し得るようになっている。また、アクチュエータ8が大腿部の側部に直接当たることを防止するために、腰部保護帯4に一体的に取り付けられた保護パッド13が設けられている。
【0020】
図4に示されるように、フレーム7の左右の各端部に互いにバックルにより結合可能な装具固定用ベルト14が取り付けられており、フレーム7を腰部にベルト締めにて固定することができるようになっている。装具固定用ベルト14は長さ調整可能であり、体型違いや締め付け力の調整をすることができるようになっている。なお、フレーム7に可撓性プレート5及び押圧プレート6が取り付けられており、それらをフレーム7側のユニットとして一体化し、腰部保護帯4とは別個に取り扱うことができるようになっている。したがって、本腰部装具1の装着にあっては、腰部に腰部保護帯4を巻き、腰部保護帯4の背中側及び左右の側部を覆うように可撓性プレート5を当てた状態で装具固定用ベルト14よりフレーム7側を固定する。
【0021】
フレーム7により支持されているアクチュエータ8は、上記したようにモータを内蔵する等ある程度の重量があり、また図示されないバッテリも装置として一体化する場合にはフレーム7により支持することが考えられるため、それら重量物を支持するためにはフレーム7を剛体により形成することになる。したがって、人体にとってフレーム7は変形しない部材となり、歩行時の姿勢変化により、フレーム7による圧迫を感じて違和感が生じる虞がある。
【0022】
本発明による腰部装具1にあっては、上記したようにまた図5に併せて示されるように、腰部(身体)側から腰部保護帯4・可撓性プレート5・押圧プレート6・フレーム7がこの順に配設され、かつ最も腰部側の腰部保護帯4が最も柔らかく、外側に向けて順次剛性が高くなるようにされている。これにより、腰部保護帯4を上記したように例えば布製とすることにより身体形状に合わせて腰部に巻くことができるため、どのような体型の人に対しても腰部保護帯4を巻き付けることができる。その外側には腰部保護帯4よりも剛性の高い可撓性プレート5が配設され、さらに可撓性プレート5よりも剛性の高い押圧プレート6を介してフレーム7が配設されているため、身体形状に応じた形状となる腰部保護帯4と剛体からなるフレーム7との間の形状違いを両プレート5・6により吸収し、かつフレーム7の剛性感は両プレート5・6を介することにより緩和される。
【0023】
身体に直接触れる部分は腰部の全周に巻かれた腰部保護帯4であるが、その素材は布など柔らかなものであり、姿勢変形による違和感はほとんど生じない。その外側には可撓性プレート5が背中部分を外囲する略半周に渡って設けられている。可撓性プレート5は、布製の腰部保護帯4よりは剛性が高いものであるが、装着時に腰部の形状に合う程度に変形し得るが、姿勢変形に対しては略追従し得る程度の素材で形成されていると良い。これにより、可撓性プレート5が変形しないほどの剛性ではないため、姿勢変形時に可撓性プレート5から受ける圧迫感などは生じない。
【0024】
それに対して、フレーム7は、剛体からなることから姿勢変形に対して追従しないが、そのフレーム7に弾性支持された押圧プレート6が可撓性プレート5に当接するようになっている。したがって、フレーム7が可撓性プレート5の全体に当接することはない。なお、押圧プレート6は、上記したようにまた図5の矢印Aに示されるようにフレーム7の長手方向かつ内周面に対して傾動し得るように弾性支持体10により支持されているため、体型違いにより可撓性プレート5の外形が変化しても両端(図5における弧状形状の両端)が平均的に可撓性プレート5に当接でき、体型違いに対応し得る。
【0025】
また、押圧プレート6は部分的に可撓性プレート5に当接しているが、その当接による圧力は可撓性プレート5により分散されて腰部保護帯4に伝えられる。したがって、フレーム7の剛性感を局部的な圧力として身体が感じることがないため、姿勢変形時に剛体からなるフレーム7を違和感として感じることを防止し得る。
【0026】
なお、全ての体型に対応させることは難しいが、例えばフレーム7の大きさを、体格の違いに対して段階的に対応し得るように、例えばS(小)・M(中)・L(大)の各大きさに形成しておくと良い。これにより、従来の熱変形樹脂材で個人毎に型取りしてフレームなどを形成していたものに対して、少ないサイズ近いのものを用意しておけば良くなるため、それぞれを量産することも可能となり、装具を低コスト化し得る。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明にかかる腰部装具は、重量物を支持するべく剛体からなるフレームを装着するために適し、かつ体型違いに対しても対応可能であり、歩行補助装置の装具に限られず、腰部に剛性の高いフレームを装着するための腰部装具として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が適用された歩行補助装置の人体への装着状態を示す図である。
【図2】腰部装具を示す分解組立斜視図である。
【図3】腰部保護帯を示す平面図である。
【図4】腰部への装着要領を示す斜視図である。
【図5】装着状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 腰部装具
4 腰部保護帯
4a・4b・4c・4d 布(多層構造)
5 可撓性プレート(身体側プレート)
6 押圧プレート(外側プレート)
7 フレーム
10 弾性支持体(弾性変形により吸収する手段)
13 保護パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を支持するべく剛体からなるフレームを腰部に装着するための腰部装具であって、
前記腰部を保護するために巻く腰部保護帯と、前記腰部保護帯と前記フレームとの両者間に介装される中間体とを有し、
前記腰部保護帯が身体形状に追従可能な柔軟性を有し、
前記フレームが前記腰部の各個人による大きさの違いを所定量許容して部分的に外囲する所定の形状に形成され、
前記中間体が、前記フレームと前記腰部保護帯との両者間の剛性を有すると共に、前記腰部保護帯と前記フレームとの変形差を弾性変形により吸収する手段を有することを特徴とする腰部装具。
【請求項2】
前記中間体が、前記身体側に配設されかつ前記腰部の外周形状に合うように変形し得る可撓性の身体側プレートと、前記身体側プレートの外側に配設されかつ前記身体側プレートよりも高い剛性をもって前記身体側プレートに対して部分的に当接するようにされた外側プレートとを有することを特徴とする請求項1に記載の腰部装具。
【請求項3】
前記腰部装具が、前記フレームにより支持された前記重量物に対して身体との間に介在させる保護パッドを一体的に有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の腰部装具。
【請求項4】
前記腰部保護帯が、背中に当たる部分が最も積層数が多く、その左右に至るにつれて積層数が減らされた多層構造に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の腰部装具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−320351(P2006−320351A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143424(P2005−143424)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000139399)株式会社ワコールホールディングス (26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)