膜−触媒層接合体及びその製造方法
【課題】間欠塗工などにより、触媒インクを高分子電解質膜1に局所的に塗布すると、膨潤による体積変化でしわが発生していた。このしわによるガス漏れが課題であった。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明による膜−触媒層接合体は、触媒層4と、高分子電解質膜1の周縁部を保持する環状の保持部5との間の環状の領域である間隙部3に凹凸部を設けた。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明による膜−触媒層接合体は、触媒層4と、高分子電解質膜1の周縁部を保持する環状の保持部5との間の環状の領域である間隙部3に凹凸部を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質形燃料電池の膜−触媒層接合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質形燃料電池は、水素などの燃料ガスと空気などの酸化剤ガスとを、白金などの触媒を有するガス拡散電極に供給し、電気化学的に反応させて電気と熱とを発生させる。
【0003】
高分子電解質型燃料電池の構成の一例を示した図を図12に示す。この高分子電解質形燃料電池は、一般的に、水素イオンを輸送する高分子を材料とする高分子電解質膜1の両面に、触媒である白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末と水素イオン伝導性を持つ高分子電解質とを混合した一対の触媒層4が形成されている。この高分子電解質膜1及び触媒層4が一体化したものを膜−触媒層接合体8と呼ぶ。さらに、この触媒層4の外側に、ガス通気性及び電子伝導性を併せ持つ、一対のガス拡散層9が形成されている。このガス拡散層9としては、例えば、撥水処理を施したカーボンペーパーが用いられる。この触媒層4とガス拡散層9とを合わせてガス拡散電極と呼ぶ。このガス拡散電極及び高分子電解質膜1を一体化したものを膜電極接合体(MEA:Membrane−Electrode Assembly)と呼ぶ。
【0004】
この触媒層1は、一般的に高分子電解質膜1よりも狭い面積に形成するため、触媒層4の周縁部には、高分子電解質膜1のみが存在することになる。しかしながら、高分子電解質膜1は、物理的な力に対して弱く、また形状を維持しにくいという欠点がある。
【0005】
そこで、触媒層4の周縁部にある高分子電解質膜1を環状の樹脂からなる保持部5で固めることで、この部分の強度を高める構造が提案されている。
【0006】
また、MEAのさらに外側に燃料ガスや酸化剤ガスを通すためのガス流路12を設けたセパレータ11を設置し、このセパレータ11とMEAの間の保持部5上に、これらのガスをシールするためのゴムなどの弾性体からなるガスシール10を設けることにより、これらのガスが外に漏れ出ることを防ぐ構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、、MEAの製造に際し、量産性の観点からロールトゥロールプロセス(roll
to roll process)により触媒層を高分子電解質膜の両面あるいは片面にコートした膜触媒層接合体(Catalyst Coated Membrane)を作成することが試みられている。ここで、ロールトゥロールプロセスとは、高分子電解質膜単体あるいは補強用の基材フィルムとラミネートされた電解質膜のロールから電解質膜を別ロールに巻き取りながら、連続的に高分子電解質膜上に触媒層を形成していくプロセスである。触媒層の形成プロセスとして、例えば、基材シート上に触媒層が形成された長尺の触媒転写シートを、ロールから引き出されて移動している長尺の高分子電解質膜に加熱圧着した後、触媒転写シートから基材シートを剥離することにより当該高分子電解質膜上に連続的に触媒層を転写するプロセスが知られている(例えば特許文献2参照)。また、スプレー塗工、ダイ塗工、スクリーン印刷などの塗工工程、塗工膜を加熱したローラーに圧着したり、熱風を送風したりして乾燥する乾燥工程、触媒層を形成した高分子電解質膜を別ロールに巻き取る巻き取り工程により高分子電解質膜上に触媒層を形成するプロセスが知られている。これらのプロセスでは、各工程が連続的に進行することにより長尺の膜−触媒層接合体を高い生産性をもって安価に製作することができる。
【0008】
ところで、後者のプロセスでは、長尺の膜−触媒層接合体を安価に製作するためには、高価な白金系の触媒の損失を最小限に抑えて、触媒層を高分子電解質膜上に形成することが望ましい。したがって、間欠塗工のように、必要な部分にのみ塗行できる塗工方法が有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−123435号公報
【特許文献2】特開2010−182563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来用いられているスプレー塗工やダイ塗工などの工法では、触媒を電解質と一緒に溶媒に分散させた触媒インクを高分子電解質膜に塗布するが、この溶媒により、触媒インク塗布部では高分子電解質膜が膨潤してしまう。一方、その周囲の塗布していない部分の高分子電解質膜は膨潤しないため、高分子電解質膜に塗布したところとしていないところとで寸法差によるしわが発生してしまう。
【0011】
このしわが、触媒層から、ガスシールが設けられるシール部の外側まで連続に存在すると、しわを介して燃料ガスや酸化剤ガスがシール外部へと漏れてしまうため、電池性能の低下や、可燃ガスが外部への漏れが起こるなど、の課題を発生させていた。
【0012】
本発明では、かかる課題を解決するために、触媒層のしわの発生を減少させ、さらに、発生したしわがシール部の外側まで達することがない、膜−触媒層接合体の構造および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある形態に係る膜−触媒層接合体は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に触媒が塗布されて形成される触媒層と、前記高分子電解質膜の周縁部を保持する環状の保持部と、前記保持部に設けられ、弾性を有する環状のシール部材との密着により、ガスをシールするシール部と、前記高分子電解質膜上における、前記触媒層の端部から前記シール部の前記触媒層側の端部までの間の環状の領域に設けられる凹凸部と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
このとき、凹凸部は、凹部及び凸部の少なくとも一方を有していれば良い。また、前記凹凸部は、前記触媒層の周囲を囲うように配置されている方が望ましい。また、前記凹凸部の前記触媒層側の端部が、略波状の形をしている方が望ましい。また、前記凹凸部が複数であってもよい。また、前記複数の凹凸部は、略円形であることが望ましい。
【0015】
また、上記のような構造を持つ膜−電極接合体の製造方法は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に形成される触媒層と、前記高分子電解質膜の周縁部を保持する環状の保持部と、前記保持部に設けられ、弾性を有する環状のシール部材との密着により、ガスをシールするシール部と、を備えた膜−触媒層接合体の製造方法であって、高分子電解質膜上における、前記触媒の端部から前記弾性部材の前記触媒側の端部までの領域に設けられる凹凸部を形成する凹凸形成工程と、前記凹凸部形成工程の後に、高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に触媒インクを塗布する塗布工程と、前記高分子電解質膜を加熱して前記触媒インクを乾燥する乾燥工程と、前記高分子電解質膜の周縁部を保持する前記保持部を形成する、保持部形成工程、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、触媒層の周縁であり、かつシール部に囲まれた部分に凹凸を作り、予め伸びている部分を設けることで、触媒インク塗布部が膨潤により伸びた時の塗布部とその外側の寸法差が小さくなるため、しわの発生を減少させることができる。
【0017】
さらに、膨張率の大きな膜や、溶媒の組成比が高い触媒インクを用いるなど、凹凸部の伸びよりも大きな体積変化が生じてしまう場合に発生してしまうしわに対しても、平坦な膜に比べ、凹凸を設けることで膜の強度を高めることができるため、凹凸部よりも外側にしわが伸長することを抑制することができる。
【0018】
以上のような効果により、しわの発生によるガスの漏洩を発生させること無く、かつ、十分な耐久性を発揮できる膜−触媒層接合体を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1による膜−触媒層接合体を示した図
【図2】凹凸部の加工前の電解質膜ロールを示した図
【図3】電解質膜ロールに凹凸部を加工した後の図
【図4】触媒層を間欠塗工した後の図
【図5】枚葉に切断およびマニホールド孔の加工後の膜−触媒層接合体の図
【図6】シール部の例を示した図
【図7】実施の形態2による膜−触媒層接合体を示した図
【図8】実施の形態3による膜−触媒層接合体を示した図
【図9】実施の形態4による膜−触媒層接合体を示した図
【図10】実施の形態5による膜−触媒層接合体を示した図
【図11】実施の形態6による膜−触媒層接合体を示した図
【図12】従来の高分子電解質型燃料電池の構成例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について、図面と共に説明する。なお、以下の実施の形態で示す構造及び製造方法は、本発明の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態では、触媒層4と保持部5の間にある環状の間隙部3の全周にわたって、四隅をR状にした矩形の凹凸部2を複数配置している。塗工時に、間隙部3と触媒層4の寸法差が大きいためにしわが発生することから、間隙部3を予め伸ばしてやることで、しわの発生を抑制できると考え、本発明を想到した。
【0023】
また、図2〜5は、実施の形態1の膜−触媒層接合体を作成する工程毎の形状を示している。本実施の形態の製造工程では、まず、図2に示したような帯状の高分子電解質膜1の表面に、金型を用いて凹凸部2を形成し、図3の形状とする。このとき、凹凸部2を作る方法としては、金型以外にもロールプレスやコテで圧縮するなどの様々な方法がある。
【0024】
次に、凹凸部に囲まれた内側の必要な部分に触媒層4を塗布し、乾燥させ、図4に示した形状にする。このとき、触媒層4を塗布する方法としては、スプレー塗工やダイ塗工などの様々な方法がある。
【0025】
次に、切断型で帯状の高分子電解質膜1を枚葉に切断し、さらに、燃料ガスや酸化剤ガスを通すためのマニホールド6を加工し、図5に示した形状とする。
【0026】
次に、枚葉に加工した電解質膜の周縁部を成型により樹脂で固め、保持部を形成し、図1の形状とした。保持部の形成については、予め保持部の形状に加工した樹脂シートを貼り付ける形状や、ゴムなどの弾性体で挟む構造などがある。
【0027】
また、図6は、ガスシール10が設置される部分となるシール部7を示した例である。シール部7は、ガスシール10を設置し、圧縮することでガスをシールする方法や、シール部7に直接ガスシール10を成型により一体化させるなどの、様々の構造がある。
【0028】
以下の実施の形態においても、同様の製造方法を用いて、本発明による膜−触媒層接合体の製造が可能であり、製造方法に関する記載を省略する。
【0029】
(実施の形態2)
図7は実施の形態2に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0030】
本実施の形態では、高分子電解質膜1の特性により、図7の上方にしわが発生することがわかっているため、図7に示しているように、触媒層4と保持部5の間にある環状の間隙部3の一部にのみ、長方形の凹凸部2を配置している。
【0031】
(実施の形態3)
図8は実施の形態3に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0032】
本実施の形態では、図8に示すように、間隙部3の全周に連続した凹凸部2を配置している。
【0033】
(実施の形態4)
図9は実施の形態4に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0034】
本実施の形態では、図9に示すように、実施の形態3と同様に、間隙部3の全周に連続した凹凸部2を配置している。さらに、凹凸部2の触媒層4に望む縁を波状にしている。
【0035】
(実施の形態5)
図10は実施の形態5に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0036】
図10に示すように、本実施の形態では、間隙部3の全周にわたって、矩形の凹凸部2を複数配置している。
【0037】
(実施の形態6)
図11は実施の形態6に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0038】
図11に示すように、本実施の形態では、間隙部3の全周にわたって、矩形の凹凸部2を複数、かつ、二重となるように配置している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる膜電極接合体およびその製造法は、分散型電源としての定置用燃料電池コージェネレションシステムや、燃料電池自動車の動力源として用いる燃料電池スタックに適用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 高分子電解質膜
2 凹凸部
3 間隙部
4 触媒層
5 保持部
6 マニホールド
7 シール部
8 膜−触媒層接合体
9 ガス拡散層
10 ガスシール
11 セパレータ
12 ガス流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質形燃料電池の膜−触媒層接合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質形燃料電池は、水素などの燃料ガスと空気などの酸化剤ガスとを、白金などの触媒を有するガス拡散電極に供給し、電気化学的に反応させて電気と熱とを発生させる。
【0003】
高分子電解質型燃料電池の構成の一例を示した図を図12に示す。この高分子電解質形燃料電池は、一般的に、水素イオンを輸送する高分子を材料とする高分子電解質膜1の両面に、触媒である白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末と水素イオン伝導性を持つ高分子電解質とを混合した一対の触媒層4が形成されている。この高分子電解質膜1及び触媒層4が一体化したものを膜−触媒層接合体8と呼ぶ。さらに、この触媒層4の外側に、ガス通気性及び電子伝導性を併せ持つ、一対のガス拡散層9が形成されている。このガス拡散層9としては、例えば、撥水処理を施したカーボンペーパーが用いられる。この触媒層4とガス拡散層9とを合わせてガス拡散電極と呼ぶ。このガス拡散電極及び高分子電解質膜1を一体化したものを膜電極接合体(MEA:Membrane−Electrode Assembly)と呼ぶ。
【0004】
この触媒層1は、一般的に高分子電解質膜1よりも狭い面積に形成するため、触媒層4の周縁部には、高分子電解質膜1のみが存在することになる。しかしながら、高分子電解質膜1は、物理的な力に対して弱く、また形状を維持しにくいという欠点がある。
【0005】
そこで、触媒層4の周縁部にある高分子電解質膜1を環状の樹脂からなる保持部5で固めることで、この部分の強度を高める構造が提案されている。
【0006】
また、MEAのさらに外側に燃料ガスや酸化剤ガスを通すためのガス流路12を設けたセパレータ11を設置し、このセパレータ11とMEAの間の保持部5上に、これらのガスをシールするためのゴムなどの弾性体からなるガスシール10を設けることにより、これらのガスが外に漏れ出ることを防ぐ構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、、MEAの製造に際し、量産性の観点からロールトゥロールプロセス(roll
to roll process)により触媒層を高分子電解質膜の両面あるいは片面にコートした膜触媒層接合体(Catalyst Coated Membrane)を作成することが試みられている。ここで、ロールトゥロールプロセスとは、高分子電解質膜単体あるいは補強用の基材フィルムとラミネートされた電解質膜のロールから電解質膜を別ロールに巻き取りながら、連続的に高分子電解質膜上に触媒層を形成していくプロセスである。触媒層の形成プロセスとして、例えば、基材シート上に触媒層が形成された長尺の触媒転写シートを、ロールから引き出されて移動している長尺の高分子電解質膜に加熱圧着した後、触媒転写シートから基材シートを剥離することにより当該高分子電解質膜上に連続的に触媒層を転写するプロセスが知られている(例えば特許文献2参照)。また、スプレー塗工、ダイ塗工、スクリーン印刷などの塗工工程、塗工膜を加熱したローラーに圧着したり、熱風を送風したりして乾燥する乾燥工程、触媒層を形成した高分子電解質膜を別ロールに巻き取る巻き取り工程により高分子電解質膜上に触媒層を形成するプロセスが知られている。これらのプロセスでは、各工程が連続的に進行することにより長尺の膜−触媒層接合体を高い生産性をもって安価に製作することができる。
【0008】
ところで、後者のプロセスでは、長尺の膜−触媒層接合体を安価に製作するためには、高価な白金系の触媒の損失を最小限に抑えて、触媒層を高分子電解質膜上に形成することが望ましい。したがって、間欠塗工のように、必要な部分にのみ塗行できる塗工方法が有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−123435号公報
【特許文献2】特開2010−182563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来用いられているスプレー塗工やダイ塗工などの工法では、触媒を電解質と一緒に溶媒に分散させた触媒インクを高分子電解質膜に塗布するが、この溶媒により、触媒インク塗布部では高分子電解質膜が膨潤してしまう。一方、その周囲の塗布していない部分の高分子電解質膜は膨潤しないため、高分子電解質膜に塗布したところとしていないところとで寸法差によるしわが発生してしまう。
【0011】
このしわが、触媒層から、ガスシールが設けられるシール部の外側まで連続に存在すると、しわを介して燃料ガスや酸化剤ガスがシール外部へと漏れてしまうため、電池性能の低下や、可燃ガスが外部への漏れが起こるなど、の課題を発生させていた。
【0012】
本発明では、かかる課題を解決するために、触媒層のしわの発生を減少させ、さらに、発生したしわがシール部の外側まで達することがない、膜−触媒層接合体の構造および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある形態に係る膜−触媒層接合体は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に触媒が塗布されて形成される触媒層と、前記高分子電解質膜の周縁部を保持する環状の保持部と、前記保持部に設けられ、弾性を有する環状のシール部材との密着により、ガスをシールするシール部と、前記高分子電解質膜上における、前記触媒層の端部から前記シール部の前記触媒層側の端部までの間の環状の領域に設けられる凹凸部と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
このとき、凹凸部は、凹部及び凸部の少なくとも一方を有していれば良い。また、前記凹凸部は、前記触媒層の周囲を囲うように配置されている方が望ましい。また、前記凹凸部の前記触媒層側の端部が、略波状の形をしている方が望ましい。また、前記凹凸部が複数であってもよい。また、前記複数の凹凸部は、略円形であることが望ましい。
【0015】
また、上記のような構造を持つ膜−電極接合体の製造方法は、高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に形成される触媒層と、前記高分子電解質膜の周縁部を保持する環状の保持部と、前記保持部に設けられ、弾性を有する環状のシール部材との密着により、ガスをシールするシール部と、を備えた膜−触媒層接合体の製造方法であって、高分子電解質膜上における、前記触媒の端部から前記弾性部材の前記触媒側の端部までの領域に設けられる凹凸部を形成する凹凸形成工程と、前記凹凸部形成工程の後に、高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に触媒インクを塗布する塗布工程と、前記高分子電解質膜を加熱して前記触媒インクを乾燥する乾燥工程と、前記高分子電解質膜の周縁部を保持する前記保持部を形成する、保持部形成工程、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、触媒層の周縁であり、かつシール部に囲まれた部分に凹凸を作り、予め伸びている部分を設けることで、触媒インク塗布部が膨潤により伸びた時の塗布部とその外側の寸法差が小さくなるため、しわの発生を減少させることができる。
【0017】
さらに、膨張率の大きな膜や、溶媒の組成比が高い触媒インクを用いるなど、凹凸部の伸びよりも大きな体積変化が生じてしまう場合に発生してしまうしわに対しても、平坦な膜に比べ、凹凸を設けることで膜の強度を高めることができるため、凹凸部よりも外側にしわが伸長することを抑制することができる。
【0018】
以上のような効果により、しわの発生によるガスの漏洩を発生させること無く、かつ、十分な耐久性を発揮できる膜−触媒層接合体を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1による膜−触媒層接合体を示した図
【図2】凹凸部の加工前の電解質膜ロールを示した図
【図3】電解質膜ロールに凹凸部を加工した後の図
【図4】触媒層を間欠塗工した後の図
【図5】枚葉に切断およびマニホールド孔の加工後の膜−触媒層接合体の図
【図6】シール部の例を示した図
【図7】実施の形態2による膜−触媒層接合体を示した図
【図8】実施の形態3による膜−触媒層接合体を示した図
【図9】実施の形態4による膜−触媒層接合体を示した図
【図10】実施の形態5による膜−触媒層接合体を示した図
【図11】実施の形態6による膜−触媒層接合体を示した図
【図12】従来の高分子電解質型燃料電池の構成例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について、図面と共に説明する。なお、以下の実施の形態で示す構造及び製造方法は、本発明の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態では、触媒層4と保持部5の間にある環状の間隙部3の全周にわたって、四隅をR状にした矩形の凹凸部2を複数配置している。塗工時に、間隙部3と触媒層4の寸法差が大きいためにしわが発生することから、間隙部3を予め伸ばしてやることで、しわの発生を抑制できると考え、本発明を想到した。
【0023】
また、図2〜5は、実施の形態1の膜−触媒層接合体を作成する工程毎の形状を示している。本実施の形態の製造工程では、まず、図2に示したような帯状の高分子電解質膜1の表面に、金型を用いて凹凸部2を形成し、図3の形状とする。このとき、凹凸部2を作る方法としては、金型以外にもロールプレスやコテで圧縮するなどの様々な方法がある。
【0024】
次に、凹凸部に囲まれた内側の必要な部分に触媒層4を塗布し、乾燥させ、図4に示した形状にする。このとき、触媒層4を塗布する方法としては、スプレー塗工やダイ塗工などの様々な方法がある。
【0025】
次に、切断型で帯状の高分子電解質膜1を枚葉に切断し、さらに、燃料ガスや酸化剤ガスを通すためのマニホールド6を加工し、図5に示した形状とする。
【0026】
次に、枚葉に加工した電解質膜の周縁部を成型により樹脂で固め、保持部を形成し、図1の形状とした。保持部の形成については、予め保持部の形状に加工した樹脂シートを貼り付ける形状や、ゴムなどの弾性体で挟む構造などがある。
【0027】
また、図6は、ガスシール10が設置される部分となるシール部7を示した例である。シール部7は、ガスシール10を設置し、圧縮することでガスをシールする方法や、シール部7に直接ガスシール10を成型により一体化させるなどの、様々の構造がある。
【0028】
以下の実施の形態においても、同様の製造方法を用いて、本発明による膜−触媒層接合体の製造が可能であり、製造方法に関する記載を省略する。
【0029】
(実施の形態2)
図7は実施の形態2に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0030】
本実施の形態では、高分子電解質膜1の特性により、図7の上方にしわが発生することがわかっているため、図7に示しているように、触媒層4と保持部5の間にある環状の間隙部3の一部にのみ、長方形の凹凸部2を配置している。
【0031】
(実施の形態3)
図8は実施の形態3に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0032】
本実施の形態では、図8に示すように、間隙部3の全周に連続した凹凸部2を配置している。
【0033】
(実施の形態4)
図9は実施の形態4に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0034】
本実施の形態では、図9に示すように、実施の形態3と同様に、間隙部3の全周に連続した凹凸部2を配置している。さらに、凹凸部2の触媒層4に望む縁を波状にしている。
【0035】
(実施の形態5)
図10は実施の形態5に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0036】
図10に示すように、本実施の形態では、間隙部3の全周にわたって、矩形の凹凸部2を複数配置している。
【0037】
(実施の形態6)
図11は実施の形態6に係る膜−触媒層接合体の要部概略構成を示した図である。
【0038】
図11に示すように、本実施の形態では、間隙部3の全周にわたって、矩形の凹凸部2を複数、かつ、二重となるように配置している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる膜電極接合体およびその製造法は、分散型電源としての定置用燃料電池コージェネレションシステムや、燃料電池自動車の動力源として用いる燃料電池スタックに適用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 高分子電解質膜
2 凹凸部
3 間隙部
4 触媒層
5 保持部
6 マニホールド
7 シール部
8 膜−触媒層接合体
9 ガス拡散層
10 ガスシール
11 セパレータ
12 ガス流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に触媒が塗布されて形成される触媒層と、
前記高分子電解質膜の周縁部を保持する環状の保持部と、
前記保持部に形成され、弾性を有する環状のシール部と、
前記高分子電解質膜上における、前記触媒層の端部から前記シール部の前記触媒層側の端部までの間の環状の領域に設けられる凹凸部と、
を備えた膜−触媒層接合体。
【請求項2】
前記凹凸部が、前記触媒層の周囲を囲うよう配置されていること、
を特徴とした請求項1記載の膜−触媒層接合体。
【請求項3】
前記凹凸部の前記触媒層側の端部が、略波状の形をしていること、
を特徴とした請求項1または2記載の膜−触媒層接合体。
【請求項4】
前記凹凸部が複数であること、
を特徴とした請求項1から3のいずれか1項記載の膜−触媒層接合体。
【請求項5】
前記凹凸部は、略円形であること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の膜−触媒層接合体。
【請求項6】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に形成される触媒層と、
前記高分子電解質膜の周縁部を保持する環状の保護部と、
前記保護部には、弾性を有する環状のシール部材との密着により、ガスをシールするシール部と、
を備えた膜−触媒層接合体の製造方法であって、
高分子電解質膜上における、前記触媒インクの端部から前記弾性部材の前記触媒側の端部までの領域に設けられる凹凸部を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸部形成工程の後に、高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に触媒を塗布する塗布工程と、
前記高分子電解質膜を加熱して前記触媒インクを乾燥する乾燥工程と、
前記高分子電解質膜の周縁部を保持する前記保護部を形成する保護部形成工程と、
を含む、膜−触媒層接合体の製造方法。
【請求項1】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に触媒が塗布されて形成される触媒層と、
前記高分子電解質膜の周縁部を保持する環状の保持部と、
前記保持部に形成され、弾性を有する環状のシール部と、
前記高分子電解質膜上における、前記触媒層の端部から前記シール部の前記触媒層側の端部までの間の環状の領域に設けられる凹凸部と、
を備えた膜−触媒層接合体。
【請求項2】
前記凹凸部が、前記触媒層の周囲を囲うよう配置されていること、
を特徴とした請求項1記載の膜−触媒層接合体。
【請求項3】
前記凹凸部の前記触媒層側の端部が、略波状の形をしていること、
を特徴とした請求項1または2記載の膜−触媒層接合体。
【請求項4】
前記凹凸部が複数であること、
を特徴とした請求項1から3のいずれか1項記載の膜−触媒層接合体。
【請求項5】
前記凹凸部は、略円形であること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の膜−触媒層接合体。
【請求項6】
高分子電解質膜と、
前記高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に形成される触媒層と、
前記高分子電解質膜の周縁部を保持する環状の保護部と、
前記保護部には、弾性を有する環状のシール部材との密着により、ガスをシールするシール部と、
を備えた膜−触媒層接合体の製造方法であって、
高分子電解質膜上における、前記触媒インクの端部から前記弾性部材の前記触媒側の端部までの領域に設けられる凹凸部を形成する凹凸形成工程と、
前記凹凸部形成工程の後に、高分子電解質膜の片側表面の周縁部に囲まれた部分に触媒を塗布する塗布工程と、
前記高分子電解質膜を加熱して前記触媒インクを乾燥する乾燥工程と、
前記高分子電解質膜の周縁部を保持する前記保護部を形成する保護部形成工程と、
を含む、膜−触媒層接合体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−84497(P2013−84497A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224650(P2011−224650)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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