膜ろ過処理装置の運転支援装置
【課題】膜ろ過処理装置の最適な運転条件を求め、運転費用を適正化する。
【解決手段】膜ろ過処理装置10からの現状運転情報11と、インタフェイス13からの計画水量情報14を取り込み、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15により、膜ろ過処理装置推奨運転捜査量情報18とその膜ろ過処理費情報16を算出する。算出手段15では全流量ろ過を対象としたルースのモデルを用い、ろ過時の膜間差圧Pfに対する単位時間あたりのろ過流量を計算し、これより加圧ポンプで消費されるろ過電力Wfを求め、また逆洗時の逆洗ポンプの消費電力Wbを求める。ろ過工程と逆洗工程からなる1サイクルの実ろ過流量を得るのに必要な電力量Uは∫Wf+∫Wbとなる。算出手段15には電力料金を評価指標としたろ過時間、逆洗時間等の最適解探索アルゴリズムを備えている。
【解決手段】膜ろ過処理装置10からの現状運転情報11と、インタフェイス13からの計画水量情報14を取り込み、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15により、膜ろ過処理装置推奨運転捜査量情報18とその膜ろ過処理費情報16を算出する。算出手段15では全流量ろ過を対象としたルースのモデルを用い、ろ過時の膜間差圧Pfに対する単位時間あたりのろ過流量を計算し、これより加圧ポンプで消費されるろ過電力Wfを求め、また逆洗時の逆洗ポンプの消費電力Wbを求める。ろ過工程と逆洗工程からなる1サイクルの実ろ過流量を得るのに必要な電力量Uは∫Wf+∫Wbとなる。算出手段15には電力料金を評価指標としたろ過時間、逆洗時間等の最適解探索アルゴリズムを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水に含まれる濁質や病原性原虫などの分離除去のために設置される浄水場向け膜ろ過処理装置の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過処理装置は、水をろ過して浄化するろ過工程で濁質や有機物から成る湿潤ケークによる目詰まりが発生し、ろ過水の総量が増えるに伴い膜間差圧が上昇する。この膜間差圧を低くしてろ過流量を回復するために、逆洗工程でろ過水を逆流させ、膜に付着したケークを除去する。原水が浄化される過程で、このろ過工程と逆洗工程が繰り返される。逆洗を実施しても膜間差圧が所定の値まで戻らない場合には薬品洗浄を実施し、薬品洗浄を実施しても膜間差圧が所定の値まで戻らない場合には膜モジュールを交換する。ろ過時間と逆洗時間はタイマーで一定値として設定されることが多い。ろ過時間:30〜90分程度、逆洗時間:15〜30秒程度が多く見られる値である。
【0003】
表流水を原水とした浄水場では、膜ろ過処理装置の前段に濁質除去の能力を有する前処理装置が備えられることが多い。前処理として代表的な凝集沈殿処理では、凝集剤を原水に注入して濁質や有機物を沈殿除去する。この処理によって後段の膜ろ過処理装置にかかる水質負荷を低減できるため、膜ろ過処理装置の目詰まり抑制や動力費低減の効果が期待できる。
【0004】
従来の凝集沈殿ろ過処理に比べ、膜ろ過処理は多量の電力を消費する。膜ろ過処理装置で最も電力を消費する機器は、ろ過圧力を膜に加えるポンプである。ポンプが消費する電力は、膜間差圧に比例する。一般的に膜ろ過処理装置は定流量運転をしているが、その場合逆洗工程を実施するまで膜間差圧が徐々に増大する。電力消費量の面からは、ろ過工程での膜間差圧が高くならないよう、頻繁に逆洗を実施することが有効である。
【0005】
膜ろ過処理装置の運転制御装置として、例えば特許文献1の記載がある。この発明は運転制御の状態パラメータの目標値の決定に関するものである。
【0006】
また、膜ろ過処理装置と前処理装置の凝集剤注入量制御に関する発明として、特許文献2の記載がある。この発明には、凝集剤注入量を原水の色度/濁度の値に基づいて制御することで、膜の目詰まりを抑制可能とされている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−229554号公報
【特許文献2】特開2002−336871公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の膜ろ過処理の逆洗工程では、一度ろ過した処理水を逆流させて消費する。従って、実際に使うことができる有効な水量は、ろ過水量から逆洗水量を差し引いた値となる。ここでは、これを実ろ過水量と呼ぶ。この実ろ過水量を多く得るためには逆洗頻度を減らしたほうが良く、逆洗頻度の面において、消費電力と実ろ過水量はトレードオフの関係にある。いま、評価指標として「実ろ過水量単位量あたりの動力費」を計算すると、この評価指標の値を最小とするような逆洗頻度の最適値が存在する。通常の浄水処理において膜間差圧は原水水質や水温により変動するため、「実ろ過水量単位量あたりの動力費」も変わり、結果として少なくとも逆洗頻度の最適値も季節や日時によって異なると考えられる。しかしながら、一般的に使用されているタイマー制御では、ろ過時間と逆洗時間を一定として与えているため、最適値を常には実現できない欠点があった。
【0009】
さらに、膜ろ過処理装置はその運転方法によって、膜モジュールの薬品洗浄時期や交換時期が異なると考えられる。膜モジュールの洗浄コストや交換作業コストが動力費に比べて無視できない額であれば、それらのコストも含めた「実ろ過水量単位量あたりのコスト」を最小化することが望ましい。現状の膜ろ過処理装置の運転は、この「実ろ過水量単位量あたりのコスト」を最小化できる保証も無かった。
【0010】
上記の特許文献1の発明の対象は逆浸透膜造水プラントであり、浄水場で用いるような、ろ過工程と逆洗工程が頻繁に繰り返されるような膜ろ過装置を対象としていない。さらに、逆洗工程に関する記述も無く、逆洗時間やろ過時間を最適に決定する目的を満足するものではなかった。
【0011】
また、前処理がある場合には、浄水処理システム全体としてコスト的に最適な運転も保証されない欠点もあった。例えば、膜ろ過処理装置の前段に備えた凝集沈殿処理で凝集剤注入量が過少であると、膜ろ過処理装置へ流出する濁質や有機物が増える。この場合、凝集沈殿処理費は安くなるが、膜ろ過処理装置への負荷が過大となって動力費や逆洗頻度が増加し、浄水処理システム全体としては処理費が高くなる。逆に、凝集沈殿処理で凝集剤注入量が多いと膜ろ過処理装置の動力費を低減できるが、凝集沈殿処理費が高くなり、浄水処理システム全体としては処理費が高くなる。場合によっては残留したアルミニウムイオンが目詰まりの原因の一つとなる可能性もある。このように前処理と膜ろ過処理は密接な関係にあるが、どのような運転をすれば常にコスト的に最適となるか、に関しては公知の技術は見当たらない。
【0012】
また、特許文献2では、目詰まりを低減するような凝集剤の注入量が示されるのみで、浄水処理全体の処理費の面から見た最適な凝集剤注入量や膜ろ過処理装置の適正な運転条件は示されていない。
【0013】
以上述べたように、処理費用の面からの「膜ろ過処理装置」および「膜ろ過処理装置を含んだ浄水処理システム」の最適な運転条件を求める技術はこれまで見あたら無かった。
【0014】
本発明の目的は上記の従来技術の問題点に鑑み、膜ろ過処理装置自体をはじめ、前処理まで含めた浄水処理システムの運転制御を費用の面から適正化する、膜ろ過処理装置の運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明は、原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、前記膜ろ過処理装置の膜間差圧とろ過流量とを含む膜ろ過処理装置現状運転情報を取り込む膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイスと、予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、ろ過時の膜間差圧の過去からの上昇比率またはろ過流量の過去からの減少比率、および前記計画水量情報に基づき、少なくとも逆洗時間とろ過時間とを含んだ膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を画面に表示する表示装置と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
あるいは、原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、原水の濁度あるいは紫外線吸光度を含む膜ろ過処理装置流入原水水質情報を取り込む膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスと、予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、予め与えられる膜の抵抗係数とろ過係数を取り込む膜パラメータインターフェイスと、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度と、前記計画水量情報とに基づいて、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度の関数で求まるケーク比率に基づき計算される逆洗時間とろ過時間とを少なくとも含む膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を表示する表示装置と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
あるいは、上記二つの発明を組合せ、前記膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段は、前記膜ろ過処理装置現状運転情報を含んで膜ろ過処理装置推奨運転操作量及び膜ろ過処理費情報を計算することを特徴とする。
【0018】
あるいは、本発明の膜ろ過処理装置の運転支援装置は、少なくとも薬品洗浄コストあるいは膜モジュール交換コストのいずれかを含んだ膜ろ過処理装置メンテナンス情報を取り込む膜ろ過処理装置メンテナンス情報インタフェイスと、少なくとも計画水量情報と膜ろ過処理装置メンテナンス情報に基づき、少なくともろ過時間と逆洗時間を含む膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
あるいは、前記膜ろ過処理装置の前段に濁度を除去する性能を有する前処理装置を備えるものであって、流入原水水質の情報を取り込む前処理装置原水水質情報インタフェイスと、前処理装置の運転条件を設定する前処理装置運転条件設定手段と、前記計画水量情報と前記前処理装置流入原水水質情報と前記前処理装置運転条件情報に基づき、前処理装置出口の水質と前処理装置による前処理費とを計算し、そのうち前記水質情報を膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスに与える前処理装置水質・費用算出手段と、算出した前処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であるか判断し、最適値で無い場合には少なくとも前処理装置運転条件設定手段へ運転条件の設定を変更する前処理運転条件設定変更信号を出力する総合処理費判断手段と、前記前処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であった場合に前記前処理装置の運転操作量情報を表示することを特徴とする。
【0020】
あるいは、前記膜ろ過処理装置の前段に凝集沈殿処理装置を備えたものであって、凝集沈殿処理装置への流入原水水質の情報を取り込む凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイスと、前記凝集沈殿処理装置の運転条件を設定する凝集沈殿処理装置運転条件設定手段と、前記計画水量情報と前記凝集沈殿処理装置流入原水水質情報と前記凝集沈殿処理装置運転条件情報に基づき、凝集沈殿処理装置出口の水質と凝集沈殿処理装置による処理費とを計算し、凝集沈殿処理装置出口の水質を膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスに与える凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段と、前記凝集沈殿処理装置による処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であるか判断し、最適値で無い場合には前記凝集沈殿処理装置運転条件設定手段へ運転条件の設定を変更する凝集沈殿処理運転条件設定変更信号を出力する総合処理費判断手段とを備え、前記総合処理費判断手段で凝集沈殿処装置の処理費と膜ろ過処理費の合計が最適値であった場合に凝集沈殿処理装置の運転操作量情報を画面に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、膜ろ過処理装置の運転制御のための処理費用を低減できるような運転支援装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の複数の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図を通して同一の符号は同等のものを示している。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、膜ろ過処理装置の現状運転情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置の運転を支援する装置の機能ブロック図を示す。
【0023】
膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイス12には、少なくとも膜間差圧とろ液流量を含んだ膜ろ過処理装置現状運転情報11が膜ろ過処理装置10から与えられる。情報の与え方としては、電気的な回線経由でも良いし、操作員が膜ろ過処理装置10の計装盤の値を読み取って入力しても良い。この膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイス12は、計算機あるいは監視制御盤に備えられたキーボードや電子回路で実現される。膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイス12を経由した膜ろ過処理装置現状運転情報11は電子化された情報として、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に与えられる。
【0024】
ここで、電子化された膜ろ過処理装置現状運転情報11のほかに、過去の運転実績情報を同時に使用することも有り得る。膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15には、計画水量情報インタフェイス13から計画水量情報14が与えられる。計画水量情報インタフェイス13への情報の与え方は、自動的に計算機から情報が与えられる形態と、操作員など人が値を入力する形態のいずれも有り得る。計画水量情報インタフェイス13を経由した計画水量情報14は電子化された情報となり、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に与えられる。
【0025】
このように与えられた膜ろ過処理装置現状運転情報11と計画水量情報14を用いて、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15が膜ろ過処理費情報16と膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18を計算し、表示装置17に表示する。以下、その計算手法の一例を述べる。
【0026】
全流量ろ過を対象とする一般的なルースのろ過モデルは式(1)、(2)で与えられる。
dVf/dt=A2・k・Pf/(c・μ・(Vf+V0)) …(1)
Vf=∫(dVf/dt) …(2)
ここで、Vf:ろ過開始後のろ液総量、A:膜面積、k:抵抗係数、Pf:ろ過時の膜間差圧、c:単位ろ液量に対するケーク比率、μ:水の粘性係数、V0:ろ過定数である。
【0027】
式(1)中で、膜面積Aは膜モジュールの仕様として既知であり、ろ過時の膜間差圧Pfは膜ろ過処理装置現状運転情報11として与えられる。ろ過開始後のろ液総量Vfは、膜ろ過処理装置現状運転情報11として与えられるろ過流量の積算値で与えられる。水の粘性係数μは物理定数として与えられ、残った抵抗係数kと単位ろ液量に対するケーク比率cおよびろ過定数V0を膜ろ過処理装置現状運転情報11の値から同定する。同定には少なくとも異なった2時刻の膜間差圧あるいはろ過流量の変化が分かれば良い。浄水場では一般的に定流量ろ過の適用される例が多いが、その場合にはろ過流量が一定であるように制御されるため、膜間差圧の過去からの上昇比率をこの同定に使うことになる。一般産業向けの浄水プラントでは定圧ろ過も適用されることがあるが、その場合にはろ過圧力が一定であるように制御されるため、ろ過流量の過去からの減少比率をこの同定で使うことになる。
【0028】
このモデルを用いることで、ろ過時の膜間差圧Pfに対する単位時間当たりのろ過流量dVf/dtを計算できる。ろ過に必要な加圧ポンプの動力は、吐出圧力Pfpとろ過流量dVf/dtの積に比例する。配管や揚程差など膜間差圧以外のろ過時圧力損失をPf'とすると、ろ過用の加圧ポンプで消費される電力Wfは式(3)で与えられる。
Wf=k2・Pfp・(dVf/dt)=k2・(Pf+Pf')・(dVf/dt) …(3)
ただし、K2:比例定数である。
【0029】
次に、式(1)を参考にして、逆洗モデルを式(4)、(5)のように仮定する。
dVb/dt=A2・k3・Pb/(c・μ・(Vfsum−Vb−V0)) …(4)
Vb=∫(dVb/dt) …(5)
ここで、Vb:逆洗開始後の逆洗水総量、k3:逆洗時抵抗係数、Pb:逆洗時の膜間差圧、Vfsum:逆洗開始直前のろ液総量である。
【0030】
逆洗時に逆洗ポンプで消費される電力Wbは式(6)で与えられる。
Wb=k4・Pbp・(dVb/dt)=k4・(Pb+Pb')・(dVb/dt) …(6)
ここで、k4:比例定数、Pbp:逆洗ポンプの吐出圧力、Pb': 配管や揚程差など膜間差圧以外の逆洗時圧力損失である。
【0031】
ろ過時間をtf、逆洗時間をtbとすると、ろ過工程と逆洗工程から構成される1サイクルでの実ろ過流量は式(7)となる。
【0032】
【数1】
【0033】
式(7)の流量を得るために消費される電力量は式(8)となる。
【0034】
【数2】
【0035】
従って、膜ろ過水の単位量を作るために必要な電力量Uは式(9)で示される。
【0036】
【数3】
【0037】
この電力量Uを費用に換算するため、電力量料金単価を乗ずる。昼間と夜間で電力量料金単価が異なる季節別時間帯別電気契約を電力会社と結んでいる場合には、時刻や季節による違いも加味し、膜ろ過水の単位量を得るために必要な電力量料金Coを式(10)で求める。
Co=U・g(t) …(10)
ここで、g(t):電力量料金単価である。
【0038】
経済性の面から、電力量料金Coの値は小さいことが望ましい。式(9)からも分かるように、電力量料金Coはろ過時間tf、逆洗時間tb、ろ過用ポンプの吐出圧力Pfp、逆洗用ポンプの吐出圧力Pbpにより値が変動する。これらの項目の中で、ろ過時間tfと逆洗時間tbは装置スペックなどによる制約が少ないため、運転操作量として変更しやすい項目である。そこで、電力量料金Coを評価指標として、少なくともろ過時間tfと逆洗時間tbを最適化する最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。
【0039】
探索アルゴリズムには総当り法、遺伝アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示した実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。電力量料金Coの値を最小化できるように求められた操作量が本発明で述べる膜ろ過処理装置推奨運転操作量であり、そのときの電力量料金Coが膜ろ過処理費情報に相当する。
【0040】
上記実施例ではルースのろ過モデルに基づき、少なくともろ過時間tfと逆洗時間tbを適正化する一例を示したが、本発明の範囲はこのアルゴリズムに限定されない。過去の実績運転データを用いて同様の指標、すなわち膜ろ過水の単位量を得るための費用を算出し、そのデータを基にろ過時間tfと逆洗時間tbを適正化するアルゴリズムを用いても良い。
【0041】
以上の手順によって求めた膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18は表示装置17に表示される。操作員はそれを見て膜ろ過処理装置10の運転条件のうち、ろ過時間および/あるいは逆洗時間の設定値を調整する。
【0042】
膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18には、膜ろ過水の単位量を得るための費用を最小化する情報は少なくとも含まれるが、それ以外の候補や現状の操作量も比較できる画面であればなお良い。また、膜ろ過処理費情報16も画面に表示する。この情報には、少なくとも膜ろ過水の単位量を作るために必要な電力量料金、あるいは計画水量を膜ろ過した際に必要な費用が含まれる。
【0043】
上記実施例では計算結果の表示による運転支援までしか述べていないが、上記の計算で求めたろ過時間tfと逆洗時間tbの適正値に基づいて、膜ろ過処理装置10を自動運転するようにしても良い。
【0044】
図2に表示装置の画面例を示す。表示装置17には運転操作量の一例として、ろ過流量、ろ過時間、逆洗時間、処理コスト費の現状と推奨値が示されている。表示装置の具体的な実現手段としては、PC、計装盤、グラフィックパネル、情報携帯端末、携帯電話のいずれでも良い。
【0045】
以上の構成により、第1の実施の形態では膜ろ過処理装置10の現状運転情報に基づき、ろ過水単位量を製造するために必要な動力費を最小化できるような膜ろ過処理装置10の推奨運転条件を計算し、操作員に提示することが可能となる。
(第2の実施の形態)
図3は本発明の第2の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、原水水質情報に基づいた計算を実施し、適正に運転支援する装置の機能ブロック図である。
【0046】
第1の実施の形態と異なり、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15の入力情報の一つは膜ろ過処理装置現状運転情報11ではなく、膜ろ過処理原水水質情報インタフェイス21を介した膜ろ過処理原水水質情報20である。それ以外の点、計画水量情報インタフェイス13、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15、表示装置17および入出力情報については第1の実施の形態と同一であり、同一の機能を有する。
【0047】
第1の実施の形態では、膜ろ過処理装置現状運転情報11を用いてルースのろ過モデルのパラメータを同定したが、第2の実施の形態では式(1)に示したルースのろ過モデルのパラメータのうち、「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」を原水水質の情報に基づいて求める。この値は原水の濁度、有機物、溶解性Mn濃度と関係がある。最も単純なcの導出式は、例えば原水の濁度をTu0として式(11)で示される。
c=k5・Tu0 …(11)
あるいは、膜ろ過水の濁度をTufとすると式(12)で示され,この方がより正確である。
c=k5・(Tu0−Tuf) (12)
紫外線吸光度E260で計測した有機物濃度指標や溶解性Mn濃度との相関関係を使い、同様にcの値を推算することも良い。これ以外の水質項目や水温、pHなどによってもcの値が異なることもあるが、その場合には係数k5の同定で対応可能である。式(1)におけるこれ以外のパラメータである抵抗係数kとろ過定数V0は、理論的には原水水質に依存しないため、膜ろ過処理装置10の運転開始時あるいは膜モジュール交換時に決定することができる。これらの値は膜パラメータインターフェイス23から膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に与えられる。
【0048】
従って、式(1)右辺の定数と係数が全て与えられることになり、dVf/dtの値はろ過時の膜間差圧Pfとろ過開始後のろ液総量Vfの関数として計算可能となる。同様にして、式(2)から式(10)までを計算することができる。
【0049】
経済性の面から、電力量料金Coの値は小さいことが望ましい。式(9)からも分かるように、電力量料金Coはろ過時間tf、逆洗時間tb、ろ過用ポンプの吐出圧力Pfp、逆洗用ポンプの吐出圧力Pbpにより値が変動する。これらの項目の中で、ろ過時間tfと逆洗時間tbは装置スペックなどによる制約が少ないため、運転操作量として変更しやすい項目である。そこで、電力量料金Coを評価指標として、少なくともろ過時間tfと逆洗時間tbを最適化する最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。
【0050】
探索アルゴリズムには総当り法、遺伝アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示した実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。電力量料金Coの値を最小化できるように求められた操作量が本発明で述べる膜ろ過処理装置推奨運転操作量であり、そのときの電力量料金Coが膜ろ過処理費情報に相当する。
【0051】
上記実施例ではルースのろ過モデルに基づき、ろ過時間tfと逆洗時間tbを適正化する一例を示したが、本発明の範囲はこのアルゴリズムに限定されない。過去の実績運転データを用いて同様の指標、すなわち膜ろ過水の単位量を得るための費用を算出し、そのデータを基にろ過時間tfと逆洗時間tbを適正化するアルゴリズムを用いても良い。
【0052】
以上の手順によって求めた膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18は表示装置17に表示される。操作員はそれを見て膜ろ過処理装置10の運転条件のうち、ろ過時間および/あるいは逆洗時間の設定値を調整する。
【0053】
膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18には、膜ろ過水の単位量を得るための費用を最小化する情報は少なくとも含まれるが、それ以外の候補や現状の操作量も比較できる画面であればなお良い。また、膜ろ過処理費情報16も画面に表示する。この情報には、少なくとも膜ろ過水の単位量を作るために必要な電力量料金、あるいは計画水量を膜ろ過した際に必要な費用が含まれる。
【0054】
なお、第1の実施形態と同様に、上記計算で求めたろ過時間tfと逆洗時間tbの適正値に基づいて膜ろ過処理装置10を自動運転しても良い。
【0055】
以上の構成により、第2の実施形態では原水の水質情報に基づき、ろ過水単位量を製造するために必要な動力費を最小化できるような膜ろ過処理装置10の推奨運転条件を操作員に提示することが可能となる。
(第3の実施の形態)
図4は本発明の第3の実施による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、膜ろ過処理装置の現状運転情報及び原水水質情報に基づいた運転支援装置の機能ブロック図である。
【0056】
この実施の形態では第1の実施の形態で述べた膜ろ過処理装置現状運転情報11と第2の実施の形態で述べた膜ろ過処理原水水質情報20を併用して、「抵抗係数k」「ろ過定数V0」「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」を同定する。同定に用いる情報が増加することで、パラメータの推定精度を向上することができる。
【0057】
例えば、異なる2時刻の膜間差圧とろ過流量の値から求めた「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」と、濁度あるいは紫外線吸光度の関数に基づき求めた「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」の値の平均値、あるいは案分した値を使用する方法がある。
【0058】
あるいは、濁度あるいは紫外線吸光度から求めた「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」の値を固定値とし、異なる2時刻の膜間差圧とろ過流量の値から「抵抗係数k」と「ろ過定数V0」を決定する。これにより、高精度の「抵抗係数k」と「ろ過定数V0」の同定値を得ることが可能となる。
【0059】
これらの値を用いて式(1)から式(10)までを計算する。膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備えた最適解探索アルゴリズムを用いることで、電力量料金Coの値を最小化するようなろ過時間tfと逆洗時間tbを計算することができる。ただし、式(7)で示した実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。電力量料金Coの値を最小化できるように求められた操作量は、本発明で述べる膜ろ過処理装置推奨運転操作量に相当する。
【0060】
以上の構成により、第3の実施形態では現実をより正確に模擬した膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18および膜ろ過処理費情報16を出力することができる。
(第4の実施の形態)
図5は本発明の第4の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた運転支援装置の機能ブロック図を示す。
【0061】
膜ろ過処理にかかる経費は動力費の他に、膜の薬品洗浄で発生する薬品洗浄コストがある。さらに、長期的には膜モジュールの交換作業が発生するが、交換にもコストが発生する。第4の実施形態は、これら薬品洗浄コストと膜モジュール交換コストを含んだ膜ろ過処理装置メンテナンス情報41を考慮して、最も低コストとなる運転操作量を操作員に提示するものである。
【0062】
膜ろ過処理装置メンテナンス情報41は自動的に回線経由でデータベースなどから与えられても良く、あるいは操作員が膜ろ過処理装置メンテナンス情報インタフェイス40を介して入力することでも良い。ここで想定する膜ろ過処理装置メンテナンス情報41の例を以下に示す。
・薬品洗浄頻度:xヶ月に1回
・薬品洗浄コスト:xxx万円/回
・膜モジュール交換時期:x年経過後
・膜モジュール交換コスト:xxx万円/回
膜ろ過水の単位量を得るために必要な電力量料金Coに加えて、薬品洗浄コストと膜モジュール交換コストを考慮した運転維持管理コストCo_totalは式(13)で示される。
Co_total=Co+Co_chem・(tf+tb)/Tchem+Co_chg・(tf+tb)/Tchg …(13)
ここで、Co_chem:薬品洗浄コスト、Tchem:薬品洗浄間隔、Co_chg:膜モジュール交換コスト、Tchg:膜モジュール交換間隔である。
【0063】
薬品洗浄間隔と膜モジュール交換間隔が一定である場合には、膜ろ過処理費情報16として式(13)で示す運転維持管理コストCo_totalを表示装置17に出力すれば良い。
【0064】
この運転維持管理コストCo_totalは、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbにより値が変動する。経済性の面から、運転維持管理コストCo_totalの値は小さいことが望ましい。
【0065】
そこで、運転維持管理コストCo_totalを評価指標としたろ過時間tfおよび逆洗時間tbの最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。探索アルゴリズムには総当り法、遺伝アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示した実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。本発明で述べる膜ろ過処理装置推奨運転操作量は運転維持管理コストCo_totalの値を最小化できるように求められた操作量に相当する。
【0066】
以上の構成により、第4の実施形態では動力費に加えて膜モジュール交換コストと薬品洗浄コストを考慮した膜ろ過処理費の情報を操作員に提示することが可能となる。
(第5の実施の形態)
図6は本発明の第5の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置の運転を支援するとともに、薬品洗浄時期を表示する装置の機能ブロック図を示す。
【0067】
第5の実施形態は、薬品洗浄間隔が一定に定められていない場合に、薬品洗浄時期予測手段50により、逆洗工程終了直後の膜間差圧の時間的変化をモデル化した連続関数を用いて、膜ろ過処理装置における膜の薬品洗浄予測時期を予測して出力する。さらに、薬品洗浄コストを含めて膜ろ過装置の運転操作量を適正化する点が特徴である。
【0068】
想定する膜ろ過処理装置メンテナンス情報41の例を以下に示す。
・薬品洗浄時期:逆洗工程直後の膜間差圧が所定の値以上となった場合
・薬品購入+廃液処理コスト:xxx万円/回
逆洗直後の膜間差圧に基づいて薬品洗浄を実施する場合には、逆洗直後の膜間差圧ができるだけ上昇しないようにろ過および逆洗運転を実施することで薬品洗浄頻度を低減でき、薬品洗浄コストを抑制することが可能となる。
【0069】
逆洗直後の膜間差圧ができるだけ上昇しないような運転は、「逆洗直後の膜間差圧予測モデル」を構築し、そのモデルを用いた予測計算に従うことで実現できる。この「逆洗直後の膜間差圧予測モデル」の例を以下に述べる。
【0070】
図7に逆洗直後のろ過流量モデルの説明図を示す。図7(i)は、定量ろ過を実施している膜ろ過処理装置の膜間差圧の変化を模式的に示したものである。ろ過工程ではろ過時間経過に従って膜間差圧が上昇するが、逆洗工程を経ると膜面に付着したケークが除去されるため膜間差圧は一旦減少する。この逆洗直後の膜間差圧が次のろ過工程の初期値となり、再度ろ過時間経過に伴って膜間差圧は上昇する。
【0071】
しかし、逆洗を実施しても、膜表面あるいは細孔には少しずつ付着物が蓄積する。この影響で、現実的にはばらつきはあるが、逆洗直後の膜間差圧は徐々に上昇する。一般的には、この逆洗直後の膜間差圧がある設定値以上になると薬品洗浄を実施する。しかし、その設定値が全体のコストから考えて常に最適値である保証は無い。
【0072】
逆洗直後の膜間差圧は時間的には図7(ii)に示すように離散値となる。この離散値を数式として模擬できるような連続関数があれば、将来の「逆洗直後の膜間差圧」を予測できるため、将来をあらかじめ見越して、全体のコストを最小にできるようなろ過時間、逆洗時間を計算により求めることができる。同時に、薬品洗浄の予測時期も出力することが可能となる。
【0073】
この「逆洗直後の膜間差圧」を予測するための連続関数の模式図を図7(iii)に示す。逆洗工程で除去できない蓄積物が徐々に膜面に蓄積する現象は、ろ過工程時にケークが膜面に蓄積するメカニズムと相似している。そこで、例えば式(1)で示したルースのろ過モデルと同型の方程式を仮定したモデルを以下のように構築する。
dVfb/dt=A2・k7・Pfb/(c'・μ・(Vfsum+V0)) …(14)
Vfsum=∫(dVf/dt) (15)
ここで、Vfb:逆洗直後のろ過流量、A:膜面積、k7:抵抗係数、Pfb:逆洗直後の膜間差圧、c':単位ろ液量に対する強付着性ケーク比率、μ:水の粘性係数、Vfsum:前回薬品洗浄後のろ液総量、V0:ろ過定数である。
【0074】
この式の「抵抗係数k7」「ろ過定数V0」「単位ろ液量に対する強付着性ケーク比率c'」は膜ろ過処理装置現状運転情報11および/または膜ろ過処理原水水質情報20を用いて同定できる。結果として、式(14)は逆洗直後のろ過流量、膜間差圧、ろ液総量の関係を示す関数となる。従って「逆洗直後の膜間差圧」を予測計算でき、逆洗直後の膜間差圧が所定の値に達するまでの時間Tchemも求めることができる。
【0075】
以上の計算アルゴリズムは薬品洗浄時期予測手段50および膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備えられる。求められた薬品洗浄予測時期情報51は、表示装置17を介して操作員に提示される。
【0076】
逆洗工程で除去できない強付着性ケークの存在によって、逆洗直後の膜間差圧の値が変わるため、その後のろ過時の現象を模擬した式(1)の「ろ過抵抗係数k」あるいは「ろ過定数V0」の値もその都度変わることになる。式(14)で算出した「逆洗直後の膜間差圧」の予測値に基づけば、「ろ過抵抗係数k」あるいは「ろ過定数V0」を推算できる。
【0077】
例えば、「逆洗直後の膜間差圧」の予測値が前回の1.01倍であったとする。簡単のため、これを全て式(1)の「ろ過抵抗係数k」に転嫁すると、kの値が前回の1.01倍になったとみなせる。この割合は逆洗工程でも同等で、逆洗工程を記述する式(4)の「逆洗時抵抗係数k3」の値も1.01倍になるとみなせる。この係数の値を用いて計算することで、膜ろ過水の単位量を得るために必要な電力量料金Coが算出できる。これに加えて薬品洗浄コストを考慮した運転維持管理コストCo_pow_chemは式(16)で示される。
Co_pow_chem=Co+Co_chem・(tf+tb)/Tchem …(16)
運転維持管理コストCo_pow_chemの値は、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbによって値が変動する。経済性の面から、この値は小さいことが望ましい。
【0078】
そこで、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbの最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。探索アルゴリズムには総当り法、遺伝子アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示される実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。
【0079】
以上の構成により、第5の実施形態では薬品洗浄コストと動力費を総合的に考慮した最適な運転条件、および薬品洗浄の予測時期を操作員に提示することが可能となる。
(第6の実施の形態)
図8は本発明の第6の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置の運転を支援するとともに、薬品洗浄時期と膜交換時期を表示する装置の機能ブロック図を示す。
【0080】
第6の実施形態では、膜ろ過処理装置において膜モジュール交換間隔が一定に定められていない場合に、膜交換時期予測手段60により次の交換時期を予測して表示出力する点と、膜モジュール交換コストを含めて膜ろ過処理装置の運転操作量を適正化する点が特徴である。想定する膜ろ過処理装置メンテナンス情報41の例を以下に示す。
・膜モジュール交換時期:薬品洗浄直後の膜間差圧が所定の値以上となった場合
・膜モジュール交換コスト:xxx万円/回
薬品洗浄直後の膜間差圧に基づいて膜モジュールを交換する場合には、薬品洗浄直後の膜間差圧ができるだけ上昇しないようにろ過・逆洗運転を実施することで膜モジュール交換頻度を低減でき、膜モジュール交換コストを抑制することが可能となる。
【0081】
薬品洗浄直後の膜間差圧ができるだけ上昇しないような運転は、「薬品洗浄直後の膜間差圧予測モデル」を構築し、そのモデルを用いた予測計算に従うことで実現できる。この「薬品洗浄直後の膜間差圧予測モデル」の例を以下に述べる。
【0082】
図9は薬品洗浄直後のろ過流量モデルの説明図である。図9(i)は、薬品洗浄後の膜間差圧の時間的変化を模式的に示したものである。ろ過工程と逆洗工程を繰り返して膜ろ過処理装置を運転していると、運転時間に伴い膜間差圧が上昇するが、薬品洗浄工程を経ると膜面に付着したケークが除去されるため膜間差圧は一旦減少する。この薬品洗浄直後の膜間差圧が次のろ過工程の初期値となり、再度ろ過時間経過に伴って膜間差圧は上昇する。
【0083】
しかし、薬品洗浄を実施しても、膜表面あるいは細孔には少しずつ付着物が蓄積する。この影響で、現実的にはばらつきはあるが、薬品洗浄直後の膜間差圧は徐々に上昇する。一般的には、この薬品洗浄直後の膜間差圧がある設定値以上になると膜の交換を実施する。しかし、その設定値が全体のコストから考えて常に最適な値となっている保証は無い。
【0084】
薬品洗浄直後の膜間差圧は時間的には図9(i)に示すように離散値となる。この離散値を数式として模擬できるような連続関数があれば、将来の「薬品洗浄直後の膜間差圧」を予測できるため、将来を見越して、全体のコストを最小にできるようなろ過時間、逆洗時間を計算により求めることができる。同時に、膜モジュール交換の予測時期も出力することが可能となる。
【0085】
この「薬品洗浄直後の膜間差圧」を予測するための連続関数の模式図を図9(ii)に示す。薬品洗浄工程で除去できない蓄積物が徐々に膜面に蓄積する現象は、ろ過工程時にケークが膜面に蓄積するメカニズムと相似している。そこで、例えば式(1)で示したルースのろ過モデルと同型の方程式を仮定したモデルを構築する。
dVf_chem/dt=A2・k8・Pf_chem/(c''・μ・(Vf_total + V0)) …(17)
Vf_total=∫(dVf/dt) …(18)
ここで、Vf_chem:薬品洗浄直後のろ過流量、A:膜面積、k8:抵抗係数、Pf_chem:薬品洗浄直後の膜間差圧、c'':単位ろ液量に対する耐薬品性ケーク比率、μ:水の粘性係数、Vf_total:膜モジュール使用開始後のろ液総量、V0:ろ過定数である。
【0086】
この式の「抵抗係数k8」「ろ過定数V0」「単位ろ液量に対する耐薬品性ケーク比率c''」は、膜ろ過処理装置現状運転情報11および、あるいは膜ろ過処理原水水質情報20を用いて同定できる。「薬品洗浄直後の膜間差圧」予測計算が実現でき、薬品洗浄直後の膜間差圧が所定の値に達するまでの時間Tchgも求めることができる。
【0087】
以上の計算アルゴリズムは膜交換時期予測手段60および膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備えられる。求められた膜交換予測時期情報61は、表示装置17を介して操作員に提示される。
【0088】
薬品洗浄で除去できない耐薬品性ケークの存在によって、薬品洗浄直後の膜間差圧の値が変わるため、その後の逆洗直後の膜間差圧を記述する式(14)の「抵抗係数k7」あるいは「ろ過定数V0」の値もその都度変わることになる。
【0089】
式(17)で算出した「薬品洗浄直後の膜間差圧」の予測値に基づけば、式(14)の「抵抗係数k7」の値を推算できる。
【0090】
例えば、「薬品洗浄直後の膜間差圧」の予測値が前回の1.01倍であったとする。簡単のためこれを全て式(14)の「抵抗係数k7」に転嫁すると、k7の値が前回の1.01倍になったとみなせる。この係数の値を用いて計算することで、膜ろ過水の単位量を得るために必要な電力量料金Coが算出できる。これに加えて薬品洗浄コストと膜モジュール交換コストを考慮した運転維持管理コストCo_totalは式(19)で示される。
Co_total=Co+Co_chem・(tf+tb)/Tchem+Co_chg・(tf+tb)/Tchg …(19)
ここで、Co_chem:薬品洗浄コスト、Tchem:薬品洗浄頻度、Co_chg:膜モジュール交換コスト、Tchg:膜モジュール交換頻度である。
【0091】
運転維持管理コストCo_totalの値は、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbの設定値によって変動し、経済性の面から小さいことが望ましい。そこで、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbの最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。探索アルゴリズムには総当り法、遺伝子アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示される実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。
【0092】
以上の構成により、第6の実施の形態では膜モジュールの交換コスト、薬品洗浄コスト、動力費を総合的に考慮した最適な運転条件および膜モジュールの交換予測時期を操作員に提示することが可能となる。
(第7の実施の形態)
図10は本発明の第7の実施形態を示す膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報と前処理装置原水水質情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置とその前段の前処理装置の運転を支援する装置の機能ブロック図を示す。
【0093】
膜ろ過処理装置10は単独で用いられることもあるが、原水を河川など表流水から取水している浄水場の場合には、凝集処理、凝集沈殿処理、凝集沈殿ろ過処理、高速繊維ろ過処理など濁度を除去する性能を有する前処理装置81と組み合わせて用いられることが多い。
【0094】
濁質は前処理装置81でも膜ろ過処理装置10でも除去できるため、前処理装置81で十分除去して膜ろ過処理装置10への水質負荷を低減する方法や、前処理装置81で処理を軽減し、膜処理装置10に負荷をかける方法など運転方法の選択肢がありえる。第7の実施形態は、前処理装置81と膜ろ過処理装置10の負荷配分を適正化して、プラント全体の処理費用の合計が最小となるようにするものである。
【0095】
前処理装置81に流入する原水の水質情報は、前処理装置原水水質情報インタフェイス70を介し、電子化された前処理装置原水水質情報71として前処理装置水質・費用算出手段76に与えられる。原水の水質情報の具体例としては、濁度、水温、溶解性有機物濃度などがある。前処理装置原水水質情報インタフェイス70への水質情報の与え方は操作員など人が入力して与える場合と自動計測機器の情報を電子的に与える場合とがある。
【0096】
前処理装置水質・費用算出手段76には、計画水量情報インタフェイス13から計画水量情報14が与えられる。さらに、前処理装置水質・費用算出手段76には、前処理装置運転条件設定手段72から前処理装置運転条件情報73が与えられる。前処理装置水質・費用算出手段76では、前処理装置原水水質情報71および計画水量情報14および前処理装置運転条件情報73に基づき、前処理装置出口水質情報74と前処理費情報75が出力される。
【0097】
前処理装置水質・費用算出手段76の中身はあらかじめ蓄積していたテーブルに基づいて計算するアルゴリズムでも良いし、物理化学現象をモデル化したシミュレータによる計算アルゴリズムでも良い。前処理装置出口水質情報74は、膜ろ過処理装置10の原水水質情報と同一であり、膜ろ過処理水原水水質情報インタフェイス21に与えられる。
【0098】
一方、前処理費情報75は総合処理費判断手段77に与えられる。これに加えて膜ろ過処理費情報16も与えられた総合処理費判断手段77は、前処理費情報75と膜ろ過処理費情報16の和が最小の費用であるかを判断する。そして、和がより小さくなるように、少なくとも前処理装置81の運転条件を変更する内容の前処理装置推奨運転操作量情報79を算出し、出力する。好ましくは、膜ろ過処理装置10の運転条件を変更する内容の膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報82を算出し、出力する。表示装置17には前処理装置推奨運転操作量情報79と膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報82を表示する。
【0099】
以上の構成により、第7の実施形態では前処理と膜ろ過処理を総合的に把握し、浄水処理システム全体としての処理費用を最小化できるような前処理装置81および膜ろ過処理装置10の運転条件を求めることが可能となる。
(第8の実施の形態)
図11は本発明の第8の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報と凝集沈殿処理装置の原水水質情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置および前段の凝集沈殿処理装置の運転を支援する装置の機能ブロック図を示す。
【0100】
膜ろ過処理装置10は単独で用いられることもあるが、原水を河川など表流水から取水している浄水場の場合には、既存の凝集沈殿処理装置と組み合わせて用いられることがある。第8の実施形態は、凝集沈殿処理と膜ろ過処理の負荷配分を適正化して、処理費用の合計が最小となるようにするものである。
【0101】
凝集沈殿処理装置101に流入する原水の水質情報は、凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイス90を介し、電子化された凝集沈殿処理装置原水水質情報91として凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96に与えられる。原水の水質情報の具体例としては、濁度、水温、溶解性有機物濃度などがある。凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイス90への水質情報の与え方は操作員など人が入力して与える場合と自動計測機器の情報を電子的に与える場合とがある。
【0102】
凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96には、計画水量情報インタフェイス13から計画水量情報14が与えられる。さらに、凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96には、凝集沈殿処理装置運転条件設定手段92から凝集沈殿処理装置運転条件情報93が与えられる。凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96では、凝集沈殿処理装置原水水質情報91および計画水量情報14および凝集沈殿処理装置運転条件情報93に基づき、凝集沈殿処理装置出口水質情報94と凝集沈殿処理費情報95が出力される。凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96の中身はあらかじめ蓄積していたテーブルに基づいて計算するアルゴリズムでも良いし、物理化学現象をモデル化したシミュレータによる計算アルゴリズムでも良い。凝集沈殿処理装置出口水質情報94は、膜ろ過処理装置10の原水水質情報と同一であり、膜ろ過処理水原水水質情報インタフェイス21に与えられる。
【0103】
一方、凝集沈殿処理費情報95は総合処理費判断手段77に与えられる。これに加えて膜ろ過処理費情報16も与えられた総合処理費判断手段77は、凝集沈殿処理費情報95と膜ろ過処理費情報16の和が最小の費用であるかを判断する。そして、和がより小さくなるように、少なくとも凝集沈殿処理装置101の運転条件を変更する内容の凝集沈殿処理装置推奨運転操作量情報99を算出し、出力する。好ましくは、膜ろ過処理装置10の運転条件を変更する内容の膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報81を算出し、出力する。表示装置17には凝集沈殿処理装置推奨運転操作量情報99と膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報81を表示する。
【0104】
以上の構成により、第8の実施形態では凝集沈殿処理と膜ろ過処理を総合的に把握し、浄水処理システム全体としての処理費用を最小化できるような凝集沈殿処理装置101および膜ろ過処理装置10の運転条件を求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1の実施形態で、現状運転情報に基づく膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図2】膜ろ過処理装置の運転支援装置の画面出力例を示す説明図。
【図3】第2の実施形態で、原水水質情報に基づいた膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図4】第3の実施形態で、現状運転情報及び原水水質情報に基づいた膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図5】第4の実施形態で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図6】第5の実施形態で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた計算と、薬品洗浄時期を示す膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図7】逆洗直後のろ過流量モデルの説明図。
【図8】第6の実施形態で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた計算と、薬品洗浄時期と膜交換時期を示す膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図9】薬品洗浄直後のろ過流量モデルの説明図
【図10】第7の実施形態で、現状運転情報と前処理装置原水水質情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置および前処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図11】第8の実施形態で、現状運転情報と凝集沈殿処理装置の原水水質情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置および凝集沈殿処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【符号の説明】
【0106】
10…膜ろ過処理装置、11…膜ろ過処理装置現状運転情報、12…膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイス、13…計画水量情報インタフェイス、14…計画水量情報、15…膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段、16…膜ろ過処理費情報、17…表示装置、18…膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報、20…膜ろ過処理原水水質情報、21…膜ろ過処理原水水質情報インタフェイス、22…膜パラメータインタフェイス、23…抵抗係数とろ過定数、40…膜ろ過処理装置メンテナンス情報インタフェイス、41…膜ろ過処理装置メンテナンス情報、50…薬品洗浄時期予測手段、51…薬品洗浄予測時期情報、60…膜交換時期予測手段、61…膜交換予測時期情報、70…前処理装置原水水質情報インタフェイス、71…前処理装置原水水質情報、72…前処理装置運転条件設定手段、73…前処理装置運転条件情報、74…前処理装置出口水質情報、75…前処理費情報、76…前処理装置水質・費用算出手段、77…総合処理費判断手段、79…前処理装置推奨運転操作量情報、81…前処理装置、82…膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報、90…凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイス、91…凝集沈殿処理装置原水水質情報、92…凝集沈殿処理装置運転条件設定手段、93…凝集沈殿処理装置運転条件情報、94…凝集沈殿処理装置出口水質情報、95…凝集沈殿処理費情報、96…凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段、99…凝集沈殿処理装置推奨運転操作量情報、101…凝集沈殿処理装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水に含まれる濁質や病原性原虫などの分離除去のために設置される浄水場向け膜ろ過処理装置の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過処理装置は、水をろ過して浄化するろ過工程で濁質や有機物から成る湿潤ケークによる目詰まりが発生し、ろ過水の総量が増えるに伴い膜間差圧が上昇する。この膜間差圧を低くしてろ過流量を回復するために、逆洗工程でろ過水を逆流させ、膜に付着したケークを除去する。原水が浄化される過程で、このろ過工程と逆洗工程が繰り返される。逆洗を実施しても膜間差圧が所定の値まで戻らない場合には薬品洗浄を実施し、薬品洗浄を実施しても膜間差圧が所定の値まで戻らない場合には膜モジュールを交換する。ろ過時間と逆洗時間はタイマーで一定値として設定されることが多い。ろ過時間:30〜90分程度、逆洗時間:15〜30秒程度が多く見られる値である。
【0003】
表流水を原水とした浄水場では、膜ろ過処理装置の前段に濁質除去の能力を有する前処理装置が備えられることが多い。前処理として代表的な凝集沈殿処理では、凝集剤を原水に注入して濁質や有機物を沈殿除去する。この処理によって後段の膜ろ過処理装置にかかる水質負荷を低減できるため、膜ろ過処理装置の目詰まり抑制や動力費低減の効果が期待できる。
【0004】
従来の凝集沈殿ろ過処理に比べ、膜ろ過処理は多量の電力を消費する。膜ろ過処理装置で最も電力を消費する機器は、ろ過圧力を膜に加えるポンプである。ポンプが消費する電力は、膜間差圧に比例する。一般的に膜ろ過処理装置は定流量運転をしているが、その場合逆洗工程を実施するまで膜間差圧が徐々に増大する。電力消費量の面からは、ろ過工程での膜間差圧が高くならないよう、頻繁に逆洗を実施することが有効である。
【0005】
膜ろ過処理装置の運転制御装置として、例えば特許文献1の記載がある。この発明は運転制御の状態パラメータの目標値の決定に関するものである。
【0006】
また、膜ろ過処理装置と前処理装置の凝集剤注入量制御に関する発明として、特許文献2の記載がある。この発明には、凝集剤注入量を原水の色度/濁度の値に基づいて制御することで、膜の目詰まりを抑制可能とされている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−229554号公報
【特許文献2】特開2002−336871公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の膜ろ過処理の逆洗工程では、一度ろ過した処理水を逆流させて消費する。従って、実際に使うことができる有効な水量は、ろ過水量から逆洗水量を差し引いた値となる。ここでは、これを実ろ過水量と呼ぶ。この実ろ過水量を多く得るためには逆洗頻度を減らしたほうが良く、逆洗頻度の面において、消費電力と実ろ過水量はトレードオフの関係にある。いま、評価指標として「実ろ過水量単位量あたりの動力費」を計算すると、この評価指標の値を最小とするような逆洗頻度の最適値が存在する。通常の浄水処理において膜間差圧は原水水質や水温により変動するため、「実ろ過水量単位量あたりの動力費」も変わり、結果として少なくとも逆洗頻度の最適値も季節や日時によって異なると考えられる。しかしながら、一般的に使用されているタイマー制御では、ろ過時間と逆洗時間を一定として与えているため、最適値を常には実現できない欠点があった。
【0009】
さらに、膜ろ過処理装置はその運転方法によって、膜モジュールの薬品洗浄時期や交換時期が異なると考えられる。膜モジュールの洗浄コストや交換作業コストが動力費に比べて無視できない額であれば、それらのコストも含めた「実ろ過水量単位量あたりのコスト」を最小化することが望ましい。現状の膜ろ過処理装置の運転は、この「実ろ過水量単位量あたりのコスト」を最小化できる保証も無かった。
【0010】
上記の特許文献1の発明の対象は逆浸透膜造水プラントであり、浄水場で用いるような、ろ過工程と逆洗工程が頻繁に繰り返されるような膜ろ過装置を対象としていない。さらに、逆洗工程に関する記述も無く、逆洗時間やろ過時間を最適に決定する目的を満足するものではなかった。
【0011】
また、前処理がある場合には、浄水処理システム全体としてコスト的に最適な運転も保証されない欠点もあった。例えば、膜ろ過処理装置の前段に備えた凝集沈殿処理で凝集剤注入量が過少であると、膜ろ過処理装置へ流出する濁質や有機物が増える。この場合、凝集沈殿処理費は安くなるが、膜ろ過処理装置への負荷が過大となって動力費や逆洗頻度が増加し、浄水処理システム全体としては処理費が高くなる。逆に、凝集沈殿処理で凝集剤注入量が多いと膜ろ過処理装置の動力費を低減できるが、凝集沈殿処理費が高くなり、浄水処理システム全体としては処理費が高くなる。場合によっては残留したアルミニウムイオンが目詰まりの原因の一つとなる可能性もある。このように前処理と膜ろ過処理は密接な関係にあるが、どのような運転をすれば常にコスト的に最適となるか、に関しては公知の技術は見当たらない。
【0012】
また、特許文献2では、目詰まりを低減するような凝集剤の注入量が示されるのみで、浄水処理全体の処理費の面から見た最適な凝集剤注入量や膜ろ過処理装置の適正な運転条件は示されていない。
【0013】
以上述べたように、処理費用の面からの「膜ろ過処理装置」および「膜ろ過処理装置を含んだ浄水処理システム」の最適な運転条件を求める技術はこれまで見あたら無かった。
【0014】
本発明の目的は上記の従来技術の問題点に鑑み、膜ろ過処理装置自体をはじめ、前処理まで含めた浄水処理システムの運転制御を費用の面から適正化する、膜ろ過処理装置の運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明は、原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、前記膜ろ過処理装置の膜間差圧とろ過流量とを含む膜ろ過処理装置現状運転情報を取り込む膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイスと、予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、ろ過時の膜間差圧の過去からの上昇比率またはろ過流量の過去からの減少比率、および前記計画水量情報に基づき、少なくとも逆洗時間とろ過時間とを含んだ膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を画面に表示する表示装置と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
あるいは、原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、原水の濁度あるいは紫外線吸光度を含む膜ろ過処理装置流入原水水質情報を取り込む膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスと、予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、予め与えられる膜の抵抗係数とろ過係数を取り込む膜パラメータインターフェイスと、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度と、前記計画水量情報とに基づいて、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度の関数で求まるケーク比率に基づき計算される逆洗時間とろ過時間とを少なくとも含む膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を表示する表示装置と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
あるいは、上記二つの発明を組合せ、前記膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段は、前記膜ろ過処理装置現状運転情報を含んで膜ろ過処理装置推奨運転操作量及び膜ろ過処理費情報を計算することを特徴とする。
【0018】
あるいは、本発明の膜ろ過処理装置の運転支援装置は、少なくとも薬品洗浄コストあるいは膜モジュール交換コストのいずれかを含んだ膜ろ過処理装置メンテナンス情報を取り込む膜ろ過処理装置メンテナンス情報インタフェイスと、少なくとも計画水量情報と膜ろ過処理装置メンテナンス情報に基づき、少なくともろ過時間と逆洗時間を含む膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
あるいは、前記膜ろ過処理装置の前段に濁度を除去する性能を有する前処理装置を備えるものであって、流入原水水質の情報を取り込む前処理装置原水水質情報インタフェイスと、前処理装置の運転条件を設定する前処理装置運転条件設定手段と、前記計画水量情報と前記前処理装置流入原水水質情報と前記前処理装置運転条件情報に基づき、前処理装置出口の水質と前処理装置による前処理費とを計算し、そのうち前記水質情報を膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスに与える前処理装置水質・費用算出手段と、算出した前処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であるか判断し、最適値で無い場合には少なくとも前処理装置運転条件設定手段へ運転条件の設定を変更する前処理運転条件設定変更信号を出力する総合処理費判断手段と、前記前処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であった場合に前記前処理装置の運転操作量情報を表示することを特徴とする。
【0020】
あるいは、前記膜ろ過処理装置の前段に凝集沈殿処理装置を備えたものであって、凝集沈殿処理装置への流入原水水質の情報を取り込む凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイスと、前記凝集沈殿処理装置の運転条件を設定する凝集沈殿処理装置運転条件設定手段と、前記計画水量情報と前記凝集沈殿処理装置流入原水水質情報と前記凝集沈殿処理装置運転条件情報に基づき、凝集沈殿処理装置出口の水質と凝集沈殿処理装置による処理費とを計算し、凝集沈殿処理装置出口の水質を膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスに与える凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段と、前記凝集沈殿処理装置による処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であるか判断し、最適値で無い場合には前記凝集沈殿処理装置運転条件設定手段へ運転条件の設定を変更する凝集沈殿処理運転条件設定変更信号を出力する総合処理費判断手段とを備え、前記総合処理費判断手段で凝集沈殿処装置の処理費と膜ろ過処理費の合計が最適値であった場合に凝集沈殿処理装置の運転操作量情報を画面に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、膜ろ過処理装置の運転制御のための処理費用を低減できるような運転支援装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の複数の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図を通して同一の符号は同等のものを示している。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、膜ろ過処理装置の現状運転情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置の運転を支援する装置の機能ブロック図を示す。
【0023】
膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイス12には、少なくとも膜間差圧とろ液流量を含んだ膜ろ過処理装置現状運転情報11が膜ろ過処理装置10から与えられる。情報の与え方としては、電気的な回線経由でも良いし、操作員が膜ろ過処理装置10の計装盤の値を読み取って入力しても良い。この膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイス12は、計算機あるいは監視制御盤に備えられたキーボードや電子回路で実現される。膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイス12を経由した膜ろ過処理装置現状運転情報11は電子化された情報として、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に与えられる。
【0024】
ここで、電子化された膜ろ過処理装置現状運転情報11のほかに、過去の運転実績情報を同時に使用することも有り得る。膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15には、計画水量情報インタフェイス13から計画水量情報14が与えられる。計画水量情報インタフェイス13への情報の与え方は、自動的に計算機から情報が与えられる形態と、操作員など人が値を入力する形態のいずれも有り得る。計画水量情報インタフェイス13を経由した計画水量情報14は電子化された情報となり、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に与えられる。
【0025】
このように与えられた膜ろ過処理装置現状運転情報11と計画水量情報14を用いて、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15が膜ろ過処理費情報16と膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18を計算し、表示装置17に表示する。以下、その計算手法の一例を述べる。
【0026】
全流量ろ過を対象とする一般的なルースのろ過モデルは式(1)、(2)で与えられる。
dVf/dt=A2・k・Pf/(c・μ・(Vf+V0)) …(1)
Vf=∫(dVf/dt) …(2)
ここで、Vf:ろ過開始後のろ液総量、A:膜面積、k:抵抗係数、Pf:ろ過時の膜間差圧、c:単位ろ液量に対するケーク比率、μ:水の粘性係数、V0:ろ過定数である。
【0027】
式(1)中で、膜面積Aは膜モジュールの仕様として既知であり、ろ過時の膜間差圧Pfは膜ろ過処理装置現状運転情報11として与えられる。ろ過開始後のろ液総量Vfは、膜ろ過処理装置現状運転情報11として与えられるろ過流量の積算値で与えられる。水の粘性係数μは物理定数として与えられ、残った抵抗係数kと単位ろ液量に対するケーク比率cおよびろ過定数V0を膜ろ過処理装置現状運転情報11の値から同定する。同定には少なくとも異なった2時刻の膜間差圧あるいはろ過流量の変化が分かれば良い。浄水場では一般的に定流量ろ過の適用される例が多いが、その場合にはろ過流量が一定であるように制御されるため、膜間差圧の過去からの上昇比率をこの同定に使うことになる。一般産業向けの浄水プラントでは定圧ろ過も適用されることがあるが、その場合にはろ過圧力が一定であるように制御されるため、ろ過流量の過去からの減少比率をこの同定で使うことになる。
【0028】
このモデルを用いることで、ろ過時の膜間差圧Pfに対する単位時間当たりのろ過流量dVf/dtを計算できる。ろ過に必要な加圧ポンプの動力は、吐出圧力Pfpとろ過流量dVf/dtの積に比例する。配管や揚程差など膜間差圧以外のろ過時圧力損失をPf'とすると、ろ過用の加圧ポンプで消費される電力Wfは式(3)で与えられる。
Wf=k2・Pfp・(dVf/dt)=k2・(Pf+Pf')・(dVf/dt) …(3)
ただし、K2:比例定数である。
【0029】
次に、式(1)を参考にして、逆洗モデルを式(4)、(5)のように仮定する。
dVb/dt=A2・k3・Pb/(c・μ・(Vfsum−Vb−V0)) …(4)
Vb=∫(dVb/dt) …(5)
ここで、Vb:逆洗開始後の逆洗水総量、k3:逆洗時抵抗係数、Pb:逆洗時の膜間差圧、Vfsum:逆洗開始直前のろ液総量である。
【0030】
逆洗時に逆洗ポンプで消費される電力Wbは式(6)で与えられる。
Wb=k4・Pbp・(dVb/dt)=k4・(Pb+Pb')・(dVb/dt) …(6)
ここで、k4:比例定数、Pbp:逆洗ポンプの吐出圧力、Pb': 配管や揚程差など膜間差圧以外の逆洗時圧力損失である。
【0031】
ろ過時間をtf、逆洗時間をtbとすると、ろ過工程と逆洗工程から構成される1サイクルでの実ろ過流量は式(7)となる。
【0032】
【数1】
【0033】
式(7)の流量を得るために消費される電力量は式(8)となる。
【0034】
【数2】
【0035】
従って、膜ろ過水の単位量を作るために必要な電力量Uは式(9)で示される。
【0036】
【数3】
【0037】
この電力量Uを費用に換算するため、電力量料金単価を乗ずる。昼間と夜間で電力量料金単価が異なる季節別時間帯別電気契約を電力会社と結んでいる場合には、時刻や季節による違いも加味し、膜ろ過水の単位量を得るために必要な電力量料金Coを式(10)で求める。
Co=U・g(t) …(10)
ここで、g(t):電力量料金単価である。
【0038】
経済性の面から、電力量料金Coの値は小さいことが望ましい。式(9)からも分かるように、電力量料金Coはろ過時間tf、逆洗時間tb、ろ過用ポンプの吐出圧力Pfp、逆洗用ポンプの吐出圧力Pbpにより値が変動する。これらの項目の中で、ろ過時間tfと逆洗時間tbは装置スペックなどによる制約が少ないため、運転操作量として変更しやすい項目である。そこで、電力量料金Coを評価指標として、少なくともろ過時間tfと逆洗時間tbを最適化する最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。
【0039】
探索アルゴリズムには総当り法、遺伝アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示した実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。電力量料金Coの値を最小化できるように求められた操作量が本発明で述べる膜ろ過処理装置推奨運転操作量であり、そのときの電力量料金Coが膜ろ過処理費情報に相当する。
【0040】
上記実施例ではルースのろ過モデルに基づき、少なくともろ過時間tfと逆洗時間tbを適正化する一例を示したが、本発明の範囲はこのアルゴリズムに限定されない。過去の実績運転データを用いて同様の指標、すなわち膜ろ過水の単位量を得るための費用を算出し、そのデータを基にろ過時間tfと逆洗時間tbを適正化するアルゴリズムを用いても良い。
【0041】
以上の手順によって求めた膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18は表示装置17に表示される。操作員はそれを見て膜ろ過処理装置10の運転条件のうち、ろ過時間および/あるいは逆洗時間の設定値を調整する。
【0042】
膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18には、膜ろ過水の単位量を得るための費用を最小化する情報は少なくとも含まれるが、それ以外の候補や現状の操作量も比較できる画面であればなお良い。また、膜ろ過処理費情報16も画面に表示する。この情報には、少なくとも膜ろ過水の単位量を作るために必要な電力量料金、あるいは計画水量を膜ろ過した際に必要な費用が含まれる。
【0043】
上記実施例では計算結果の表示による運転支援までしか述べていないが、上記の計算で求めたろ過時間tfと逆洗時間tbの適正値に基づいて、膜ろ過処理装置10を自動運転するようにしても良い。
【0044】
図2に表示装置の画面例を示す。表示装置17には運転操作量の一例として、ろ過流量、ろ過時間、逆洗時間、処理コスト費の現状と推奨値が示されている。表示装置の具体的な実現手段としては、PC、計装盤、グラフィックパネル、情報携帯端末、携帯電話のいずれでも良い。
【0045】
以上の構成により、第1の実施の形態では膜ろ過処理装置10の現状運転情報に基づき、ろ過水単位量を製造するために必要な動力費を最小化できるような膜ろ過処理装置10の推奨運転条件を計算し、操作員に提示することが可能となる。
(第2の実施の形態)
図3は本発明の第2の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、原水水質情報に基づいた計算を実施し、適正に運転支援する装置の機能ブロック図である。
【0046】
第1の実施の形態と異なり、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15の入力情報の一つは膜ろ過処理装置現状運転情報11ではなく、膜ろ過処理原水水質情報インタフェイス21を介した膜ろ過処理原水水質情報20である。それ以外の点、計画水量情報インタフェイス13、膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15、表示装置17および入出力情報については第1の実施の形態と同一であり、同一の機能を有する。
【0047】
第1の実施の形態では、膜ろ過処理装置現状運転情報11を用いてルースのろ過モデルのパラメータを同定したが、第2の実施の形態では式(1)に示したルースのろ過モデルのパラメータのうち、「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」を原水水質の情報に基づいて求める。この値は原水の濁度、有機物、溶解性Mn濃度と関係がある。最も単純なcの導出式は、例えば原水の濁度をTu0として式(11)で示される。
c=k5・Tu0 …(11)
あるいは、膜ろ過水の濁度をTufとすると式(12)で示され,この方がより正確である。
c=k5・(Tu0−Tuf) (12)
紫外線吸光度E260で計測した有機物濃度指標や溶解性Mn濃度との相関関係を使い、同様にcの値を推算することも良い。これ以外の水質項目や水温、pHなどによってもcの値が異なることもあるが、その場合には係数k5の同定で対応可能である。式(1)におけるこれ以外のパラメータである抵抗係数kとろ過定数V0は、理論的には原水水質に依存しないため、膜ろ過処理装置10の運転開始時あるいは膜モジュール交換時に決定することができる。これらの値は膜パラメータインターフェイス23から膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に与えられる。
【0048】
従って、式(1)右辺の定数と係数が全て与えられることになり、dVf/dtの値はろ過時の膜間差圧Pfとろ過開始後のろ液総量Vfの関数として計算可能となる。同様にして、式(2)から式(10)までを計算することができる。
【0049】
経済性の面から、電力量料金Coの値は小さいことが望ましい。式(9)からも分かるように、電力量料金Coはろ過時間tf、逆洗時間tb、ろ過用ポンプの吐出圧力Pfp、逆洗用ポンプの吐出圧力Pbpにより値が変動する。これらの項目の中で、ろ過時間tfと逆洗時間tbは装置スペックなどによる制約が少ないため、運転操作量として変更しやすい項目である。そこで、電力量料金Coを評価指標として、少なくともろ過時間tfと逆洗時間tbを最適化する最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。
【0050】
探索アルゴリズムには総当り法、遺伝アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示した実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。電力量料金Coの値を最小化できるように求められた操作量が本発明で述べる膜ろ過処理装置推奨運転操作量であり、そのときの電力量料金Coが膜ろ過処理費情報に相当する。
【0051】
上記実施例ではルースのろ過モデルに基づき、ろ過時間tfと逆洗時間tbを適正化する一例を示したが、本発明の範囲はこのアルゴリズムに限定されない。過去の実績運転データを用いて同様の指標、すなわち膜ろ過水の単位量を得るための費用を算出し、そのデータを基にろ過時間tfと逆洗時間tbを適正化するアルゴリズムを用いても良い。
【0052】
以上の手順によって求めた膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18は表示装置17に表示される。操作員はそれを見て膜ろ過処理装置10の運転条件のうち、ろ過時間および/あるいは逆洗時間の設定値を調整する。
【0053】
膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18には、膜ろ過水の単位量を得るための費用を最小化する情報は少なくとも含まれるが、それ以外の候補や現状の操作量も比較できる画面であればなお良い。また、膜ろ過処理費情報16も画面に表示する。この情報には、少なくとも膜ろ過水の単位量を作るために必要な電力量料金、あるいは計画水量を膜ろ過した際に必要な費用が含まれる。
【0054】
なお、第1の実施形態と同様に、上記計算で求めたろ過時間tfと逆洗時間tbの適正値に基づいて膜ろ過処理装置10を自動運転しても良い。
【0055】
以上の構成により、第2の実施形態では原水の水質情報に基づき、ろ過水単位量を製造するために必要な動力費を最小化できるような膜ろ過処理装置10の推奨運転条件を操作員に提示することが可能となる。
(第3の実施の形態)
図4は本発明の第3の実施による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、膜ろ過処理装置の現状運転情報及び原水水質情報に基づいた運転支援装置の機能ブロック図である。
【0056】
この実施の形態では第1の実施の形態で述べた膜ろ過処理装置現状運転情報11と第2の実施の形態で述べた膜ろ過処理原水水質情報20を併用して、「抵抗係数k」「ろ過定数V0」「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」を同定する。同定に用いる情報が増加することで、パラメータの推定精度を向上することができる。
【0057】
例えば、異なる2時刻の膜間差圧とろ過流量の値から求めた「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」と、濁度あるいは紫外線吸光度の関数に基づき求めた「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」の値の平均値、あるいは案分した値を使用する方法がある。
【0058】
あるいは、濁度あるいは紫外線吸光度から求めた「単位ろ液量に対して得られるケークの体積c」の値を固定値とし、異なる2時刻の膜間差圧とろ過流量の値から「抵抗係数k」と「ろ過定数V0」を決定する。これにより、高精度の「抵抗係数k」と「ろ過定数V0」の同定値を得ることが可能となる。
【0059】
これらの値を用いて式(1)から式(10)までを計算する。膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備えた最適解探索アルゴリズムを用いることで、電力量料金Coの値を最小化するようなろ過時間tfと逆洗時間tbを計算することができる。ただし、式(7)で示した実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。電力量料金Coの値を最小化できるように求められた操作量は、本発明で述べる膜ろ過処理装置推奨運転操作量に相当する。
【0060】
以上の構成により、第3の実施形態では現実をより正確に模擬した膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報18および膜ろ過処理費情報16を出力することができる。
(第4の実施の形態)
図5は本発明の第4の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた運転支援装置の機能ブロック図を示す。
【0061】
膜ろ過処理にかかる経費は動力費の他に、膜の薬品洗浄で発生する薬品洗浄コストがある。さらに、長期的には膜モジュールの交換作業が発生するが、交換にもコストが発生する。第4の実施形態は、これら薬品洗浄コストと膜モジュール交換コストを含んだ膜ろ過処理装置メンテナンス情報41を考慮して、最も低コストとなる運転操作量を操作員に提示するものである。
【0062】
膜ろ過処理装置メンテナンス情報41は自動的に回線経由でデータベースなどから与えられても良く、あるいは操作員が膜ろ過処理装置メンテナンス情報インタフェイス40を介して入力することでも良い。ここで想定する膜ろ過処理装置メンテナンス情報41の例を以下に示す。
・薬品洗浄頻度:xヶ月に1回
・薬品洗浄コスト:xxx万円/回
・膜モジュール交換時期:x年経過後
・膜モジュール交換コスト:xxx万円/回
膜ろ過水の単位量を得るために必要な電力量料金Coに加えて、薬品洗浄コストと膜モジュール交換コストを考慮した運転維持管理コストCo_totalは式(13)で示される。
Co_total=Co+Co_chem・(tf+tb)/Tchem+Co_chg・(tf+tb)/Tchg …(13)
ここで、Co_chem:薬品洗浄コスト、Tchem:薬品洗浄間隔、Co_chg:膜モジュール交換コスト、Tchg:膜モジュール交換間隔である。
【0063】
薬品洗浄間隔と膜モジュール交換間隔が一定である場合には、膜ろ過処理費情報16として式(13)で示す運転維持管理コストCo_totalを表示装置17に出力すれば良い。
【0064】
この運転維持管理コストCo_totalは、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbにより値が変動する。経済性の面から、運転維持管理コストCo_totalの値は小さいことが望ましい。
【0065】
そこで、運転維持管理コストCo_totalを評価指標としたろ過時間tfおよび逆洗時間tbの最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。探索アルゴリズムには総当り法、遺伝アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示した実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。本発明で述べる膜ろ過処理装置推奨運転操作量は運転維持管理コストCo_totalの値を最小化できるように求められた操作量に相当する。
【0066】
以上の構成により、第4の実施形態では動力費に加えて膜モジュール交換コストと薬品洗浄コストを考慮した膜ろ過処理費の情報を操作員に提示することが可能となる。
(第5の実施の形態)
図6は本発明の第5の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置の運転を支援するとともに、薬品洗浄時期を表示する装置の機能ブロック図を示す。
【0067】
第5の実施形態は、薬品洗浄間隔が一定に定められていない場合に、薬品洗浄時期予測手段50により、逆洗工程終了直後の膜間差圧の時間的変化をモデル化した連続関数を用いて、膜ろ過処理装置における膜の薬品洗浄予測時期を予測して出力する。さらに、薬品洗浄コストを含めて膜ろ過装置の運転操作量を適正化する点が特徴である。
【0068】
想定する膜ろ過処理装置メンテナンス情報41の例を以下に示す。
・薬品洗浄時期:逆洗工程直後の膜間差圧が所定の値以上となった場合
・薬品購入+廃液処理コスト:xxx万円/回
逆洗直後の膜間差圧に基づいて薬品洗浄を実施する場合には、逆洗直後の膜間差圧ができるだけ上昇しないようにろ過および逆洗運転を実施することで薬品洗浄頻度を低減でき、薬品洗浄コストを抑制することが可能となる。
【0069】
逆洗直後の膜間差圧ができるだけ上昇しないような運転は、「逆洗直後の膜間差圧予測モデル」を構築し、そのモデルを用いた予測計算に従うことで実現できる。この「逆洗直後の膜間差圧予測モデル」の例を以下に述べる。
【0070】
図7に逆洗直後のろ過流量モデルの説明図を示す。図7(i)は、定量ろ過を実施している膜ろ過処理装置の膜間差圧の変化を模式的に示したものである。ろ過工程ではろ過時間経過に従って膜間差圧が上昇するが、逆洗工程を経ると膜面に付着したケークが除去されるため膜間差圧は一旦減少する。この逆洗直後の膜間差圧が次のろ過工程の初期値となり、再度ろ過時間経過に伴って膜間差圧は上昇する。
【0071】
しかし、逆洗を実施しても、膜表面あるいは細孔には少しずつ付着物が蓄積する。この影響で、現実的にはばらつきはあるが、逆洗直後の膜間差圧は徐々に上昇する。一般的には、この逆洗直後の膜間差圧がある設定値以上になると薬品洗浄を実施する。しかし、その設定値が全体のコストから考えて常に最適値である保証は無い。
【0072】
逆洗直後の膜間差圧は時間的には図7(ii)に示すように離散値となる。この離散値を数式として模擬できるような連続関数があれば、将来の「逆洗直後の膜間差圧」を予測できるため、将来をあらかじめ見越して、全体のコストを最小にできるようなろ過時間、逆洗時間を計算により求めることができる。同時に、薬品洗浄の予測時期も出力することが可能となる。
【0073】
この「逆洗直後の膜間差圧」を予測するための連続関数の模式図を図7(iii)に示す。逆洗工程で除去できない蓄積物が徐々に膜面に蓄積する現象は、ろ過工程時にケークが膜面に蓄積するメカニズムと相似している。そこで、例えば式(1)で示したルースのろ過モデルと同型の方程式を仮定したモデルを以下のように構築する。
dVfb/dt=A2・k7・Pfb/(c'・μ・(Vfsum+V0)) …(14)
Vfsum=∫(dVf/dt) (15)
ここで、Vfb:逆洗直後のろ過流量、A:膜面積、k7:抵抗係数、Pfb:逆洗直後の膜間差圧、c':単位ろ液量に対する強付着性ケーク比率、μ:水の粘性係数、Vfsum:前回薬品洗浄後のろ液総量、V0:ろ過定数である。
【0074】
この式の「抵抗係数k7」「ろ過定数V0」「単位ろ液量に対する強付着性ケーク比率c'」は膜ろ過処理装置現状運転情報11および/または膜ろ過処理原水水質情報20を用いて同定できる。結果として、式(14)は逆洗直後のろ過流量、膜間差圧、ろ液総量の関係を示す関数となる。従って「逆洗直後の膜間差圧」を予測計算でき、逆洗直後の膜間差圧が所定の値に達するまでの時間Tchemも求めることができる。
【0075】
以上の計算アルゴリズムは薬品洗浄時期予測手段50および膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備えられる。求められた薬品洗浄予測時期情報51は、表示装置17を介して操作員に提示される。
【0076】
逆洗工程で除去できない強付着性ケークの存在によって、逆洗直後の膜間差圧の値が変わるため、その後のろ過時の現象を模擬した式(1)の「ろ過抵抗係数k」あるいは「ろ過定数V0」の値もその都度変わることになる。式(14)で算出した「逆洗直後の膜間差圧」の予測値に基づけば、「ろ過抵抗係数k」あるいは「ろ過定数V0」を推算できる。
【0077】
例えば、「逆洗直後の膜間差圧」の予測値が前回の1.01倍であったとする。簡単のため、これを全て式(1)の「ろ過抵抗係数k」に転嫁すると、kの値が前回の1.01倍になったとみなせる。この割合は逆洗工程でも同等で、逆洗工程を記述する式(4)の「逆洗時抵抗係数k3」の値も1.01倍になるとみなせる。この係数の値を用いて計算することで、膜ろ過水の単位量を得るために必要な電力量料金Coが算出できる。これに加えて薬品洗浄コストを考慮した運転維持管理コストCo_pow_chemは式(16)で示される。
Co_pow_chem=Co+Co_chem・(tf+tb)/Tchem …(16)
運転維持管理コストCo_pow_chemの値は、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbによって値が変動する。経済性の面から、この値は小さいことが望ましい。
【0078】
そこで、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbの最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。探索アルゴリズムには総当り法、遺伝子アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示される実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。
【0079】
以上の構成により、第5の実施形態では薬品洗浄コストと動力費を総合的に考慮した最適な運転条件、および薬品洗浄の予測時期を操作員に提示することが可能となる。
(第6の実施の形態)
図8は本発明の第6の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置の運転を支援するとともに、薬品洗浄時期と膜交換時期を表示する装置の機能ブロック図を示す。
【0080】
第6の実施形態では、膜ろ過処理装置において膜モジュール交換間隔が一定に定められていない場合に、膜交換時期予測手段60により次の交換時期を予測して表示出力する点と、膜モジュール交換コストを含めて膜ろ過処理装置の運転操作量を適正化する点が特徴である。想定する膜ろ過処理装置メンテナンス情報41の例を以下に示す。
・膜モジュール交換時期:薬品洗浄直後の膜間差圧が所定の値以上となった場合
・膜モジュール交換コスト:xxx万円/回
薬品洗浄直後の膜間差圧に基づいて膜モジュールを交換する場合には、薬品洗浄直後の膜間差圧ができるだけ上昇しないようにろ過・逆洗運転を実施することで膜モジュール交換頻度を低減でき、膜モジュール交換コストを抑制することが可能となる。
【0081】
薬品洗浄直後の膜間差圧ができるだけ上昇しないような運転は、「薬品洗浄直後の膜間差圧予測モデル」を構築し、そのモデルを用いた予測計算に従うことで実現できる。この「薬品洗浄直後の膜間差圧予測モデル」の例を以下に述べる。
【0082】
図9は薬品洗浄直後のろ過流量モデルの説明図である。図9(i)は、薬品洗浄後の膜間差圧の時間的変化を模式的に示したものである。ろ過工程と逆洗工程を繰り返して膜ろ過処理装置を運転していると、運転時間に伴い膜間差圧が上昇するが、薬品洗浄工程を経ると膜面に付着したケークが除去されるため膜間差圧は一旦減少する。この薬品洗浄直後の膜間差圧が次のろ過工程の初期値となり、再度ろ過時間経過に伴って膜間差圧は上昇する。
【0083】
しかし、薬品洗浄を実施しても、膜表面あるいは細孔には少しずつ付着物が蓄積する。この影響で、現実的にはばらつきはあるが、薬品洗浄直後の膜間差圧は徐々に上昇する。一般的には、この薬品洗浄直後の膜間差圧がある設定値以上になると膜の交換を実施する。しかし、その設定値が全体のコストから考えて常に最適な値となっている保証は無い。
【0084】
薬品洗浄直後の膜間差圧は時間的には図9(i)に示すように離散値となる。この離散値を数式として模擬できるような連続関数があれば、将来の「薬品洗浄直後の膜間差圧」を予測できるため、将来を見越して、全体のコストを最小にできるようなろ過時間、逆洗時間を計算により求めることができる。同時に、膜モジュール交換の予測時期も出力することが可能となる。
【0085】
この「薬品洗浄直後の膜間差圧」を予測するための連続関数の模式図を図9(ii)に示す。薬品洗浄工程で除去できない蓄積物が徐々に膜面に蓄積する現象は、ろ過工程時にケークが膜面に蓄積するメカニズムと相似している。そこで、例えば式(1)で示したルースのろ過モデルと同型の方程式を仮定したモデルを構築する。
dVf_chem/dt=A2・k8・Pf_chem/(c''・μ・(Vf_total + V0)) …(17)
Vf_total=∫(dVf/dt) …(18)
ここで、Vf_chem:薬品洗浄直後のろ過流量、A:膜面積、k8:抵抗係数、Pf_chem:薬品洗浄直後の膜間差圧、c'':単位ろ液量に対する耐薬品性ケーク比率、μ:水の粘性係数、Vf_total:膜モジュール使用開始後のろ液総量、V0:ろ過定数である。
【0086】
この式の「抵抗係数k8」「ろ過定数V0」「単位ろ液量に対する耐薬品性ケーク比率c''」は、膜ろ過処理装置現状運転情報11および、あるいは膜ろ過処理原水水質情報20を用いて同定できる。「薬品洗浄直後の膜間差圧」予測計算が実現でき、薬品洗浄直後の膜間差圧が所定の値に達するまでの時間Tchgも求めることができる。
【0087】
以上の計算アルゴリズムは膜交換時期予測手段60および膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備えられる。求められた膜交換予測時期情報61は、表示装置17を介して操作員に提示される。
【0088】
薬品洗浄で除去できない耐薬品性ケークの存在によって、薬品洗浄直後の膜間差圧の値が変わるため、その後の逆洗直後の膜間差圧を記述する式(14)の「抵抗係数k7」あるいは「ろ過定数V0」の値もその都度変わることになる。
【0089】
式(17)で算出した「薬品洗浄直後の膜間差圧」の予測値に基づけば、式(14)の「抵抗係数k7」の値を推算できる。
【0090】
例えば、「薬品洗浄直後の膜間差圧」の予測値が前回の1.01倍であったとする。簡単のためこれを全て式(14)の「抵抗係数k7」に転嫁すると、k7の値が前回の1.01倍になったとみなせる。この係数の値を用いて計算することで、膜ろ過水の単位量を得るために必要な電力量料金Coが算出できる。これに加えて薬品洗浄コストと膜モジュール交換コストを考慮した運転維持管理コストCo_totalは式(19)で示される。
Co_total=Co+Co_chem・(tf+tb)/Tchem+Co_chg・(tf+tb)/Tchg …(19)
ここで、Co_chem:薬品洗浄コスト、Tchem:薬品洗浄頻度、Co_chg:膜モジュール交換コスト、Tchg:膜モジュール交換頻度である。
【0091】
運転維持管理コストCo_totalの値は、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbの設定値によって変動し、経済性の面から小さいことが望ましい。そこで、ろ過時間tfおよび逆洗時間tbの最適解探索アルゴリズムを膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段15に備える。探索アルゴリズムには総当り法、遺伝子アルゴリズム、非線形計画法、最急勾配法などの数学的手段を使っても良いし、あらかじめ設定した複数の運転パターンから最適な1つを選択する手段でも良い。ただし、式(7)で示される実ろ過水量が計画水量情報14を満足することが前提条件となる。
【0092】
以上の構成により、第6の実施の形態では膜モジュールの交換コスト、薬品洗浄コスト、動力費を総合的に考慮した最適な運転条件および膜モジュールの交換予測時期を操作員に提示することが可能となる。
(第7の実施の形態)
図10は本発明の第7の実施形態を示す膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報と前処理装置原水水質情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置とその前段の前処理装置の運転を支援する装置の機能ブロック図を示す。
【0093】
膜ろ過処理装置10は単独で用いられることもあるが、原水を河川など表流水から取水している浄水場の場合には、凝集処理、凝集沈殿処理、凝集沈殿ろ過処理、高速繊維ろ過処理など濁度を除去する性能を有する前処理装置81と組み合わせて用いられることが多い。
【0094】
濁質は前処理装置81でも膜ろ過処理装置10でも除去できるため、前処理装置81で十分除去して膜ろ過処理装置10への水質負荷を低減する方法や、前処理装置81で処理を軽減し、膜処理装置10に負荷をかける方法など運転方法の選択肢がありえる。第7の実施形態は、前処理装置81と膜ろ過処理装置10の負荷配分を適正化して、プラント全体の処理費用の合計が最小となるようにするものである。
【0095】
前処理装置81に流入する原水の水質情報は、前処理装置原水水質情報インタフェイス70を介し、電子化された前処理装置原水水質情報71として前処理装置水質・費用算出手段76に与えられる。原水の水質情報の具体例としては、濁度、水温、溶解性有機物濃度などがある。前処理装置原水水質情報インタフェイス70への水質情報の与え方は操作員など人が入力して与える場合と自動計測機器の情報を電子的に与える場合とがある。
【0096】
前処理装置水質・費用算出手段76には、計画水量情報インタフェイス13から計画水量情報14が与えられる。さらに、前処理装置水質・費用算出手段76には、前処理装置運転条件設定手段72から前処理装置運転条件情報73が与えられる。前処理装置水質・費用算出手段76では、前処理装置原水水質情報71および計画水量情報14および前処理装置運転条件情報73に基づき、前処理装置出口水質情報74と前処理費情報75が出力される。
【0097】
前処理装置水質・費用算出手段76の中身はあらかじめ蓄積していたテーブルに基づいて計算するアルゴリズムでも良いし、物理化学現象をモデル化したシミュレータによる計算アルゴリズムでも良い。前処理装置出口水質情報74は、膜ろ過処理装置10の原水水質情報と同一であり、膜ろ過処理水原水水質情報インタフェイス21に与えられる。
【0098】
一方、前処理費情報75は総合処理費判断手段77に与えられる。これに加えて膜ろ過処理費情報16も与えられた総合処理費判断手段77は、前処理費情報75と膜ろ過処理費情報16の和が最小の費用であるかを判断する。そして、和がより小さくなるように、少なくとも前処理装置81の運転条件を変更する内容の前処理装置推奨運転操作量情報79を算出し、出力する。好ましくは、膜ろ過処理装置10の運転条件を変更する内容の膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報82を算出し、出力する。表示装置17には前処理装置推奨運転操作量情報79と膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報82を表示する。
【0099】
以上の構成により、第7の実施形態では前処理と膜ろ過処理を総合的に把握し、浄水処理システム全体としての処理費用を最小化できるような前処理装置81および膜ろ過処理装置10の運転条件を求めることが可能となる。
(第8の実施の形態)
図11は本発明の第8の実施形態による膜ろ過処理装置の運転支援装置の構成で、現状運転情報と凝集沈殿処理装置の原水水質情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置および前段の凝集沈殿処理装置の運転を支援する装置の機能ブロック図を示す。
【0100】
膜ろ過処理装置10は単独で用いられることもあるが、原水を河川など表流水から取水している浄水場の場合には、既存の凝集沈殿処理装置と組み合わせて用いられることがある。第8の実施形態は、凝集沈殿処理と膜ろ過処理の負荷配分を適正化して、処理費用の合計が最小となるようにするものである。
【0101】
凝集沈殿処理装置101に流入する原水の水質情報は、凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイス90を介し、電子化された凝集沈殿処理装置原水水質情報91として凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96に与えられる。原水の水質情報の具体例としては、濁度、水温、溶解性有機物濃度などがある。凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイス90への水質情報の与え方は操作員など人が入力して与える場合と自動計測機器の情報を電子的に与える場合とがある。
【0102】
凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96には、計画水量情報インタフェイス13から計画水量情報14が与えられる。さらに、凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96には、凝集沈殿処理装置運転条件設定手段92から凝集沈殿処理装置運転条件情報93が与えられる。凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96では、凝集沈殿処理装置原水水質情報91および計画水量情報14および凝集沈殿処理装置運転条件情報93に基づき、凝集沈殿処理装置出口水質情報94と凝集沈殿処理費情報95が出力される。凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段96の中身はあらかじめ蓄積していたテーブルに基づいて計算するアルゴリズムでも良いし、物理化学現象をモデル化したシミュレータによる計算アルゴリズムでも良い。凝集沈殿処理装置出口水質情報94は、膜ろ過処理装置10の原水水質情報と同一であり、膜ろ過処理水原水水質情報インタフェイス21に与えられる。
【0103】
一方、凝集沈殿処理費情報95は総合処理費判断手段77に与えられる。これに加えて膜ろ過処理費情報16も与えられた総合処理費判断手段77は、凝集沈殿処理費情報95と膜ろ過処理費情報16の和が最小の費用であるかを判断する。そして、和がより小さくなるように、少なくとも凝集沈殿処理装置101の運転条件を変更する内容の凝集沈殿処理装置推奨運転操作量情報99を算出し、出力する。好ましくは、膜ろ過処理装置10の運転条件を変更する内容の膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報81を算出し、出力する。表示装置17には凝集沈殿処理装置推奨運転操作量情報99と膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報81を表示する。
【0104】
以上の構成により、第8の実施形態では凝集沈殿処理と膜ろ過処理を総合的に把握し、浄水処理システム全体としての処理費用を最小化できるような凝集沈殿処理装置101および膜ろ過処理装置10の運転条件を求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1の実施形態で、現状運転情報に基づく膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図2】膜ろ過処理装置の運転支援装置の画面出力例を示す説明図。
【図3】第2の実施形態で、原水水質情報に基づいた膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図4】第3の実施形態で、現状運転情報及び原水水質情報に基づいた膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図5】第4の実施形態で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図6】第5の実施形態で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた計算と、薬品洗浄時期を示す膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図7】逆洗直後のろ過流量モデルの説明図。
【図8】第6の実施形態で、現状運転情報、原水水質情報及びメンテナンス情報に基づいた計算と、薬品洗浄時期と膜交換時期を示す膜ろ過処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図9】薬品洗浄直後のろ過流量モデルの説明図
【図10】第7の実施形態で、現状運転情報と前処理装置原水水質情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置および前処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【図11】第8の実施形態で、現状運転情報と凝集沈殿処理装置の原水水質情報に基づいた計算により、膜ろ過処理装置および凝集沈殿処理装置の運転支援装置の機能ブロック図。
【符号の説明】
【0106】
10…膜ろ過処理装置、11…膜ろ過処理装置現状運転情報、12…膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイス、13…計画水量情報インタフェイス、14…計画水量情報、15…膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段、16…膜ろ過処理費情報、17…表示装置、18…膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報、20…膜ろ過処理原水水質情報、21…膜ろ過処理原水水質情報インタフェイス、22…膜パラメータインタフェイス、23…抵抗係数とろ過定数、40…膜ろ過処理装置メンテナンス情報インタフェイス、41…膜ろ過処理装置メンテナンス情報、50…薬品洗浄時期予測手段、51…薬品洗浄予測時期情報、60…膜交換時期予測手段、61…膜交換予測時期情報、70…前処理装置原水水質情報インタフェイス、71…前処理装置原水水質情報、72…前処理装置運転条件設定手段、73…前処理装置運転条件情報、74…前処理装置出口水質情報、75…前処理費情報、76…前処理装置水質・費用算出手段、77…総合処理費判断手段、79…前処理装置推奨運転操作量情報、81…前処理装置、82…膜ろ過処理装置推奨運転操作量情報、90…凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイス、91…凝集沈殿処理装置原水水質情報、92…凝集沈殿処理装置運転条件設定手段、93…凝集沈殿処理装置運転条件情報、94…凝集沈殿処理装置出口水質情報、95…凝集沈殿処理費情報、96…凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段、99…凝集沈殿処理装置推奨運転操作量情報、101…凝集沈殿処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、
前記膜ろ過処理装置の膜間差圧とろ過流量とを含む膜ろ過処理装置現状運転情報を取り込む膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイスと、
予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、
ろ過時の膜間差圧の過去からの上昇比率またはろ過流量の過去からの減少比率、および前記計画水量情報に基づき、少なくとも逆洗時間とろ過時間とを含んだ膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、
前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を画面に表示する表示装置と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項2】
原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、
原水の濁度あるいは紫外線吸光度を含む膜ろ過処理装置流入原水水質情報を取り込む膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスと、
予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、
予め与えられる膜の抵抗係数とろ過係数を取り込む膜パラメータインターフェイスと、
前記濁度あるいは前記紫外線吸光度と、前記計画水量情報とに基づいて、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度の関数で求まるケーク比率に基づき計算される逆洗時間とろ過時間とを少なくとも含む膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、
前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を表示する表示装置と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項3】
原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、
原水の濁度あるいは紫外線吸光度を含む膜ろ過処理装置流入原水水質情報を取り込む膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスと、
予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、
予め与えられる膜の抵抗係数とろ過係数を取り込む膜パラメータインターフェイスと、
前記膜ろ過処理装置の膜間差圧情報とろ過流量情報とを含む膜ろ過処理装置現状運転情報を取り込む膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイスを備え、
ろ過時の膜間差圧の過去からの上昇比率またはろ過流量の過去からの減少比率と、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度と、前記計画水量情報とに基づいて、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度の関数で求まるケーク比率に基づき計算される逆洗時間とろ過時間とを少なくとも含む膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、
前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を表示する表示装置と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、
薬品洗浄コストまたは膜モジュール交換コストを含んだ膜ろ過処理装置メンテナンス情報を取り込む膜ろ過処理装置メンテナンス情報インタフェイスを備え、
前記膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段は、計算した膜ろ過処理装置推奨運転操作量と前記膜ろ過処理装置メンテナンス情報に基づいて、膜ろ過処理費情報を計算することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、
逆洗工程終了直後の膜間差圧の時間的変化をモデル化した連続関数を用いて、膜の薬品洗浄予測時期を計算する薬品洗浄時期予測手段を備え、
予測された薬品洗浄時期を画面に表示することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、
前記膜ろ過処理装置現状運転情報と前記計画水量情報に基づき、膜の交換予測時期を計算する膜交換時期予測手段を備え、
予測された交換予測時期を表示することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかにおいて、
前記膜ろ過処理装置の前段に濁度を除去する性能を有する前処理装置を備えるものであって、
前記前処理装置への流入原水水質の情報を取り込む前処理装置原水水質情報インタフェイスと、
前記前処理装置の運転条件を設定する前処理装置運転条件設定手段と、
前記計画水量情報と前記前処理装置流入原水水質情報と前記前処理装置運転条件情報に基づき、前処理装置出口の水質と前処理装置による前処理費とを計算し、前記前処理装置出口の水質情報を前記膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスに与える前処理装置水質・費用算出手段と、
前処理装置水質・費用算出手段で算出した前処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であるか判断し、最適値で無い場合には少なくとも前処理装置運転条件設定手段へ運転条件の設定を変更する前処理運転条件設定変更信号を出力する総合処理費判断手段を備え、
前記総合処理費判断手段で前記前処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であった場合に、前記前処理装置の運転操作量情報を前記表示装置に表示することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記膜ろ過処理装置の前段に凝集沈殿処理装置を備えるものであって、
前記凝集沈殿処理装置への流入原水水質の情報を取り込む凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイスと、
前記凝集沈殿処理装置の運転条件を設定する凝集沈殿処理装置運転条件設定手段と、
前記計画水量情報と前記凝集沈殿処理装置流入原水水質情報と前記凝集沈殿処理装置運転条件情報に基づき、凝集沈殿処理装置出口の水質と凝集沈殿処理装置による処理費とを計算し、凝集沈殿処理装置出口の水質を膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスに与える凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段と、
前記凝集沈殿処理装置による処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であるか判断し、最適値で無い場合には、前記凝集沈殿処理装置運転条件設定手段へ運転条件の設定を変更する凝集沈殿処理運転条件設定変更信号を出力する総合処理費判断手段を備え、
前記総合処理費判断手段で凝集沈殿処装置の処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であった場合に、前記凝集沈殿処理装置の運転操作量情報を画面に表示することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項1】
原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、
前記膜ろ過処理装置の膜間差圧とろ過流量とを含む膜ろ過処理装置現状運転情報を取り込む膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイスと、
予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、
ろ過時の膜間差圧の過去からの上昇比率またはろ過流量の過去からの減少比率、および前記計画水量情報に基づき、少なくとも逆洗時間とろ過時間とを含んだ膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、
前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を画面に表示する表示装置と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項2】
原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、
原水の濁度あるいは紫外線吸光度を含む膜ろ過処理装置流入原水水質情報を取り込む膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスと、
予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、
予め与えられる膜の抵抗係数とろ過係数を取り込む膜パラメータインターフェイスと、
前記濁度あるいは前記紫外線吸光度と、前記計画水量情報とに基づいて、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度の関数で求まるケーク比率に基づき計算される逆洗時間とろ過時間とを少なくとも含む膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、
前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を表示する表示装置と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項3】
原水をろ過する膜ろ過処理装置の運転制御を支援する運転支援装置において、
原水の濁度あるいは紫外線吸光度を含む膜ろ過処理装置流入原水水質情報を取り込む膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスと、
予め与えられる計画水量情報を取り込む計画水量情報インタフェイスと、
予め与えられる膜の抵抗係数とろ過係数を取り込む膜パラメータインターフェイスと、
前記膜ろ過処理装置の膜間差圧情報とろ過流量情報とを含む膜ろ過処理装置現状運転情報を取り込む膜ろ過処理装置現状運転情報インタフェイスを備え、
ろ過時の膜間差圧の過去からの上昇比率またはろ過流量の過去からの減少比率と、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度と、前記計画水量情報とに基づいて、前記濁度あるいは前記紫外線吸光度の関数で求まるケーク比率に基づき計算される逆洗時間とろ過時間とを少なくとも含む膜ろ過処理装置推奨運転操作量を計算し、さらに前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量のときの膜ろ過処理装置の運転費用である膜ろ過処理費情報を計算する膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段と、
前記膜ろ過処理費情報及び前記膜ろ過処理装置推奨運転操作量を表示する表示装置と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、
薬品洗浄コストまたは膜モジュール交換コストを含んだ膜ろ過処理装置メンテナンス情報を取り込む膜ろ過処理装置メンテナンス情報インタフェイスを備え、
前記膜ろ過処理費低減運転操作量算出手段は、計算した膜ろ過処理装置推奨運転操作量と前記膜ろ過処理装置メンテナンス情報に基づいて、膜ろ過処理費情報を計算することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、
逆洗工程終了直後の膜間差圧の時間的変化をモデル化した連続関数を用いて、膜の薬品洗浄予測時期を計算する薬品洗浄時期予測手段を備え、
予測された薬品洗浄時期を画面に表示することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、
前記膜ろ過処理装置現状運転情報と前記計画水量情報に基づき、膜の交換予測時期を計算する膜交換時期予測手段を備え、
予測された交換予測時期を表示することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかにおいて、
前記膜ろ過処理装置の前段に濁度を除去する性能を有する前処理装置を備えるものであって、
前記前処理装置への流入原水水質の情報を取り込む前処理装置原水水質情報インタフェイスと、
前記前処理装置の運転条件を設定する前処理装置運転条件設定手段と、
前記計画水量情報と前記前処理装置流入原水水質情報と前記前処理装置運転条件情報に基づき、前処理装置出口の水質と前処理装置による前処理費とを計算し、前記前処理装置出口の水質情報を前記膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスに与える前処理装置水質・費用算出手段と、
前処理装置水質・費用算出手段で算出した前処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であるか判断し、最適値で無い場合には少なくとも前処理装置運転条件設定手段へ運転条件の設定を変更する前処理運転条件設定変更信号を出力する総合処理費判断手段を備え、
前記総合処理費判断手段で前記前処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であった場合に、前記前処理装置の運転操作量情報を前記表示装置に表示することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記膜ろ過処理装置の前段に凝集沈殿処理装置を備えるものであって、
前記凝集沈殿処理装置への流入原水水質の情報を取り込む凝集沈殿処理装置原水水質情報インタフェイスと、
前記凝集沈殿処理装置の運転条件を設定する凝集沈殿処理装置運転条件設定手段と、
前記計画水量情報と前記凝集沈殿処理装置流入原水水質情報と前記凝集沈殿処理装置運転条件情報に基づき、凝集沈殿処理装置出口の水質と凝集沈殿処理装置による処理費とを計算し、凝集沈殿処理装置出口の水質を膜ろ過処理原水水質情報インタフェイスに与える凝集沈殿処理装置水質・費用算出手段と、
前記凝集沈殿処理装置による処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であるか判断し、最適値で無い場合には、前記凝集沈殿処理装置運転条件設定手段へ運転条件の設定を変更する凝集沈殿処理運転条件設定変更信号を出力する総合処理費判断手段を備え、
前記総合処理費判断手段で凝集沈殿処装置の処理費と前記膜ろ過処理費の合計が最適値であった場合に、前記凝集沈殿処理装置の運転操作量情報を画面に表示することを特徴とする膜ろ過処理装置の運転支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−21093(P2006−21093A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200130(P2004−200130)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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