説明

膜モジュール

【課題】 キャップの肉厚を薄くして、全体を軽量化できる膜モジュールの提供。
【解決手段】 キャップ21は、その中心部を貫通する集水管端部14aとナット27を利用して、ケースハウジング11に固定され、キャップ22は、その中心部を貫通する集水管端部14bとナット28を利用して、ケースハウジング11に固定されている。濾過運転時にキャップ21、22に加えられる内圧応力は、前記固定構造により分散される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種水処理用途に使用される膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
分離膜モジュールは、筒状のケースハウジング内に中空糸膜等の分離膜が収容され、ケースハウジングの両端側は、液出入りノズルを有するキャップで閉塞されたものが汎用されている。
【0003】
ケースハウジングにキャップを取り付けるときは、ケースハウジングの外周面に対してキャップの開口部側の周面を被せた状態で、接触部分の周面を外側から金属製の締め付け部品で締め付けて固定する方法が採用されている。
【0004】
しかし、このように金属製の締め付け部品で締め付ける方法では、キャップの中央部分や周面部分に大きな応力が発生するため、強度を向上させる観点から、キャップ自体の材質の変更したり、肉厚を大きくしたりする必要がある。
【特許文献1】特開平11−333261号公報
【特許文献2】特開平11−9969号公報
【特許文献3】US2003/0150807
【特許文献4】USP6,183,639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ケースハウジングとキャップの固定方法を変えることにより、キャップの強度を維持したまま肉厚を薄くすることができる膜モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、課題の解決手段として、
筒状のケースハウジング内に収容された集水管と濾過膜とを有し、前記集水管が前記ケースハウジングの軸方向の中心位置に配置され、前記ケースハウジングの両端側に第1キャップと第2キャップがそれぞれ被せられた膜モジュールであり、
前記集水管の一端部側が第1キャップの中心部を貫通して取り付けられており、
前記集水管の他端部側が第2キャップの中心部を貫通して取り付けられており、
第1キャップと集水管の一端部側が第1固定手段で固定され、第2キャップと集水管の他端部側が第2固定手段で固定されることで、第1キャップと第2キャップがケースハウジングに固定されている、膜モジュールを提供する。
【0007】
本発明は、課題の他の解決手段として、
筒状のケースハウジング内に収容された集水管と濾過膜とを有し、前記集水管が前記ケースハウジングの軸方向の中心位置に配置され、前記ケースハウジングの両端側に第1キャップと第2キャップがそれぞれ被せられた膜モジュールであり、
前記集水管の一端側に接続され、第1キャップの中心部を貫通して取り付けられている第1連結管と、
前記集水管の他端側に接続され、第2キャップの中心部を貫通して取り付けられている第2連結管を有しており、
第1キャップと第1連結管が固定手段で固定され、第2キャップと第2連結管が固定手段で固定されることで、第1キャップと第2キャップがケースハウジングに固定されている、膜モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の膜モジュールは、キャップが、キャップ中心部を固定することでケースハウジングに対して固定されているため、濾過運転時におけるキャップに対する内圧応力が分散される。このため、従来よりもキャップの強度を低下させることができ、キャップの肉厚を薄くしたり、安価な材質に変更したりできるため、軽量化や製造コストの引き下げができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<図1の膜モジュール>
図1により、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の膜モジュールの一部軸方向断面図を含む正面図である。
【0010】
膜モジュール10Aは、筒状のケースハウジング11内に、中空糸膜12と集水管14が収容されており、中空糸膜12の周囲は保護ネット13で覆われている。
【0011】
中空糸膜12の両端側は、封止用樹脂15により、集水管14、保護ネット13、ケースハウジング11の内壁面と共に一体化されている。
【0012】
集水管14は複数の集水口を有するもので、ケースハウジング11の軸方向の中心位置になるように配置されている。
【0013】
ケースハウジング11の一端側には第1キャップ21が被せられ、他端側には第2キャップ22が被せられている。ケースハウジング11の外周面と第1キャップ21の内周面との接触面にはo−リング23が配置されており、ケースハウジング11の外周面と第2キャップ22の内周面との接触面にも同様にo−リングが配置されている。
【0014】
第1キャップ21は、軸方向に突き出した液出入りノズル(例えば、濃縮液ノズル、原液ノズル)31を有しており、第2キャップ22は、軸方向に突き出した液出入りノズル(例えば、原液ノズル、濃縮液ノズル)32を有している。
【0015】
第1キャップ21側の集水管14の端部14aは、第1キャップ21の中心部を貫通して取り付けられており、第2キャップ22側の集水管14の端部14bは、第2キャップ22の中心部を貫通して取り付けられている。なお、集水管端部14aは、集水管14の一端部側の第1キャップ21と接触している部分及びその両側近傍(ネジ山がある場合には、少なくともネジ山がある部分を含む)から端面までを意味し、集水管端部14bは、集水管14の他端部側の第2キャップ22と接触している部分及びその両側近傍(ネジ山がある場合には、少なくともネジ山がある部分を含む)から端面までを意味する。
【0016】
集水管端部14aは、少なくとも第1キャップ21と接する部分にネジ部を有しており、ナット27をきつくネジ込むことで、第1キャップ21がケースハウジング11に対して固定されている。なお、集水管端部14aと第1キャップ21は、ネジ留めに代えて、接着により固定されていてもよい。
【0017】
集水管端部14bは、少なくとも第2キャップ22と接する部分にネジ部を有しており、ナット28をきつくネジ込むことで、第2キャップ22がケースハウジング11に対して固定されている。なお、集水管端部14bと第2キャップ22は、ネジ留めに代えて、接着により固定されていてもよい。
【0018】
膜モジュール10Aでは、第1及び第2キャップ21、22とナット27、28は、全体を軽量化して、製造コストを引き下げる観点から、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の合成樹脂製にすることができる。
【0019】
図1で示す膜モジュール10Aは、第1キャップ21が、第1キャップ21の中心部を貫通する集水管端部14aとナット27を利用してケースハウジング11に対して固定され、第2キャップ22が、第2キャップ22の中心部を貫通する集水管端部14bとナット28を利用してケースハウジング11に対して固定されている。
【0020】
次に、図2により、図1で示す膜モジュール10A(図2(b))と、図1で示す膜モジュール10Aとケースハウジング11とキャップ21は同じで、ナット27がなく、キャップ21の周囲を金属バンドで締め付けた従来技術(図2(a))における作用を説明する。
【0021】
図2(a)に示すとおり、キャップ21の周囲を金属バンド40で締め付けることで、キャップ21をケースハウジング11に固定した場合には、内側からの応力(矢印で表示)を受けたとき、キャップ21の全体に対して大きな力が加えられることになるから、キャップ21とケースハウジング11との間に隙間が生じやすくなり、水漏れが生じる(即ち、キャップ21とケースハウジング11との接触部分の水密性が低下する)おそれも考えられる。
【0022】
一方、図2(b)に示すとおり、キャップ21の中心部を集水管端部14aとナット27で固定した場合には、内側からの応力(矢印で表示)を受けたとき、キャップ21に対する力が分散されるため、キャップ21とケースハウジング11との接触部分の水密性は維持される。
【0023】
<図3の膜モジュール>
次に、図3により、本発明の別の実施形態を説明する。図3は、本発明の膜モジュールの一部軸方向断面図を含む正面図である。
【0024】
膜モジュール10Bは、筒状のケースハウジング11内に、中空糸膜12と集水管14が収容されており、中空糸膜12の周囲は保護ネット13で覆われている。
【0025】
中空糸膜12の両端側は、封止用樹脂15により、集水管14、保護ネット13、ケースハウジング11の内壁面と共に一体化されている。
【0026】
集水管14は複数の集水口を有するもので、ケースハウジング11の軸方向の中心位置になるように配置されている。
【0027】
ケースハウジング11の一端側には第1キャップ21が被せられ、他端側には第2キャップ22が被せられている。ケースハウジング11の外周面と第1キャップ21の内周面との接触面にはo−リング23が配置されており、ケースハウジング11の外周面と第2キャップ22の内周面との接触面にも同様にo−リングが配置されている。
【0028】
第1キャップ21は、軸方向に突き出した液出入りノズル(例えば、濃縮液ノズル、原液ノズル)31を有しており、第2キャップ22は、軸方向に突き出した液出入りノズル(例えば、原液ノズル、濃縮液ノズル)32を有している。
【0029】
第1キャップ21側の集水管14の端部には、第1連結管25がネジ合わせ等の手段により接続されており、第1キャップ21の中心部を貫通して取り付けられている。
【0030】
第2キャップ22側の集水管14の端部には、第2連結管26がネジ合わせ等の手段により接続されており、第2キャップ22の中心部を貫通して取り付けられている。
【0031】
第1連結管25は、少なくとも第1キャップ21と接する部分にネジ部を有しており、ナット27をきつくネジ込むことで、第1キャップ21がケースハウジング11に対して固定されている。なお、第1連結管25と第1キャップ21は、ネジ留めに代えて、接着により固定されていてもよい。
【0032】
第2連結管26は、少なくとも第2キャップ22と接する部分にネジ部を有しており、ナット28をきつくネジ込むことで、第2キャップ22がケースハウジング11に対して固定されている。なお、第2連結管26と第1キャップ22は、ネジ留めに代えて、接着により固定されていてもよい。
【0033】
膜モジュール10Bでは、第1及び第2キャップ21、22とナット27、28は、全体を軽量化して、製造コストを引き下げる観点から、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の合成樹脂製にすることができる。
【0034】
図3で示す膜モジュール10Bは、第1キャップ21が、第1キャップ21の中心部を貫通する第1連結管25とナット27を利用してケースハウジング11に対して固定され、第2キャップ22が、第2キャップ22の中心部を貫通する第2連結管26とナット28を利用してケースハウジング11に対して固定されている。
【0035】
次に、図2により、図3で示す膜モジュール10B(図2(b))と、図3で示す膜モジュール10Bとケースハウジング11とキャップ21は同じで、ナット27がなく、キャップ21の周囲を金属バンドで締め付けた従来技術(図2(a))における作用を説明する。
【0036】
図2(a)に示すとおり、キャップ21の周囲を金属バンド40で締め付けることで、キャップ21をケースハウジングに固定した場合には、内側からの応力(矢印で表示)を受けたとき、キャップ21の全体に対して大きな力が加えられることになるから、キャップ21とケースハウジング11との間に隙間が生じやすくなり、水漏れが生じる(即ち、キャップ21とケースハウジング11との接触部分の水密性が低下する)おそれも考えられる。
【0037】
一方、図2(b)に示すとおり、キャップ21の中心部を第1連結管25とナット27で固定した場合には、内側からの応力(矢印で表示)を受けたとき、キャップ21に対する力が分散されるため、キャップ21とケースハウジング11との接触部分の水密性は維持される。
【0038】
本発明の膜モジュール(膜モジュール10A、10B)は、濾過運転時に内圧が上昇して第1キャップ21、第2キャップ22に圧力(応力)が加えられたときでも、それが分散するため、従来のキャップの固定構造と比べると、キャップの肉厚を薄くできるようになり、全体を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の膜モジュールの軸方向断面図。
【図2】本発明の膜モジュールの作用を説明するための概念図。
【図3】本発明の別実施形態である膜モジュールの軸方向断面図。
【符号の説明】
【0040】
10A,10B 膜モジュール
11 ケースハウジング
12 中空糸膜
13 保護ネット
14 集水管
14a,14b 集水管端部
15 封止用樹脂
21 第1キャップ
22 第2キャップ
25 第1連結管
26 第2連結管
27,28 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースハウジング内に収容された集水管と濾過膜とを有し、前記集水管が前記ケースハウジングの軸方向の中心位置に配置され、前記ケースハウジングの両端側に第1キャップと第2キャップがそれぞれ被せられた膜モジュールであり、
前記集水管の一端部側が第1キャップの中心部を貫通して取り付けられており、
前記集水管の他端部側が第2キャップの中心部を貫通して取り付けられており、
第1キャップと集水管の一端部側が第1固定手段で固定され、第2キャップと集水管の他端部側が第2固定手段で固定されることで、第1キャップと第2キャップがケースハウジングに固定されている、膜モジュール。
【請求項2】
前記集水管の一端部側が、少なくとも第1キャップと接する部分にネジ部を有しており、ネジ部を有する第1固定手段が前記集水管の一端部側にねじ込まれることで、第1キャップがケースハウジングに固定されており、
前記集水管の他端部側が、少なくとも第2キャップと接する部分にネジ部を有しており、ネジ部を有する第2固定手段が前記集水管の他端部側にねじ込まれることで、第2キャップがケースハウジングに固定されている、請求項1記載の膜モジュール。
【請求項3】
筒状のケースハウジング内に収容された集水管と濾過膜とを有し、前記集水管が前記ケースハウジングの軸方向の中心位置に配置され、前記ケースハウジングの両端側に第1キャップと第2キャップがそれぞれ被せられた膜モジュールであり、
前記集水管の一端側に接続され、第1キャップの中心部を貫通して取り付けられている第1連結管と、
前記集水管の他端側に接続され、第2キャップの中心部を貫通して取り付けられている第2連結管を有しており、
第1キャップと第1連結管が第1固定手段で固定され、第2キャップと第2連結管が第2固定手段で固定されることで、第1キャップと第2キャップがケースハウジングに固定されている、膜モジュール。
【請求項4】
前記第1連結管が、少なくとも第1キャップと接する部分にネジ部を有しており、ネジ部を有する第1固定手段が前記第1連結管にねじ込まれることで、第1キャップがケースハウジングに固定されており、
前記第2連結管が、少なくとも第2キャップと接する部分にネジ部を有しており、ネジ部を有する第2固定手段が前記第2連結管にねじ込まれることで、第2キャップがケースハウジングに固定されている、請求項3記載の膜モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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