説明

膜形成方法および電気光学装置

【課題】膜形成時の材料液の外縁部への移動を防止し、外縁部の膜厚が他の部分よりも厚くなることを防止できる膜形成方法および表示品質の高い電気光学装置を提供する。
【解決手段】塗布領域LAに枠状の隔壁11を形成する隔壁形成工程と、塗布領域LAに材料液Lを塗布する材料液塗布工程と、材料液LAを乾燥させる乾燥工程と、を有し、隔壁形成工程において、塗布領域LAの外縁LEよりも塗布領域LAの中央C側に隔壁11の中央C側の側面12bを形成し、隔壁11の高さhが材料液Lの塗布時の膜厚Tよりも小さくかつ乾燥後の膜16の膜厚t以上となるように形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、膜形成方法および電気光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に溶液を塗布したときにそのパターンの外縁部の膜厚が他の部分よりも厚くなるのを防止する技術が知られている。この技術は、ノズルから基板の幅方向の端部に噴射塗布される溶液の量が、端部よりも幅方向の内方に噴射塗布される量の方が多くなるようにするものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−289239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の技術では、パターン外縁部の塗布量を削減すると、外縁部が中央部よりも乾燥しやすくなり、パターンを乾燥させる際に、パターン外縁部の溶液の濃度がパターン中央部の溶液の濃度よりも上昇してしまう。パターン内でこのような濃度の勾配を生じると、その勾配を埋めるために溶液中の溶媒が中央部から外縁部に移動するという課題がある。このため、パターン外縁部の塗布量を削減することで、かえって外縁部の厚さが他の部分よりも厚くなってしまうという問題がある。
【0004】
すなわち、図8(a)に示すように、基材BM上に材料液Lを塗布して乾燥させると、外縁LE側が中央C側よりも乾燥しやすいため、材料液Lの外縁LE側の溶質の濃度が中央C側の濃度よりも上昇してしまう。そして、材料液L中の溶媒が濃度の勾配を埋めるために外縁LE側に矢印Sに示すように移動する。これにより、図8(b)に示すように、膜Fの外縁部の厚さT1がその他の部分の膜厚tよりも厚くなってしまう。例えば、膜Fの膜厚tを約0.3μm〜1.2μmの範囲とすると、外縁部の膜厚T1は、例えば、約3μm〜5μm程度の範囲である。また、膜厚T1がその他の部分の膜厚tよりも大きくなる外縁部の幅W1は、例えば、約1mm程度以下の範囲である。
【0005】
また、液晶装置等の電気光学装置の基板上に形成される膜において、膜の外縁部が厚くなると電気光学装置の表示不良が発生し表示品質を低下させる要因となる。
【0006】
そこで、この発明は、膜形成時の材料液の外縁部への移動を防止し、外縁部の膜厚が他の部分よりも厚くなることを防止できる膜形成方法および表示品質の高い電気光学装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の膜形成方法は、基材の塗布領域に材料液を塗布し、乾燥させて膜を形成する膜形成方法であって、前記塗布領域に枠状の隔壁を形成する隔壁形成工程と、前記塗布領域に前記材料液を塗布する材料液塗布工程と、前記材料液を乾燥させる乾燥工程と、を有し、前記隔壁形成工程において、前記塗布領域の外縁よりも前記塗布領域の中央側に前記隔壁の前記中央側の側面を形成し、前記隔壁の高さが前記材料液の塗布時の膜厚よりも小さくかつ乾燥後の前記膜の膜厚以上となるように形成することを特徴とする。
【0008】
このように形成することで、膜の材料液を基材上の塗布領域に塗布して乾燥させると、溶媒の蒸発により材料液の膜厚が徐々に減少していく。そして、材料液の塗布時には材料液中に浸漬されていた隔壁が、やがて材料液の膜厚と等しい高さとなり、材料液の表面に達する。これにより、材料液は、隔壁によって、隔壁の外側の塗布領域の外縁側と、隔壁によって囲まれた塗布領域の中央側とに分断される。材料液の溶媒がさらに蒸発していくと、材料液の膜厚は隔壁の高さよりも減少し、材料液の溶質の濃度が上昇していく。材料液は、塗布領域の外縁に近いほど乾燥しやすく、塗布領域の中央部ほど乾燥しにくい。そのため、塗布領域の外縁部の材料液の溶質の濃度が中央部の濃度よりも上昇し、塗布領域の外縁部と中央部との間に濃度の勾配が発生する。このとき、材料液の外縁部と中央部とが隔壁により分断されているので、材料液の溶質の濃度が低い塗布領域の中央部から、溶質の濃度が高い外縁部への溶媒の移動が、隔壁によって規制される。したがって、膜形成時に材料液中の溶媒が中央部から外縁部に移動することを防止し、外縁部の膜厚が他の部分よりも厚くなることを防止できる。また、これにより、材料液塗布後に平坦性を確保するためのレベリングの時間を十分に確保することができ、膜の平坦性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の膜形成方法は、前記隔壁形成工程において、前記中央側から前記外縁側へ複数の前記隔壁を多重に形成することを特徴とする。
【0010】
このように形成することで、乾燥工程において、材料液は塗布領域の中央部から外縁部までの間が、単一の隔壁を形成する場合と比較して、より多くの領域に分断される。これにより、各領域に分断された材料液の外縁部側と中央部側との間の乾燥のしやすさをより近い状態にすることができ、分断された領域内での外縁部側と中央部側との間に濃度の勾配が発生することが防止できる。したがって、膜形成時に材料液中の溶媒が塗布領域の中央部から外縁部に移動することをより効果的に防止して膜厚をより均一にすることができ、外縁部の膜厚が他の部分よりも厚くなることをより確実に防止できる。
【0011】
また、本発明の膜形成方法は、前記隔壁形成工程において、前記材料液を塗布して乾燥させ、前記材料液からなる前記隔壁を形成することを特徴とする。
【0012】
このように形成することで、膜と同様の材料を用い、膜の形成と同様の装置及び方法により隔壁を形成することができ、隔壁を形成するための新たな装置や新たな材料を必要としない。したがって、膜の形成を容易にして生産性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の膜形成方法は、前記材料液塗布工程において、液滴吐出法を用いて前記材料液を塗布することを特徴とする。
【0014】
このように形成することで、基材上の塗布領域に材料液を均一かつ正確に塗布することができる。
【0015】
また、本発明の膜形成方法は、前記膜は、液晶分子の配向を規制する配向膜であることを特徴とする。
【0016】
このように形成することで、配向膜の膜厚を均一にすることができ、配向膜を用いた製品の品質を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の電気光学装置は、対向する一対の基板間に電気光学材料が挟持されてなる電気光学装置であって、前記基板の前記電気光学材料側の面に、上記のいずれかに記載の膜形成方法により前記膜が形成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成することで、基板の電気光学材料側の面に形成された膜は、膜厚が均一で平坦な膜となるので、基板間の間隔を一定にすることができ、電気光学装置の表示品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第一実施形態>
次に、この発明の第一実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、電気光学装置の一例として、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を画素スイッチング素子として備えたアクティブマトリクス型の液晶装置を説明する。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0020】
(液晶装置)
図1(a)は、本実施形態の液晶装置を各構成要素とともに対向基板の側から見た平面図であり、図1(b)は、図1のH−H’線に沿う断面図である。図2は、液晶装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0021】
図1(a)に示すように、液晶装置100は、シール材52によって貼り合わされたTFTアレイ基板10と対向基板20とを有する。シール材52は対向基板20の外周に沿って平面視略矩形の枠状に設けられており、このシール材52によって区画された領域に液晶が封入されている。シール材52の形成領域の内側には、遮光性材料からなる平面視略矩形で枠状の遮光膜53が形成されている。そして、この遮光膜53の内側の領域が画像表示領域10aとなっている。シール材52の形成領域の外側には、データ線駆動回路201及び外部回路実装端子202がTFTアレイ基板10の1辺(図示下辺)に沿って形成されており、この1辺に隣接する2辺に沿ってそれぞれ走査線駆動回路204,204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る1辺(図示上辺)には、画像表示領域10aの両側の走査線駆動回路204,204間を接続する複数の配線205が形成されている。また、対向基板20の各角部には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間の電気的導通をとるための導電粒子である基板間導通材206が配設されている。
【0022】
図1(b)に示すように、TFTアレイ基板10とそれに対向する対向基板20はシール材52によって貼り合わされている。そして、TFTアレイ基板10と対向基板20との間のシール材52によって区画された領域内に、液晶層50が挟持されている。TFTアレイ基板10の内面側(液晶層50側)には画素電極9が形成されており、さらに画素電極9を覆って液晶分子の配向を規制する配向膜16が形成されている。他方、対向基板20の内面側(液晶層50側)には、TFTアレイ基板10上のデータ線、走査線、画素スイッチング用TFT(後述)の形成領域に対向して、平面視格子状の遮光膜23が形成されている。また、遮光膜23を覆って対向基板20の全面に対向電極21が形成されており、さらに対向電極21を覆って配向膜22が形成されている。ここで、配向膜16,22は、例えば、ポリイミドによって形成されている。また、配向膜16,22は、例えば、約0.3μm〜1.2μm程度の範囲の膜厚に形成されている。
【0023】
シール材52の内側(画像表示領域10a側)で、配向膜16,22の外縁部には、TFTアレイ基板10および対向基板20上に、凸状の隔壁11,24が形成されている。隔壁11,24は、平面視略矩形状に形成された配向膜16,22の外縁16e,22eに沿って形成され、図1(a)に示すように、平面視略矩形の枠状に形成されている。TFTアレイ基板10および対向基板20上には、複数の隔壁11,24が形成されている。なお、図1(a)および図1(b)では、図面を見やすくするため、複数の隔壁11,24を2つに省略して表している。
【0024】
隔壁11,24は、平面視矩形状に形成された配向膜16,22の形成領域の中央側(中心線CL側)から配向膜16,22の形成領域の外縁16e,22e側へ多重に形成されている。また、多重に形成された隔壁11,24のうち、最外周に形成された隔壁11,24、またはその内側に形成された隔壁11,24の中心線CL側の側面が配向膜16,22の外縁16e,22eよりも中央側(中心線CL側)に位置し、高さが配向膜16,22の膜厚以上となるように形成されている。
【0025】
また、液晶装置100の画像表示領域10aにおいては、図2に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0026】
画素電極9は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図1(b)に示す対向基板20の対向電極21との間で一定期間保持される。また、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極9と対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。また、蓄積容量60は容量線3bの一部により構成されている。
【0027】
[配向膜形成方法]
次に、本発明の膜形成方法について、本実施形態の液晶装置100の配向膜16,22の形成方法を例に挙げて説明する。ここでは、TFTアレイ基板10上に材料液を塗布し、乾燥させて配向膜16を形成する方法について説明する。また、以下の説明では、配向膜16の形成工程を中心に説明し、その他の工程の説明は適宜省略する。なお、配向膜16の形成工程以外の工程については、公知のものを採用することができる。
【0028】
(隔壁形成工程)
まず、TFTアレイ基板10上に、上述のTFT30、走査線3a、容量線3b、データ線6a、および画素電極9等を形成した後、平面視矩形で枠状の隔壁11を形成する。
図3および図4に示すように、配向膜16の材料であるポリイミドを含む材料液Lを塗布するための塗布領域LAの外縁部に複数の隔壁11を形成する。塗布領域LAの中央Cは、TFTアレイ基板10の画像表示領域10aの中心と略一致し、外縁LEは後の工程で形成されるシール材52の内縁に沿って規定されている。
【0029】
隔壁11の形成方法としては、液滴吐出法を用いることができる。具体的には、TFTアレイ基板10上の隔壁11の形成領域に、配向膜16の材料液Lを液滴吐出ヘッド(図示省略)から液滴として吐出して塗布する。次いで、塗布した材料液Lを乾燥させて隔壁11を形成する。これにより、配向膜16と同一の材料液Lからなる隔壁11が形成される。このとき、材料液Lを塗布して乾燥させた後、例えば、エッチング法等により加工して隔壁11を所望の形状およびパターンに成形してもよい。
【0030】
本実施形態では、液滴吐出法を用いて、第一隔壁11a、第二隔壁11bおよび第三隔壁11cの3つの隔壁11を、塗布領域LAの中央C側から外縁LE側へ三重に形成する。このとき、最外周の第三隔壁11c上に塗布領域LAの外縁LEが位置し、第三隔壁11cの内側の第二隔壁11bの側面12bが、塗布領域LAの外縁LEよりも塗布領域LAの中央C側に位置するように形成する。
【0031】
また、隔壁11の高さhは、図4に示すように、配向膜16の材料液Lの塗布時の膜厚Tよりも小さく、かつ、形成後の配向膜16の膜厚t以上となるように形成する。ここで、材料液Lの塗布時の膜厚Tは、例えば、約2μm〜3μm程度の範囲内であり、乾燥後の配向膜16の膜厚tは、例えば、約0.3〜1.2mm程度の範囲内である。また、隔壁11の高さhは、液晶装置100のセルギャップよりも小さくなるように形成する。
【0032】
(材料液塗布工程)
次に、塗布領域LAに材料液Lを、例えば、インクジェットヘッドを用いた液滴吐出法により塗布する。これにより、図3および図4に示すように、第一隔壁11aおよび第二隔壁11bが、材料液Lに浸漬した状態となる。また、材料液Lの外縁LEが第三隔壁11c上に位置して接した状態となる。ここで、塗布時の材料液Lのポリイミド等の溶質の濃度は、例えば、約5%程度である。
【0033】
(乾燥工程)
次に、塗布領域LAの材料液Lを乾燥させる。材料液Lを乾燥させると、材料液Lの溶媒の蒸発により、材料液Lの膜厚Tが徐々に減少していく。そして、材料液Lの塗布時には材料液L中に浸漬されていた第一隔壁11a、第二隔壁11bの高さhが、やがて材料液Lの膜厚Tと等しくなり、材料液Lの表面に達する。
これにより、材料液Lは、図5に示すように、第一隔壁11aおよび第二隔壁11bによって、複数の領域LA1,LA2,LA3に分断される。
【0034】
材料液Lの溶媒がさらに蒸発していくと、材料液Lの膜厚Tは隔壁11の高さhよりも減少し、材料液Lの溶質の濃度が上昇していく。このとき、材料液Lは、塗布領域LAの外縁LE側の領域LA3ほど乾燥しやすく、塗布領域LAの中央C側の領域LA1ほど乾燥しにくい。そのため、領域LA3の材料液Lの溶質の濃度が領域LA1の濃度よりも上昇し、塗布領域LAの外縁LE側と中央C側との間に濃度の勾配が発生する。このとき、材料液Lの外縁LE側と中央C側とが、第一隔壁11aおよび第二隔壁11bにより分断されているので、材料液Lの溶質の濃度が低い中央C側の領域LA1,LA2から、溶質の濃度が高い外縁LE側の領域LA2,LA3への溶媒の移動が、第一隔壁11aおよび第二隔壁11bによって規制される。
【0035】
したがって、本実施形態によれば、配向膜16の形成時に材料液L中の溶媒が中央C側から外縁LE側に移動することを防止し、配向膜16の外縁部の膜厚tが他の部分よりも厚くなることを防止できる。また、これにより、材料液Lの塗布後に平坦性を確保するためのレベリングの時間を十分に確保することができ、配向膜16の平坦性を向上させることができる。
【0036】
また、複数の隔壁11を多重に形成することで、乾燥工程において、材料液Lは塗布領域LAの中央C側から外縁LE側までの間が、単一の隔壁11を形成する場合と比較して、より多くの領域LA1,LA2,LA3に分断される。これにより、各領域LA1,LA2,LA3に分断された材料液Lの外縁LE側と中央C側との間の乾燥のしやすさをより近い状態にすることができ、分断された各領域LA1,LA2,LA3内での外縁LE側と中央C側との間に濃度の勾配が発生することが防止できる。したがって、配向膜16の形成時に材料液L中の溶媒が塗布領域LAの中央C側から外縁LE側に移動することをより効果的に防止して膜厚tをより均一にすることができ、外縁部の膜厚tが他の部分よりも厚くなることをより確実に防止できる。
【0037】
また、上述のように複数の隔壁11を多重に形成する場合に、塗布領域LAの外縁LEが最外周の第三隔壁11c上に位置するように第三隔壁11cを形成し、外縁LEが第三隔壁11cに接した状態となるように材料液Lを塗布することで、材料液Lの外縁LEが第三隔壁11cを超えることを防止し、配向膜16の外縁16eを第三隔壁11cによって規定することができる。
【0038】
また、配向膜16の材料液Lを用いて隔壁11を形成することで、配向膜16の形成と同様の装置及び方法により隔壁11を形成することができ、隔壁11を形成するための新たな装置や新たな材料を必要としない。したがって、配向膜16の形成を容易にして生産性を向上させることができる。
【0039】
また、材料液Lを液滴吐出法により塗布することで、TFTアレイ基板10上の塗布領域LAに材料液Lを均一かつ正確に塗布することができる。
また、上述の配向膜16の形成方法と同様に、対向基板20上に配向膜22を形成することで、配向膜22の膜厚を均一にして平坦性を向上させることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、配向膜16の平坦性を向上させ、膜厚tを均一にして配向膜16の品質を向上させることができる。したがって、配向膜16を用いた液晶装置100の品質を向上させることができる。すなわち、TFTアレイ基板10の液晶層50側の面に形成された配向膜16は、膜厚tが均一で平坦な膜となるので、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔を一定にすることができ、液晶装置100の表示品質を向上させることができる。
【0041】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図1〜図4を援用し、図6を用いて説明する。本実施形態はTFTアレイ基板10上に単一の隔壁11が形成されている点で上述の第一実施形態と異なっている。その他の点は第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0042】
(隔壁形成工程)
図6に示すように、第一実施形態と同様にTFTアレイ基板10上に単一の隔壁11を形成する。このとき、隔壁11の中央C側の側面12が塗布領域LAの外縁LEよりも塗布領域LAの中央C側に位置するように形成する。
【0043】
(材料液塗布工程)
次に、第一実施形態と同様に材料液Lを塗布領域LAに塗布する。
【0044】
(乾燥工程)
次に、塗布領域LAの材料液Lを第一実施形態と同様に乾燥させる。これにより、材料液Lは、図6に示すように、隔壁11によって、塗布領域LAの中央C側の領域LA1と、外縁LE側の領域LA2に分断される。
材料液Lの溶媒がさらに蒸発していくと、領域LA2の材料液Lの溶質の濃度が領域LA1の濃度よりも上昇し、塗布領域LAの外縁LE側と中央C側との間に濃度の勾配が発生する。このとき、材料液Lの外縁LE側と中央C側とが隔壁11により分断されているので、材料液Lの溶質の濃度が低い中央C側の領域LA1から、溶質の濃度が高い外縁LE側の領域LA2への溶媒の移動が、隔壁11によって規制される。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果が得られるだけでなく、隔壁の形成を容易にし、生産性を向上させることができる。
【0046】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図1〜図4を援用し、図7を用いて説明する。本実施形態は隔壁11の幅が拡大され、塗布領域LAの外縁LEが隔壁11上に形成されている点で上述の第二実施形態と異なっている。その他の点は第二実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0047】
(隔壁形成工程)
図7に示すように、第二実施形態と同様にTFTアレイ基板10上に単一の隔壁11を形成する。このとき、隔壁11の中央C側の側面12が塗布領域LAの外縁LEよりも塗布領域LAの中央C側に位置するように形成する。また、隔壁11の幅Wを、配向膜16の外縁部の平坦化したい幅に対応させて形成する。ここでは、例えば、幅Wを約1.0mm以下に形成する。
【0048】
(材料液塗布工程)
次に、第二実施形態と同様に材料液Lを塗布領域LAに塗布する。
【0049】
(乾燥工程)
次に、塗布領域LAの材料液Lを第二実施形態と同様に乾燥させる。これにより、材料液Lは、塗布領域LAの外縁LE側の表面付近から乾燥する。このため、隔壁11の中央C側の側面12と外縁LEとの間の領域LA2が最も早く乾燥し、領域LA2に配向膜が形成される。このとき、隔壁11の中央C側の側面12よりも中央C側の領域LA1のTFTアレイ基板10側の材料液Lは、まだ乾燥が十分ではなく、溶媒が蒸発せずに残っている。このため、溶質の濃度の高い外縁LE側に溶媒が移動しようとする。
【0050】
しかし、領域LA1と領域LA2との間には、隔壁11の中央C側の側面12が形成され、領域LA2の材料液Lは乾燥してすでに配向膜16が形成されているので、TFTアレイ基板10側の溶媒の移動は、隔壁11の中央C側の側面12と領域LA2の配向膜16によって規制される。
したがって、本実施形態によれば、第二実施形態と同様に配向膜16を平坦化することができる。
【0051】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、形成する膜は配向膜でなくてもよい。例えば、レジスト膜や、液晶装置の層間膜等、平坦性が求められる膜の形成に本発明の膜形成方法を用いることができる。
また、隔壁および配向膜の材料液の塗布方法は液滴吐出法に限られない。例えば、ディスペンサー等を用いて材料液を塗布してもよい。
また、隔壁は、膜と異なる材料により形成してもよい。例えば、基板をフォトリソグラフィ法やエッチング法等により加工してもよい。また、基板上に形成する配線やTFTの形成工程において、これらと同様の材質により隔壁を形成してもよい。これにより、隔壁の形成を配線やTFTと一括して形成することができ、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は本発明の第一実施形態に係る液晶装置の平面図であり、(b)は(a)のH−H’線に沿う断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る液晶装置の等価回路図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る配向膜形成方法を説明する部分拡大平面図である。
【図4】図3のA−A’線に沿う断面図である。
【図5】図3のA−A’線に沿う断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る図5に相当する断面図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る図5に相当する断面図である。
【図8】(a)および(b)は、従来の配向膜形成方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 TFTアレイ基板(基材、基板)、11 隔壁、11a 第一隔壁(隔壁)、
11b 第二隔壁(隔壁)、11c 第三隔壁(隔壁)、12,12b 側面、16 配向膜(膜)、20 対向基板(基材、基板)、22 配向膜(膜)、24 隔壁、50 液晶層(電気光学材料)、100 液晶装置(電気光学装置)、C 中央、h 高さ、L 材料液、LE 外縁、LA 塗布領域、T 膜厚、t 膜厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の塗布領域に材料液を塗布し、乾燥させて膜を形成する膜形成方法であって、
前記塗布領域に枠状の隔壁を形成する隔壁形成工程と、
前記塗布領域に前記材料液を塗布する材料液塗布工程と、
前記材料液を乾燥させる乾燥工程と、を有し、
前記隔壁形成工程において、前記塗布領域の外縁よりも前記塗布領域の中央側に前記隔壁の前記中央側の側面を形成し、前記隔壁の高さが前記材料液の塗布時の膜厚よりも小さくかつ乾燥後の前記膜の膜厚以上となるように形成することを特徴とする膜形成方法。
【請求項2】
前記隔壁形成工程において、前記中央側から前記外縁側へ複数の前記隔壁を多重に形成することを特徴とする請求項1記載の膜形成方法。
【請求項3】
前記隔壁形成工程において、前記材料液を塗布して乾燥させ、前記材料液からなる前記隔壁を形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の膜形成方法。
【請求項4】
前記材料液塗布工程において、液滴吐出法を用いて前記材料液を塗布することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の膜形成方法。
【請求項5】
前記膜は、液晶分子の配向を規制する配向膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の膜形成方法。
【請求項6】
対向する一対の基板間に電気光学材料が挟持されてなる電気光学装置であって、
前記基板の前記電気光学材料側の面に、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の膜形成方法により前記膜が形成されていることを特徴とする電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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