説明

膜焼成装置及び膜焼成方法

【課題】被処理基板に形成された塗布膜を焼成し、所定の機能膜を形成する膜焼成装置において、塗布膜中へのイオンの拡散を制御する。
【解決手段】加熱ユニット2は、被処理基板Gを加熱する加熱手段25と、前記被処理基板よりも大きい寸法に形成され、前記基板を、その両面側から挟み込む一対の電極22,24と、少なくとも前記加熱手段により前記基板が加熱される間、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させる帯電手段5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板に塗布形成された塗布膜を焼成し、所定の機能膜を形成する膜焼成装置及び膜焼成方法に関し、特に前記基板から塗布膜中へのイオンの拡散を制御することのできる膜焼成装置及び膜焼成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、n型シリコンとp型シリコンとが積層された半導体構造を有し、この半導体に所定波長の光が当たると、光電効果により電気が発生する。この太陽電池は、太陽光などの光を効率よく吸収するために、通常、そのパネル(太陽電池パネルと呼ぶ)の受光面を反射防止膜で被覆している。
従来から太陽電池パネルに反射防止膜を形成する方法としては、例えば、特許文献1に開示されるように、プラズマCVD法により水素を含有する窒化シリコン膜を前記パネルに形成する技術などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−340358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラズマCVD法により反射防止膜を形成する場合、真空排気設備が必要になるなど、設備が大規模になるため、コストが嵩張るという課題がある。
前記課題を解決するものとして、所定の塗布液を太陽電池パネルに塗布し、塗布膜を焼成することにより反射防止膜を形成する方法がある。この方法によれば、真空環境でなくともパネル上に反射防止膜を形成することができ、コストを低減することができる。
【0005】
しかしながら、図7(a)に示すように、例えばソーダライムガラスからなるガラス基板50上に塗布膜51を形成し、それを加熱して焼成する場合、熱によりガラス基板50からイオン52(例えばプラスイオン)が塗布膜51中に拡散する。そして、図7(b)に示すように、膜中に拡散したイオン52が塗布膜51の水分53と結合し、塗布膜51中に強アルカリ性物質54(例えば、NaOH)が発生する虞があった。
その場合、焼成された反射防止膜中に多量の強アルカリ性物質54が存在することによって、反射防止膜の機能が劣化するという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、被処理基板に形成された塗布膜を焼成し、所定の機能膜を形成する膜焼成装置において、塗布膜中へのイオンの拡散を制御することのできる膜焼成装置及び膜焼成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明に係る膜焼成装置は、被処理基板に塗布形成された塗布膜を焼成する加熱ユニットを具備し、前記加熱ユニットによる前記塗布膜の焼成により前記基板上に所定の機能膜を形成する膜焼成装置であって、前記加熱ユニットは、前記被処理基板を加熱する加熱手段と、前記被処理基板よりも大きい寸法に形成され、前記基板を、その両面側から挟み込む一対の電極と、少なくとも前記加熱手段により前記基板が加熱される間、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させる帯電手段とを備えることに特徴を有する。
また、前記加熱ユニットによる前記塗布膜の焼成前に、前記被処理基板に塗布形成された塗布膜から溶媒を蒸発促進させる乾燥手段を有する乾燥ユニットを具備し、前記乾燥ユニットは、前記被処理基板よりも大きい寸法に形成され、前記基板を、その両面側から挟み込む一対の電極と、少なくとも前記乾燥手段により前記基板上の塗布膜が乾燥処理される間、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させる帯電手段とを備えることが望ましい。
また、前記加熱ユニットによる前記塗布膜の焼成後に、前記被処理基板を所定温度に冷却する冷却手段を有する冷却ユニットを具備し、前記冷却ユニットは、前記被処理基板よりも大きい寸法に形成され、前記基板を、その両面側から挟み込む一対の電極と、少なくとも前記冷却手段により前記基板が冷却処理される間、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させる帯電手段とを備えることが望ましい。
【0008】
このように構成することにより、例えば、被処理基板から生じたプラスイオンの塗布膜への拡散を抑制し、塗布膜中の強アルカリ性物質等の発生を防止することができる。その結果、塗布膜の焼成後に形成された機能膜の機能低下を防止することができる。
また、被処理基板を挟む一対の電極の帯電量、或いは帯電極性を調整することにより、塗布膜へのイオンの拡散量を制御することができ、所望の性質を有する機能膜を得ることができる。
【0009】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る膜焼成方法は、被処理基板に塗布形成された塗布膜を加熱処理することにより前記塗布膜を焼成し、前記基板上に所定の機能膜を形成する膜焼成方法であって、少なくとも前記加熱処理の間、前記被処理基板よりも大きい寸法に形成された一対の電極により、前記基板を、その両面側から挟み込むステップと、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させるステップとを実施することに特徴を有する。
また、前記被処理基板に塗布形成された塗布膜を加熱処理する前に、前記塗布膜から溶媒を蒸発促進させる乾燥処理を行い、少なくとも前記乾燥処理の間、前記被処理基板よりも大きい寸法に形成された一対の電極により、前記基板を、その両面側から挟み込むステップと、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させるステップとを実施することが望ましい。
また、前記被処理基板に塗布形成された塗布膜を加熱処理した後に、前記被処理基板を所定温度まで冷却する冷却処理を行い、少なくとも前記冷却処理の間、前記被処理基板よりも大きい寸法に形成された一対の電極により、前記基板を、その両面側から挟み込むステップと、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させるステップとを実施することが望ましい。
【0010】
このような方法によれば、例えば、被処理基板から生じたプラスイオンの塗布膜への拡散を抑制し、塗布膜中の強アルカリ性物質等の発生を防止することができる。その結果、塗布膜の焼成後に形成された機能膜の機能低下を防止することができる。
また、被処理基板を挟む一対の電極の帯電量、或いは帯電極性を調整することにより、塗布膜へのイオンの拡散量を制御することができ、所望の性質を有する機能膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被処理基板に形成された塗布膜を焼成し、所定の機能膜を形成する膜焼成装置において、塗布膜中へのイオンの拡散を制御することのできる膜焼成装置及び膜焼成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る膜焼成装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1の膜焼成装置が備える乾燥ユニット(DP)の構成を示す断面図である。
【図3】図3は、図1の膜焼成装置が備える加熱ユニット(BAKE)の構成を示す断面図である。
【図4】図4は、図1の膜焼成装置が備える冷却ユニット(COL)の構成を示す断面図である。
【図5】図5は、図1の膜焼成装置の動作の流れを示すフローである。
【図6】図6は、各ユニットの動作の流れを示すフローである。
【図7】図7は、従来の課題を説明するための基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる実施の形態につき、図に基づいて説明する。図1は、本発明に係る膜焼成装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
この膜焼成装置100は、クリーンルームに設置され、太陽電池パネル用の例えばガラス基板(基板Gと呼ぶ)を被処理基板とし、基板上に塗布された塗布膜を焼成して反射防止膜を形成するためのものである。
【0014】
膜焼成装置100は、前段の塗布処理装置(図示せず)において塗布膜形成されたガラス基板を減圧乾燥処理する乾燥ユニット(DP)1と、乾燥処理されたガラス基板上の塗布膜を加熱して焼成する加熱ユニット(BAKE)2と、焼成されたガラス基板Gを所定温度まで冷却する冷却ユニット(COL)3とを具備する。
図1に示すように前記乾燥ユニット(DP)1と、加熱ユニット(BAKE)2と、冷却ユニット(COL)3には、それぞれ電界印加部4,5,6(帯電手段)が接続され、各ユニット内に所定の電界を形成可能に構成されている。また、各ユニット1,2,3、及び各電界印加部4,5,6は、それぞれコンピュータからなる制御部10によって駆動制御されるようになされている。
【0015】
図2は、乾燥ユニット(DP)1の構成を示す断面図である。この乾燥ユニット(DP)1は、下部チャンバ11aに対し上部チャンバ11bが開閉可能に設けられたチャンバ11と、下部チャンバ11a内に設けられたステージ12とを備える。ステージ12の上面には塗布膜Lが形成された基板Gを支持するために複数の支持ピン13が設けられ、図示するように支持ピン13上に基板Gが載置される。
また、上部チャンバ11a内には、基板Gよりも大きい寸法形状の平板電極14が設けられ、この平板電極14と前記ステージ12とにより一対の平行電極板が構成されている。即ち、前記平板電極14と前記ステージ12には、電界印加部4により所定の電圧が印加され、例えば、平板電極14が正の電荷に帯電され、ステージ12が負の電荷に帯電されるようになされている。
【0016】
また、乾燥ユニット(DP)1において、上部チャンバ11bは昇降手段15によって下部チャンバ11aに対し昇降移動され、それにより基板Gの搬入出が可能となっている。また、下部チャンバ11aの底部には、図示するように排気管16が設けられ、この排気管16は排気ポンプ17に接続されている。即ち、下部チャンバ11aに対し上部チャンバ11bが閉じた状態で排気ポンプ17が駆動すると、チャンバ11内が次第に減圧されるようになっている。尚、チャンバ11、排気管16、排気ポンプ17により乾燥手段が構成される。
この乾燥ユニット(DP)1に搬入される基板G上の塗布膜Lは、塗布液中に溶媒を多く含んでおり、乾燥ユニット(DP)1にあっては、チャンバ11内を前記溶媒の蒸気圧まで減圧することにより、前記溶媒の蒸発を促進するようになっている。
【0017】
図3は、加熱ユニット(BAKE)2の構成を示す断面図である。この加熱ユニット(BAKE)2は、側部に基板搬入出口20が設けられたチャンバ21と、チャンバ21内に設けられたステージ22とを備える。ステージ22の上面には基板Gを支持するために複数の支持ピン23が設けられ、図示するように支持ピン23上に基板Gが載置される。
また、チャンバ21内において、ステージ22の上方には、基板Gよりも大きい寸法形状の平板電極24が設けられ、この平板電極24と前記ステージ22とにより一対の平行電極板が構成されている。即ち、前記平板電極24と前記ステージ22には、電界印加部5により所定の電圧が印加され、例えば、平板電極24が正の電荷に帯電され、ステージ22が負の電荷に帯電されるようになされている。
【0018】
また、チャンバ21内の天井付近には、短冊状の複数のヒータ25(加熱手段)が設けられ、これらヒータ25は、ヒータ制御手段26により所定温度(例えば300℃)で発熱するように駆動制御されるようになっている。これにより、チャンバ21内は、所定温度(例えば250℃)に昇温され、所定時間、ステージ22上の基板Gが加熱されて塗布膜Lが焼成され、反射防止膜が形成されるようになっている。
【0019】
図4は、冷却ユニット(COL)3の構成を示す断面図である。この冷却ユニット(COL)3は、側部に基板搬入出口30が設けられたチャンバ31と、チャンバ31内に設けられたステージ32とを備える。ステージ32の上面には基板Gを支持するために複数の支持ピン33が設けられ、図示するように支持ピン33上に基板Gが載置される。
また、チャンバ31内において、ステージ32の上方には、基板Gよりも大きい寸法形状の平板電極34が設けられ、この平板電極34と前記ステージ32とにより一対の平行電極板が構成されている。即ち、前記平板電極34と前記ステージ32には、電界印加部6により所定の電圧が印加され、例えば、平板電極34が正の電荷に帯電され、ステージ32が負の電荷に帯電されるようになされている。
【0020】
また、チャンバ31の天井部には、冷風送風手段35(冷却手段)から所定温度(例えば50℃以下)の冷風をチャンバ31内に供給するための送風管36が設けられている。また、平板電極34の上方には、前記送風管36から送風された冷風をチャンバ内31で均一に下方へ流すための拡散板37が設けられている。
これにより、チャンバ31内のステージ32上に載置された基板G及び塗布膜L(反射防止膜)は、所定温度まで冷却されるようになっている。
【0021】
続いて、この膜焼成装置100による基板G上の塗布膜Lを焼成して反射防止膜を形成する一連の動作について、図5、図6のフローに沿って説明する。
先ず、前段の塗布処理装置(図示せず)において所定の塗布液が塗布されたガラス基板Gは、制御部10の制御により、乾燥ユニット(DP)1において減圧乾燥処理が施される(図5のステップS1)。具体的には、基板Gは、昇降手段15によって上部チャンバ11bが開かれたチャンバ11内に搬入され、ステージ12の支持ピン13上に載置される(図6のステップSp1)。
【0022】
昇降手段15により上部チャンバ11bが閉じられると、基板Gはステージ12と平板電極14とに挟まれた状態となる。そして、電界印加部4により前記ステージ12と平板電極14との間に所定の電圧が印加され、ステージ12は負の電荷に帯電され、平板電極14は正の電荷に帯電される(図6のステップSp2)。
また、電界印加状態となされると、吸引ポンプ17によりチャンバ11内の雰囲気が吸引され、塗布膜L中の溶媒の蒸気圧まで減圧される(図6のステップSp3)。これにより、基板Gの塗布された塗布膜L中の溶媒が蒸発促進され、減圧乾燥処理が進行する。
尚、この減圧乾燥処理にあっては、加熱処理ではないため基板Gは高温にはならず、基板Gから塗布膜Lに拡散するプラスイオンは多くはないが、ステージ12(基板G側)が負の電荷に帯電され、平板電極14(塗布膜L側)が正の電荷に帯電されることによって、基板Gから塗布膜Lへのプラスイオンの拡散が抑制される。
【0023】
減圧乾燥処理が所定時間経過すると(図6のステップSp4)、電界印加部4は電圧印加を停止し、電界の形成が解除される(図6のステップSp5)。
そして、減圧乾燥処理が停止され(図6のステップSp6)、昇降手段15により上部チャンバ11bが下部チャンバ11aに対して上昇移動され、基板Gが搬出される(図6のステップSp7)。
【0024】
減圧乾燥処理が終了すると、基板Gは、制御部10の制御により加熱ユニット(BAKE)2において加熱され、塗布膜Lが焼成されて反射防止膜が形成される(図5のステップS2)。
具体的には、基板Gはチャンバ21内に搬入され、ステージ22の支持ピン23上に載置される(図6のステップSp1)。
チャンバ21内の基板Gはステージ22と平板電極24とに挟まれた状態となる。そして、電界印加部5により前記ステージ22と平板電極24との間に所定の電圧が印加され、ステージ22は負の電荷に帯電され、平板電極24は正の電荷に帯電される(図6のステップSp2)。
【0025】
そして、ヒータ制御手段26により駆動されたヒータ25の熱によって、チャンバ21内の雰囲気は所定温度(例えば250℃)まで昇温され、基板G上の塗布膜Lが加熱される(図6のステップSp3)。ここで、基板Gは加熱されることによって高温となり、内部からプラスイオンが塗布膜Lに拡散しようとするが、ステージ22(基板G側)が負の電荷に帯電され、平板電極24(塗布膜L側)が正の電荷に帯電されることによって、基板Gから塗布膜Lへのプラスイオンの拡散が抑制される。
【0026】
加熱処理が進行し、所定時間が経過すると(図6のステップSp4)、基板G上の塗布膜Lは焼成され、反射防止膜となされる。また、電界印加部5は電圧印加を停止し、電界の形成が解除される(図6のステップSp5)。
また、ヒータ制御手段26によりヒータ25の駆動が停止され(図6のステップSp6)、基板Gはチャンバ21から搬出される(図6のステップSp7)。
【0027】
基板Gの加熱処理が終了すると、基板Gは、制御部10の制御により冷却ユニット(COL)31において所定温度(例えば50℃以下)まで冷却される(図5のステップS3)。
具体的には、基板Gはチャンバ31内に搬入され、ステージ32の支持ピン33上に載置される(図6のステップSp1)。
チャンバ31内の基板Gはステージ32と平板電極34とに挟まれた状態となる。そして、電界印加部6により前記ステージ32と平板電極34との間に所定の電圧が印加され、ステージ32は負の電荷に帯電され、平板電極34は正の電荷に帯電される(図6のステップSp2)。
【0028】
そして、冷風送風手段35から供給された冷風によってチャンバ31内の温度は所定温度まで下げられ、基板G及びその上に形成された塗布膜L(反射防止膜)が冷却される(図6のステップSp3)。ここで、基板Gが所定温度まで冷却されるまでは基板Gの熱により、内部からプラスイオンが塗布膜Lに拡散しようとするが、ステージ32(基板G側)が負の電荷に帯電され、平板電極34(塗布膜L側)が正の電荷に帯電されることによって、基板Gから塗布膜Lへのプラスイオンの拡散が抑制される。
【0029】
冷却処理が進行し、所定時間が経過すると(図6のステップSp4)、基板G上の塗布膜L(反射防止膜)は所定温度まで冷却される。また、電界印加部6は電圧印加を停止し、電界の形成が解除される(図6のステップSp5)。
また、冷風送風手段35の駆動が停止され(図6のステップSp6)、基板Gはチャンバ31から搬出される(図6のステップSp7)。
【0030】
以上のように、本発明に係る膜焼成装置の一実施形態によれば、塗布膜の焼成の際、塗布膜が形成された基板Gを平行基板電極で挟み、基板Gの下方の電極が負の電荷に帯電され、塗布膜Lの上方の電極が正の電荷に帯電される。
これにより、基板Gから生じたプラスイオンの塗布膜Lへの拡散が抑制され、塗布膜L中の強アルカリ性物質の発生が防止される。その結果、塗布膜Lの焼成後に形成された反射防止膜の機能低下を防止することができる。
【0031】
尚、前記実施の形態においては、ガラス基板G上の塗布膜Lを焼成し機能膜として反射防止膜を形成する場合を例に説明したが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではない。
例えば、ガラス基板上に、曇り防止膜や、熱吸収膜など、あらゆる機能膜の形成にも適用することができる。
【0032】
また、前記実施の形態にあっては、ガラス基板Gから塗布膜L中にプラスイオンが拡散しないように、基板下方を負の電荷で帯電させ、基板(塗布膜)上方を正の電荷で帯電させる構成とした。
しかしながら、それに限らず、機能膜の要求性能に応じて、ガラス基板からプラスイオンを塗布膜中に意図的に拡散させる構成としてもよい。即ち、平行基板電極の帯電量を制御する、或いは、帯電極性を前記実施形態とは逆にしてもよい。
そのように、基板Gを挟む一対の平行基板電極の帯電量、或いは帯電極性を調整することにより、塗布膜Lへのイオンの拡散量を制御することができ、所望の性質を有する機能膜を得ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 乾燥ユニット
2 加熱ユニット
3 冷却ユニット
4 電界印加部(帯電手段)
5 電界印加部(帯電手段)
6 電界印加部(帯電手段)
10 制御部
11 チャンバ(乾燥手段)
12 ステージ(電極)
13 支持ピン
14 平板電極(電極)
15 昇降手段
16 排気管(乾燥手段)
17 排気ポンプ(乾燥手段)
21 チャンバ
22 ステージ(電極)
23 支持ピン
24 平板電極(電極)
25 ヒータ(加熱手段)
26 ヒータ制御手段
31 チャンバ
32 ステージ(電極)
33 支持ピン
34 平板電極(電極)
35 冷風送風手段(冷却手段)
100 膜焼成装置
G ガラス基板(被処理基板)
L 塗布膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に塗布形成された塗布膜を焼成する加熱ユニットを具備し、前記加熱ユニットによる前記塗布膜の焼成により前記基板上に所定の機能膜を形成する膜焼成装置であって、
前記加熱ユニットは、
前記被処理基板を加熱する加熱手段と、
前記被処理基板よりも大きい寸法に形成され、前記基板を、その両面側から挟み込む一対の電極と、
少なくとも前記加熱手段により前記基板が加熱される間、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させる帯電手段とを備えることを特徴とする膜焼成装置。
【請求項2】
前記加熱ユニットによる前記塗布膜の焼成前に、前記被処理基板に塗布形成された塗布膜から溶媒を蒸発促進させる乾燥手段を有する乾燥ユニットを具備し、
前記乾燥ユニットは、
前記被処理基板よりも大きい寸法に形成され、前記基板を、その両面側から挟み込む一対の電極と、
少なくとも前記乾燥手段により前記基板上の塗布膜が乾燥処理される間、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させる帯電手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載された膜焼成装置。
【請求項3】
前記加熱ユニットによる前記塗布膜の焼成後に、前記被処理基板を所定温度に冷却する冷却手段を有する冷却ユニットを具備し、
前記冷却ユニットは、
前記被処理基板よりも大きい寸法に形成され、前記基板を、その両面側から挟み込む一対の電極と、
少なくとも前記冷却手段により前記基板が冷却処理される間、前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させる帯電手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された膜焼成装置。
【請求項4】
被処理基板に塗布形成された塗布膜を加熱処理することにより前記塗布膜を焼成し、前記基板上に所定の機能膜を形成する膜焼成方法であって、
少なくとも前記加熱処理の間、
前記被処理基板よりも大きい寸法に形成された一対の電極により、前記基板を、その両面側から挟み込むステップと、
前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させるステップとを実施することを特徴とする膜焼成方法。
【請求項5】
前記被処理基板に塗布形成された塗布膜を加熱処理する前に、前記塗布膜から溶媒を蒸発促進させる乾燥処理を行い、
少なくとも前記乾燥処理の間、
前記被処理基板よりも大きい寸法に形成された一対の電極により、前記基板を、その両面側から挟み込むステップと、
前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させるステップとを実施することを特徴とする請求項4に記載された膜焼成方法。
【請求項6】
前記被処理基板に塗布形成された塗布膜を加熱処理した後に、前記被処理基板を所定温度まで冷却する冷却処理を行い、
少なくとも前記冷却処理の間、
前記被処理基板よりも大きい寸法に形成された一対の電極により、前記基板を、その両面側から挟み込むステップと、
前記一対の電極間に所定の電圧を印加し、一方の電極を正の電荷で帯電させ、他方の電極を負の電荷で帯電させるステップとを実施することを特徴とする請求項4または請求項5に記載された膜焼成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93373(P2013−93373A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233103(P2011−233103)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】