説明

膜結合性プレニルトランスフェラーゼ

【課題】膜結合性のプレニルトランスフェラーゼのDNAを単離する方法、その単離方法によって得られるDNA、および膜結合性のプレニルトランスフェラーゼの提供。
【解決手段】膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける、NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、またはDQxxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフを有し、かつプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ、その製造方法、当該トランスフェラーゼをコードするDNA、および当該DNAの単離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の生産する二次代謝産物の数は五万種を超えるとされ、天然有機化合物の大きなリソースとなっている。構造上の特徴から便宜上いくつかのグループに分類されるが、実際には異なったグループ間の特徴を併せ持つ化合物も非常に多い。プレニル化された芳香族化合物はその好例で、プレニル基は植物二次代謝産物の構造や生理活性の多様性に大きく貢献している。生合成的には複合経路と呼ばれる経路で生合成されるこれらの化合物は、耐虫性や耐病性などを担うことで植物の生命維持に必要な役割を担う一方で、薬用植物において生理活性本体としてその薬理作用に寄与しているものもある(非特許文献1)。例えば、プレニルフラボノイドには、抗腫瘍活性や抗菌作用といった様々な生理活性をもつものが多数報告されており(非特許文献2)、医薬及び食品産業でも非常に重要な化合物群となっている。これらはまた植物にとっては食害、感染防御において重要な役割を果たしている。
【0003】
とりわけ、プレニルフラボノイドなどプレニル芳香族化合物の生理活性に対するプレニル基の重要性は多くの研究者により指摘されており、実際プレニル基を持たない母核化合物には生理活性が見られないことも少なくない。従って、これら芳香族化合物のプレニル化を触媒する酵素は、産業的にも非常に重要と認識されている。しかし、芳香族を基質とするプレニルトランスフェラーゼは膜結合性のものが多く、生化学的研究の困難さから、これまで分子生物学的な解析が遅れており、フラボノイドを基質とする植物プレニルトランスフェラーゼに至っては、その遺伝子のクローニングは未だ一例も報告されていなかった。
【非特許文献1】S. Mesia-Vela et al., Phytomedicine, 8 (2001), p.481-488
【非特許文献2】H.Y. Sohn et al., Phytomedicine, 11 (2004), p.666-672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明は、膜結合性のプレニルトランスフェラーゼのDNAを単離する方法、その単離方法によって得られるDNA、および膜結合性のプレニルトランスフェラーゼの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、従来、大腸菌を用いた発現系では膜蛋白質を発現させるのは困難であったところ、酵母でライブラリーを作成することにより植物由来の膜結合性プレニルトランスフェラーゼのcDNAの単離に成功し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の通りである。
項1.膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける、NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、またはDQxxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフを有し、かつ
化学式(I):
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
およびRは、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
およびRは、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Rはフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項2.YxxxxxxxG*AT、LxFxIGWLQ、(S/A)Gxx(S/T)FR, TxPxxxxFCxxIおよびAEYxxxPLFからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列モチーフを有する、項1記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項3.プレニルドナーとしてジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)を基質とする、項1に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項4.以下の(a)又は(b)のポリペプチド:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(b)配列番号1において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
項5.以下の(c)又は(d)のポリペプチド:
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(d)配列番号3において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
項6.以下の(e)又は(f)のポリペプチド:
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(f)配列番号5において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
項7.以下の(g)又は(h)のポリペプチド:
(g)配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(h)配列番号7において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
項8.以下の(i)又は(j)のポリペプチド:
(i)配列番号9のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(j)配列番号9において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
項9.植物由来である、項1〜8のいずれかに記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項10.植物が、マメ科、クワ科、オトギリソウ科、ミカン科、セリ科、キク科またはアサ科またはホップから選択される、項9に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項11.以下の(k)又は(l)に示すDNAからなる遺伝子:
(k)配列番号2の塩基配列からなるDNA、
(l)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
項12.以下の(m)又は(n)に示すDNAからなる遺伝子:
(m)配列番号4の塩基配列からなるDNA、
(n)配列番号4に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
項13.以下の(o)又は(p)に示すDNAからなる遺伝子:
(o)配列番号6の塩基配列からなるDNA、
(p)配列番号6に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
項14.以下の(q)又は(r)に示すDNAからなる遺伝子:
(q)配列番号8の塩基配列からなるDNA、
(r)配列番号8に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
項15.以下の(s)又は(t)に示すDNAからなる遺伝子:
(s)配列番号10の塩基配列からなるDNA、
(t)配列番号10に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
項16.項11〜15のいずれかに記載の遺伝子と少なくとも70%以上の相同性を有する塩基配列からなる遺伝子。
項17.項11〜16のいずれかに記載の遺伝子を含むベクター。
項18.項17に記載のベクターを保持する形質転換体。
項19.項18記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から膜結合性プレニルトランスフェラーゼを採取する工程を含んでなる膜結合性プレニルトランスフェラーゼの調製方法。
項20.形質転換体が酵母又は植物である、項19に記載の方法。
項21.項11〜16のいずれかに記載の遺伝子によってコードされる膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
項22.配列表の配列番号2、4、6、8または10のいずれかに記載の塩基配列あるいはその一部を含んでなる塩基配列との相同性を利用することによって、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子を単離する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、
以下の化学式(I):
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
およびRは、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
およびRは、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、Rはフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【0022】
【化8】

【0023】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す、プレニルトランスフェラーゼおよび当該酵素をコードする遺伝子が提供される。本発明の酵素は熱に対して安定であることから産業的に利用しやすい酵素である。また、本発明の酵素により、様々な有用な生理活性を示すプレニル芳香族化合物を大量かつ安価に生産できる。さらに、本発明の遺伝子の配列を用いて、プレニル化二次代謝物を多く含有する植物などから、芳香族化合物をプレニル化する酵素の遺伝子を単離することが可能となる。
【0024】
また、農業分野における分子育種のツールとしても、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼ遺伝子を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(膜結合性プレニルトランスフェラーゼ)
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける保存モチーフを少なくとも1つ有し、かつ
以下の化学式(I):
【0026】
【化9】

【0027】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
およびRは、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【0028】
【化10】

【0029】
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
およびRは、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【0030】
【化11】

【0031】
(式中、Rはフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【0032】
【化12】

【0033】
(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼである。
【0034】
膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける保存モチーフとしては、例えば、NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、またはDQxxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフが挙げられる。これらの保存モチーフにおいて、xで表された箇所はいかなるアミノ酸であってもよい。
【0035】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、さらにYxxxxxxxG*AT、LxFxIGWLQ、(S/A)Gxx(S/T)FR, TxPxxxxFCxxIおよびAEYxxxPLFからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列モチーフを有していてもよい。xで表された箇所は上記と同様である。また、これらのモチーフは、相互に、後述の図5のマルチアラインメントで示す程度の間隔をおいた位置に存するのが好ましいが、これらに限定はされない。
【0036】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼが活性を示す基質としては、フラボノイド、イソフラボノイド、クマリン、カルコンおよび/またはフロログルシノールなどが挙げられる。
【0037】
好ましいフラボノイドとしては、ナリンゲニン、ヘスペレチン、ガランギン、クリシン、イソサクラネチンまたは2’,4’,4−トリヒドロキシ−6’−メトキシカルコンなどが挙げられる。
【0038】
本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、プレニルドナーとしてジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、フィチル二リン酸(PDP)などを基質とする。
【0039】
例えば、本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼの一例としては、以下の(a)〜(j)のポリペプチドが挙げられる:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(b)配列番号1において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(d)配列番号3において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(f)配列番号5において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(g)配列番号7のびアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(h)配列番号7において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、
(i)配列番号9のアミノ酸配列を有するポリペプチド、および
(j)配列番号9において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【0040】
(b)のポリペプチドは、(a)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。
【0041】
(d)のポリペプチドは、(c)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。
【0042】
(f)のポリペプチドは、(e)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。
【0043】
(h)のポリペプチドは、(g)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。
【0044】
(i)のポリペプチドは、(j)のポリペプチドにおいて、1又は複数個、例えば1〜50個、好ましくは1〜30個のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入されたポリペプチドであってもよい。
【0045】
限定はされないが、具体的には、以下のように置換することが可能である:例えばアミノ酸の置換の場合は、タンパク質の構造保持の観点から、極性、電荷、可溶性、親水性/疎水性の点で、置換前のアミノ酸と類似した性質を有するアミノ酸に置換することができる。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンは非極性アミノ酸に分類され;セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンは極性アミノ酸に分類され;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンは芳香族アミノ酸に分類され;アスパラギン酸、グルタミン酸は酸性アミノ酸に分類される。従って、同じ群のアミノ酸から選択して置換することができる。
【0046】
好ましい置換の具体例としては、例えば、配列表の配列番号1で表すアミノ酸配列において、126番目のメチオニンのアラニンへの置換、158番目のバリンのメチオニンへの置換などが挙げられる。
【0047】
また、本発明の膜結合性プレニルトランスフェラーゼは、植物由来であることが好ましく、特に、マメ科、クワ科、オトギリソウ科、ミカン科、セリ科、キク科またはアサ科、ホップ由来であることが好ましい。
【0048】
(膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子)
本発明には、以下の(k)〜(t)のいずれかのDNAからなる膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれる:
(k)配列番号2の塩基配列からなるDNA、
(l)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(m)配列番号4の塩基配列からなるDNA、
(n)配列番号4に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(o)配列番号6の塩基配列からなるDNA、
(p)配列番号6に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(q)配列番号8の塩基配列からなるDNA、
(r)配列番号8に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA、
(s)配列番号10の塩基配列からなるDNA、および
(t)配列番号10に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
【0049】
ここで、本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるポリヌクレオチドを意味し、例えば、検出対象となるポリヌクレオチドを固定化した支持体に、プローブを作用させ、0.7〜1.0MのNaCl存在下において42℃にて2時間プレハイブリダイゼーションを行った後、0.7〜1.0MのNaCl存在下において42℃にて12〜16時間ハイブリダイゼーションを行い、その後0.1〜2倍程度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用いて42℃でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed.,(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0050】
本発明には、(k)〜(t)のいずれかの遺伝子と、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列からなる遺伝子が含まれる。
【0051】
(ベクター)
本発明のベクターは、上記(k)〜(t)のDNAが挿入された組み換えベクターである。ベクターとしては公知の酵母用、植物細胞用等のものを広く使用できる。公知のベクターとしては、酵母用ベクターとしてはpDR196、pYES-DEST 52、Yip5、Yrp17、Yep24など、植物細胞用としては、pGWB vector(pGWB2、pGWB5、pGWB80など;島根大学、中川強先生よりご分与)、pBiEl2-GUS、pIG121-Hm、pBI121、pBiHyg-HSE、pB119、pBI101、pGV3850、pABH-Hm1などが挙げられる。本発明において使用されるベクターは、必要に応じて、選択マーカー(例えば、薬物耐性遺伝子、抗生物質耐性遺伝子、レポーター遺伝子)を含有する。
【0052】
(形質転換体)
本発明の形質転換体は、本発明の組み換えベクターを保持する形質転換体である。宿主は、ベクターに適したものを使用すればよい。例えば、酵母、植物細胞、昆虫細胞(Sf9など)などが好ましい。特に好ましい形質転換体としては、酵母又は植物細胞などが挙げられる。形質転換方法は当業者に周知である。
【0053】
(膜結合性プレニルトランスフェラーゼの調製方法)
上記形質転換体および/またはその培養物の培養液から膜結合性プレニルトランスフェラーゼを回収することで、活性を保持した組換え膜結合性プレニルトランスフェラーゼを得ることができる。
【0054】
具体的には、例えば、Yazaki et al (JBC, 2002, 277, 6240-6246)に記載の方法を用いて行うことが出来る。
【0055】
また、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼは、例えば、酵母発現系を用いた大量生産により、または大豆などの食用植物で発現させることにより、得ることができる。
【0056】
より具体的には、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼは、酵母において高い活性を持ったタンパク質として発現できるため、形質転換酵母の培養液にナリンゲニン等のフラボノイドを基質として投与する事で、効率よくプレニル化フラボノイドの大量生産が可能である。ナリンゲニンは適度な水溶性と疎水性を持つため、生体膜を通過する事ができ、酵母細胞内のプレニルトランスフェラーゼと接触できる。酵母はサイトゾルにDMAPPを生合成する経路(メバロン酸経路)を有しているため、プレニル基質はインビボで供給される。生産されたプレニル化フラボノイドは、酵母細胞あるいは培地から回収する事で、効率のよい生産が見込まれる。
【0057】
あるいは、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼを大豆等の植物細胞で発現させる事で、プレニル化フラボノイドを植物で生産する事も可能である。植物細胞の場合、DMAPPを生合成する経路は2つあり、一つはサイトゾルのメバロン酸経路、もう一方はプラスチド内に局在する非メバロン酸経路である。前者のDMAPPを利用してプレニル化フラボノイドを生産させるためには、プラスチド局在化シグナルを除いた改変遺伝子を、後者のDMAPPを利用したプレニル化フラボノイド生産を行うためには、内在性のプラスチド局在化シグナルを使うかRuBisCo小サブユニットなど他遺伝子のプラスチド局在化シグナルを連結してプレニルトランスフェラーゼをプラスチドに局在させる。フラボノイド基質は、内在性のものがプレニル化されるため、植物を育成させてその組織からプレニル化フラボノイドを回収する。あるいは、ナリンゲニンのようなフラボノイドを吸収させてプレニル化させ、それを植物組織から回収する事も効率の良い生産に有効である。植物のどの組織でプレニル化フラボノイドを生産させるのが良いかは、組織特異的なプロモータを利用する事で制御可能である。
【0058】
プレニル化フラボノイドを生産する植物は、上記のように化合物生産の目的にも利用可能であるが、プレニル化フラボノイドの多くが高い抗菌活性を有する事から、病害虫に対して高い抵抗性を示す事が考えられる。従って、農業分野における分子育種のツールとして、本発明の膜結合プレニルトランスフェラーゼ遺伝子は利用可能である。
【0059】
(遺伝子の単離方法)
また、配列表の配列番号2、4、6、8または10のいずれかに記載の塩基配列あるいはその一部を含んでなる塩基配列との相同性を利用すれば、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子を単離することができる。
【0060】
具体的な方法としては、例えば、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれると予想される遺伝子ライブラリーを、前記塩基配列をプローブとしてスクリーニングする方法、あるいは、前記塩基配列情報に基づいたプライマーを調製し、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれると予想されるサンプルを鋳型としたPCRを実施する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を、実施例を示してより詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.発現ライブラリーの構築
S.flavescens培養細胞を、フラボノイドのプレニル化酵素を誘導させるために、0.1Mのジャスモン酸メチルDMSO溶液20μlを添加し、36時間培養した(終濃度0.1 mM)。培養細胞よりOligotex-MAG mRNA Purification Kit(タカラバイオ社)を使用してpoly(A)+RNAを単離した。cDNAプラスミドライブラリーを、cDNA Synthesis Kit (STRATAGENE)を使用し、膜結合性タンパク質の酵母発現用ベクターpDR196を用いて、構築した。cDNAの第1鎖を、7μgのポリ(A)+RNA、XhoI制限部位を含むoligo(dT)18アンカープライマーを使用して合成した。cDNAの第2鎖を合成した後、EcoRI制限サイトを含む平滑末端アダプターを二本鎖DNAへ結合させ、次いで当該フラグメントを、構成的プロモーターPMA1を有するプラスミド、pDR196中に組み込んだ。
【0062】
2.SfN8DT cDNAのクローニングおよびDNA塩基配列の決定
上記構築したcDNAライブラリーをEscherichia coli DH10Bに導入し、約10,000個のクローンをランダムに選出し、PMA1プロモーター領域にアニールするプライマーを用いて5’末端から配列決定した。そのうち、既知の膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける保存モチーフ6種(NDxxDxxxD, NQxxDxxxD, NQxxExxxD, DDxxDxxxD, DQxxDxxxD, DQxxExxxD)のいずれかを有する200クローンを選出した。当該cDNAクローンを、SOSUIプログラム(http://bp.nuap.nagoya-u.ac.jp/sosui/)を用いて分析し、少なくとも配列決定した領域において膜貫通領域を有する20クローンを検出した。200クローンを3つの細胞内局在予測プログラム:ChloroP, PSORT, およびWoLF_PSORT(ChloroP; http://www.cbs.dtu.dk/services/ChloroP/, PSORT; http://psort.ims.u-tokyo.ac.jp/form.html, WoLF_PSORT; http://wolfpsort.seq.cbrc.jp/)を用いて分析し、30クローンがプラスチド移行シグナルを有していることがわかった。
これらのクローンを、酢酸リチウム法を用いて酵母株W303-1A-Δcoq2に導入した。SD-Ura液体培地(180ml)中で対数増殖期に達するまで培養することによって、酵母形質転換体中で組換えタンパク質発現させ、そこからYazakiら(JBC, 2002, 277, 6240-6246)に記載の方法を用いてミクロソーム画分を調製した。それぞれの形質転換体の膜フラクションを500μlの0.1 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 8.5)中に再懸濁し、次いで、ナリンゲニンとDMAPPを基質として酵素活性によるスクリーニングを行った。
酵素生成物はHPLC分析を用いてスクリーニングした。HPLC分析は以下で行った:
Shimadzu LC-10A system (島津製作所、日本、京都): column YMC-Pack Pro C18 RS (YMC,日本、京都) 4.6 x 250 mm; 溶媒システム, メタノール:H2O:酢酸(70: 30: 0.3); 流速, 1 ml min-1; 検出, SPD6A フォトダイオード・アレイ検出器で230-320 nm。
【0063】
その結果、200個の酵母形質転換体中、1つのクローンの生成物が、8−ジメチルアリルナリンゲニンと同じ保持時間を有することがわかった。さらに、その生成物はフォトダイオード・アレイ検出において、標品と同等のUVスペクトルを示した。
こうして、sophoraflavanone G (SFG)生合成における最初のフラボノイド・プレニルトランスフェラーゼであるナリンゲニン 8-ジメチルアリルトランスフェラーゼ(以下SfN8DTと称す)のcDNA(全長1,495 bp, ORF 410 a.a.)が得られた。
SfN8DTの塩基配列を配列表の配列番号2に示す。
【0064】
3.酵母発現系を用いた組換えSfN8DTの基質特異性の解析
組換えSfN8DTの酵素化学的性質を主にHPLC分析を用いて行った。さらにプレニルドナーに対する基質特異性はLC/MC分析で行い、様々なフラボノイド化合物(アピゲニン、ケンフェロール、クエルセチン、タクシフォリン、ゲニステイン、マーキアイン)に対する基質特異性はRadioactive assayによって行った。
その結果、組換えSfN8DTは、ナリンゲニン以外に同じフラバノン骨格を有するヘスペレチンのみをプレニル化し、それ以外は基質としなかった。また、SFGの二番目のプレニル化段階の基質であるLGや、この酵素と類似の配列を持つ別の酵素が基質とするHGAもSfN8DTの基質とはならなかった。一方、プレニルドナーとしては、DMAPPを基質とすることが分かった。
【0065】
4.組換えSfN8DTの酵素化学的解析
酵母発現系を用いて、組換えSfN8DTのKm、至適温度、至適pH、二価カチオン要求性を調べた。
具体的には、前述と同様の方法にてミクロソーム画分を調製し、HPLCにより生成物の量を検出した。
これらの結果は、至適温度を除いて、クララ培養細胞の膜画分を用いたnativeな酵素において報告されている結果と一致するものであった(Yamamotoら、Phytochemistry, 2000年参照)。結果を図1〜図4に示す。なお、組換えSfN8DTの至適温度は、70〜80℃であった(図2)。
【0066】
5.SfN8DT以外のHPT様クローンのクローニング
クララcDNAライブラリーのシーケンス情報から、SfN8DT同様にホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼと高い相同性を有する4クローン(それぞれSf1c12f、Sf1C12c、SfL17a、SfL17bと称する)を見出し、RACE法によりcDNAを単離した。
具体的には、RACEの鋳型としてはInvitrogen社のGeneRacerキットを用いて作製したcDNA混合物を用い、PCRにより各cDNAの5’-末端あるいは3’-末端を特異的に増幅した。ここで用いたRNA試料は、ライブラリーを作成したものと同じ、ジャスモン酸メチル処理したクララ培養細胞由来の全RNAである。このPCRにおいて、5’-RACEのフォワードプライマーは、上記キットのアダプター配列を、リバースプライマーは、各遺伝子の内部配列とした。3’-RACEの場合には、フォワードプライマーを各遺伝子の内部配列とし、リバースプライマーにはoligo-dT (20 mer) を用いた。増幅されたDNA断片はシーケンシングにより、各遺伝子のcDNA末端である事を確認した。全長cDNAを取得するためには、改めて5’-末端とoligo-dT (20 mer)をプライマーに、GeneRacerの混合物を用いてPCRを行った。
これらのうち、SfL17b、Sf1C12f、Sf1C12c、SfL17a、SfL17bおよびSfN8DTとホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼとの間のシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列の相同性を比較した(図5)。その結果、Sf1C12f、Sf1C12c、SfL17a、およびSfL17bはSfN8DTと高い相同性を有していた。Sf1C12f(全長1684bp, ORF 410a.a.)、Sf1C12c(全長1527bp, ORF 391a.a.)、SfL17a(全長1325bp, ORF 407a.a.)、およびSfL17b(全長1373bp, ORF 379a.a.)の塩基配列をそれぞれ配列表の配列番号4、6、8および10に示す。
【0067】
6.SfN8DTのmRNAの発現解析
ノーザンブロット及びRT−PCRによりクララ植物体及びクララ培養細胞におけるSfN8DTの発現解析をした(プローブ: 全長ORF)。組織別発現解析には、武田薬草園でサンプリングしたクララ植物体(草丈:約170cm、根直径:〜3cm)を用いた。組織別発現解析の結果から、根のみでSfN8DTの発現が見られ、しかもその発現は根の皮部分に特異的であった。これは、同じ根の試料を用いてHPLCで解析したプレニルフラボノイドの蓄積部位と一致した(図7、後述)。
次にクララ実生を用い、MJ(ジャスモン酸メチル)とSA(サリチル酸)への発現応答を調べた(図6)。方法としては、MJ及びSA (500 nmol) を含ませたコットンを培養容器に置き、24時間後に地上部と根を別々に回収した。その結果、インタクトな実生においてはMJやSAによりSfN8DTの発現誘導は観察されなかった。
一方、培養細胞においても、MJ、SA、YE(yeast extract)への発現応答を調べた。植え継ぎ3日後に、MJ、SA、YEをそれぞれ終濃度100 μM、100 μM、5 mg / ml になるよう添加し、24時間後に回収した。その結果、クララ実生を用いた場合と異なり、MJ、SA、YEによりその発現が著しく上昇した。この結果は、クララ培養細胞において既に報告のあるMJやYE添加によるN8DT活性誘導、およびそれに伴うSFGの生産増大とよく一致した。
培養細胞において、主要プレニルフラボノイドはSFGであるのに対し、植物体においてはメチル化されたプレニルフラボノイド(kurarinoneやkushenol I など)等が主要プレニルフラボノイドであることが報告されている(Yamamotoら, Z. Naturforsch, 1992)。そこで、組織別発現解析に用いたサンプルからエタノール抽出を行い、HPLC分析に供した。その結果、既報の通り、根のみにプレニルフラボノイド、特にkurarinone、kushenol Iが多く含有されていた(図7)。また、根の中心部分にはほとんどフラボノイドが検出されなかった。この化合物分布と発現解析の結果から、プレニルフラボノイドの生合成は根の皮部分で行われ、そのままそこに蓄積されると考えられる。
一方、地上部においては、kurarinone、kushenol I、des-o-methylanhydroicartin、SFGの主要プレニルフラボノイドは検出されなかった。対照的にその代わりフラボンの7-o-glucosideであるapigenin 7-o-glucosideやluteolin 7-o-glucosideが検出された。これらの化合物は根では検出されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、組換えSfN8DTのKm(基質:(A)ナリンゲニンおよび(B)DMAPP)を示すグラフである。
【図2】図2は、組換えSfN8DTの至適温度を示すグラフである。
【図3】図3は、組換えSfN8DTの至適pHを示すグラフである。
【図4】図4は、組換えSfN8DTの二価カチオン要求性を示すグラフである。
【図5】図5は、SfL17b、SfN8DT、SfL17a、Sf1C12cおよびSf1C12fとその他のホモゲンチジン酸プレニルトランスフェラーゼとの間のシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列の相同性の比較を示す。GmVTE2-1, AtVTE2-1, TaVTE2-1, ZmVTE2-1, ApVTE2-1およびCpVTE2-1:Eva Collakova et al, Plant Phys., 2001, 127, 1113-1124およびBeth Savidge et al., Plant Phys., 2002, 129, 321-332参照。HvHGGT, TaHGGTおよびOsHGGT: Edgar B Cahoon et al., Nature Biotech, 2003, 21, 1082-1087参照。GmVTE2-2およびAtVTE2-2:Venkatech et al., Planta, 2006, 223, 1134-1144参照。
【図6】図6は、SfN8DTの発現を示す。(A)それぞれの器官における発現、(B)MJ、SA、YEのSfN8DT発現に対する影響。
【図7】図7は、クララ植物体におけるプレニルフラボノイド含量を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜結合性プレニルトランスフェラーゼにおける、NDxxDxxxD、NQxxDxxxD、NQxxExxxD、DDxxDxxxD、DQxxDxxxD、またはDQxxExxxDからなる群より選択される少なくとも1つの保存モチーフを有し、かつ
化学式(I):
【化1】

(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
およびRは、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(II):
【化2】

(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素基、水酸基、フェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
およびRは、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、
化学式(III):
【化3】

(式中、Rはフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
10、R11およびR12は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)、あるいは
化学式(IV):
【化4】

(式中、R13はフェニル基、フェノール基若しくはアリール基を示し、
14、R15およびR16は、同一または異なって、水素基、水酸基若しくはメトキシル基を示す)
で表される化合物にプレニル基を導入する酵素活性を示す膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項2】
YxxxxxxxG*AT、LxFxIGWLQ、(S/A)Gxx(S/T)FR, TxPxxxxFCxxIおよびAEYxxxPLFからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列モチーフを有する、請求項1記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項3】
プレニルドナーとしてジメチルアリルジホスフェート(DMAPP)を基質とする、請求項1に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項4】
以下の(a)又は(b)のポリペプチド:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(b)配列番号1において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項5】
以下の(c)又は(d)のポリペプチド:
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(d)配列番号3において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項6】
以下の(e)又は(f)のポリペプチド:
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(f)配列番号5において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項7】
以下の(g)又は(h)のポリペプチド:
(g)配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(h)配列番号7において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項8】
以下の(i)又は(j)のポリペプチド:
(i)配列番号9のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(j)配列番号9において、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有し、かつ、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項9】
植物由来である、請求項1〜8のいずれかに記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項10】
植物が、マメ科、クワ科、オトギリソウ科、ミカン科、セリ科、キク科またはアサ科またはホップから選択される、請求項9に記載の膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項11】
以下の(k)又は(l)に示すDNAからなる遺伝子:
(k)配列番号2の塩基配列からなるDNA、
(l)配列番号2に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
【請求項12】
以下の(m)又は(n)に示すDNAからなる遺伝子:
(m)配列番号4の塩基配列からなるDNA、
(n)配列番号4に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
【請求項13】
以下の(o)又は(p)に示すDNAからなる遺伝子:
(o)配列番号6の塩基配列からなるDNA、
(p)配列番号6に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
【請求項14】
以下の(q)又は(r)に示すDNAからなる遺伝子:
(q)配列番号8の塩基配列からなるDNA、
(r)配列番号8に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
【請求項15】
以下の(s)又は(t)に示すDNAからなる遺伝子:
(s)配列番号10の塩基配列からなるDNA、
(t)配列番号10に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ膜結合性プレニルトランスフェラーゼをコードするDNA。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれかに記載の遺伝子と少なくとも70%以上の相同性を有する塩基配列からなる遺伝子。
【請求項17】
請求項11〜16のいずれかに記載の遺伝子を含むベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターを保持する形質転換体。
【請求項19】
請求項18記載の形質転換体を培養し、その形質転換体および/またはその培養物から膜結合性プレニルトランスフェラーゼを採取する工程を含んでなる膜結合性プレニルトランスフェラーゼの調製方法。
【請求項20】
形質転換体が酵母又は植物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項11〜16のいずれかに記載の遺伝子によってコードされる膜結合性プレニルトランスフェラーゼ。
【請求項22】
配列表の配列番号2、4、6、8または10のいずれかに記載の塩基配列あるいはその一部を含んでなる塩基配列との相同性を利用することによって、膜結合性プレニルトランスフェラーゼ遺伝子を単離する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−220304(P2008−220304A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65505(P2007−65505)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(591045471)アピ株式会社 (59)
【Fターム(参考)】