説明

膨張剤を使用した、ヘーズの低減した抗菌コンタクトレンズの作成

本発明は、金属を含有する抗菌レンズ、およびその生産方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、抗菌レンズを作成する方法に関する。
【0002】
〔関連出願〕
本出願は、2007年3月30日に提出された米国特許出願第60/909,009号の本出願であり、当該出願の優先権を主張するものである。
【0003】
〔発明の背景〕
1950年代以来、コンタクトレンズは、視力を改善するために、商業的に使用されてきた。最初のコンタクトレンズは、硬質材料で作製された。これらのレンズは、起きている時間に患者によって使用され、洗浄するために取り外された。当分野での現在の開発により、ソフトコンタクトレンズがもたらされ、これらのソフトコンタクトレンズは、洗浄するために取り外すことなく、数日間またはそれ以上の間、継続的に装着されてよい。多くの患者は、増加した快適性を理由にこれらのレンズを好むが、これらのレンズは、ある有害反応を使用者にもたらし得る。レンズの長期の使用は、ソフトコンタクトレンズの表面における細菌または他の微生物、特に緑膿菌の増加を促し得る。細菌および他の微生物の増加は、コンタクトレンズによる急性充血などの副作用をもたらし得る。細菌および他の微生物の問題は、かなり多くの場合、ソフトコンタクトレンズの長期の使用に関連するが、細菌および他の微生物の増加は、ハードコンタクトレンズの着用者である使用者にも、同様に起こる。
【0004】
米国特許第5,820,918号は、防腐性または放射線不透過性の化合物など、水性溶液中での低い可溶性を有する医療用化合物(medical compound)を備えた、水吸収性ポリマー材料から作製された医療器具を開示している。しかしながら、この例で開示される処置は、コンタクトレンズなどの眼用器具には適さない不透明な器具を生成する。
【0005】
したがって、コンタクトレンズの表面における、細菌もしくは他の微生物の増殖、および/または、細菌もしくは他の微生物の付着を抑制するコンタクトレンズを生産する必要性がある。さらに、コンタクトレンズの表面における細菌または他の微生物の付着および/または増殖を促進しないコンタクトレンズを生産する必要性がある。また、細菌または他の微生物の増殖に関する有害な反応を抑制するコンタクトレンズを生産する必要性がある。さらには、レンズを通して使用者が明瞭に見ることができるようにするのに適した透明な当該レンズを生産するように、前述のコンタクトレンズを生産する必要性がある。これらの必要性は、以下の発明によって達成される。
【0006】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、金属塩を具備する抗菌レンズを作成する方法を含み、前記方法は、
(a)塩前駆体および膨張剤を具備する溶液で、硬化レンズを処理するステップと、
(b)膨張剤を具備する溶液で、ステップ(a)の前記レンズを、適切な期間、処理するステップと、
(c)金属物質および膨張剤を具備する溶液で、ステップ(b)の前記レンズを処理するステップと、
を具備する。
【0007】
本明細書で使用される場合、用語「抗菌レンズ」は、以下の特性、つまり、レンズへの細菌または他の微生物の付着の抑制、レンズにおける細菌または他の微生物の増殖の抑制、および、レンズの表面またはレンズを取り囲む領域における細菌または他の微生物の殺菌のうちの、1つ以上の特性を呈するレンズを意味する。本発明の目的のため、レンズへの細菌または他の微生物の付着、レンズにおける細菌または他の微生物の増殖、および、レンズの表面における細菌または他の微生物の存在は、総じて「微生物定着(microbial colonization)」として称される。好ましくは、本発明のレンズは、少なくとも約0.25log、より好ましくは少なくとも約0.5log、最も好ましくは少なくとも約1.0log(90%以上の抑制)の、生存可能な細菌または他の微生物の低減を呈する。このような細菌または他の微生物には、限定することなく、眼の中に見いだされる有機的生物、特に、緑膿菌、アカントアメーバ種、黄色ブドウ球菌、大腸菌、表皮ブドウ球菌、およびセラチアマルセッセンス(Serratia marcesens)が含まれる。
【0008】
本明細書で使用される場合、「膨張剤」は、レンズのサイズを増加させる物体を指す。本明細書で以下に定義されるように、本発明のレンズは、レンズが硬化した後に水を吸収する。この水の吸収は、水平衡化した寸法(water equilibrated dimentions)(つまり、直径、含水量)を有するレンズをもたらす。これらの寸法は、レンズ調合剤の組成によって異なる。膨張剤は、レンズが硬化した後、または、レンズが水を吸収して、水平衡化した寸法に達した後に、レンズに使用されてよい。このような膨張剤は、水平衡化したレンズの寸法を上回るようにレンズの寸法を増加させる。本発明の膨張剤は、水平衡化したレンズ寸法まで水を吸収してしまったレンズを処理するために使用されることが好ましい。膨張剤の例には、限定することなく、参照によって本明細書に組み込まれる、「Solvents Useful in the Preparation of Polymers Containing Hydrophilic and Hydrophobic Monomers」と題する米国特許第7,112,652号に開示されるような抽出用溶媒が含まれる。具体的に、膨張剤の例には、限定することなく、水性イソプロパノール、水性プロピレングリコール、エチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル(proplyene glycol phenyl ether)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、およびジプロピレングリコールジメチルエーテル(diproplyeneglycol dimethyl ether)が含まれる。好ましい膨張剤は、約30%〜約70%の水性イソプロパノール、および約30%〜約70%の水性プロピレングリコールであり、特に好ましい膨張剤は、約30%〜約70%の水性イソプロパノール、より好ましくは50%の水性イソプロパノールである。膨張剤は、ステップ(a)の後のレンズのサイズを超えてまではレンズのサイズを増加させないことが好ましい。
【0009】
本明細書で使用される場合、用語「金属塩」は、一般式[M]a [X]bを有する任意の分子を意味し、式中、Xは負の電荷を帯びた任意のイオンを含有し、aは1以上であり、bは1以上であり、Mは、限定することなく以下のAl+3、Co+2、Co+3、Ca+2、Mg+2、Ni+2、Ti+2、Ti+3、Ti+4、V+2、V+3、V+5、Sr+2、Fe+2、Fe+3、Au+2、Au+3、Au+1、Pd+2、Pd+4、Pt+2、Pt+4、Cu+1、Cu+2、Mn+2、Mn+3、Mn+4、およびZn+2などから選択される、正の電荷を帯びた任意の金属である。Xの例には、限定することなく、CO32、NO31、PO43、Cl1、I1、Br1、S2、およびO2などが含まれる。さらに、Xには、C15alkylCO21など、CO32、NO31、PO43、Cl1、I1、Br1、S2、およびO2などを含有する負の電荷を帯びたイオンが含まれる。本明細書で使用される場合、用語、金属塩は、国際公開第WO03/011351号に開示されるゼオライト(zeolites)は含まない。当該特許出願は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。好ましいaは、1、2または3である。好ましいbは、1、2または3である。好ましい金属イオンは、Mg+2、Zn+2、Cu+1、Cu+2、Au+2、Au+3、Au+1、Pd+2、Pd+4、Pt+2、Pt+4、Ag+2およびAg+1である。特に好ましい金属イオンは、Ag+1である。適する金属塩の例には、限定することなく、硫化マンガン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化銅、およびリン酸銅が含まれる。銀塩の例には、限定することなく、硝酸銀、硫酸銀、ヨウ素酸銀、炭酸銀、リン酸銀、硫化銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、および酸化銀が含まれる。好ましい銀塩は、ヨウ化銀、塩化銀、および臭化銀である。本発明のレンズは、眼用レンズ(これらのレンズの詳細な説明は以下)であり、レンズの透明性は使用者にとって重要である。
【0010】
レンズ中の金属の量は、レンズの総重量に基づいて測定される。金属が銀である場合、銀の好ましい量は、レンズの乾燥重量に基づいて、約0.00001重量%(0.1ppm)〜約10.0重量%、好ましくは約0.0001重量%(1ppm)〜約1.0重量%、最も好ましくは約0.001重量%(10ppm)〜約0.1重量%である。金属塩を加えることに関しては、金属塩の分子量が、金属塩に転換する金属イオンの重量%を決める。銀塩の好ましい量は、レンズの乾燥重量に基づいて、約0.00003重量%(0.3ppm)〜約30.0重量%、好ましくは約0.0003重量%(3ppm)〜約3.0重量%、最も好ましくは約0.003重量%(30ppm)〜約0.3重量%である。
【0011】
用語「溶液」は、塩前駆体を溶融する水性組成物または有機組成物を指す。好ましい溶液は水性である。溶液は、ホウ酸ナトリウム/ホウ酸、賦形剤、界面活性剤、湿潤剤などの緩衝された塩を含有してよい。用語「塩前駆体」は、金属イオンと置換し得る陽イオンを含有する任意の化合物または組成物を指す。溶液中の塩前駆体の濃度は、溶液の総重量に基づいて、約0.00001〜約10.0重量%(0.1〜100,000ppm)の間、より好ましくは約0.0001〜約1.0重量%(1〜10,000ppm)の間、最も好ましくは約0.001〜約0.1重量%(10〜1,000ppm)の間である。塩前駆体の例には、限定することなく、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫化ナトリウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、硫化リチウム、臭化カリウム、塩化カリウム、硫化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、臭化ルビジウム、塩化ルビジウム、硫化ルビジウム、ヨウ化セシウム、臭化セシウム、塩化セシウム、硫化セシウム、ヨウ化フランシウム、臭化フランシウム、塩化フランシウム、硫化フランシウム、およびテトラクロロ銀酸ナトリウム(sodium tetrachloro argentate)などの無機分子が含まれる。有機分子の例には、限定することなく、乳酸テトラアルキルアンモニウム(tetra-alkyl ammonium lactate)、硫酸テトラアルキルアンモニウム(tetra-alkyl ammonium sulfate)、塩化、臭化またはヨウ化テトラアルキルアンモニウム(tetra-alkyl ammonium chloride, bromide or iodide)などの第4級アンモニウムハロゲン化物(quaternary ammonium halides)が含まれる。好ましい塩前駆体は、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化チリウム、硫化リチウム、硫化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、およびテトラクロロ銀酸ナトリウム(sodium tetrachloro argentite)からなる群より選択され、特に好ましい塩前駆体は、ヨウ化ナトリウムである。
【0012】
用語「金属物質」は、金属イオンを含有する任意の組成物(水性溶液を含む)を指す。このような組成物の例には、限定することなく、硝酸銀、銀トリフレート、または酢酸銀、硫酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、硫酸銀、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸銅、および硫酸銅などの水性溶液または有機溶液が含まれ、溶液中の金属物質の濃度は、約1μg/mL以上である。好ましい金属物質は、水性硝酸銀であり、溶液中の硝酸銀の濃度は、溶液の総重量に基づいて、約0.0001以上〜約2重量%、より好ましくは約0.001より大きい〜約0.1重量%である。用語「処理すること」は、膨張剤、金属物質、または塩前駆体の任意の組み合わせを含有する溶液をレンズに接触させる任意の方法を指し、ここにおいて、好ましい方法は、レンズをそのような溶液に浸すことである。処理することは、レンズをそのような溶液中で加熱することを含み得るが、好ましい処理は、周囲温度およびそれ以下の温度で実行される。この処理の時間は、大体、約10秒〜約24時間、好ましくは約30秒〜約60分間、続き得る。ステップ(a)に関してもまた、処理することは、周囲温度で行われるのに続いて、より低い温度で行われるのが好ましい。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「レンズ」は、眼の中または上に置かれる眼用器具を指す。これらの器具は、視力矯正、傷の治療、薬物送達、診断上の実用性、美容的向上もしくは効果、またはそれら特性の組み合わせを提供し得る。用語、レンズには、限定することなく、水を吸収することのできる材料で作製されたコンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、目用インサート、涙点プラグ(punctual plugs)、および光学インサートが含まれる。レンズは、シリコーンヒドロゲルおよびフルオロヒドロゲルを限定することなく含むヒドロゲルから作製されてよい。
【0014】
例えば、用語、レンズには、限定することなく、米国特許第5,710,302号、国際公開第WO9421698号、欧州特許第406161号(EP 406161)、JP 2000016905、米国特許第5,998,498号、米国特許出願第09/532,943号、米国特許第6,087,415号、米国特許第5,760,100号、米国特許第5,776,999号、米国特許第5,789,461号、米国特許第5,849,811号、および米国特許第5,965,631号に記載されるソフトコンタクトレンズ調合剤から作製されたレンズが含まれる。加えて、本発明の金属塩が、市販のソフトコンタクトレンズに加えられてよい。ソフトコンタクトレンズ調合剤の例には、限定することなく、エタフィルコンA(etafilcon A)、ゲンフィルコンA(genfilcon A)、レネフィルコンA(lenefilcon A)、ポリマコン(polymacon)、アクアフィルコンA(acquafilcon A)、バラフィルコンA(balafilcon A)、ガリフィルコンA(galyfilcon A)、セノフィルコンA(senofilcon A)、およびロトラフィルコンA(lotrafilcon A)の調合剤が含まれる。好ましいレンズ調合剤は、エタフィルコンA、バラフィルコンA、アクアフィルコンA、ガリフィルコンA、ロトラフィルコンA、およびシリコーンヒドロゲルであり、このシリコーンヒドロゲルは、米国特許第5,998,498号、米国特許出願第09/532,943号、2000年8月30日提出の、米国特許出願第09/532,943号の一部継続出願、国際公開第WO03/22321号、米国特許第6,087,415号、米国特許第5,760,100号、米国特許第5,776,999号、米国特許第5,789,461号、米国特許第5,849,811号、および米国特許第5,965,631号にあるように作成される。本段落において開示されたこれらの特許および他の全ての特許は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0015】
好ましくは、金属塩は、シリコーンヒドロゲル要素から作製されたレンズに加えられる。シリコーン含有要素は、モノマー、マクロマー、またはプレポリマーにおいて、少なくとも1つの[-Si-O-Si]基を含有する要素である。好ましくは、Siおよび付着したOは、シリコーン含有要素の総分子量の20重量%より多い量で、より好ましくは30重量%より多い量で、シリコーン含有要素中に存在する。有用なシリコーン含有要素は、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、およびスチリル官能基などの重合可能な官能基を具備する。シリコーンヒドロゲル調合剤に含まれてよいシリコーン要素の例には、限定することなく、シリコーンマクロマー、プレポリマーおよびモノマーが含まれる。シリコーンマクロマーの例には、限定することなく、米国特許第4,259,467号、同第4,260,725号および同第4,261,875号に記載されるような、親水性ペンダント基でメタクリル化されたポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane methacrylated with pendant hydrophilic groups)、米国特許第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,189,546号、同第4,182,822号、同第4,343,927号、同第4,254,248号、同第4,355,147号、同第4,276,402号、同第4,327,203号、同第4,341,889号、同第4,486,577号、同第4,605,712号、同第4,543,398号、同第4,661,575号、同第4,703,097号、同第4,837,289号、同第4,954,586号、同第4,954,587号、同第5,346,946号、同第5,358,995号、同第5,387,632号、同第5,451,617号、同第5,486,579号、同第5,962,548号、同第5,981,615号、同第5,981,675号、および同第6,039,913号に記載される、重合可能な1つ以上の官能基を備えたポリジメチルシロキサンマクロマー、米国特許第5,010,141号、同第5,057,578号、同第5,314,960号、同第5,371,147号、および同第5,336,797号に記載されるような、親水性モノマーを組み込んだポリシロキサンマクロマー、米国特許第4,871,785号および同第5,034,461号に記載されるような、ポリジメチルシロキサンブロックおよびポリエーテルブロックを具備するマクロマー、およびそれらの組み合わせなどが含まれる。本明細書に引用される全ての特許は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0016】
米国特許第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,807,944号、同第5,965,631号、および同第5,958,440号に記載される、シリコーンおよび/またはフッ素含有マクロマー(The silicone and/or fluorine containing macromers)もまた使用されてよい。適するシリコーンモノマーには、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(tris(trimethylsiloxy)silylpropyl methacrylate)、ヒドロキシル官能シリコーン含有モノマー(hydroxyl functional silicone containing monomers)、例えば3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(3-methacryloxy-2-hydroxypropyloxy)propylbis(trimethylsiloxy)methylsilane)、および、国際公開第WO03/22321号に開示されるもの、ならびに、米国特許第4,120,570号、同第4,139,692号、同第4,463,149号、同第4,450,264号、同第4,525,563号、同第5,998,498号、同第3,808,178号、同第4,139,513号、同第5,070,215号、同第5,710,302号、同第5,714,557号、および同第5,908,906号に記載される、mPDMS含有もしくはシロキサンモノマー(mPDMS containing or the siloxane monomers)が含まれる。
【0017】
追加的な適するシロキサン含有モノマーには、米国特許第4,711,943号に記載されるTRISのアミド類似体、米国特許第5,070,215号に記載されるビニルカルバメートまたはカルボネート類似体、および、米国特許第6,020,445号に含まれるモノマー、モノメタクリルオキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン(monomethacryloxypropyl terminated polydimethylsiloxanes)、ポリジメチルシロキサン、3-メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(3methacryloxypropylbis(trimethylsiloxy)methylsilane)、メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン(methacryloxypropylpentamethyl disiloxane)、ならびに、それらの組み合わせが含まれる。本出願において言及される全ての参考文献は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「適切な時間」は、ステップ(a)の後に、ステップ(b)の溶液がレンズに接触する継続時間を指す。好ましい適切な時間は、約10秒〜約30秒、最も好ましくは約20秒である。
【0019】
本発明の方法によって生産される眼用器具は最小限の量のヘーズ(haze)をともなって金属塩を組み込むことが見出されている。好ましくは、本発明のレンズは、光学的に透明であり、エタフィルコンA、ゲンフィルコンA、ガリフィルコンA、レネフィルコンA、ポリマコン、アクアフィルコンA、バラフィルコンA、およびロトラフィルコンAから作製されるレンズなどのレンズに匹敵する光学的透明性を備える。具体的には、本発明のレンズは、約100%未満、好ましくは約50%未満、より好ましくは約25%未満、さらに好ましくは20%未満、さらに好ましくは約15%未満の間のヘーズ率を有する。
【0020】
ヘーズの割合は、以下の方法を使用して測定される。ホウ酸塩緩衝生理食塩水(borate buffered saline)(SSPS)中の水和されたテストレンズが、周囲温度において単調な黒の背景上で20X40X10mmの透明なガラスセルに設置され、光ファイバー照明具(4〜5.4の動力設定(power setting)に設定した直径0.5インチ(12.7mm)のライトガイドを備える、Titan Tool Supply Co.の光ファイバーライト)を用いてレンズセルに対して66度の角度で交わるように下から照明し、レンズ台の14mm上に設置したビデオカメラ(Navitar TV Zoom 7000 ズームレンズを備えたDVC 1300C:19130 RGB カメラ)で、レンズセルに対して垂直に上からレンズの画像を撮影する。EPIX XCAP V 1.0 ソフトウェアを使用して空白セルの画像を除去することによって、レンズの散乱から背景の散乱が除去される。除去された散乱した光画像は、レンズの中心10mmの上方での統合(integrating)によって、および、次に、ヘーズ値0としてレンズが設定されないように、ヘーズ値100に任意に設定された−1.00ジオプターのCSI Thin Lens(登録商標)との比較によって、量的に分析される。5つのレンズが分析され、標準的なCSIレンズのヘーズ値を割合として生成するよう結果が平均化される。
【0021】
用語「硬化」は、レンズ要素(つまり、モノマー、プレポリマー、マクロマーなど)の混合物を反応させてレンズを形成するために使用されるいくつかの方法のうちのいずれかを指す。レンズは、光または熱によって硬化され得る。硬化の好ましい方法は、放射線、好ましくは紫外光または可視光、最も好ましくは可視光を用いるものである。本発明のレンズ調合剤は、振動または撹拌など当業者に既知の方法のうちのいずれかによって形成され得、既知の方法によってポリマーの物品または器具を形成するために使用され得る。
【0022】
例えば、本発明の抗菌レンズは、反応性要素および任意の1つ以上の希釈剤を重合開始剤と混合させることによって、かつ、旋盤および切断などで適切な形状へと後に形成され得る製品を形成するための適切な条件により硬化することによって、作成されてよい。代替的に、反応混合物は、鋳型に設置され、続いて、適切な物品へと硬化されてよい。
【0023】
回転鋳造および静的鋳造を含め、コンタクトレンズの生産におけるレンズ調合剤を加工するための様々なプロセスが知られている。回転鋳造方法は、米国特許第3,408,429号、および同第3,660,545号に開示され、静的鋳造方法は、米国特許第4,113,224号、および同第4,197,266号に開示されている。本発明の抗菌レンズを生産するための好ましい方法は、成型による。ヒドロゲルレンズの場合、この方法では、レンズ調合剤が、最終的な所望のレンズの適切な形状を有する鋳型に設置され、レンズ調合剤は、要素が重合する条件を受けて、固まったディスクを生産し、このディスクは、重合したレンズを液体(水、無機塩類または有機溶液など)で処理するステップを含むいくつかの異なる加工ステップを受け、最終的な梱包においてレンズを包囲する前にこのレンズを膨張させるか、または別様に平衡化させる。これらの方法は、米国特許第4,495,313号、同第4,680,336号、同第4,889,664号、および同第5,039,459号にさらに記載され、これら特許は参照によって本明細書に組み込まれる。膨張または別様に平衡化されてしまっていない重合したレンズは、本発明の目的において、硬化レンズとみなされる。
【0024】
追加的な要素が、本発明のステップのうちの1つ以上に加えられてよい。参照によって本明細書に組み込まれる、「Processes to Prepare Antimicrobial Contact Lenses」と題する米国特許出願第11/924,694号に記載されるような分散剤(Dispersing agent)が、そのような要素の例を含む。好ましい分散剤には、限定することなく、ポリビニルピロリドン(「PVP」)、ポリビニルアルコール(「PVA」)、および誘導体、グリセリン、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニル-N-メチルアセトアミド)(poly(N-vinyl-N-methylacetamide))、システイン、メチオニン、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ならびにチオシアン酸ナトリウムが含まれる。溶液中の分散剤の濃度は、米国特許出願第11/924,694号に開示されるような濃度である。特に好ましい分散剤は、PVP、とりわけPVPK90である。
【0025】
本発明の方法の実施例は以下のとおりである。セノフィルコンAレンズが、硬化および脱イオン水での水和の後に製造ラインから取り出される。レンズはヨウ化ナトリウムを含有する水性溶液(1000ppm)および50%水性イソプロパノール溶液に浸漬される。レンズは、上述の溶液中に約20分間、25℃で維持され、さらに20分間、0℃に冷却される。レンズは、溶液から取り除かれ、約20〜30秒間、50%水性イソプロパノールの溶液ですすがれる。レンズは、前記溶液から取り除かれ、約5分間、50%水性イソプロパノールおよび5%水性硝酸銀の溶液中に設置される。レンズは、これら溶液から取り除かれ、ホウ酸塩緩衝梱包用溶液(1.4%の硫酸ナトリウムと30ppmのメチルセルロース、pH7.3)ですすがれる。これらのレンズは、15〜20μgの銀および約20%のヘーズ値を含む。
【0026】
さらに、本発明は、ある方法によって作製される、金属塩を具備する抗菌レンズを含み、この方法は、
(a)塩前駆体および膨張剤を具備する溶液で、硬化レンズを処理するステップと、
(b)膨張剤を具備する溶液で、ステップ(a)の前記レンズを、適切な時間、処理するステップと、
(c)金属物質および膨張剤を具備する溶液で、ステップ(b)の前記レンズを処理するステップと、
を具備する。
【0027】
用語、抗菌レンズ、金属塩、塩前駆体、金属物質、膨張剤、溶液、適切な時間、および処理することは、全てそれらの前述の意味および好ましい範囲を有する。
【0028】
本発明の前述の方法および器具は、本発明を例証すること、および、本発明を具現化する方法および器具を示唆することを意図している。コンタクトレンズおよび他の専門品に見識のある者であれば、本発明を実践する他の方法を見出すことができる。しかしながら、それらの方法は、本発明の範囲の内にあるものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩を具備する抗菌レンズを作成する方法において、
(a)塩前駆体および膨張剤を具備する溶液で、硬化レンズを処理するステップと、
(b)膨張剤を具備する溶液で、ステップ(a)の前記レンズを、適切な期間、処理するステップと、
(c)金属物質および膨張剤を具備する溶液で、ステップ(b)の前記レンズを処理するステップと、
を具備する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記膨張剤は、米国特許第7,112,652号に開示されるような抽出用溶媒からなる群より選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記膨張剤は、水性イソプロパノール、または水性プロピレングリコールである、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記膨張剤は、約30%〜約70%の水性イソプロパノールである、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記膨張剤は、50%の水性イソプロパノールである、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記膨張剤は、水性プロピレングリコールである、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記塩前駆体は、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫化ナトリウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、硫化リチウム、臭化カリウム、塩化カリウム、硫化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、臭化ルビジウム、塩化ルビジウム、硫化ルビジウム、ヨウ化セシウム、臭化セシウム、塩化セシウム、硫化セシウム、ヨウ化フランシウム、臭化フランシウム、塩化フランシウム、硫化フランシウム、および、テトラクロロ銀酸ナトリウムからなる群より選択される、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記塩前駆体は、ヨウ化ナトリウムである、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記金属物質は、硝酸銀、銀トリフレート、または酢酸銀、硫酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、硫酸銀、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸銅、および硫酸銅からなる群より選択される、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記金属物質は、硝酸銀である、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記適切な時間は、約10〜約40秒である、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
前記適切な時間は、約20〜約30秒である、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
ステップ(a)、ステップ(b)およびステップ(c)の前記溶液のうちの1つ以上は、分散剤を具備する、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、および誘導体、グリセリン、ポリエチレンオキシド、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニル-N-メチルアセトアミド)、システイン、メチオニン、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ならびにチオシアン酸ナトリウムからなる群より選択される、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、
前記分散剤は、ポリビニルピロリドンK90である、方法。
【請求項16】
ある方法によって作製される、金属塩を具備する抗菌レンズにおいて、
前記方法は、
(a)塩前駆体および膨張剤を具備する溶液で、硬化レンズを処理するステップと、
(b)膨張剤を具備する溶液で、ステップ(a)の前記レンズを、適切な時間、処理するステップと、
(c)金属物質および膨張剤を具備する溶液で、ステップ(b)の前記レンズを処理するステップと、
を具備する、抗菌レンズ。
【請求項17】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記膨張剤は、水性イソプロパノール、または水性プロピレングリコールである、抗菌レンズ。
【請求項18】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記膨張剤は、約30%〜約70%の水性イソプロパノールである、抗菌レンズ。
【請求項19】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記膨張剤は、50%の水性イソプロパノールである、抗菌レンズ。
【請求項20】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記膨張剤は、水性プロピレングリコールである、抗菌レンズ。
【請求項21】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記塩前駆体は、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫化ナトリウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、硫化リチウム、臭化カリウム、塩化カリウム、硫化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、臭化ルビジウム、塩化ルビジウム、硫化ルビジウム、ヨウ化セシウム、臭化セシウム、塩化セシウム、硫化セシウム、ヨウ化フランシウム、臭化フランシウム、塩化フランシウム、硫化フランシウム、および、テトラクロロ銀酸ナトリウムからなる群より選択される、抗菌レンズ。
【請求項22】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記塩前駆体は、ヨウ化ナトリウムである、抗菌レンズ。
【請求項23】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記金属物質は、硝酸銀、銀トリフレート、または酢酸銀、硫酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、硫酸銀、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸銅、および硫酸銅からなる群より選択される、抗菌レンズ。
【請求項24】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記金属物資は、硝酸銀である、抗菌レンズ。
【請求項25】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記適切な時間は、約10〜約40秒である、抗菌レンズ。
【請求項26】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記適切な時間は、約20〜約30秒である、抗菌レンズ。
【請求項27】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
ステップ(a)、ステップ(b)およびステップ(c)の前記溶液のうちの1つ以上は、分散剤を具備する、抗菌レンズ。
【請求項28】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、および誘導体、グリセリン、ポリエチレンオキシド、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニル-N-メチルアセトアミド)、システイン、メチオニン、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ならびにチオシアン酸ナトリウムからなる群より選択される、抗菌レンズ。
【請求項29】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記分散剤は、ポリビニルピロリドンK90である、抗菌レンズ。
【請求項30】
請求項16に記載の抗菌レンズにおいて、
前記膨張剤は、米国特許第7,112,652号に開示されるような抽出用溶媒からなる群より選択される、抗菌レンズ。

【公表番号】特表2010−524017(P2010−524017A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501180(P2010−501180)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/058224
【国際公開番号】WO2008/121644
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】