説明

膵臓疾患を治療する自律神経刺激

膵臓疾患を治療するために患者の迷走神経の一部を刺激する方法を提供する。少なくとも一つの電極が患者の自律神経の少なくとも一部に連結される。前記一部は胸内臓神経、上腸間膜動脈神経叢、及び腹腔神経叢を含む。電気信号が電極を用いて迷走神経の一部に印加されることで膵臓疾患を治療する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に埋込式医療装置に関し、より詳細には自律神経刺激を使用して膵臓疾患を治療する方法、装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体神経系(HNS)は、集合的に中枢神経系(CNS)として知られる脳と脊髄を含む。中枢神経系は神経繊維からなる。人体の残りの部分の神経ネットワークは、末梢神経系(PNS)を構成する。脳神経として知られるいくつかの末梢神経は、脳に直接繋がっており、視力、眼球運動、聴力、顔面運動、感覚などの様々な脳機能を制御する。自律神経系(ANS)として知られる末梢神経の別の神経系は、血管径、腸運動、および多くの内臓の活動を制御する。自律機能には、血圧、体温、鼓動、および自発的制御なしに行われる実質的にすべての非自発的活動がある。
【0003】
人体神経系の他の部分と同じように、神経信号は、脳を人体の他の部分に連結する末梢神経を上下に伝わる。脳や末梢神経内の神経路又は経路は、ミエリンと呼ばれる被覆で覆われている。ミエリン鞘は、神経に沿って伝わる電気パルスを絶縁する。神経束は、ミエリン鞘のある大きい径のAおよびB繊維と、それより径が小さくミエリン鞘のないC繊維とを含む様々なタイプの100,000本を超える個別の神経繊維からなることがある。神経繊維の様々なタイプには、例えば、様々なサイズ、伝導速度、刺激閾値、およびエミリン形成状態(即ち、エミリン鞘があるかないか)がある。
【0004】
膵臓は、平均的な人で長さ約6インチ(約15センチメートル)の比較的小さな器官である。膵臓は、腹部上側の近くにあり、小さな内部領域に繋がっている。膵臓は、身体後部の背骨の近くにある。膵臓の位置が深いため、膵臓に関連する疾病の診断が難しい。研究者は、膵臓に関連する疾患の最新の診断と治療を改善しようとしている。
【0005】
膵臓は、後で腸から身体に吸収することができるタンパク質、脂肪および炭水化物の消化を助ける酵素を生成する。更に、膵臓は、インシュリンを作成するエンドルフィン細胞部分を生成する。インシュリンは、一般に、身体の主なエネルギー源の使用量と貯蔵を調整する。このエネルギー源はグルコースである。従って、膵臓は、身体内で外分泌機能と内分泌機能の2つの大きな役割を果たす。
【0006】
膵臓は、2種類の組織を収容しており、それらの組織は、複数クラスタの内分泌細胞と外分泌腺組織およびそれと関連した管である。そのような管は、小腸に送られて消化プロセスを助ける消化酵素を含むアルカリ性液体を生成する。外分泌組織全体には、インシュリン、グリコーゲンおよび様々なホルモンを生成する内分泌細胞の様々なクラスタが分散している。インシュリンとグリコーゲンは、血糖値の調整物質として働くきわめて重要な成分である。例えば、インシュリンは、主に、血液中の血糖値が高くなったときに分泌される。そして、インシュリンは、血液中の血糖値を下げるように反応する。インシュリンのこの制御は膵臓によって行われ、血糖値が調整される。不適当なレベルのインシュリンの生成と関連する1つの疾病は糖尿病である。
【0007】
また、外分泌腺の分泌物の適切な機能を妨げる膵臓の他の障害が起こることもある。しかしながら、血糖値障害に至る膵臓の内分泌腺機能と関連する障害はより一般的である。膨大な数の患者が膵臓と関連した疾病に起因する血糖値障害に苦しんでいると推測される。膵臓と関連した疾病は、ホルモンや人工インシュリンなどの様々な薬や生物学的化合物を使って治療されることが多い。最新の治療と関連する1つの問題点に、これらの疾病を治療するために使用される薬に対して多くの人々が抱く抵抗感がある。更に、ホルモン療法や他の治療は、極めて望ましくない様々な副作用を引き起こすことがある。更に、従来の治療は、特定の患者に限られた結果しか提供しない場合がある。薬物療法、侵襲性医療処置および/又はホルモン療法の他に、そのような病気および疾病に効果のある治療はかなり限られている。
【0008】
本発明は、前述の問題のうちの1つ又は複数の問題の影響を克服しあるいは少なくとも軽減することを対象とする。
【特許文献1】米国特許第4,867,164号公報
【発明の開示】
【0009】
1つの態様において、本発明は、患者の自律神経を刺激して膵臓疾患を治療する方法を含む。少なくとも1つの電極は、腹腔神経叢の少なくとも一部分に連結される。電気信号は膵臓疾患を治療するために電極を使用して、腹腔神経叢の一部分に印加される。
【0010】
別の態様では、膵臓疾患を治療するために患者の迷走神経の一部分を刺激する別の方法が提供される。少なくとも1つの電極は、患者の腹腔神経叢の少なくとも一部分に連結される。電気信号発生器が提供される。信号発生器は、少なくとも1つの電極に連結される。電気信号発生器を使用して電気信号が生成される。電気信号は、膵臓疾患を治療するために電極に印加される。
【0011】
更に別の態様において、患者の迷走神経の一部分を刺激して膵臓疾患を治療する別の方法が提供される。前記迷走神経の腹腔神経叢の少なくとも一部分、上腸間膜動脈神経叢、又は患者の胸内臓神経に少なくとも1つの電極が連結される。膵臓疾患を治療するために電極を使用して迷走神経の少なくとも1つの分枝に電気信号が印加される。
【0012】
本発明は、類似の参照番号が類似の要素を指す添付図面と関連して解釈される以下の説明を参照することによって理解することができる。
【0013】
本発明は様々な修正と代替が可能であるが、その特定の実施形態は、図面に例として示されており、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、特定の実施形態に関する本明細書での説明は、開示した特定の形態に本発明を限定するものではなく、それとは逆に、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神と意図の範囲内にある全ての修正物、等価物および代替物を対象として含むことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書において本発明の説明的実施形態を説明する。明瞭にするために、実際の実施態様のすべての特徴を本明細書で説明するわけではない。そのような実際の実施形態の開発においては、実施態様によって異なる設計固有の目標を達成するために、実施態様固有の多数の決定を行わなければならない。そのような開発労力は、恐らく複雑で時間がかかるが、この開示から利益を得る当業者には日常的な作業であることを理解されたい。
【0015】
以下の説明全体にわたって特定の用語が使用され、特許請求の範囲は、特定のシステム構成要素に言及する。構成要素が様々な名前で呼ばれることがあることを当業者は理解するであろう。本明細書は、名前が異なるが機能が同じ構成要素を区別しない。以下の考察と特許請求の範囲において、用語「含む」と「有する」は、拡張可能に使用され、したがって、「including, but not limited to....(…を含むがこれに限定されない)」を意味するように解釈されるべきである。また、用語「連結する(couple又はcouples)」は、間接と直接どちらの電気接続も意味する。例えば、第1の装置が第2の装置に繋がっている場合、その接続は、直接電気接続でもよく、他の装置、生物学的組織又は磁界を介した間接電気接続でもよい。「直接接触」、「直接取り付け」、又は「直接連結」を提供するとは、第1の要素の表面が第2の要素の表面と、それらの間に実質的に減衰媒体なしに接触することを意味する。電気接続を実質的に減衰させない体液などの物質の存在は、直接接触を損なわない。単語「又は(or)」は、特に断らない限り、包括的な意味(すなわち、「および/又は(and/or)」で使用される。
【0016】
本発明の実施形態は、迷走神経の分枝、上腸間膜動脈神経叢、胸内臓神経などの自律神経の刺激による膵臓疾患の治療を提供する。
【0017】
脳神経刺激(Cranial nerve stimulation)は、例えばてんかんや他の運動障害、鬱病や他の神経精神障害、痴呆、昏睡、偏頭痛、肥満、摂食障害、睡眠障害、心臓病(鬱血心不全や心房細動など)、高血圧、内分泌障害(糖尿病や低血糖症など)および苦痛を含むいくつかの神経系疾患を治療するために有効に使用されてきた。例えば、米国特許第4,867,164号、第5,299,569、第5,269,303号、第5,571,150号、第5,215,086号、第5,188,104号、第5,263,480号、第6,587,719号、第6,609,025号、第5,335,657号、第6,622,041号、第5,916,239号、第5,707,400号、第5,231,988号、および第5,330,515号を参照されたい。脳神経刺激が前述の症状の適切な治療法の場合があるという認識にもかかわらず、多くの(全てではないが)脳神経の詳しい神経経路があまり分かっていないという事実によって、所定の疾患に対する効果の予測が困難になっている。更に、そのような経路が分かったとしても、特定の疾患に影響を及ぼす特定の経路にエネルギーを加える正確な刺激パラメータを予測するのは難しい。従って、これまで、脳神経刺激および具体的には迷走神経刺激を膵臓疾患の治療に使用することは適切と考えられていなかった。
【0018】
本発明の一実施形態における方法、装置およびシステムは、膵臓疾患に対する電気信号を使用して脳神経(例えば、迷走神経)などの自律神経を刺激する。神経上の「電気信号」は、患者の身体や環境によって生成されるのではなく、人工的供給源(例えば、埋込式神経刺激装置)から印加される電気活動(即ち、求心性活動電位および/又は遠心性活動電位)を指す。本明細書では、迷走神経(脳神経X)の刺激を使用して膵臓疾患を治療する方法を開示する。本発明の方法および装置に使用する神経刺激装置の適切な一般的形態は、例えば、本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第5,154,172号に開示されている。神経刺激装置は、ニューロサイバネティックプロステシス(Neurocybernetic Prosthesi)(本出願の譲受人であるNCPR, Cyberonics, Inc.、テキサス州ヒューストン)と呼ばれることがある。神経刺激装置によって生成される電気刺激の特定のパラメータは、埋込電気医療装置の従来の方式で外部プログラマなどによって設定可能である。
【0019】
本発明の実施形態は、膵臓と関連した疾病を治療するために自律神経の一部分に電気刺激を提供する。埋込式医療装置によって提供される電気刺激を利用して、低血糖症、高血糖症、他の糖尿病又は膵臓に関連した疾病などの病気を治療することができる。
【0020】
一般に、糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病の2つのカテゴリに分けることができる。1型糖尿病は、通常、子どもと十代の若年に見られるタイプの糖尿病である。1型糖尿病は、本来は終末糖尿病として知られていた。1型糖尿病では身体はインシュリンを生成しない。インシュリンは、身体が糖を使用できるようにするために必要である。1型糖尿病と関連した症状には、低血糖、高血糖、ケトアシドーシスおよび/又はセリアック病(celiac disease)がある。1型糖尿病に起因する合併症には、心疾患、網膜症、神経損傷、腎臓障害などがある。2型糖尿病は、より一般的な糖尿病である。2型糖尿病では、身体が十分なインシュリンを生成しないか細胞がインシュリンと反応しない。その結果、目、腎臓および神経および/又は心臓が損傷を受けることがある。本発明の実施形態によって提供される電気刺激は、膵臓と関連した疾病を治療するために、単独あるいは化学的刺激、生物学的刺激および/又は磁気刺激と組み合わせて使用することができる。
【0021】
膵臓と関連した疾病を治療するために、腹腔神経叢などの迷走神経の一部分を刺激して膵臓機能に影響を与えることができる。更に、胸内臓神経および/又は上腸間膜動脈神経叢を刺激して膵臓の活動に影響を与えて、膵臓と関連した疾病を治療することもできる。副交感神経系である迷走神経の一部分の刺激を使用して、膵臓の内分泌腺活動および/又は外分泌腺の活動の過剰反応を調整することができる。
【0022】
胸内臓神経などの交感神経の電気刺激を使用して、膵臓を刺激して膵臓の一部分に関連した活動レベルを高めることができる。このタイプの刺激を使用して、膵臓の内分泌腺の活動および/又は外分泌腺の活動を高めて膵臓と関連した疾病を治療することができる。迷走神経の様々な分枝および/又は胸内臓神経などの様々な神経から組み合わせた神経形成領域を刺激して膵臓を活性化することができる。この刺激を制御して膵臓の機能に影響を与え、膵臓と関連した疾病を治療することができる。更に、本発明の実施形態を使用して、膵臓と関連した疾病を治療するための化学的治療、磁気的治療、生物学的治療などの他の治療を強化することができる。
【0023】
次に図1に移ると、本発明の1つの説明的実施形態により、神経刺激を使用して患者の自律神経105などの神経を刺激して膵臓疾患を治療する埋込式医療装置(IMD)100が提供されている。用語「自律神経」は、脳神経繊維、左側脳神経および右側脳神経を含む脳神経の主幹部又は任意の分枝、および/又は人体の内臓の調整と関連した神経系の任意の部分を指す。IMD100は、自律神経105の神経枝120に電気信号115を送り、電気信号115は患者の脳125に伝わる。神経枝120は、患者の膵臓器官に電気信号115を提供する。神経枝120は、膵臓機能の副交感神経制御および/又は交感神経制御と関連した神経枝120の神経枝でよい。
【0024】
IMD100は、1つ又は複数の電極140(1〜n)に連結されたリード線135を介して神経枝120に電気信号115を送ることによって、神経刺激を印加することができる。例えば、IMD100は、電極140(1〜n)を使用して、迷走神経の腹腔枝および/又は胸内臓神経に繋がる神経枝120に電気信号115を印加することによって自律神経105を刺激することができる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、IMD100は、患者に電気神経刺激治療を提供することによって患者の膵臓機能と関連した病気、疾患又は症状を治療することができる神経刺激装置装置でよい。このタスクを達成するために、IMD100は、患者の適切な場所に埋め込まれてもよい。IMD100は、電気パルス信号からなる電気信号115を自律神経105に印加することができる。IMD100は、患者の低血糖症、高血糖症、他の糖尿病症状、ホルモン失調症および/又は他の膵臓に関連した疾病などの1つ又は複数の膵臓の特徴によって定義される電気信号115を生成することができる。これらの膵臓の特徴は、所定の範囲内の1つ又は複数の対応する値と比較されてもよい。IMD100は、電気信号115を自律神経105内の神経枝120又は神経束に印加することができる。電気信号115を印加することによって、IMD100は、患者の膵臓機能を治療又は制御することができる。
【0026】
本発明に使用することができる埋込式医療装置100は、特に迷走神経などの患者の自律神経を刺激するために、患者の神経構造を刺激することができる神経刺激装置などの様々な電気刺激装置のいずれかを含む。IMD100は、制御された電流の刺激信号を送出することができる。IMD100は、自律神経刺激の観点から、具体的には迷走神経刺激(VNS)の観点から説明するが、当業者は、本発明がそのように限定されないことを理解するであろう。例えば、IMD100は、他の自律神経、交感神経又は副交感神経、求心性および/又は遠心性神経、および/又は患者の1つ又は複数の脳構造などの他の神経組織の刺激に利用される。
【0027】
一般に認められている脳神経の臨床的な標識化において、第10脳神経は、脳125の基部から出る迷走神経である。迷走神経は、頭蓋骨の孔を通って頭、首および体幹の一部分に至る。迷走神経は、頭蓋骨から出て左枝と右枝に分岐する。左と右の迷走神経枝は、知覚神経繊維と運動神経繊維の両方を含む。迷走神経の知覚神経繊維の細胞体は、神経節群内の脳125の外側にあるニューロンに繋がり、迷走神経の運動神経繊維の細胞体は、脳125の灰白質内にあるニューロン142に繋がる。迷走神経は、末梢神経系(PNS)の一部である副交感神経である。脳神経の体性神経繊維は、意識的活動に関係し、CNSを皮膚と骨格筋に繋げる。そのような神経の自律神経繊維は、無意識活動に関係し、CNSを心臓、肺、胃、肝臓、膵臓、脾臓、腸などの内臓に繋げる。従って、迷走神経刺激(VNS)を提供するために、患者の迷走神経は片方だけあるいは両方とも刺激され、刺激電気信号がそれぞれ迷走神経の分枝の一方又は両方に印加される。例えば、電極140(1〜n)の連結は、電極を左迷走神経と右迷走神経から成るグループから選択された少なくとも1つの脳神経に連結することを含む。用語「連結する(coupling)」は、実際の固定や近くの配置などを含む場合がある。電極140(1〜n)は、患者の迷走神経の分枝に連結されてもよい。神経枝120は、左迷走神経主幹部、右迷走神経主幹部、迷走神経の腹腔枝、上腸間膜動脈神経叢および/又は胸内臓神経から成るグループから選択されてもよい。
【0028】
電気信号115を特定の自律神経105に印加することは、求心性活動電位、遠心性活動電位、求心性過分極(afferent hyperpolarization)、および遠心性過分極(efferent hyperpolarization)から成るグループから選択された応答を生成することを含む場合がある。IMD100は、膵臓疾患を治療するために遠心性活動電位を生成することができる。
【0029】
IMD100は、神経刺激を引き起こす電気信号115を生成するために動作可能に連結された電気信号発生器150とコントローラ155を含んでもよい。刺激発生器150は、電気信号115を生成することができる。コントローラ155は、膵臓疾患を治療するために、自律神経105に電気信号115を印加して患者の電気神経刺激治療を行うように適応されている。コントローラ155は、迷走神経を刺激する電気信号115を生成するように刺激発生器150を指示してもよい。
【0030】
電気信号115を生成するために、IMD100は、更に、バッテリ160、メモリ165、および通信インターフェース170を含んでもよい。より具体的には、バッテリ160は、再充電可能な電源バッテリからなってもよい。バッテリ160は、電子的操作と刺激機能を含むIMD100の動作のための電力を提供する。バッテリ160は、ある実施形態ではリチウム/塩化チオニル電池でよく、別の実施形態ではリチウム/一フッ化炭素電池でもよい。メモリ165は、一実施形態において、プログラムコードだけでなく、動作パラメータデータや状況データなどの様々なデータを記憶することができる。通信インターフェース170は、外部ユニットとの間で電子信号をやりとりを実現することができる。外部ユニットは、MD100をプログラムすることができる装置でよい。
【0031】
IMD100は、単一装置でも1対の装置でもよく、埋め込まれかつリード線135に電気的に連結されている。リード線135は、例えば迷走神経の左および/又は右の分枝に埋め込まれた電極140に連結される。一実施形態では、電極140(1〜n)は、1組の検出電極と離れた1組の刺激電極を備えてもよい。別の実施形態では、刺激し検出するために同じ電極が配置されてもよい。所定の応用例のために、必要に応じて、特定のタイプの電極又は組み合わせ電極が選択されてもよい。例えば、迷走神経に連結するのに適した電極が使用される。電極140は、バイポーラ刺激電極対を構成してもよい。本発明から利益を受ける当業者は、本発明において多くの電極設計を使用することができることを理解するであろう。
【0032】
電極140(1〜n)を使用することによって、刺激発生器150は、膵臓疾患のある患者に治療的神経刺激を提供するために、特定の自律神経105に所定の電気パルス列を印加することができる。特定の自律神経105は迷走神経でもよいが、電極140(1〜n)は、患者の迷走神経に埋め込んでその迷走神経を直接刺激する少なくとも1つの神経電極から構成されてもよい。あるいは、神経電極は、迷走神経を直接刺激するために患者の迷走神経の分枝に埋め込まれてもよくその分枝の近くに配置されてもよい。
【0033】
IMD100の特定の実施形態は、プログラム式電気信号発生器でよい。そのようなプログラム式電気信号発生器は、電気信号115をプログラム可能に定義することができる。IMD100は、電流の大きさ、パルス周波数およびパルス幅から成るグループから選択された少なくとも1つのパラメータを使用することによって、膵臓疾患を治療することができる。IMD100は、膵臓疾患の症状を検出することができる。徴候の検出に応じて、IMD100は、電気信号115の印加を開始することがある。例えば、膵臓疾患の症状を検出するセンサが使用される。膵臓疾患を治療するために、IMD100は、第1の治療期間に電気信号115を印加し、更に第2の治療期間に電極140を使用して自律神経105に第2の電気信号を印加してもよい。
【0034】
一実施形態において、この方法は、更に、膵臓疾患の症状の検出を含んでもよく、その場合、症状の検出に応じて自律神経105への電気信号115の印加が開始される。更に他の実施形態において、症状の検出は患者によって実行されてもよい。これは、患者が膵臓疾患の症状を経験しているという主観的観察を必要とする場合がある。代替又は追加として、症状は、患者に膵臓疾患検査を行うことによって検出されてもよい。
【0035】
この方法は、単一の治療処置で実行されてもよく複数の治療処置で実行されてもよい。本明細書において「治療処置(Treatment regimen)」は、例えば、電気信号115のパラメータ、信号を印加する持続時間、および/又は信号のデューティサイクルを指すことがある。一実施形態において、第1の治療期間に、自律神経105に電気信号115を印加し、更に、第2の治療期間に電極140を使用して第2の電気信号を脳神経に印加する段階を含むことができる。更に他の実施形態において、この方法は、膵臓疾患の症状を検出することを含み、その場合、第2の治療期間は症状を検出した時点で開始される。患者は、第1の慢性治療期間中に第1の電気信号を受け取り、第2の急性期治療期間中に第2の電気信号を受け取ることにより利益を得ることができる。医師が望ましいと考えた場合は、3つ以上の治療期間が使用されることがある。
【0036】
図2に、図1に示したIMD100の特定の実施形態を示す。この図に示したように、電極組立体225は、電極226、228などの複数の電極からなってもよく、本発明の説明的実施形態によれば迷走神経235などの自律神経105に連結されてもよい。リード線135は、胸と首の動きと共に曲がる能力を保持しながら、電極組立体225に連結され固定される。リード線135は、近くの組織に縫合接続によって固定されてもよい。電極組立体225は、自律神経105に電気信号115を送って、膵臓疾患を治療するのに望ましい神経刺激を引き起こすことができる。電極226、228を使用することにより、患者の身体200内で迷走神経235などの特定の脳神経を刺激することができる。
【0037】
図2は、首(頚部)領域の左迷走神経235を刺激するシステムを示しているが、本開示から利点を得る当業者は、神経刺激を行う電気信号105が、左迷走神経の他又は代わりに右頚部迷走神経に印加されてもよく、任意の自律神経に印加されてもよく、これは本発明の範囲内にあることを理解するであろう。1つのそのような実施形態において、リード線135と電極225の組立体は、実質的に前述のように、同じか又は異なる電気信号発生器に連結されてもよい。
【0038】
医療従事者は、特定の患者に外部プログラミングユーザインターフェース202を使用して、神経刺激装置205などのIMD100を最初にプログラムしかつ/又は後で再プログラムすることができる。神経刺激装置205は、プログラム式電気信号発生器150を備えてもよい。一連の電気パルスの電気的パラメータとタイミングパラメータを医者がプログラムできるようにするために、外部プログラミングシステム210は、コンピュータ、携帯情報端末(PDA)装置又は他の適切な計算処理装置などのプロセッサベースの計算処理装置を含んでもよい。
【0039】
外部プログラミングシステム210のユーザは、外部プログラミングユーザインターフェース202を使用して神経刺激装置205をプログラムすることができる。神経刺激装置205と外部プログラミングシステム210の間の通信は、当該技術分野で既知の様々な従来技術のいずれかを使用して達成することができる。神経刺激装置205は、ワンド(wand)などの外部プログラミングユーザインターフェース202と神経刺激装置205の間で信号を無線通信することを可能にするトランシーバ(コイルなど)を備えてもよい。
【0040】
ヘッダ220に導電性コネクタを備えたケース215を有する神経刺激装置205は、例えばペースメーカーパルス発生器を埋め込むように、患者の胸の皮膚のすぐ下に埋め込み手術によって形成されたポケット又は空洞内に埋め込まれてもよい。好ましくは電極対を含む刺激神経電極組立体225は、絶縁された導電性リード組立体135の遠位端に導電接続され、リード組立体135は、好ましくは1対のリード線を含み、その近位端がケース215上のコネクタに接続される。電極組立体225は、患者の首内の迷走神経235に手術で連結される。電極組立体225は、好ましくは、1986年3月4日にBullaraに発行された米国特許第4,573,481号に記載されている電極対などのバイポーラ刺激電極対226、228からなり、この特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。当業者、本発明に多くの電極設計を使用できることを理解するであろう。2つの電極226、228は、迷走神経に巻き付けられることが好ましく、電極組立体225は、1990年12月25日に発行され本出願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第4,979,511号に開示されているような螺旋状係留テザー(spiral anchoring tether)230によって神経235に固定される。
【0041】
一実施形態において、自己定寸性(self-sizing)で柔軟な電極組立体225の穴あき螺旋状設計(前述のBullaraの特許に詳しく説明されている)は、神経への物理的な傷を最小にし、神経との体液の交換を可能にする。電極組立体225は、神経の形状に従い、大きな刺激接触面積を可能にすることによって刺激閾値を低くする。構造的には、電極組立体225は、白金、イリジウム、プラチナイリジウム合金、および/又は前述の酸化物などの導電材料の2つの電極リボン(図示せず)からなる。電極リボンは、3ループ螺旋組立体の2つの螺旋ループからなる2つの螺旋状電極のエラストマ本体部分の内側面に個別に接合される。
【0042】
一実施形態において、リード組立体230は、導電性電極リボンの1つにそれぞれ連結された2つの導体素子を有する2本の別個のリード線又は1本の同軸ケーブルからなってもよい。リード線又はケーブルを電極に連結する適切な1つの方法は、1996年7月2日にSteven Maschinoらに発行され、本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第5,531,778号に示されたスペーサ組立体を含むが、他の既知の連結技術を使用することもできる。各ループのエラストマ本体部分は、好ましくはシリコーンゴムからなり、第3のループは、電極組立体225の係留テザーの役割をする。
【0043】
一実施形態において、MD100(図1)の電極140(1〜n)は、患者の身体200内の任意の標的症状パラメータを感知又は検出することができる。例えば、患者の迷走神経に連結された電極140は、膵臓機能と関連した因子を検出する。電極140(1〜n)は、膵臓疾患の状態を感知又は検出することができる。例えば、膵臓機能の活動と関連した患者の身体パラメータを表す感知信号を提供することができるセンサや他の素子が配置される。
【0044】
一実施形態では、神経刺激装置205は、プログラムされた時間間隔(例えば、5分ごと)に電気バイアス信号を送出するようにプログラムされてもよい。代替実施形態において、神経刺激装置205は、治療を加えるべきイベントの検出時あるいは別の発生時に電気バイアス信号を開始するように設定されてもよい。この検出に基づいて、監視した患者パラメータを示す1つ又は複数のセンサから受け取った信号に応じて、患者に対してプログラムされた治療を決定することができる。
【0045】
図1に示したような電極140(1〜n)は、本発明のいくつかの実施形態において、電極組立体225によって迷走神経235に対する電気刺激治療の適用を誘発するために使用されてもよい。そのような検出した身体信号を使用して刺激療法を始動し又は開始することを、今後、「能動(active)」、「誘発(triggered)」又は「フィードバック」モードの適用と呼ぶ。本発明の他の実施形態は、連続的、定期的又は断続的な刺激信号を利用する。これらの信号は、プログラムされたオン/オフデューティサイクルに従って迷走神経に印加されてもよい(それぞれ信号が信号の連続した印加の形を構成する)。治療送出を始動するためにセンサは使用されなくてもよい。このタイプの送出は、「受動」又は「予防」治療モードと呼ばれることがある。本発明による単一の神経刺激装置によって、能動電気バイアス信号と受動電気バイアス信号の両方を組み合わせあるいは送出することができる。
【0046】
電気信号発生器150は、米国議会図書館内の著作権登録局により本出願の譲受人が著作権を保有するタイプのプログラミングソフトウェア、あるいは本明細書の説明に基づく他の適切なソフトウェアを使用してプログラムされてもよい。プログラミングワンド(図示せず)を使用して、外部プログラミングユーザインターフェース202と電気信号発生器150の間の無線周波数(RF)通信を容易にすることができる。ワンドとソフトウェアは、神経刺激装置205を埋め込んだ後で電気信号発生器150との非侵襲性通信を可能にする。ワンドは、内蔵バッテリによって電力供給され、通信の電力が十分であることを示す「電源」ランプを備える。ワンドと神経刺激装置205の間でデータ伝送が行われていることを示す別のインジケータランプが提供されてもよい。
【0047】
神経刺激装置205は、迷走神経枝および/又は自律神経系の任意の部分に迷走神経刺激(VNS)治療を提供することができる。神経刺激装置205は、電極226、228によって特定の脳神経に電気バイアス信号を送るために手動又は自動で活動化される。神経刺激装置205は、活動化されたときに電気信号105を連続的、定期的又は断続的に送出するようにプログラムされる。
【0048】
次に図3Aと図3Bに移ると、膵臓、肝臓、右迷走神経、左迷走神経、迷走神経の腹腔枝、上腸間膜動脈神経叢および胸内臓神経の様式化した図が示されている。IMD100を利用して、腹腔神経叢の一部分を含む迷走神経などの自律神経の一部分を刺激することができる。更に、IMD100を使用して、人体の交感神経幹の一部分から分岐している胸内臓神経の一部分を刺激することができる。図3Aと図Bに示した図は、説明を容易かつ明瞭にするために単純化されている。当業者は、明瞭にするために様々な詳細が単純化されていることを理解するであろう。
【0049】
図3と図3Bを同時に参照すると、腹腔神経叢は膵臓を活性化する。腹腔神経節は、迷走神経の様々な部分と胸内臓神経の様々な部分の交差部分である。腹腔神経節から出る神経は、膵臓と直接接触する場合がある。腹腔神経節と腹腔神経叢は、膵臓に神経を供給する交感神経自律神経繊維および/又は迷走神経繊維の集中している部位を指す。右迷走神経と左迷走神経を含む副交感神経を刺激して、膵臓の様々な部分の動作に引き起こすことができる。例えば、迷走神経の副交感神経特性は、内分泌腺の挙動および/又は外分泌腺の挙動が影響を受けるように刺激される。副交感神経型の刺激により、迷走神経の分枝を刺激すると、膵臓と関連した運動過剰型の障害を軽減することができる。例えば、低血糖症は、迷走神経の腹腔枝の刺激によって治療される。そのような神経の刺激は、膵臓の活動を低下させる副交感神経効果を有し、それにより膵臓によって生成されるインシュリン、ホルモン、消化酵素および/又は血糖値を制御することができる。これにより、血液中の血糖値の望ましい上昇が起こる。従って、膵臓の副交感神経刺激を実行して低血糖症を治療することができる。
【0050】
胸内臓神経の腹腔神経節より先の部分の刺激を実行して、膵臓の活動を「活発化」することができる。例えば、胸内臓神経の交感神経特徴は、十分なインシュリンおよびグリコーゲンおよび/又は様々なタイプのホルモンを生成するように膵臓の内分泌腺活動を刺激する。例えば、胸内臓神経などの交感神経の刺激によって、グルコースの生成を刺激するのに十分なほど膵臓が刺激され、それにより身体内のインシュリンのレベルが高くなり高血糖症が制御される。更に、胸内臓神経の刺激を使用して、ホルモンおよび/又は消化酵素の生成などの膵臓の他の内分泌腺活動を促進することができる。
【0051】
更に、過剰なホルモン産生に関連する疾患は、迷走神経の腹腔神経叢を刺激し、そのような疾患を治療する低いホルモン産生に対する迷走神経の副交感神経作用を使用することによって治療することができる。自律神経刺激を使用する膵臓の治療は、膵臓の活動に直接影響を及ぼすように遠心的に実行されてもよく、および/又は人体内の神経系フィードバックシステム全体を使用して膵臓の活動を達成するように求心的に実行されてもよい。一実施形態において、膵臓疾患を治療するために求心性神経繊維と遠心性神経線維の刺激を実質的に同時に実行してもよい。
【0052】
本発明の実施形態は、右迷走神経および/又は左迷走神経の一部分上の電極を胸内臓神経などの交感神経に動作可能に連結する。電極は、本明細書で述べる神経の様々な部分に動作可能に連結されてもよい。「動作可能に連結された(operatively coupled)」という表現は、電極に送られた電気信号が、本明細書で述べる神経を刺激するために導かれるように、電極を神経に直接連結するか電極を神経の近くに配置することを含む。
【0053】
本明細書で述べる電気刺激処置は、膵臓と関連した病気を個別に治療するために使用されてもよく、別のタイプの治療と組み合わせて治療するために使用されてもよい。例えば、電気刺激処置は、膵臓に関係する様々な病気を治療するために、様々な薬などの化学物質と組み合わせて利用されてもよい。従って、患者が、インスリン注射又はタブレット又は他の薬を摂取し、糖尿病などの膵臓に関係する病気を治療するために本明細書で述べる神経の様々な部分に電気刺激を提供することによって、これらの薬の作用を強化することができる。更に、電気刺激は、ホルモンなどの生物学的因子に関係する治療と組み合わせて実行されてもよい。従って、IMD100によって提供される刺激の印加によってホルモン療法を強化することができる。電気刺激治療は、磁気刺激治療および/又は生物学的治療などの他のタイプの治療との組み合わせて実行されてもよい。電気刺激を化学的、磁気的、又は生物学的治療と組み合わせることにより、特定の薬および/又は生物学的因子と関連した副作用を軽減することができる。
【0054】
遠心性神経線維刺激に加えて、前述のブロッキングタイプの刺激と組み合わせて追加の刺激を提供することができる。後述するように、刺激信号の過分極を強化することによって遠心性ブロッキングを実現することができる。膵臓疾患を治療するために、本発明の実施形態を使用して、信号ブロッキングと組み合わせてIMD100に刺激を実行させてもよい。MD100からの刺激を使用することによって、刺激ブロッキングが実現されるように副交感神経部分が抑制され、患者の身体内の膵臓メカニズムに影響を及ぼす副交感神経の様々な部分を刺激することができる。このように、IMD100は、求心性刺激と遠心性刺激を実行して様々な膵臓疾患を治療することができる。
【0055】
図4は、本発明の一実施形態により、発火ニューロン(firing neuron)の例示的な電気信号を、発火中の特定の時間の所定の場所における電圧グラフとして様式的に示した図である。標準的なニューロンは、膜内外イオンチャンネルタンパク質によって維持される約−70mVの安静時膜電位を有する。ニューロンの一部分が約−55mVの発火閾値に達したとき、イオンチャンネルタンパク質は、膜を約+30mVに脱分極する細胞外のナトリウムイオンの迅速な進入を局部的に可能にする。次に、脱分極の波はニューロンに沿って伝播する。所定の場所が脱分極した後で、カリウムイオンチャネルが開いて、細胞内カリウムイオンが細胞から出ることができ、膜電位が約−80mVまで低下する(過分極)。経膜タンパク質がナトリウムイオンとカリウムイオンをその最初の細胞内およびの細胞外濃度に戻しその後の活動電位を生じさせるには約1ミリ秒かかる。本発明は、安静時膜電位を高く又は低くし、それにより発火閾値に達する可能性を大きく又は小さくし、その後で任意の特定のニューロンの発火レートを高く又は低くする。
【0056】
図4Bを参照すると、発火ニューロンの例示的な電気信号応答が、本発明の1つの説明的実施形態による図2の神経刺激装置による発火中の特定の時間の所定の場所における電圧のグラフとして示されている。図4Cに示したように、本発明の1つの説明的実施形態によれば、ニューロンを発火させるために、迷走神経235などの脳神経105に対して閾値下の脱分極パルスと追加の刺激を含む例示的な刺激を印加することができる。図4Cに示した刺激は、図2の神経刺激装置による特定の時間の所定の場所における電圧のグラフを示す。
【0057】
神経刺激装置は、図4Cの刺激電圧を、求心性神経繊維、遠心性神経線維又はこの両方を含む自律神経105に印加することができる。この刺激電圧は、図4Bに示した応答電圧を引き起こす場合がある。求心性神経繊維は、末端から脳に情報を伝え、遠心性神経線維は、脳から末端に情報を伝える。迷走神経235は、求心性神経繊維と遠心性神経線維の両方を含むことができ、神経刺激装置205を使用してそのどちらか又は両方を刺激することができる。
【0058】
自律神経105は、交感神経系、副交感神経系又はこれらの両方に情報を伝える繊維を含むことがある。交感神経系内に活動電位を誘導すると、副交感神経系内の活動電位を遮断することによって生じる結果と似た結果となり、その逆も同様である。
【0059】
図2を参照すると、神経刺激装置205は、迷走神経235の刺激のための1つ又は複数のプログラムされたパラメータに従って電気信号115を生成することができる。一実施形態において、刺激パラメータは、電流量、パルス周波数、信号幅、オン時間、およびオフ時間から成るグループから選択されてもよい。表1に、これらの各刺激パラメータの範囲の例示的な表を示す。刺激パラメータは、任意の適切な波形でよく、図5A〜図5Cに本発明の一実施形態による例示的な波形を示す。具体的には、図5A〜図5Cに示した例示的な波形は、定義された範囲内の値に対する、患者の低血糖値、高血糖値、異常消化酵素値、ホルモン失調による心拍数変動、低血糖症、高血糖症、1型糖尿病、2型糖尿病、ケトアシドーシス、セリアック病、および腎臓疾患のうちの少なくとも1つと関連した因子によって定義されることがある電気信号115の生成を示す。
【0060】
本発明の1つの説明的実施形態によれば、神経刺激装置205は、様々な電気信号パターンを使用することができる。そのような電気信号は、複数のタイプのパルス、例えば振幅、極性、周波数などが変化するパルスを含むことができる。例えば、例示的な波形5Aは、電気信号115が、固定振幅、一定の極性、パルス幅およびパルス周期によって定義されることを示す。例示的な波形5Bは、電気信号115が、可変振幅、一定の極性、パルス幅およびパルス周期によって定義されることを示す。例示的な波形5Cは、電気信号115が、電流が比較的ゆっくり放電する固定振幅パルス、一定の極性、パルス幅およびパルス周期によって定義されることを示す。正弦波形などの他のタイプの信号を使用することもできる。電気信号は、制御された電流信号でよい。
【0061】

【0062】
オン時間パラメータとオフ時間パラメータは、オン時間中に神経105を刺激する一連の繰り返し信号を生成する断続パターンを定義するために使用されることがある。そのようなシーケンスは、「パルスバースト」と呼ばれることがある。このシーケンスの後には信号が生成されない期間が続くことがある。この期間中、神経は、パルスバースト中に刺激から回復することができる。これらの交互になった刺激期間と休止期間のオン/オフデューティサイクルは、連続的な刺激を提供するオフ時間がゼロに設定される比率を有する場合がある。代替として、休止時間は、1日以上の長さでもよく、その場合は1日又はもっと長い期間に1回刺激が提供される。しかしながら、一般に、「オフ時間」と「オン時間」の比率は、約0.5〜約10の範囲で変化する。
【0063】
一実施形態において、各信号の幅は、約250〜500マイクロ秒などの、約1ミリ秒以下の値に設定されてもよく、信号の繰返し周波数は、約20〜250Hzの範囲内になるようにプログラムされてもよい。一実施形態では、150Hzの周波数を使用することができる。不均一な周波数を使用することもできる。周波数は、パルスバースト中に、低い周波数から高い周波数又はその逆の周波数掃引によって変更されてもよい。代替として、バースト内の隣り合った個々の信号間のタイミングは、2つの隣り合った信号が周波数の範囲内の任意の周波数で生成されるようにランダムに変更されてもよい。
【0064】
一実施形態において、本発明は、2つ以上の脳神経のそれぞれへの少なくとも1つの電極の連結を含むことができる。(この文脈では、2つ以上の脳神経は、異なる名前又は数値呼称を有する2つ以上の神経を意味し、特定の神経の左側部分と右側部分のことではない)。一実施形態において、少なくとも1つの電極140が、迷走神経235のそれぞれおよび/又は迷走神経の分枝に連結される。電極140は、右迷走神経と左迷走神経の主幹部、腹腔神経叢、上腸間膜動脈神経叢、および/又は胸内臓神経に動作可能に連結されてもよい。用語「動作可能な」連結は、直接的連結と間接的連結がある。この実施形態の各神経又は2つ以上の脳神経を含む他の神経は、2つの神経の間に依存性がない特定の活動様式に従って刺激されてもよい。
【0065】
刺激のための別の活動様式は、患者が許容できる最大振幅に神経刺激装置205の出力をプログラムすることである。刺激は、所定の期間オンオフが繰り返され、その後で刺激のない比較的長い期間が続く。脳神経刺激システムが、患者の身体の完全に外部にある場合は、迷走神経235と直接接触しておらずまた患者の皮膚の付加的なインピーダンスによる減衰に打ち勝つために、より高い電流量が必要な場合がある。外部システムは、一般に、埋め込み式システムより大きい消費電力を必要とするが、そのバッテリを手術なしに交換できるとう利点を有する。
【0066】
本発明の実施形態と関連して他のタイプの間接的刺激を実行することができる。一実施形態において、本発明は、膵臓疾患を治療するこの情報のIMD100と共に、患者の脳125に非侵襲性経頭蓋磁気刺激(TMS)を提供することを含む。TMSシステムには、米国特許第5,769,778号、第6,132,361号および第6,425,852号に開示されシステムがある。TMSを使用する場合、TMSは脳神経刺激と関連した補助的治療として使用され、一実施形態において、TMSと直接脳神経刺激の両方を実行して膵臓疾患を治療することができる。膵臓疾患を治療する化学的刺激などの他のタイプの刺激をIMD100と組み合わせて実行してもよい。
【0067】
図1と図2に示したような自律神経刺激を提供するシステムに戻ると、刺激は、少なくとも2つの異なる様式で提供することができる。脳神経刺激が、プログラムされたオフ時間とオン時間だけに基づいて提供される場合、刺激は、受動的、非活動的、又は非フィードバック刺激と呼ばれることがある。これと対照的に、患者の身体又は心の変化に応じて1つ又は複数のフィードバックループによって刺激が誘発される場合がある。この刺激は、能動又はフィードバックループ刺激と呼ばれることがある。一実施形態において、フィードバックループ刺激は、手動で誘発された刺激でもよく、その場合、患者は、プログラムされたオン時間/オフ時間サイクル以外でパルスバーストを手動で活動化させることができる。患者は、神経刺激装置205を手動で活動化して自律神経105を刺激して、極端に高い血糖値などの膵臓疾患の急性症状を治療することができる。また、患者は、医者によってプログラムされた限度内で自律神経に印加する信号の強度を変更することを許可されてもよい。例えば、患者は、信号周波数、電流、デューティサイクル又はこれらの組み合わせを変更することが許可される。少なくともいくつかの実施形態において、神経刺激装置205は、手動の活動化に応じて比較的長い刺激を生成するようにプログラムされてもよい。
【0068】
神経刺激装置205を患者が活動化するには、例えば、埋込装置内のリードスイッチを操作するための外部制御磁石を使用する必要がある。埋込式医療装置を手動と自動で活動化する特定の他の技術は、Baker, Jr.らに譲渡され本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許第5,304,206号(’206特許)に開示されている。’206特許によれば、電気信号発生器150を手動で活動化又は非活動化する手段は、電気信号発生器のケースの内側面に取り付けられ、埋め込み部位に患者が行うタップを検出するように適応された圧電素子などのセンサがある。患者の身体200内の電気信号発生器150の場所の上の皮膚に速いシーケンスで印加される1つ又は複数のタップは、電気信号発生器150を活動化させる信号として埋込式医療装置100にプログラムされる。例えば、電気信号発生器150を非活動化したいことを示すために、わずかに長い持続時間だけ離間された2つのタップがIMD100にプログラムされる。患者は、装置の動作の制御を、主治医によって指定又は入力されたプログラムによって決定された程度までに制限されることがある。また、患者は、他の適切な技術又は装置を使用して神経刺激装置205を活動化してもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、刺激を手動で開始する以外のフィードバック刺激システムを本発明で使用することができる。自律神経刺激システムは、刺激リードおよび電極組立体と共に、近位端がヘッダに連結された感知リードを備えることができる。感知リードの遠位端にはセンサが連結されてもよい。センサには、温度センサ、呼吸パラメータセンサ、心臓パラメータセンサ、脳パラメータセンサ、又は別の身体パラメータ用のセンサがある。センサには、また、脳神経(迷走神経235など)などの神経の活動を感知する神経センサがある。
【0070】
一実施形態において、センサは、膵臓疾患の症状に対応する身体パラメータを検出することができる。センサが、医学的疾患の症状の検出に使用される場合は、センサからの信号を処理し解析するために神経刺激装置205に信号解析回路が組み込まれてもよい。膵臓疾患の症状を検出した後で、処理したデジタル信号が、神経刺激装置205内のマイクロプロセッサに送られ、自律神経105に電気信号115が印加される。別の実施形態において、所定の症状の検出が、受動的刺激プログラムと異なる刺激パラメータを含む刺激プログラムを誘発してもよい。これは、刺激信号の電流を多くしたりオフ時間に対するオン時間の比率を高めたりすることを必要とする。
【0071】
求心性活動電位に応じて、検出通信器(detection communicator)は、症状の変化の徴候を検出することができる。検出通信器は、電気信号115を調整するために症状の変化の徴候のフィードバックを提供することができる。徴候のフィードバックの提供に応じて、電気信号発生器150は、求心性活動電位を調整して患者内の薬の効能を強化することができる。
【0072】
神経刺激装置205は、メモリ165を使用して疾患データとこのデータを解析するルーチンを記憶することができる。疾患データは、感知した身体パラメータ又は感知したパラメータを示す信号を含むことができる。ルーチンは、感知したホルモン活性を解析して電気的神経刺激が望ましいかどうかを判定するソフトウェアおよび/又はファームウェア命令を含んでもよい。ルーチンによって電気的神経刺激が望ましいと判定された場合は、神経刺激装置205は、迷走神経235などの神経構造に適切な電気信号を提供することができる。
【0073】
特定の実施形態において、IMD100は、図1から図2に示した電子機器を密閉封止することができる本体としてのケース215を有する神経刺激装置205を含むことができる。本体には、導電性リード線135の近位端が接続された端子コネクタを備えるように設計されたヘッダ220が連結されている。本体は、チタンシェルから構成されてもよく、ヘッダは、ポリカーボネートなどの透明なアクリルや他の固い生体適合高分子、又は人体に埋め込むことができる任意の材料から構成されてもよい。ヘッダの導電性リード組立体230から突出するリード線135は、電極140(1〜n)の遠位端に連結されてもよい。電極140(1〜n)は、リード線135を迷走神経235の組織に動作可能に連結するための様々な方法を利用して、迷走神経235などの神経構造に連結することができる。従って、電流の流れは、電極226(図2)などの電極に至るリード線135の一方の端から始まり、迷走神経235の近くの組織を通って、電極228などの第2の電極とリード線135の第2の端まで流れる。
【0074】
次に図6に移ると、本発明の説明的実施形態によるIMD100のブロック図が示されている。IMD100は、IMD100の動作の種々な態様を制御することができるコントローラ610を含むことができる。コントローラ610は、内部データおよび/又は外部データを受け取り、刺激信号を生成し患者の体の標的組織に送ることができる。例えば、コントローラ610は、外部のオペレータから手動の指示を受け取ってもよく、内部の計算およびプログラミングに基づいて刺激を実行してもよい。コントローラ610は、IMD100の実質的に全ての機能に影響を及ぼすことができる。
【0075】
コントローラ610は、プロセッサ615やメモリ617などの様々な構成要素から構成されてもよい。プロセッサ615は、ソフトウエアコンポーネントの様々な命令を実行することができる1つ又は複数のマイクロコントローラやマイクロプロセッサなどからなることができる。メモリ617は、いくつかのタイプのデータ(例えば、内部データ、外部データ指示、ソフトウェアコード、状況データ、診断データなど)を記憶することができる様々なメモリ部分から構成されてもよい。メモリ617は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、電気消去可能プログラム可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリなどを含むこことができる。
【0076】
MD100は、また、刺激ユニット620を含むことができる。刺激ユニット620は、刺激信号を生成しリード線を介して1つ又は複数の電極に伝えることができる。IMD100に何本かのリード線122、134および137が連結される。コントローラ610から指示に基づいて、刺激ユニット620によってリード線122に治療が提供されてもよい。刺激ユニット620は、刺激信号発生器、リード線から「見た」インピーダンスを制御するインピーダンス制御回路、および実行する刺激のタイプに関する指示を受け取る他の回路などの様々な回路を含むことができる。刺激ユニット620は、制御した電流刺激信号をリード線122を介して伝えることができる。
【0077】
IMD100は、また、電源630を含むことができる。電源630は、刺激信号の送出を含むIMD100を動作させる電力を提供するために、バッテリ、電圧レギュレータ、キャパシタなどを含むことができる。電源630は、いくつかの実施形態では再充電可能な場合がある電源バッテリを含む。他の実施形態では、再充電不能なバッテリが使用されてもよい。電源630は、電子操作と刺激機能を含むIMD100を動作させる電力を提供する。電源630は、リチウム/塩化チオニル電池又はリチウム/一フッ化炭素電池を含むことができる。埋込式医療装置の技術分野で既知の他のタイプのバッテリを使用することもできる。
【0078】
IMD100は、また、IMD100と様々な装置との間の通信を容易にすることができる通信ユニット660を含む。詳細には、通信ユニット660は、外部ユニット670との間の電子信号のやりとりをすることができる。外部ユニット670は、IMD100の様々なモジュールおよび刺激パラメータをプログラムすることができる装置でよい。一実施形態において、外部ユニット670は、データ収集プログラムを実行することができるコンピュータシステムである。外部ユニット670は、例えば医院内の基地局において医者などの医療サービス提供者によって制御されてもよい。外部ユニット670は、コンピュータ、好ましくはハンドヘルドコンピュータ又はPDAでよいが、代替として、電子通信とプログラミングが可能な任意の他の装置を含むこともできる。外部ユニット670は、埋込装置の動作をプログラムするためにIMD100に様々なパラメータとプログラムソフトウェアをダウンロードすることができる。外部ユニット670は、また、IMD100から様々な症状データや他のデータを受け取りアップロードすることができる。通信ユニット660は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアおよび/又はこれらの任意の組み合わせでよい。外部ユニット670と通信ユニット660の間の通信は、図6の線675によって概略的に示した無線や他のタイプの通信によって行うことができる。
【0079】
IMD100は、また、患者の膵臓機能の様々な状態と特徴を検出することができる検出装置695を備える。例えば、検出装置695は、血糖値、ホルモン値、又は膵臓の内分泌腺活動および/又は外分泌腺活動を認識することができる他のタイプの徴候を決定することができるハードウェア、ソフトウェアおよび/又はファームウェアを含むことができる。検出装置695は、血糖値やホルモン値などを測定することができる様々なセンサからのデータを解読する手段を含むことができる。更に、検出装置695は、外部供給源からのデータを解読することができる。外部入力は、ホルモンサンプリング、血液検査、血糖検査および/又は他の生理学的検査による結果などのデータを含むことができる。
【0080】
検出装置695は、また、低血糖値、高血糖値、過剰消化酵素、ホルモン失調による心拍数変動、低血糖症、高血糖症、1型糖尿病、2型糖尿病、ケトアシドーシス、セリアック病、腎臓障害など、膵臓と関連した疾病の始まりを示す入力を患者又はオペレータから検出するこができる。検出装置695が解読したデータに基づいて、IMD100は、迷走神経および/又は胸内臓神経の一部分に膵臓機能に影響を及ぼす刺激信号を送ることができる。
【0081】
IMD100は、また、自律神経の様々な部分に動作可能に連結された1つ又は複数の電極に刺激信号を導くことができる刺激標的ユニット690を含むことができる。刺激標的ユニット690は、腹腔神経叢、上腸間膜動脈神経叢および/又は胸内臓神経に刺激信号を導くことができる。このように、刺激標的ユニット690は、膵臓領域の所定の部分を標的にすることができる。従って、検出装置695によって検出された特定のタイプのデータのために、刺激標的ユニット690は、膵臓と関連する疾病を治療するために求心性刺激、遠心性刺激、又は求心性と遠心性を組み合わせた刺激を実行する自律神経の特定部分を選択することができる。従って、IMD100は、低血糖症、消化酵素レベル、および/又は高血糖症などの膵臓に関連する疾病の始まりに基づいて、あるいは所定の治療処置に基づいて、刺激すべき自律神経の様々な部分を選択することができる。より具体的には、IMD100は、膵臓と関連した疾病を治療するために、実行する刺激の腹腔神経叢、上腸間膜動脈神経叢、および/又は胸内臓神経、ならびに遠心性刺激、求心性刺激、および/又は遠心性刺激と求心性刺激を組み合わせた刺激のうちの1つ又は複数を選択することができる。
【0082】
図6にIMD100のブロック図で示した1つ又は複数のブロックは、ハードウェアユニット、ソフトウェアユニット、ファームウェアユニット、および/又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。更に、図6に示した1つ又は複数のブロックは、回路ハードウェアユニットやソフトウェアアルゴリズムなどを表わす他のブロックと組み合わされてもよい。更に、図6に示した様々なブロックと関連した任意の数の回路又はソフトウェアユニットは、フィールドプログラマブルゲートアレイやASIC装置などのプログラム可能な装置に組み込まれてもよい。
【0083】
次に図7に移ると、本発明の1つの説明的実施形態により膵臓疾患を治療する方法のフローチャートが提供されている。刺激機能および/又はブロッキング機能を実行して膵臓疾患を治療するために自律神経の一部分に電極が連結される。一実施形態において、自律神経の一部分に刺激信号を送るために、電気接点内又は自律神経の一部分の近くに複数の電極が配置される(ブロック710)。次に、IMD100は、患者の膵臓に関連した疾病に関連する1つ又は複数に特徴に基づいて制御された電気信号を生成することができる(ブロック720)。これは、低血糖値、高血糖値、消化酵素レベル、ホルモン失調などの患者の特定の状態に基づいて予めプログラムされた所定の電気信号を含んでもよい。例えば、医者は、患者の膵臓と関連した疾病のタイプに基づいて患者を治療するために、提供する刺激のタイプ(例えば、遠心性刺激、求心性刺激、又は求心性刺激と遠心性刺激の組み合わせ)を予めプログラムすることができる。次に、IMD100は、患者の膵臓器官の1つ又は複数の一部分の動作に影響を及ぼす信号(制御された電流パルス信号など)を生成することができる。
【0084】
次に、IMD100は、低血糖値、高血糖値、ホルモン失調因子、消化酵素に関連する因子などの因子によって決定されるような刺激信号を自律神経の一部分に送ることができる(ブロック730)。電気信号の印加は、右および/又は左迷走神経の主幹、腹腔神経叢、上腸間膜動脈神経叢および/又は胸内臓神経に送られてもよい。一実施形態において、刺激信号の印加は、膵臓の内分泌腺機能および/又は外分泌腺機能の活動を弱め又は高めるために求心性効果を促進するように設計されてもよい。別の実施形態において、刺激信号の印加は、膵臓に関連した疾病を治療するために、脳から膵臓器官の様々な部分に送られる信号に関連するブロッキング効果を促進するように設計されてもよい。例えば、過敏反応は、脳から膵臓の様々な部分への様々な信号を遮ることによって軽減することができる。これは、制御された電流信号などの特定のタイプの制御された電気信号を自律神経に送ることによって達成することができる。更に別の実施形態において、膵臓疾患を治療するために、遠心性ブロッキングと組み合わせて求心性神経繊維を刺激してもよい。
【0085】
代替として、本発明の実施形態と共に検出プロセスなどの追加機能を使用することができる。検出プロセスは、身体機能の外部検出および/又は内部検出を使用してIMD100の動作を調整するように使用される。
【0086】
次に図8に移ると、本発明の代替実施形態による方法のブロック図が示されている。MD100は、データベース検出プロセスを実行することができる(ブロック810)。検出プロセスは、低血糖値、高血糖値、消化酵素レベル、ホルモン失調因子ケトンレベルによる心拍数変動など、膵臓活動の様々なタイプの特徴を検出する機能を含むことができる。検出プロセスを実行する段階のさらに詳細な描写を図9に示し、後で説明する。検出プロセスを実行した後で、IMD100は、検出プロセス中に実行された測定に基づいて、検出した疾患が治療するほど重篤かどうかを判定することができる(ブロック820)。例えば、血糖値を調べてその値がIMD100による介入が望ましい所定値より高いかどうかを判定する。疾病がIMD100によって治療するのに不適切であると判定されると、検出プロセスは継続される(ブロック830)。
【0087】
疾病がIMD100を使用して治療するの適切であると判定されると、疾病に関連するデータに基づいて刺激のタイプに関する決定が行われる(ブロック840)。刺激のタイプは、メモリ617に記憶されることがある参照テーブルを参照するなどの様々な方法で決定することができる。代替として、刺激のタイプは、外部ユニット670や患者からの入力などの外部ソースからの入力によって決定されてもよい。更に、刺激のタイプの決定は、刺激を送る場所を決定する段階を含むことができる。これにより、刺激信号を伝えるために使用される特定の電極が選択される。刺激信号のタイプの決定のさらに詳細な説明を図10に提供し、後で説明する。
【0088】
送る刺激のタイプが決定された後、IMD100は、電気信号を1つ又は複数の特定の電極に送ることによって刺激を実行する(ブロック850)。刺激を送った後で、IMD100は、刺激の結果を監視し、記憶しかつ/又は計算することができる(ブロック860)。例えば、その計算に基づいて、刺激のために送られる信号のタイプの調整が行われる。更に、この計算は、追加の刺激を送る必要性を反映してもよい。更に、刺激の結果に関するデータが、後の抽出および/又は詳しい解析のためにメモリ617に記憶されてもよい。一実施形態において、刺激の結果および/又は刺激ログを外部ユニット670に通信するために実時間又はほぼ実時間の通信が提供されてもよい。
【0089】
次に図9に移ると、図8のブロック810の検出プロセスを実行する段階のより詳細なブロック図が示されている。システム100は、患者の膵臓機能に関連する1つ又は複数の生体信号を監視することができる(ブロック910)。例えば、低血糖値、高血糖値、ホルモン失調因子、消化酵素に関連する因子、ケトン、尿血糖値などが検出される。この検出は、IMD100に動作可能に連結された人体内にあるセンサによって行うことができる。別の実施形態では、これらの因子は、外部手段によって実行され、通信システム660によってIMD100外部装置に提供されてもよい。
【0090】
様々な生体信号を捕捉した後、生体信号に関するデータを所定の記憶されたデータと比較する比較が実行される(ブロック920)。例えば、血糖値を様々な所定の閾値と比較して、積極的な処置が必要かあるいは単に更なる監視で十分かどうかが判定される。収集したデータを記憶した理論的な閾値と比較した結果に基づいて、IMD100は、疾病が存在するかどうかを判定することができる(ブロック930)。例えば、刺激する求心性刺激繊維および/又は遠心性刺激繊維を決定するために様々な生体信号が取得される。図9に説明した決定に基づいて、IMD100は引き続き、図8に示したように、疾病が治療を行うほど重篤かどうかを判定することができる。
【0091】
次に図10に移ると、図8のブロック840に示された刺激のタイプを決定する段階のより詳細なフローチャートが示されている。IMD100は、呼吸疾患の定量化パラメータを決定することができる(ブロック1010)。これらの定量化パラメータには、例えば、疾病の様々な症状(血流中の過剰糖分)の出現頻度、疾病の重篤さ、疾病又は症状が存在するかどうかに関するバイナリタイプの解析、生理学的測定又は検出、あるいはホルモン値検査などの他の検査結果がある。これらの定量化パラメータに基づいて、副交感神経又は交感神経の応答/刺激が適切かどうかを判定することができる(ブロック1020)。例えば、表2に示したように、マトリクスを使用して刺激に対する副交感神経又は交感神経の応答が適切かどうかを判定することができる。この判定は、遠心性刺激、求心性刺激、又は遠心性刺激と求心性刺激との組み合わせを実行すべきかどうかに関する決定が重ねられることがある。
【0092】

【0093】
表2に示した例は、特定の治療のために、遠心性の副交感神経刺激が、交感神経の遠心性刺激と求心性刺激の組み合わせと組み合わせて提供されることを示す。検出された特定のタイプの定量化パラメータに関して、副交感神経ブロッキング信号を交感神経非ブロッキング信号との組み合わせで実行することが適切な治療であることが判定されてもよい。様々なタイプの治療に表2に関連する他の組み合わせを実施することができる。IMD100が取り出すために、表2に示したマトリクスのような、マトリクスの様々な組み合わせがメモリに記憶されることがある。
【0094】
更に、外部装置がそのような計算を実行し、その結果および/又は不随する命令をIMD100に送ることができる。IMD100は、また、刺激すべき神経の特定の束を決定することができる(ブロック1030)。例えば、特定のタイプの刺激を実行するために、右および/又は左迷走神経の主幹部、腹腔神経叢、上腸間膜動脈神経叢、および/又は胸内臓神経を刺激することを決定することができる。IMD100は、また、提供される治療のタイプを示すこともある。例えば、検出した定量化パラメータに基づいて、電気的治療を単独であるいは別のタイプの治療との組み合わせて提供することができる(ブロック1040)。例えば、電気信号を単独で送るべきであることが決定される。代替として、特定のタイプの疾病に基づいて、電気信号を、経頭蓋磁気刺激(TMS)などの磁気信号と組み合わせて実行することが決定される。
【0095】
電気刺激および/又は磁気的刺激に加えて、化学的刺激、生物学的刺激、および/又はIMD100によって提供される電気刺激と組み合わせた他のタイプの治療を提供するかどうかが判定されてもよい。一例において、電気刺激は、インシュリンに関連した薬などの化学物質の有効性を高めるために使用される。従って、様々な薬や他の化合物が、電気刺激又は磁気刺激との組み合わせで提供されてもよい。実行される刺激のタイプに基づいて、IMD100は、様々な膵臓疾患を治療する刺激を提供する。
【0096】
本発明の実施形態を利用することにより、糖尿病などの膵臓に関連する疾病を治療するために様々なタイプの刺激を実行することができる。自律神経刺激を実行することよって、例えば、糖尿病、低血糖症、高血糖症、ホルモン関連疾病などを治療することができる。本発明の実施形態の自律神経刺激は、迷走神経および/又は胸内臓神経などの他の交感神経の一部分の刺激を含むことができる。本発明の実施形態は、刺激の予めプログラムされた送出を行いかつ/又は制御された刺激を送出する実時間の意志決定を実行する。例えば、血糖値やホルモン値などのパラメータの様々な検出を使用して、刺激が必要かどうかおよび/又は送出する刺激のタイプを決定することができる。膵臓と関連した様々な疾病を治療するために、刺激の副交感神経、交感神経、ブロッキング、非ブロッキング、求心性および/又は遠心性伝達が実行される。
【0097】
本明細書に開示し請求されたすべての方法と装置は、本開示に鑑みて必要以上の実験なしに作成し実行することができる。本発明の方法および装置を特定の実施形態と関連して説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、説明した方法および装置、ならびに方法の段階あるいは一連の段階で適用することができることを当業者は理解するであろう。特に、本発明の原理が、特定の結果を実現するために迷走神経以外の特定の脳神経に印加されてもよいことを理解されたい。
【0098】
本発明は、本明細書の教示から利益を得る当業者にとって明かな異なるが等価な方法で修正し実施することができるので、以上開示した特定の実施形態は単なる実例である。更に、添付の特許請求の範囲に記載した以外の本明細書に示した構造又は設計の詳細は限定されない。従って、以上開示した特定の実施形態は変更又は修正されもよく、そのような変形物はすべて本発明の意図と精神の範囲内にあると考えられることは明かである。従って、本明細書で請求される保護は、添付の特許請求の範囲に記載された通りである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の1つの説明的実施形態による、膵臓疾患のある患者を治療するために脳神経を刺激する埋込式医療装置の様式的な概略図である。
【図2】本発明の説明的実施形態による、患者の迷走神経を刺激するために患者の身体に埋め込まれた神経刺激装置の一実施形態を外部プログラミングユーザインターフェースと共に示した図である。
【図3A】膵臓、肝臓、迷走神経および内臓神経の様式的な図である。
【図3B】膵臓、迷走神経、胸内臓神経、迷走神経の腹腔枝、および上腸間膜動脈神経叢の様式的な図である。
【図4A】本発明の1つの説明的実施形態による、脳神経に電気信号を印加するときに、図2の神経刺激装置により発火している間の特定の時間の所定の場所における電圧のグラフとして発火ニューロンの例示的な電気信号を示す図である。
【図4B】本発明の1つの説明的実施形態による、迷走神経に閾値下脱分極パルスと追加の刺激を印加しているときに、図2の神経刺激装置により発火している間の特定の時間の所定の場所における電圧のグラフとして発火ニューロンの例示的な電気信号応答を示す図である。
【図4C】本発明の1つの説明的実施形態による、図2の神経刺激装置による特定の時間の所定の場所における電圧のグラフのようにニューロンを発火させるために迷走神経に閾値下脱分極パルスと刺激を含む例示的な刺激を示す図である。
【図5A】本発明の1つの説明的実施形態による、膵臓疾患を治療するために迷走神経を刺激する電気信号を生成する例示的な波形を示す図である。
【図5B】本発明の1つの説明的実施形態による、膵臓疾患を治療するために迷走神経を刺激する電気信号を生成する例示的な波形を示す図である。
【図5C】本発明の1つの説明的実施形態による、膵臓疾患を治療するために迷走神経を刺激する電気信号を生成する例示的な波形を示す図である。
【図6】本発明の1つの説明的実施形態による膵臓疾患を治療するための埋込式医療装置の様式的なブロック図である。
【図7】本発明の説明的実施形態による膵臓病を治療する方法のフローチャートである。
【図8】本発明の代替の説明的実施形態による膵臓病を治療する代替方法のフローチャートである。
【図9】本発明の説明的実施形態による図8の検出プロセスを実行する段階の詳細なフローチャートである。
【図10】本発明の説明的実施形態による、図8に示した膵臓疾患に関するデータに基づいて特定のタイプの刺激を決定する段階のより詳細なフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵臓疾患を患う患者を治療する方法であって、
少なくとも一つの電極を腹腔神経叢の少なくとも一部に連結する段階と、
前記電極を用いて、前記腹腔神経叢の少なくとも一部に電気信号を印加することで前記膵臓疾患を治療する方法。
【請求項2】
前記膵臓疾患が、低血糖値と、高血糖値、消化酵素の異常値と、ホルモンバランス失調による心拍の変動と、低血糖症と、高血糖症と、1型糖尿病と、2型糖尿病と、ケトアシドーシスと、セリアック病と、腎臓病との内の少なくとも一つを含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記電極を用いて前記腹腔神経叢の少なくとも一部に電気信号を印加する段階が、インシュリンレベル、ホルモンレベル、消化酵素レベル、及び膵臓によって産生されるグリコーゲンのレベルの内少なくとも一つを調整することを含む請求項1の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの電極を、胸内臓神経、迷走神経の前記腹腔神経叢、及び上腸間膜動脈神経叢の群から選択される神経の少なくとも一部に連結する段階を更に有する請求項1の方法。
【請求項5】
求心性活動電位、遠心性活動電位、求心性過分極、閾値下脱分極、及び遠心性過分極の群から選択される電気信号に対する生理反応を生じる段階をさらに有する請求項1の方法。
【請求項6】
電気信号を印加する段階が、遠心性活動電位と組み合わさった求心性活動電位を生じる段階を有する請求項5の方法。
【請求項7】
プログラム可能な電気信号発生器を供給する段階と、
前記信号発生器を少なくとも一つの電極に連結する段階と、
電気信号発生器によって電気信号を生じさせる段階と、
電極に電気信号を印加する段階とを更に有する請求項1の方法。
【請求項8】
電流の強度、パルス数、パルス幅、開始時間及び停止時間の群から選択される少なくとも一つのパラメータによって電気信号を規定するために電気信号発生器をプログラムする段階を更に有し、前記少なくとも一つのパラメータが膵臓疾患を治療するために選択される請求項7の方法。
【請求項9】
膵臓疾患の症状を検出する段階を更に有し、電気信号の印加が前記症状の検出に応じて開始される請求項1の方法。
【請求項10】
症状の検出が、血糖値、高血糖値、ホルモン失調の因子、消化酵素に関連する因子、ケトン値、及び尿中糖レベルの少なくとも一つを用いることを含む請求項9の方法。
【請求項11】
電気信号を印加する段階が第1の治療期間に前記信号を印加する事を含む請求項1の方法であって、前記方法が第2の治療期間に少なくとも一つの電極を用いて自律神経に対して第2の電気信号を印加することで膵臓疾患を治療する段階を更に有する方法。
【請求項12】
前記膵臓疾患の症状を検出する段階を更に有し、
症状を検出する段階が、血糖値因子、高血糖値センサ、ホルモン失調センサ、消化酵素に関連する因子に関するセンサ、ケトンセンサ、及び尿中糖レベルセンサの内少なくとも一つを用いる事を含み、
第2の治療期間が膵臓疾患の症状を検出する前記段階に応じて開始される請求項11の方法。
【請求項13】
膵臓疾患を患う患者を治療する方法であって、
少なくとも一つの電極を腹腔神経叢の少なくとも一部に連結する段階と、
電気信号発生器を供給する段階と、
前記信号発生器を前記少なくとも一つの電極に連結する段階と、
電気信号発生器を用いて電気信号を発生させる段階と、
電極に電気信号を印加する事で前記膵臓疾患を治療する段階とを有する方法。
【請求項14】
膵臓疾患の症状を検出する段階を更に有し、
電気信号を電極に印加する段階が前記症状の検出に応じて開始される請求項13の方法。
【請求項15】
前記少なくとも一つの電極を胸内臓神経、上腸間膜動脈神経叢、及び迷走神経の前記腹腔神経叢の内少なくとも一つに連結する段階をさらに有する請求項13の方法。
【請求項16】
膵臓疾患を患う患者を治療する方法であって、
少なくとも一つの電極を、前記迷走神経の腹腔神経叢、上腸間膜動脈神経叢、及び胸内臓神経の群から選択される患者の自律神経の少なくとも一部に連結する段階と、
前記電極を用いて電気信号を前記自律神経の少なくとも一部に印加することで前記膵臓疾患を治療する段階とを有する方法。
【請求項17】
プラグラム可能な電気信号発生器を提供する段階と、
前記信号発生器を前記少なくとも一つの電極に連結する段階と、
前記電気信号発生器を用いて電気信号を発生させる段階と
を有し、電気信号を前記自立神経の少なくとも一部に印加する段階が、電気信号を前記少なくとも一つの電極に印加することを含む請求項16の方法。
【請求項18】
電流強度、パルス幅、パルス数、開始時間及び停止時間の群から選択される複数のパラメータによって前記電気信号を規定するために電気信号発生器をプログラムする段階を更に有する請求項17の方法。
【請求項19】
前記自律神経の前記部分に電気信号を印加する段階が第1の治療期間に前記信号を印加することを含む請求項16の方法であって、
第2の治療期間に迷走神経の少なくとも一つの分枝に第2の電気信号を印加することをさらに含む方法。
【請求項20】
前記第1の治療期間が一時間から六時間の期間であり、前記第2の治療期間が一月から10年の期間である請求項19の方法。
【請求項21】
少なくとも一つの電極が、らせん電極及びパドル電極から選択される請求項16の方法。
【請求項22】
前記電極を用いて前記迷走神経の少なくとも一つの分枝に電気信号を印加する段階が、電気刺激を行うことを含む請求項16に記載の方法であって、
磁性刺激、化学的刺激及び生物学的刺激の内少なくとも一つと組み合わせた電気刺激を行う段階を更に有する請求項16の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B−4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−502313(P2009−502313A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523888(P2008−523888)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/024785
【国際公開番号】WO2007/018788
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508025585)サイバーロニックス,インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】