説明

臓器および組織の治療のための薬剤

【課題】 形成不全性の、あるいは欠落した、あるいは解剖学的に置換した、あるいは異所性の組織または器官が関与する状態を治療する方法を提供する。
【解決手段】 患者の非腫瘍細胞若しくは非腫瘍組織の機能を除去するか、または該機能に影響を与えるために、活性成分として、非腫瘍細胞若しくは非腫瘍組織により生成されるか、またはそれらに関連するマーカーに特異的に結合する抗体または抗体フラグメントを含んでなる医薬剤であって、前記抗体または抗体フラグメントが治療剤とコンジュゲートしている医薬剤を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野本発明は、形成不全性(hypoplastic)の、あるいは欠落した、あるいは解剖学的に置換した、あるいは異所性(ectopic)の組織および臓器の画像化と治療法、およびその使用に適したキットに関するものである。本発明は、外科的切除後の近接臓器の状態を検出する方法と、臓器の外科的切除後に残留する組織を検出する方法に関するものである。
【0002】
本発明は、形成不全性あるいは異所性の組織、または正常組織の治療と切除(または除去;ablating)の方法にも関するものである。本発明は、癌の放射線治療または化学療法中に、正常組織を防御する方法と、その方法に有用な組成物とキットにも関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の技術に関する説明形成不全性の、あるいは欠落した、あるいは解剖学的に置換した、あるいは異所性の組織または臓器を明瞭に画像化する方法と、そのような組織または臓器が関与する状態を治療する方法が必要とされている。
【0004】
特定の臨床的状況において、特定の組織または臓器が存在しているか否かを明らかにすることは重要である。更に、ある臓器が解剖学的に正常であるか、またその臓器が病的であるかということを非侵襲的方法によって明らかにしなくてはならない状況がしばしば発生する。臓器が正常な場合に臓器の“ポジ”像("positive" image)が得られ、また疾病が存在する場合には臓器の画像に欠損が表れるような、臓器に特異的な造影剤を使用する臓器画像化法が望ましいと思われる。このような方法によれば、免疫学的特異性に基づいて、身体の臓器および組織のシンチグラフィおよび磁気共鳴画像法に関して新しいアプローチが得られるであろう。
【0005】
正常組織と臓器は、磁気共鳴画像法によって画像化されてきたが、画像増強造影剤と、抗体結合造影剤を使用して画像化されてはいない。腫瘍または感染性病変により生産されるマーカー(marker)、あるいはそれらに関連するマーカーと特異的に結合する標識抗体および標識抗体フラグメントを使用し、腫瘍および感染病変を造影する方法が、特に、Hansenらの米国特許第3,927,193号およびGoldenbergの米国特許第4,331,647号、第4,348,376号、第4,361,544号、第4,468,457号、第4,444,744号、第4,460,459号、第4,460,561号、および関連する継続中の米国出願第609,607号および第633,999号において明らかにされている。これら全ての記載は、参考のためにここに全て引用されるものである。DeLandらのJ. Nucl. Med., 20,1243-50 (1979) も参照することができる。
【0006】
これらの方法は、腫瘍または感染性病変によって生産されるマーカーまたはそれらに関連するマーカーと特異的に結合する放射性同位元素標識抗体を使用し、腫瘍または感染性病変に関連し、その抗体に適した標的を有する構造内において抗体に付着した放射能の取り込み、すなわち“ポジ”の画像を得るものである。これによって、関与している構造を視覚化することができる。前述の参考文献においても明らかにされている様々な消去法(substraction techniques)を使用することにより、これらの方法の特異性と分解能は更に改善することができ、バックグランドの非特異的放射能を腫瘍または病変による特異的取り込みから区別することが可能となる。
【発明の開示】
【0007】
臓器特異および組織特異抗体と、シンチグラフィの検出または磁気共鳴画像法の画像増強のための付加物とより構成される抗体結合体(コンジュゲート体)が、臓器造影剤として今まで使用されたことはない。
【0008】
感度と特異性がより高い造影と治療のための方法と、周囲の構造から特定の臓器と組織をより特異的に識別する造影と治療のための薬剤と方法は、今なお必要とされている。
【0009】
本発明の1つの目的は、形成不全性の、あるいは欠落した、あるいは解剖学的に置換した、あるいは異所性の組織および臓器に対する分解能と特異性がより高いシンチグラフィ像を得るための方法を提供することである。本発明の別の目的は、シンチグラフィと磁気共鳴画像法の臓器および組織に特異的な方法と試薬を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、本発明の造影法に使用するのに適した試薬とキットを提供することである。本発明の別の目的は、外科的切除後の近接臓器の状態を検出する方法と、残留組織を検出する方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、形成不全性の、あるいは遺残性(remnant)の、あるいは解剖学的に置換した正常な臓器および組織を治療するための方法と薬剤を提供することである。本発明の別の目的は、治療法の一部として、正常細胞および組織を切除するための方法と薬剤を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、癌の放射線治療または化学療法中に、正常組織を防御する方法と、その方法に有用な組成物とキットを提供することである。本発明の別の目的は、細胞または組織の機能、特にホルモンの標的臓器の機能を変える方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、マーカー物質を生産するかまたはそれに関連する、臓器の一部の外科的除去の後に残る臓器組織を検出するための方法で用いられる画像化組成物を提供することにある。この方法において、ヒトの被検体は、マーカー物質に結合する抗体を注入される。該抗体は、薬理学的に不活性なラジオアイソトープまたは磁気共鳴画像化剤で放射能標識され、フォトスキャニングまたは磁気共鳴画像化装置で検出され得る。
【0014】
本発明は、哺乳動物から外科的に除去された第二の臓器に隣接する臓器の状態の測定に有用な組成物を含む。該臓器は、マーカー物質に関連し、その状態は、マーカー物質に特異的で、フォトスキャニングまたは磁気共鳴画像化の薬剤・装置を用いて検出することのできる薬理学的に不活性なラジオアイソトープまたは磁気共鳴画像化剤で放射能標識された抗体を含む組成物を、哺乳動物に非経口的に注入することによって測定される。
【0015】
該組成物は、50〜1,500kevのエネルギーを放射するアイソトープを採用することができ、また、ガドリニウム・鉄・マンガン・レニウム・ユウロピウム、ラン夕ニウム、ホルミウムまたはテルビウムの種であるMRI増強剤を採用することができる。さらに、該組成物は、ビオチニル化抗体もしくはフラグメントを含む第一の組成物を、被検体に注入することによって、細胞、組織、または臓器を予め標的とした後に、第二の組成物として用い得る。この場合、クリアリング組成物は、循環するビオチニル化抗体もしくはフラグメントを除去するために、付加的に用いることができ、また、被検体は、アイソトープと複合(コンジュゲート)したビオチンまたはMRI増強剤を含む組成物を注入する前に、アビジンを注入される。抗体もしくはフラグメントとしては、Fv、単鎖抗体、Fab、Fab’、(Fab)2、もしくはF(ab’)2フラグメント、または無傷の抗体を用い得る。抗体もしくはフラグメントは、少なくとも60%の標的とされる細胞もしくは組織に対する特異的な免疫反応性と、他の抗原に対する35%以下の交差反応性を有し得る。
【0016】
本発明の他の目的は、マーカー物質を生産するか、またはそれに関連する形成不全性組織、異所性組織、非悪性細胞、非悪性組織、または骨髄細胞の治療に用いられる治療組成物を提供することにある。該治療組成物は、マーカー物質に特異的で細胞毒性剤と複合した抗体を、非経口的にヒトの被検体に注入することによって用いられる。この方法によって治療される異所性組織は、子宮内膜であり得る。
【0017】
本発明の目的は、患者の非悪性細胞または組織を切除するのに有用な治療組成物を提供することにある。この場合、患者は、切除される細胞に関連するかまたはそれによって生産されるマーカーに特異的であって、細胞毒性剤と複合した抗体または抗体フラグメントによって、治療される。該組成物は、例えば、正常な骨髄細胞を再移植する前に、患者の骨髄細胞を破壊するのに用いられる。この場合、該組成物の使用方法は、骨髄細胞に関連するかまたはそれによって生産されるマーカーに特異的で、細胞毒性剤と複合した抗体または抗体フラグメントを用いて、患者を治療することである。
【0018】
本発明の組成物は、予め標的とする戦略(pre−targeting strategy)における第二の組成物として、投与することができる。この戦略において、ビオチン、アビジン、二官能性抗体、抗体−ハプテン錯体、または酵素複合抗体のような第一の組成物が、細胞、組織、または臓器を予め標的とするのに用いられる。第一の組成物が、標的とされた組織、細胞、または臓器に付着した後、第二の組成物が投与される。第二の組成物は、第一の組成物上の治療薬剤を活性化し、あるいは、第一の組成物に治療薬剤を結合させて、治療効果を生じさせる。細胞毒性剤は、アイソトープ、薬剤、毒素、非イオン化放射線により活性化される蛍光色素、ホルモン、オートクラインまたはサイトカインであり得る。
【0019】
独創的な組成物を、予め標的とする戦略において、任意に用いることができる。該戦略は、細胞毒性剤と複合したビオチンを含み得る独創的な組成物を注入する前に、循環するビオチニル化抗体またはフラグメントを除去するための薬剤を含むクリアリング組成物を、患者に注入することを含む。該抗体またはフラグメントは、Fv、単鎖抗体、Fab、Fab’、またはF(ab’)2フラグメントまたは無傷の抗体であり得る。該抗体またはフラグメントは、標的とされる細胞または組織に対する少なくとも60%の特異的な免疫反応性と、他の抗原に対する35%以下の交差反応性を有することができる。上記細胞毒性剤は、ヨウ素−125、ヨウ素−131、レニウム−186、レニウム−188、銀−111、白金−197、パラジウム−109、銅−67、リン−32、リン−33、イットリウム−90、スカンジウム−47、サマリウム−153、ルテチウム−177、ロジウム−105、プラセオジム−142、プラセオジム−143、テルビウム−161、ホルミウム−166、金−199からなる群より選択されるラジオアイソトープであり得る。該細胞毒性剤は、また、タキソール、メクロレタミン、シクロホスフアミド、メルファラン、ウラシルマスタード、クロラムブシル、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、アザリビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、L−アスパラギナーゼ、シスプラチン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトーテン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸、メトロプロゲステロン酢酸、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、テストステロンプロピオン酸またはフルオキシメステロンであり得る。
【0020】
本発明の更なる目的は、ヒトに用いるWR−2721やWR−1065のような細胞防御薬剤を有する、Fv、単鎖抗体、Fab、Fab’、もしくはF(ab’)2フラグメント、または無傷の抗体のような抗体もしくはフラグメントの複合体を提供することにある。この細胞防御複合体は、製薬的に許容できる滅菌済の注入媒体中に溶解または分散される。本発明の組成物は、放射線または細胞毒性剤を採用した改良された癌治療方法を許容する。
【0021】
これらの組成物は、全体の治療の一部として、細胞防御量の細胞防御複合体と結合し得る。細胞毒性放射線、薬剤、または毒素は、癌細胞によって生産されるかまたはそれに関連する抗原に特異的な腫瘍標的抗体またはフラグメントの形で投与され得る。標的抗体またはフラグメントは、ラジオアイソトープ、薬剤、または毒素と複合する。
【0022】
本発明の目的は、ビオチンと組み合わせて使用されるアビジン複合抗体、アビジンと組み合わせて使用されるビオチニル化抗体、二価抗体、抗体−ハプテン複合体、または酵素複合抗体を含む第一の組成物によって、正常な臓器または組織の細胞を予め標的化するための組成物を提供する。ここで、該抗体は、細胞によって生産されるか、あるいはそれと関連するマーカーと特異的に結合する抗体または抗体フラグメントである。第一の組成物が標的とされた臓器または組織に付着した後に、第二の組成物を投与する。第二の組成物は、第一の組成物に細胞防御薬剤を結合させて、細胞防御複合体を形成させ、細胞防御作用を発揮させる。正常な臓器または組織の細胞は、循環するビオチニル化抗体またはフラグメントを除去するための薬剤を含む第一の組成物を被検体に投与し、被検体にアビジンを注入し、細胞防御薬剤を複合させたビオチンを含む第二の組成物を注入することによって、予め標的とされる。
【0023】
本発明の他の目的は、哺乳動物の被検体内の非悪性細胞に影響を与える状態を治療するための組成物を提供することにある。該方法は、標的とされた細胞上のホルモンレセプターまたは成長因子に特異的で、治療薬剤と複合した抗体またはフラグメントを含む組成物を、治療を必要とする被検体に投与することを含む。提供される治療用複合体は、成長因子レセプターまたはホルモンレセプターに特異的な抗体またはフラグメントと、治療薬剤とを含む。治療薬剤は、アイソトープ、薬剤、毒素、ホルモン拮抗物質、サイトカイン、オートクライン、または非イオン化放射線により活性化される蛍光色素であり得る。本発明の他の目的は、哺乳動物の被検体の細胞のホルモン機能に影響を与える免疫学的方法であって、標的細胞上のホルモンレセプターに特異的な抗体またはフラグメントを含む組成物を、被検体に投与することを含み、抗体またはフラグメントが、標的とされる細胞のホルモン機能に影響を与える免疫学的方法のための薬剤を提供することにある。抗体またはフラグメントは、治療薬剤と複合することができ、また、ホルモン細胞は、卵巣、乳房、または精巣由来のものであり得る。影響を受けるホルモン機能は、無月経または不妊を生じさせることができる。免疫学的方法は、繊維嚢胞性乳腺疾患の治療に用い得る。ホルモン依存性細胞は、前立腺の細胞であり得る。レセプターは、アンドロゲンレセプターであり得る。さらに、卵巣細胞またはそのレセプターに対する抗体は、卵巣またはその機能を除去または低下させるために用いることができる。前立腺細胞またはそのレセプターに対する抗体は、前立腺またはその機能を除去または低下させるために用いることができる。
【0024】
本発明の他の目的は、目的の臓器中の細胞または組織によって生産されるかまたはそれに関連するマーカーと特異的に結合する画像化剤を提供することにある。画像化剤は、ラジオアイソトープまたは外部からの検出を可能とする磁気共鳴画像増強部分で標識された抗体または抗体フラグメントを含む。この薬剤は、シンチグラフィまたは磁気共鳴画像によって、哺乳動物の被検体内の形成不全性の、解剖学的に置換した、または異所性の細胞または組織を画像化するのに有用である。ここで、(a)哺乳動物の被検体は、得られた臓器のシンチグラフィ画像または増強された磁気共鳴画像を許容するのに十分な量の画像化剤を、特定部位において及び目的の臓器にアクセスする経路によって、非経口的に注入され、(b)薬剤の投与後の、画像化成分が臓器内に広く付着し、マーカーに特異的に結合するのに十分な時間の経過後のある時点で、臓器のポジ・シンチグラフィ画像またはポジ増強磁気共鳴画像が得られる。
【0025】
本発明の他の目的は、臓器の一部の外科的切除の後に残される臓器組織を検出する方法(ヒトの被検体が、薬剤を非経口的に注入され、残余の臓器組織が検出される方法)において用いられる、臓器組織によって生産されるかまたはそれに関連するマーカー物質に特異的であり、かつ、フォトスキャニングまたは磁気共鳴画像化装置を用いて検出することのできる薬理学的に不活性なラジオアイソトープまたは磁気共鳴画像部分で放射能標識された抗体を、活性成分として含む診断用組成物を提供することにある。
【0026】
第一の臓器によって生産されるかまたはそれに関連するマーカー物質に特異的であり、かつ、フォトスキャニングまたは磁気共鳴画像化装置を用いて検出することのできる薬理学的に不活性なラジオアイソトープまたは磁気共鳴画像部分で放射能標識された抗体は、哺乳動物中の第一の臓器の状態を測定する方法で用いる薬剤を調製するのに用い得る。該第一の臓器は、哺乳動物から外科的に除去された第二の臓器に近接する。該第一の臓器の状態を測定する方法において、哺乳動物は、薬剤を非経口的に注入され、第一の臓器の状態が測定される。
【0027】
抗体は、形成不全性または異所性の組織によって生産されるかまたはそれに関連し、細胞毒性薬剤と複合したマーカー物質に特異的であることができ、また、過形成性組織または異所性の組織の治療方法に用いる薬剤を調製するために用いることができる。該治療方法において、過形成性または異所性の組織を持ち、その組織の治療を必要とするヒトの被検体は、薬剤を非経口的に注入される。
【0028】
さらに、非悪性の細胞または組織に関連するかまたはそれによって生産されるマーカーに特異的であり、かつ、細胞毒性薬剤と複合した抗体またはフラグメントは、該薬剤による治療を受ける患者の非悪性細胞または組織を切除する方法で用いられる薬剤を調製するために用い得る。
【0029】
骨髄細胞に関連するかまたはそれによって生産されるマーカーに特異的であり、細胞毒性薬剤と複合した抗体または抗体フラグメントは、正常な骨髄細胞を再移植する前に、患者の骨髄細胞を破壊するための方法(患者を薬剤で治療し、骨髄細胞を破壊する方法)に用いられる薬剤を調製するために用い得る。 正常な臓器または組織の細胞によって生産されるかまたはそれに関連する抗原に特異的な抗体または抗体フラグメントを含み、かつ、放射線または細胞毒性薬剤または毒素の細胞毒性作用に対して正常な臓器または組織の細胞を防御する細胞防御薬剤と複合した細胞防御複合体は、癌の治療方法で用いる薬剤の調製のために用い得る。該癌の治療方法において、放射線または細胞毒性薬剤での治療が可能なヒトの癌患者は、治療量の細胞毒性放射線または細胞毒性薬剤または毒素で治療され、また、細胞防御量の細胞防御複合体が、患者に投与される。
【0030】
哺乳動物の被検体内の標的とされた非悪性細胞上の成長因子レセプターまたはホルモンレセプターに特異的で、細胞の機能及び増殖に影響を与える抗体は、薬剤を含む組成物を用いて哺乳動物の被検体を治療する、細胞の機能に影響を与える方法で用いる薬剤を調製するために用い得る。標的とされた細胞上のホルモンレセプターまたは成長因子に特異的で、治療薬剤と複合した抗体またはフラグメントは、哺乳動物の被検体内の非悪性細胞に影響を与える状態を治療する方法(該方法において、薬剤を含む組成物が、治療を必要とする被検体に投与される。)で用いられる薬剤を調製するために用い得る。標的とされた細胞上のホルモンレセプターに特異的で、標的とされた細胞のホルモン機能に影響を与える抗体またはフラグメントは、哺乳動物の被検体内の細胞のホルモン機能に影響を与える免疫学的方法(該方法において、薬剤を含む組成物が、被検体に投与される。)で用いる薬剤を調製するために用い得る。
【0031】
明細書と添付の請求項を更に検討すれば、本技術に精通する者は、本発明の目的と長所を更に理解するであろう。
【0032】
一つの実施例において、本発明は、哺乳動物における形成不全性の、あるいは欠落した、あるいは解剖学的に置換した、あるいは異所性の組織または臓器のポジ像の造影法を提供している。この方法は、次の2つのステップより構成される。(a)一定部位および前記組織または臓器にアクセスできる経路によって、目的の前記構造のシンチグラフィ像または増強された磁気共鳴画像を得るのに十分な量のシンチグラフィ造影剤または磁気共鳴画像造影剤を哺乳動物の被検体(または、被験者、被検者、被験体;subject)に非経口的に注入する。(b)前記構造内に前記薬剤が付着するのに十分な量の前記薬剤を注入後、前記構造のシンチグラフィ像または増強された磁気共鳴画像を得る。造影剤は、前記臓器または組織に特異的に結合し、アイソトープまたは磁気共鳴造影剤で標識された抗体/フラグメントを含む。
【0033】
別の実施例において、本発明は哺乳動物の被検体における形成不全性の、あるいは異所性の、あるいは遺残性の組織または臓器の治療方法を提供している。この方法には、一定部位および同組織または臓器にアクセスできる経路によって、同臓器または組織に特異的に結合する薬物学的有効量の抗体/フラグメントの哺乳動物の被検体への非経口的注入が含まれる。抗体/フラグメントには、治療薬が結合されている。
【0034】
別の実施例において、本発明は臓器の一部を外科的切除した後に残留する臓器の組織の検出法を提供している。この場合臓器の組織は、マーカー物質を生産するか、あるいはマーカー物質に関連(associated with)している。この方法は、マーカー物質に特異的で、フォトスキャニング装置を使用して検出できる薬理学的に不活性なアイソトープで放射能標識された抗体のヒトへの非経口的注入を含む。
【0035】
別の実施例において、本発明は、第一の臓器の状態と完全性を明らかにする方法を提供している。第一の臓器は、マーカー物質を生産するか、あるいはマーカー物質に関連しており、哺乳動物の被検体から既に外科的に切除された第二の臓器に近接している。この方法は、マーカー物質に特異的で、フォトスキャニング装置を使用して検出できる薬理学的に不活性なアイソトープで放射能標識された抗体の哺乳動物の被検体への非経口的注入を含む。
【0036】
別の実施例において、本発明は、マーカー物質を生産するか、あるいはマーカー物質に関連する形成不全性または異所性の組織を治療する方法を提供している。この方法には、マーカー物質に特異的で、細胞毒性物質を結合させた抗体のヒトの被験者への非経口的注入が含まれる。別の実施例において、本発明は、正常骨髄細胞を再移植する前の患者において、骨髄細胞を破壊する方法を提供している。この方法には、骨髄細胞に関連するか、あるいは骨髄細胞によって生産されるマーカーに特異的で、細胞毒性物質を結合させた細胞毒性量の抗体または抗体フラグメントの患者への投与が含まれる。
【0037】
別の実施例において、本発明は、癌治療の改善法を提供している。この場合、放射線治療または細胞毒性物質による治療に反応する癌患者は、治療量の放射線または細胞毒性剤による治療を受けている。改善点は、正常細胞によって生産されるか、あるいは正常細胞に関連する抗原に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントに細胞毒性防御剤を結合させて、患者に投与する点である。
【0038】
別の実施例において、本発明は哺乳動物の被検体の非悪性細胞の機能に影響を与える方法を提供している。この方法には、標的細胞上の成長因子レセプター(growth factor receptor)またはホルモンレセプター(hormone receptor)に特異的な抗体から構成される組成物の患者への投与が含まれ、この場合抗体はその細胞の機能と増殖に影響する。別の実施例において、本発明は哺乳動物の被検体における非悪性細胞に影響する状態を治療する方法を提供している。この方法には、そのような治療が必要な被検体に、標的細胞上のホルモンレセプターまたは成長因子に特異的な抗体またはフラグメントを含む組成物の投与が含まれ、この抗体またはフラグメントは治療薬に結合している。
【0039】
別の実施例において、本発明は哺乳動物の被検体の細胞のホルモン機能に影響する免疫学的方法を提供している。この方法には、標的細胞上のホルモンレセプターに特異的な抗体またはフラグメントから構成される組成物の被検体への投与が含まれる。この場合、抗体またはフラグメントは、標的細胞のホルモン機能に影響を与える。
【0040】
別の実施例において、本発明は哺乳動物の被検体において細胞を切除するための免疫学的方法を提供している。この方法は、細胞の切除を必要とする被検体に、切除の対象となる細胞上のホルモンレセプターまたは成長因子レセプターに特異的な抗体またはフラグメントを含む組成物を投与するものである。この場合、抗体またはフラグメントは、化学的切除剤または放射線による切除剤に結合されている。本発明の方法を実行するために有用な組成物および試薬およびキットも提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
上記の方法は、以下のような場合における造影および/または、適切な場合には治療に有用である。
(1)膵臓の島細胞が萎縮または著しく縮小している若年性糖尿病、胸腺発育不全または胸腺無発育、上皮小体と胸腺が形成不全性または欠落しているディ−ジョージ(DiGeorge's)症候群等の、形成不全性の、あるいは欠落した組織または臓器。
(2)子宮内膜腺または支質の埋め込みのような異所性組織および臓器。
(3)妊娠後の胎盤組織の遺残と、臓器を外科的に切除した後の臓器の遺残、および(4)外科的に切除した臓器に近接する臓器の状態。
(5)免疫疾患またはリンパ腫患者の脾臓、骨髄移植が必要な患者の骨髄、または特定の免疫疾患におけるある種のT−リンパ球のような病態プロセスに関与している正常細胞等の、他の治療目的のためのある種の正常臓器または組織の切除。
【0042】
上記の方法には、成長因子レセプター抗体またはホルモンレセプター抗体の使用が含まれ、これらは、そのようなレセプターを持つ標的臓器を標的とする。レセプターの機能は、同抗体によってブロックされ得る。そのようなレセプターを有する組織の疾患に作用させるために、これらの抗体のアイソトープまたは薬物結合体を、同組織および臓器に対する治療薬を運ぶために使用することもできる。例えば、異所性子宮内膜組織が関与している子宮内膜症において、現行の標準的な薬物療法は、17−アルファ−プレグナ−2,3−ジエン−20−イノ]2,3,3−d]−イソキサゾール−17−オールの化学式を有するエチステロン(DANOCRINE、ダナゾールの商標名)から誘導された合成ステロイド投与である。このステロイドは、少なくとも一部は、性ステロイド代謝に作用し、標的臓器において、特に卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の性ホルモンレセプターに作用するものと思われる。現在、このような性腺ステロイドレセプターに対する抗体を、単独で、あるいはアイソトープ、薬物、毒素、ホルモン拮抗物質、サイトカイン、オートクライン等との免疫結合体として使用し、異所性子宮内膜を不活化し、萎縮させることが可能である。
【0043】
上述の方法には、例えば、無月経または不妊の誘発等の、卵巣およびその他のホルモン末端臓器機能に影響を及ぼす免疫学的方法が含まれる。治療物質と結合させた抗体として、あるいは結合させない抗体として、卵巣を標的とする抗体またはFSHレセプターのような卵巣関連ホルモンレセプターを使用することによって、標的臓器において卵巣機能をブロックし、萎縮を引き起こす比較的使いやすく、安全な方法を達成することができる。多くのホルモンおよび成長因子レセプターが知られており、多くの臓器および組織が抗体の標的となり得る性質を示している。抗体は、前記レセプターに結合すると、組織の機能に作用し、免疫学的切除作用を発揮する。また、薬物との結合体として使用されると化学的切除作用を、治療用アイソトープとの結合体として使用されると、放射線による切除作用を発揮する。
【0044】
別の応用は、繊維嚢胞性乳腺疾患の治療におけるものである。FSHレセプター、またはエストロゲンレセプターに対する抗体を、単独あるいは治療物質との免疫結合体として投与し、繊維嚢胞性疾患を縮小し、その症状をコントロールすることができる。更に別の適応は、良性前立腺肥大症または前立腺癌におけるものである。この場合、アンドロゲンレセプターに対する抗体を、単独あるいは治療物質( ホルモン標的臓器拮抗物質、細胞毒性薬剤、毒素またはアイソトープ) との結合体として使用し、前立腺組織の増殖を減少させることができる。
【0045】
正常臓器または組織が異常に発育したり、あるいは体内で置換したり、あるいは切除手術における切除が不十分な場合には、それらを退縮させたり、化学的および/またはアイソトープによる切除を行うために、組織/臓器に関連する抗体を、治療物質を上述の組織に運ぶための組織標的媒体として使用することができる。抗体またはそのフラグメント(またはサブフラグメント)を、アイソトープ、薬物、毒素、光力学的治療物質、サイトカイン、ホルモン、オートクライン等の治療手段と結合させることができるが、これらに限定されない。参考のためにここに全て引用されるWaldmann, T.A., Science 252:1657, 1951; Koppel, G.A.,Bioconjug. Chem. 1:13, 1990; Oeltmann, T.N., and Frankel, A.E., FASEB J.5:2334, 1991; およびvan den Bergh, H.E., Chemistry in Britain, May 1986,430-439 による概説に述べられているように、これらの物質は、細胞毒性物質あるいは転形(modulating)物質として使用され、これまで癌を標的とする抗体との毒性結合体として主に使用されてきた。
【0046】
このような毒性物質と結合させた臓器および組織を標的とする抗体の別の治療応用例は、別の治療法の一部として、特定の正常細胞および組織を切除するというものである。例えば、発生と分化の特定の段階にある骨髄細胞に対する抗体を用いて骨髄を切除する場合、および、リンパ腫または免疫性血小板減少症性紫斑病のような特定の免疫疾患の患者において脾臓を細胞毒性作用により切除する場合等がある。
【0047】
このような臓器および組織を標的とする抗体またはフラグメントの別の治療応用は、これらを細胞防御剤と結合させるというものである。治療中に標的正常臓器および組織を防御するため、化学療法または放射線治療を受けている患者にこの結合体を投与する。既存の抗体が不適当と見なされる場合、あるいは別の、あるいはより識別力の高い特異性が必要な場合、臓器または組織に関連する、あるいは特異的な抗体を生産する幾つかの方法が、当業者に知られている。一般に、細胞全体、組織標本および/または細胞または組織の分画、細胞膜、抗原抽出物または精製抗原を使用して、マウス、ウサギ、ハムスター、ヤギ等の適切な動物の免疫機構を誘発し、必要な場合には凝集によって、および/または適切な従来のアジュバントを併用投与することによって、抗原に免疫原性を付与する。従来の手技により超免疫抗血清を分離し、ポリクローナル抗体を調製することができる。
【0048】
あるいは、現在では確立された方法によって、脾臓細胞を、不死の骨髄腫細胞と融合し、モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞を形成することができる。技術例としては、上記に引用された米国特許出願第609,607号を参照することができる。マウス、またはヒト骨髄腫細胞系等の動物と、動物またはヒトの脾臓またはリンパ球は全て本技術において公知であり、本方法のために作成し、使用することができる。例えば、“Monoclonal Antibodies and Cancer(モノクローナル抗体と癌)”Boss et al.,編、163-170 (Academic Press, 1983) の中の Glassy et al.,“Human Monoclonal Antibodies to Human Cancers (ヒト癌に対するヒトモノクローナル抗体)”を参照することができる。本技術において、現在ではやはり確立された方法となっている上記引用文献中の抗リンパ球クローンをスクリーニングするための方法により、特異的な抗血清またはモノクローナル抗体が、特異性に関してスクリーニングされる。
【0049】
臓器に関連する抗体および臓器に特異的な抗体は、特定の哺乳動物の腫瘍または正常の臓器/組織の抽出物および/または細胞、並びに精製ホルモンレセプターまたは成長因子レセプターを用いて、適切な動物宿主を免疫感作することによって、作成できる。免疫原として腫瘍を使用すると、新生物だけでなく、時にある臓器に限定された性質を示す正常組織成分とも反応する抗体が生じることはよく知られている。身体の種々の組織および臓器間の組織発生と機能に差異があることから、別個の抗原が存在し、識別可能なことが当然示唆される。古典的な免疫感作方法を使用することによって、あるいは特異的な腫瘍によって免疫感作することによって、臓器に特異的な抗原が存在することを主張している多くの科学文献が既に存在している。このことは、GoldenbergらのCancer Res., 3455(1976)によって概説されており、このような抗原が公知であり、利用可能であることを示している。
【0050】
同様の臓器および組織に関連する特異的な抗原は、モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ法によって確認できる。最近の進歩の1 つは、特定の臓器に限定された自己免疫疾患、例えば甲状腺炎、胃炎、潰瘍性大腸炎、筋炎等の患者からのリンパ球またはプラズマ細胞を安定培養することによるヒトハイブリドーマモノクローナル抗体の生産である。公知の方法を用いて、これらの抗体生産細胞は、インビトロ(in vitro)でヒトまたはネズミの骨髄腫細胞と融合され、適切な抗臓器および抗組織抗体を形成するハイブリドーマが生産され、増殖される。特定の腫瘍タイプの患者を、そのようなリンパ球またはプラズマ細胞の供給源として利用したり、あるいは抗臓器および抗組織抗体の生産を刺激するために、このような腫瘍細胞によりこのような患者を更に免疫感作することもできる。それから、本技術において現在では公知の確立された方法により、適切な骨髄腫細胞と融合するために摘出されたリンパ組織が利用される。
【0051】
細胞内抗原を得るために、遠心分離、音波破砕等によって細胞膜の分離または細胞破壊等の本技術において公知の多くの方法によって、臓器に関連し、臓器に特異的な抗原を、ヒトより下位の霊長類、齧歯類、ウサギ、ヤギ等の別の種の免疫感作のために分離することができる。このような目的には、表面または細胞外抗原に対して、細胞内抗原を使用するのが望ましい。この方法においては、臓器に関連し、臓器に特異的な抗原が、脳、甲状腺、上皮小体、喉頭、唾液腺、食道、気管、肺、心臓、肝臓、膵臓、胃、腸、腎臓、副腎、卵巣、精巣、子宮、前立腺等の身体の多くの組織および臓器から得ることができる。更に興味深いことは、本技術においては公知のポリクローナルおよび/またはハイブリドーマモノクローナル抗体生産法によって行われているような、腎臓の糸球体部分と尿細管部分、脳の異なる領域と異なる細胞タイプ、膵臓の内分泌部および外分泌部等の1つの臓器中における異なる組織および細胞成分の、特に問題となっている個々の細胞および組織に限定される抗原と抗原決定基同定による区別である。
【0052】
生検時に(at autopsy)得られた組織から分離された細胞を用いて、抗体を生産することができる。例えば、臓器または組織に対する特異抗体の誘発に必要な一定期間、このような組織によりマウスを免疫感作することが可能である。これらのマウスの脾臓を切除し、次に標準的方法によりネズミの骨髄腫細胞系と融合させる。本技術においては既に標準的な方法を用いて、モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを選択し、増殖させ、臓器または組織に関連する抗体生産性を有するハイブリドーマを臓器または組織の抗体源としてクローン化し、拡大する。通常、量的な差異が有意であれば、画像化を目的とした操作の特異性は十分満たされるので、組織特異性が完璧である必要はない。
【0053】
本発明の方法に有用な抗体およびフラグメントには、正常臓器、組織、細胞に関連する、あるいはこれらによって生産される抗原に対するものが含まれ、特定の新生物の組織と交差反応しても、しなくても構わない。
【0054】
望ましいのは、標識される前、あるいは結合される前に、標的となる細胞、組織または臓器に対する特異的な免疫反応性を少なくとも60%は有し、他の抗原に対する交差反応性が35%以下のものである。
【0055】
具体的な例には、骨髄細胞、特に造血幹細胞、膵臓島細胞、脾臓細胞、上皮小体細胞、子宮内膜、卵巣細胞、精巣細胞、胸腺細胞、B細胞、T細胞、ヌル細胞、血管内皮細胞、胆管細胞、胆嚢細胞、前立腺細胞、FSH、LH、TSH等のホルモンレセプター、上皮成長因子、膀胱細胞、精管等の成長因子レセプターが含まれる。
【0056】
顆粒球と反応し、骨髄細胞を標的とするモノクローナル抗体の一例は、SharkeyらのCancer Res. 50:2823-283(1990) に明らかにされているNP−2である。この抗体は、細胞毒性剤に結合させると、骨髄の切除に有用である。別の顆粒球抗体、MN3 は同様の特性を有する。他の骨髄細胞、特に幹細胞タイプと反応する市販の別の抗体は、同様に骨髄切除に適している。
【0057】
脾臓を標的とする抗体には、Pawlak-Byczkowska, Cancer Research, 49:4568-4577 (1989) において開示されているLL2(EPB−2としても知られる)モノクローナル抗体が含まれる。これは、正常および悪性B 細胞を標的とし、免疫疾患、リンパ腫、その他の疾患を有する患者において正常脾臓細胞の治療に使用され得る。子宮内膜に特異的な抗体は、適切な診断または治療剤をそれぞれ結合させれば、子宮内膜症を標的とし、治療するのに望ましい。
【0058】
本発明において有用な抗体としては、例えばIgG、IgM、IgA、IgD、IgE等の全種類の免疫グロブリン、2つまたは複数の抗原または抗原決定基特異性を有するキメラまたはハイブリッド抗体が考えられる。ポリクローナル抗体も可能であり、ヒトまたは霊長類、ヤギ、ウサギ、マウス等の適当な動物からの精製された親和力を有する(affinity-purified)抗体が望ましい。モノクローナル抗体も本法において使用するのに適しており、その高度の特異性のために望ましいものである。これは、免疫原性抗原製剤による哺乳動物の免疫感作、免疫リンパ細胞または脾臓細胞と不死の骨髄細胞系との融合、特異的なハイブリドーマクローンの分離から成る現在では確立されたものと見なされる方法によって容易に調製できる。抗体の有用性を左右するのは、主に抗原に対する抗体の特異性であるので、種間融合や高変異性領域の遺伝子工学操作等のさほど確立されていないモノクローナル抗体作成方法も除外されない。ヒトモノクローナル抗体、種間モノクローナル抗体、キメラ(例えばヒト/マウス)モノクローナル抗体、遺伝子工学抗体等のより新しいモノクローナル抗体生産技術も利用できることが認められるであろう。
【0059】
本発明において有用な抗体フラグメントは、ハイブリッドフラグメントを含むF(ab’)2 、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv等である。免疫グロブリンの高変異性抗原結合領域を保持し、Fab’フラグメントよりも小さいサブフラグメントも全て有用である。これには、抗原結合部位を組み入れているか、さもなければ、天然の免疫グロブリンフラグメントと殆ど同じ方法で標的手段としてin vivoで機能する遺伝子工学および/または組み換えタンパク質が含まれるであろう。これらは、単鎖でも多重鎖でも構わない。このような単鎖結合分子は、米国特許第4,946,778号に明らかにされており、これは参考の為に引用するものである。Fab’抗体フラグメントは、F(ab’)2 の還元開裂によって簡単に作ることができ、F(ab’)2 そのものは、無傷の免疫グロブリンのペプシン消化によって作ることができる。Fab抗体フラグメントは、無傷のIgを還元条件下でパパイン消化して得られる。あるいは、完全なIgを注意深くパパイン消化することによってF(ab)2 フラグメントを開裂させて作ることができる。フラグメントは、遺伝子工学によって生産することもできる。
【0060】
ハイブリッド抗体と同様に、抗体、アイソトープ、免疫グロブリンの種類の混合物を使用できることも言及すべきである。ハイブリッドは、2種類の抗原特異性を持つことが可能である。例えば、1つのアームが1つの臓器抗原に結合し、もう1つのアームが別の抗原に結合する、あるいは1つのアームが1つの抗原決定基に結合し、もう1つのアームが別の抗原決定基に結合することができる。上述の説明は単なる例に過ぎず、他の特異性の組み合わせも考えられ、同様に本発明の範囲内に入る。
【0061】
2つの特異性を有するハイブリッド抗体フラグメントは、米国特許第4,361,544号に明らかにされている抗腫瘍マーカーハイブリッドと同様に作成できる。ハイブリッド抗体を作成する別の方法は、米国特許第4,474,893号、米国特許第4,479,895号、米国特許第4,714,681号、米国特許第4,474,893号および MilsteinらのImmunol. Today, 5,299(1984) に開示されており、これらは全て参考のためにここに引用するものである。本発明の方法には、予め標的を定めた抗体法の使用と、ポルフィリンおよび蛍光色素による光の使用が含まれる。従来の技術において判明した方法は癌治療に利用されている。しかし、利用される抗体フラグメントがここに特定された臓器および組織を標的とする場合には、同様の方法を本発明においても利用することができる。
【0062】
例えば、参考のためにここに全て引用されるものであるが、Paganelli, Nucl.Med. Commun. 12:211, 1991は、2および3段階の手順による放射線の標的となる細胞と組織への伝達に加えて、ストレプトアビジン結合抗体、アビジンおよびビオチンと組み合わせたビオチニル化抗体、二価抗体、抗体−ハプテン複合体、酵素結合抗体等を使用する抗体プレターゲット法(antibody pretargeting prodedure)を明らかにしている。
【0063】
2または3段階の手順により、細胞または組織に予め標的が定められる場合、ストレプトアビジン結合抗体、アビジンおよびビオチンと組み合わされたビオチニル化抗体、二価抗体、抗体−ハプテン複合体、酵素結合抗体から成る第一の組成物を被検体に注入する。この場合、抗体は上述の細胞または組織に関連する、あるいはそれらによって生産されるマーカーと特異的に結合する抗体または抗体フラグメントである。第一の組成物が標的組織または細胞に付着後、目的の造影剤、治療薬、細胞防御剤または活性化剤を持つ第二の組成物を投与する。第二の組成物は、第一の組成物を活性化するか、あるいは第一の組成物と結合して目的の効果を発揮するものである。
【0064】
細胞または組織に、3段階の手順で予め標的が定められる場合、ビオチニル化抗体またはフラグメントから構成される第一の組成物を被検体に注入し、次に循環血液中のビオチニル化抗体またはフラグメントを切除する物質から成る切除組成物を注入し、次に目的の造影剤、治療剤、細胞防御剤、または活性化剤と結合させたビオチンから構成される第二の組成物を注入する。ここで“抗体”という言葉が使用される場合には、上述の全種類の抗体とフラグメントがその中に含まれる。
【0065】
癌治療における光とポルフィリンの使用は、van den Bergh (Chemistry in Britain, May 1986, Vol.22,pp.430-437) によって概説されており、参考のためにここに全て引用されるものである。この報告において、光増感剤を腫瘍まで輸送するために、モノクローナル抗体を光増感剤と結合させて使用することが言及されている。これは、Oseroff, Photochem. Photobiol. 41:35S, 1985、MewらのCancer Res.45:4380, 1985、HasanらのImmunity to Cancer, pp.471-477, 1989[発行者、Alan R. Liss, Inc.]、PelegrinらのCancer 67:2579, 1991[参考のために全てここに引用するものである]によって早期に示唆されており、組織培養または抗腫瘍抗体に付着させた蛍光色素の動物試験が関与していた。
【0066】
形成不全性の、あるいは欠落した、あるいは変位した、あるいは異所性の組織または臓器に特徴的なマーカーに対する放射性同位元素標識抗体は、新しい種類の薬剤である。これは、特定臓器の位置と形状を確認し、その中の異常の可能性を明らかにするのに使用できる免疫学的な臓器に特異的な造影剤の一例である。このような薬剤は、肝臓、脾臓、膵臓等の臓器の造影に有用であり、これらの臓器の組織に特異的に結合する多くの抗体が知られており、また現在研究開発中である。
【0067】
使用されるラジオアイソトープの内、位置特定および/または治療には、ガンマ放射体、ポジトロン放射体、エックス線放射体、蛍光放射体が適しており、ベータ放射体とアルファ放射体も治療に使用できる。本発明の方法に適したラジオアイソトープは、アスタチン−211、ヨウ素−123、ヨウ素−125、ヨウ素−126、ヨウ素−131、ヨウ素−133、ビスマス−212、シュウ素−77、インジウム−111、インジウム−113m、ガリウム−67、ガリウム−68、ルテニウム−95、ルテニウム−97、ルテニウム−103、ルテニウム−105、水銀−107、水銀−203、レニウム−186、レニウム−188、テルル−121m、テルル−122m、テルル−125m、ツリウム−165、ツリウム−167、ツリウム−168、テクネチウム−99m、フッ素−18、銀−111、白金−197、パラジウム−109、銅−67、リン−32、リン−33、イットリウム−90、スカンジウム−47、サマリウム−153、ルテチウム−177、ロジウム−105、プラセオジム−142、プラセオジム−143、テルビウム−161、ホルミウム−166、金−199、コバルト−57、コバルト−58、クロム−51、鉄−59、セレン−75、タリウム−201、イッテルビウム−169等である。望ましくは、ラジオアイソトープは10〜5,000kevの範囲で放射し、より望ましくは50〜1,500kev、最も望ましいのは50〜500kevで放射する。
【0068】
診断利用に望ましいアイソトープは、ヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、ガリウム−67、ルテニウム−97、テクネチウム−99m、銅−67、コバルト−57、コバルト−58、クロム−51、鉄−59、セレン−75、タリウム−201、イッテルビウム−169等である。
【0069】
治療利用に望ましいアイソトープは、ヨウ素−125、ヨウ素−131、レニウム−186、レニウム−188、銀−111、白金−197、パラジウム−109、銅−67、リン−32、リン−33、イットリウム−90、スカンジウム−47、サマリウム−153、ルテチウム−177、ロジウム−105、プラセオジム−142、プラセオジム−143、テルビウム−161、ホルミウム−166、金−199等である。細胞に対する細胞毒性作用を有する多くの薬剤と毒素が知られている。それらは、Merck Index、Goodman and Gilman 等の薬剤と毒素の概論と上記に引用した参考文献に記載されている。本技術において公知の従来の方法によって、このような薬剤はどれでも、抗体に結合あるいは付加することができ、これは、上記に報告された方法からの類推によって説明される。
【0070】
本発明は、例えば光力学的治療において使用される抗体およびフラグメントに結合させ、適切な非イオン化放射線と共に使用される色素についても考慮している。本発明において有用な公知の細胞毒性剤の例がGoodman et al.,“The Pharmacological Basis of Therapeutics”第6版、A.G. Gilman et al., 編/Macmillan Publishing Co. New York, 1980に一覧されている。これらには、以下が含まれる。タキソール(taxol)、メクロレタミン等のナイトロジェンマスタード、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタード、クロラムブシル;チオテパ等のエチレンイミン誘導体;ブスルファン等のアルキルスルホン酸塩;カルムスチン、ロムスチン、セムスチン(semustine)、ストレプトゾシン等のニトロソ尿素;ダカルバジン等のトリアゼン(triazene);メトトレキサート等の葉酸類似体;フルオロウラシル、シタラビン、アザリビン等のピリミジン類似体;メルカプトプリン、チオグアニン等のプリン類似体;ビンブラスチン、ビンクリスチン等のビンカアルカロイド;ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシン等の抗生物質;L−アスパラギナーゼ等の酵素;シスプラチン等の白金配位錯体;ヒドロキシ尿素等の置換尿素;プロカルバジン等のメチルヒドラジン誘導体;ミトーテン等の副腎皮質抑制剤;副腎皮質ステロイド(プレドニゾン)、プロゲスチン(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロプロゲステロン、酢酸メゲストロール)、エストロゲン(ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン(タモキシフェン)、アンドロゲン(プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)等のホルモンおよび拮抗剤。
【0071】
本発明の抗体およびフラグメントは、本技術において公知の種々の方法によって放射性同位元素標識が可能である。これらの方法の多くは、上記に引用された米国特許および特許出願に明らかにされており、直接的な放射性ヨウ素処理が含まれる。Rayudu、前引用文献中、およびChildsらのJ. Nuc. Med., 26,293(1985)も参照することができる。in vivo で使用するためのアイソトープ標識に適した従来の放射性同位元素標識方法はどれでも、本発明に従って造影剤を標識するのに一般に適している。
【0072】
抗体およびフラグメントは、薬剤、毒素、ホウ素付加物等の治療薬、アイソトープ、非イオン化放射線により活性化される蛍光色素、ホルモン、オートクライン、サイトカイン、細胞防御剤等と、本技術に精通する者にとって公知の方法により結合させることができる。参考のためにここに引用するShinらの米国特許第5,057,313号は、そのような方法の1つについて記述している。
【0073】
米国特許第5,057,313号に明らかにされているように、1つのキャリアへの薬剤の付加は、薬剤の効力、標的を定める抗体の効率、標的に達した後の結合体の有効性によって左右される。多くの場合、少なくとも20、望ましくは50、通常100以上の薬剤分子をキャリアに付加するのが望ましい。薬剤が循環する際に、結合体として薬剤を一部または完全に解毒する能力によって、薬剤の全身的副作用が軽減され、結合していない薬剤の全身投与が許容されない場合でも、その薬剤を使用することが可能となる。
【0074】
毒素は薬剤よりも少なく付加されるのが普通であるが、1つのキャリアに少なくとも1、望ましくは5、場合によっては10以上の毒素分子を付加し、標的を定めた輸送には、抗体に少なくとも1つのキャリア鎖を付加するのが有利である。結合体は一般に燐酸緩衝生理食塩水に溶解した滅菌水溶液として投与される。投与量は、利用される治療法、目的とする効果、患者に対する副作用によって変わる。造影剤は通常一定部位に投与され、造影剤が移動し、臓器または組織内に取り込まれるのを確実に保証するような方法で投与される。これは造影される組織または臓器によって異なる。
【0075】
薬剤は、例えば静脈内、動脈内、筋肉内、または皮下投与等の全身経路により、あるいは目的の組織または臓器内への付着を保証する全身経路の組み合わせによって注入されるのが望ましい。通常滅菌生理食塩水溶液である標識抗体造影剤の容量は、通常注入する部位、濃度、回数によって多少異なる。薬剤の活性は、Tc−99m標識薬剤の1回注入当たり通常約10−40、望ましくは約15−25mCiである。
【0076】
他のラジオアイソトープでは活性が異なり、その半減期、造影特性、すなわちエネルギー範囲、放射強度、散乱等によって、また標識物質、特に抗体結合体の安定性、それらの分布とクリアランス、造影実施時期によって異なることが認められている。これらのパラメータの調節は、普通の熟練医師にとっては通常の手技である。臓器または組織の“ポジ”の画像を得るために、通常造影剤注入後約24時間までに、望ましくは約2−6時間以内に造影を実施する。2および3段階の標的法はより長時間を要する。
【0077】
造影剤注入のタイミングは、使用される造影剤の種類と方法、目的の臓器および組織の標的パターンによって異なる。結合体は一般に緩衝生理食塩水の滅菌水溶液として投与される。約1−200mgの結合体の投与単位が、熟練医師によって決定される投与期間投与される。投与量を減少させ、および/または他の種からの抗体を使用し、および/または低アレルギー抗体、例えばキメラマウス/ヒト、CDR−移植(“ヒト化”)、または霊長類抗体を使用し、患者の感受性を低下させなくてはならない場合がある。
【0078】
投与経路は、静脈内、動脈内、筋肉内、胸膜腔内、腹腔内、硬膜下腔内投与または灌流等である。上記に明らかにされた臓器または組織に特異的な、あるいは臓器または組織に関連する抗体の一応用例は、正常臓器のシンチグラフィと磁気共鳴画像法(MRI)に対するものである。この場合、正常な場合には臓器の“ポジ”画像を得るために、疾病が存在する場合には臓器内の欠損を視覚化するために、適切に放射性同位元素標識された抗体/フラグメントまたはMR画像造影剤を投与する。これは、免疫学的特異性に基づき、体内の臓器および組織の臓器および組織に特異的な核磁気共鳴画像を得るための新しい方法を提供するものである。
【0079】
本発明の方法は、シンチグラフィまたは磁気共鳴画像法の造影剤を用いて実行することができる。これらの造影剤の組み合わせも使用できるが、更に複雑な器械を使用し、データ処理が必要となる。本発明の方法によりシンチグラフィ造影は、造影剤として放射性同位元素標識抗体を使用し、組織または臓器のシンチグラムを得ることによって行われる。放射性同位元素標識抗体は、組織または臓器によって生産されるか、あるいはそれらに関連するマーカーと結合するか、あるいは組織または臓器に近接する部位に結合し、構造内に流入し、その中の不連続な病巣において抗原/マーカーが付着する。
【0080】
シンチグラムは通常50−500keVの範囲のエネルギーを検出するための1つ以上のウィンドウを持つガンマイメージングカメラによって撮像される。より高いエネルギーのラジオアイソトープ、ベータまたはポジトロン放射体を使用する場合には、適切な検出器を備えたイメージングカメラを使用しなくてはならない。これらは全て本技術において通常のものである。シンチグラフィのデータは、後に処理するためにコンピュータに保存できる。
【0081】
磁気共鳴画像法(MRI)は、造影剤がラジオアイソトープではなく磁気共鳴(MR)増強剤を含む点以外は、シンチグラフィ造影法と同様の方法で実施される。磁気共鳴現象が、シンチグラフィとは異なる原理で作動することが認められている。通常、発生するシグナルは、画像化される領域の水分子の水素原子核中のプロトンの磁気モーメントの緩和時間と相関している。磁気共鳴画像造影剤は、緩和時間の速度を速めることによって作用し、これによって造影剤が付着する領域内の水分子と、体内の別の場所の水分子の間のコントラストを増強する。しかし、この造影剤の効果は、T1 およびT2 の両者を短縮させ、前者はコントラストを大きくし、後者はコントラストを小さくする。従って、この現象は濃度依存性で、効果を最大にするための常磁性物質の至適濃度が通常存在する。この至適濃度は、使用される特定の造影剤、画像化部位、画像化法、すなわちスピンエコー法、飽和回復法、反転回復法および/または他の様々なT1 またはT2 に強力に依存している画像化テクニック、および造影剤が溶解または懸濁されている媒質によって変わる。これらの因子とその相対的重要性は、本技術において公知である。例えば、Pykett, Scientific American, 246,78(1982)、RungeらのAm. J. Radiol., 141,1209(1993)を参照することができる。
【0082】
MR画像造影剤は、合理的に達成可能で、患者の安全性と装置の設計と矛盾しない磁場強度を使用して、体外カメラによって検出できるように十分量存在しなくてはならない。このような造影剤の必要条件は、媒質内の水分子に対し影響を与えるこれらの造影剤に関する技術において公知であり、特に前掲引用文献のPykettと前掲引用文献のRunge et al., において明らかにされている。
【0083】
磁気共鳴画像増強剤に結合される抗体の作成は、種々の方法によって可能である。抗体分子に多数の常磁性イオンを付加するために、イオンを結合するための多数のキレート剤群を付着させる長い末端を有する試薬と、抗体分子を反応させなくてはならない場合がある。このような末端はポリリジン、多糖類、またはその他の誘導された、あるいは誘導可能な鎖が可能である。鎖は、キレート剤群を結合させることができる基を持っている。このようなキレート剤群の例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリオキシムおよびこの目的に有用であることが公知の同様の群である。キレートは通常、免疫反応性の喪失を最小にし、凝集および/または内部の交差結合を最小にすることができる基によって抗体と結合される。より一般的ではないが、キレート剤を抗体と結合させるための方法と試薬が、Howthorneの同時継続中の米国特許出願第742,436号、1985年6月7日に受理された“抗体結合体”と表題が付けられた中に明らかにされており、これは参考のためにここに全て引用されるものである。
【0084】
本技術において公知のMRI 造影剤は、例えば、ガドリニウム、鉄、マンガン、レニウム、ユウロピウム、ランタニウム、ホルミウム、フェルビウム等がある。MRスキャンはコンピュータに保存され、画像はシンチグラフィデータと同様に処理される。
【0085】
放射線および細胞毒性剤による癌治療中に正常細胞、組織および臓器を防御する数種の薬剤は、技術に精通する者にとって公知である。このような薬剤は、“Cancer Chemotherapy -Principle & Practice (癌化学療法−原理と実際)”,Chabner et al.,編、J.B. Lippincott Company, Philadelphia, 1990、特に第18章のColeman et al.,による“Radiation and Chemotherapy Sensitizers andProtectors(放射線治療および化学療法の増感剤と防御剤)”に明らかにされており、参考のためにここに引用するものである。
【0086】
これらの薬剤には、米国Bioscience社によって開発されたエチオール(Ethyol)として公知のWR−2721(S2−[3−アミノプロピルアミノ]エチルホスホロチオニックアシド)、WR−2721の脱燐酸化代謝産物、WR−1065とMGI Pharma社によって開発されたMGI136等がある。
【0087】
試薬は通常キットの形態で供給され、本発明の方法において使用するために改変された。キットは通常標識された試薬の注射液、凍結乾燥抗体/フラグメントまたは抗体/フラグメント結合体を別々に密閉した滅菌済バイアルと従来の注射用溶液の滅菌済バイアルを含み、投与直前にこの溶液によってこれらの薬剤は混合される。
【0088】
キットには、抗体を標識するための試薬も含まれることがある。例えば、クロラミン−T(I−131またはI−123の標識用)、SnCl2 [市販の過テクネチウム酸(pertechnetate)を使用するTc−99mの標識用]、試薬を篩にかけ、および/または精製するための短いカラム、その他の通常の付属品等である。
【0089】
以下は、本発明の実施態様例である。
1.活性成分として、非腫瘍細胞若しくは非腫瘍組織により生産されるか、またはそれらに関連するマーカーに特異的に結合する抗体または抗体フラグメントを含んでなる医薬剤であって、前記抗体または抗体フラグメントは治療剤と複合し、前記医薬剤は患者の非腫瘍細胞又は非腫瘍組織の機能を除去するか、または該機能に影響を与える方法に使用するための医薬剤であり、前記医薬剤を患者に投与して、非腫瘍細胞又は非腫瘍組織が除去されるかそれらの機能に影響を与えることを特徴とする医薬剤。
【0090】
2.前記非腫瘍細胞が、異所性組織、残留組織及び骨髄からなる群から選択される実施態様例1に記載の医薬剤。
3.非腫瘍細胞又は非腫瘍組織に生産されるか、またはそれらに関連するマーカーが、ホルモンレセプター又は成長因子である実施態様例1に記載の医薬剤。
4.抗体が、Fv、単鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab)2フラグメント又は無傷の抗体である実施態様例1に記載の医薬剤。
5.抗体またはフラグメントが、標的細胞又は標的組織に対して少なくとも60%の特異的な免疫反応性を有し、他の抗原に対して35%未満の交差反応性を有する実施態様例1に記載の医薬剤。
【0091】
6.ラジオアイソトープが、ヨウ素−125、ヨウ素−131、レニウム−186、レニウム−188、銀−111、白金−197、パラジウム−109、銅−67、リン−32、リン−33、イットリウム−90、スカンジウム−47、サマリウム−153、ルテニウム−177、ロジウム−105、プラセオジム−142、プラセオジム−143、テルビウム−161、ホルミウム−166及び金−199から成る群から選択される実施態様例1に記載の医薬剤。
【0092】
7.細胞又は組織が、ストレプトアビジン複合化抗体、アビジンとビオチンの結合に利用されるビオチニル化抗体、二価抗体、抗体−ハプテン複合体又は酵素複合化抗体を含む第一の組成物で予め標的化され、ここで、抗体は、非腫瘍細胞又は非腫瘍組織に生成されるかそれらに関連するマーカーと特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントであり、第一の組成物が標的組織又は標的細胞に付着した後、第一の組成物上の治療剤を活性化するか、又は、治療剤を第一の組成物と連結して、治療剤を生成する第二の組成物が投与されることを特徴とする実施態様例1に記載の医薬剤。
【0093】
8.細胞又は組織が、ビオチニル化抗体又は断片を含む第一の組成物を患者に注入し、選択により、循環しているビオチニル化抗体又は断片を除去するための薬剤を含むクリアリング組成物を該患者に注入し、その後、アビジンを注入し、最後にラジオアイソトープと複合したビオチンを含む第二の組成物を注入することによって予め標的化されることを特徴とする実施態様例1に記載の医薬剤。
9.前記非腫瘍細胞又は非腫瘍組織が、異所性組織である実施態様例1に記載の医薬剤。
10.前記非腫瘍細胞又は非腫瘍組織が、残留組織である実施態様例1に記載の医薬剤。
【0094】
11.前記非腫瘍細胞又は非腫瘍組織が、正常器官組織である実施態様例1に記載の医薬剤。
12.前記非腫瘍細胞又は非腫瘍組織が、骨髄である実施態様例1に記載の医薬剤。
13.前記非腫瘍性細胞又は非腫瘍性組織が、子宮内膜組織である実施態様例1に記載の医薬剤。
14.前記非腫瘍性細胞又は非腫瘍性組織が、正常脾臓組織である実施態様例1に記載の医薬剤。
15.治療剤が、ラジオアイソトープ、薬剤、毒素、非イオン化放射により活性化される蛍光色素、ホルモン、オートクリン及びサイトカインからなる群から選択される細胞毒性剤である実施態様例1に記載の医薬剤。
【0095】
16.細胞毒性剤が、タキソール、メクロレタミン、シクロフォスファミド、メルファラン、ウラシルマスタード、クロラムブシル、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、アザリビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、L−アスパラキナーゼ、シスプラチン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトーテン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸、メドロプロゲステロン酢酸、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、テストステロンプロピオン酸またはフルオキシメステロンからなる群から選択される実施態様例15に記載の医薬剤。
【0096】
更に詳細な説明が無くても、本技術に精通する者は、前述の説明を用いて、本発明を全範囲にわたり利用することができると確信される。従って、以下の望ましい具体例は、単なる例と考えるべきで、どのような方法であろうと発見の残りの部分を限定するものではない。以下の具体例において、温度は全てセ氏で未補正のまま表示され、特に表示がない限り、全ての割合とパーセンテージは重量で表示されている。
【実施例1】
【0097】
膵臓細胞の画像化死亡直後にヒト生検標本から得られた内分泌性の膵臓のランゲルハンス細胞に対するハイブリドーマ−モノクローナル抗体をマウスにおいて作成する。膵臓のランゲルハンス細胞に比較的高い特異性を示す抗原決定基に対し、例えば免疫組織学によって証明されるように、反応性を示すモノクローナル抗体F(ab’)2 を、I−123等のガンマ放射アイソトープで標識する。例えば、クロラミン−Tを用いてI−123で標識した内分泌性の膵臓抗原に対する0.15mgのモノクローナル抗体を3.0mCiの線量で、内分泌性の膵臓に病変を有する3カ月の男児に静注する。体外ガンマカメラによる画像化を、消去法を行わずに静注6、24、48時間後に実施する。この特殊な症例において、膵臓内のI−123の放射能が殆ど認められない程度に低下していることから、生後間もなく膵臓ホルモンの欠乏を示す乳児において内分泌性膵臓の病態が存在することが示唆される。
【実施例2】
【0098】
骨髄切除と癌治療骨と骨髄の浸潤を伴う進行した乳癌の中年女性の骨髄の一部を、骨髄から癌細胞をin vitroで除去した後再移植するために、切除し、採取する。次に、患者の骨髄を、Griffithsの方法(Cancer Res.51:4594,1991) に従って200mCiのレニウム−188で標識した20mgのNP−2モノクローナル抗体F(ab’)2 を静注することによって破壊する。約3週間後、重篤な骨髄毒性の所見が認められ、造血成長因子の投与と併用して、以前に癌細胞を除去しておいた自己骨髄の注入が必要となった。この症例では、骨髄移植の前後にGM−CSFを繰り返し投与した。6週間後、患者は骨髄機能を回復し、MN3−Fab’(Tc−99m)骨髄スキャンは転移性欠損の所見を伴わない良好な骨髄像を示している。患者は現在転移性乳癌の他の部位の治療の候補となっている。
【実施例3】
【0099】
子宮内膜症の検出女性は、無月経と不妊を訴え、子宮内膜症が疑われた。患者に、Tc−99mで標識された抗子宮内膜モノクローナル抗体Fab’1mgを静注した。4時間後、全身プラナースキャンによって右胸部下部と後腹膜腔に放射能の異常集積が認められた。これは、その直後の多層縦断断層撮影により確認された。それから、患者を切除治療に移行した。
【実施例4】
【0100】
子宮内膜症の治療女性は子宮内膜症と診断され、治療のために婦人科医に紹介された。子宮内膜組織に関連するモノクローナル抗体IgGおよびFSHレセプターに対するモノクローナル抗体IgGをクロラミン−T法によりI−131で10mCi/mgの比放射能で標識し、この組み合わせを静注し、100mCiの線量のI−131を投与する。翌月の間を通して、末梢血液細胞を監視後、6週間後に治療を繰り返す。更に6週間後、患者は症状の完全緩寛を示した。
【0101】
前記実施例は、前記実施例に使用されている物質の代わりに、包括的あるいは具体的に記述されている本発明の反応物および/または操作条件を使用することによって、繰り返すことができ、同様に成功し得るものである。本発明は公知の抗体またはマーカーの使用に限定されるものではなく、臓器または組織によって生産される、あるいはそれらに関連する全てのマーカーに対する抗体を用いて実施できるものである。
【0102】
前記説明より、本技術に精通する者は、本発明の意図と範囲を逸脱することなく本発明の本質的な特徴を容易に確認でき、また種々の利用法と条件に適合させるために本発明に種々の変更と改変を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正常細胞又は組織に関連のある又は正常細胞又は組織により産生されるマーカーに特異的な抗体又は抗体断片を含む医薬であって、正常細胞又は組織の除去が前記正常細胞又は組織の機能に影響することができる医薬。
【請求項2】
抗体又は抗体断片がコンジュゲートされている請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
抗体又は抗体断片がコンジュゲートされていない請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
抗体又は抗体断片が細胞毒性剤にコンジュゲートされている請求項2に記載の医薬。
【請求項5】
細胞又は組織が、ストレプトアビジンにコンジュゲートした抗体、アビジン及びビオチンによるコンジュゲートに使用されるビオチン化抗体、二官能性抗体、抗体−ハプテン複合体、又は酵素にコンジュゲートした抗体を含む第1の組成物によりプレターゲッティングされる請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬であって、前記抗体は、前記正常細胞又は組織に関連のある又は前記正常細胞又は組織により産生されるマーカーに特異的に結合する抗体又は抗体断片であり、第1の組成物が標的細胞又は組織に付着した後、第1の組成物の治療剤を活性化する、又は第1の組成物に治療剤を結合させて治療剤を産生する第2の組成物が投与される請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
正常細胞又は組織が、形成不全、推定される欠損、置換又は異所性のものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項7】
抗体又は抗体断片が、正常細胞又は組織の成長因子のレセプター又はホルモンレセプターである請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項8】
正常細胞又は組織に関連のある又は正常細胞又は組織により産生される抗原に特異的であり、ストレプトアビジンにコンジュゲートした抗体又は抗体断片、アビジン及びビオチンによるコンジュゲートに使用されるビオチン化抗体又は抗体断片、二官能性抗体又は抗体断片、抗体又は抗体断片とハプテンの複合体、又は酵素にコンジュゲートした抗体又は抗体断片である抗体又は抗体断片である第1の組成物と、
第1の組成物に結合し、細胞毒性剤を運搬する第2の組成物と
を含むキット。
【請求項9】
正常細胞又は組織に関連のある又は正常細胞又は組織により産生される抗原に特異的であり、ストレプトアビジンにコンジュゲートした抗体又は抗体断片、アビジン及びビオチンによるコンジュゲートに使用されるビオチン化抗体又は抗体断片、二官能性抗体又は抗体断片、抗体又は抗体断片とハプテンの複合体、又は酵素にコンジュゲートした抗体又は抗体断片である抗体又は抗体断片である第1の組成物と、
第1の組成物に結合し、細胞保護剤を運搬する第2の組成物と
を含むキット。
【請求項10】
薬理学的に許容可能な無菌注射媒体中の、正常細胞又は組織に関連のある又は正常細胞又は組織により産生される抗原に特異的な抗体又は抗体断片を含む、無菌の注射可能な組成物。
【請求項11】
薬理学的に許容可能な無菌注射媒体中の、細胞毒性剤にコンジュゲートした、正常細胞又は組織に関連のある又は正常細胞又は組織により産生される抗原に特異的な抗体又は抗体断片を含む、無菌の注射可能な組成物。
【請求項12】
薬理学的に許容可能な無菌注射媒体中の、細胞保護剤にコンジュゲートした、正常細胞又は組織に関連のある又は正常細胞又は組織により産生される抗原に特異的な抗体又は抗体断片を含む、無菌の注射可能な組成物。

【公開番号】特開2006−83183(P2006−83183A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322919(P2005−322919)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【分割の表示】特願2000−649(P2000−649)の分割
【原出願日】平成5年4月2日(1993.4.2)
【出願人】(599176263)イムノメディクス, インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】