説明

臓器/四肢を保存するための組成物の用法

この発明は、臓器又は四肢を保存するための組成物の用法であって、該組成物が少なくとも1種の半フッ素化アルカン化合物及び少なくとも1種の液状シロキサンを含有すると共に、0.8〜1.5g/cmの密度を有する組成物である該用法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、臓器(organ)及び四肢(limb)を保存するための組成物の用法に関する。
【背景技術】
【0002】
臓器又は四肢を移植のために摘出するに際しては、これらを移植に供するまでは、これらを、ほとんど損傷を受けないで、しかも可能な限り腐敗しない状態で保存しなければならない。切断され後で再び縫合される四肢は、これらが血液循環路を再び完成させるまでは、保護された条件下で保存されなければならない。臓器又は四肢は機械的な損傷から保護されなければならないだけでなく、これらが血液循環路に介入していないという事実に起因して発生する有害な効果からも保護されなければならない。臓器又は四肢を循環系から切り離した直後から発生する腐敗の開始又は崩壊過程を遅延させるために、種々の方法が開発されている。
【0003】
1つの可能な選択肢には、臓器又は四肢を液状のパーフルオロカーボン中で保存する方法が含まれる。パーフルオロカーボンは不活性であるという利点を有する。即ち、パーフルオロカーボンは臓器又は四肢の組織と反応しない。パーフルオロカーボンは、高い酸素吸収能を有するという利点も有する。このため、パーフルオロカーボン中で保存される臓器又は四肢には酸素が供給される。この酸素供給によって、臓器又は四肢の生存期間は延長される。従って、パーフルオロカーボンの使用は、移植医療における重要な前進である。
【0004】
しかしながら、パーフルオロカーボンを使用するときの難点は、臓器又は四肢の密度に比べて遙かに高い密度を有するということである。このため、臓器又は四肢は液状のパーフルオロカーボン中には浸漬せず、該液体に浮遊する。臓器又は四肢がパーフルオロカーボンによって包囲されるようにするためには、浮力に対抗する力を加える必要がある。一般的には、この対抗力の印加は、保持具を用いて臓器又は四肢をパーフルオロカーボンの液面下に保持することによっておこなっている。このような保存状態が達成されたときにのみ、臓器又は四肢に十分な酸素が供給されると共に、臓器又は四肢を、これらに対して有害な環境と接触させないようにすることが保証される。しかしながら、組織中の毛細管系は保持具によって機械的な損傷を受ける。このような組織構造への損傷が広範囲に及ぶときには、これらの移植又は再度の縫合は不可能となる。
【0005】
パーフルオロカーボンの別の難点は、他の化合物に対する溶解能が低いことである。このため、パーフルオロカーボンの保存溶液中へ、臓器又は四肢の保存に役立つ機能を発揮する活性物質を添加することができない。
【0006】
また、凍結保存をおこなうために、臓器を非常に低い温度で保存する方法が知られている。しかしながら、このような目的を達成するためには、まず第1に、組織から水分を除去することによって、細胞が凍結過程中に崩壊しないようにしなければならない。凍結保存の場合の保存温度は−100℃〜−180℃である。凍結保存は、機械的応力の影響を非常に受けにくい細胞に対しては適しているが、臓器や損傷を受けやすい組織に対しては重大な問題をもたらす。
【0007】
従って、臓器又は四肢を保存するための組成物に対する要求は多様である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、可能な限り僅かな損傷しか受けないように臓器及び四肢を完全に貯蔵して保存できる組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、組織の脱水処理を必要とせずに直ちに使用可能な無菌性組成物であって、一般的に採用されている条件に対して簡単な方法で適合させることができる無菌性組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、臓器と四肢を安定化させると共に有害な影響を回避させる物質の溶解を可能にする組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記の目的は、本願の請求項1に規定される組成物によって達成された。
【0012】
驚くべきことには、次のことが判明した。即ち、周囲温度で液体である少なくとも1種の半フッ素化化合物(該化合物は半フッ素化アルカン及び/又はヒドロフルオロエーテルであってもよい)及び周囲温度で液体である少なくとも1種のシロキサンを含有する組成物は、臓器と四肢を完全に保存できる方法を提供し、また、該組成物中においては、半フッ素化アルカン化合物及び液状シロキサンが良好なガス溶解能を発揮するので、臓器と四肢へ酸素を供給することが可能となる。さらに、本発明による組成物は、臓器と四肢の保存性をさらに改善する物質の添加を可能にする。
【0013】
さらにまた、本発明による組成物は、保存されるべき臓器又は四肢の周囲にバリヤー層を形成させると共に、貯蔵されるべき臓器又は四肢の汚染を防止するという利点をもたらす。該組成物自体は病原菌に対して耐性を示し、また、該組成物は十分な殺菌処理に付すことができる。
【0014】
本発明による組成物は、化学的、物理的及び生理学的に不活性であり、また、非毒性である。
【0015】
従って、本発明は、臓器又は四肢を保存するための組成物の用法であって、該組成物が少なくとも1種の液状の半フッ素化アルカン化合物、少なくとも1種の液状のシロキサン、又は少なくとも1種の液状の半フッ素化アルカン化合物と少なくとも1種の液状のシロキサンとの混合物を含有すると共に、0.8〜1.5g/cmの密度を有する組成物である該用法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
半フッ素化化合物は、疎油性のR−セグメントと親油性のR−セグメントを有する両親媒性化合物である。半フッ素化アルカンとヒドロフルオロエーテルはいずれも本発明による半フッ素化アルカン化合物として理解されるべきである。この種の化合物は、パーフルオロアルカン(R)のブロックと非フッ素化アルカン(R)のブロックから構成される。パーフルオロアルカンのブロックと非フッ素化アルカンのブロックは単結合を介して連結されるか(半フッ素化アルカンの場合)、又は酸素原子を介して連結される(ヒドロフルオロエーテルの場合)。
【0017】
本発明によれば、フッ素化ブロックと非フッ素化ブロックが交互に配置される化合物及びフッ素化ブロックが非フッ素化ブロックに連結される化合物の両方が考慮される。特に、国際公開公報WO97/12858号に記載されているような半フッ素化アルカンが適当である。ジブロック化合物式R−A−R及びトリブロック化合物RA−RA−Rのいずれも使用可能である(式中、Aは相互に独立してそれぞれ単結合又は酸素原子を示す)。好ましくは、ジブロック化合物が使用される。この場合、ブロックはそれぞれ線状成分又は分枝状成分のいずれであってもよい。非分枝状の半フッ素化アルカン化合物次式で表される:
F(CFA(CH
F(CFA(CHA(CF
(式中、nは1〜20の数を示し、mは3〜20の数を示し、Aは単結合又は酸素原子を示す)
【0018】
分枝状半フッ素化アルカン化合物は、パーフルオロアルキル基の内部にFCX単位(この場合、XはCF、C、C又はCを示す)も有することができ、また、アルキル基の内部にHCY単位(この場合、YはCH、C、C又はCを示す)を有することができる。
【0019】
パーフルオロアルキル鎖の内部には−CX−基も含まれていてもよく、また、アルキル鎖の内部には−CY−基も含まれていてもよい。
【0020】
パーフルオロアルキル基FC−の代わりに、FCX−基又はFCX−基(この場合、XはC、C又はCを示す)が分子の末端に結合していてもよく、また、アルキル基HC−の代わりに、HCY−基又はHCY−基(この場合、YはC、C又はCを示す)が分子の末端に結合していてもよい。
【0021】
しかしながら、全ての特定の異性体(即ち、直鎖状又は分枝状の半フッ素化アルカン)の場合には、パーフルオロアルキル部分中の全炭素数は、前述のように、n=1〜20の範囲内に維持され、また、アルキル部分中の全炭素数も、予め決定されたm=3〜20の範囲に維持される。好ましい実施態様においては、n=3〜10でm=3〜12の範囲の半フッ素化アルカンが使用される。
【0022】
本発明において使用される半フッ素化アルカンは、周囲温度において液体である。鎖長が非常に短く、周囲温度で気体状の化合物は、本発明による組成物に使用するためには考慮されない。好ましくは、−50℃よりも高い融点を有する半フッ素化アルカンが使用される。
【0023】
好ましい実施態様においては、半フッ素化アルカン化合物は非常に精製された状態で使用される。このような目的のためには、国際公開公報WO 93/16974号に記載の方法を使用することができる。この方法によれば、半フッ素化アルカン化合物は、最初に酸性の過マンガン酸塩溶液を用いて処理した後、水酸化カリウム水溶液(4〜8n)、CaO又はBaO及び求核試薬(例えば、第二アミン等)との混合物を150℃〜180℃の温度において、オートクレーブ内又加熱還流条件下で長時間処理する。
【0024】
反応生成物は、アルコールとアミン相を含有するアルカリ性の水性相から分離させた後、希鉱酸、NaHCO溶液、蒸留水、無水NaSO及び無水CaClを用いて順次処理する処理方法に数回付し、次いで高性能のカラムを用いる分別蒸留に付す。IRスペクトル、H−NMR−スペクトル、19F−NMR−スペクトル及びGC/MS−スペクトルによれば、このようにして処理された半フッ素化アルカンには、分子内でのHF−脱離反応によって毒性のオレフィン副生物の発生をもたらす原子団は含まれない。
【0025】
国際公開公報WO 93/16974号に記載の方法は、分子内でのHF−脱離又は炭素原子に結合したフッ素原子の求核試薬による交換をもたらす原子団の定量に使用することができる。即ち、この方法を利用する場合には、試料物質とヘキサメチレンジアミンをノナン又はデカン中において120℃〜150℃の温度で数時間加熱することによって反応させるときにイオン化性フッ化物が検出される。この場合、遊離するフッ化物はイオン感応性電極によって検出される。この精製法の後においては、最大で40ppmまでの濃度においてフッ化物は検出可能でなければならない。この場合、フッ化物濃度の検出限界は10−5モル/L以下である。
【0026】
前述のように、本発明によれば、半フッ素化アルカン、ハイドロフルオロエーテル及びこれらの混合物は半フッ素化アルカン化合物として使用することができる。当業者は各々の適当な化合物又は両者の混合物を選定することができる。従って、1種の半フッ素化アルカン化合物又は2種若しくはそれよりも多種の半フッ素化アルカン化合物を使用することが可能であり、また、種々の半フッ素化アルカン化合物の混合物、種々のハイドロフルオロエーテルの混合物、及び少なくとも1種の半フッ素化アルカンと少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルの混合物も適当である。半フッ素化アルカン化合物は高いガス溶解能を有するので、組織を保存するために単独で使用することができる。但し、その密度が本願の請求項において規定される範囲内にあることを条件とする。本願の請求項において規定される範囲外の密度を有する半フッ素化アルカン化合物を使用する場合、好ましい実施態様においては、該化合物は少なくとも1種の液状シロキサンと併用される。
【0027】
本発明においては、シリコーン油とも呼ばれる「液状シロキサン」という用語は、特に、ジアルキルシロキサン単位及び/又はジアリールシロキサン単位から成る化合物であって、周囲温度と体温において流動性のある化合物を示すために使用される。アルキル残基は直鎖状又は分枝鎖状であって、6個までの炭素原子から構成される。好ましいアルキル残基はメチル残基である。好ましくは、フェニル残基はアリール残基として用いられる。これらの残基は化学的、物理的及び生理学的に不活性である。即ち、これらの残基は、これらが接触する組織の成分(タンパク質、脂質等)と反応せず、また、組成物中の存在する他の成分(例えば、半フッ素化アルカン又は他の添加剤)とも反応しない。
【0028】
好ましくは、使用されるシロキサンは、実質的に架橋されていないか、又は非常に僅か架橋されているに過ぎないシロキサンである。シロキサンは多くの異なる形態で市販されており、当業者であれば、個々の目的に応じて最適な適合性を有するものを容易に選択することができる。市販されているシロキサンの低粘性混合物は特に適している。好ましくは、使用されるシランは、0.5〜1000 mPas (好ましくは、0.5〜500 mPas)の粘度を有するシランである(これらの粘度の値は、落球粘度計を用いて周囲温度で測定した値である)。
【0029】
好ましくは、少なくとも1種の半フッ素化アルカン化合物と少なくとも1種のシロキサンとの混合物が本発明による組成物に使用される。この場合、これらの成分は、最終組成物の粘度が所望の範囲になるような割合で混合される。これらの成分、即ち、半フッ素化アルカン化合物とシロキサンは、周囲温度においては、通常はいずれの割合でも相互に混合し得るので、これらの成分の混合比としては、いずれの値も適当である。
【0030】
本発明による組成物は、均一で殺菌した状態であって、物理化学的に安定な状態を少なくとも1年間は保持し、また、周囲温度(20℃〜25℃)で貯蔵しても混合物の分離は発生しない。
【0031】
組成物の密度は、成分の割合を変化させることによって調整することができ、また、該密度は、組成物中に保存されるべき個々の臓器又は個々の四肢によって左右される。好ましくは、組成物の密度は、保存されるべき個々の臓器又は個々の四肢に応じて選択される。高い酸素要求量が必要な場合には、半フッ素化アルカン化合物の割合を高くするか、または、半フッ素化アルカン化合物のみを使用する。酸素要求量が低い場合、又は低い密度の組成物が要求される場合には、シロキサンの割合を高くするか、又は純粋なシロキサンを使用する。
【0032】
好ましくは、組成物の密度は、保存される臓器や四肢に応じて設定され、適当な密度は0.8〜1.5g/cm、好ましくは0.9〜1.3g/cm、特に好ましくは1.01〜1.25g/cmである。
【0033】
好ましくは、組成物の密度は、保持器具を使用することなく臓器又は四肢が媒体中へ浸漬されるように調整し、より好ましくは、これらが液面下に完全に沈められるように調整し、特に好ましくはこれらが媒体中に沈まず、しかも浮き上がらない浸漬状態で浮遊するように調製される。組成物中に浸漬する浮遊状態での保存は、組織に対して最も慎重に行われて物理的損傷を回避する保存法である。従って、本発明による組成物は遮断層として作用するので、好ましくは、臓器と四肢は液面下に完全に浸漬されるべきである。
【0034】
本発明に従って使用される組成物は高い気体溶解能によって特徴づけられるので、貯蔵又は保存される組織への酸素の供給を可能にする。好ましくは、溶解酸素量は、酸素の十分な供給が保証されるように設定される。好ましくは、酸素含有量は保存される臓器や四肢に応じて(即ち、保存されるべき組織の酸素要求量に応じて)設定される。好ましい実施態様においては、周囲温度における組成物の酸素含有量は3〜50容量%、好ましくは10〜40容量%又は飽和量である。
【0035】
親油性成分と疎油性成分を有する両親媒性構造に起因して、半フッ素化アルカンに不溶性の物質を半フッ素化アルカン化合物中に溶解させることが可能となる。また、これによって、組織の保存性の改良を可能にする化合物を組成物中へ溶解させることが可能となる。従って、例えば、抗生物質、抗炎症剤及び細胞増殖抑制剤のような活性剤又は組成物を保護して安定化させる添加剤(例えば、抗酸化剤)を添加することが可能である。この点に関しては、半フッ素化アルカン化合物は溶解助剤として作用するので、シロキサンのみには溶解しない物質も、半フッ素化アルカン化合物とシロキサンとの混合物中へ添加することができる。このような添加物質としては、5−フルオロウラシル、ダウノマイシン、イブプロフェン、N−アセチルシステイン、カロチノイド、レチノールパルミテート及びα−トコフェロール等が例示される。
【0036】
本発明に従って使用される組成物には、臓器と組織のための栄養素を添加することができ、これによって、臓器や組織の輸送中に最適な栄養素を該臓器や組織へ供給することが可能となる。使用する活性物質や栄養素が本発明による組成物に溶解しない場合に対する別の実施態様においては、半フッ素化アルカン化合物とシロキサンを含有する本発明による組成物に溶解すると共に活性物質又は栄養素を溶解させる補助溶剤を使用することが可能である。この態様における適当な補助溶剤としては、例えば、炭素原子数が1〜6の一価アルコールや多価アルコールのようなアルコール(例えば、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリン及びソルビトール等)が挙げられる。補助溶剤として適当なその他の溶剤はエーテルとエステルである。この場合、水は考慮されない。本発明に従って使用される組成物は無水状態であるからである。
【0037】
半フッ素化アルカン化合物とシロキサンを含有するか、又はシロキサンのみを含有する本発明による組成物を使用する場合には、保存用液体のより粘性の高い付着性成分は、使用に供する前の組織(即ち、移植又は縫合処理に付される前の組織)から洗い流すことが推奨される。このような目的のためには、好ましくは、シロキサンに対して相溶性を示す高純度の半フッ素化アルカン化合物を使用することが特に有利である。保存用液体の吸収成分又は吸着成分は個々の組織から洗い流すか、又は溶出させることが推奨される。
【0038】
従って、本発明によれば、機械的損傷をもたらすことなく酸素の供給を保証する完全な方法によって組織、特に臓器又は四肢の貯蔵と保存を可能にする組成物が使用される。本発明によるこの用法は、周囲温度で行うことができ、臓器や四肢の脱水処理や非常に低温での貯蔵は不要である。本発明による組成物は生物学的適合性と生理学的適合性を示し、摘出される臓器や四肢の特質を保存すると共にこれらの寿命を保証する。
【0039】
本発明に従って使用される組成物は、自体既知の方法により、個々の成分を所定の割合で混合することによって製造される。好ましくは、個々の成分は殺菌状態で混合され、殺菌条件下で処理される。得られる組成物は、周囲温度において均質であり、物理化学的に安定である。
【0040】
シロキサンは、半フッ素化アルカン化合物に比べて幾分劣るが、良好な気体溶解能を有する。好ましくは、0.75〜0.98g/cmの密度を有するシロキサンが上記の混合操作に使用される。
【0041】
本発明による組成物は、臓器や組織を慎重に保存するために調製される。該組成物は非常に安定であって、長期間にわたって貯蔵することができるので(例えば、15℃〜42℃の周囲温度において少なくとも1年間貯蔵できる)、非常事態のための待機施設において貯蔵するために非常に適している。従って、本発明による組成物は、例えば、救急車内で搬送することによって、事故後に移植されるべき四肢を、重大な合併症又は多大な費用を伴うことなく受け取ることができる。
【実施例】
【0042】
以下に説明する実施例は、本願発明をさらに説明するためのものであって、本願発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
予め殺菌処理に付したシリコーン油1000及び予め殺菌処理に付したパーフルオロヘキシルオクタンを、周囲温度で殺菌条件下において、IKA攪拌機を備えたKGW恒温容器内において混合した。シリコーン油1000とFとの混合比は69.5:30.5(w/w)とした。次いで、周囲温度で殺菌条件下において、得られた溶液中へ酸素を2000ml/分の流速で導入した(酸素含有量:30容量%)。得られた溶液の密度は1.05g/cmである。より低密度の組成物が必要な場合には、シリコーン油1000の混合量を増加させればよい。逆に、より高密度の組成物が必要な場合には、パーフルオロヘキシルオクタンの混合量を増加させればよい。
【0043】
実施例2
予め殺菌処理に付したシリコーン油50へ、周囲温度で殺菌条件下において、酸素を約5000ml/分の流速で導入し、該シリコーン油を酸素で完全に飽和させた。次いで、酸素に富むシリコーン油50は組織の貯蔵に使用できる。
【0044】
実施例3
予め殺菌処理に付したシリコーン油100及び予め殺菌処理に付したパーフルオロブチルヘキサンを、周囲温度で殺菌条件下において、IKA攪拌機を備えたKGW恒温容器内において混合した。所望の粘度及び/又は密度は、シリコーン油100とFとの混合比を調整することによって得られる。周囲温度で殺菌条件下において、得られた溶液中へ酸素を3000ml/分の流速で導入することによって、酸素に富む溶液(酸素含有量:15容量%)を得た。
【0045】
実施例4
予め殺菌処理に付したパーフルオロヘキシルオクタン及び予め殺菌処理に付したα−トコフェロールペルフルオロヘキシルオクタンを、周囲温度で殺菌条件下において、IKA攪拌機を備えたKGW恒温容器内において混合した。Fとα−トコフェロールとの混合比は98:2(w/w)とした。次いで、周囲温度で殺菌条件下において、得られた溶液中へ酸素を1000ml/分の流速で導入した(酸素含有量:8容量%)。
【0046】
実施例5
予め殺菌処理に付したエチルノナフルオロブチルエーテル及び予め殺菌処理に付したシリコーン油3を、周囲温度で殺菌条件下において、IKA攪拌機を備えたKGW恒温容器内において混合した。所望の粘度及び/又は密度は、シリコーン油3とエチルノナフルオロブチルエーテルとの混合比によって調整することができる。周囲温度で殺菌条件下において、得られた溶液中へ酸素を1500ml/分の流速で導入することによって、酸素含有量が25容量%の溶液を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器又は四肢を保存するための組成物の用法であって、該組成物が少なくとも1種の半フッ素化アルカン化合物及び少なくとも1種のシロキサンを含有すると共に、0.8〜1.5g/cmの密度を有する組成物である該用法。
【請求項2】
実質的にa)少なくとも1種の半フッ素化化合物及びb)少なくとも1種のシロキサンを含有する組成物の用法であって、該組成物が、成分a)及びb)を、最終組成物の密度が0.8〜1.5g/cmになるような割合で混合して得られる組成物である該用法。
【請求項3】
半フッ素化アルカン化合物として、式RAR(式中、Rは1〜20個の炭素原子数を有する線状又は分枝状パーフルオロアルキル基を示し、Rは3〜20個の炭素原子を有する線状又は分枝状の飽和アルキル基を示し、Aは単結合又は酸素原子を示す)で表される少なくとも1種の化合物又は該式で表される化合物の混合物を使用する請求項1又は2記載の用法。
【請求項4】
少なくとも1種の半フッ素化アルカン化合物が、パーフルオロアルキル基の内部及び/又はアルキル基の内部に分枝状単位を有することができる分枝状半フッ素化アルカンである請求項1から3いずれかに記載の用法。
【請求項5】
分枝状半フッ素化アルカン化合物が1個又は複数個の側鎖X(この場合、XはCF、C、C又はCを示す)を含むことができ、及び/又はアルキル鎖が側鎖Y(この場合、YはCH、C、C又はCを示す)を有することができる請求項4記載の用法。
【請求項6】
使用する半フッ素化アルカンが、3〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基及び3〜12個の炭素原子を有する飽和アルキル基を有する化合物である請求項1から5いずれかに記載の用法。
【請求項7】
組成物が水を含有しない請求項1から6いずれかに記載の用法。
【請求項8】
組成物が、半フッ素化アルカン、半フッ素化アルカンの混合物、ヒドロフルオロエーテル、ヒドロフルオロエーテルの混合物、少なくとも1種の半フッ素化アルカンと少なくとも1種のヒドロフルオロエーテルとの混合物を半フッ素化アルカン化合物として含有する請求項1から7いずれかに記載の用法。
【請求項9】
組成物が、ジアルキルシロキサン単位(この場合、アルキル残基は1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖である)及び/又はジアリールシロキサン単位から成る化合物をシロキサンとして含有する請求項1から8いずれかに記載の用法。
【請求項10】
シロキサンが0.5〜1000mPas の粘度を有する請求項1から9いずれかに記載の用法。
【請求項11】
シロキサンが0.5〜500mPas の粘度を有する請求項10記載の用法。
【請求項12】
シロキサンがポリジメチルシロキサン又はポリジメチルシロキサンの混合物である請求項1から11いずれかに記載の用法。
【請求項13】
組成物が、保存されるべき臓器又は四肢の酸素要求量に相当する酸素を含有する請求項1から12いずれかに記載の用法。
【請求項14】
組成物が、周囲温度で測定したときに、10〜40容量%の酸素を含有する請求項1から13いずれかに記載の用法。
【請求項15】
組成物が、周囲温度において酸素で飽和される請求項1から14いずれかに記載の用法。
【請求項16】
組成物が付加的に1種又は複数種の活性物質及び/又は栄養素を含有する請求項1から15いずれかに記載の用法。
【請求項17】
組成物が1種又は複数種の抗生物質、ステロイド、抗炎症剤、細胞増殖抑制剤、ウイルス抑制剤及び/又は安定剤を含有する請求項13記載の用法。
【請求項18】
組成物が付加的な活性物質、例えば、5−フルオロアシル、ダウノマイシン、アシクロヴィール、ガンシクロヴィール、イブプロフェン、N−アセチルシステイン、カロチノイド、レチノールパルミテート及び/又はα−トコフェロールを含有する請求項1から17いずれかに記載の用法。
【請求項19】
組成物が付加的に少なくとも1種の抗酸化剤を含有する請求項1から17いずれかに記載の用法。
【請求項20】
組成物がα−トコフェロール又はレチノールパルミテートを含有する請求項18記載の用法。
【請求項21】
組成物がビタミン、脂質含有物質及び/又は易分解性脂肪及び/又はオイルを含有する請求項1から20いずれかに記載の用法。
【請求項22】
組成物が、活性物質及び/又は栄養素のための補助溶剤を付加的に含有する請求項1から21いずれかに記載の用法。
【請求項23】
組成物が成分a)及びb)を、最終組成物の密度が0.9〜1.3g/cmになるような割合で含有する請求項1から22いずれかに記載の用法。
【請求項24】
組成物が成分a)及びb)を、最終組成物の密度が1.01〜1.25g/cmになるような割合で含有する請求項1から23いずれかに記載の用法。

【公表番号】特表2009−516717(P2009−516717A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541642(P2008−541642)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011247
【国際公開番号】WO2007/059968
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508154999)ノヴァリク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】NOVALIQ GMBH
【Fターム(参考)】