説明

自動イカ釣装置

【課題】巻上げ及び巻下げの回転速度を高くすることができ、かつ釣果も高めることができる自動イカ釣装置を提供する。
【解決手段】釣り糸が巻回されている巻き取り部の軸断面形状が円形である少なくとも1つの丸型回転ドラムと、少なくとも1つの丸型回転ドラムを回転駆動する少なくとも1つの駆動モータと、少なくとも1つの駆動モータの回転を制御する制御手段とを備えており、この制御手段は、釣り糸が巻下げされる際の駆動モータの回転速度を所定パターンで高速回転及び低速回転となるように制御するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁船に搭載され、疑似餌を用いて自動的にイカ釣を行うための自動イカ釣装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動イカ釣装置においては、例えば特許文献1及び2に記載されているように、船体に複数のイカ釣機が取付けられており、各イカ釣機には、釣り糸の巻かれている巻き取り部の軸断面形状が菱形である菱形回転ドラムと、この菱形回転ドラムを回転させる駆動モータと、駆動モータの回転速度を制御する制御機構とが設けられている。
【0003】
このような菱形回転ドラムを用いた場合、その巻下げ時に、ドラム自体が定速で回転していても、釣り糸の落下速度に変動が与えられてこれがシャクリ動作となることから、イカの誘因効果を自動的に得ることができる。このため、ほとんどの自動イカ釣装置では、菱形ドラムを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−114618号公報
【特許文献2】特開平10−295238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、菱形回転ドラムを用いるイカ釣機では、釣り針がドラムから外れてしまうトラブルが生じることから、巻上げ及び巻下げの回転速度をさほど高くすることができない。巻上げ及び巻下げの回転速度を高くできないと、釣り糸の単位時間当りの上げ下げ回数が小さくなるため、釣果が大幅に低下してしまう。丸型回転ドラムを用いれば、そのようなトラブルを引き起こすことなく巻上げ及び巻下げの回転速度を高くすることが可能であるが、巻下げ時のシャクリ効果がないため、イカに対する誘因効果を全く期待できず、釣果が低下してしまう。
【0006】
従って本発明の目的は、巻上げ及び巻下げの回転速度を高くすることができ、かつ釣果も高めることができる自動イカ釣装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、釣り糸が巻回されている巻き取り部の軸断面形状が円形である少なくとも1つの丸型回転ドラムと、少なくとも1つの丸型回転ドラムを回転駆動する少なくとも1つの駆動モータと、少なくとも1つの駆動モータの回転を制御する制御手段とを備えており、この制御手段は、釣り糸が巻下げされる際の駆動モータの回転速度を所定パターンで高速回転及び低速回転となるように制御するように構成されている自動イカ釣装置が提供される。
【0008】
丸型回転ドラムを用いているため、ドラムから針が外れる等のトラブルを引き起こすことなく巻上げ及び巻下げの回転速度を高くすることができるから、釣り糸の単位時間当りの上げ下げ回数を大きくすることができる。しかも、釣り糸が巻下げされる際の駆動モータの回転速度を所定パターンで高速回転及び低速回転となるように制御しているので、丸型回転ドラムを用いているにもかかわらず巻下げシャクリ動作が行われるため、巻下げ時にもイカ誘因効果が得られるので釣果を大幅に高めることが可能となる。
【0009】
制御手段は、釣り糸が巻下げされる際の駆動モータの回転速度を固定された回転速度である高速回転及び固定された回転速度である低速回転が交互に繰返されるように制御するべく構成されていることが好ましい。この場合、高速回転及び低速回転の速度を任意に設定可能であることがより好ましい。
【0010】
制御手段は、釣り糸が巻下げされる際の駆動モータの回転速度を固定された時間又は距離で高速回転及び低速回転が交互に繰返されるように制御するべく構成されていることが好ましい。この場合、高速回転及び低速回転の固定された時間又は距離を任意に設定可能であることがより好ましい。
【0011】
制御手段は、釣り糸が巻下げされる際の駆動モータの回転速度を各周期が同じ速度パターンを有するように制御するべく構成されていることも好ましい。
【0012】
制御手段は、釣り糸が巻下げされる際の前記駆動モータの回転速度を変動する回転速度の高速回転及び変動する回転速度の低速回転が交互に繰返されるように制御するべく構成されていることも好ましい。この場合、高速回転及び低速回転の速度を任意に設定可能であることがより好ましい。
【0013】
制御手段は、釣り糸が巻下げされる際の駆動モータの回転速度が変動する時間又は距離で高速回転及び低速回転が交互に繰返されるように制御するべく構成されていることも好ましい。この場合、高速回転及び低速回転の変動する時間又は距離を任意に設定可能であることがより好ましい。
【0014】
制御手段は、釣り糸が巻下げされる際の前記駆動モータの回転速度を各周期が異なる速度パターンを有するように制御するべく構成されていることも好ましい。
【0015】
制御手段は、釣り糸が第1の水深まで巻下げされた際に駆動モータの回転速度の上述の制御を開始するように構成されていることも好ましい。この場合、第1の水深が可変であることがより好ましい。
【0016】
制御手段は、釣り糸が第2の水深まで巻下げされた際に駆動モータの回転速度の上述の制御を終了するように構成されていることも好ましい。この場合、第2の水深が可変であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、丸型回転ドラムを用いているため、ドラムから針が外れる等のトラブルを引き起こすことなく巻上げ及び巻下げの回転速度を高くすることができるから、釣り糸の単位時間当りの上げ下げ回数を大きくすることができる。しかも、釣り糸が巻下げされる際の駆動モータの回転速度を所定パターンで高速回転及び低速回転となるように制御しているので、丸型回転ドラムを用いているにもかかわらず巻下げシャクリ動作が行われるため、巻下げ時にもイカ誘因効果が得られるので釣果を大幅に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態として、自動イカ釣装置を船体に設置した状態を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の実施形態における各イカ釣機の外部構造を概略的に示す、(A)正面図、(B)側面図である。
【図3】図2に示したイカ釣機本体の内部構造を概略的に示す正面図である。
【図4】図1の実施形態における作動した状態のイカ釣機の外観を概略的に示す図である。
【図5】図1の実施形態における自動イカ釣装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図6】図1の実施形態において各イカ釣機のコンピュータの全般的な制御処理を概略的に示すフローチャートである。
【図7】図1の実施形態において各イカ釣機のコンピュータの巻下げ動作制御処理を概略的に示すフローチャートである。
【図8】図1の実施形態における自動イカ釣装置の巻下げシャクリ動作のパターン例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の一実施形態として、自動イカ釣装置を船体に設置した状態を概略的に示す平面図である。
【0020】
同図において、10は船体、11は船体10の左舷、右舷及び船尾に設置されている複数のイカ釣機、12は複数のイカ釣機11の海側(船体10の舷部)にそれぞれ設けられた複数の流し、13は各流し12の先端部に設けられた1対の前ローラをそれぞれ示している。なお、同図に示されているイカ釣機11の数及び配置は単なる例示であり、本発明がこれに限定されるものではないことは明らかである。
【0021】
図2は図1の実施形態における各イカ釣機の外部構造を概略的に示す、(A)正面図、(B)側面図である。
【0022】
同図に示すように、各イカ釣機11は、イカ釣機本体14と、ドラム取付け軸15と、このドラム取付け軸15を介してイカ釣機本体14に取付けられた1対の丸型回転ドラム16とを備えている。各丸型回転ドラム16は、同図では示されていない釣り糸が巻回されている巻き取り部16aの軸断面形状が円形のドラムである。これら丸型回転ドラム16がイカ釣機本体14によって、適宜の方向に回転駆動されることにより、釣り糸が巻上げ又は巻下げされる。なお、図示されていないが、釣り糸には、枝針や連結針のような疑似餌付の釣り針や、必要に応じてその先端に錘が取付けられている。
【0023】
イカ釣機本体14のハウジング14aの外面には、同図(A)に示すように、ローカル制御装置の操作パネル14bが取付けられており、この操作パネル14bには表示部14b、キーボード14b及び電源スイッチ14b等が設けられている。従って、各イカ釣機11はこの操作パネル14bからの入力によりローカル制御装置によって個々に制御が可能であり、さらに、後述するように、複数のイカ釣機11が集中制御装置によって集中的に制御されるようになっている。なお、図2はイカ釣機の外部構造の一例を示すものであり、本発明のイカ釣機の内部構造がこれに限定されるものではない。
【0024】
図3は図2に示したイカ釣機本体14の内部構造を概略的に示す正面図である。
【0025】
同図に示すように、ハウシング14aの下部に駆動モータ14cが設置され、この駆動モータ14cの駆動力が減速装置14d及びチェーン14eを介して可動軸14fに伝達される。可動軸14fはドラム取付け軸15をその軸方向に移動せしめるために設置され、上方に設けたドラム取付け軸15をチェーン14gにより駆動可能に連結される。前述したように、1対の丸型回転ドラム16はこのドラム取付け軸15の両端部に回転可能に固着される。可動軸14fにはチェーン14hによってロータリエンコーダ14iが連結されており、このロータリエンコーダ14iは可動軸14fの回転を介してドラム取付け軸15の回転数を、従って、丸型回転ドラム16の回転数を測定する。可動軸14fの一方の端部には電磁作動方式のブレーキ14jが取付けけられている。このブレーキ14jは例えばパウダブレーキからなり、後述するローカル制御装置を構成するコンピュータにより制御される。なお、図3はイカ釣機の内部構造の一例を示すものであり、本発明のイカ釣機の内部構造がこれに限定されるものではない。
【0026】
図4は図1の実施形態における作動した状態のイカ釣機11の外観を概略的に示す図である。
【0027】
同図に示すように、各イカ釣機11は支柱17によって船体10に固定されており、この支柱17には流し12が取付けられており、その流し12の先端部には前ローラ13が回転可能に取付けられている。丸型回転ドラム16に巻回された釣り糸18は、前ローラ13を介して海中に垂下されるように構成されている。
【0028】
各イカ釣機11には、プラントチューブ19内に設けられた電源線やデータ伝送線の一端が接続されている。データ伝送線の他端は船体10の中央の操船室等に設けられた集中制御装置に接続されている。
【0029】
図5は図1の実施形態における自動イカ釣装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0030】
各イカ釣機11にはローカル制御装置20が設けられており、この各ローカル制御装置20はデータ伝送線21を介して操船室等に設けられた集中制御装置22に接続されている。
【0031】
同図に示すように、ローカル制御装置20は、キーボード20a(14b)と、駆動モータ14cに接続されており、駆動モータ14cを駆動制御するモータ駆動回路20bと、ロータリエンコーダ14iに接続されており、丸型回転ドラム16の回転状態及び回転数をモニタする回転数モニタ回路20cと、インタフェース回路20d、CPU20d、ROM20d及びRAM20d等を含むコンピュータ20dとを備えている。キーボード20aから入力されるデ−タは、コンピュータ20dに入力される。また、コンピュータ20dからはモータ駆動回路20bに制御信号が出力され、回転数モニタ回路20cからの検出信号はコンピュータ20dに入力される。
【0032】
一方、集中制御装置22は、キーボード22aと、インタフェース回路22b、CPU22b、ROM22b及びRAM22b等を含むコンピュータ22bとを備えており、全てのイカ釣機に関して集中制御することも可能に構成されている。なお、図5は自動イカ釣装置の電気的構成の一例を示すものであり、本発明の自動イカ釣装置の電気的構成がこれに限定されるものではない。
【0033】
図6は図1の実施形態において各イカ釣機のコンピュータの全般的な制御処理を概略的に示すフローチャートであり、図7は図1の実施形態において各イカ釣機のコンピュータの巻下げ動作制御処理を概略的に示すフローチャートである。
【0034】
まず、図6に示すように、個々のイカ釣機に関して初期設定を行う(ステップS1)。この初期設定は、例えば、巻下げシャクリ動作を行うか否か、巻下げシャクリ動作を行う場合に、巻下げシャクリ動作の開始水深、巻下げシャクリ動作の終了水深、巻下げシャクリ動作をどのような速度パターンの組み合わせで制御するか、各イカ釣機の巻下げシャクリ動作をどのようなシーケンスで順次制御するか等が含まれており、また、水深0mの海面位置におけるロータリエンコーダ14iの数値を0m位置とするリセット処理を行う。
【0035】
水深0mの海面位置とは、例えば、釣り糸の先端の錘又は釣り糸の最下段の針(多くの場合、錘より1〜2m上)であることが多い釣り糸の基準位置が海面(水深0m)に位置している状態であり、操業前に操作者は釣り糸がこの状態にあることを確認してリセットする。
【0036】
巻下げシャクリ動作の開始水深は、釣り糸の基準位置がどの程度の水深まで巻下げされた際に巻下げシャクリ動作を開始するかを指示するものであり、例えば水深0m、又はその他の任意の水深に設定される。巻下げシャクリ動作の終了水深は、釣り糸の基準位置がどの程度の水深まで巻下げシャクリ動作されたときにそのシャクリ動作を終了するかを指示するものであり、例えば底の水深、又はその他の任意の水深に設定される。なお、任意の水深とは、その時の海況やイカの遊泳層の状態、操作者の経験等によって自由に設定される水深である。
【0037】
巻下げシャクリ動作の速度パターンは1周期毎に設定され、その1周期の速度パターンをどのように組み合わせるかによって、高速と低速とが固定された時間又は距離で交互に繰返されるか、高速と低速とが変動する時間又は距離で交互に繰返されるか、又は高速と低速とが変動する速度で交互に繰返される巻下げシャクリ動作が行われる。各速度パターンを設定するパラメータとしては、(1)1周期の高速回転領域における駆動モータの回転速度(rpm)、(2)1周期の低速回転領域における駆動モータの回転速度(rpm)、(3)高速回転領域の時間又は距離(1周期に対する割合(%))、(4)低速回転領域の時間又は距離(1周期に対する割合(%))、(5)巻下げシャクリ動作1周期の時間又は距離(秒又はm)、(6)速度変化度合(変化時間(秒))の6つが例えば指定される。なお、速度変化度合は、高速回転と低速回転との切替時の速度の変化の度合であり、緩やかに変化するか若しくは急激に変化するなどを設定することができる。
【0038】
また、イカ釣機は全てを同時に巻下げ(巻上げ)するのではなく、隣のイカ釣機と針が絡まないように、一定の水深間隔(数m〜数10m)を置いて順番に巻下げ(巻上げ)する。船首側のイカ釣機から下ろし始めるのか船尾側から下ろし始めるのかなどの動作指示については、操作者が海況等を見ながら決定し、集中制御装置22を介して指示できるように構成されている。なお、この集中制御装置22は、動作指示だけではなく、先の巻下げシャクリのパラメータ等を含む動作パラメータの管理及び設定も一括して行えるように構成されている。
【0039】
次いで、巻下げシャクリ動作を行う指示があるかどうか判別し(ステップS2)、指示がある場合(YESの場合)は、図7に示す巻下げシャクリ動作処理ルーチンを実行する(ステップS3)。巻下げシャクリ動作指示がない場合(NOの場合)は、その他の処理、例えばシャクリ動作のない巻下げ処理及びその処理に続く巻上げシャクリ動作処理等を行う。
【0040】
図7に示すように、巻下げシャクリ動作処理ルーチンにおいては、まず、基準位置、例えば錘が水深0mにある釣り糸18を巻下げする(ステップS11)。
【0041】
次いで、巻下げされている水深が巻下げシャクリ開始水深かどうか判別する(ステップS12)。これは、ロータリエンコーダ14iに接続されている回転数モニタ回路20cから得られる検出信号により、丸型回転ドラム16の回転数を知ることにより、釣り糸18の現在の水深を知り、その値が初期設定された巻下げシャクリ動作の開始水深であるかどうかを判別するものである。
【0042】
巻下げシャクリ開始水深に達しない場合(NOの場合)は、この判別処理を繰返して実行し、巻下げシャクリ開始水深であると判別した場合(YESの場合)は、巻下げシャクリ動作を開始する。
【0043】
なお、巻下げシャクリ開始水深までの巻下げ動作として、錘が水深0mである位置から針のついている部分(約30m程度)をややゆっくりとした一定回転速度で下げ、針の部分が丸型回転ドラム16から全て出た後の釣り糸については、速度を速めて一定回転速度で巻下げシャクリ開始水深を目指して下げ動作(繰り出し動作)を行うようにしても良い。
【0044】
巻下げシャクリ動作としては、まず、その巻下げシャクリ動作の速度パターンの1周期が終了したかどうか判別する(ステップS13)。
【0045】
巻下げシャクリ動作の速度パターンの1周期が終了していない場合(NOの場合)は、その1周期のうちの高速回転領域であるか否か判別する(ステップS14)。
【0046】
高速回転領域である場合(YESの場合)は、設定された高速回転速度で巻下げが行われるように、モータ駆動回路20bを介して駆動モータ14cを駆動制御する(ステップS15)。低速回転領域である場合(NOの場合)は、設定された低速回転速度で巻下げが行われるように、モータ駆動回路20bを介して駆動モータ14cを駆動制御する(ステップS16)。
【0047】
次いでステップS13へ戻り、巻下げシャクリ動作の速度パターンの1周期が終了していない場合はステップS14〜S16の処理が繰返される。これにより、その1周期の間、高速回転及び低速回転が設定された割合(時間又は距離)で交代して各1回行われ、丸型回転ドラム16も高速巻下げ回転及び低速巻下げ回転が交代してそれぞれ行われ、これにより、釣り糸18も1周期の間に高速の下ろし及び低速の下ろしが各1回行われ、その結果が1回の巻下げシャクリ動作となる。
【0048】
高速回転及び低速回転の具体的な速度やその時間又は距離(1周期に対する割合)は、イカの群れの具合や海況、又は操作者の経験や感覚によって様々な速度パターンとなるが、その一例を上げれば、
高速回転速度:100rpm
高速回転の時間又は距離(1周期に対する割合):40%
低速回転速度: 25rpm
低速回転の時間又は距離(1周期に対する割合):60%
1周期:2秒
か又は、
高速回転速度:110rpm
高速回転の時間又は距離(1周期に対する割合):30%
低速回転速度: 30rpm
低速回転の時間又は距離(1周期に対する割合):70%
1周期:3秒
等である。
【0049】
なお、回転速度(rpm)及びその回転の時間(秒)又は距離(m)は、駆動モータ14cの回転速度及びその回転速度の継続時間又はその回転速度を継続する釣り糸の移動距離であるが、負荷との関係で一定回転速度とはならないため、その回転速度(rpm)に相当する出力周波数の駆動出力をその継続時間(秒)又は対応する釣り糸の移動距離(m)の間、出力するという意味である。
【0050】
ステップS13において、巻下げシャクリ動作の速度パターンの1周期が終了したと判別した場合(YESの場合)は、次の周期の準備を行う(ステップS17)。即ち、次の周期における巻下げシャクリ動作の速度パターンを取り込む。ここで、前の周期と同じ速度パターンを繰返せば、高速巻下げと低速巻下げとが固定された時間又は距離で交互に繰返される。一方、前の周期と異なる速度パターンを行えば、高速巻下げと低速巻下げとが変動する時間又は距離で交互に繰返されるか、又は高速巻下げと低速巻下げとが変動する速度で交互に繰返されることとなる。
【0051】
次いで、巻下げされている水深が巻下げシャクリ終了水深かどうか判別する(ステップS18)。これは、ロータリエンコーダ14iに接続されている回転数モニタ回路20cから得られる検出信号により、丸型回転ドラム16の回転数を知ることにより、釣り糸18の現在の水深を知り、その値が初期設定された巻下げシャクリ動作の終了水深であるかどうかを判別するものである。
【0052】
巻下げシャクリ終了水深に達しない場合(NOの場合)は、ステップS13〜S17の処理を繰返して実行し、巻下げシャクリ終了水深であると判別した場合(YESの場合)は、巻下げシャクリ動作を終了し、駆動モータ14cを停止させ、丸型回転ドラム16の回転を停止させ(ステップS19)、この巻下げシャクリ動作ルーチンを終了する。
【0053】
図8は、図1の実施形態における自動イカ釣装置の巻下げシャクリ動作のパターン例を説明する図である。
【0054】
同図(A)は、巻下げシャクリ動作の開始水深を0mとし、巻下げシャクリ動作の1周期における高速回転及び低速回転の時間を互いに同じとし、かつ各周期における速度パターンを同一とした場合の巻下げシャクリ動作のパターンである。高速と低速とが固定された時間で交互に繰返される一定周期の動作パターンとなっている。
【0055】
同図(B)は、巻下げシャクリ動作の開始水深を0mではない所望の水深とし、巻下げシャクリ動作の1周期における高速回転及び低速回転の時間を互いに同じとし、かつ各周期における速度パターンを同一とした場合の巻下げシャクリ動作のパターンである。高速と低速とが固定された時間で交互に繰返される一定周期の動作パターンとなっている。
【0056】
同図(C)は、巻下げシャクリ動作の開始水深を0mとし、巻下げシャクリ動作の1周期における高速回転時間を低速回転時間より短く設定し、かつ各周期における速度パターンを同一とした場合の巻下げシャクリ動作のパターンである。高速と低速とが固定された時間で交互に繰返される一定周期の動作パターンとなっている。
【0057】
同図(D)は、巻下げシャクリ動作の開始水深を0mとし、巻下げシャクリ動作の1周期における高速回転時間を低速回転時間より長く設定し、かつ各周期における速度パターンを同一とした場合の巻下げシャクリ動作のパターンである。高速と低速とが固定された時間で交互に繰返される一定周期の動作パターンとなっている。
【0058】
同図(E)は、巻下げシャクリ動作の開始水深を0mとし、かつ各周期における速度パターンを互いに異なる時間割合とした場合の巻下げシャクリ動作のパターンである。高速と低速とが変動する時間で交互に繰返される変動周期の動作パターンとなっている。
【0059】
巻下げシャクリ動作が終了し、その終了水深で釣り糸の下降は一旦停止する。次いで、停止時間を消化した後、回転方向を巻上げ方向に転じ、巻上げシャクリ動作(高速及び低速の繰り返し動作)を行い、巻上げシャクリ動作終了位置まで巻上げシャクリ動作を行う。その後、一定回転速度で釣り糸を巻き上げ、針のついている部分まで来ると速度を緩めて一定回転で巻上げする。針が船上に上がってきた時点でイカは自然と針から外れる。釣り糸が上限(錘が水深0mの位置)まで上がると、巻上げ処理が停止し、次の巻下げ指示がくるまで待機する。集中制御装置は、他のイカ釣機との間合いを取って、再び、巻下げ動作開始を指示する。以後は、上述した動作が繰返して行われる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、丸型回転ドラムを用いているため、ドラムから針が外れる等のトラブルを引き起こすことなく巻上げ及び巻下げの回転速度を高くすることができるから、釣り糸の単位時間当りの上げ下げ回数を大きくすることができる。しかも、釣り糸が巻下げされる際の駆動モータの回転速度を所定パターンで高速回転及び低速回転となるように制御しているので、丸型回転ドラムを用いているにもかかわらず巻下げシャクリ動作が行われるため、巻下げ時にもイカ誘因効果が得られるので釣果を大幅に高めることが可能となる。その結果、漁獲が上がりかつ、トラブルが少なく、漁具を痛めず、漁具の経費も削減できる、効率のよい漁法を提供することができる。
【0061】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0062】
10 船体
11 イカ釣機
12 流し
13 前ローラ
14 イカ釣機本体
14a ハウジング
14b 操作パネル
14b 表示部
14b、20a、22a キーボード
14b 電源スイッチ
14c 駆動モータ
14d 減速装置
14e、14g、14h チェーン
14f 可動軸
14i ロータリエンコーダ
14j ブレーキ
15 ドラム取付け軸
16 丸型回転ドラム
16a 巻き取り部
17 支柱
18 釣り糸
19 プラントチューブ
20 ローカル制御装置
21 データ伝送線
22 集中制御装置
20b モータ駆動回路
20c 回転数モニタ回路
20d コンピュータ
20d、22b インタフェース回路
20d、22b CPU
20d、22b ROM
20d、22b RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸が巻回されている巻き取り部の軸断面形状が円形である少なくとも1つの丸型回転ドラムと、該少なくとも1つの丸型回転ドラムを回転駆動する少なくとも1つの駆動モータと、該少なくとも1つの駆動モータの回転を制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、前記釣り糸が巻下げされる際の前記駆動モータの回転速度を所定パターンで高速回転及び低速回転となるように制御するように構成されていることを特徴とする自動イカ釣装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記釣り糸が巻下げされる際の前記駆動モータの回転速度を固定された回転速度である高速回転及び固定された回転速度である低速回転が交互に繰返されるように制御するべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動イカ釣装置。
【請求項3】
前記高速回転及び低速回転の速度を任意に設定可能であることを特徴とする請求項2に記載の自動イカ釣装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記釣り糸が巻下げされる際の前記駆動モータの回転速度を固定された時間又は距離で高速回転及び低速回転が交互に繰返されるように制御するべく構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動イカ釣装置。
【請求項5】
前記高速回転及び低速回転の前記固定された時間又は距離を任意に設定可能であることを特徴とする請求項4に記載の自動イカ釣装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記釣り糸が巻下げされる際の前記駆動モータの回転速度を各周期が同じ速度パターンを有するように制御するべく構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の自動イカ釣装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記釣り糸が巻下げされる際の前記駆動モータの回転速度を変動する回転速度の高速回転及び変動する回転速度の低速回転が交互に繰返されるように制御するべく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動イカ釣装置。
【請求項8】
前記高速回転及び低速回転の速度を任意に設定可能であることを特徴とする請求項7に記載の自動イカ釣装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記釣り糸が巻下げされる際の前記駆動モータの回転速度が変動する時間又は距離で高速回転及び低速回転が交互に繰返されるように制御するべく構成されていることを特徴とする請求項1、7又は8に記載の自動イカ釣装置。
【請求項10】
前記高速回転及び低速回転の前記変動する時間又は距離を任意に設定可能であることを特徴とする請求項9に記載の自動イカ釣装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記釣り糸が巻下げされる際の前記駆動モータの回転速度を各周期が異なる速度パターンを有するように制御するべく構成されていることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の自動イカ釣装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記釣り糸が第1の水深まで巻下げされた際に前記駆動モータの回転速度の前記制御を開始するように構成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の自動イカ釣装置。
【請求項13】
前記第1の水深が可変であることを特徴とする請求項12に記載の自動イカ釣装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記釣り糸が第2の水深まで巻下げされた際に前記駆動モータの回転速度の前記制御を終了するように構成されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の自動イカ釣装置。
【請求項15】
前記第2の水深が可変であることを特徴とする請求項14に記載の自動イカ釣装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−273646(P2010−273646A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131346(P2009−131346)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000151944)株式会社東和電機製作所 (16)
【Fターム(参考)】