説明

自動ハンマーの制御装置

【課題】ワーク打ち込み終了後の無駄打ちによる騒音という課題を、自動ハンマーの機種に関わらず、また既存の自動ハンマーであっても解決することのできる制御装置を提案する。
【解決手段】本提案に係る自動ハンマーの制御装置10は、ハンマーの打撃音を電気信号に変換して出力するマイクロフォン11と、該マイクロフォン11から出力される電気信号に基づいて打撃音の変化を判定する判定器12と、該判定器12による判定結果に応じてハンマーの打撃動作を停止させる停止制御器13と、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体駆動式又は電動式自動工具の動作制御に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば流体駆動式の自動ハンマーであるエアハンマーに関して、特許文献1にあるように、ワークの打ち込み終了を作業者が認識して動作スイッチを戻すまでの無駄打ちによる騒音という課題がある。特許文献1の場合、この課題に対し、エアハンマーの内部構造を工夫することによって対処しており、ワーク打ち込み終了で自動的に停止する仕組みをエアハンマーに内蔵する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−118959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の騒音に関する課題は、流体駆動式だけでなく、他の機種も含めた自動ハンマー全般にあてはまる課題である。しかし、特許文献1の技術をエアハンマー以外に適用することは当業者であっても可能であるとは思えず、また、既存の自動ハンマーを改造して特許文献1の技術を適用することも難しい。本発明はここに着目したもので、ワーク打ち込み終了後の無駄打ちによる騒音という課題を、自動ハンマーの機種に関わらず、また、既存の自動ハンマーであっても、解決することのできる制御装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために提案する自動ハンマーの制御装置は、ハンマーの打撃音を電気信号に変換して出力するマイクロフォンと、該マイクロフォンから出力される電気信号に基づいて前記打撃音の変化を判定する判定器と、該判定器による判定結果に応じて前記ハンマーの打撃動作を停止させる停止制御器と、を含んで構成される。
【発明の効果】
【0006】
上記提案に係る制御装置は、ワーク打ち込み終了の前後で変化する自動ハンマーの打撃音変化を検知してハンマーの動作を停止させる装置であり、外付け、後付けで自動ハンマーに適用することができる。したがって、自動ハンマーの機種を問わず、また、既存の自動ハンマーであっても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】自動ハンマーの制御装置の実施形態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示す実施形態は、流体駆動式の自動ハンマーであるエアハンマーに適用した例である。
エアハンマー1は、動力源として高圧エア供給源2(例えばコンプレッサ)から高圧エアの供給を受けて先端のハンマー1aが往復動作する。この例のワーク3はブッシュで、作業台4の上に置かれたアルミ製のトランスミッションケース5(車両用)に軸受として打ち込まれる。ワーク3の打ち込みには治具6が使用され、ワーク3の頭部に治具6を押し当てて、該治具6の頭部をエアハンマー1で打撃する。エアハンマー1は、グリップ1bにあるトリガスイッチの操作で打撃動作の開始/停止が制御される。
【0009】
このエアハンマー1に対する制御装置10は、作業台4の横の台上に置かれたマイクロフォン11及び判定器12と、高圧エア供給源2からエアハンマー1へエアを送るホースの途中に介在させた停止制御器13を含んで構成される。
マイクロフォン11は、ハンマー1aの打撃音をひろって電気信号に変換して出力する。マイクロフォン11として騒音計を使用してもよい。判定器12は、例えばデータロガーで、マイクロフォン11から出力される電気信号の振幅をモニタして、打撃音の変化を判定する。停止制御器13は、本実施形態の場合、高圧エアをエアハンマー1へ送るホースの途中に介在させた電磁弁で、判定器12が出す判定結果の制御信号に応じて動力源であるエアの供給を遮断し、ハンマー1aの打撃動作を停止させる。
【0010】
一例としてエアハンマー1への適用例を示すが、電動式の自動ハンマーであれば、動力源である高圧エア供給源2が電源となり、この電源から自動ハンマーへ延びる電気コードの途中に、停止制御器13としてスイッチを介在させる。
【0011】
判定器12は、マイクロフォン11から出力される電気信号の振幅をしきい値と比較することで、打撃音の変化を判定する。例えば図1Bに示すように、判定器12は、打撃音から変換された電気信号の電圧をしきい値電圧Vrefと比較するオペアンプであり、電気信号の電圧がしきい値電圧Vrefを上回ったときにオペアンプの出力が停止制御器13を作動させる。
【0012】
マイクロフォン11から出力される電気信号の振幅(電圧)は、ハンマー1aの打撃音の大きさに応じて変化する。実験によれば、ワーク3を打ち込んでいる途中の打撃音は70〜80dBであり、ワーク3の打ち込みが終了して治具6がトランスミッションケース5を叩く状態になると打撃音が大きくなり、105〜110dBに変化する。したがって、この場合、しきい値電圧Vrefを、打撃音の100〜105dBに相当する電気信号の電圧に設定すれば、ワーク3の打ち込み終了で打撃音が大きくなったときに判定器12から制御信号が出され、停止制御器13が動力源を遮断してハンマー1aの打撃動作を停止させる。
【0013】
判定器12としてデータロガーを使用していれば、電気信号の振幅判定に限らず、電気信号の周波数(波長)をモニタすることから打撃音の変化をとらえることもできる。すなわち、ワーク3を打ち込んでいる途中の打撃音と、ワーク3の打ち込みが終了してトランスミッションケース5を叩き始めたときの打撃音とでは、音の大きさだけでなく音色、つまり音の周波数も変化するので、この変化に伴う電気信号の周波数変化をデータロガーで捉え、停止制御器13へ制御信号を出すことができる。
【0014】
遮断作動した後の停止制御器13は、30秒程度の時間経過後に動力源供給可能状態へ自動復帰するか、スイッチ操作等で手動により動力源供給可能状態へ復帰させることができる。
【0015】
以上のように、本実施形態の制御装置10によれば、自動ハンマーが流体駆動式であっても電動式であっても適用することができ、また、外付け且つ後付けすることができるので、既存の自動ハンマー全般に適用することができ、ワーク打ち込み終了後の無駄打ちによる騒音という課題を解決可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 エアハンマー
2 高圧エア供給源
3 ワーク
10 制御装置
11マイクロフォン
12 判定器
13 停止制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンマーの打撃音を電気信号に変換して出力するマイクロフォンと、
該マイクロフォンから出力される電気信号に基づいて前記打撃音の変化を判定する判定器と、
該判定器による判定結果に応じて前記ハンマーの打撃動作を停止させる停止制御器と、
を含んで構成される、自動ハンマーの制御装置。
【請求項2】
前記判定器は、前記電気信号の振幅をしきい値と比較して前記打撃音の変化を判定する、請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記停止制御器は、前記判定器による判定結果に応じて前記ハンマーの動力源の供給を遮断する、請求項1又は請求項2記載の制御装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−125872(P2012−125872A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279032(P2010−279032)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】