説明

自動ワインダ

【課題】テンションセンサが故障した場合でも、巻取ユニットを停止させずに済み、かつ、パッケージ品質への影響を最小限に抑えられるようにする。
【解決手段】給糸ボビン12から解舒された糸をパッケージPに巻き取る巻取ユニット1と、巻取ユニット1で巻き取られる糸にテンションを付与するゲート式テンサ26と、糸のテンションを測定するテンションセンサ30と、テンションセンサ30によるテンション測定値を記憶する記憶部56と、ゲート式テンサ26による糸のテンションを制御するコントローラ55とを備えた自動ワインダ100で、コントローラ55は、巻取ユニット1による糸の巻取中にテンションセンサ30の故障を判定し、テンションセンサ30が故障した場合、記憶部56に記憶されている故障前のテンション測定値を呼び出し、該測定値に基づきゲート式テンサ26を制御して糸のテンションを調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンの糸を巻き返してパッケージを形成するための自動ワインダに関する。
【背景技術】
【0002】
精紡機等で生産したボビンを巻き返して所定形状のパッケージを形成する自動ワインダがある。自動ワインダは、例えば、特許文献1に示すように、ボビン解舒した糸に適宜なテンションを与えるテンサ、糸の欠点を検出するスラブキャッチャ、糸切れ或いはスラブキャッチャによる糸切断時に糸端を継ぐスプライサ(糸継装置)、及びパッケージを摩擦接触により高速回転させる綾振ドラムなどを備えている。
【0003】
自動ワインダでは、パッケージ形状を均一にするために、テンサにより巻取テンションを調整する必要がある。従来、この巻取調整は、テンションマネージャーと呼ばれるテンション制御手段に記憶された経験値に基づき、巻径増大にしたがってテンションを下げ、パッケージの巻き密度を理想的なものにすることで行われていた。しかしながら、このようなテンション調整では、実際のテンション値に基づいて巻き取りを行う訳ではないため、パッケージ形状のばらつきを完全に排除することはできなかった。また、巻取中に、ボビン解舒などに予期せぬテンション変動が生じてもこれに対応することができず、過剰テンションなどによる糸切れや巻き形状の不良が生じるのを未然に防止できなかった。
【0004】
そこで、特許文献1に示す自動ワインダは、ボビンから解舒された糸をパッケージに巻き取る巻取ユニットに、糸のテンションを測定するテンションセンサを設置している。このようなテンションセンサによれば、実測されたテンション値に基づいて巻き取りを行うので、パッケージ形状のばらつきを減らすことができる。また、巻取中の糸に予期せぬテンション変動が発生しても、これを検出することができる。したがって、検出したテンション変動に基づいてテンサや綾振ドラムの動作を調節でき、巻取中のテンション変動による糸切れや巻形状不良の発生を回避することができる。
【特許文献1】特開平10−87175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなテンションセンサを備える自動ワインダでは、テンションセンサが故障した場合、その巻取ユニットを停止させるか、テンションマネージャーに記憶された経験式から糸のテンションを予測して巻き取りを続行することとなる。しかしながら、巻取ユニットを停止させるとパッケージの生産効率が低下する。一方、テンションマネージャーに記憶された経験式でテンションを予測して巻き取りを続ければ、巻取ユニットを停止させずに済むので、パッケージの生産効率の低下は免れるが、経験式のみに基づいて巻き取りを行うと、テンションセンサの実測値に基づいて巻き取りを行っていた故障前とはパッケージの形状等が異なってしまい、パッケージ品質を一定に保つことができないという不都合があった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、テンションセンサが故障した場合でも、巻取ユニットを停止させずに済み、かつ、パッケージ品質への影響を最小限に抑えることができる自動ワインダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明にかかる自動ワインダは、ボビンから解舒された糸をパッケージに巻き取る巻取ユニットと、巻取ユニットで巻き取られる糸にテンションを付与するテンション付与手段と、糸のテンションを測定するテンションセンサと、テンションセンサによるテンション測定値を記憶する記憶手段と、テンション付与手段により付与される糸のテンションを制御する制御手段と、を備え、制御手段は、巻取ユニットによる糸の巻取中にテンションセンサの故障を判定し、該テンションセンサが故障している場合、記憶手段に記憶されている故障前のテンションの測定値に基づき糸のテンションを制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の自動ワインダによれば、巻取ユニットによる糸の巻取中にテンションセンサが故障した場合、記憶手段に記憶された故障前のテンション測定値に基づき糸のテンションを制御することができるので、テンションセンサが故障した場合でも、巻取ユニットを停止させずに済み、かつ、実際のテンション値に近いテンション値に基づいて糸の巻き取りを続行することが可能となる。これにより、テンションセンサの故障後に巻き取ったパッケージの品質を故障前に巻き取ったパッケージの品質に近付けることが可能となる。したがって、テンションセンサが故障した場合でも、パッケージの生産効率を低下させずに済み、かつ、パッケージ品質に与える影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0009】
また、上記の自動ワインダでは、制御手段は、記憶手段に記憶された故障前のテンション測定値から複数回のパッケージ巻取テンションの平均値を算出し、該算出した平均値に基づき糸のテンションを制御するようにしてもよい。これによれば、記憶されたテンション測定値にばらつきがある場合でも、ばらつきを平均化したテンション値に基づいて糸の巻き取りを続行することが可能となる。したがって、テンションセンサの故障後に巻き取ったパッケージの品質を均一にすることが可能となる。
【0010】
また、本発明にかかる自動ワインダは、ボビンから解舒された糸をパッケージに巻き取る複数の巻取ユニットと、各巻取ユニットで巻き取られる糸にテンションを付与するテンション付与手段と、各巻取ユニットで巻き取られる糸のテンションを測定するテンションセンサと、テンションセンサによるテンション測定値を記憶する記憶手段と、テンション付与手段で付与される糸のテンションを制御する制御手段と、を備え、制御手段は、一の巻取ユニットによる糸の巻取中に該巻取ユニットのテンションセンサが故障している場合、併設された他の巻取ユニットのテンションセンサで測定されたテンション測定値に基づき、前記一の巻取ユニットで巻き取られる糸のテンションを制御することを特徴とする。
【0011】
この自動ワインダによれば、併設された他の巻取ユニットのテンション測定値に基づき、一の巻取ユニットで巻き取られる糸のテンションを制御するので、テンションセンサが故障した場合でも、巻取ユニットを停止させずに済み、かつ、実際のテンション値に近いテンション値に基づいて糸の巻き取りを続行することが可能となる。これにより、テンションセンサの故障後に巻き取ったパッケージの品質を故障前に巻き取ったパッケージの品質に近付けることが可能となる。したがって、テンションセンサが故障した場合でも、パッケージの生産効率を低下させずに済み、かつ、パッケージの品質に与える影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0012】
また、上記の自動ワインダでは、制御手段は、記憶手段に記憶されている他の巻取ユニットのテンション測定値から、故障していない複数の巻取ユニットのテンション測定値の平均値を算出し、該算出した平均値に基づいて前記一の巻取ユニットで巻き取られる糸のテンションを制御するようにしてもよい。これによれば、記憶されたテンション測定値にばらつきがある場合でも、ばらつきを平均化したテンション値に基づいて糸の巻き取りを続行することが可能となる。したがって、テンションセンサの故障後に巻き取ったパッケージの品質を均一にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる自動ワインダによれば、テンションセンサが故障した場合でも、巻取ユニットを停止させずに済み、かつ、パッケージ品質への影響を最小限に抑えることで、パッケージの生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる自動ワインダが備える巻取ユニット1を示す概略図である。なお、後述するように、一台の自動ワインダには、図1に示す巻取ユニット1が複数錘(例えば60錘)併設されている。巻取ユニット1は、給糸部11に挿立された給糸ボビン12を下部に備え、給糸ボビン12から解舒された糸をパッケージPに巻き取るための巻取装置13を上部に備えて構成されている。巻取装置13は、モータ(図示せず)の駆動力で回転する綾振ドラム14と、パッケージPを綾振ドラム14に対して適宜な接圧で接触させ、その状態で回転自在に支持するクレードル15とを備えている。綾振ドラム14の周面には、綾振溝16が形成されている。この巻取装置13では、綾振ドラム14を回転させることにより、糸を適宜幅でトラバースさせつつパッケージPに巻き取ることができる。これにより、給糸ボビン12の糸が上方に解舒されてパッケージPに巻き換えられるようになっている。
【0015】
巻取装置13と給糸ボビン12の間には、糸道Yに沿って上方から下方にかけて順に、ヤーンクリアラ18、カッタ28、スプライサ(糸継装置)20、テンションセンサ30、ゲート式テンサ26、糸解舒補助装置29が設けられている。また、糸継作業を行うための中継パイプ22、サクションマウス24が設けられている。ヤーンクリアラ18は、糸の巻取中にスラブ等の不良糸部分を発見するための装置である。スプライサ20は、糸切れ時にパッケージP側の上糸と給糸ボビン12側の下糸との糸端同士を継ぐための装置である。テンションセンサ30は、その詳細な構成及び機能は後述するが、巻取中の糸のテンションを測定するための装置である。ゲート式テンサ26は、櫛歯状の固定ゲートと可動ゲートとからなる一対のゲートを備え、該一対のゲートで糸道Yの糸をジグザグ状に保持することで、走行する糸に所定のテンションを付与する装置である。カッタ28は、ヤーンクリアラ18によって糸の不良部分が発見されたときに、その不良部分の糸搬送方向における上流側の糸をカットするものである。糸解舒補助装置29は、給糸ボビン12の上方に配置された筒状の部材を備えており、給糸ボビン12から解舒される糸のバルーンを制御するためのものである。
【0016】
スプライサ20の下端には、該スプライサ20に糸を案内するためのスプライサ用ガイド板(スプライサ用糸ガイド)21が設置されている。また、ゲート式テンサ26の上端には、該ゲート式テンサ26に糸を案内するためのテンサ用ガイド板(テンサ用糸ガイド)27が設置されている。スプライサ用ガイド板21,テンサ用ガイド板27はいずれも、その面が糸道Yに直交して配置された平板からなり、該平板に糸を案内するための略U字状のガイド溝21a,27aが設けられている。テンションセンサ30は、スプライサ20の下方かつゲート式テンサ26の直上位置に設置されており、テンサ用ガイド板27の上面に載置されている。
【0017】
サクションマウス24は、スプライサ20近傍の高さ位置にある支点Aを中心に上下方向へ回動自在に構成されており、その回動端には、吸引口24aが設けられている。これにより、吸引口24aは、スプライサ20の下部から綾振ドラム14の上部へ回動可能になっている。一方、中継パイプ22は、ゲート式テンサ26とスプライサ20の間の高さ位置にある支点Bを中心に上下方向へ回動自在に構成されており、その回動端には吸引口22aが設けられている。これにより、吸引口22aは、ゲート式テンサ26の下部、詳細にはゲート式テンサ26と糸解舒補助装置29の間から、スプライサ20の上部へ回動可能になっている。
【0018】
カッタ28で糸がカットされた際、パッケージP側の上糸の糸端は、綾振ドラム14の直下に配置されたサクションマウス24の吸引口24aで吸引される。その状態で、サクションマウス24が下方へ回動することで、該上糸の糸端がスプライサ20に引き渡される。一方、給糸ボビン12側の下糸の糸端は、ゲート式テンサ26の下部に配置された中継パイプ22の吸引口22aで吸引される。その状態で、中継パイプ22の吸引口22aが上方へ回動することで、該下糸の糸端がスプライサ20に引き渡される。こうして、スプライサ20で上糸と下糸が継ぎ合わされる。
【0019】
図2は、テンションセンサ30の外観構成を示す斜視図、図3は、テンションセンサ30の内部構成を示す平面視の概略断面図である。図2では、テンションセンサ30の下面側に設置されたテンサ用ガイド板27(図1参照)も図示している。
【0020】
図2に示すように、テンションセンサ30は、略棒状のロッド31を備えている。ロッド31は、その軸方向が糸道Yに直交するように配置されている。ロッド31の側面には、糸のテンションを検出するテンション検出部31aが設けられている。テンション検出部31aは、ロッド31の周面を窪ませた形状を有しており、糸に対する接触摩擦抵抗が小さく、且つ摩耗の少ないセラミックなどの材質で構成されている。ロッド31の上方と下方にはそれぞれ、テンション検出部31aの上方で糸道Yの糸に当接して該糸を支持する上部ガイド部材33と、テンション検出部31aの下方で上部ガイド部材33とは反対向きに糸道Yの糸に当接して該糸を支持する下部ガイド部材35が設置されている。上部ガイド部材33と下部ガイド部材35は、いずれもその面が糸道Yに直交するように配置された平板状の部材からなり、糸道Yに対向する部分に溝状の糸支持部33a,35aが形成されており、該糸支持部33a,35aには、糸に接触するセラミック製のヤーンガイド34,36が設置されている。糸道Yの糸は、上部ガイド部材33のヤーンガイド34と、下部ガイド部材35のヤーンガイド36と、ロッド31のテンション検出部31aとの三点で支持されるようになっている。そして、これら三点を結ぶ線は、テンションセンサ30の正面から見ると、テンション検出部31aにおいて所定角度で屈曲するようになっている。これにより、糸道Yの糸がテンション検出部31aに対して前記の所定角度で巻き付いた状態で当接するようになっている。
【0021】
また、図2に示すように、上部ガイド部材33と下部ガイド部材35には、テンション検出部31aへ導入される糸を案内するための糸案内部33b,35bが形成されている。糸案内部33b,35bは、平面視において、糸の導入方向手前側から奥側へ向かって次第に両者の幅が狭くなるように水平面内で傾斜した一対の傾斜辺からなる。また、ロッド31の先端には、テンション検出部31aへ導入される糸を案内するための案内部材37が設置されている。案内部材37の先端の側面には、平面視で上部ガイド部材33の糸案内部33bと同じ傾斜を有してなる平面状の案内部37aが形成されている。案内部37aは、糸道Yへ導入される糸をテンション検出部31aと同じ高さ位置で案内するものである。
【0022】
図3に示すように、テンションセンサ30の本体カバー41内には、抵抗素子(歪みゲージ)42aが張り付けられた金属ブロック(起歪体)42が設置されている。金属ブロック42は、略直方体形状で、長手方向がロッド31の軸方向と平行に配置されており、一端の側面がテンションセンサ30の支持部材44に固定され、他端の前記側面に対向する側面が連結体46を介してロッド31の根元側端部に対して直角に連結されている。抵抗素子42aは、例えば印刷等によって金属ブロック42の側面に一体形成されている。上記の構成により、糸道Yの糸がテンション検出部31aに当接することで、ロッド31が軸に対して直交する方向に変位すると、それにより、金属ブロック42の長手方向に歪みが発生する。抵抗素子42aがこの歪みを感知し、歪み量に相応した検知信号(電圧)を出力するようになっている。
【0023】
図4は、上記構成の巻取ユニット1を複数台備えてなる自動ワインダ100の構成を示す概略図である。同図に示すように、一台の自動ワインダ100には、複数錘(例えば60錘)の巻取ユニット1が併設されている。巻取ユニット1は、適当な台数(例えば20錘)ごとにグループ化にされている。そして、自動ワインダ100には、各グループの巻取ユニット1を制御するためのコントローラ(制御手段)55が設けられている。コントローラ55は、グループに属する各巻取ユニット1に指令を送り、各巻取ユニット1の動作を制御するようになっている。
【0024】
コントローラ55は、各巻取ユニット1のテンションセンサ30から入力されたテンション値に基づいて、ゲート式テンサ26の駆動部(図示せず)に印加する電圧を制御し、糸切れなどがない最適な巻取テンションにフィードバック制御する。なお、巻取テンションを調整するためには、ゲート式テンサ26の作動制御を行うほか、コントローラ55から綾振ドラム14の駆動モータへ作動信号を出して、その回転数を制御することで、パッケージPの周速を変えるようにしてもよい。コントローラ55は、テンションセンサ30からの巻取テンション値を監視し、異常テンション値が検出されたらアラーム信号を発生させるモニタ機能を備えている。アラーム信号が発生したときには、コントローラ55により巻取が停止される。あるいは、アラーム信号を図示しないパッケージPの品質管理装置に送り、この装置にてパッケージ不良が生じたことを記憶するようにしてもよい。さらに、コントローラ55は異常なテンション値がテンションセンサ30から入力されると、ヤーンクリアラ18に作動信号を出力し、ヤーンクリアラ18によりその箇所の糸を除去することも可能である。
【0025】
また、自動ワインダ100には、各巻取ユニット1のテンションセンサ30で測定されたテンション値を記憶するための記憶部56が設けられている。記憶部56は、各巻取ユニット1による糸の巻取中に、テンションセンサ30によるテンション測定値を逐次記憶するようになっている。このテンション測定値は、各巻取ユニット1で巻き取られるパッケージPの巻取の進行度などと関連付けて記憶される。このテンション測定値は、テンションセンサ30から出力された電圧値のデータとして記憶される。また、記憶部56に記憶されたテンション測定値は、コントローラ55で呼び出すことが可能である。一方、自動ワインダ100には、各巻取ユニット1の動作状態などを表示するための表示パネル60a、巻取ユニット1の動作に異常が発生した際に該異常を知らせるための警報ランプ60bあるいはアラーム発生部60c、オペレータが自動ワインダ100を操作するためのスイッチ60d、などが設置されたコントロールパネル60が設けられている。
【0026】
ここで、自動ワインダ100が備える巻取ユニット1において、糸の巻取中にテンションセンサ30が故障した場合の運転手順について説明する。図5は、当該運転手順を説明するためのフローチャートである。まず、コントローラ55は、糸の巻取中に、各巻取ユニット1のテンションセンサ30が故障しているか否かを判断する(ステップST1)。ここでは、中継パイプ22でテンションセンサ30のテンション検出部31aに糸を導入しているにも関わらず、テンションセンサ30が糸のテンションを検出しない場合、それが何度か繰り返されると、コントローラ55は、当該巻取ユニット1のテンションセンサ30に故障が発生したと判断する。テンションセンサ30が故障したと判断されない場合(ステップST1でNO)は、通常モードで運転を続行する(ステップST2)。一方、テンションセンサ30が故障したと判断された場合(ステップST1でYES)は、表示パネル60aに故障の表示を出したり、警報ランプ60bを点灯させたり、アラームを鳴らすなどして、オペレータにテンションセンサ30の故障を報知する(ステップST3)。その後、オペレータによるスイッチ60dの操作で巻取ユニット1の運転モードがセンサ故障モードに切り換えられたか否かを判断する(ステップST4)。運転モードがセンサ故障モードに切り換えられなければ(ステップST4でNO)、当該巻取ユニット1の動作を停止させる(ステップST5)。一方、運転モードがセンサ故障モードに切り換えられた場合(ステップST4でYES)、コントローラ55は、記憶部56に記憶されている当該巻取ユニット1の故障前のテンション測定値を呼び出す(ステップST6)。そして、呼び出したテンション測定値に基づき、ゲート式テンサ26の作動制御あるいは綾振ドラム14の回転数制御を行い、巻取ユニット1の糸のテンションを制御する(ステップST7)。この場合、コントローラ55は、故障前に測定した1個のパッケージPの巻取テンション測定値に基づいて上記の制御を行うほか、故障前に当該巻取ユニット1で測定した複数個のパッケージPの巻取テンション測定値を呼び出し、その平均値を算出し、該算出した平均値に基づき上記の制御を行うようにしてもよい。
【0027】
また、コントローラ55は、一の巻取ユニット1による糸の巻取中に該巻取ユニット1のテンションセンサ30が故障した場合、併設された他の巻取ユニット1のテンションセンサ30で測定されたテンション測定値を呼び出し、該測定値に基づき、当該一の巻取ユニット1で巻き取られる糸のテンションを制御することもできる。この場合も、コントローラ55は、故障していない1台の巻取ユニット1におけるテンション測定値のみに基づいて上記の制御を行うほか、故障していない複数の巻取ユニット1におけるテンション測定値を呼び出し、その平均値を算出し、該算出した平均値に基づき巻取ユニット1の糸のテンションを制御することもできる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の自動ワインダ100によれば、巻取ユニット1による糸の巻取中にテンションセンサ30が故障した場合、記憶部56に記憶されている当該巻取ユニット1の故障前のテンション測定値に基づき糸のテンションを制御することができる。これにより、テンションセンサ30が故障した場合でも、巻取ユニット1を停止させずに済み、かつ、実際のテンション値に近いテンション値に基づいて糸の巻き取りを続行することが可能となる。したがって、テンションセンサ30の故障後に巻き取ったパッケージPの品質を故障前に巻き取ったパッケージPの品質に近付けることが可能となる。よって、テンションセンサ30が故障した場合でも、パッケージPの生産効率を低下させずに済み、かつ、パッケージPの品質に与える影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0029】
また、上記の自動ワインダ100では、コントローラ55は、記憶部56に記憶された故障前のテンション測定値から複数回のパッケージ巻取テンションの平均値を算出し、該算出した平均値に基づき糸のテンションを制御するようにしてもよい。これによれば、記憶部56に記憶されたテンション測定値にばらつきがある場合でも、ばらつきを平均化したテンション値に基づいて糸の巻き取りを続行することが可能となる。したがって、テンションセンサ30の故障後に巻き取ったパッケージPの品質を均一にすることが可能となる。
【0030】
また、上記の自動ワインダ100では、併設された他の巻取ユニット1のテンション測定値に基づき、テンションセンサ30が故障した巻取ユニット1で巻き取られる糸のテンションを制御することもできる。これによれば、一の巻取ユニット1のテンションセンサ30が故障した場合でも、当該巻取ユニット1を停止させずに済み、かつ、実際のテンション値に近いテンション値に基づいて糸の巻き取りを続行することが可能となる。
【0031】
この場合、コントローラ55は、故障していない複数の巻取ユニット1のテンション測定値の平均値を算出し、該算出した平均値に基づいて一の巻取ユニット1で巻き取られる糸のテンションを制御することも可能である。これによれば、記憶部56に記憶されたテンション測定値にばらつきがある場合でも、ばらつきを取り除いたテンション値に基づいて糸の巻き取りを続行することが可能となる。したがって、テンションセンサ30の故障後に巻き取ったパッケージPの品質を均一にすることが可能となる。
【0032】
なお、上記では、巻取ユニット1の運転モードのセンサ故障モードへの切り換えは、オペレータによる手動操作に基づいて行われる場合を説明したが、これ以外にも、コントローラ55がテンションセンサ30の故障を判断した場合、自動的にセンサ故障モードへの切り換えが行われるようにしてもよい。
【0033】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書、図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動ワインダの巻取ユニットを示す概略図である。
【図2】テンションセンサの外観構成を示す斜視図である。
【図3】テンションセンサの内部構成を示す平面視の概略断面図である。
【図4】巻取ユニットを複数備えてなる自動ワインダの構成を示す概略図である。
【図5】テンションセンサが故障した場合の巻取ユニットの運転手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 巻取ユニット
11 給糸部
12 給糸ボビン
13 巻取装置
14 綾振ドラム
15 クレードル
16 綾振溝
18 ヤーンクリアラ
20 スプライサ
22 中継パイプ
24 サクションマウス
26 ゲート式テンサ
28 カッタ
29 糸解舒補助装置
30 テンションセンサ
55 コントローラ(制御手段)
56 記憶部(記憶手段)
60 コントロールパネル
60a 表示パネル
60b 警報ランプ
60c アラーム発生部
60d スイッチ
100 自動ワインダ
P パッケージ
Y 糸道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンから解舒された糸をパッケージに巻き取る巻取ユニットと、
前記巻取ユニットで巻き取られる糸にテンションを付与するテンション付与手段と、
前記糸のテンションを測定するテンションセンサと、
前記テンションセンサによるテンション測定値を記憶する記憶手段と、
前記テンション付与手段で付与される糸のテンションを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記巻取ユニットによる糸の巻取中に前記テンションセンサの故障を判定し、該テンションセンサが故障している場合、前記記憶手段に記憶されている故障前のテンション測定値に基づき前記糸のテンションを制御することを特徴とする自動ワインダ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶されている故障前のテンション測定値から複数回のパッケージ巻取テンションの平均値を算出し、該算出した平均値に基づき前記糸のテンションを制御することを特徴とする請求項1に記載の自動ワインダ。
【請求項3】
ボビンから解舒された糸をパッケージに巻き取る複数の巻取ユニットと、
前記各巻取ユニットで巻き取られる糸にテンションを付与するテンション付与手段と、
前記各巻取ユニットで巻き取られる糸のテンションを測定するテンションセンサと、
前記テンションセンサによるテンション測定値を記憶する記憶手段と、
前記テンション付与手段で付与される糸のテンションを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、一の巻取ユニットによる糸の巻取中に該巻取ユニットが備えるテンションセンサの故障を判定し、該テンションセンサが故障している場合、前記記憶手段に記憶されている併設された他の巻取ユニットのテンション測定値に基づき、前記一の巻取ユニットで巻き取られる糸のテンションを制御することを特徴とする自動ワインダ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶されている他の巻取ユニットのテンション測定値から、故障していない複数の巻取ユニットのテンション測定値の平均値を算出し、該算出した平均値に基づいて前記一の巻取ユニットで巻き取られる糸のテンションを制御することを特徴とする請求項3に記載の自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−242096(P2009−242096A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94297(P2008−94297)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】