説明

自動二輪車における点火装置の取付構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動二輪車において、イグニッションコイル一体型プラグキャップを備える点火装置の取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】イグニッションコイルとプラグキャップとを一体に形成しハイテンションコードを不要とした点火装置は従来周知である。例えば、特開昭62-51760号公報においては、ケース内にイグニッションコイルとプラグキャップとを一体に形成したイグニッションコイル一体型プラグキャップをエンジンの点火プラグに冠着し、該ケースをエンジンのシリンダヘッドを覆うシュラウドに直接又は弾性部材を介して支持固定させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、エンジンのシリンダヘッドを覆うシュラウドは、軽量化及び騒音対策上、樹脂性とし、また、騒音対策上前記イグニッションコイル一体型プラグキャップをシュラウドに直接取付ける方式ではなく、ゴム等の弾性部材を介して浮かしながら支持する方式を採用することが多い。しかしながら、エンジン周りは特に振動が大きいため、シュラウドの点火プラグ周辺部の剛性を高くし、確実にボルト等で固定しなければプラグキャップが外れてしまうという問題を有し、また、近年は、車両の多機能化によりエンジン周りのスペースが狭くなってきており、特にシュラウドのヘッド面は、整備上ドライバーやレンチ等の工具が挿入しにくく、プラグキャップのボルトによる固定は極めて困難であるという問題を有している。これを解決するために、イグニッションコイル一体型プラグキャップにステーを設け、これを延長してエンジン側面等、工具の使用しやすい箇所に取付部を設けることも考えられるが、エンジンの振動が大きいため、かなりの剛性の高いステーが必要となる。以上のように、シュラウドにイグニッションコイル一体型プラグキャップを固定しようとした場合、シュラウド及び場合によってはイグニッションコイル側にも高い剛性が必要となりコストが増大することになる。
【0004】本発明は上記問題を解決するものであって、イグニッションコイル一体型プラグキャップを確実に支持させることができると共に、点火プラグの交換を容易に行うことができる自動二輪車における点火装置の取付構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】そのために本発明の自動二輪車における点火装置の取付構造は、エンジン11のクランクシャフト16に取付けられる冷却用ファン18と、エンジン11の周囲を覆うように固定されるシュラウド9a、9bと、シュラウド9a、9bに形成される吸気口10、排気口20及び点火プラグ挿入孔21と、エンジンと一体に形成され排気口20から外部に延びる取付ステー22と、取付ステー22に取付けられるイグニッションコイル一体型プラグキャップ25とを備えることを特徴とする。なお、上記構成に付加した番号は、図面と対比させるものであり、これにより本発明の構成が何ら限定されるものではない。
【0006】
【作用】本発明においては、例えば図1に示すように、シュラウド9bをエンジン11にかぶせて点火プラグ17及び取付ステー22をそれぞれ点火プラグ挿入孔21及び排気口20から突出させた状態でシュラウド9bをエンジン11に固定し、次いで、取付ステー22にイグニッションコイル一体型プラグキャップ25を取付け、プラグキャップ26内に点火プラグ17を挿入する。従って、重量の大きいイグニッションコイル30は、取付ステー22を介してエンジン11で支持されるため、振動を吸収させることができ、プラグキャップ26の外れを防止でき、また、点火プラグ17の交換が容易となる。
【0007】
【実施例】以下本発明の実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0008】図4は、本発明が適用される自動二輪車の側面図を示し、1はヘッドパイプ、2はフロントフォーク、3は前輪、5はメインフレーム、6はシート、7は後輪、8はマフラー、9は本発明に係わるエンジンのシリンダヘッドを覆うシュラウドであり、エンジンへの冷却風を取り入れる吸気口10が形成されている。なお、本発明は図示のスクータタイプに限定されるものではない。
【0009】図1、図2及び図3は本発明の自動二輪車における点火装置の取付構造の1実施例を示し、図1は断面図、図2は図1におけるシュラウド及びケースの斜視図、図3は図1における構成部品分解斜視図である。
【0010】図1において、11はエンジン、12はシリンダヘッド、13はシリンダブロック、14はピストン、15はコンロッド、16はクランクシャフトを示し、シリンダヘッド12には点火プラグ17が取付けられ、クランクシャフト16には、冷却用ファン18が取付けられている。エンジン11を覆うシュラウド9は、二つに分割された分割シュラウド9a、9bからなり、ゴム等のシール部材19、24を介してエンジン11に固定される。一方の分割シュラウド9aには冷却用ファン18に対向して吸気口10が形成され、他方の分割シュラウド9bには排気口20及び点火プラグ挿入孔21が形成され、クランクシャフト16に連動して冷却用ファン18を回転させ、図示矢印の如く通風させてエンジン11を冷却している。シリンダヘッド12には、取付ステー22が一体に形成され、該取付ステー22は排気口20から上部に延びている。
【0011】図2は、イグニッションコイル一体型プラグキャップ25を示し、プラグキャップ26とコイルケース27とが一体に形成されるもので、プラグキャップ26内には、抵抗体28、スプリングコネクター29が挿入され取付ビス23により固定され、コイルケース27内にはイグニッションコイル30が挿入され、その高圧側端子31は底部から上部にL字形状に延び抵抗体28の頭部と当接するように配置される。イグニッションコイル30は、鉄心コア32、1次コイル33、2次コイル34及び低圧側端子35を有する。コイルケース27の側面には、ブラケット37が一体に形成されボルト38により前記取付ステー22に固定される。
【0012】プラグキャップ26の下部には弾性部材36が固定される。弾性部材36は、挿入孔21内に圧入される舌片36a、分割シュラウド9bに当接される舌片36b及び点火プラグ17が嵌合される嵌合部36cを有する。
【0013】上記構成からなる本発明の点火装置の取付方法について説明すると、図3に示すように、先ず、分割シュラウド9bをエンジン11にかぶせて点火プラグ17及び取付ステー22をそれぞれ点火プラグ挿入孔21及び排気口20から突出させた状態で分割シュラウド9bをエンジン11に固定する。次いで、取付ステー22にイグニッションコイル一体型プラグキャップ25を取付け、プラグキャップ26内に点火プラグ17を挿入し、分割シュラウド9aを分割シュラウド9b及びエンジン11の側面に固定する。従って、重量の大きいイグニッションコイル30は、取付ステー22を介してエンジン11で支持されるため、振動を吸収させることができ、プラグキャップ26の外れを防止でき、また、点火プラグ17の交換が容易となる。
【0014】なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって種々の変更が可能である。例えば、上記実施例においてはシュラウドを分割しているが、一体型のシュラウドにおいても同様の作用効果が得られる。
【0015】次に前記したプラグキャップ26のコネクター構造について説明する。プラグキャップは、内部に点火ノイズ防止用の抵抗体が無いものは、構成は簡単で安価であるが、抵抗体を有するものはコネクター構造の形状が簡単ではなく加工が複雑で高価である。図5は従来のプラグキャップの構造を示し、プラグキャップ51内には、イグニッションコイルと接続される抵抗体52が設けられ、コネクター53を螺合することにより抵抗体52に当接させる。コネクター53内には、点火プラグ54の頭部を差し込むための差込孔55が形成されると共に、コネクター53の外周には係止溝56及び係止溝56と差込孔55を貫通する挿入孔57が形成されており、この挿入孔57内に弾性部材からなる係止ピン58を差し込むことにより、点火プラグ54の頭部をコネクター53の差込孔55内で固定するように構成している。
【0016】図6は本発明に係わるプラグキャップの構造を示し、図1を参照しつつ説明する。図(A)において、プラグキャップ26内には、イグニッションコイル30と接続される抵抗体28が設けられる。スプリングコネクター29は、小径のビス係止部29aと、大径のプラグ係止部29bとを有し、大径のプラグ係止部29bを点火プラグの頭部に挿通すると共に、取付ビス23を小径のビス係止部29a内に挿通してプラグキャップ26に螺合することにより抵抗体28に当接させ、抵抗体28及び取付ビス23と点火プラグ17の頭部との電気的接続を行う構成としている。図(B)の例は取付ビス23の形状が相違する例である。上記構成からなるプラグキャップは、構成及び加工が簡単であり、かつ、軸方向及び径方向の振動に対して強いという利点を有する。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、重量の大きいイグニッションコイルを取付ステーを介してエンジンで支持するため、振動を吸収させることができプラグキャップの外れを防止でき、また、点火プラグの交換が容易にできる。さらに、取付ステーが排気口から外部に延びているため、取付ステーがエンジンの冷却風により冷却され、イグニッションコイルを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動二輪車における点火装置の取付構造の1実施例を示す断面図
【図2】図1におけるシュラウド及びケースの斜視図
【図3】図1における構成部品分解斜視図
【図4】本発明が適用される自動二輪車の側面図
【図5】従来のプラグキャップを示し、図(A)は断面図、図(B)は図(A)のB−B線に沿って矢印方向から見た断面図
【図6】本発明に係わるプラグキャップを示す断面図
【符号の説明】
9…シュラウド、9a、9b…分割シュラウド、10…吸気口
11…エンジン、16…クランクシャフ、17…点火プラグ
18…冷却用ファン、20…排気口、21…点火プラグ挿入孔
22…取付ステー、25…イグニッションコイル一体型プラグキャップ
26…プラグキャップ、27…コイルケース、30…イグニッションコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジンのクランクシャフトに取付けられる冷却用ファンと、エンジンの周囲を覆うように固定されるシュラウドと、該シュラウドに形成される吸気口、排気口及び点火プラグ挿入孔と、エンジンと一体に形成され前記排気口から外部に延びる取付ステーと、該取付ステーに取付けられるイグニッションコイル一体型プラグキャップとを備えることを特徴とする自動二輪車における点火装置の取付構造。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】第2942391号
【登録日】平成11年(1999)6月18日
【発行日】平成11年(1999)8月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−190087
【出願日】平成3年(1991)7月30日
【公開番号】特開平5−33753
【公開日】平成5年(1993)2月9日
【審査請求日】平成10年(1998)3月27日
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−51760(JP,A)
【文献】特開 平1−147161(JP,A)
【文献】実開 昭57−156012(JP,U)
【文献】実開 昭60−21567(JP,U)
【文献】実開 平2−112971(JP,U)
【文献】実開 平1−83129(JP,U)