説明

自動二輪車の後部構造

【課題】シート下の燃料タンク及びその後方のテールライトを覆う構造についての部品コストを抑え、かつ当該構造の生産性の向上が図れるようにする。
【解決手段】燃料タンク25の上方に、燃料タンク25を上方から覆う燃料タンクカバー70を設け、燃料タンクカバー70の後端がテールライト80の上方に位置するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の開閉可能な乗員着座用のシートの下方に燃料タンクが設けられ、この燃料タンクの上方が燃料タンクカバー(フィラーカバー)によって覆われる構造が特許文献1に開示されている。この構造において上記燃料タンクカバーは、燃料タンクの上部のみを上方から覆っている。またこの自動二輪車では、燃料タンクの後方にテールライトが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3745842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造では、燃料タンクの後方にテールライトが設けられ、このような場合は一般的に、シート開放時の外観性の向上のために、テールライトの上方を覆うカバー部材(テールライトカバーと呼ぶ)がさらに設けられる。しかしながら、このようにした場合は、燃料タンクカバーとテールライトカバーとをそれぞれを別に作製して取付ける必要があるため、部品コスト及び生産性に課題がある。
【0005】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、乗員着座用のシートの下方に燃料タンクが設けられ、燃料タンクの後方にテールライトが設けられる自動二輪車において、これら燃料タンク及びテールライトを覆う構造についての部品コストを抑え、かつ当該構造の生産性の向上が図れる自動二輪車の後部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明は以下の手段を提供する。
(1)本発明の自動二輪車の後部構造は、乗員が着座するシート(16)の下方に、前方から収納ボックス(34)、燃料タンク(25)が設けられ、前記シート(16)の下方であって、前記収納ボックス(34)及び前記燃料タンク(25)の少なくとも側方がカバー部材(24)で覆われ、前記燃料タンク(25)の後方にテールライト(80)が設けられた自動二輪車の後部構造において、前記燃料タンク(25)の上方に、該燃料タンク(25)を上方から覆う燃料タンクカバー(70)が設けられ、該燃料タンクカバー(70)の後端が前記テールライト(80)の上方に位置し、該燃料タンクカバー(70)によって前記テールライト(80)の上方が覆われる、ことを特徴とする。
【0007】
(2)上記(1)に記載の自動二輪車の後部構造では、前記シート(16)の後部の周縁部が、円弧状に形成され、前記燃料タンクカバー(70)における前記シート(16)の後部の周縁部に面する部位に、該周縁部の円弧状の形状に沿う凹部(73)が形成され、該凹部(73)に前記周縁部が収容されることが好ましい。
【0008】
(3)上記(2)に記載の自動二輪車の後部構造では、前記燃料タンクカバー(70)は、前記凹部(73)を挟んで、前方に位置する前半部(74)と、後方に位置する後半部(75)と、で構成され、前記前半部(74)が、前記燃料タンク(25)の上方に位置し、前記後半部(75)が、前記テールライト(80)の上方に位置することが好ましい。
【0009】
(4)上記(2)又は(3)に記載の自動二輪車の後部構造では、前記燃料タンクカバー(70)は上面視で、後方に向けて幅狭になる形状で形成され、前記凹部(73)の両側方に、車幅方向内側に凹むくびれ部(76)が形成されることが好ましい。
【0010】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の自動二輪車の後部構造では、前記燃料タンクカバー(70)は、車幅方向に突出して設けられた取付片(71)を有し、前記燃料タンクカバー(70)は、前記取付片(71)に設けられた取付孔(72)によって、車体フレーム(15)から上方に突出して設けられたステー(60)に取付けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)記載の発明によれば、燃料タンクカバーによって、燃料タンク及びテールライトの上方を覆うことによって、単一のカバー部材で、二つの部材を覆うことができるため、燃料タンク及びその後方のテールライトを覆う構造についての部品コストを抑えることができ、また生産性の向上が図れる。
【0012】
上記(2)記載の発明によれば、燃料タンクカバーにシートの後部の周縁部の円弧状の形状に沿う凹部が設けられることから、この凹部によって、燃料タンクカバー上の雨水等を車幅方向外側に導きやすい構造にでき、排水性の良好化が図れる。また、凹部によってシートの後部を支持でき、また、凹部にシートを収容してシートの高さを低くすることができ、足付き性の向上も図れる。
【0013】
上記(3)記載の発明によれば、シートの後部の周縁部を収容する凹部により燃料タンクとテールライトとの間の空間が隠され、外観性の向上を図れる。
【0014】
上記(4)記載の発明によれば、燃料タンクカバーを極力小さくして、原材料を少なくすることができる。
【0015】
上記(5)記載の発明によれば、車体フレームから上方に突出したステーに燃料タンクカバーを取付けることから、車体フレームと燃料タンクカバーとの位置合わせが不要となり、組付性が向上する。また、燃料タンクカバーの取付部構造が簡易的な形状であるため、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る構造を有する自動二輪車の左側面図である。
【図2】同自動二輪車の後部の左側面図である。
【図3】同自動二輪車の後部の上面図であり、シートを取り外した状態の上面図である。
【図4】同自動二輪車の燃料タンクカバーの斜視図である。
【図5】同自動二輪車の後部の上面図であり、上記燃料タンクカバーを取り外した状態の上面図である。
【図6】同自動二輪車の後部の上面図であり、燃料タンク上方に設けられるシート及びリヤグリップを二点鎖線で示した図である。
【図7】同自動二輪車の車体フレームの左側面図である。
【図8】同自動二輪車の車体フレームを備える異なる自動二輪車の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で用いる図面において、矢印FRは車両の前方を示し、矢印UPは車両の上方を示し、矢印LHは車両の左方を示している。
【0018】
図1は、本実施形態に係る構造を有するスクータ型の自動二輪車1を示している。自動二輪車1は、エンジン2と動力伝達機構3とを一体としたスイングユニット4を備え、スイングユニット4の後部で後輪5を回転可能に支持し、スイングユニット4の前方に操舵系を構成する前輪6を配置している。前輪6は、左右一対のフロントフォーク7,7の下部に回動可能に支持され、左右のフロントフォーク7,7の上部にはブリッジ8が架設されている。ブリッジ8の幅方向中央にステアリングシャフト9が立設され、ステアリングシャフト9の上部には操向ハンドル10が設けられている。ステアリングシャフト9は、車体フレーム11の前端に設けられたヘッドパイプ12に回転可能に支持されている。
【0019】
図7は車体フレーム11の左側面図である。同図も参照し、この車両の車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から後下方に延びるメインフレーム13と、メインフレーム13の下部側面に接続して後方に向けて延びた後、後上方に延びる左右一対のサイドフレーム14,14と、サイドフレーム14,14の上端と接続し、後上方に延びる左右一対のリヤフレーム15,15と、を備えている。左のサイドフレーム14の後方下部には、ピボットプレートPが溶着されている。
【0020】
図1に示すように、スイングユニット4は、ピボットプレートPにリンク部材14Aを介して支持され、上下方向に揺動可能とされている。スイングユニット4の上方には、乗員が着座する乗用車用シート16(以下、シート16)が配置され、シート16は前後に延在し、運転者が着座するメインシート17と同乗者が着座するピリオンシート18と、を一体に有している。
【0021】
シート16の前方であって、ヘッドパイプ12の後方には、乗員が乗り降りする際に足を通す足くぐり空間19が形成され、運転者は足くぐり空間19に足を通し、シート16に着座し、車体前後方向の中央下部に設けられたステップフロア20に足を載せることで、自動二輪車1に乗車することができる。
【0022】
自動二輪車1は、樹脂材料からなる複数のカバー部材で構成される車体カバーcvによって覆われ、足くぐり空間19の前方には、前から順にアウターレッグシールド21、インナーレッグシールド22が配設されている。アウターレッグシールド21は、ヘッドパイプ12の前方から左右下方に延び、インナーレッグシールド22は、ヘッドパイプ12の後方に配され、アウターレッグシールド21を後方から覆っている。
【0023】
インナーレッグシールド22の下端には、上記ステップフロア20の前端が連なり、ステップフロア20の下方、かつサイドフレーム14の下方には、アンダーカバー23が配設され、前後方向に延在している。シート16の下方には、左右一対のリヤサイドカバー24,24が配設され、リヤサイドカバー24,24は、リヤフレーム15,15に沿って前後方向に延在している。
【0024】
図2も参照し、シート16の前部の下方には、ヘルメット等を収容可能な収納ボックス34が配置され、シート16は、収納ボックス34によって支持され、前端を軸中心として後方から開閉可能とされている。収納ボックス34は、リヤフレーム15,15間に配置され、リヤフレーム15,15に沿って後方に延在している。収納ボックス34は、ヘルメットHを収容可能な程度の比較的広い収容スペースを有している。
【0025】
また、収納ボックス34の後方においてリヤフレーム15,15の間には、燃料タンク25が配置されている。燃料タンク25は、リヤフレーム15,15に固定支持されている。燃料タンク25は、収納ボックス34と同様にシート16の下方に位置し、シート16によって覆われる。また、スイングユニット4の後側上部と左のリヤフレーム15との間には、リヤクッションユニット40が介装され、スイングユニット4の上部には、エアクリーナ41が設けられている。
【0026】
図7を参照し、車体フレーム11について詳述すると、車体フレーム11においてメインフレーム13は、サイドフレーム14,14との結合部位からさらに下方に延び、その下端に車幅方向に延びるフロントクロスフレーム45を有し、サイドフレーム14,14間を連結させている。サイドフレーム14,14の後上方に立ち上がる部位は、リヤフレーム15,15の前部から前方に凸に湾曲する上面視でU字状を呈するクロスフレーム49によって連結され、クロスフレーム49は、円形断面の鋼管からなり、クロスフレーム49の端部はリヤフレーム15,15の前部に溶接されて結合されている。
【0027】
サイドフレーム14,14の後上方に立ち上がる部位の上端部14B,14Bは、断面視半円状となるように形成され、リヤフレーム15,15の前下部の周面を覆うようにして溶接されて結合されている。リヤフレーム15,15は、サイドフレーム14,14の上端部14B,14Bとの結合部位から前下方に延びる延出部D,Dを有しており、延出部D,Dの前端はクロスフレーム49に溶着されて結合されている。
【0028】
リヤフレーム15,15は、円形断面の鋼管からなり、クロスフレーム49は、リヤフレーム15,15よりも細い鋼管で形成され、延出部Dの前部はクロスフレーム49に近づくにつれて平たくなるように形成され、その前端のクロスフレーム49との結合部は、クロスフレーム49の太さに合わせて長円形に形成される。
【0029】
ここで、図2を参照し、この自動二輪車1では、クロスフレーム49がエンジン2のシリンダ36の側方及び前方を囲うように前方に湾曲して延びており、延出部D,Dの前端はシリンダ36の側方においてクロスフレーム49に結合している。延出部D,Dは、クロスフレーム49に近づくにつれて車幅方向の幅寸法を漸減させるように形成されており、自動二輪車1では、延出部D,Dとシリンダ36のクリアランスは比較的広くなっている。
【0030】
また、この車体フレーム11では、リヤフレーム15,15をサイドフレーム14,14との結合部分から前方に延ばして、延出部D,Dをクロスフレーム49と接続し、サイドフレーム14,14とリヤフレーム15,15(延出部D,D)とクロスフレーム49とで三角形形状を構成している。このようなフレーム構造では、特別に補強部材を設けることなく、クロスフレーム49を補強することができる。
【0031】
図2、図7を併せて参照し、クロスフレーム49には、上方に平坦面を向ける左右一対の前側収納ボックス支持部材51,51が溶接結合され、これら前側収納ボックス支持部材51,51が、収納ボックス34の前部を下方から支持し、収納ボックス34及びシート16の荷重を支えている。また、リヤフレーム15,15の前後方向略中央領域には、断面コ字状に形成された左右一対の後側収納ボックス支持部材52,52が、上方に平坦面を向けて溶接結合されている。これら後側収納ボックス支持部材52,52が、収納ボックス34の後方上部を下方から支持し、収納ボックス34及びシート16の荷重を支えている。
【0032】
また、リヤフレーム15,15において後側収納ボックス支持部材52,52より後方には、左右一対の前側燃料タンク支持ブラケット55,55が溶接結合され、これら前側燃料タンク支持ブラケット55,55の後方にさらに、左右一対の後側燃料タンク支持ブラケット56,56が溶接結合されている。燃料タンク25は、これら各支持部材に下方から支持されるとともに締結されて固定されている。
【0033】
ここで、前側燃料タンク支持ブラケット55,55と、後側燃料タンク支持ブラケット56,56と、の間においてリヤフレーム15,15には、断面コ字状に形成された左右一対の燃料タンクカバー用ステー60,60が上方に平坦面を向けて溶接結合されている。これら燃料タンクカバー用ステー60,60は、図5に示すように、リヤサイドカバー24,24に形成された左右一対の切欠き部61,61によって、リヤサイドカバー24,24内から外部に露出する。そして図3に示すように、これら燃料タンクカバー用ステー60,60は、燃料タンク25の上方を覆う樹脂材料からなる板状の燃料タンクカバー70を固定している。
【0034】
燃料タンクカバー70は、リヤサイドカバー24,24の間に配置されており、その前端を収納ボックス34の後端に連続させ、燃料タンク25を上方から全体的に覆っている。燃料タンクカバー70は上面視で、後方に向けて幅狭になる形状で形成され、図4も参照し、燃料タンクカバー用ステー60,60に対応する位置に、車幅方向に突出する左右一対の取付片71,71を有している。これら取付片71,71にはそれぞれ、取付孔72,72が形成されており、これら取付孔72,72に挿通させたボルトを燃料タンクカバー用ステー60,60に締結することで、燃料タンクカバー70が固定される。さらに図4に示すように、燃料タンクカバー70の前部には左右一対の係止ボス部78,78が形成されており、これら係止ボス部78,78にはピン等が取付けられ、これらピンは収納ボックス34に係止される。また、図6を参照し、燃料タンクカバー用ステー60,60には、同乗者が乗車姿勢で把持するリヤグリップ90が、燃料タンクカバー70と共締めされて固定されている。リヤグリップ90は、図1も参照し、左右両側に位置して前後方向に延在するグリップ部分を有し、これら左右のグリップ部分がシート16後方で連結部によって連結される形状を有している。
【0035】
また、燃料タンクカバー70には、燃料タンク25の給油キャップ25Aを挿通させる挿通孔70Aが形成されている。また、燃料タンク25の上面には燃料ポンプ25B等が設けられ、この燃料ポンプ25B等も燃料タンクカバー70によって覆われている。
【0036】
図3は、燃料タンクカバー70が取り付けられた状態の車両後部の上面図であり、図5は、燃料タンクカバー70が取り外された状態の車両後部の上面図である。図2、図3、及び図5に示すように、燃料タンク25の後方には、テールライト80が設けられており、図5に示すように、テールライト80は、灯火器を収容するレンズ81と、レンズ81の前部に設けられた一対の取付片82,82を有するブラケット83と、を備え、取付片82をリヤフレーム15,15の後端部に締結することで固定されている。詳細には、図7も参照し、リヤフレーム15,15の後端間にはこれらを連結するクロスプレート65が設けられ、このクロスプレート65に取付片82,82が固定されている。
【0037】
テールライト80の両側には、左右のウィンカ84L,84Rが設けられ、これらウィンカ84L,84Rはテールライト80のレンズ81の両側部に締結等で取付けられる。また、テールライト80の下方には、図2に示すように、リヤフェンダ85が設けられており、リヤフェンダ85はリヤフレーム15,15の後部に取付けられて、後斜め下方に延出し、後輪5の上方及び後方を覆っている。リヤフェンダ85においてテールライト80の直下に位置する部位には、ブレーキ灯86及びライセンスプレート取付け用のブラケット87が上から順に設けられている。
【0038】
ここで、図3と図5を対比して参照し、燃料タンクカバー70の後端はテールライト80の上方に位置しており、テールライト80の上方は燃料タンクカバー70によって覆われている。燃料タンクカバー70の後端とテールライト80の上部との間には略隙間がなく、燃料タンクカバー70の後端はテールライト80の上部に当接又は近接している。また、燃料タンクカバー70の後部両側とリヤサイドカバー24,24の後部との間にも略隙間がなく、燃料タンクカバー70の後部両側はリヤサイドカバー24,24の後部に当接又は近接している。また、燃料タンクカバー70の後部には貫通孔79が形成され、この貫通孔79にはボルトが挿通されて、クロスプレート65に締結される。また、ここで図6を参照し、リヤグリップ90において左右のグリップ部分をシート16後方で連結する連結部は、燃料タンクカバー70の後部の上方に位置しており、燃料タンクカバー70と共締めされて、クロスプレート65に固定される。
【0039】
燃料タンクカバー70には、シート16の後部の周縁部に係合する凹部73が形成され、詳細には燃料タンクカバー70は、凹部73を挟んで、前方に位置する前半部74と、後方に位置する後半部75と、に分けられ、前半部74は燃料タンク25の上方に位置して、後半部75は、テールライト80の上方に位置している。なお、図3及び図6では、説明の便宜のため、前半部74についてノードを付して示している。
【0040】
ここで図6に示すように、シート16の後部の周縁部は円弧状に形成されており、燃料タンクカバー70において、シート16の前記周縁部に面する凹部73は、シート16の後部周縁部の円弧状の形状に沿う円弧状に形成されている。ここで燃料タンクカバー70において凹部73の両側方には、上面視で車幅方向内側に凹む左右一対のくびれ部76,76が形成されている(図3等参照)。
【0041】
また、図3、図4に示すように、燃料タンクカバー70において前半部74には、シート16の下面に当接して荷重を支えるシート荷重支持部100,100が一対形成されている。シート荷重支持部100は、上方に突出する有頂円筒状に形成され、給油キャップ25Aを挿通させる挿通孔70Aを挟んで左右に振り分けて配置されることで、シート16から受ける荷重を左右に分散してバランス良く支える。なお、右側に位置するシート荷重支持部100のほうが、左側に位置するシート荷重支持部100よりもやや前方に位置している。また、シート荷重支持部100,100には、燃料タンク25の一部が下方から収容されている。図5に示すように、燃料タンク25には、シート荷重支持部100,100に収容される突部101,101が形成されている。
【0042】
以上に記載したように上記自動二輪車1では、乗員が着座するシート16の下方に、前方から収納ボックス34、燃料タンク25が設けられ、シート16の下方であって、収納ボックス34及び燃料タンク25の少なくとも側方がカバー部材であるリヤサイドカバー24,24で覆われ、燃料タンク25の後方にテールライト80が設けられている。そして、この自動二輪車1は、燃料タンク25の上方に、燃料タンク25を上方から覆う燃料タンクカバー70が設けられ、燃料タンクカバー70の後端がテールライト80の上方に位置し、燃料タンクカバー70によってテールライト80の上方が覆われる構造を有している。
【0043】
このような構造では、燃料タンクカバー70によって、燃料タンク25及びテールライト80の上方を覆うことによって、単一のカバー部材で、二つの部材を覆うことができるため、燃料タンク25及びその後方のテールライト80を覆う構造についての部品コストを抑えることができ、生産性の向上が図れる。
【0044】
また、この自動二輪車1では、シート16の後部の周縁部が、円弧状に形成され、燃料タンクカバー70におけるシート16の前記後部の周縁部に面する部位に、該周縁部の円弧状の形状に沿う凹部73が形成され、この凹部73に前記周縁部が収容されるようになっている。この場合、シート16の後部の周縁部の円弧状の形状に沿う凹部73が設けられることから、この凹部73によって、燃料タンクカバー70上の雨水等を車幅方向外側に導きやすい構造にでき、排水性の良好化が図れる。また、凹部73によってシート16の後部を支持でき、また、凹部73にシート16を収容してシート16の高さを低くすることができ、足付き性の向上も図れる。
【0045】
また、この自動二輪車1は、燃料タンクカバー70が、凹部73を挟んで、前方に位置する前半部74と、後方に位置する後半部75と、で構成され、前半部74が、燃料タンク25の上方に位置し、後半部75が、テールライト80の上方に位置する構造を有するが、この構造では、シート16の後部の周縁部を収容する凹部73により燃料タンク25とテールライト80との間の空間が隠され、外観性の向上を図れる。
【0046】
また、この自動二輪車1は、燃料タンクカバー70が上面視で、後方に向けて幅狭になる形状で形成され、凹部73の両側方に、車幅方向内側に凹むくびれ部76,76が形成されるが、この構造では、燃料タンクカバー70を極力小さくして、原材料を少なくすることができる。さらに、この自動二輪車1は、燃料タンクカバー70が車幅方向に突出して設けられた取付片71,71を有し、燃料タンクカバー70が取付片71,71に設けられた取付孔72,72によって、リヤフレーム15,15から上方に突出して設けられた燃料タンクカバー用ステー60,60に取付けられるが、この構造では、リヤフレーム15,15と燃料タンクカバー70との位置合わせが不要となり、組付性が向上する。また、燃料タンクカバー70,70の取付部構造が簡易的な形状であるため、生産性を向上できる。
【0047】
ところで、上記自動二輪車1の車体フレーム11は、燃料タンクの位置及び車両全体の外観が異なる自動二輪車に共用可能に構成されており、図8には車体フレーム11を搭載した自動二輪車1と異なる自動二輪車100が示されている。なお、図8において自動二輪車1と同一の構成要素については同一の符号を示している。
【0048】
この自動二輪車100では、メインフレーム13の後方であって、サイドフレーム14の上方に、側面視で三角形形状の燃料タンク101を設けている。シート下の収納ボックス102はリヤフレーム15,15間に配置され、リヤフレーム15,15に沿って前後方向に延在し、リヤフレーム15,15によって支持されている。
【0049】
収納ボックス102は、燃料タンクが後方に配されない分、自動二輪車1の収納ボックス34に対して前後に長く、この後方に延ばした部位で深さを確保し、ヘルメットを収容可能な空間を確保している。そして、この自動二輪車100は、収納ボックス102の上記後方に延ばした部位で収納空間の深さを確保し、燃料タンク101が車両下方に配さることで、比較的車高が抑えられたものとなっている。ここで、この自動二輪車100では、上記実施形態の自動二輪車1において燃料タンクカバー70を固定するために設けた燃料タンクカバー用ステー60の代わりに、これよりも高さの高い収納ボックス支持ステー103が設けられ、この収納ボックス支持ステー103が収納ボックス102の後部を支持している。この収納ボックス支持ステー103以外の基本的なフレーム構造は、自動二輪車1のときのものと同様である。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 自動二輪車
15 リヤフレーム(車体フレーム)
16 乗用車用シート(シート)
24 リヤサイドカバー(カバー部材)
25 燃料タンク
34 収納ボックス
60 ステー
70 燃料タンクカバー
71 取付片
72 取付孔
73 凹部
74 前半部
75 後半部
76 くびれ部
80 テールライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシート(16)の下方に、前方から収納ボックス(34)、燃料タンク(25)が設けられ、前記シート(16)の下方であって、前記収納ボックス(34)及び前記燃料タンク(25)の少なくとも側方がカバー部材(24)で覆われ、前記燃料タンク(25)の後方にテールライト(80)が設けられた自動二輪車の後部構造において、
前記燃料タンク(25)の上方に、該燃料タンク(25)を上方から覆う燃料タンクカバー(70)が設けられ、
該燃料タンクカバー(70)の後端が前記テールライト(80)の上方に位置し、該燃料タンクカバー(70)によって前記テールライト(80)の上方が覆われる、ことを特徴とする自動二輪車の後部構造。
【請求項2】
前記シート(16)の後部の周縁部が、円弧状に形成され、
前記燃料タンクカバー(70)における前記シート(16)の後部の周縁部に面する部位に、該周縁部の円弧状の形状に沿う凹部(73)が形成され、
該凹部(73)に前記周縁部が収容される、ことを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の後部構造。
【請求項3】
前記燃料タンクカバー(70)は、前記凹部(73)を挟んで、前方に位置する前半部(74)と、後方に位置する後半部(75)と、で構成され、
前記前半部(74)が、前記燃料タンク(25)の上方に位置し、前記後半部(75)が、前記テールライト(80)の上方に位置する、ことを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車の後部構造。
【請求項4】
前記燃料タンクカバー(70)は上面視で、後方に向けて幅狭になる形状で形成され、
前記凹部(73)の両側方に、車幅方向内側に凹むくびれ部(76)が形成される、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の自動二輪車の後部構造。
【請求項5】
前記燃料タンクカバー(70)は、車幅方向に突出して設けられた取付片(71)を有し、
前記燃料タンクカバー(70)は、前記取付片(71)に設けられた取付孔(72)によって、車体フレーム(15)から上方に突出して設けられたステー(60)に取付けられる、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動二輪車の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86538(P2013−86538A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225907(P2011−225907)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)