説明

自動二輪車の盗難防止装置

【課題】車体のXY面、YZ面及びZX面のいずれの面に取付けても、左右方向の加速度を検出可能な自動二輪車の盗難防止装置を提供する。
【解決手段】
車体の左右方向をX軸とし、前後方向をY軸とし、上下方向をZ軸とし、XY面、YZ面、ZX面に対して取り付けられる取付け面を有する筐体と、該筐体内に前記取付け面と平行に収納した基板16と、該基板16に実装した直交2軸の加速度センサ13とからなり、前記直交2軸の加速度センサ13の出力を検出して警報を発する自動二輪車の盗難防止装置において、前記直交2軸の加速度センサ13の検出軸のうち1軸が前記基板16に対し垂直であり、前記取付け面が前記XY面又はZX面に対して取り付けられている場合に、他の1軸は前記X軸と平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の盗難防止装置として、重力方向に対する傾斜や衝撃等による振動を検出する加速度センサが用いられている。
【0003】
図8は加速度センサの基本構成図である。
【0004】
(A)に示すように、ビーム1に固定されたセンター極板2が、2枚の固定極板3間に挟まれてコンデンサ4を構成する。ビーム1の両端部及び各固定極板3はアンカー5により筐体(不図示)に固定される。
【0005】
センサが傾斜して重力成分が変化した場合や衝撃が加わった場合に、(B)に示すように、ビーム1が移動してセンター極板2の位置が変わると、その両側の2枚の固定極板3との間の2つのコンデンサの値が変わり、その差に応じた加速度信号が出力される。
【0006】
このような構成により、1軸方向(ビーム1の軸方向)の加速度が検出される。このビーム1に対し直交する別のビームあるいは移動板にセンター極板を設けて同様の加速度センサを組合せることにより、直交2軸の加速度センサが構成される。
【0007】
このような2軸加速度センサは、基板上に実装され、その基板が箱体状のケース内に装着されて盗難防止装置が形成される。ケースはその一面が取付け面となり、基板はこの取付け面に平行な状態でケース内に収納される。
【0008】
このような盗難防止装置は、例えば図9に示すような、自動二輪車の車体フレームに取付けられる。車体フレームに取付けられた盗難防止装置は、車幅方向(左右方向)、前後方向(進行方向)及び上下方向をそれぞれ、図示したように、X,Y,Z方向としてセンサの出力から盗難状態を判別し、盗難状態を検出すると警報を発する。この場合、センサは、メインスタンド6を上げて車体を下ろして移動させるときの車体の振動や、ハンドル7を持って車体を移動させるときの車体の左右の傾きを検出することにより、盗難状態を判別する。したがって、加速度センサの2軸検出方向のうち1軸は必ず左右方向(X方向)を検出できるように盗難防止装置の筐体を取付けなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特に自動二輪車はスペース的に余裕がなく、センサの取付け位置が制約される。したがって、車種によっては、車体のXY面(水平面)、YZ面(前後方向を含む垂直面)あるいはZX面(左右方向を含む垂直面)のいずれかには取付けできない場合が生じる。このような場合には、車体左右方向の傾きを検出できるようにするために、加速度センサを別体として取付け、配線を引き回さなければならない場合が生じてレイアウトが複雑になる場合がある。
【0010】
本発明は上記従来技術を考慮したものであって、車体のXY面、YZ面及びZX面のいずれの面に取付けても、左右方向の加速度を検出可能な自動二輪車の盗難防止装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明では、車体の左右方向をX軸とし、前後方向をY軸とし、上下方向をZ軸とし、XY面、YZ面、ZX面に対して取り付けられる取付け面を有する筐体と、該筐体内に前記取付け面と平行に収納した基板と、該基板に実装した直交2軸の加速度センサとからなり、前記直交2軸の加速度センサの出力を検出して警報を発する自動二輪車の盗難防止装置において、前記直交2軸の加速度センサの検出軸のうち1軸が前記基板に対し垂直であり、前記取付け面が前記XY面又はZX面に対して取り付けられている場合に、他の1軸は前記X軸と平行であることを特徴とする自動二輪車の盗難防止装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、直交する2つの検出方向を有する2軸加速度センサのうち1軸が基板に対し垂直になるように加速度センサを基板に実装することにより、車体のXY面、YZ面、ZX面のいずれに取付けた場合であっても、X方向(左右方向)の加速度を検出することができ、車体の部品配置構造に合わせてスペース的に効率よく筐体を取付けてシンプルなレイアウトを得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明では、直交する2つの検出方向を有する2軸加速度センサのうち1軸が基板に対し垂直になるように加速度センサを基板に実装することにより、車体のXY面、YZ面、ZX面のいずれに取付けた場合であっても、X方向(左右方向)の加速度を検出することができ、車体の部品配置構造に合わせてスペース的に効率よく筐体を取付けてシンプルなレイアウトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図3は、本発明の比較例に係る盗難防止装置の説明図であり、図4〜図6は、本発明の実施形態に係る盗難防止装置の説明図である。
【0015】
図1〜図3の盗難防止装置8は、筐体9内に2軸加速度センサ10を該筐体9の取付け面(図では下面)に平行に配置して収納したものである。実際には、加速度センサ10が基板(不図示)に基板面と平行に実装され、その基板が筐体9内に取付け面と平行に収納される。なお、図の加速度センサ10の矢印は直交2軸の検出方向を示す。また、加速度センサ10は筐体から出した状態で示してある。
【0016】
図1は、車体のXY面に取付けた例を示す。この場合には、(A)(B)いずれの方向に取付けても、X方向(左右方向)の傾きの検出が可能になる。
【0017】
図2は、車体のYZ面に取付けた例を示す。この場合には、(A)(B)ともにX方向(左右方向)の検出ができない。
【0018】
図3は、車体のZX面に取付けた例を示す。この場合には、(A)(B)いずれの方向に取付けても、X方向(左右方向)の傾きの検出が可能になる。
【0019】
したがって、加速度センサ10をその検出2軸を含む検出面が取付け面と平行になるように筐体9内に実装した盗難防止装置8では、YZ面に取付けると取付け方向をどのように変えても、X方向(左右方向)の傾きが検出できなくなるため、YZ面への取付けができず、レイアウト上の制約となる。
【0020】
図4〜図6の盗難防止装置11は、筐体12内に2軸加速度センサ13を該筐体12の取付け面(図では下面)に垂直に配置して収納したものである。実際には、加速度センサ13が基板(不図示)に基板面と垂直に実装され、その基板が筐体12内に取付け面と平行に収納される。なお、上記比較例と同様、図の加速度センサ13の矢印は直交2軸の検出方向を示す。また、加速度センサ13は筐体から出した状態で示してある。
【0021】
図4は、車体のXY面に取付けた例を示す。この場合には、(B)の取付け方向ではX方向(左右方向)の傾きの検出ができないが、(A)の方向に取付けることにより、X方向(左右方向)の傾きの検出が可能になる。
【0022】
図5は、車体のYZ面に取付けた例を示す。この場合には、(A)(B)ともにX方向(左右方向)の検出が可能である。
【0023】
図6は、車体のZX面に取付けた例を示す。この場合には、(B)の取付け方向ではX方向(左右方向)の傾きの検出ができないが、(A)の方向に取付けることにより、X方向(左右方向)の傾きの検出が可能になる。
【0024】
したがって、加速度センサ13を、その検出2軸を含む検出面が取付け面に対し垂直になるように筐体12内に実装した盗難防止装置11では、XY面、YZ面、ZX面のいずれに取付けた場合であっても、取付け方向を変えることによりX方向(左右方向)の傾きを検出することができる。
【0025】
図7は、加速度センサの取付け例を示す。
2軸加速度センサを構成するチップ14(半導体チップまたは前述の図8の素子)がセンサ基板15に装着されて加速度センサ13を構成する。センサ基板15の一辺に設けた突起片17をメイン基板16に設けたスリット18に差込んでセンサ基板15をメイン基板16に対し垂直に装着する。この状態で、センサ基板15側のパターン20とメイン基板16側のパターン19とを半田21で接合する。チップ14の2軸検出方向を含む検出面はメイン基板16に対し垂直であり、直交する2軸のうち1軸はメイン基板16に対し垂直であり、他の1軸はメイン基板16と平行である。このメイン基板16は、筐体12(図4〜図6)内に取付け面と平行に収納される。これにより、筐体の取付け面に対し垂直な検出面の加速度センサを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】比較例のXY面への取付け説明図。
【図2】比較例のYZ面への取付け説明図。
【図3】比較例のZX面への取付け説明図。
【図4】本発明の実施例のXY面への取付け説明図。
【図5】本発明の実施例のYZ面への取付け説明図。
【図6】本発明の実施例のZX面への取付け説明図。
【図7】本発明の加速度センサの基板への取付け例の説明図。
【図8】加速度センサの構成説明図。
【図9】盗難防止装置が取付けられる自動二輪車の説明図。
【符号の説明】
【0027】
1:ビーム、2:センター極板、3:固定極板、4:コンデンサ、5:アンカー、6:メインスタンド、7:ハンドル、8:盗難防止装置、9:筐体、10:2軸加速度センサ、11:盗難防止装置、12:筐体、13:2軸加速度センサ、14:チップ、15:センサ基板、16:メイン基板、17:突起片、18:スリット、19:パターン、20:パターン、21:半田。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右方向をX軸とし、前後方向をY軸とし、上下方向をZ軸とし、XY面、YZ面、ZX面に対して取り付けられる取付け面を有する筐体と、
該筐体内に前記取付け面と平行に収納した基板と、
該基板に実装した直交2軸の加速度センサとからなり、前記直交2軸の加速度センサの出力を検出して警報を発する自動二輪車の盗難防止装置において、
前記直交2軸の加速度センサの検出軸のうち1軸が前記基板に対し垂直であり、前記取付け面が前記XY面又はZX面に対して取り付けられている場合に、他の1軸は前記X軸と平行であることを特徴とする自動二輪車の盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−162586(P2008−162586A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29897(P2008−29897)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【分割の表示】特願2002−307485(P2002−307485)の分割
【原出願日】平成14年10月22日(2002.10.22)
【出願人】(000191858)ヤマハモーターエレクトロニクス株式会社 (98)