説明

自動作動を備えた歯ブラシ

電動歯ブラシは、柄12と、導電性の電極センサ素子を内部に持つブラシヘッド18とを含む。該歯ブラシは、該ブラシヘッドのための駆動アセンブリ14と、該ブラシヘッド上又は該ブラシヘッド中のセンサ素子と該歯ブラシの該柄における電気回路接地との間の静電容量を測定するためのセンサシステムと、を含む。マイクロプロセッサ/コントローラ26は、該測定された静電容量が、該歯ブラシがユーザの口腔の近傍又は口腔内にあることを示す、閾値よりも大きいか否かを決定するようにプログラムされる。該マイクロプロセッサは、該静電容量の値が該閾値よりも大きい場合に、該歯ブラシの動作のための駆動アセンブリを作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には電動歯ブラシに関し、更に詳細には電動歯ブラシの作動に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電動歯ブラシは、該電動歯ブラシをスイッチオン及びオフするための機械的な即ち触知型のスイッチを含む。特に障碍者のような何らかのユーザに対しては、機械的なスイッチは操作が難しい。従って、機械的なスイッチを操作する必要なく電動歯ブラシを作動させることが可能であることが有利となり得る。スイッチを持たない電動歯ブラシを作動させるための1つの既知のシステムは、歯ブラシの外面上の導電性の電極を使用し、該電極面とユーザの唾液又は歯肉組織との間の電気回路を完成させることを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、斯かるシステムは、歯ブラシにおける導電性部材による電気的な接触により、口腔内において不快な味覚又は感覚を引き起こし得る。該システムはまた高価となり、動作が複雑で、何回もの使用においては信頼性が低いものとなり得る。
【0004】
歯ブラシの効果的で信頼性の高い自動作動は、正規のブラシヘッドのみが該歯ブラシにおいて使用されることを確実にするために、幾つかのシステムにおいて有用であるという利点をも持つ。非正規のブラシヘッドの使用は、重大な問題を残す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、自動的に作動される電動歯ブラシは、柄と、毛のセットを含むブラシヘッドと、前記ブラシヘッドのための駆動アセンブリと、前記ブラシヘッド中又は前記ブラシヘッド上の導電性の電極と、前記導電性の電極と前記柄における歯ブラシ接地との間の静電容量を測定するためのシステムと、前記測定された静電容量が、前記歯ブラシがユーザの口腔の近傍又は口腔内にあることを示す、予め設定された閾値を超えるか否かを決定し、その後に前記歯ブラシの動作のための駆動アセンブリを作動させるようにプログラムされたコントローラと、を有する。
【0006】
また、電動歯ブラシにおける使用のためのブラシヘッドアセンブリは、前記歯ブラシは前記ブラシヘッドアセンブリのための駆動アセンブリと、前記ブラシヘッドアセンブリにおける導電性の電極と前記歯ブラシの柄部分における電気回路接地との間の静電容量を測定するためのシステムと、を含み、前記ブラシヘッドアセンブリは、前記電動歯ブラシの残りの部分に挿入可能であり、前記残りの部分から着脱可能であるブラシヘッドを有し、前記ブラシヘッド自体が、前記ブラシヘッドが前記歯ブラシのための正規なブラシヘッドであることを示す前記歯ブラシの作動のための予め選択された範囲内であるか又は予め選択された閾値よりも大きい、前記導電性の電極と前記電気回路接地との間の総静電容量の一部である静電容量の値を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ここで説明される歯ブラシの分解図である。
【図2】静電容量の測定を示す図である。
【図3】歯ブラシが口腔外にあるときの、歯ブラシ上のセンサ素子と歯ブラシ接地との間の電気的結合を示す図である。
【図4】歯ブラシが口腔内にあるときの、電気的結合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般的に、ここで開示される歯ブラシは、歯ブラシの自動作動、即ち自動的なスイッチオン及びスイッチオフのためのシステムを含む。特に、歯ブラシが口腔内又は口腔の近くにあるときに、歯ブラシを作動させるため、毛の近くにおける歯ブラシのブラシヘッドにおけるセンサ素子と、歯ブラシの柄における電気的な(回路)接地点との間の、回路静電容量の変化が使用される。電動歯ブラシがユーザによって口腔内又は口腔の近くに位置させられると、口腔内における大きな導電面に対する該センサ素子の近接により、歯ブラシのブラシヘッド上又はブラシヘッド内のセンサ素子と、歯ブラシにおける接地点との間の静電容量が大きく変化する。歯ブラシが口腔外にあうときの、センサ素子と歯ブラシ回路との間の公称静電容量からの静電容量の変化は、容易に測定されることができ、該歯ブラシを作動させるために使用されることができる。静電容量の変化は、ブラシヘッドとユーザの歯肉、唾液又は歯との間に実際の物理的な接触がなくても、ブラシヘッドの近傍にある静電場に対して及ぼす口腔内の導電性の組織の影響の結果として生じる。
【0009】
ここで図1及び2を参照すると、図1は歯ブラシを示し、図2は静電容量測定機能を更に説明するものであり、歯ブラシ10は柄部分12と電池16により動作する直流(DC)モータ14とを含み、該モータはブラシヘッド18のための駆動動作を提供し、該ブラシヘッド18はモータの駆動軸22上に着脱可能に装着されている。しかしながら、本自動作動システムを組み込んだ電動歯ブラシにおいて種々の駆動動作構成が使用され得ることは、理解されるべきである。DCモータの説明は、幾つかのとり得るモータシステムのうちの1つに過ぎない。
【0010】
ブラシヘッド18は、該ブラシヘッドの毛部分を定義する毛背後部材に装着された毛のセット24を含み、毛24はモータ14により提供される振動動作によって洗浄を実現する。モータ14の動作は、電動歯ブラシの共通部分であるマイクロプロセッサ/コントローラ26により制御される。歯ブラシ10は、典型的には毛24の近くに配置されたブラシヘッド18上又はブラシヘッド18内の導電性の電極/センサ素子25と、図1中で柄12において27により示される電気回路接地面との間の静電容量を測定する、静電容量センサシステム28を含む。斯かる静電容量センサシステム28は一般的なものであり、種々の製造者から市販されている。
【0011】
図2のブラシヘッドにおいて、ピン25の形をとる導電性の電極/センサ素子25が示されている。金属ピン25は、毛のセット24の近くに配置される。金属被覆又は包装のような、他の導電性の電極/センサ素子構成が使用されても良い。ブラシヘッド上の電極素子の位置に関して、本システムに最も重要なことは、導電性の電極と柄における歯ブラシ電気回路接地面との間の静電場力線のパターンが、電極が口腔の近く又は口腔内に移動させられたときに大きく変化することである。図3を参照すると、歯ブラシヘッドがユーザの口腔から遠いときには、センサシステム28により測定される静電容量は、導電性の電極25と柄12における電気回路接地面27との間の近似電場の電場力線34により表されるフリンジ電界に起因する。導電性の電極と接地面とは比較的大きな距離だけ離れているため、電気的結合は弱く、その結果の静電容量は1ピコファラドよりも小さい。
【0012】
図4を参照すると、ブラシヘッドが31で表される口腔の近く又は口腔内に移動させられると、電極25と電気回路接地27との間の静電容量は、口腔内の組織により強く影響を受ける。ここで、口腔内の組織の静電容量は、図2において32で示されており、電気回路面と図4におけるユーザの把持する手35との間の静電容量は、図2において36で示されている。図4は、単一の大きな導電性部材として電気的にモデル化された人体を示している。柄12のまわりのユーザの指35の把持及び口腔に対する、歯ブラシのブラシヘッドの近接は、導電性の電極から柄における電気回路接地までの電場力線の、かなり強い結合をもたらす。ユーザの口腔及びユーザの手への導電経路は、導電場に対する短絡をもたらす。典型的には、歯ブラシが口腔内にある場合の図4の結合は、歯ブラシが口腔外にある場合の図3に示された結合に比べて、1000のファクタだけ総静電容量を増大させる。
【0013】
センサ回路28からの測定された静電容量値はマイクロプロセッサ26に供給され、該マイクロプロセッサは、当該測定された静電容量値が設定された閾値よりも大きいか否かを決定するようにプログラムされている。該閾値は、歯ブラシが口腔内に保持されたときの静電容量の値と略なるように予め設定されている。決定された静電容量値が該閾値よりも小さい場合には、歯ブラシはオフ状態のままとされる。しかしながら、決定された静電容量値が該閾値よりも大きい場合には、該マイクロプロセッサは柄12におけるスイッチ40(図2)に電子信号を送信し、駆動システム(モータ)14の動作を始動させる。歯ブラシは次いで、マイクロプロセッサにより決定された、選択された時間の間だけ動作するか、又は口腔内から歯ブラシが出された場合にスイッチオフする。一実施例においては、歯ブラシは該歯ブラシの共振周波数に近い周波数で又は該共振周波数で動作するが、斯かる動作はここで説明された静電容量ベースの作動システムの使用に対して必須のものではない。
【0014】
該歯ブラシは、触知型スイッチ32(図1)をも含んでも良く、該歯ブラシが、スイッチ32が操作され且つ決定された静電容量が閾値より大きい場合にのみ動作するようにしても良い。
【0015】
以上に説明された静電容量作動システムは、ユーザの口腔内又は口腔の近くに位置させられたときに歯ブラシの自動的な作動をもたらし、それにより機械的なスイッチの必要性を潜在的に除去するという利点を持つことに加えて、正規のブラシヘッドのみが該歯ブラシの柄12と共に使用され得ることを確実にするために使用されることもできる。ブラシヘッドが該歯ブラシの柄に挿入されると、その結果センサ28により測定される電気回路接地に対する静電容量は、予め決定された閾値を超えないか、又は予め選択された一意な静電容量の範囲内であり、このときには歯ブラシは作動させられない。この結果は、ブラシヘッド自体の静電容量が、使用可能であり得た他のブラシヘッドとは十分に異なり、正規のブラシヘッドのために排他的な静電容量の範囲をもたらし、正規のブラシヘッドのみが選択された静電容量閾値を超えるか又は正規のブラシヘッドアセンブリの特徴としてマイクロプロセッサにより認識される静電容量の特定の範囲内である静電容量値をもたらすことを必要とする。当該排他性を確実にするため、製造の間にブラシヘッドに対して静電容量増大素子が追加されても良く、即ちこの場合、歯ブラシシステムにより許容される静電容量の範囲は、新たなブラシヘッドの静電容量を含むが、以前に市販されたブラシヘッドによりもたらされる静電容量値を排除する。
【0016】
当該静電容量増大素子は、種々の形態をとり得る。しかしながら、図示された実施例においては、近位端40の近くにブラシヘッド中に配置された金属環38(図1)であり、該金属環はブラシヘッドが駆動軸に挿入されたときにモータ駆動軸を取り囲む。ここでもまた、斯かる構成においては、歯ブラシ上に配置されたときに動作し得た、以前に市販されたブラシヘッドは動作しない。なぜなら歯ブラシの作動のために必要とされる総静電容量をもたらすのに適切な静電容量値を持たないからである。例えば金属ピン又は管を含む他の増大部材も使用され得る。
【0017】
静電容量素子を備えた当該実施例は、望ましい場合には、機械的なスイッチと組み合わせられて使用され歯ブラシの作動をもたらしても良い。
【0018】
それ故、静電容量ベースのセンサにより自動的に作動させられる歯ブラシであって、ユーザの口腔内に該歯ブラシが位置させられたときに、歯ブラシヘッド上の導電性の電極と電気回路接地面又は接地点との間の静電容量が決定される歯ブラシが開示された。斯かるシステムは、正規の替えブラシヘッドのみが該歯ブラシと共に利用されることができることを確実にするためにも使用されることができる。
【0019】
本発明の好適な実施例が説明の目的のために開示されたが、請求項により定義される本発明の精神から逸脱することなく、種々の変更、変形及び代替が実施例に組み込まれ得ることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動歯ブラシであって、
柄と、
毛のセットを含むブラシヘッドと、
前記ブラシヘッドのための駆動アセンブリと、
前記ブラシヘッド中又は前記ブラシヘッド上の導電性の電極と、
前記導電性の電極と前記柄における歯ブラシ接地との間の静電容量を測定するためのシステムと、
前記測定された静電容量が、前記歯ブラシがユーザの口腔の近傍又は口腔内にあることを示す、予め設定された閾値を超えるか否かを決定し、その後に前記歯ブラシの動作のための駆動アセンブリを作動させるようにプログラムされたコントローラと、
を有する電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記導電性の電極は、前記毛のセットに隣接して前記ブラシヘッドに埋め込まれたピンである、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
機械的なオン/オフスイッチがないことを特徴とする、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
ユーザにより操作可能なオン/オフスイッチを含み、前記駆動アセンブリは、前記オン/オフスイッチがオンであり、且つ前記測定された静電容量が前記予め設定された閾値を超える場合に作動させられる、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記歯ブラシは、前記歯ブラシの共振周波数である周波数又は前記共振周波数の近くである周波数で動作する、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記ブラシヘッドは前記柄から着脱可能であり、前記ブラシヘッドは、正規のブラシヘッドの決定を可能とする付加的な静電容量素子を含む、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記付加的な静電容量素子は、前記ブラシヘッドの近位端の近傍に配置された金属環である、請求項6に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記静電容量素子は、金属ピン、金属管又は金属被覆のうちの選択された1つである、請求項6に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
電動歯ブラシにおける使用のためのブラシヘッドアセンブリであって、前記歯ブラシは前記ブラシヘッドアセンブリのための駆動アセンブリと、前記ブラシヘッドアセンブリにおける導電性の電極と前記歯ブラシの柄部分における電気回路接地との間の静電容量を測定するためのシステムと、を含み、前記ブラシヘッドアセンブリは、
前記電動歯ブラシの残りの部分に挿入可能であり、前記残りの部分から着脱可能であるブラシヘッドを有し、前記ブラシヘッド自体が、前記ブラシヘッドが前記歯ブラシのための正規なブラシヘッドであることを示す前記歯ブラシの作動のための予め選択された範囲内であるか又は予め選択された閾値よりも大きい、前記導電性の電極と前記電気回路接地との間の総静電容量の一部である静電容量の値を持つブラシヘッドアセンブリ。
【請求項10】
前記静電容量が前記閾値のレベルより大きいか又は前記予め選択された範囲内であることに加え、機械的なユーザにより操作されるスイッチが操作されない限り、前記歯ブラシは作動させられない、請求項9に記載のブラシヘッドアセンブリ。
【請求項11】
前記静電容量の前記選択された値は、前記ブラシヘッドにおいて補助的な静電容量部材を含む、請求項9に記載のブラシヘッドアセンブリ。
【請求項12】
前記補助的な静電容量部材は金属環である、請求項11に記載のブラシヘッドアセンブリ。
【請求項13】
前記補助的な静電容量部材は、金属ピン、金属管又は金属被覆である、請求項11に記載のブラシヘッドアセンブリ。
【請求項14】
前記金属環は、前記ブラシヘッドアセンブリの近位端の近傍に配置された、請求項12に記載のブラシヘッドアセンブリ。
【請求項15】
柄と、毛のセットを含むブラシヘッドと、ブラシヘッドアセンブリのための駆動アセンブリと、を含む電動歯ブラシの改良であって、
前記ブラシヘッド中又は前記ブラシヘッド上の導電性の電極と、
前記導電性の電極と前記柄における歯ブラシ接地との間の静電容量を測定するためのシステムと、
前記測定された静電容量が、前記歯ブラシがユーザの口腔の近傍又は口腔内にあることを示す、予め設定された閾値を超えるか否かを決定し、その後に前記歯ブラシの動作のための駆動アセンブリを作動させるようにプログラムされたコントローラと、
を有する改良。
【請求項16】
前記導電性の電極は、前記毛のセットに隣接して前記ブラシヘッドに埋め込まれたピンである、請求項15に記載の改良。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−515544(P2013−515544A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545488(P2012−545488)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055349
【国際公開番号】WO2011/077290
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】