説明

自動作図方法及び自動作図プログラム

【課題】マグネティック・スプリング手法による作図の計算量を低減すること。
【解決手段】作図対象の識別子に対応したサーバ名と拠点名と所属部署とIPアドレス等の構成要素を含む構成情報を複数格納する作図対象情報格納部105と、作図対象の構成情報同士が隣接していることを示す構成要素間の関連情報を格納する関連情報格納部106と、指定された構成要素に基づいて関連情報格納機能から構成要素間の関連情報を抽出し、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報を隣接して表示するグルーピング処理を実行するグルーピング処理部104とを備え、マグネティック・スプリング手法による自動作図を行うコンピュータシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステムにおけるサーバ等の構成情報間の関連を視覚的に表す作図を自動的に行う自動作図方法及び自動作図プログラムに係り、特に、グルーピングを用いたマグネティック・スプリング手法による計算量を低減することができる自動作図方法及び自動作図プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータシステムを仮想化した仮想マシンの構成情報間の関連を視覚的に表示するため、自動レイアウト手法による構成情報間の関連の作図(以下、「構成図」と呼ぶ。)を自動的に行う自動作図プログラムが開発されており、この自動作図に関する技術が記載された文献としては下記の特許文献1が挙げられる。この特許文献1には、マグネティック・スプリング手法を用いてエッジの向きの制御のためにエッジに働く力を定義し、該力を組み入れてグラフに対する物理モデルを作成し、該物理モデルの安定状態を求め、該安定状態に対応してグラフを描画することによって、複数種類のエッジをそれぞれ別の規則に従ってレイアウト可能とする技術が記載されている。
【0003】
なお、前記マグネティック・スプリング手法とは、ノードを磁石、エッジをスプリングに置き換え、隣接するノードにかかるスプリングからの引力と、隣接しないノード間の反発力と、ノードが磁場から受ける力とを計算することでノードの安定位置を決定しレイアウトを行う方法である。ここで、ノードの安定位置とは、スプリングからの引力と隣接しないノード間の反発力とノードが磁場から受ける力とがつりあう位置のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−30799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の従来技術による自動作図技術は、マグネティック・スプリング手法を用いているためノードの増加とともに計算量が膨大になっていくという課題があり、特に、隣接しない(エッジで接続されていない)ノード間の反発力の計算にノード数の2乗に比例した計算量がかかるという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、グルーピングを用いたマグネティック・スプリング手法による計算量を低減することができる自動作図方法及び自動作図プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、コンピュータシステムを構成するサーバ等の構成情報間の関連をコンピュータがマグネティック・スプリング手法によって視覚的に表示するための自動作図方法であって、前記コンピュータに、作図対象の識別子に対応したサーバ名と拠点名と所属部署とIPアドレス等の構成要素を含む構成情報を複数格納する作図対象情報格納機能と、前記作図対象の構成情報同士が隣接していることを示す構成要素間の関連情報を格納する関連情報格納機能と、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報をグルーピングさせるグルーピング処理機能とを設け、該グルーピング処理機能に、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納機能から構成要素間の関連情報を抽出し、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報を隣接して表示するグルーピング処理を実行させることを第1の特徴とする。
【0008】
また、本発明は、第1の特徴の自動作図方法において、前記グルーピング処理機能が、前記コンピュータに、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納機能から複数の構成情報の構成要素を取得する第1工程と、該第1工程によって取得した複数の構成要素から、同一の構成要素の関連情報による同一グルーピング条件を満たす構成情報が存在するか否かを判定する第2工程と、該第2工程によって同一グルーピング条件を満たす複数の構成情報が存在しないと判定したとき、新規なグループを作成する第3工程と、前記第2工程によって同一グルーピング条件を満たす複数の構成情報が存在すると判定したとき及び前記第3工程によって新規グループを作成したとき、条件を満たすグループに作図対象の構成情報の識別子を同一グループとして設定する第4工程とを実行させることを第2の特徴とする。
【0009】
更に、本発明は、コンピュータシステムを構成するサーバ等の構成情報間の関連をコンピュータにマグネティック・スプリング手法によって視覚的に表示させるための自動作図プログラムであって、前記コンピュータに、作図対象のサーバ名と拠点名と所属部署とIPアドレス等の構成要素を含む構成情報を複数格納する作図対象情報格納機能と、前記作図対象の構成情報同士が隣接していることを示す構成要素間の関連情報を格納する関連情報格納機能と、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報をグルーピングさせるグルーピング処理機能とを設け、該グルーピング処理機能が、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納機能から構成要素間の関連情報を抽出し、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報を隣接して表示するグルーピング処理を実行することを第3の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記第3の特徴の自動作図プログラムにおいて、前記グルーピング処理機能が、前記コンピュータに、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納機能から複数の構成情報の構成要素を取得する第1工程と、該第1工程によって取得した複数の構成要素から、同一の構成要素の関連情報による同一グルーピング条件を満たす構成情報が存在するか否かを判定する第2工程と、該第2工程によって同一グルーピング条件を満たす構成情報が存在しないと判定したとき、新規なグループを作成する第3工程と、前記第2工程によって同一グルーピング条件を満たす複数の構成情報が存在すると判定したとき及び前記第3工程によって新規グループを作成したとき、条件を満たすグループに作図対象の構成情報の識別子を同一グループとして設定する第4工程とを実行させることを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による自動作図方法は、作図対象のサーバ名と拠点名と所属部署とIPアドレス等の構成要素を含む構成情報を複数格納する作図対象情報格納部と、前記作図対象の構成情報同士が隣接していることを示す構成要素間の関連情報を格納する関連情報格納部とを設け、グルーピング処理部が、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納部から構成要素間の関連情報を抽出し、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報をグルーピングして表示することによって、マグネティック・スプリング手法による計算量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による自動作図システムを示す図。
【図2】本実施形態による自動作図機能の処理動作を示すフローチャート図。
【図3】本実施形態によるグルーピング処理部の処理動作を示すフローチャート図。
【図4】本実施形態による作図対象情報格納部のテーブル例を示す図。
【図5】本実施形態による作図対象情報格納部のテーブルの使用例を示す図。
【図6】本実施形態による関連情報格納部のテーブル例を示す図。
【図7】本実施形態による関連情報格納部のテーブルの使用例を示す図。
【図8】本実施形態によるグルーピング処理判定条件格納部のテーブル例を示す図。
【図9】本実施形態によるグルーピング処理判定条件格納部のテーブル使用例を示す図。
【図10】本実施形態によるグルーピング処理の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による自動作図方法及び自動作図プログラムを図面を参照して説明する。
【0014】
[構成]
本発明による自動作図方法及び自動作図プログラムを実現するためのコンピュータシステムである自動作図システム102は、図1に示す如く、ユーザ101によって指定された構成要素に基づく構成情報のグルーピングを行うグルーピング処理部104と、ノードを磁石、エッジをスプリングに置き換え、隣接するノードにかかるスプリングからの引力と隣接しないノード間の反発力とノードが磁場から受ける力を算出してノードの安定位置を決定しレイアウトを行うマグネティック・スプリング手法適用部103と、作図対象となる構成情報(サーバ名、拠点名、所属部署、IPアドレス他の構成要素から成る構成情報)を複数格納する作図対象情報格納部105と、該構成情報間の関連情報を格納する関連情報格納部106と、関連する構成情報のグルーピングの判定を行うグルーピング処理条件格納部107とから構成される。
【0015】
前記作図対象情報格納部105は、図4に示す如く、識別子である複数のID(ID1〜)に対応して複数の作図対象情報(構成情報)を格納し、具体的には、作図対象情報がサーバである場合、図5に示す如く、例えばサーバ名「サーバA」に対して拠点名が「拠点A」、所属部署「部署A」、IPアドレス「10.123.123.1」の如く、複数のサーバ名に対して拠点名と所属部署とIPアドレス他の構成要素の情報を格納している。
【0016】
前記関連情報格納部106は、構成情報(構成要素)間の関連情報を格納するものであって、図6に示す如く、作図対象となる構成情報の作図対象IDに関連する他の作図対象IDを対応して格納するものであって、作図対象情報がサーバである場合、具体的には、図7に示す如く、サーバ1に対してサーバ2/4/5が関連し、サーバ2に対してサーバ3が対応し、サーバ4に対してサーバ5が関連し、サーバ5に対してサーバ6が関連している関連情報を格納している。なお、関連を持つというのは、マグネティック・スプリング手法によるレイアウトを行ったときに作図対象間情報同士が隣接している(エッジで接続されている)ということを示し、例えばサーバ1とサーバ2とサーバ4とサーバ5とが1つの企業内の業務管理システムを構成し、勤怠管理システムサーバと給与管理システムサーバが作図対象間情報同士が隣接(エッジで接続)し、相互に関連しながら全体システムの運用を実現するとき、これらサーバ群が1つのグループとして関連していることを意味する。
【0017】
前記グルーピング処理条件格納部107は、前述した関連情報が図7に示した如くサーバ間の関連情報として格納され、作図対象情報が図5に示したサーバ名に対応した拠点名やIPアドレスが格納されている場合、図8に示す如く、複数の判定条件が格納され、具体的には、図9に示す如く、条件1が「サーバ名」、条件2が「拠点名」、条件3が「所有部署」、条件4が「IPアドレス」、条件5が「サーバ数」の如く格納されている。
【0018】
[動作]
さて、このように構成された自動作図プログラムを実現するためのコンピュータシステムの全体動作は、図2に示す如く、ユーザ101が自動作図機能102に対して構成図の作図要求を行うステップ201と、この要求を受けた自動作図システム102がグルーピング処理条件格納部107からグルーピング処理条件を取得し、ユーザ101に対しグルーピング処理条件の提示を行うステップ202と、ユーザ101が提示されたグルーピング処理条件の中から条件を選択し、自動作図システム102が受け取るステップ203と、作図対象情報格納部105から作図対象情報を取得するステップ204と、関連情報格納部106から関連情報を取得するステップ205と、前記関連情報に基づいて関連付けされた作図対象情報のグルーピングをグルーピング処理部104がステップ206aと206b間で繰り返して行うステップ207と、前記ステップ205で取得した関連情報を基にステップ206aと206bでグルーピングを行った各グループ間の関連付けを行うステップ208と、該ステップ208によって作成されたグループに対しマグネティック・スプリング手法を適用しグループのレイアウトを行うステップ209と、前記ステップ209でレイアウトを行った各グループ内の作図対象情報に対し、マグネティック・スプリング手法をステップ210aと210b間で繰り返して適用するステップ211とを実行するように動作する。
【0019】
前記グルーピング処理部104が行うステップ207のグルーピング処理(処理対象情報に対してグルーピング処理条件に従いグルーピング処理を施す機能)の詳細は、図3に示す如く、図2のステップ203で指定されたグルーピング処理条件に合致する作図対象情報の列の情報を取得するステップ301と、同一グルーピング処理条件を満たすグループがすでに存在するかどうかを判別するステップ302と、該ステップ302による条件を満たすか否かを判定するステップ303と、該ステップ303において存在しないと判定したとき、条件を満たす新しいグループを作成するステップ304と、該ステップ303において存在すると判定したとき及び前記ステップ304に続いて条件を満たすグループに作図対象情報IDを格納するステップ305とを実行する。
【0020】
これら処理によって本実施形態による自動作図は、図10上段に示す如く、グルーピング処理前のID1のサーバがID2/ID4/ID5のサーバに関連し、ID2のサーバがID3のサーバに関連し、ID4のサーバがID1/ID5のサーバに関連し、ID5のサーバがID6のサーバに関連し、「所属部署」をグルーピング条件としてユーザにより指定された場合、図10下段に示す如く、部署Aのグループに属するサーバがID1、部署Bのグループに属するサーバがID2及びID3、部署Cのグループに属するサーバがID4とID5とID6の如く、グルーピングして表示することができる。
【0021】
このように本実施形態による自動作図方法は、作図対象のサーバ名と拠点名と所属部署とIPアドレス等の構成要素を含む構成情報を複数格納する作図対象情報格納部105と、前記作図対象の構成情報同士が隣接していることを示す構成要素間の関連情報を格納する関連情報格納部106とを設け、グルーピング処理部104が、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納部106から構成要素間の関連情報を抽出し、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報をグルーピングして表示することによって、マグネティック・スプリング手法による計算量を低減することができる。
【符号の説明】
【0022】
101 ユーザ、102 自動作図システム
103 マグネティック・スプリング手法適用部、104 グルーピング処理部、
105 作図対象情報格納部、106 関連情報格納部、
107 グルーピング処理条件格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムを構成するサーバ等の構成情報間の関連をコンピュータがマグネティック・スプリング手法によって視覚的に表示するための自動作図方法であって、
前記コンピュータに、作図対象の識別子に対応したサーバ名と拠点名と所属部署とIPアドレス等の構成要素を含む構成情報を複数格納する作図対象情報格納機能と、前記作図対象の構成情報同士が隣接していることを示す構成要素間の関連情報を格納する関連情報格納機能と、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報をグルーピングさせるグルーピング処理機能とを設け、該グルーピング処理機能が、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納機能から構成要素間の関連情報を抽出し、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報を隣接して表示するグルーピング処理を実行させることを特徴とする自動作図方法。
【請求項2】
前記グルーピング処理機能が、前記コンピュータに、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納機能から複数の構成情報の構成要素を取得する第1工程と、該第1工程によって取得した複数の構成要素から、同一の構成要素の関連情報による同一グルーピング条件を満たす構成情報が存在するか否かを判定する第2工程と、該第2工程によって同一グルーピング条件を満たす複数の構成情報が存在しないと判定したとき、新規なグループを作成する第3工程と、前記第2工程によって同一グルーピング条件を満たす複数の構成情報が存在すると判定したとき及び前記第3工程によって新規グループを作成したとき、条件を満たすグループに作図対象の構成情報の識別子を同一グループとして設定する第4工程とを実行させることを特徴とする請求項1記載の自動作図方法。
【請求項3】
コンピュータシステムを構成するサーバ等の構成情報間の関連をコンピュータにマグネティック・スプリング手法によって視覚的に表示させるための自動作図プログラムであって、
前記コンピュータに、作図対象のサーバ名と拠点名と所属部署とIPアドレス等の構成要素を含む構成情報を複数格納する作図対象情報格納機能と、前記作図対象の構成情報同士が隣接していることを示す構成要素間の関連情報を格納する関連情報格納機能と、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報をグルーピングさせるグルーピング処理機能とを設け、該グルーピング処理機能が、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納機能から構成要素間の関連情報を抽出し、構成情報同士が隣接している作図対象の構成情報を隣接して表示するグルーピング処理を実行することを特徴とする自動作図プログラム。
【請求項4】
前記グルーピング処理機能が、前記コンピュータに、指定された構成要素に基づいて前記関連情報格納機能から複数の構成情報の構成要素を取得する第1工程と、該第1工程によって取得した複数の構成要素から、同一の構成要素の関連情報による同一グルーピング条件を満たす構成情報が存在するか否かを判定する第2工程と、該第2工程によって同一グルーピング条件を満たす複数の構成情報が存在しないと判定したとき、新規なグループを作成する第3工程と、前記第2工程によって同一グルーピング条件を満たす複数の構成情報が存在すると判定したとき及び前記第3工程によって新規グループを作成したとき、条件を満たすグループに作図対象の構成情報の識別子を同一グループとして設定する第4工程とを実行させることを特徴とする請求項3記載の自動作図プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−25740(P2013−25740A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162954(P2011−162954)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000233491)株式会社日立システムズ (394)
【Fターム(参考)】