説明

自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフック

【目的】ミシン針が折れにくく、かつ縫い代部が破損し難く、自動供給及びミシン掛けに適している。
【構成】フック部2の高さを調整するラチェット式の調整機構6を備え、この調整機構6が、カーテン1の折り返し部4に縫い付ける縫い代部5を有する移動案内部7と、この移動案内部7に対して移動可能でかつフック部2を有するフック体8とから構成され、縫い代部5を薄肉のメルトインデックスの大きな高密度ポリエチレンで構成し、かつ縫い代部5と移動案内部7との境界領域にアールRをつけ、さらに縫い代部5に位置決め孔Hを形成した。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、カーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を背部に有する合成樹脂製のカーテンフックにおいて、特にミシンの針板上にカーテンフックを自動的に供給するカーテンフック自動供給装置及びミシン掛けに適したカーテンフックに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のカーテンフック1は、図4のごとく、カーテンレールのランナーに係合するフック部2と、カーテン3の折り返し部4に縫い付けるための縫い代部5と、フック部2の高さを調整するためのラチェット式の調整機構6とを備えており、この調整機構6が、縫い代部5を有する移動案内部7と、この移動案内部7に対して移動可能でかつフック部2を有するフック体8とから構成されている。そして、カーテンフック1は、その縫い代部5がミシンで折り返し部4に縫い付けられるが、近時、図5のごとく、カーテンフック1をミシン10の針板11に自動的に供給するフック自動供給機12が提案されている。
【0003】
このフック自動供給機12は、図5のごとく、カーテンフック1を整列収容するフックマガジン13と、このフックマガジン13の最下端部に位置するカーテンフック1をミシンの針板11側に押出すエアシリンダ等の押出し機構14とを備えている。そして、フックマガジン13に収納するカーテンフック1は、整列された整列フック15をまとめて収納する様にしている。また図7及び図8において、9はフック自動供給機12のフックマガジン13の最下端部近傍に設けられた位置決めピンであり、エアシリンダAC等の押出し機構を利用してフック部の高さを自動調整するために設けられている。そして自動供給及びミシン掛け用のカーテンフック1には、この位置決めピン9が係合する位置決め孔Hが形成されている。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、従来のカーテンフックは、カーテンの折り返し部に縫い代部を縫い付けた場合、ミシン針が直接縫い代部を貫通して縫い付けるため、縫製している間にミシン針が折れて飛んでしまうことが多かった。そのため、実際は、できる限り、縫い代部の肉厚を薄くする手段がとられていたが、肉厚を薄くすると、今度は、縫い代部の縫製部分が針穴の存在により強度が低下し、カーテンの開閉操作時、特に重量のあるカーテンの開閉時に、縫い代部の縫製部分が破損し易い問題があった。
【0005】
また、フック自動供給機には、前記の様に、エアシリンダ等の押出し機構を利用して、フック部の高さを自動調整するために位置決めピンが設けられており、これに応じてカーテンフックにはこの位置決めピンが係合する位置決め孔を形成する必要があるが、この位置決め孔を縫い代部に形成することにより、さらに当該位置決め孔近傍部分がミシン縫製においては脆弱化し、さらに縫製後の縫い代部の強度が不均一になる問題があった。
【0006】
この考案の目的は、縫い代部に直接縫製しても強度があり、かつ縫製とともにミシン針が折れて飛ぶことを防止することができる自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフックを提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、この考案は、フック部の高さを調整するラチェット式の調整機構を備え、この調整機構が、カーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有する移動案内部と、この移動案内部に対して移動可能でかつフック部を有するフック体とから構成され、縫い代部を、薄肉の高密度ポリエチレンで構成したことを特徴とする。
【0008】
これは、縫い代部は直接縫製するために、ミシン針が飛ばない程度で、なおかつ前記位置決め孔を形成したとしてもミシン針穴からクラックが発生しない程度の強度を備えていなければならないが、この要求を充分満足することができるものとしては、高密度ポリエチレンが最適であることを見出だした。このように高密度ポリエチレンは、ミシン針の針刺しに対して、剛性が大きく耐衝撃性にすぐれているが、本考案の目的を一層充分達成するためには、ミシン針が飛ばない性質を一層具備させる必要があることから、高密度ポリエチレンの剛性を押さえ、柔らかさを出す材質を採用した。この指標としては、メルトインデックスが使用できるが、この考案では、高密度ポリエチレンの中でも、特に縫い代部をメルトインデックスの大きな高密度ポリエチレンで構成したものである。メルトインデックスは、具体的には、ASTM D1238(2.16kg)で10g/10min 以上、好ましくは20〜25g/10min 以上の高密度ポリエチレンで構成することが望ましく、これにより、二律背反の特性であった前記ミシン針の耐久性とカーテン開閉時の使用強度が優れて確保されるものである。
【0009】
なお、縫い代部の厚みも、材質の選択とともに重要な要素を占めるが、この高密度ポリエチレンで縫い代部を構成した場合は、0.45〜0.75mmとすることが望ましい。これは、0.45mm未満ではミシン針の針刺しは容易になるが、特に位置決め孔付近の強度が低下し好ましくなく、0.75mmを越えると、高密度ポリエチレンの剛性が勝って、ミシン針の耐久性が低下してくるためである。
また、カーテン開閉時の使用強度を達成するには、フック部の高さを調整するラチェット式の調整機構を備え、この調整機構が、カーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有する移動案内部と、この移動案内部に対して移動可能でかつフック部を有するフック体とから構成され、上記縫い代部と移動案内部との境界領域にアールをつけることが望ましい。通常、ミシン掛けする縫い代部の縫製箇所は、カーテンへの止着を確実なものとするために、移動案内部に近い部分であるが、縫い代部と移動案内部との境界領域にアールをつけた場合、カーテン開閉時の使用強度が向上することを見出だした。従って、前記の構成とともに、このアールの構成を同時に採用することで、一層自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフックとすることが可能となる。
【0010】
なお、メルトインデックスの大きな高密度ポリエチレンで構成する箇所は、縫い代部だけではなく、移動案内部も含めて一体成形することが好ましい。すなわち、フック部のラチェット爪との係合の確実性もメルトインデックスの大きな高密度ポリエチレンであれば、その剛性によって充分確保できる。
【0011】
また、上述の説明は、フック部の高さを調整するラチェット式の調整機構を備えたプラスチック製のカーテンフックについてのものであるが、これに限定されず、縫い代部を有する非ラチェットタイプのものでも採用できる。要するに、カーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有するカーテンフックであれば差支えない。
【0012】
【作用】
この考案は、フック部の高さを調整するラチェット式の調整機構を備え、この調整機構がカーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有する移動案内部と、この移動案内部に対して移動可能でかつフック部を有するフック体とから構成され、縫い代部を、薄肉の高密度ポリエチレンで構成したことから、縫い代部に直接縫製しても強度があり、かつ縫製とともにミシン針が折れて飛ぶことを低減することができる。特に、縫い代部をメルトインデックスの大きな高密度ポリエチレンで構成すると、縫い代部の強度を保持しつつ、さらにミシン針の耐久性を一層向上することができる。
【0013】
さらに、縫い代部の厚みを前記範囲に設定し、さらに縫い代部と移動案内部との境界領域にアールをつけると、二律背反である前記ミシン針の耐久性とカーテン開閉時の使用強度が優れて確保される。
【0014】
【実施例】
図1は本考案に係るカーテンフックの側面図、図2は同底面図、図3は同使用状態を示す斜視図である。
【0015】
図において、1はカーテンフック、2はフック部、3はカーテン、4はカーテン3の折り返し部、5は縫い代部、6は調整機構、7は移動案内部、8はフック体、Hは位置決め孔である。これらの符号は前記図4と同符号である。
【0016】
この実施例のカーテンフックは、縫い代部5をメルトインデックス(ASTMD1238 (2.16kg))が20g/10min の0.6mmの薄肉の高密度ポリエチレンで構成しており、また縫い代部5と移動案内部7との境界領域に図3に示す様にアールRをつけている。
【0017】
従って、縫い代部に直接縫製しても強度があり、かつ縫製とともにミシン針が折れて飛ぶことを防止することができる。
【0018】
なお、この考案は前記実施例に限定されるものではない。
【0019】
【考案の効果】
以上の通り、この考案は、フック部の高さを調整するラチェット式の調整機構を備え、この調整機構が、カーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有する移動案内部と、この移動案内部に対して移動可能でかつフック部を有するフック体とから構成され、縫い代部を、薄肉の高密度ポリエチレンで構成したカーテンフックであるため、縫い代部に直接縫製しても強度があり、かつ縫製とともにミシン針が折れて飛ぶことを防止することができる。
【0020】
特に、縫い代部をメルトインデックスの大きな高密度ポリエチレンで構成すると、縫い代部の強度を保持しつつ、さらにミシン針の耐久性を一層向上することができる。
【0021】
さらに、縫い代部の厚みを前記範囲に設定し、さらに縫い代部と移動案内部との境界領域にアールをつけると、二律背反である前記ミシン針の耐久性とカーテン開閉時の使用強度が優れて確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案に係るカーテンフックの側面図である。
【図2】同底面図である。
【図3】同使用状態を示す斜視図である。
【図4】従来のカーテンフックの使用状態を示す斜視図である。
【図5】カーテンフック自動供給装置が設置されたミシンを使用状態において示す斜視図である。
【図6】フック自動供給機の概略斜視図である。
【図7】同自動供給機の位置決めピンに係合された状態を示すカーテンフックの要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 カーテンフック
2 フック部
5 縫い代部
6 調整機構
7 移動案内部
8 フック体
H 位置決め孔

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】カーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有するカーテンフックにおいて、上記縫い代部を、薄肉の高密度ポリエチレンで構成したことを特徴とする自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフック。
【請求項2】フック部の高さを調整するラチェット式の調整機構を備え、この調整機構がカーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有する移動案内部と、この移動案内部に対して移動可能でかつフック部を有するフック体とから構成され、上記縫い代部を、薄肉の高密度ポリエチレンで構成した請求項1記載の自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフック。
【請求項3】縫い代部が、メルトインデックスの大きな高密度ポリエチレンで構成されている請求項1又は2記載の自動供給およびミシン掛けに適したカーテンフック。
【請求項4】移動案内部が、縫い代部と共に、メルトインデックスの大きな高密度ポリエチレンで構成されている請求項2記載の自動供給およびミシン掛けに適したカーテンフック。
【請求項5】メルトインデックスがASTM D1238で10g/10min 以上の高密度ポリエチレンで構成されている請求項3又は4記載のカーテンフック。
【請求項6】メルトインデックスがASTM D1238で20g/10min 以上の高密度ポリエチレンで構成されている請求項3又は4記載のカーテンフック。
【請求項7】縫い代部の厚みが、0.45〜0.75mmである請求項1、2、3、4、5又は6記載の自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフック。
【請求項8】カーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有するカーテンフックにおいて、該縫い代部にカーテンフック供給装置の位置決めピンが係合する位置決め孔を形成した請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフック。
【請求項9】フック部の高さを調整するラチェット式の調整機構を備え、この調整機構がカーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有する移動案内部と、この移動案内部に対して移動可能でかつフック部を有するフック体とから構成され、上記の縫い代部と移動案内部との境界領域にアールをつけた請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフック。
【請求項10】フック部の高さを調整するラチェット式の調整機構を備え、この調整機構が、カーテンの折り返し部に縫い付ける縫い代部を有する移動案内部と、この移動案内部に対して移動可能でかつフック部を有するフック体とから構成され、上記縫い代部と移動案内部との境界領域にアールをつけたことを特徴とする自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフック。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【登録番号】第3002013号
【登録日】平成6年(1994)7月6日
【発行日】平成6年(1994)9月13日
【考案の名称】自動供給及びミシン掛けに適したカーテンフック
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−309
【出願日】平成6年(1994)2月1日
【出願人】(000147132)株式会社パロマインテックス (8)