説明

自動分析装置および分析方法

【課題】分析による判定が難しい疾患であっても、分析結果に基づいて簡易かつ確実な診断を促すことができる自動分析装置および甲状腺中毒症を判別する分析方法を提供すること。
【解決手段】自動分析装置1において、同一の検体に対して分析項目TSHと分析項目FT4またはFT3を測定する測光部22と、分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外であるか否かを判定する検体判定部34aと、検体判定部34aの判定結果に応じて、測光部22によって測定された分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との比の値を算出する算出部34bと、算出部34bが算出した比の値が、予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定するカットオフ値判定部34cと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応容器内に分注し、この反応容器内で生じる反応を測定することによって検体を分析する自動分析装置および甲状腺中毒症を判別する分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体と試薬とを反応容器内に分注し、この反応容器内で生じる反応を測定することによって検体を判定する自動分析装置が知られている。たとえば、同一の検体に対して複数の分析項目を測定し、この測定結果に基づいて被検者の疾患を判別する判別関数を求めることによって、検体を判定する自動分析装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、過去に患者が行った分析結果に関する健康パラメータに基づいて、患者の健康パラメータが将来に異常な範囲内となるか否かを予測し、患者の健康パラメータが将来に異常な範囲内になると予測した場合、将来に患者が異常となる旨を提供する分析システムが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−525676号公報
【特許文献2】特開昭60−209177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医師は、自動分析装置によって分析された複数の分析結果に基づいて、患者の疾患や治療方針を判断している。たとえば、甲状腺中毒症では、医師が複数の分析項目の中から分析項目TSH、FT4およびFT3の分析結果に基づいて、バセドウ病または甲状腺炎を判別している。しかしながら、バセドウ病および甲状腺炎は、複数の分析を行ったとしても、現状の分析精度では疾患を判別することが難しく、医師が疾患の判別に迷いが生じるおそれがあった。このため、一般病院等で診断を行った後に、再度、専門病院で診察を受けなければ患者の疾患を判別することができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分析による判定が難しい疾患であっても、分析結果に基づいて簡易かつ確実な診断を促すことができる自動分析装置および甲状腺中毒症を判別する分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬とを反応容器に分注し、該反応容器内で生じる反応を測定することによって、前記検体を分析する自動分析装置において、同一の前記検体に対して分析項目TSHと分析項目FT4またはFT3を測定する測定手段と、前記測定手段が測定した分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との各々が、分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外であるか否かを判定する検体判定手段と、前記検体判定手段の判定結果に応じて、前記測定手段によって測定された分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との比の値を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した比の値が、予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定するカットオフ値判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記算出手段が算出した算出結果と前記カットオフ値判定手段が判定した判定結果とを表示出力する出力手段を備え、前記出力手段は、前記カットオフ値判定手段が前記算出手段によって算出された比の値を、前記カットオフ値以下であると判定した場合、前記検体がバセドウ病である旨を示すマークを前記算出結果に付加して表示出力することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記算出手段が算出する分析項目を設定する設定手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記分析項目TSHに用いる前記試薬は、実効感度が0.001μU/mL以下であることを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分析方法は、検体と試薬とを反応容器に分注し、該反応容器内で生じる反応を測定することによって、前記検体を分析する自動分析装置が行う分析方法において、同一の前記検体に対して分析項目TSHと分析項目FT4またはFT3を測定する測定ステップと、前記測定手段が測定した分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との各々が、分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外であるか否かを判定する検体判定ステップと、前記検体判定手段の判定結果に応じて、前記測定手段によって測定された分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との比の値を算出する算出ステップと、前記算出手段が算出した比の値が、予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定するカットオフ値判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の分析方法は、上記の発明において、前記算出ステップが算出した算出結果と前記カットオフ値判定ステップが判定した判定結果とを表示出力する出力ステップを含み、前記出力ステップは、前記カットオフ値判定ステップが前記算出ステップによって算出された比の値を、前記カットオフ値以下であると判定した場合、前記検体がバセドウ病である旨を示すマークを前記算出結果に付加して表示出力することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の分析方法は、上記の発明において、算出ステップが算出する分析項目を設定する設定ステップを含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の分析方法は、上記の発明において、前記分析項目TSHに用いる前記試薬は、実効感度が0.001μU/mL以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、同一の検体に対して分析項目TSHと分析項目FT4またはFT3を測定し、この測定結果の各々が、分析項目に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外の場合、分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との比の値が、予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定する。これによって、簡易かつ確実な方法で、検体を判別することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者のTSH値の分布を示す分布図である。
【図3】図3は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者のFT4値の分布を示す分布図である。
【図4】図4は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者の分析項目「TSH」の測定結果を分析項目「FT4」の測定結果で除算した際の比の値の分布を示す分布図である。
【図5】図5は、分析項目を設定する分析項目設定画面の一例を示す図である。
【図6】図6は、分析項目設定画面によって設定された分析項目を表示出力する出力画面の一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1にかかるバセドウ病判定処理のフローチャートを示す図である。
【図8】図8は、測定結果一覧を表示出力する出力画面の一例を示す図である。
【図9】図9は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者のFT3値の分布を示す分布図である。
【図10】図10は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者の分析項目「TSH」の測定結果を分析項目「FT3」の測定結果で除算した際の比の値の分布を示す分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明にかかる自動分析装置および分析方法の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置1は、試薬と検体とを反応させ、この反応液を測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構2における測定結果の分析を行う制御機構3と、を備える。自動分析装置1は、これら二つの機構が連携することによって複数の検体の分析を自動的に行う。
【0019】
まず、測定機構2について説明する。図1に示すように、測定機構2は、検体移送部11と、チップ格納部12と、検体分注部13と、BF槽14と、BF洗浄部15と、第1試薬庫16と、第2試薬庫17と、第1試薬分注部18と、第2試薬分注部19と、免疫反応槽20と、酵素反応槽21と、測光部22と、第1反応容器移送部23と、第2反応容器移送部24と、を備える。
【0020】
検体移送部11は、検体を収容した複数の検体容器11aを保持した検体ラック11bを図中の矢印方向に順次移送する。検体容器11aに収容された検体は、被検者から採取した血液または尿等である。
【0021】
チップ格納部12は、複数の分注チップ12aを保持する。チップ格納部12は、分注チップ12aをチップ供給位置P1に供給する。分注チップ12aは、感染症等の分析項目を測定する場合、検体のキャリーオーバーを防止するため、検体の分注毎に交換されるディスポーザブル型のプローブチップである。
【0022】
検体分注部13は、検体の分注を行う分注チップ12aが先端部に取り付けられ、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームを有する。検体分注部13は、検体移送部11によって検体吸引位置P2に移送された検体容器11a内の検体を分注チップ12aによって吸引し、アームを旋回させ、BF槽14によって検体吐出位置P3に搬送された反応容器25に分注する。検体分注部13は、検体の分注毎に、チップ格納部12によってチップ供給位置P1に供給された新しい分注チップ12aに交換する。
【0023】
BF槽14は、BF洗浄液によって検体または試薬における未反応物質を分離するBF(bound−free)分離を実施するBF洗浄処理を行う。BF槽14は、BF槽14の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ライン毎に回動自在であり、BF槽14に配置された所望の反応容器25を所定位置に移送する。BF槽14は、BF分離に必要な磁性粒子を集磁する集磁機構(図示せず)と、集磁された磁性粒子を分散させる攪拌機構(図示せず)と、を有する。
【0024】
BF洗浄部15は、吐出ノズル(図示せず)と吸引ノズル(図示せず)とを複数組有する。吐出ノズルは、洗浄液タンク(図示せず)から供給されるBF洗浄を反応容器25内に吐出する。吸引ノズルは、反応容器25内のBF洗浄液を吸引し、吸引したBF洗浄液を排水タンク(図示せず)に排出する。
【0025】
第1試薬庫16は、第1試薬を収容した第1試薬容器16aを複数収容する。第1試薬庫16は、第1試薬庫16の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在であり、所望の第1試薬容器16aを試薬吸引位置P4に移送する。ここで、第1試薬とは、分析対象である検体に含まれる抗原または抗体と特異的に結合する反応物資を不溶性担体である磁性粒子に固着させた試薬である。
【0026】
第2試薬庫17は、第2試薬を収容した第2試薬容器17aおよび基質液を収容した基質液容器17bを複数収容する。第2試薬庫17は、第2試薬庫17の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在であり、所望の第2試薬容器17aまたは基質液容器17bを第2試薬吸引位置P5または第2試薬吸引位置P6に移送する。第2試薬は、磁性粒子を結合した抗原または抗体と特異的に結合する標識物質、たとえば、酵素を含む試薬である。基質液は、標識物質との酵素反応によって光を出射する基質を含む試薬である。
【0027】
第1試薬分注部18は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸として回転を自在に行うアームを有する。第1試薬分注部18は、第1試薬庫16の第1試薬吸引位置P4で停止した第1試薬容器16a内の第1試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させてBF槽14によって第1試薬吐出位置P7に移送された反応容器25内に試薬を分注する。また、第1試薬分注部18は、第2試薬庫17の第2試薬吸引位置P5で停止した第2試薬容器17a内の第2試薬または基質液容器17b内の基質液をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BF槽14によって第2試薬吐出位置P8に移送された反応容器25内に第2試薬または基質液を分注する。
【0028】
第2試薬分注部19は、第1試薬分注部18と同様の構成を有する。第2試薬分注部19は、第2試薬庫17の第2試薬吸引位置P6に停止した第2試薬容器17a内の第2試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BF槽14によって第2試薬吐出位置P9に移送された反応容器25内に試薬を分注する。
【0029】
免疫反応槽20は、最も内側を周回し、検体と標準試料との免疫反応用の第1ライン20aと、最も外側を周回し、検体を生理活性水等で希釈する前処理または再検対象の検体を生理活性水等で希釈する再希釈処理用の第2ライン20bと、第1ライン20aと第2ライン20bとの中間を周回し、検体と固相担体試薬との免疫反応用の第3ライン20cと、を有する。第1ライン20a、第2ライン20bおよび第3ライン20cには、それぞれ複数の反応容器25が配置される。第1ライン20a、第2ライン20bおよび第3ライン20cは、免疫反応槽20の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在であり、それぞれに配置された反応容器25を所定位置に移送する。
【0030】
酵素反応槽21は、反応容器25内に分注された基質液(第2試薬)内の基質が発光可能な状態となる酵素反応を促進する。酵素反応槽21は、免疫反応槽20と同様に、酵素反応槽21の中心を通る鉛直線を回転軸として回転自在であり、所望の反応容器25を所定の位置に移送する。
【0031】
測光部22は、反応容器25内の反応液内の基質から発する発光を測定する。測光部22は、たとえば、化学発光で生じた微弱な発光を検出する光電子増倍管を有し、カウント法を用いて発光量を測定する。また、測光部22は、光学フィルターを保持し、発光強度に応じて光学フィルターにより測光された測定値によって真の発光強度を算出するようにしてもよい。
【0032】
第1反応容器移送部23は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行い、液体を収容した反応容器25を所定位置に移送するアームを有する。具体的には、第1反応容器移送部23は、BF槽14、免疫反応槽20、酵素反応槽21および反応容器廃棄部(図示せず)に反応容器25を移送する。
【0033】
第2反応容器移送部24は、第1反応容器移送部23と同様の構成を有する。第2反応容器移送部24は、液体を収容した反応容器25を所定位置に移送する。具体的には、第2反応容器移送部24は、酵素反応槽21、測光部22および反応容器廃棄部(図示せず)に反応容器25を移送する。
【0034】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31と、入力部32と、記憶部33と、分析処理部34と、出力部35と、を備える。
【0035】
制御部31は、CPU等によって実現され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行う、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0036】
入力部32は、キーボード、マウス、入出力機能を備えたタッチパネル等によって実現され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。また、入力部32は、検体に対して分析する分析項目を設定するとともに、検体に対して新たな分析項目を設定する設定手段として機能する。
【0037】
記憶部33は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際に、この処理にかかる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて実現され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部33は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0038】
分析処理部34は、測光部22によって測定された測定結果に基づいて検体の成分分析等を行う。ここで、分析処理部34は、検体判定部34aと、算出部34bと、カットオフ値判定部34cと、を有する。検体判定部34aは、測光部22によって測定された測定結果が、記憶部33が記憶する分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外であるか否かを判定する。算出部34bは、検体判定部34aの判定結果に応じて、測光部22によって測定された二つの分析項目のうち一方の測定結果と他方の測定結果との比の値を算出する。具体的には、算出部34bは、分析項目「TSH」の測定結果を分析項目「FT4」の測定結果で除算することによって得られる比の値を算出する。カットオフ値判定部34cは、算出部34bによって算出された比の値が、記憶部33が記憶する予め設定される特定の疾患を判別するカットオフ値以下であるか否かを判定する。具体的には、カットオフ値判定部34cは、算出部34bによって算出された比の値が、記憶部33が記憶するバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定する。
【0039】
出力部35は、ディスプレイ、プリンタおよびスピーカ等によって実現され、各情報を出力する。出力部35は、算出部34bが算出した算出結果とカットオフ値判定部34cが判定した判定結果とを表示出力する。具体的には、カットオフ値判定部34cが、算出部34bが算出した比の値が、記憶部33が記憶するバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であると判定した場合、算出部34bの算出結果に対して検体がバセドウ病である旨を示すマークや色を付加して表示出力する。
【0040】
以上のように構成された自動分析装置1は、BF槽14上で順次移送される複数の反応容器25に対して、第1試薬分注部18が第1試薬庫16の第1試薬吸引位置P4で停止した分注対象の第1試薬容器16aから磁性粒子を含む第1試薬を分注後、検体分注部13が検体吸引位置P2で停止した検体容器11aから検体を分注する。その後、第1試薬と検体とが分注された反応容器25は、第1反応容器移送部23によって免疫反応槽20の第3ライン20cに移送され、第3ライン20cにおいて第1試薬と検体とを一定時間反応させる。これにより、第1試薬中の磁性粒子と検体中の抗原または抗体とが結合した反応物が生成される。その後、反応物が生成された反応容器25は、第1反応容器移送部23によってBF槽14に移送され、BF洗浄部15が反応容器25内の未反応物質をBF分離によって除去する第1BF洗浄処理を行う。その後、未反応物資がBF分離された反応容器25は、第2試薬分注部19が第2試薬庫17の第2試薬吸引位置P6で停止した第2試薬容器17aから標識抗体を含む第2試薬を分注する。これにより、反応物と標識抗体とが結合した免疫複合体が生成される。
【0041】
その後、免疫複合体が生成された反応容器25は、第1反応容器移送部23によって免疫反応槽20の第1ライン20aに移送され、一定時間反応させた後、BF槽14に移送される。その後、反応容器25に対して、BF洗浄部15が未反応の標識抗体をBF分離によって除去する2回目の第2BF洗浄処理する。
【0042】
その後、反応容器25は、第1反応容器移送部23によって酵素反応槽21に移送され、一定時間酵素反応させた後、第2反応容器移送部24によって測光部22に移送される。酵素反応を経た基質は、酵素作用により光を発する。測光部22は、基質から発せられる光を測定する。その後、分析処理部34が、測光部22が測定した測定結果に基づいて検体を分析する。その後、測光部22による測定が終了した反応容器25は、第2反応容器移送部24によって図示しない反応容器廃棄部に移送されて廃棄される。
【0043】
ここで、医師が甲状腺疾患の一つであるバセドウ病を判別する際に用いる分析項目について説明する。図2は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者のTSH値の分布を示す分布図であり、いわゆる箱ひげ図である。ここで、TSHとは、甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone)である。図2では、自動分析装置1を使用し、バセドウ病被検者38例、亜急性甲状腺炎被検者7例および無痛性甲状腺炎被検者8例の測定を実施した場合を示している。さらに、図2において、縦軸は、TSHの値(μl/mL)を示す。なお、測定に用いた試薬は、実効感度が、0.001(μU/mL)以下である。
【0044】
図2に示すように、バセドウ病被検者における分析項目「TSH」の測定結果に対して、亜急性甲状腺炎被検者における分析項目「TSH」の測定結果では、P<0.05と非常に強い有意差をもって高値を示す。ここで、P(p値)とは、帰無仮説(差はないとする仮説)が正しい場合に得られる結果に関する偶然性の確率の大きさを示す値である。具体的には、P<0.05と計算された場合、この結果が偶然でない確率は、0.05すなわち5%より少ないことを示す。
【0045】
一方、バセドウ病被検者における分析項目「TSH」の測定結果に対して、無痛性甲状腺炎被検者における分析項目「TSH」の測定結果では、有意差がない。このため、医師は、分析項目「TSH」の測定結果に基づいて、バセドウ病と亜急性甲状腺炎との判別が容易であるが、バセドウ病と無痛性甲状腺炎との判別ができない。
【0046】
図3は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者のFT4値の分布を示す分布図である。ここで、FT4とは、遊離型サイロキシンT4(free thyroxine)である。図3では、自動分析装置1を使用し、バセドウ病被検者38例、亜急性甲状腺炎被検者7例および無痛性甲状腺炎被検者8例の測定を実施した場合を示している。さらに、図3において、縦軸は、FT4の測定値(ng/dL)を示す。なお、分析項目「TSH」の測定で用いた試薬(TSH測定試薬)は、実効感度が、0.001(μU/mL)以下である。
【0047】
図3に示すように、バセドウ病被検者における分析項目「FT4」の測定結果に対して、無痛性甲状腺炎被検者における分析項目「FT4」の測定結果では、P<0.05と非常に強い有意差をもって高値を示す。一方、バセドウ病被検者における分析項目「FT4」の測定結果に対して、亜急性甲状腺炎被検者における分析項目「FT4」の測定結果では、有意差がない。このため、医師は、分析項目「FT4」の測定結果に基づいて、バセドウ病と無痛性甲状腺炎との判別が容易であるが、バセドウ病と亜急性甲状腺炎との判別ができない。このように、医師は、バセドウ病、亜急性甲状腺炎および無痛性甲状腺炎を判別する場合、分析項目「TSH」および分析項目「FT4」の測定結果に基づいて、それぞれの甲状腺疾患を判別する。
【0048】
しかしながら、医師は、バセドウ病、亜急性甲状腺炎または無痛性甲状腺炎を判別する場合、分析項目「TSH」および分析項目「FT4」の測定結果に基づいて、主観で判断する。このため、医師は、被検者がどの疾患であるのか判別に迷いが生じるおそれがあった。さらに、従来の自動分析装置では、バセドウ病、亜急性甲状腺炎および無痛性甲状腺炎を、疾患毎に判別することができず、バセドウ病、亜急性甲状腺炎および無痛性甲状腺炎を含めた甲状腺疾患である旨を被検者の測定結果として出力していた。
【0049】
そこで、本発明の実施の形態1によれば、バセドウ病と、他の甲状腺中毒症である亜急性甲状腺炎または無痛性甲状腺炎とを判別し、医師が判断する被検者の測定結果または算出部34bの算出結果に対して注意喚起用のマークを付加することにより、医師による確実な診断を促す。
【0050】
図4は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者の分析項目「TSH」の測定結果を分析項目「FT4」の測定結果で除算した際の比の値の分布を示す分布図である。図4では、自動分析装置1を使用し、バセドウ病被検者38例、亜急性甲状腺炎被検者7例および無痛性甲状腺炎被検者8例の測定を実施した場合を示している。さらに、図4において縦軸は、分析項目を除算した比の値を示す。
【0051】
図4に示すように、バセドウ病被検者における分析項目「TSH/FT4」の結果に対して、亜急性甲状腺炎被検者における分析項目「TSH/FT4」の結果では、P<0.05と非常に強い有意差をもって高値を示す。また、バセドウ病被検者における分析項目「TSH/FT4」の結果に対して、無痛性甲状腺炎被検者における分析項目「TSH/FT4」の結果では、P<0.05と非常に強い有意差をもって高値を示す。また、この実施結果では、カットオフ値は「0.0015」以下であり、感度は「80.0%」であり、特異度は「76.3%」であり、AUCは「0.862」である。この結果、バセドウ病と、亜急性甲状腺炎または無痛性甲状腺炎とを容易に判別することができる。ここで、カットオフ値とは、バセドウ病と、他の甲状腺中毒症である亜急性甲状腺炎または無痛性甲状腺炎とを判別する場合に、バセドウ病の被検者の測定結果と亜急性甲状腺炎または無痛性甲状腺炎の被検者の測定結果とを区切る値である。なお、亜急性甲状腺炎および無痛性甲状腺炎は、炎症として扱われ、バセドウ病と治療方針が異なるため、甲状腺炎として判定できることが必要である。
【0052】
つぎに、図5を参照して、分析項目の設定について説明する。図5は、分析項目を設定する分析項目設定画面の出力部のディスプレイにおける表示例を示す図である。
【0053】
図5に示す分析項目設定画面W1には、検体の分析項目を選択する分析項目選択テーブルR1が画面左側に表示され、分析項目登録テーブルR2が画面右下に表示されている。また、分析項目設定画面W1には、FormulaボックスB1と、Assay nameボックスB2と、Cut off criteriaボックスB3,B4と、RemarkボックスB5と、ReferenceボックスB6とが画面中央に表示されている。
【0054】
操作者は、入力部32のマウス等を用いて分析項目選択テーブルR1の中から所望の分析項目にカーソルY1を移動し、マウスのクリック等によって分析項目を選択する。これにより、FormulaボックスB1には、選択した分析項目、たとえば、分析項目「TSH」が表示される。その後、操作者は、分析項目設定画面W1の画面右上方に表示された計算記号の中から所望の計算記号、たとえば、計算記号「÷」にカーソルY1を移動し、マウスのクリック等によって計算記号を選択する。以下、マウス等を用いてカーソルを移動した後、マウスのクリック等によって選択することを、単に選択するという。その後、操作者は、分析項目選択テーブルR1の中から所望の分析項目、たとえば、分析項目「FT4」にカーソルY1を移動して選択する。このようにして、FormulaボックスB1には、たとえば、計算式「TSH÷FT4」が表示される。
【0055】
その後、操作者は、Assay nameボックスB2にカーソルY1を移動し、入力部32のキーボード等を用いて分析項目名、たとえば、分析項目名「TSH/FT4」を入力する。その後、操作者は、Cut off criteriaボックスB3,B4にカーソルY1を移動し、入力部32を用いてカットオフ値の下限値をCut off criteriaボックスB3に、Cut off criteriaボックスB4にカットオフ値の上限値をそれぞれ入力する。その後、操作者は、RemarkボックスB5にカーソルY1を移動し、入力部32を用いてカットオフ値以下となった検体の測定結果または算出部34bの算出結果に対して表示する注意喚起用のマークを設定する。これにより、RemarkボックスB5には、たとえば、記号「**」が表示される。その後、操作者は、ReferenceボックスB6にカーソルY1を移動し、入力部32を用いてカットオフ値以下となった検体の疾患名、たとえば、疾患名「バセドウ病」と入力する。その後、操作者は、AddボタンC1にカーソルY1を移動し、選択することによって新たな分析項目の登録を確定する。このようにして、分析項目登録テーブルR2には、たとえば、分析項目「TSH/FT4」および計算式「TSH÷FT4」が表示される。
【0056】
その後、操作者は、分析項目登録テーブルR2のチェックボックスの中から所望のチェックボックスにカーソルY1を移動して選択する。これにより、チェックボックスB7には、チェック記号「レ」が表示される。その後、操作者は、UpdateボタンC2にカーソルY1を移動して新たな分析項目の設定を確定する。分析項目設定画面W1において設定された内容に対応する分析項目に関する設定情報は、制御部31を介して記憶部33に記憶される。
【0057】
図6は、分析項目設定画面によって設定された分析項目を表示出力する出力画面の一例を示す図である。図6に示すように、分析項目表示一覧画面W2には、分析項目選択テーブルR3が表示される。分析項目選択テーブルR3には、図5の分析項目設定画面W1によって設定された分析項目が表示される。具体的には、分析項目選択テーブルR3には、自動分析装置1に予め設定された分析項目の他に、操作者が図5の分析項目設定画面W1で新たに設定した分析項目「TSH/FT4」が表示される。これにより、操作者は、分析項目選択テーブルR3の分析項目「TSH/FT4」を選択することで、検体に対して
分析項目「TSH/FT4」の分析が可能となる。
【0058】
つぎに、図7に示すフローチャートを参照して、自動分析装置1の分析処理部34による判定処理について説明する。なお、以下では、一つの検体に対してバセドウ病と甲状腺炎との判定を行う場合の一連の処理を説明する。
【0059】
まず、分析処理部34は、記憶部33から測光部22によって測定された同一の検体に対して異なる2つの分析項目の測定結果を取得する(ステップS101)。具体的には、分析処理部34は、分析項目「TSH」および分析項目「FT4」の測定結果を記憶部33から取得する。
【0060】
その後、検体判定部34aは、取得した2つの分析項目「TSH」および「FT4」の測定結果が、分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外であるか否かを判定する(ステップS102)。取得した2つの分析項目「TSH」および「FT4」の測定結果が、分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲内である場合(ステップS102:No)、検体判定部34aは、分析項目「TSH」および「FT4」に対し、検体が正常であると判定し(ステップS103)、ステップS109に移行する。一方、取得した2つの分析項目「TSH」および「FT4」の測定結果が、分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外である場合(ステップS102:Yes)、検体判定部34aは、分析項目「TSH」および「FT4」に対し、検体が異常である、すなわち検体が甲状腺疾患を有していると判定する(ステップS104)。
【0061】
その後、算出部34bは、取得した分析項目「TSH」の測定結果を分析項目「FT4」の測定結果で除算する(ステップS105)。具体的には、分析項目「TSH」の測定結果が0.0040(μU/mL)に対して、分析項目「FT4」の測定結果3.50(ng/dL)で除算することによって、TSH/FT4の比の値を算出する。
【0062】
その後、カットオフ値判定部34cは、算出部34bが算出したTSH/FT4の比の値が、バセドウ病のカットオフ値以下であるか否かを判定する(ステップS106)。算出部34bが算出したTSH/FT4の比の値が、バセドウ病のカットオフ値を超える場合(ステップS106:No)、カットオフ値判定部34cは、検体を甲状腺炎と判定する(ステップS107)。一方、算出部34bが算出したTSH/FT4の比の値が、バセドウ病のカットオフ値以下である場合(ステップS106:Yes)、カットオフ値判定部34cは、検体をバセドウ病と判定する(ステップS108)。
【0063】
その後、分析処理部34は、制御部31を介して、カットオフ値判定部34cの判定結果と併せて算出部34bが算出した比の値の結果を出力部35に出力し(ステップS109)、本処理を終了する。
【0064】
図8は、出力部35が表示出力する測定結果一覧を示す図である。図8に示す測定結果一覧画面W3には、検体毎に分析項目それぞれの結果が表示されている。たとえば、検体No「1」については、分析項目TSHの測定結果が「1.5600(μU/mL)」であり、分析項目FT4の測定結果が「1.00(ng/dL)」であり、分析項目FT3の測定結果が「2.70(pg/mL)」であり、分析項目TSH/FT4の測定結果が「1.5600」であることが表示されている。また、検体No「7」については、分析項目TSHの測定結果が「0.0040(μU/mL)」であり、分析項目FT4の測定結果が「3.50(ng/dL)」であり、分析項目FT3の測定結果が「8.60(pg/mL)」であり、分析項目TSH/FT4の測定結果が「0.0011」であることが表示されている。さらに、検体No「7」については、分析項目TSH/FT4の測定結果にバセドウ病である旨を注意喚起するマークとして記号「**」が表示されている。
【0065】
本発明の実施の形態1によれば、検体判定部34aが、測光部22によって測定された同一の検体に対して分析項目「TSH」の測定結果と分析項目「FT4」の測定結果に対して、記憶部33が記憶する分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外であるか否かを判定する。その後、カットオフ値判定部34cが、検体判定部34aの判定結果に応じて、算出部34bによって算出され分析項目「TSH」の測定結果と分析項目「FT4」の測定結果との比の値が、記憶部33が記憶する予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定する。これによって、簡易に、かつ確実な方法で、検体を判別することができる。また、出力部35が、カットオフ値判定部34cが算出部34bによって算出された比の値が、記憶部33が記憶する予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であると判定した場合、検体がバセドウ病である旨を示すマークを測定結果に付加して表示出力することによって、医師による診断を明確にすることができる。さらに、従来からの自動分析装置1で行う分析項目の測定結果を用いることによって、分析による判定が難しい疾患であっても、分析結果に基づいて簡易かつ確実な診断を促すことができる。
【0066】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した本発明の実施の形態1では、分析項目「TSH」の測定結果と分析項目「FT4」の測定結果との比の値でバセドウ病と甲状腺炎とを判別していたが、本発明の実施の形態2では、分析項目「TSH」の測定結果と分析項目「FT3」の測定結果との比の値でバセドウ病と甲状腺炎とを判別する。
【0067】
図9は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者のFT3値の分布を示す分布図である。ここで、FT3とは、遊離トリヨードサイロニン(Free triiodothyronine)である。図9では、自動分析装置1を使用し、バセドウ病被検者38例、亜急性甲状腺炎被検者7例および無痛性甲状腺炎被検者8例の測定を実施した場合を示している。さらに、図9において、縦軸は、FT3の測定値(pg/mL)を示す。なお、分析項目「TSH」の測定で用いた試薬(TSH測定試薬)は、実効感度が、0.001(μU/mL)以下である。
【0068】
図9に示すように、バセドウ病被検者における分析項目「FT3」の測定結果に対して、無痛性甲状腺炎被検者における分析項目「FT3」の測定結果では、P<0.05と非常に強い有意差をもって高値を示す。一方、バセドウ病被検者における分析項目「FT3」の測定結果に対して、亜急性甲状腺炎被検者における分析項目「FT3」の測定結果では、有意差がない。このため、医師は、分析項目「FT3」の測定結果に基づいて、バセドウ病と無痛性甲状腺炎との判別が容易であるが、バセドウ病と亜急性甲状腺炎との判別ができない。
【0069】
図10は、バセドウ病被検者、亜急性甲状腺炎被検者および無痛性甲状腺炎被検者の分析項目「TSH」の測定結果を分析項目「FT3」の測定結果で除算した際の比の値の分布を示す分布図である。図10では、自動分析装置1を使用し、バセドウ病被検者38例、亜急性甲状腺炎被検者7例および無痛性甲状腺炎被検者8例の測定を実施した場合を示している。さらに、図10において縦軸は、比の値を示す。
【0070】
図10に示すように、バセドウ病被検者における分析項目「TSH/FT3」の結果に対して、亜急性甲状腺炎被検者における分析項目「TSH/FT3」の結果では、P<0.05と非常に強い有意差をもって高値を示す。また、バセドウ病被検者における分析項目「TSH/FT3」の結果に対して、無痛性甲状腺炎被検者における分析項目「TSH/FT3」の結果では、P<0.05と非常に強い有意差をもって高値を示す。また、この実施結果では、カットオフ値が「0.0005」以下である。このように、本発明の実施の形態2によれば、バセドウ病と、亜急性甲状腺炎または無痛性甲状腺炎とを判別することができる。
【0071】
以上のようにカットオフ値判定部34cは、分析項目「TSH」の測定結果と分析項目「FT3」の測定結果との比の値に応じて、バセドウ病と甲状腺炎とを判別する。このため、上述した本発明の実施の形態1で説明した判定処理と同様の処理の流れを有する(図7を参照)。
【0072】
本発明の実施の形態2によれば、検体判定部34aが、測光部22によって測定された同一の検体に対して分析項目「TSH」の測定結果と分析項目「FT3」の測定結果に対して、記憶部33が記憶する分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外であるか否かを判定する。その後、カットオフ値判定部34cが、検体判定部34aの判定結果に応じて、算出部34bによって算出された分析項目「TSH」の測定結果と分析項目「FT3」の測定結果との比の値が、記憶部33が記憶する予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定する。これによって、簡易に、かつ確実な方法で、検体を判別することができる。また、出力部35が、カットオフ値判定部34cが算出部34bによって算出された比の値が、記憶部33が記憶する予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であると判定した場合、検体がバセドウ病である旨を示すマークを測定結果に付加して表示出力することによって、医師による診断を明確にすることができる。さらに、従来からの自動分析装置1で行う分析項目の測定結果を用いることによって、分析による判定が難しい疾患であっても、分析結果に基づいて簡易かつ確実な診断を促すことができる。
【0073】
また、上述した本発明の実施の形態1,2では、記憶部33に分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲と、予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値とが記憶されていたが、たとえば、通信ネットワークを介して管理サーバに記憶させてもよい。これにより、基準範囲およびカットオフ値が更新された場合において、最新の基準範囲およびカットオフ値を取得することができる。
【0074】
また、上述した本発明の実施の形態1,2では、カットオフ値判定部34cが、記憶部33に記憶された予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定していたが、たとえば、予め設定した特定の疾患に応じてカットオフ値以下またはカットオフ値以上であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0075】
また、上述した本発明の実施の形態1,2では、入力部32によって、算出部34bが除算する2つの分析項目を設定していたが、たとえば、記憶部33に除算する2つの分析項目を記憶させてもよい。
【0076】
また、上述した本発明の実施の形態1,2では、自動分析装置1が免疫化学を分析する免疫化学分析装置であったが、たとえば、生化学を分析する生化学分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 自動分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
12 チップ格納部
12a 分注チップ
13 検体分注部
14 BF槽
15 BF洗浄部
16 第1試薬庫
16a 第1試薬容器
17 第2試薬庫
17a 第2試薬容器
17b 基質液容器
18 第1試薬分注部
19 第2試薬分注部
20 免疫反応槽
20a 第1ライン
20b 第2ライン
20c 第3ライン
21 酵素反応槽
22 測光部
23 第1反応容器移送部
24 第2反応容器移送部
25 反応容器
31 制御部
32 入力部
33 記憶部
34 分析処理部
34a 検体判定部
34b 算出部
34c カットオフ値判定部
35 出力部
R1,R3 分析項目選択テーブル
R2 分析項目登録テーブル
W1 分析項目設定画面
W2 分析項目表示一覧画面
W3 測定結果一覧画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを反応容器に分注し、該反応容器内で生じる反応を測定することによって、前記検体を分析する自動分析装置において、
同一の前記検体に対して分析項目TSHと分析項目FT4またはFT3を測定する測定手段と、
前記測定手段が測定した分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との各々が、分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外であるか否かを判定する検体判定手段と、
前記検体判定手段の判定結果に応じて、前記測定手段によって測定された分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との比の値を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した比の値が、予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定するカットオフ値判定手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記算出手段が算出した算出結果と前記カットオフ値判定手段が判定した判定結果とを表示出力する出力手段を備え、
前記出力手段は、前記カットオフ値判定手段が前記算出手段によって算出された比の値を、前記カットオフ値以下であると判定した場合、前記検体がバセドウ病である旨を示すマークを前記算出結果に付加して表示出力することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記算出手段が算出する分析項目を設定する設定手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記分析項目TSHに用いる前記試薬は、実効感度が0.001μU/mL以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項5】
検体と試薬とを反応容器に分注し、該反応容器内で生じる反応を測定することによって、前記検体を分析する自動分析装置が行う分析方法において、
同一の前記検体に対して分析項目TSHと分析項目FT4またはFT3を測定する測定ステップと、
前記測定手段が測定した分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との各々が、分析項目毎に応じて予め設定される正常な検体である旨を示す基準範囲外であるか否かを判定する検体判定ステップと、
前記検体判定手段の判定結果に応じて、前記測定手段によって測定された分析項目TSHの測定結果と分析項目FT4またはFT3の測定結果との比の値を算出する算出ステップと、
前記算出手段が算出した比の値が、予め設定されるバセドウ病と他の甲状腺中毒症とを判別するカットオフ値以下であるか否かを判定するカットオフ値判定ステップと、
を含むことを特徴とする分析方法。
【請求項6】
前記算出ステップが算出した算出結果と前記カットオフ値判定ステップが判定した判定結果とを表示出力する出力ステップを含み、
前記出力ステップは、前記カットオフ値判定ステップが前記算出ステップによって算出された比の値を、前記カットオフ値以下であると判定した場合、前記検体がバセドウ病である旨を示すマークを前記算出結果に付加して表示出力することを特徴とする請求項5に記載の分析方法。
【請求項7】
前記算出ステップが算出する分析項目を設定する設定ステップを含むことを特徴とする請求項5または6に記載の分析方法。
【請求項8】
前記分析項目TSHに用いる前記試薬は、実効感度が0.001μU/mL以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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