説明

自動分析装置

【課題】検体中のアルカリホスファターゼ(ALP)の分析精度を向上させること。
【解決手段】生化学分析ユニット13は、検体中のALPの濃度を測定する処理を行ってALP測定を実施する。統括制御部31は、ALP測定依頼を受け付けると、ホストコンピュータ3から検体の被検者のABO式血液型やSe式血液型の血液型情報を取得する。そして、統括制御部31は、取得した血液型の血液型種類に応じたALP判定基準範囲をALP判定基準範囲データ40から選択し、分析部33が、選択されたALP判定基準範囲を用いてALP測定結果を分析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中のアルカリホスファターゼ(ALP)の分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体と試薬とを反応容器内に分注して反応させ、反応容器内の反応液の吸光度を測定することによって検体の分析を行う自動分析装置が知られており、臨床検査に利用されている。その一つとして、血液検体(血清)中のアルカリホスファターゼ(血清アルカリホスファターゼ)の濃度を測定して分析する分析項目がある。血清アルカリホスファターゼは、例えば肝細胞癌、肝硬変、慢性肝炎等の肝臓の疾患や胆道の疾患、骨に関する疾患で高値を示し、正常な測定値の範囲が分析基準値範囲として予め設定されている。血清アルカリホスファターゼの検査手法については、例えば、非特許文献1に開示されている。
【0003】
【非特許文献1】臨床検査法提要第35版,p.590−591
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、血清アルカリホスファターゼのアイソザイムの1つである小腸型アルカリホスファターゼは、被検者の血液型に依存して出現し、ABO式血液型が“B型”または“O型”であって、Se式血液型が“分泌型”の場合に、その他の血液型と比較して高値を示すことが報告されている。このため、分析の際には、被検者の血液型に応じた分析基準値範囲を適用する必要がある。しかしながら、従来の自動分析装置では、血液型を加味して分析基準値範囲を設定しておらず、異常として検出すべき測定値を正常として検出してしまう恐れがあった。
【0005】
一方で、血清アルカリホスファターゼを分析する際にその都度被検者の血液型の検査測定を行うこととすると、処理時間が増大してしまい、分析効率が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みて為されたものであって、検体中のアルカリホスファターゼの分析精度を向上させることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる自動分析装置は、被検者から採取した検体中のアルカリホスファターゼの濃度を測定する測定手段と、前記被検者のABO式血液型、Se式血液型およびルイス式血液型の少なくともいずれか1つの血液型種類の血液型を取得する取得手段と、前記測定手段によって測定された測定値を、前記取得手段によって取得された血液型の血液型種類に応じた分析基準値範囲を用いて分析する分析手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記分析基準値範囲は、それぞれに共通の共通基準値範囲を含む血液型毎の基準値範囲を有しており、前記取得手段は、前記測定値が前記基準値範囲内でありかつ前記共通基準値範囲外の場合に前記被検者の血液型の取得を行い、前記分析手段は、前記測定値が前記基準値範囲内でありかつ前記共通基準値範囲外の場合に、前記測定値を、前記取得手段によって取得された血液型毎の基準値範囲に従って分析することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記取得手段は、前記被検者のABO式血液型およびSe式血液型を取得し、前記分析手段は、前記測定値を、ABO式血液型の分析基準値範囲とSe式血液型の分析基準値範囲とを組み合わせて定めたABO式/Se式分析基準値範囲を用いて分析することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記被検者のABO式血液型を検査するABO式血液型検査手段を備え、前記取得手段は、前記ABO式血液型検査手段による検査結果を前記被検者のABO式血液型として取得することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記ABO式/Se式分析基準値範囲は、それぞれに共通の共通基準値範囲を含むABO式血液型およびSe式血液型の組み合わせ毎の基準値範囲を有しており、前記取得手段は、前記測定値が前記基準値範囲内でありかつ前記共通基準値範囲外の場合に、前記ABO式検査手段にABO式血液型の検査測定の実施を指示する第1の指示手段を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記取得手段は、前記被検者の血液型の取得の結果Se式血液型が取得されたか否かを判定し、取得されない場合に前記被検者のルイス式血液型を取得し、前記分析手段は、前記測定値を、ABO式血液型の分析基準値範囲とルイス式血液型の分析基準値範囲とを組み合わせて定めたABO式/ルイス式分析基準値範囲を用いて分析することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記被検者のルイス式血液型を検査するルイス式血液型検査手段を備え、前記取得手段は、前記ルイス式血液型検査手段による検査結果を前記被検者のルイス式血液型として取得することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記ABO式/ルイス式分析基準値範囲は、それぞれに共通の共通基準値範囲を含むABO式血液型およびルイス式血液型の組み合わせ毎の基準値範囲を有しており、前記取得手段は、前記測定値が前記基準値範囲内でありかつ前記共通基準値範囲外の場合に、前記ルイス式検査手段にルイス式血液型の検査測定の実施を指示する第2の指示手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検体中のアルカリホスファターゼの濃度を測定した測定値を、被検者の血液型の血液型種類に応じた適切な分析基準値を用いて分析できる。したがって、検体中のアルカリホスファターゼの分析精度を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における自動分析システム1の構成を示す模式図である。本実施の形態では、本発明の自動分析装置を、複数のユニットで構成された自動分析システムとして説明する。図1に示すように、自動分析システム1は、検体供給ユニット11、測定手段としての生化学分析ユニット13、ABO式血液型検査手段またはルイス式血液型検査手段としての血液型検査ユニット15、検体回収ユニット17等を供え、各ユニット間に搬送レーン19が配設されて構成されている。また、自動分析システム1は、装置を構成する各部を制御し、各部への動作タイミングの指示やデータの転送等を行って装置全体の動作を統括的に制御する統括制御部31を備える。この統括制御部31は、ネットワークNを介して病院等に設置されたホストコンピュータ3と接続されている。ホストコンピュータ3は、患者や健康診断の受診者等の被検者から採取した血液や尿等の検体について行った過去の分析情報を管理しており、このホストコンピュータ3で管理される分析情報は、被検者について過去に行ったABO式やSe式等の血液型の検査結果(血液型情報)を含む。
【0018】
検体供給ユニット11には、分析対象の検体(血液)を収容した検体容器21が搭載された検体ラック20が載置される。この検体供給ユニット11に載置された各検体ラック20は、統括制御部31の制御のもと、順次搬送レーン19に供給され、生化学分析ユニット13や血液型検査ユニット15に搬送される。
【0019】
生化学分析ユニット13は、試薬と検体とを反応容器14に分注し、反応容器14内で生じた反応を光学的に測定する公知の自動分析装置によって構成される。具体的には、生化学分析ユニット13は、分析項目に応じた第1試薬や第2試薬を収納する試薬収納庫131,132、反応容器14を載置する反応テーブル133、反応容器14内に第1試薬を分注する第1試薬分注部134や反応容器14内に第2試薬を分注する第2試薬分注部135、検体供給ユニット11から供給されて搬送レーン19上を搬送される検体ラック20上の検体容器21から反応容器14内に検体を分注する検体分注部136、反応容器14内に分析光を照射して光学的に測定する測定光学系137等を備える。
【0020】
また、生化学分析ユニット13には、搬送レーン19上を搬送される検体ラック20およびこの検体ラック20に搭載された検体容器21に貼付されているバーコード(図示略)を読み取って検体情報を取得するバーコードリーダ138が設置されており、読み取った検体情報を制御部139に出力する。検体情報は、検体容器21に収容された検体に関する情報または検体ラック20に搭載された検体容器21に関する情報であり、このバーコードリーダ138によって取得された検体情報によって各検体容器21内の検体が認識され、この検体に対して行う分析項目が判別される。各検体容器21内の検体は、このようにして判別される分析項目をもとに生化学分析ユニット13にて分析処理される。
【0021】
この生化学分析ユニット13は、制御部139の制御のもと、検体の測定処理を行う。本実施の形態では、検体である血液(血清)中に含まれるアルカリホスファターゼ(血清アルカリホスファターゼ:以下、単に「ALP」と称す。)の濃度を測定する処理を行ってALP測定を実施する。ALP測定結果(測定値)は、その検体番号とともに統括制御部31に出力され、この統括制御部31と接続された分析部33で分析される。
【0022】
血液型検査ユニット15は、希釈した血液検体と試薬とを反応容器16に定量分注し、恒温状態を所定時間維持した後、その抗原抗体反応によって反応容器16内に形成される凝集パターンを判定する公知の輸血検査装置によって構成される。具体的には、血液型検査ユニット15は、搬送レーン19上を搬送される検体ラック20上の検体容器21から反応容器16内に検体を分注する検体分注部151、検体と抗原抗体反応を起こす各種の試薬を収納する試薬収納庫152、反応容器16内に試薬を分注する試薬分注部153、反応容器16内に形成された凝集反応パターンを撮像するCCDカメラ等で構成される撮像部154等を備える。
【0023】
また、血液型検査ユニット15には、搬送レーン19上を搬送される検体ラック20およびこの検体ラック20に搭載された検体容器21に貼付されているバーコード(図示略)を読み取って検体情報を取得するバーコードリーダ155が設置されており、生化学分析ユニット13に設置されたバーコードリーダ138と同様に、読み取った検体情報を制御部157に出力する。これによって、各検体容器21内の検体が認識される。
【0024】
この血液型検査ユニット15は、制御部157の制御のもと、検体のABO式やルイス式の各血液型を検査測定する処理を行ってABO式検査測定やルイス式検査測定を実施する。そして、ABO式検査測定結果やルイス式検査測定結果として得られた画像情報を画像処理し、凝集反応パターンを検出・判定することによって被検者の血液型の判定を行い、検査結果をその検体番号とともに統括制御部31に出力する。
【0025】
検体回収ユニット17は、統括制御部31の制御のもと、搬送レーン19の終端まで搬送された検体ラック20を回収して収納する。
【0026】
統括制御部31は、マイクロコンピュータ等で構成され、装置内の適所に収められる。この統括制御部31は、取得手段、第1の指示手段および第2の取得手段に相当する機能部である。また、統括制御部31は、分析手段としての分析部33、入力部35、出力部37、記憶部39と接続されている。
【0027】
分析部33には、生化学分析ユニット13による測定結果が適宜入力される。本実施の形態では、生化学分析ユニット13で測定されたALP測定結果が入力されるとともに、検体の被検者の血液型情報が適宜入力される。分析部33は、検体中のALPの濃度を分析する。このとき、ALP測定結果とともに血液型情報が入力された場合には、この血液型情報に応じた分析基準値範囲であるALP判定基準範囲を用いて分析を行い、分析結果を統括制御部31に出力する。
【0028】
入力部35は、各検体に対する分析項目の設定や、分析に必要な各種の情報を入力するためのものであり、キーボードやマウス等の入力装置で構成される。
【0029】
出力部37は、分析結果画面や警告表示画面、各種設定入力のための入力画面等を表示するためのLCDやELD等のディスプレイ、測定結果や分析結果を印刷するためのプリンタといった出力装置で構成される。
【0030】
記憶部39は、更新記憶可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵或いはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記憶媒体及びその読取装置等によって実現されるものであり、分析結果の他、自動分析システム1の動作に必要な各種プログラムや、これらプログラムの実行にかかるデータ等が格納される。また、記憶部39には、ALP判定基準範囲データ40が格納される。
【0031】
そして、統括制御部31は、生化学分析ユニット13によるALP測定や、血液型検査ユニット15による血液型検査測定の実施を制御する。図2は、統括制御部31による処理手順の概要を説明する説明図である。統括制御部31は、ALP測定依頼を受け付けた際に、ホストコンピュータ3にアクセスして被検者名等を送信し、ABO式血液型やSe式血液型の血液型情報を問い合わせる(A1)。これに応答してホストコンピュータ3では、該当する被検者の血液型情報が管理されていれば、この血液型情報を問い合わせ結果として統括制御部31に送信し、管理されていなければ、問い合わせ結果を血液型情報なしとして統括制御部31に送信する(A3)。また、統括制御部31は、生化学分析ユニット13にALP測定の実施を指示し(A5)、生化学分析ユニット13からALP測定結果を取得するとともに(A7)、必要に応じて血液型検査ユニット15にABO式血液型やルイス式血液型の検査測定の実施を指示し(A9)、血液型検査ユニット15から検査結果を取得する(A11)。そして、統括制御部31は、生化学分析ユニット13から取得したALP測定結果を、ホストコンピュータ3から受信して取得した血液型情報や血液型検査ユニット15から取得した検査結果である血液型情報とともに分析部33に通知し(A13)、分析部33での分析結果を取得する(A15)。
【0032】
ここで、ALP測定結果の分析は、ALP測定結果がALP判定基準範囲内か範囲外かで正常/異常を判定することによって行われるが、統括制御部31は、ホストコンピュータ3からまたは血液型検査ユニット15から取得した血液型情報をもとに、分析部33がALP測定結果を分析する際に用いるALP判定基準範囲を決定する。本実施の形態では、予めABO式、Se式およびルイス式の各血液型種類に応じたALP判定基準範囲を設定したテーブルが記憶部39にALP判定基準範囲データ40として記憶されており、統括制御部31は、取得した血液型情報に応じてALP判定基準範囲のテーブルを選択する。図3は、ALP判定基準範囲データ40のデータ構成例を示す図である。図3に示すように、ALP判定基準範囲データ40は、ABO式/Se式分析基準値範囲であるABO式/Se式テーブル41と、ABO式/ルイス式分析基準値範囲であるABO式/ルイス式テーブル42と、ABO式テーブル43と、Se式テーブル44と、ルイス式テーブル45と、血液型不明検体判定テーブル46とを備える。各テーブルの基準値は、入力部35よりオペレータによる設定が可能である。予め設定されていた基準値を用いることも可能であり、施設独自の基準値を用いることも可能である。
【0033】
図4は、ABO式/Se式テーブル41のデータ構成例を示す図である。また、図5は、このABO式/Se式テーブル41に設定されているALP判定基準範囲をグラフ化した図である。ABO式/Se式テーブル41は、ABO式血液型とSe式血液型とを組み合わせて定めたALP判定基準範囲を設定したデータテーブルである。すなわち、図4に示すように、ABO式血液型およびSe式血液型の組み合わせと対応付けてALP判定基準範囲(IU/L)の上限値および下限値が設定されたデータテーブルであって、ABO式血液型およびSe式血液型の組み合わせ毎に上限値および下限値によって定まる基準値範囲が設定されている。各基準値範囲は、それぞれに共通の共通基準値範囲である共通正常値範囲(150〜210(IU/L))および共通異常値範囲(110(IU/L)未満または270(IU/L)以上)を含む。このABO式/Se式テーブル41には、ABO式血液型の“B型”および“O型”については、Se式血液型が“分泌型”か“非分泌型”かによって異なるALP判定基準範囲が設定されている。一方、ABO式血液型の“A型”および“AB型”については、Se式血液型が“分泌型”か“非分泌型”かに関わらず同じALP判定基準範囲が設定されている。具体的には、被検者のABO式血液型およびSe式血液型が判明している場合のALP測定では、図5に示すように、ABO式血液型が“A型”または“AB型”の場合、測定値が110〜210(IU/L)の範囲内であれば正常、範囲外であれば異常と判定する。これに対し、ABO式血液型が“B型”または“O型”の場合、Se式血液型が“分泌型”か“非分泌型”かによって正常と判定する測定値の幅が異なる。すなわち、Se式血液型が“分泌型”の場合には、測定値が150〜270(IU/L)の範囲内か範囲外かによって正常/異常が判定され、“非分泌型”の場合には、測定値が110〜210(IU/L)の範囲内か範囲外かによって正常/異常を判定する。
【0034】
ところで、Se式血液型は、例えば唾液中のA,B,Hの3つの血液型物質を分析することで検査できるが、臨床検査の現場では得られないことが多く、またSe式血液型の検査測定を行う装置も流通していないのが現状である。このため、ホストコンピュータ3においてこのSe式血液型が管理されている場合は少ない。一方で、Se式血液型(分泌型か非分泌型か)は、ルイス式血液型によって概ね(90%程度)判別できる。図6は、Se式血液型とルイス式血液型の対応関係を示した図である。したがって、本実施の形態では、ホストコンピュータ3への問い合わせの結果Se式血液型のデータがなく不明の場合には、ABO式血液型とルイス式血液型とを組み合わせて定めたALP判定基準範囲を設定したABO式/ルイス式テーブル42を選択してALP判定基準範囲を決定する。
【0035】
図7は、ABO式/ルイス式テーブル42のデータ構成例を示す図である。図7に示すように、ABO式/ルイス式テーブル42は、ABO式血液型およびルイス式血液型の組み合わせと対応付けてALP判定基準範囲の上限値および下限値の組み合わせが設定されたデータテーブルであり、ABO式血液型およびルイス式血液型の組み合わせ毎に上限値および下限値によって定まる基準値範囲が設定されている。各基準値範囲は、それぞれに共通の共通正常値範囲(150〜210(IU/L))および共通異常値範囲(110(IU/L)未満または270(IU/L)以上)を含む。このABO式/ルイス式テーブル42には、ABO式血液型の“B型”と“O型”については、ルイス式血液型が“Le(a+b−)”か“Le(a−b+)”か“Le(a−b−)”かによって異なるALP判定基準範囲が設定されている。
【0036】
なお、検体の被検者のABO式血液型およびルイス式血液型は血液型検査ユニット15で検査できるが、本実施の形態の自動分析システム1では、血液型検査ユニット15におけるABO式およびルイス式の各血液型の検査測定の実施の有無を、ユーザ操作に従って決定することとしている。このため、最終的に取得した血液型がABO式、ルイス式およびSe式のいずれか1つの場合には、その血液型に応じてABO式テーブル43、Se式テーブル44またはルイス式テーブル45を選択してALP判定基準範囲を決定する。
【0037】
図8は、ABO式テーブル43のデータ構成例を示す図である。図8に示すように、ABO式テーブル43は、ABO式血液型に応じたALP判定基準範囲を設定したデータテーブルであり、ABO式血液型毎に上限値および下限値によって定まる基準値範囲が設定されている。各基準値範囲は、それぞれに共通の共通正常値範囲(110〜210(IU/L))および共通異常値範囲(110(IU/L)未満または270(IU/L)以上)を含む。
【0038】
図9は、Se式テーブル44のデータ構成例を示す図である。Se式テーブル44は、Se式血液型に応じたALP判定基準範囲を設定したデータテーブルであり、図9に示すように、Se式血液型毎に上限値および下限値によって定まる基準値範囲が設定されている。各基準値範囲は、それぞれに共通の共通正常値範囲(110〜210(IU/L))および共通異常値範囲(110(IU/L)未満または270(IU/L)以上)を含む。
【0039】
図10は、ルイス式テーブル45のデータ構成例を示す図である。ルイス式テーブル45は、ルイス式血液型に応じたALP判定基準範囲を設定したデータテーブルであり、図10に示すように、ルイス血液型毎に上限値および下限値によって定まる基準値範囲が設定されている。各基準値範囲は、それぞれに共通の共通正常値範囲(110〜210(IU/L))および共通異常値範囲(110(IU/L)未満または270(IU/L)以上)を含む。
【0040】
また、ALP判定基準範囲データ40は、例えばいずれの血液型情報も取得できず被検者の血液型が不明の場合や、測定値が共通正常値範囲内または共通異常値範囲内の場合等に用いる血液型不明検体判定テーブル46を備えている。図11は、血液型不明検体判定テーブル46のデータ構成例を示す図である。この血液型不明検体判定テーブル46は、測定値と、ALP測定結果として該当する測定値が得られた場合に出力する分析結果とを対応付けたデータテーブルである。統括制御部31が血液型不明検体判定テーブル46を用いると決定した場合には、分析部33は、図11に示すように、ALP測定結果(測定値)に応じた分析結果を出力する。
【0041】
例えば、ABO式/Se式テーブル41を例にとれば、図5に示したように、各基準値範囲は、それぞれに共通の共通正常値範囲(150〜210(IU/L))を含み、測定値が共通正常値範囲内であれば、血液型に関わらず正常と判定できる。したがって、測定値が共通正常値範囲内の場合には、統括制御部31は、この血液型不明検体判定テーブル46を用いて分析結果を「正常」と出力する(レコードR15)。また、測定値が共通異常値範囲(110(IU/L)未満または270(IU/L)以上)内の場合には、血液型に関わらず測定値を異常と判定できる。したがって、測定値が共通異常値範囲内の場合には、統括制御部31は、この血液型不明検体判定テーブル46を用いて分析結果を「異常」と出力する(レコードR11,R19)。このようにすることで、ホストコンピュータ3への問い合わせの結果ABO式血液型のデータがなく不明の場合であっても、測定値がこれらの共通正常値範囲または共通異常値範囲内の場合には、血液型検査ユニット15がABO式血液型の検査測定を実施しなくてよい。換言すれば、血液型によって測定値の正常/異常の判定結果が異なる場合、すなわち、測定値が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外(より詳細には、正常値の範囲内であって共通正常値範囲外かつ異常値の範囲内であって共通異常値範囲外)の場合にのみ、血液型検査ユニット15がABO式血液型の検査測定を実施する。したがって、血液型の検査測定に用いる試薬を無駄に消費することがなく、また分析に要する時間も短縮できる。なお、ここでは、ABO式/Se式テーブル41に着目して説明したが、これ以外のテーブルを用いる場合も同様である。
【0042】
一方、被検者の血液型が不明の場合、測定値が110(IU/L)〜150(IU/L)、あるいは210(IU/L)〜270(IU/L)の範囲内だと測定値の正常/異常が判定できない。この場合には、統括制御部31は、この血液型不明検体判定テーブル46を用い、測定値を血液型と照合して正常/異常を判定する必要がある旨出力する(レコードR13,R17)。これにより、ABO式やSe式、ルイス式の各血液型が不明の場合に、測定値の正常/異常の判定が正確にできない場合を警告(報知)することができる。
【0043】
次に、自動分析システム1における検体の分析手順について、図12〜図16に示すフローチャートを参照して説明する。図12に示すように、自動分析システム1では、先ず入力部35を介してユーザ操作による検体のALP測定依頼を受け付ける(ステップS11)。そして、ALP測定依頼を受け付けると、統括制御部31が、ネットワークNを介してホストコンピュータ3にアクセスし、血液型情報の問い合わせを送信する(ステップS13)。ホストコンピュータ3では、被検者の血液型情報の問い合わせを受け付けると、該当する被検者の血液型情報を検索し、管理している被検者のABO式やSe式血液型の血液型情報を統括制御部31に送信する。
【0044】
ホストコンピュータ3からの問い合わせ結果を受信したならば、統括制御部31は、ABO式血液型を判別する(ステップS15)。ABO式血液型が取得のデータがなく不明であれば、図13のステップS39に移行する。ABO式血液型のデータがあり、“A型”または“AB型”の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が、検体のALP測定を実施する(ステップS17)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、図15のステップS105に移行する。
【0045】
ABO式血液型のデータがあり、“B型”または“O型”の場合には、ALP測定結果の分析にSe式血液型のデータが必要である。このため、統括制御部31は、Se式血液型を判別する(ステップS19)。Se式血液型のデータがある場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が、検体のALP測定を実施する(ステップS21)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、統括制御部31が、ABO式/Se式テーブル41を選択してALP測定結果を分析するためのALP判定基準範囲を決定し、分析部33が、ABO式/Se式テーブル41に従ってALP測定結果の正常/異常を判定する分析を行う(ステップS23)。そして、処理を終了する。分析結果は、出力部37から出力され、および/または記憶部39に記憶される。分析の結果、異常と判定された場合には、再検査を実施し、再び異常と判定された場合には、異常として被検者に診断結果が通知される。
【0046】
一方、Se式血液型のデータがなく不明であれば、統括制御部31は、ルイス式検査測定の実施依頼を受け付ける(ステップS25)。この実施依頼の受付は、その都度入力部35を介してユーザ操作を受け付けてもよいし、分析開始前に事前にユーザ操作を受け付けて設定しておくこととしてもよい。実施しない場合には、図16のステップS111に移行する。
【0047】
実施する場合であれば、統括制御部31は、測定優先順位の設定を判定する(ステップS27)。このとき、入力部35を介して入力されるユーザ操作に従って測定優先順位の設定を判定する。具体的には、ALP測定を優先して行う「ALP測定優先」とALP測定およびルイス式検査測定を同時に行う「同時」を選択肢として提示し、いずれか1つの選択肢の選択を受け付ける。なお、分析開始前に事前にユーザ操作を受け付けて測定優先順位を設定しておくこととしてもよい。ここで、「ALP測定優先」を選択した場合、ALP測定結果が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合にルイス式検査測定を実施し、共通正常値範囲内または共通異常値範囲内の場合にはルイス検査測定を実施しない。このため、試薬の無駄な消費を防止できる。また、「同時」を選択した場合には必ずルイス式検査測定を実施するが、双方の測定を同時に実施しているので、測定値が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合に分析に要する時間を短縮できる。
【0048】
測定優先順位の設定が「同時」の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知するとともに、検体のルイス式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が検体のALP測定を実施し、血液型検査ユニット15が検体のルイス式検査測定を実施する(ステップS29)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知され、血液型検査ユニット15からルイス式検査測定結果が通知されると、ステップS37に移行する。
【0049】
また、測定優先順位の設定が「ALP測定優先」の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が、検体のALP測定を実施する(ステップS31)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、統括制御部31は、測定値が110〜150(IU/L)または210〜270(IU/L)の範囲内か否かを判定する。範囲外の場合には(ステップS33:No)、図15のステップS87に移行する。範囲内、すなわち共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外ならば(ステップS33:Yes)、統括制御部31は、ルイス式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のルイス式検査測定を実施する(ステップS35)。血液型検査ユニット15からルイス式検査測定結果が通知されると、ステップS37に移行する。これにより、測定値が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合にルイス式検査測定を実施できる。したがって、不要な測定を行わず、試薬の無駄な消費もない。
【0050】
ステップS37では、統括制御部31が、ABO式/ルイス式テーブル42を選択してALP測定結果を分析するためのALP判定基準範囲を決定し、分析部33が、ABO式/ルイス式テーブル42に従ってALP測定結果を分析する。そして、処理を終了する。
【0051】
図13のステップS39では、統括制御部31は、ABO式検査測定の実施依頼を受け付け、実施しない場合には、図14のステップS53に移行する。実施する場合であれば、統括制御部31は、Se式血液型を判別する(ステップS41)。Se式血液型のデータがなく不明であれば、図15のステップS77に移行する。また、Se式血液型のデータがあり、“非分泌型”の場合には、図14のステップS55に移行する。
【0052】
そして、Se式血液型のデータがあり、“分泌型”の場合には、測定優先順位の設定を判定する(ステップS43)。このとき、入力部35を介して入力されるユーザ操作に従って測定優先順位の設定を判定する。具体的には、ALP測定を優先して行う「ALP測定優先」とALP測定およびABO式検査測定を同時に行う「同時」を選択肢として提示し、いずれか1つの選択肢の選択を受け付ける。なお、分析開始前に事前にユーザ操作を受け付けて測定優先順位を設定しておくこととしてもよい。ここで、「ALP測定優先」を選択した場合、ALP測定結果が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合にABO式検査測定を実施し、共通正常値範囲内または共通異常値範囲内の場合にはABO検査測定を実施しない。このため、試薬の無駄な消費を防止できる。また、「同時」を選択した場合には必ずABO式検査測定を実施するが、双方の測定を同時に実施しているので、測定値が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合に分析に要する時間を短縮できる。
【0053】
測定優先順位の設定が「同時」の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知するとともに、ABO式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が検体のALP測定を実施し、血液型検査ユニット15が検体のABO式検査測定を実施する(ステップS45)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知され、血液型検査ユニット15からABO式検査測定結果が通知されると、図12のステップS23に移行する。
【0054】
また、測定優先順位の設定が「ALP測定優先」の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が、検体のALP測定を実施する(ステップS47)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、統括制御部31は、測定値が110〜150(IU/L)または210〜270(IU/L)の範囲内か否かを判定する。範囲外の場合には(ステップS49:No)、図15のステップS87に移行する。範囲内、すなわち共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外ならば(ステップS49:Yes)、統括制御部31は、ABO式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のABO式検査測定を実施する(ステップS51)。血液型検査ユニット15からABO式検査測定結果が通知されると、図12のステップS23に移行する。これにより、測定値が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合にABO式検査測定を実施できる。したがって、不要な測定を行わず、試薬の無駄な消費もない。
【0055】
図14のステップS53では、Se式血液型を判別する。Se式血液型のデータがあれば、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が、検体のALP測定を実施する(ステップS55)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、統括制御部31が、Se式テーブル44を選択してALP測定結果を分析するためのALP判定基準範囲を決定し、分析部33が、Se式テーブル44に従ってALP測定結果を分析する(ステップS57)。そして、処理を終了する。
【0056】
Se式血液型のデータがなく不明の場合には、統括制御部31は、ルイス式検査測定の実施依頼を受け付ける(ステップS59)。実施しない場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が、検体のALP測定を実施する(ステップS61)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、統括制御部31が、血液型不明検体判定テーブル46を選択してALP測定結果を分析するためのALP判定基準範囲を決定し、分析部33が、血液型不明検体判定テーブル46に従ってALP測定結果を分析する(ステップS63)。
【0057】
ルイス式検査を実施する場合には、統括制御部31は、測定優先順位の設定を判定する(ステップS65)。測定優先順位の設定が「同時」の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知するとともに、ルイス式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が検体のALP測定を実施し、血液型検査ユニット15が検体のルイス式検査測定を実施する(ステップS67)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知され、血液型検査ユニット15からルイス式検査測定結果が通知されると、ステップS75に移行する。
【0058】
また、測定優先順位の設定が「ALP測定優先」の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が、検体のALP測定を実施する(ステップS69)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、統括制御部31は、測定値が210〜270(IU/L)の範囲内か否かを判定する。範囲外の場合には(ステップS71:No)、図15のステップS87に移行する。範囲内、すなわち共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外ならば(ステップSS71:Yes)、統括制御部31は、ルイス式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のルイス式検査測定を実施する(ステップS73)。血液型検査ユニット15からルイス式検査測定結果が通知されると、ステップS75に移行する。これにより、測定値が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合にルイス式検査測定を実施できる。したがって、不要な測定を行わず、試薬の無駄な消費もない。
【0059】
ステップS75では、統括制御部31が、ルイス式テーブル45を選択してALP測定結果を分析するためのALP判定基準範囲を決定し、分析部33が、ルイス式テーブル45に従ってALP測定結果を分析する。そして、処理を終了する。
【0060】
図15のステップS77では、統括制御部31は、ルイス式検査測定の実施依頼を受け付ける。実施しない場合には、図16のステップS107に移行する。
【0061】
ルイス式検査を実施する場合には、統括制御部31は、測定優先順位の設定を判定する(ステップS79)。測定優先順位の設定が「同時」の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知するとともに、ABO式検査測定およびルイス式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が検体のALP測定を実施し、血液型検査ユニット15が検体のABO式検査測定およびルイス式検査測定を実施する(ステップS81)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知され、血液型検査ユニット15からABO式検査測定結果およびルイス式検査測定結果が通知されると、ステップS105に移行する。
【0062】
また、測定優先順位の設定が「ALP測定優先」の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が検体のALP測定を実施する(ステップS83)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、統括制御部31は、測定値が110〜150(IU/L)または210〜270(IU/L)の範囲内か否かを判定する。範囲外の場合には(ステップS85:No)、統括制御部31が、血液型不明検体判定テーブル46を選択してALP測定結果を分析するためのALP判定基準範囲を決定し、分析部33が、血液型不明検体判定テーブル46に従ってALP測定結果を分析する(ステップS87)。そして、処理を終了する。
【0063】
測定値が110〜150(IU/L)または210〜270(IU/L)の範囲内、すなわち共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合には(ステップS85:Yes)、統括制御部31は、測定優先順位の設定を判定する(ステップS89)。これにより、測定値が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合にABO式検査測定およびABO式検査測定を実施できる。したがって、不要な測定を行わず、試薬の無駄な消費もない。このとき、入力部35を介して入力されるユーザ操作に従って測定優先順位の設定を判定する。具体的には、ABO式検査測定を優先して行う「ABO式検査測定優先」とルイス式検査測定を優先して行う「ルイス式検査測定優先」とABO式検査測定およびルイス式検査測定を同時に行う「同時」を選択肢として提示し、いずれか1つの選択肢の選択を受け付ける。なお、分析開始前に事前にユーザ操作を受け付けて測定優先順位を設定しておくこととしてもよい。ここで、「ルイス式検査測定優先」を選択した場合、ルイス式検査測定結果に応じて必要があれば(“Le(a)+”でなければ)ABO式検査測定を実施する。「ABO式検査測定優先」を選択した場合、ABO式検査測定結果に応じて必要があれば(“B型”または“O型”ならば)ルイス式検査測定を実施する。このため、試薬の無駄な消費を防止できる。また、「同時」を選択した場合には必ずABO式検査測定およびルイス式検査測定を実施するが、双方の測定を同時に実施しているので、ルイス式血液型が“Le(a)+”でない場合やABO式血液型が“B型”または“O型”であった場合に、分析に要する時間を短縮できる。
【0064】
測定優先順位の設定が「ルイス式検査測定優先」の場合には、統括制御部31は、ルイス式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のルイス式検査測定を実施する(ステップS91)。血液型検査ユニット15からルイス式検査測定結果が通知されると、先ず分析部33が測定結果を分析してルイス式の血液型を判別する。この判別の結果、ルイス式の血液型が“Le(a)+”であれば(ステップS93:Yes)、図14のステップS75に移行する。一方、ルイス式の血液型が“Le(a)+”でない場合には(ステップS93:No)、統括制御部31は、ABO式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のABO式検査測定を実施する(ステップS95)。血液型検査ユニット15からABO式検査測定結果が通知されると、ステップS105に移行する。
【0065】
また、測定優先順位の設定が「同時」の場合には、統括制御部31は、ABO式検査測定およびルイス式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のABO式検査測定およびルイス式検査測定を実施する(ステップS97)。血液型検査ユニット15からABO式検査測定結果およびルイス式検査測定結果が通知されると、ステップS105に移行する。
【0066】
また、測定優先順位の設定が「ABO式検査測定優先」の場合には、統括制御部31は、ABO式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のABO式検査測定を実施する(ステップS99)。血液型検査ユニット15からABO式検査測定結果が通知されると、先ず、分析部33が測定結果を分析してABO式の血液型を判別する。この判別の結果、ABO式の血液型が“A型”または“AB型”であれば(ステップS101:Yes)、ステップS105に移行する。“A型”または“AB型”でない場合には(ステップS101:No)、統括制御部31は、ルイス式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のルイス式検査測定を実施する(ステップS103)。血液型検査ユニット15からルイス式検査測定結果が通知されると、ステップS105に移行する。
【0067】
ステップS105では、統括制御部31が、ABO式/ルイス式テーブル42を選択してALP測定結果を分析するためのALP判定基準範囲を決定し、分析部33が、ABO式/ルイス式テーブル42に従って分析を行う。そして、処理を終了する。
【0068】
図16のステップS107では、統括制御部31は、測定優先順位の設定を判定する。測定優先順位の設定が「同時」の場合には、統括制御部31は、ABO式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のABO式検査測定を実施する(ステップS109)。また、統括制御部31は、血液型検査ユニット15へのABO式検査測定の実施の通知と同時に、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が、ALP測定を実施する(ステップS111)。血液型検査ユニット15からABO式検査測定結果が通知され、生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、ステップS119に移行する。
【0069】
また、測定優先順位の設定が「ALP測定優先」の場合には、統括制御部31は、ALP測定の実施を生化学分析ユニット13の制御部139に通知する。これに応答して生化学分析ユニット13が、検体のALP測定を実施する(ステップS113)。生化学分析ユニット13からALP測定結果が通知されると、統括制御部31は、測定値が110〜150(IU/L)または210〜270(IU/L)の範囲内か否かを判定する。範囲外の場合には(ステップS115:No)、図15のステップS87に移行する。範囲内、すなわち共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外ならば(ステップS115:Yes)、統括制御部31は、ABO式検査測定の実施を血液型検査ユニット15の制御部157に通知する。これに応答して血液型検査ユニット15が、検体のABO式検査測定を実施する(ステップS117)。血液型検査ユニット15からABO式検査測定結果が通知されると、ステップS119に移行する。これにより、測定値が共通正常値範囲外かつ共通異常値範囲外の場合にABO式検査測定を実施できる。したがって、不要な測定を行わず、試薬の無駄な消費もない。
【0070】
ステップS119では、統括制御部31が、ABO式テーブル43を選択してALP測定結果を分析するためのALP判定基準範囲を決定し、分析部33が、ABO式テーブル43に従って分析を行う。そして、処理を終了する。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態によれば、被検者の血液型に応じたALP判定基準範囲を用いてALP測定結果を分析することができるので、測定値のより正確な正常/異常判定が実現でき、分析精度が向上する。また、判明している被検者の血液型に応じたALP判定基準範囲を用いた自動的な分析が実現でき、ユーザの手間を軽減できるとともに、ヒューマンエラーを低減できる。
【0072】
さらに、必要に応じてABO式検査測定やルイス式検査測定を実施することができるので、試薬を無駄に消費せずに分析効率も向上する。このとき、被検者のABO式血液型とSe式血液型とが判明している場合には、ABO式血液型とSe式血液型とを組み合わせて定めたALP判定基準範囲を設定したABO式/Se式テーブル41を用いて測定値の分析が行えるので、より一層分析精度を向上させることができる。また、ホストコンピュータ3への問い合わせの結果Se式血液型のデータがなく不明の場合であれば、ルイス式血液型を代用し、ABO式血液型とルイス式血液型とを組み合わせて定めたALP判定基準範囲を設定したABO式/ルイス式テーブル42を用いて測定値を分析できるので、分析精度を良好に保てる。
【0073】
なお、上記した実施の形態では、ホストコンピュータ3に血液型情報の問い合わせを行ってABO式血液型やSe式血液型の血液型情報を取得する場合について説明したが、ルイス式の血液型情報を管理している場合には、これを取得する構成としてもよい。この場合には、統括制御部は、ホストコンピュータ3への問い合わせの結果ルイス式血液型のデータがなく不明の場合に、ルイス式検査測定の実施依頼を受け付ける処理を行う。
【0074】
また、上記した実施の形態では、最初にホストコンピュータ3への問い合わせを行って被検者の血液型情報を取得する場合について説明したが、先ずALP測定を行って、得られたALP測定結果(測定値)に応じて適宜問い合わせを行う構成としてもよい。これによれば、血液型に関わらずALP測定結果が分析できる場合(測定値が共通正常値範囲内の場合や共通異常値範囲内の場合)には、問い合わせ処理を行わなくて済む。
【0075】
また、血液型検査ユニット15から取得した血液型の検査結果を被検者名等とともにホストコンピュータ3に送信する構成としてもよい。これによれば、血液型検査ユニット15での検査結果をホストコンピュータ3において新たな分析情報として管理できる。
【0076】
また、上記した実施の形態では、生化学分析ユニット13と血液型検査ユニット15とを連結して自動分析システム1を構成し、血液型検査ユニット15において検体のABO式血液型および/またはルイス式血液型を検査測定する場合について説明したが、血液型検査ユニット15に換えて免疫分析用の自動分析装置で構成される免疫分析ユニットを配置し、この免疫分析ユニットにおいてABO式血液型および/またはルイス式血液型を検査測定することとしてもよい。この場合には、統括制御部は、生化学分析ユニットによるALP測定や、免疫分析ユニットによる血液型検査測定の実施を制御する。図17は、この変形例における統括制御部31bによる処理手順の概要を説明する説明図である。統括制御部31bは、ALP測定依頼を受け付けた際に、ホストコンピュータ3にアクセスして被検者名等を送信し、ABO式血液型やSe式血液型、ルイス式血液型の血液型情報を問い合わせる(A1)。これに応答してホストコンピュータ3では、該当する被検者の血液型情報が管理されていれば、この血液型情報を問い合わせ結果として統括制御部31bに送信し、管理されていなければ、問い合わせ結果を血液型情報なしとして統括制御部31bに送信する(A3)。また、統括制御部31bは、生化学分析ユニット13にALP測定の実施を指示し(A5)、生化学分析ユニット13からALP測定結果を取得するとともに(A7)、必要に応じて免疫分析ユニット23にABO式血液型および/またはルイス式血液型の検査測定の実施を指示し(A17)、免疫分析ユニット23からABO式血液型および/またはルイス式血液型の検査結果を取得する(A19)。そして、統括制御部31bは、生化学分析ユニット13から取得したALP測定結果を、ホストコンピュータ3から受信して取得した血液型情報や免疫分析ユニット23から取得した検査結果である血液型情報とともに分析部33に通知し(A13)、分析部33での分析結果を取得する(A15)。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】自動分析システムの構成を示す模式図である。
【図2】統括制御部による処理手順の概要を説明する説明図である。
【図3】ALP判定基準範囲データのデータ構成例を示す図である。
【図4】ABO式/Se式テーブルのデータ構成例を示す図である。
【図5】ABO式/Se式テーブルに設定されているALP判定基準範囲をグラフ化した図である。
【図6】Se式血液型とルイス式血液型の対応関係を示した図である。
【図7】ABO式/ルイス式テーブルのデータ構成例を示す図である。
【図8】ABO式テーブルのデータ構成例を示す図である。
【図9】Se式テーブルのデータ構成例を示す図である。
【図10】ルイス式テーブルのデータ構成例を示す図である。
【図11】血液型不明検体判定テーブルのデータ構成例を示す図である。
【図12】自動分析システムにおける検体の分析手順を示すフローチャートである。
【図13】自動分析システムにおける検体の分析手順を示すフローチャートである。
【図14】自動分析システムにおける検体の分析手順を示すフローチャートである。
【図15】自動分析システムにおける検体の分析手順を示すフローチャートである。
【図16】自動分析システムにおける検体の分析手順を示すフローチャートである。
【図17】変形例における統括制御部の処理手順の概要を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1 自動分析システム
11 検体供給ユニット
13 生化学分析ユニット
139 制御部
15 血液型検査ユニット
157 制御部
17 検体回収ユニット
19 搬送レーン
20 検体ラック
21 検体容器
31 統括制御部
33 分析部
35 入力部
37 出力部
39 記憶部
40 ALP判定基準範囲データ
41 ABO式/Se式テーブル
42 ABO式/ルイス式テーブル
43 ABO式テーブル
44 Se式テーブル
45 ルイス式テーブル
46 血液型不明検体判定テーブル
3 ホストコンピュータ
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者から採取した検体中のアルカリホスファターゼの濃度を測定する測定手段と、
前記被検者のABO式血液型、Se式血液型およびルイス式血液型の少なくともいずれか1つの血液型種類の血液型を取得する取得手段と、
前記測定手段によって測定された測定値を、前記取得手段によって取得された血液型の血液型種類に応じた分析基準値範囲を用いて分析する分析手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記分析基準値範囲は、それぞれに共通の共通基準値範囲を含む血液型毎の基準値範囲を有しており、
前記取得手段は、前記測定値が前記基準値範囲内でありかつ前記共通基準値範囲外の場合に前記被検者の血液型の取得を行い、
前記分析手段は、前記測定値が前記基準値範囲内でありかつ前記共通基準値範囲外の場合に、前記測定値を、前記取得手段によって取得された血液型毎の基準値範囲に従って分析することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記被検者のABO式血液型およびSe式血液型を取得し、
前記分析手段は、前記測定値を、ABO式血液型の分析基準値範囲とSe式血液型の分析基準値範囲とを組み合わせて定めたABO式/Se式分析基準値範囲を用いて分析することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記被検者のABO式血液型を検査するABO式血液型検査手段を備え、
前記取得手段は、前記ABO式血液型検査手段による検査結果を前記被検者のABO式血液型として取得することを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記ABO式/Se式分析基準値範囲は、それぞれに共通の共通基準値範囲を含むABO式血液型およびSe式血液型の組み合わせ毎の基準値範囲を有しており、
前記取得手段は、前記測定値が前記基準値範囲内でありかつ前記共通基準値範囲外の場合に、前記ABO式検査手段にABO式血液型の検査測定の実施を指示する第1の指示手段を有することを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記取得手段は、前記被検者の血液型の取得の結果Se式血液型が取得されたか否かを判定し、取得されない場合に前記被検者のルイス式血液型を取得し、
前記分析手段は、前記測定値を、ABO式血液型の分析基準値範囲とルイス式血液型の分析基準値範囲とを組み合わせて定めたABO式/ルイス式分析基準値範囲を用いて分析することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記被検者のルイス式血液型を検査するルイス式血液型検査手段を備え、
前記取得手段は、前記ルイス式血液型検査手段による検査結果を前記被検者のルイス式血液型として取得することを特徴とする請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記ABO式/ルイス式分析基準値範囲は、それぞれに共通の共通基準値範囲を含むABO式血液型およびルイス式血液型の組み合わせ毎の基準値範囲を有しており、
前記取得手段は、前記測定値が前記基準値範囲内でありかつ前記共通基準値範囲外の場合に、前記ルイス式検査手段にルイス式血液型の検査測定の実施を指示する第2の指示手段を有することを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−145225(P2009−145225A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323408(P2007−323408)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】