説明

自動分析装置

【課題】撹拌不良を防ぐことができる自動分析装置の提供。
【解決手段】反応容器62は、サンプルと試薬とが分注される。反応ディスク61は、反応容器62を撹拌位置に移動させる。撮影機108は、反応容器62の内底面を含む撮影領域FRを撮影し、撮影領域FRに関する画像のデータを生成する。画像処理部110は、生成された画像を画像処理して、撹拌位置に移動された反応容器62の内底面の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器中のサンプルと試薬とを撹拌子で撹拌する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、生化学検査項目や免疫血清検査項目を対象とし、サンプルとこのサンプルの検査項目に該当する試薬とを反応容器に分注する。反応容器に分注されたサンプルと試薬との混合液は、撹拌子により撹拌される。撹拌の方法としては、様々な技術がある。例えば、モータの先端部に取り付けられた撹拌子を反応容器内に挿入して回転させることにより混合液を撹拌する。また、特許文献1に記載されている方法は、両面に圧電素子が貼り付けられた金属性の撹拌子を、反応容器内に挿入して振動させることにより混合液を撹拌する。また、特許文献2に記載されている方法は、音波発生体に設けられた撹拌子を反応容器内に挿入し、音波発生体から音波を発生させることにより混合液を撹拌する。
【0003】
一般に、反応容器内での撹拌子の高さによって混合液の撹拌効率が異なる。具体的には、撹拌子が反応容器の内底面に接触せず、内底面に近ければ近いほど混合液を良く撹拌できる。しかしながら、撹拌子の下降量は、容器自体の形状や回転ディスクの水平度誤差によって反応容器毎にその底面の位置がばらつく。また、待機位置(下降開始位置)から反応容器内への撹拌子の下降量は、個々の反応容器の底面位置に応じて変化させることができず一定である。従って全ての反応容器について、撹拌子をその内底面に近づけることは難しい。このため混合液を良く撹拌することができない。すなわち、サンプルと試薬との反応が不均一になり、十分な測定精度が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3135605号公報
【特許文献2】特開2005―257406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、撹拌不良を防ぐことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係る自動分析装置は、サンプルと試薬とが分注される反応容器と、前記反応容器を所定位置に移動させる反応ディスクと、前記所定位置に移動された反応容器の内底面の位置を特定する特定部と、を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撹拌不良を防ぐことができる自動分析装置の提供が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る自動分析装置1の構成を示す図。
【図2】図1の分析部の概略構成を示す図。
【図3】本発明の第1実施例に係る自動分析装置1の撹拌系の主要部構成を図。
【図4】図3の圧電体への印加電圧の周波数、電圧値、液体内での撹拌子の位置、混合液の種類、及び混合液の液量に応じて異なる混合液の撹拌性能を示す図。
【図5】図3の撹拌系により実行される下降制御処理の典型的な流れを示す図。
【図6】図5のステップSA2とステップSA3との処理を説明するための図。
【図7】図3の撹拌アーム制御部の制御に係る、測定項目、試薬名、液量V[μL]、撹拌子の制御方式、電圧E[V]、周波数f[Hz]、撹拌子の内底面からの高さ(所定値)[mm]との一覧を示す図。
【図8】第1実施例の変形例に係る撹拌系の主要部構成を示す図。
【図9】図8の撹拌系により実行される下降制御処理の典型的な流れを示す図。
【図10】図8のステップSB3とステップSB4との処理を説明するための図。
【図11】本発明の第2実施例に係る撹拌系の主要部構成を示す図。
【図12】図11の検出信号処理部による反応容器の内底面の位置と撹拌子先端の位置との特定処理について説明するための図。
【図13】本発明の第3実施例に係る撹拌系の主要部構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置1の構成を示す図である。図1に示すように、自動分析装置1は、分析部10、データ処理部20、出力部30、操作部40、及びシステム制御部50を備える。
【0011】
分析部10は、血清や尿などのサンプルを検査項目毎に試薬を用いて測定し、サンプルに関する測定データを生成する。分析部10は、分析機構11と分析機構制御部12と分析機構駆動部13とを備える。
【0012】
図2は、分析機構11の概略構成を示す図である。図2に示すように、分析機構11は、反応ディスク61を有する。反応ディスク61は、円周上に複数配置された反応容器62を回転可能に保持する。反応容器62は、反応ディスク61内の恒温槽に収容されている。反応ディスク61は、分析サイクル毎に所定角度θ回転し、停止する。これにより反応容器62が所定角度θだけ回転される。
【0013】
また、分析機構11は、サンプル容器63、ディスクサンプラ64、第1試薬容器65、及び第1試薬庫67を有する。サンプル容器63は、標準試料や被検試料等のサンプルを収容する。ディスクサンプラ64は、サンプル容器63を回動可能に保持する。第1試薬容器65は、サンプルに含まれる各検査項目の成分と反応する第1試薬を収容する。第1試薬庫67は、第1試薬容器65を着脱可能且つ回動可能に保持する。
【0014】
また、分析機構11は、第2試薬容器69と第2試薬庫71とを有する。第2試薬容器69は、第1試薬に対応する第2試薬を収容する。第2試薬庫71は、第2試薬容器69を着脱可能且つ回動可能に保持する。
【0015】
さらに、分析機構11は、サンプルプローブ73、第1試薬プローブ75、第2試薬プローブ77、サンプルアーム79、第1試薬アーム81、及び第2試薬アーム83を有する。サンプルプローブ73は、サンプルアーム79の先端に取り付けられている。サンプルアーム79は、サンプルプローブ73を回動可能及び上下動可能に支持している。サンプルプローブ73は、サンプル分注ポンプ(図示せず)により、ディスクサンプラ64上のサンプル吸引位置にあるサンプル容器63からサンプルを吸引し、反応ディスク61上のサンプル吐出位置にある反応容器62にサンプルを吐出する。第1試薬プローブ75は、第1試薬アーム81の先端に取り付けられている。第1試薬アーム81は、第1試薬プローブ75を回動可能及び上下動可能に支持している。第1試薬プローブ75は、第1試薬分注ポンプ(図示せず)により、第1試薬庫67上の第1試薬吸引位置にある第1試薬容器65から第1試薬を吸引し、反応ディスク61上の第1試薬吐出位置にある反応容器62に第1試薬を吐出する。第2試薬プローブ77は、第2試薬アーム83の先端に取り付けられている。第2試薬アーム83は、第2試薬プローブ77を回動可能及び上下動可能に支持している。第2試薬プローブ77は、第2試薬分注ポンプ(図示せず)により、第2試薬庫71上の第2試薬吸引位置にある第2試薬容器69から第2試薬を吸引し、反応ディスク67上の第2試薬吐出位置にある反応容器62に第2試薬を吐出する。
【0016】
また分析機構11は、撹拌機構100、測光機構85、及び洗浄機構87を有する。撹拌機構100は、撹拌アーム102を有する。撹拌アーム102の先端には、撹拌子104が設けられている。撹拌アーム102は、撹拌子104を回動及び上下動可能に支持する。撹拌アーム102は、反応ディスク61上の撹拌位置に反応容器62が停止されると、撹拌子102を待機位置(下降開始位置)から下降させ、反応容器62内に進入させる。そして撹拌子104の先端が反応容器62の内底面の近傍まで到達させると撹拌アーム102は、撹拌子104を停止させる。そして撹拌子104は、振動し、反応容器3内のサンプル及び第1試薬の混合液や、サンプル、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する。撹拌後、撹拌アーム103は、撹拌子104を待機位置まで上昇させる。
【0017】
反応容器62の内底面の位置は、容器自体の形状にばらつきがあることや、反応ディスク61の水平度誤差等により、一つ一つ異なる。本実施形態に係る自動分析装置1の撹拌系は、撹拌子104を下降させるたびに、撹拌位置に配置された反応容器62の内底面の位置を検出し、検出された内底面の位置に応じて撹拌子の下降量を制御する。これにより撹拌系は、個々の反応容器62の内底面の位置のばらつきによらず、常に反応容器62の内底面ぎりぎりまで撹拌子104を下降させることができる。このような撹拌系の構成や下降制御方法の詳細については後述する。
【0018】
測光機構85は、反応ディスク61により回転されている反応容器62に光を照射し、サンプルを含む混合液を透過した光を吸光度に変換してサンプルデータを生成する。そして、測光機構85は、生成されたサンプルデータをデータ処理部20に出力する。
【0019】
洗浄機構87は、支持機構と洗浄ノズルと乾燥ノズルとを有する。支持機構は、洗浄ノズルと乾燥ノズルとをそれぞれ上下移動可能に支持する。洗浄ノズルは、洗浄ポンプにより、反応ディスク61上の洗浄位置にある反応容器62から混合液を吸引し、反応容器62内を洗浄する。乾燥ノズルは、反応ディスク61上の乾燥位置にある反応容器62内を乾燥する。
【0020】
分析機構制御部12は、分析機構駆動部13に制御信号を供給して、制御信号に応じた駆動信号を供給させる。具体的には、分析機構制御部12からの制御信号に従って分析機構駆動部13は、反応ディスク61、ディスクサンプラ64、第1試薬庫67、及び第2試薬庫71をそれぞれ所定のタイミングで所定角度θだけ回転する。また、分析機構駆動部13は、分析機構制御部12からの制御信号に従って、サンプルアーム79、第1試薬アーム81、及び第2試薬アーム83をそれぞれ回動させたり上下動させたりする。また、分析機構駆動部13は、分析機構制御部12からの制御信号に従って、撹拌アーム102や洗浄ノズルをそれぞれ上下動させる。
【0021】
また、分析機構駆動部13は、分析機構制御部12からの制御信号に従って、サンプル分注ポンプを駆動して、サンプルプローブ73にサンプルを吸引させたり、吐出させたりする。また、分析機構駆動部13は、分析機構制御部12からの制御信号に従って第1試薬分注ポンプを駆動して、第1試薬プローブ75に第1試薬を吸引させたり、吐出させたりする。また、分析機構駆動部13は、分析機構制御部12からの制御信号に従って第2試薬分注ポンプを駆動して、第2試薬プローブ77に第2試薬を吸引させたり、吐出させたりする。また、分析機構駆動部13は、分析機構制御部12からの制御信号に従って撹拌子104を振動させ、反応容器62内の混合液を撹拌させる。また、分析機構駆動部13は、分析機構制御部12からの制御信号に従って洗浄ポンプを駆動して、洗浄ノズルに混合液を吸引させたり、洗浄液を吐出させたり、洗浄液を吸引させたりする。また、分析機構駆動部13は、分析機構制御部12からの制御信号に従って乾燥ポンプを駆動して、反応容器62内を乾燥させる。
【0022】
データ処理部20は、分析部10により生成された種々のデータを演算したり、記憶したりする。データ処理部20は、演算部21と記憶部22とを有する。演算部21は、測光機構85により生成された各検査項目の測定データに基づいて検量線を作成し、作成された検量線のデータを記憶部22に記憶させるとともに、出力部30に供給する。また、演算部21は、作成された検量線のデータを利用して測定データから検査項目成分の濃度や活性値等の分析データを生成し、生成された分析データを記憶部22に記憶させるとともに、出力部30に供給する。記憶部22は、ハードディスク等の記憶媒体を備える。記憶部22は、演算部21により生成された検量線のデータを検査項目毎に記憶したり、各検査項目の分析データをサンプル毎に保存したりする。また、記憶部21は、撹拌系により生成された反応容器62の内底面の位置のデータをログとして記憶する。
【0023】
出力部30は、データ処理部20で作成された検量線や生成された分析データを種々の態様で出力する。具体的には、出力部30は、印刷部31と表示部32とを備える。印刷部31としては、プリンタ等の出力デバイスが利用可能である。このプリンタは、データ処理部20から出力された検量線や分析データ、内底面位置等をプリンタ用紙に所定のレイアウトで印刷する。表示部32としては、例えばCRT(cathode-ray tube)ディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機EL(electro luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスが適宜利用可能である。これら表示デバイスは、データ処理部20から出力された検量線や分析データ、内底面位置を表示したり、各検査項目に関するサンプルの液量、第1試薬の液量、第2試薬の液量、測光ビームの波長等の分析条件を設定するための分析条件設定画面、被検体IDや被検体名等を設定するための被検体情報設定画面、サンプル毎の検査項目を選択するための測定項目選択画面等を表示したりする。
【0024】
操作部40は、各検査項目の分析条件の入力や、各種コマンド信号の入力などを行う。具体的には、操作部40は、キーボード、マウス、各種ボタン、タッチキーパネル等の入力デバイスを備える。操作部40は、ユーザからの指示に従って入力デバイスを介して、サンプル毎に測定する検査項目、各検査項目の分析機構条件、被検体情報(例えば、被検体IDや被検体名等)等を入力する。
【0025】
システム制御部50は、自動分析装置1が備える各部を統括して制御する。具体的には、システム制御部50は、CPU(central processing unit)と記憶回路とを備え、操作部40から供給される操作信号、サンプル毎に測定する検査項目、各検査項目の分析条件、被検体情報に基づいて各部を制御する。
【0026】
次に本発明に特有な撹拌系の詳細を第1実施例、第2実施例、及び第3実施例に分けて説明する。
【0027】
(第1実施例)
図3は、本発明の第1実施例に係る自動分析装置1の撹拌系の主要部構成を図である。図3に示すように、反応容器62は、反応ディスク61の恒温槽106内の温水に浸されている。反応容器62は、ガラスやプラスチックのような透明な部材により形成される。反応ディスク61上の撹拌位置においては、撹拌子104が撹拌アーム102により上下動可能に支持されている。撹拌位置における恒温槽106の側面には、撮影機108が取り付けられている。撮影機108としては、例えば、CCD(charge-coupled device)等の光学的撮影機が利用可能である。撮影機108は、反応ディスク61の撹拌位置にある反応容器62の底を撮影できる位置に固定されている。撮影機108は、所定のタイミングで定点撮影し、撹拌位置にある反応容器62の底を含む撮影領域FRを撮影し、撮影された撮影領域FRに関する画像のデータを生成する。この所定のタイミングは、撹拌子104を下降させる前であり、例えば、反応容器62が撹拌位置に停止されたときである。生成された画像のデータは、画像処理部110に供給される。
【0028】
画像処理部110は、撮影機108により生成された画像のデータに2値化等の画像処理をして、反応容器62の内底面の位置を特定する。より具体的には、画像処理部110は、撹拌子104の待機位置HPと内底面との間の距離(以下、待機位置―内底面距離と呼ぶことにする)を特定する。内底面の位置のデータは、撹拌アーム駆動制御部112と記憶部22とに供給される。
【0029】
撹拌アーム制御部112は、画像処理部110により特定された反応容器62の内底面の位置に基づいて、待機位置HPから反応容器62内への撹拌子104の下降量を決定する。そして撹拌アーム制御部112は、決定された下降量に応じた駆動制御信号を撹拌アーム駆動部114に供給する。
【0030】
撹拌アーム駆動部114は、撹拌アーム制御部112により供給された制御信号に応じて撹拌アーム102に装備されるモータに駆動信号を供給してモータを駆動させ、撹拌アーム制御部112により決定された下降量だけ撹拌子104を待機位置HPから下降させる。
【0031】
撹拌子104の撹拌アーム102側の端部には、バイモルフピエゾ圧電体等の圧電体116が取り付けられている。この圧電体116は、例えば、撹拌アーム102の内部に埋設されている。圧電体116には、電圧印加部118が接続されている。
【0032】
電圧印加部118は、電圧制御部120からの電圧制御信号に応じた電圧を圧電体116に印加し、圧電効果により圧電体116を振動させる。圧電体116が振動されることにより、圧電体116に取り付けられた撹拌子104も振動する。撹拌子104の振動の振動数は、印加電圧の周波数に応じて変化する。電圧制御部120は、撹拌子104が所定の振動数で振動するように、電圧印加部118を制御して、この所定の振動数に対応する周波数を有する電圧を圧電体116に印加させる。また、撹拌子104の振動の振れ幅は、印加電圧の強度(電圧値)に応じて変化する。電圧制御部120は、撹拌子104が所定の振れ幅で振動するように、電圧印加部118を制御して、この所定の振れ幅に対応する電圧値を有する電圧を圧電体116に印加させる。
【0033】
図4は、圧電体116への印加電圧の周波数、電圧値、液体内での撹拌子104の位置、混合液の種類、及び混合液の液量に応じて異なる混合液の撹拌性能を示す図である。図4に示すように、撹拌子104の位置が比較的低い場合における撹拌性能は、混合液の種類や液量によらず、撹拌子104の高さが高い場合における撹拌性能に比して良好である。これは、反応容器62内における撹拌子104の位置が低いほど、すなわち、撹拌子104が混合液内部に深く侵入するほど、混合液がよくかき混ぜられるからである。
【0034】
なお、撹拌アーム制御部112と電圧制御部120とは、図1の分析機構制御部12に含まれる構成要素の1つである。また、撹拌アーム駆動部114と電圧印加部118とは、それぞれ、図1の分析機構駆動部13に含まれる構成要素の1つである。
【0035】
記憶部22は、画像処理部110により特定された内底面の位置や待機位置―内底面距離のデータをログとして記憶する。表示部32は、記憶部22により記憶されている内底面の位置や待機位置―内底面距離のデータを読み出して、表示デバイスに表示する。
【0036】
次に第1実施例に係る撹拌系の動作例について説明する。反応容器62が反応ディスク61により撹拌位置に停止されると撹拌系は、撹拌子104の下降制御処理を開始する。図5は、撹拌系により実行される下降制御処理の典型的な流れを示す図である。なお、ステップSA1の開始時において撹拌子104の先端は、待機位置HPに位置しているとする。
【0037】
反応容器62が反応ディスク61により撹拌位置に配置されると、撮影機108は、この反応容器62の内底面を含む撮影領域FRを撮影し、画像のデータを生成する(ステップSA1)。撮影機108は、所定の拡大率で撮影するものとする。生成された画像のデータは、撮影機108により画像処理部110に供給される。
【0038】
撮影機108により画像のデータが供給されると、画像処理部110は、生成された画像のデータを画像処理し、画像処理後の画像上における反応容器の内底面の位置を特定する(ステップSA2)。特定された内底面の位置のデータは、記憶部22に記憶される。なお画像処理としては、例えば、2値化処理が利用可能である。そして、画像上における内底面の位置を特定すると画像処理部110は、待機位置HPと反応容器62の内底面との間の距離(待機位置―内底面距離)を算出する(ステップSA3)。算出された待機位置―内底面距離のデータは、記憶部22に記憶される。また、待機位置―内底面距離のデータは、撹拌アーム制御部112に供給される。
【0039】
ここで、図6を参照しながらステップSA2とステップSA3との処理について詳細に説明する。図6は、ステップSA2において2値化された画像の一例を示す図である。図6に示すように、2値化画像のx方向は反応容器62の径方向、y方向は反応容器62の高さ方向に規定されているものとする。上述のように撮影機108は、恒温槽106の側面に固定されている。また、恒温槽106自体も不動である。従って、画像上のある座標とそれに対応する実空間上の位置とは、常に一致していると仮定できる。ここで、y方向に関する撮影機108のレンズの略中心位置を撮影基準位置RPと呼ぶことにする。なお撮影基準位置RPは、典型的には、反応容器62の内底面よりも高い位置に位置決めされる。また撮影機108は、x方向に関する画像上の略中心位置に撹拌子104が描出されるように恒温槽106に固定されている。
【0040】
撮影機108により生成された画像を2値化処理すると、図6のような2値化画像が得られる。この2値化処理における閾値は、反応容器62と他の物質(例えば、混合液)とを判別可能な画素値である。この閾値は、予め設定されているものとする。次に2値化画像から反応容器に関する画素領域R1(以下、反応容器領域と呼ぶことにする)を特定する。そして特定された反応容器領域R1の内側(画像の中心側)の縁部であって、x方向に略平行な縁部E1を内底面として特定する。なお、2値化処理のみで反応容器領域R1が特定できない場合、さらに領域成長処理等の他の画像処理をしても良い。
【0041】
次に2値化画像上における撮影基準位置RPと内底面E1との間の距離Hcを算出する。それから、算出された距離Hcに基づいて待機位置―内底面距離を算出する。例えば、距離Hcに画像拡大率を乗じることにより、実空間上における撮影基準位置RPと反応容器62の内底面との間の距離を算出し、この算出された距離に待機位置HPと撮影基準位置RPとの間隔を加算することにより、待機位置と内底面との間の距離を算出する。なお、待機位置HPと撮影基準位置RPとの間の距離は、不動であり、画像処理部110に予め設定されているものとする。
【0042】
画像処理部110により待機位置―内底面距離が算出されると、撹拌アーム制御部112は、この待機位置―内底面距離に従って、待機位置HPから反応容器62内への撹拌子104の下降量を決定する(ステップSA4)。下降量は、待機位置―内底面距離に所定値を減算して決定される。この所定値は、内底面から撹拌時における撹拌子先端の停止予定位置までの距離である。所定値T1としては、撹拌精度を考慮すると、0mm<T1≦1mmが望ましい。
【0043】
なお、この所定値T1は、例えば、測定項目の試薬ごとに設定されていてもよい。図7は、測定項目、試薬名、液量V[μL]、撹拌子の制御方式、電圧E[V]、周波数f[Hz]、撹拌子の内底面からの高さ(所定値)[mm]との一覧を示す図である。このように測定項目等に応じて所定値T1を決定する仕様にする場合、撹拌子アーム制御部112は、この一覧のデータをテーブルとして記憶しておく。そして例えば、測定項目や試薬名を入力し、これら入力にテーブル上で関連付けられた撹拌子高さ(所定値T1)を出力し、出力された所定値T1に従って下降量を決定する。例えば、「A社○○○R1」という名称の試薬を測光する場合、撹拌アーム制御部112は、所定値T1「0.5」に基づいて下降量を決定する。なお、撹拌子104の下降量は、試薬に応じて決定されるのみでなく、例えば、測定項目や使用する液体の種類、使用する液体の液量に応じて決定するとしてもよい。
【0044】
下降量が決定されると撹拌子アーム制御部112は、この下降量に従って撹拌子アーム駆動部114に撹拌子を下降させる(ステップSA5)。これにより、ステップSA4において決定された下降量だけ撹拌子104を待機位置から下降させることができる。従って、撹拌子104を個々の反応容器62の内底面の位置に応じて下降させるこができ、撹拌子104を内底面ぎりぎりまで下降させることができる。
【0045】
なお、撹拌子104の下降速度は、一定であっても可変であってもよい。この速度の制御方式は、ユーザにより操作部40を介して任意に設定可能である。撹拌アーム制御部112は、設定された速度の制御方式に応じて撹拌アーム駆動部114を制御することで、撹拌子104の下降速度を制御できる。撹拌子104の下降速度が遅ければ、より精度良く撹拌子104を所望の高さで停止させることができる。従って、撹拌子アーム制御部112は、撹拌アーム駆動部114を制御して、撹拌子104の先端が内底面に近づくにつれて撹拌子104の下降速度を遅くするとよい。このように下降速度を遅くすることで、撹拌子104の高さ位置の検出精度を向上させることができ、結果的に撹拌精度を向上させることができる。
【0046】
以上で撹拌系による撹拌子の下降制御処理が終了する。この下降制御処理が終了すると、電圧印加部118は、電圧制御部120による制御のもと、圧電体116に所定の周波数と電圧値とを有する電圧を圧電体に印加することにより、撹拌子104を振動させ、混合液を撹拌する。撹拌子104は、内底面ぎりぎりまで接近しているので、混合液をよくかき混ぜることができる。従って、混合液は、撹拌不良をおこすことはない。また、このような撹拌不良のない混合液を用いて測光することで、測定精度も向上する。
【0047】
なお、圧電体116に印加される電圧の周波数や電圧値を、測定項目の試薬ごとに変化させてもよい。このように試薬に応じて周波数や電圧値を変化させる場合、例えば、図7に示すテーブルを電圧制御部120も記憶している。そして電圧制御部120は、そして例えば、測定項目や試薬名を入力し、これら入力にテーブル上で関連付けられた周波数や電圧値を出力し、出力された周波数や電圧値に応じた電圧制御信号を電圧印加部118に供給する。このような電圧制御信号の供給を受けた電圧印加部118は、入力された測定項目や試薬名に対応する周波数や電圧値を有する電圧を圧電体116に印加する。例えば、「A社○○○R1」という名称の試薬を測光する場合、電圧印加部118は、電圧値「10V」と周波数「100Hz」とを有する電圧を圧電体116に印加する。なお、撹拌子104の電圧値や周波数は、試薬に応じて決定されるのみでなく、例えば、測定項目や使用する液体の種類、使用する液体の液量に応じて決定するとしてもよい。また、電圧制御部120は、制御方式に応じて電圧値や周波数を変化させてもよい。
【0048】
なお、記憶部22に記憶されている内底面の位置のデータは、メンテナンス時において活用される。例えば、オペレータが表示部32に表示された内底面の位置のログを検討することで、ばらつきの大きい反応容器62を発見したり、反応ディスク61の異常を発見したりすることができる。このような撹拌不良の原因の発見により、オペレータは、撹拌不良の対策を講ずることができる。すなわち、内底面の位置のデータをログとして記憶したり、これら内底面の位置を表示したりすることで、撹拌不良を防止することができる。
【0049】
上記構成によれば、第1実施例に係る自動分析装置1は、撹拌毎に反応容器62の内底面の位置を特定し、特定された内底面の位置に基づいて下降量を決定する。そして自動分析装置1は、決定された下降量だけ撹拌子104を待機位置から下降させ、混合液を撹拌させる。このように自動分析装置1は、撹拌毎に異なる内定面位置に応じて下降量を決定するので、内底面位置のばらつきによらず、常に良好な撹拌精度を実現することができる。また自動分析装置1は、内底面の位置のデータをログとして記憶しておくことで、オペレータによる撹拌不良の原因の発見を支援することができる。かくして第1実施例によれば、撹拌不良を防ぐことができる自動分析装置の提供が実現する。
【0050】
なお、上記第1実施例に係る撹拌アーム制御部112は、画像処理部110により算出された実空間上の待機位置―内底面距離に従って、下降量を決定するとした。しかしながら第1実施例は、これに限定する必要はない。例えば、撹拌アーム制御部112は、画像上における反応容器62の内底面の位置を入力とし、待機位置HPからの撹拌子104の下降量を出力とするテーブルを記憶している。そして撹拌アーム制御部112は、画像処理部110により画像上における内底面の位置が特定されると、特定された内底面の位置をこのテーブルに入力し、下降量を出力する。そして出力した下降量に従って撹拌アーム駆動部114を制御して撹拌子104を下降させる。
【0051】
(変形例)
第1実施例に係る撹拌系は、撹拌子104を下降させる前に下降量を決定するとした。しかしながら撹拌子104の下降制御方法は、これに限定する必要はない。例えば、撹拌子104を下降させていき、撹拌子104の先端が内底面ぎりぎりに近づいたら撹拌子104を停止させてもよい。以下、このような下降制御方法を実現する変形例に係る撹拌系の構成や動作について説明する。なお以下の説明において、第1実施例と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0052】
図8は、変形例に係る撹拌系の主要部構成を示す図である。撮影機122は、撹拌子104が下降している間、所定の時間間隔をおいて撮影領域FRを撮影し、撮影された撮影領域FRに関する画像のデータを生成する。生成された各画像のデータは、画像処理部124に供給される。なお、撮影機122の固定場所は、第1実施形態に係る撮影機108と同様である。
【0053】
画像処理部124は、撮影機122により生成された各画像のデータを2値化等の画像処理をして、反応容器62の内底面の位置と撹拌子104の先端の位置とを特定する。そして画像処理部124は、特定された内底面の位置と撹拌子先端の位置との間の距離(以下、撹拌子先端―内底面距離と呼ぶことにする)を算出する。内底面の位置や撹拌子先端―内底面距離に関するデータは、撹拌アーム制御部126と記憶部22に供給される。
【0054】
撹拌アーム制御部126は、反応容器62が撹拌位置に停止されると、撹拌子104を反応容器62内へ向けて下降させるための駆動制御信号を撹拌アーム駆動部114に供給する。そして撹拌アーム制御部126は、撹拌子104の下降中、画像処理部124から供給される距離と予め設定された閾値との大小関係を比較する。そして撹拌アーム制御部126は、距離が閾値以上であると判定した場合、撹拌アーム駆動部114に駆動制御信号を供給し続け、距離が閾値以下であると判定した場合、撹拌アーム駆動部114への駆動制御信号の供給を停止する。
【0055】
撹拌アーム駆動部114は、撹拌アーム制御部126からの駆動制御信号に応じて撹拌アーム102に装備されるモータに駆動信号を供給してモータを駆動させ、撹拌アーム制御部126に従う下降量だけ撹拌子104を下降する。
【0056】
次に第1実施例の変形例に係る撹拌系の動作例について説明する。反応容器62が反応ディスク61により撹拌位置に停止されると、撹拌系は、撹拌子104の下降制御処理を開始する。図9は、変形例に係る撹拌系により実行される下降制御処理の典型的な流れを示す図である。なお、ステップSB1の開始時において撹拌子104の先端は、待機位置HPに位置しているとする。
【0057】
反応容器62が反応ディスク61により撹拌位置に停止されると、撹拌アーム制御部126は、撹拌アーム駆動部114に駆動制御信号を供給し、待機位置HPからの撹拌子104の下降を開始する(ステップSB1)。
【0058】
撹拌子104の下降が開始されると、撮影機122は、反応容器62の内底面を含む撮影領域FRを所定の時間間隔おきに撮影し、画像のデータを生成する(ステップSB2)。なお撮影機122は、撹拌子104が下降を開始した直後から撮影する必要はない。例えば、撹拌子104が画像に描出され始める時から撮影が開始されればよい。生成された画像のデータは、撮影機122により画像処理部124に供給される。
【0059】
撮影機122により画像のデータが生成されると、画像処理部124は、生成された画像のデータを2値化し、2値化画像上における反応容器62の内底面の位置と撹拌子104の先端の位置とを特定する(ステップSB3)。そして画像処理部124は、撹拌子先端―内底面距離を算出する(ステップSB4)。算出された撹拌子先端―内底面距離のデータは、撹拌アーム制御部126に供給される。
【0060】
ここで、図10を参照しながらステップSB3とステップSB4との処理について詳細に説明する。図10は、ステップSB2において生成された2値化画像の一例を示す図である。まず2値化画像から反応容器領域R1を特定し、そして第1実施形態と同様の方法で、反応容器領域R1の内底面E1を特定する。次に、撹拌子に関する画素領域R2(以下、撹拌子領域と呼ぶことにする)を特定する。撹拌子領域R2は、撮影機122と撹拌子104との位置関係に従って特定される。すなわち撹拌子領域R2は、x方向に関する2値化画像の略中心に位置し、且つy方向の最上部から2値化画像の内部へ直線状に伸びる、という事実を利用して特定される。それから撹拌子領域R2の先端を特定する。撹拌子領域R2の先端は、例えば、上記の撮影機122と撹拌子104との位置関係を利用して特定される。
【0061】
次に2値化画像上における撮影基準位置RPと内底面位置BPとの間の距離Hcを算出する。次に2値化画像上における撮影基準位置RPと撹拌子先端位置EPとの距離Hsを算出する。そして距離Hcと距離Hsとの差分Gを算出する。算出された差分Gは、撹拌子先端―内底面距離である。
【0062】
画像処理部124により撹拌子先端―内底面距離Gが算出されると、撹拌アーム制御部126は、距離Gと閾値とを比較する(ステップSB5)。閾値は、ステップSA4の所定値T1と同一、すなわち、内底面から撹拌時における撹拌子104の先端の停止予定位置までの距離である。距離が閾値よりも大きいということは、撹拌子104の先端が内底面から十分に接近していないということであり、撹拌子104をさらに下降すべきである。一方、距離が閾値と等しい又は閾値よりも小さいということは、撹拌子104の先端が内底面に十分に接近しているということであり、撹拌子104を停止すべきである。
【0063】
距離Gが閾値より大きいと判定すると(ステップSB5:NO)撹拌アーム制御部126は、撹拌アーム駆動部114に駆動制御信号を供給し続けることにより、撹拌子104を下降させ続ける。そして再びステップSB2〜ステップSB5が繰り返される。
【0064】
距離Gが閾値以下であると判定すると(ステップSB5:YES)撹拌アーム制御部126は、撹拌アーム駆動部114への駆動制御信号の供給を停止する(ステップSB6)。駆動制御信号の供給が停止されることにより撹拌子104は、停止する。このように、撹拌子先端―内底面距離Gの大きさに応じて撹拌子104を下降させ続けるか停止させるかを判定することにより、撹拌子104を内底面ぎりぎりまで下降させることができる。
【0065】
以上で変形例に係る撹拌系による撹拌子104の下降制御処理が終了する。この下降制御処理が終了すると、電圧印加部118は、撹拌子104を振動させ、混合液を撹拌する。撹拌子104は、内底面ぎりぎりまで接近しているので、混合液をよくかき混ぜることができる。従って、混合液は、撹拌不良をおこすことはなく、ひいては測定精度も向上する。かくして第1実施例の変形例によれば、撹拌不良を防ぐことができる自動分析装置の提供が実現する。
【0066】
(第2実施例)
図11は、本発明の第2実施例に係る撹拌系の主要部構成を示す図である。図11に示すように、撹拌位置における恒温槽106の側面の一方側には光源128が、恒温槽106を挟んで光源128に対抗する側には検出器130が固定されている。光源128は、ビーム状の光を発生する。光源128は、発生された光が反応容器62の底を透過する位置に固定されている。検出器130は、複数の検出素子から構成される。個々の検出素子は、光を検出し、検出した光の強度に応じた検出信号を生成する。生成された検出信号は、検出信号処理部132に供給される。検出器130は、光源128から発生された光を検出可能な位置に取り付けられる。このような光源128と検出器130との位置関係により、検出器130は、光源128から発生され反応容器62の底を含む照射領域RRを透過した光を検出する。
【0067】
撹拌子104は、強い遮光性を有する部材により形成される。従って光は、撹拌子104を透過できない。混合液の遮光性は、種類によって程度が異なる。しかし何れの混合液にしても、光は、その強度を減衰させながら混合液を透過する。反応容器62は、ガラスやプラスチックのような透明な部材により形成され、弱い遮光性を有する。従って光は、その強度を減衰させながら反応容器62を透過する。
【0068】
検出信号処理部132は、検出器130により生成された検出信号に基づいて反応容器62の内底面の位置や撹拌子104の先端の位置を特定する。そして検出信号処理部132は、第1実施例のように、特定された待機位置―内底面距離を算出したり、変形例のように、撹拌子先端―内底面距離を算出したりする。内底面の位置や待機位置―内底面距離、撹拌子先端―内底面距離のデータは、記憶部22と撹拌アーム制御部134とに供給される。
【0069】
撹拌アーム制御部134は、第1実施例のように、待機位置―内底面距離に従って待機位置HPからの撹拌子104の下降量を決定する。そして撹拌アーム制御部134は、決定された下降量に従って撹拌アーム駆動部114を制御して、この下降量だけ撹拌子104を下降させる。また、撹拌アーム制御部134は、変形例のように、撹拌子先端―内底面距離と閾値とを比較する。そして撹拌アーム制御部134は、撹拌子先端―内底面距離が閾値以上であると判定した場合、撹拌アーム駆動部114を制御して撹拌子104を下降させ続け、撹拌子先端―内底面距離が閾値以下であると判定した場合、撹拌アーム駆動部114を制御して撹拌子104の下降を停止させる。
【0070】
次に、図12を参照しながら、検出信号処理部130による反応容器62の内底面の位置と撹拌子先端の位置との特定処理について説明する。図12に示すように、検出器130を構成する複数の検出素子131は、縦方向に沿って1列に配列されている。検出素子131の数は、位置検出精度を高めるためには、多ければ多いほど良い。最上部の検出素子131aは反応容器62の内底面より高く、最下部の検出素子131bは反応容器62の内底面より低くなるように検出器130は恒温槽106に固定されている。ここで、最上部にある検出素子131aの位置を検出器基準位置DPと呼ぶことにする。この検出器基準位置DPが撹拌子先端位置や内底面位置を特定するための基準となる。
【0071】
各検出素子131は、光源から発生され反応容器62等を透過した光を検出し、検出された光の強度に応じた検出信号を生成し、生成された検出信号処理部130に供給する。検出信号処理部130は、供給された検出信号の強度と閾値とを比較する。閾値よりも大きい強度を有する検出信号を検出した検出素子131はON状態、閾値よりも小さい強度を有する検出信号を検出した検出素子131はOFF状態に設定される。
【0072】
閾値の値は、反応容器62の底部62aを透過した光に由来する検出信号と反応容器62の筒部62b(底部以外)を透過した光に由来する検出信号とを分別可能な値に設定される。つまり、反応容器62の遮光性は弱いので、筒部62bを透過した光に由来する検出信号の強度は、閾値よりも高い。底部62aを透過する光は、筒部62bを透過する光に比して、より長く反応容器62を透過する。従って、底部62aを透過した光に由来する検出信号の強度は、筒部62bを透過した光に由来する検出信号の強度よりも低く、閾値よりも低い。また撹拌子104の遮光性は強いので、撹拌子104と同じ高さにある検出素子131により生成される検出信号の強度は、閾値よりも低い。
【0073】
このような閾値判定によりON状態又はOFF状態が設定されると、反応容器62の内底面位置BPと撹拌子先端位置EPとが特定される。反応容器62の外底面の位置は、ON状態にある検出素子131のうち下部の検出素子131の位置に対応する。内底面の位置BPは、この下部の検出素子131のうち最上部にある検出素子131の位置に対応する。一方、撹拌子104の位置は、ON状態にある検出素子131のうち上方の検出素子131の位置に対応する。撹拌子先端の位置EPは、この上方の検出素子131のうち最下部にある検出素子131の位置に対応する。
【0074】
内底面位置BPを特定するため、検出器基準位置DPと内底面に対応する検出素子131との間の距離Hcを算出する。また、撹拌子先端EPの位置を特定するため、検出器基準位置DPと撹拌子先端EPに対応する検出素子131との間の距離Hsを算出する。そして撹拌子先端―内底面距離として、距離Hcと距離Hsとの差分Gを算出する。なお、各検出素子131は不動であり、検出信号処理部132は、各検出素子131の位置のデータを記憶しているものとする。
【0075】
このようにして内底面位置BPが算出されると、撹拌子アーム制御部134は、第1実施例と同様に、待機位置HPから反応容器62への撹拌子104の下降量を決定し、決定された下降量だけ撹拌子104を下降する。また撹拌子先端―内底面距離が算出されると、第1実施例の変形例と同様に、撹拌子104の下降を制御する。
【0076】
上記構成によれば、第2実施例に係る自動分析装置1は、光源128と光源128から発生される光を検出器130とを有し、検出器130により生成される検出信号の強度に基づいて反応容器62の内底面の位置や撹拌子104の先端の位置を特定する。そして実施例1や変形例と同様に、特定された内底面の位置や撹拌子104の先端に従って撹拌子104の下降を制御する。かくして第2実施例によれば、撹拌不良を防ぐことができる自動分析装置の提供が実現する。
【0077】
なお、上記第2実施例に係る撹拌アーム制御部134は、検出信号処理部132により算出された待機位置―内底面距離に従って、下降量を決定するとした。しかしながら第2実施例は、これに限定する必要はない。例えば、撹拌アーム制御部134は、検出素子131の位置を入力とし、待機位置HPからの撹拌子104の下降量を出力とするテーブルを記憶している。そして撹拌アーム制御部134は、検出信号処理部132により内底面位置に対応する検出素子131の位置が特定されると、特定された検出素子131の位置をこのテーブルに入力し、下降量を出力する。そして出力した下降量に従って撹拌アーム駆動部114を制御して撹拌子104を下降させる。
【0078】
(第3実施例)
図13は、本発明の第3実施例に係る撹拌系の主要部構成を示す図である。図13に示すように、撹拌位置における恒温槽106の底面には、距離測定器136が固定されている。距離測定器136は、光や超音波を利用した距離測定器である。距離測定器136は、恒温槽106の底面を測定基準位置MPとし、この測定基準位置MPと反応容器62の外底面との間の距離(以下、外底面―恒温槽底面距離と呼ぶことにする)を測定する。測定された外底面―恒温槽底面距離のデータは、測定信号処理部138に供給される。
【0079】
測定信号処理部138は、測定器136により測定された外底面―恒温槽底面距離に従って、反応容器62の内底面の位置(待機位置―内底面距離)を特定する。具体的には、測定信号処理部138は、まず、外底面―恒温槽底面距離に反応容器62の底の厚さを加算して、反応容器62の内底面と恒温槽106の底面との間の距離(以下、内底面―恒温槽底面距離と呼ぶことにする)を算出する。そして算出された内底面―恒温槽底面距離を、測定基準位置MPと待機位置HPとの間の距離から減算することにより、内底面の位置、すなわち待機位置―内底面距離を算出する。特定された内底面の位置のデータは、記憶部22と撹拌アーム制御部112に供給される。
【0080】
上記構成によれば、第3実施例に係る自動分析装置1は、光や超音波を利用した距離測定器136を有し、反応容器62の外底面と恒温槽106の底面との間の距離を測定する。そして測定された距離に基づいて反応容器の内底面の位置を特定する。そして実施例1と同様に、特定された内底面の位置に従って撹拌子104の下降を制御する。かくして第3実施例によれば、撹拌不良を防ぐことができる自動分析装置の提供が実現する。
【0081】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上本発明によれば、撹拌不良を防ぐことができる自動分析装置の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0083】
22…記憶部、32…表示部、62…反応管、102…撹拌アーム、104…撹拌子、106…恒温槽、108…撮影機、110…画像処理部、112…撹拌アーム制御部、114…撹拌アーム駆動部、116…圧電体、118…電圧印加部、120…電圧制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルと試薬とが吐出される反応容器と、
前記反応容器を所定位置に移動させる反応ディスクと、
前記所定位置に移動された反応容器の内底面の位置を特定する特定部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記反応容器に吐出された前記サンプルと前記試薬とを撹拌するための撹拌子と、
前記撹拌子を上下動可能に支持する支持機構と、
前記内底面の位置に基づいて前記下降開始位置から前記反応容器内への前記撹拌子の下降量を決定し、前記決定された下降量に従って前記撹拌子を下降させる制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記所定位置に前記反応容器が停止された場合に、前記内底面を含む撮影領域を撮影し、画像のデータを生成する撮影部をさらに備え、
前記特定部は、前記生成された画像のデータを画像処理して、前記内底面の位置を特定する、
ことを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記内底面を含む照射領域に向けて光を発生する光源と、
前記光源から発生され前記照射領域を透過した光を検出し、前記検出された光の強度に応じた強度を有する検出信号を生成する検出器と、をさらに備え、
前記特定部は、前記生成された検出信号に基づいて前記内底面の位置を特定する、
ことを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記試薬の液量、前記試薬の種類、又は前記サンプルの測定項目に応じて前記下降量を制御する、ことを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記反応容器に吐出された前記サンプルと前記試薬とを撹拌するための撹拌子と、
前記撹拌子を上下動可能に支持する支持機構と、
前記内底面の位置と前記撹拌子の先端の位置との間の距離に従って前記撹拌子を下降又は停止させる制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記撹拌子が前記反応容器内へ下降中、前記内底面を含む撮影領域を撮影し、画像のデータを生成する撮影部をさらに備え、
前記特定部は、前記生成された画像のデータを画像処理して、前記内底面の位置と前記撹拌子の先端の位置とを特定する、
ことを特徴とする請求項6記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記撹拌子が前記反応容器内へ下降中、前記内底面と前記撹拌子とを含む照射領域に向けて光を発生する光源と、
前記光源から発生され前記照射領域を透過した光を検出し、前記検出された光の強度に応じた強度を有する検出信号を生成する検出器と、をさらに備え、
前記特定部は、前記生成された検出信号に基づいて前記内底面の位置と前記撹拌子の先端の位置とを特定する、
ことを特徴とする請求項6記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記撹拌子の下降中において、前記撹拌子の先端が前記内底面に近づくにつれて前記撹拌子の下降速度を遅くする、ことを特徴とする請求項2又は6記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記特定された内底面の位置のデータを記憶する記憶部をさらに備える請求項1から9のうち何れか1項に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記特定された内底面の位置を表示する表示部をさらに備える請求項1から9のうち何れか1項に記載の自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−281600(P2010−281600A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133185(P2009−133185)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】