説明

自動収尿装置

【課題】尿量に関わらず測定が可能で、かつ、洗浄が容易な回収容器を備えた自動収尿装置を提供することを目的とする。
【解決手段】尿レシーバからチューブを介して送られてくる尿を溜めておくための回収容器2および回収容器2を支持する本体部3を備えた自動収尿装置1において、尿レシーバR内に設けられ患者から排泄された尿を検知する尿センサS1と、本体部3に設けられた尿レシーバRで受けた尿を吸引して回収容器2まで搬送する吸引ポンプ53と、を備えている。尿が検知された場合、吸引ポンプ53を稼動させて尿レシーバRから回収容器2内へ尿を吸引し、尿が所定時間検知されない場合、吸引ポンプ53の間欠運転を繰り返して行い、尿レシーバR内の換気を行うことを特徴とする自動収尿装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝たきりの患者や老人等が排泄した尿を自動的に回収するための自動収尿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、寝たきりの患者や老人等が排泄した尿を自動的に回収するための自動収尿システムが知られている。この自動収尿システムは、一般に、患者等の局部にオムツ等を介して装着された尿レシーバと、この尿レシーバにその一端が接続されるチューブと、このチューブの他端に接続される自動収尿装置とで主に構成されている。そして、この自動収尿装置としては、従来、尿レシーバからチューブを介して排出される尿を溜めておくための回収容器と、前記尿レシーバに溜まった尿を吸引して回収容器まで搬送するための吸引ポンプとを備えたものが知られている。
【0003】
このような自動収尿装置において、被介護者の健康状態や、回収容器内に溜まった尿を廃棄するタイミングを判断する指標とするために、使用者が回収容器に溜まった尿の量を知りたいという需要が生じている。
こうした需要に対応可能な発明として、回収容器に収容された尿の水位を検出する装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される装置は、回収容器内の尿に永久磁石を内蔵する浮子を浮かし、尿が溜まるにつれて上昇してきた浮子を回収容器の蓋部の上面に備えられた磁気センサで検出する構成となっている。
【特許文献1】特開2003−126242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される自動収尿装置は、浮子が回収容器の蓋部に到達したときに検出可能となる構成であって、満水時しか水位(尿量)を計測できないという問題があった。また、洗浄の際には回収容器とともに尿に接した浮子も洗浄しなければならず、手間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明では、尿量に関わらず測定が可能で、かつ、洗浄が容易な回収容器を備えた自動収尿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、尿レシーバからチューブを介して送られてくる尿を溜めておくための回収容器および前記回収容器を支持する本体部を備えた自動収尿装置において、前記尿レシーバ内に設けられ患者から排泄された尿を検知する尿センサと、前記本体部に設けられた前記尿レシーバで受けた尿を吸引して前記回収容器まで搬送する吸引ポンプと、を備え、尿が検知された場合、前記吸引ポンプを稼動させて前記尿レシーバから前記回収容器内へ尿を吸引し、尿が所定時間検知されない場合、前記吸引ポンプの間欠運転を繰り返して行い、前記尿レシーバ内の換気を行うことを特徴とする。
【0007】
これによれば、質量センサを利用して尿量を測定し、回収容器と質量センサとを分離して構成可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、質量センサを利用することで尿量に関わらず測定を行うことができ、回収容器と質量センサとを分離して構成することによって質量センサが尿に接することがなくなり、回収容器を容易に洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る自動収尿装置を実施するための最良の形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は自動収尿装置の使用時の状態を説明するための斜視図(a)と、自動収尿装置の本体部と回収容器とを分解させた状態を示す分解斜視図(b)であり、図2は自動収尿装置の構成部品を示す分解斜視図であり、図3は回収容器の容器蓋の構成を説明するための縦断面図である。図4は表示部の操作パネルを示す平面図であり、図5は本実施形態に係る自動収尿装置を備えた自動収尿システムを示す構成図である。
【0010】
<自動収尿システム>
図5に示すように、自動収尿システムSは、患者Mから排泄される尿を一時的に受けるためにオムツ(パッド)Dに装着される尿レシーバRと、この尿レシーバRで受けた尿をチューブTを介して自動的に回収する自動収尿装置1とで主に構成されている。また、オムツD内には、患者Mから排泄される尿を検知するための尿センサS1と、患者Mから排泄される便を検知するための便センサS2とが設けられ、これらのセンサS1,S2で検知した信号は、自動収尿装置1に送信されるようになっている。なお、尿センサS1および便センサS2は、ともに水分を検知するセンサであり、設置場所に違いを持たせることで尿センサS1と便センサS2とに使い分けられている。
なお、チューブTの材質は、一般的にはシリコーンゴムまたは塩化ビニルが使用されるが、環境面への影響を考慮すると、シリコーンゴムであることが好ましい。
【0011】
《自動収尿装置1》
図1(a),(b)に示すように、自動収尿装置1は、尿レシーバR(図5参照)からチューブT(図5参照)を介して送られてくる尿を溜めておくための回収容器2と、尿レシーバRで受けた尿を吸引して回収容器2まで搬送するための吸引ポンプ53(図2参照)や回収容器2内の尿の質量を測定するための質量センサ100を主に収容した本体部3とを備えている。
【0012】
《回収容器2》
図1(b)に示すように、回収容器2は、所定の深さを有する略有底円筒状のタンク部21と、タンク部21の上部に延設される上面部22と、上面部22に形成される開口部22aを密閉する容器蓋23とを含んで構成される。
【0013】
タンク部21は、その内部が吸引ポンプ53(図2参照)の吸引作用で減圧されることから、所定の強度を得るために略有底円筒状に形成される。タンク部21は径が太く高さが低い方が重心が低くなって安定が増し、転倒しにくくなる。タンク部21の材質は、例えば、ポリカーボネートやポリプロピレンに代表されるプラスチックのように、持ち運びしやすい重量と所定の強度とを同時に満たすものが好ましい。
【0014】
また、タンク部21の内部に溜められた尿の容量(以下、「尿の量」または「尿量」という)を使用者が把握しやすいように、タンク部21は透明な部材であることが好ましい。さらに、タンク部21を透明ではなく半透明とした場合には、尿量を回収容器2の外側から視認可能としつつも、使用者のプライバシーに対して配慮することができる。さらに、タンク部21を透明(または半透明)な部材で構成することによって、尿を廃棄する際にどの程度回収容器2を傾斜させればよいか確認することができる。
なお、図1(a)に示す使用中の状態では、使用者のプライバシーを考慮して、タンクカバー44を設けて回収容器2が見えないようにされている。このような状態の自動収尿装置1において、尿量を測定するための質量センサ100が重要な役割を果たすことになる。
【0015】
タンク部21の底面21aは、回収容器2を本体部3から取り外したときに床に置けるように水平な一面を含みつつも、減圧に対抗する強度を得るために、底面21aの外周縁は球面や斜面を備えて形成される。また、タンク部21の側面には、使用者による持ち運びを補助する取っ手21bが形成されている。この取っ手21bは、回収容器2を本体部3に収容する際の位置決めにも利用される。
【0016】
上面部22は、タンク部21の上部に延設された、中心を頂点とする略半球状の部材であって、その上部(頂点部分)には、容器蓋23により密閉される開口部22aが形成されている。このように、上面部22を平面ではなく、所定の角度を設けた略半球状に形成したことによって、タンクを傾斜する角度が少なくても開口部22aから尿の廃棄をすることができる。
なお、上面部22は、タンク部21と一体成型されることが好ましいが、別々に成型した後に接続する構成としてもよい。
【0017】
開口部22aは、タンク部21の直径よりも小さく形成している。このような構成とすることによって、満水時の回収容器2を持ち運びするとき等において、尿が外部へこぼれ出ることを防ぐことができる。さらに、押圧する容器蓋23のパッキン232(図2参照)を小さく形成することができる。さらに、パッキン232押圧時の押圧ムラが少なくなるために、回収容器2内部の吸引ポンプ53による減圧が容易になる。
【0018】
また、開口部22aの縁に沿って立ち上げられたねじ部22bは、容器蓋23内周の雄ねじ(図示せず)と螺合可能な雌ねじを有している。
【0019】
容器蓋23は、回収容器2の開口部22aを密閉するための有天円筒状の部材であって、内周には、回収容器2の開口部22aに設けられたねじ部22bの雌ねじが螺合される図示しない雄ねじが形成されている。
上面部22および容器蓋23にそれぞれ半径方向に示された位置合わせ線22cおよび位置合わせ線23dは、回収容器2と施蓋された容器蓋23との相対的な角度を一定にするための目安であって、容器蓋23のねじを一杯に閉めた場合には、通常、同一直線上に位置する。
【0020】
容器蓋23の上面には、チューブTと連通し尿を回収容器2内に導入するための導入口23aと、吸引ポンプ53と連通し回収容器2内の空気を吸引するための吸気口23bとが形成されている。
また、容器蓋23の外周面上の対向する位置には、本体部3の本体蓋部41が容器蓋23を連結するための係合爪23cが突設されている。
【0021】
図2および図3に示すように、吸気口23bの下側には、回収容器2内の尿が満水になったときに吸気を停止するための吸気停止手段231が設けられている。吸気停止手段231は、例えば、吸気口23bを直接封止するための玉弁部231aと、上端が受け皿状に形成された棒状の部材からなり、その上端で玉弁部231aを支持する玉弁部支持部231bと、玉弁部支持部231bの途中を上下運動自在に保持する収容部底蓋231cと、玉弁部支持部231bの下端に接続し水位の変動にともなって上下動する浮子部231dと、玉弁部231aが内部で上下運動するための空間を備えた収容部23eからなる。なお、収容部底蓋231cまたは収容部23eには、図示しない孔部が形成されており、吸気口23bと回収容器2の内部とは連通している。
【0022】
このような吸気停止手段231によれば、尿の水位が満水になると浮子部231dが上方に押し上げられ、玉弁部支持部231bを介して玉弁部231aが吸気口23bを下側から封止する。すなわち、満水時にはそれ以上の吸気が行われなくなり、尿の回収容器2への導入を停止することができる。すなわち、満水時に吸気口23bから尿が吸引されることを防止できるために、吸引ポンプ53が尿で汚染されて機能が低下する虞を減らすことができる。
【0023】
図3に示すように、飛散防止部材23fは、導入口23aと水面との間を遮るように設けられるものであって、容器蓋23から下側に吊り下げられている。このような飛散防止部材23fによれば、チューブTから導入口23aを介して尿が回収容器2内に吐出される際に、尿が滴下する流速を制限したり、一箇所に滴下する量を分散したりすることによって、尿の飛散を緩和することができる。従って、容器蓋23の汚染を防ぐことができるので、容器蓋23を洗浄する手間を減らすことができる。また、飛散した尿が吸気口23bから吸引されることを防止できるために、吸引ポンプ53が尿で汚染されて機能が低下する虞を減らすことができる。
【0024】
《本体部3》
図1(a),(b)に示すように、本体部3は、尿流路413および空気流路414(それぞれ図2参照)を備えた開閉自在の本体蓋部41と、回収容器2を収容するための半円筒状の逃げ凹部を備えた容器支持部42と、質量センサ100を備え回収容器2が載置される底部43と、使用者のプライバシーに配慮して回収容器2を覆うタンクカバー44と、内部に主に吸引ポンプ53を備えた略柱状のポンプ格納部5とが、一体に形成された構成である。
【0025】
[本体蓋部41]
図2に示すように、本体蓋部41は、基部となる上部フレーム411および下部フレーム412に、容器蓋23の導入口23aに接続可能な尿流路413と、容器蓋23の吸気口23bに接続可能な空気流路414と、容器蓋23を連結するための容器蓋連結機構415とを主に備えて構成されている。
【0026】
そして、開閉自在の本体蓋部41が閉じた状態の場合には、尿流路413および空気流路414の接続端がそれぞれ容器蓋23の導入口23aおよび吸気口23bに接続し、本体蓋部41が開いた状態の場合には、尿流路413および空気流路414の接続端が導入口23aおよび吸気口23bから離間するように構成されている。
以下、特に記載のない場合には、図1(a)に示すように本体部3に回収容器2が収容されて本体蓋部41が閉じた状態であるものとして説明する。
【0027】
上部フレーム411は、本体蓋部41の上壁および側壁を構成するものであって、平板状の上壁の縁部から下方に向けて略全周にわたってリムが形成された構成となっている。上部フレーム411の平面視における大きさは、容器蓋23より若干大きく、容器蓋23の外周部は上部フレーム411の縁部よりも内側に位置している。
【0028】
上部フレーム411の背面側に形成された回転軸411a,411a(接続部に相当する)は、容器支持部42の回転軸溝425,425に回動自在に設置され、本体蓋部41の開閉を実現している。
そして、ポンプ格納部5側の回転軸411aは、L字パイプ414aの一端が露出できるように内部が空洞になっている。
また、上部フレーム411の背面側の中央には、チューブTの逃がし凹部が形成されている。逃がし凹部にチューブTを配置することで、本体蓋部41を開閉した際に、チューブTが上部フレーム411の背面側の縁によって圧迫されることを防ぐことができる。
【0029】
下部フレーム412は、本体蓋部41の下壁を構成するものであって、基本的に上部フレーム411に対応する形状で形成されており、中央に容器蓋連結機構415としての回動体支持部415cを有する。回動体支持部415cの前部は、回動体415bから突設されるレバーLの動作範囲に合わせた切欠が設けられ、下部フレーム412全体としては略C字型になっている。
【0030】
尿流路413は、一端がチューブTに接続した導入パイプ413a、および、導入パイプ413aの他端が容器蓋23の導入口23aに接続する際に導入パイプ413aと導入口23aとの間を隙間無く密封するゴム部材413bを含んで構成される。この導入パイプ413aの他端およびゴム部材413bは、尿流路413が容器蓋23に接続する際の接続端となる。
なお、チューブTと導入パイプ413aとは、本体蓋部41の上側で接続しているが、導入パイプ413aを上部フレーム411および軸円板415aの中央に形成された貫通孔を通すことによって、尿流路413の接続端は本体蓋部41の下側に露出する構成となっている。
【0031】
なお、質量センサ100による測定中に、例えば、意図せずにチューブTを引っ張ったり、チューブTに物が置かれたりして、本体蓋部41の上側に配されたチューブTが引っ張られた場合、本体蓋部41に上向きの力がかかって質量センサ100による測定値に大きな誤差が生じてしまう虞がある。
そこで、本体蓋部41の上部には、チューブTを回転軸411a近傍で固定するためのチューブカバー411bが設けられている。このようなチューブカバー411bによれば、チューブTが引っ張られた場合に、引っ張られた力の大半を回転軸411aで受けることができるので、本体蓋部41に上向きの力がかかることを防止することができる。すなわち、チューブTが引っ張られているか引っ張られていないかに関わらず、安定した測定値を得ることができる。また、チューブカバー411bによれば、チューブTが絡まったり折れ曲がったりすることなく安定して尿の流路を確保できる。
なお、チューブカバー411bによりチューブTが固定される場所は、チューブTが引っ張られた場合に本体蓋部41にかかる上向きの力を低減できる場所であれば特に限定されないが、回転軸411a上、または、回転軸411aの近傍であることが好ましい。
【0032】
空気流路414は、L字パイプ414a、流路形成部材414b,414d、液溜め部414cおよびゴム部材414eを含んで構成される。なお、図示されているように、流路形成部材414bは、L字パイプ414aと液溜め部414cとを連通させる下流部、および、流路形成部材414dと液溜め部414cとを連通させる上流部が一体に形成されている。また、液溜め部414cは、空気流路414の接続端から尿が入り込んでしまったときに、尿を貯留することによって吸引ポンプ53まで尿が到達しないように設けられるものである。ゴム部材414eは、流路形成部材414dの一端が容器蓋23の吸気口23bに接続する際に流路形成部材414dと吸気口23bとの間を隙間無く密封するものである。
【0033】
そして、空気流路414は、吸引ポンプ53と図示しない連絡パイプを介して一端が接続されたL字パイプ414aから、流路形成部材414bの下流部、液溜め部414c、流路形成部材414bの上流部、流路形成部材414d、ゴム部材414eの順に接続されて構成される。この流路形成部材414dの一端およびゴム部材414eは、空気流路414が容器蓋23に接続する際の接続端となる。
【0034】
なお、これらの空気流路414は、基本的に本体蓋部41の内部に形成されているが、流路形成部材414dを軸円板415aに形成された貫通孔に通すことによって、空気流路414の接続端は本体蓋部41の下側に露出する構成となっている。
【0035】
また、液溜め部414cは、下部フレーム412の下側から着脱自在な構成とすることによって、液溜め部414cに尿が溜まった場合に、取り外して溜まった尿を廃棄することができる。また、液溜め部414cは、使用者が尿の溜まり具合を判断しやすいように、透明な部材で構成されることが好ましい。
【0036】
容器蓋連結機構415は、本体蓋部41と容器蓋23とを連結させることによって、本体蓋部41に形成された尿流路413および空気流路414と、容器蓋23に形成された導入口23aおよび吸気口23bとを接続させるものである。
【0037】
容器蓋連結機構415は、上部フレーム411の中央に下側から固定される軸円板415aと、軸円板415aの外周に合った内壁を有する回動体415bと、回動体415bの外周に合った内壁を有する回動体支持部415cとを含んで構成される。
【0038】
そして、回動体415bの内周面の上部は軸円板415aに外嵌して、回動体415bは軸円板415aに回動可能に軸支される。また、回動体415bの内周面の下部には、容器蓋23の係合爪23cが螺合される図示しないねじが形成されている。
【0039】
さらに、回動体415bの外周面は回動体支持部415cに内嵌している。回動体415bの上周縁にはフランジが形成され、回動体415bは回動体支持部415cに摺動自在に支持されている。
また、回動体415bの外周面には、使用者が回動体415bを回動させるためのレバーLが回動体415bと一体に設けられている。
【0040】
このように構成された容器蓋連結機構415において、使用者がレバーLを介して回動体415bを所定方向に回動させる(図1では、右から左に約45度回動させる)と、容器蓋23の係合爪23cが回動体415b内周面の図示しないねじに入り込み、容器蓋23ごと回収容器2が本体蓋部41に連結される。この連結により、尿流路413および空気流路414のゴム部材413b,414eはより強く弾性変形するために、尿流路413および空気流路414の接続端と、容器蓋23の導入口23aおよび吸気口23bとを、より密接に接続させることができる。
【0041】
[容器支持部42]
容器支持部42は、回収容器2を収容するための半円筒状の逃げ凹部を備えている。逃げ凹部側の側壁である縦壁部421は、回収容器2がバランスを崩した際の転倒を防止するために、回収容器2の側面の形状に沿って形成されている。通常の状態では、質量センサ100による測定に影響しないように、回収容器2と縦壁部421との間には、直接接触しない程度の隙間が空いている。
【0042】
また、容器支持部42の内部には、制御基板423およびバッテリー55が格納されている。
制御基板423は、質量センサ100、表示部51、尿センサS1および便センサS2から送信されてくる信号に基づいて各種機器を制御するものである。例えば、制御基板423は、尿センサS1、便センサS2、吸引ポンプ53、質量センサ100、表示部51、バッテリー55、電源スイッチ58、端子57a、端子57b等に電気的に接続している。
制御基板423は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性のメモリと、揮発性メモリとを含んで構成され、不揮発性メモリには各制御に必要なプログラムやデータが格納されている。そして、CPUがメモリにプログラムを読み出して演算処理を実行することにより、各処理が実現されるものとする。
【0043】
揮発性メモリには、質量センサ100により測定された尿量等が記録される。この揮発性メモリには、例えば、自動収尿装置ID、使用者名、使用者ID、日時、吸引ポンプ稼動前の尿量、吸引ポンプ稼動後の尿量等を関連づけて記憶することができる。
【0044】
バッテリー55は、容器支持部42に取り出し可能に格納され、図示しないバッテリー格納部の開口部はバッテリーカバー60aによって覆われる。バッテリー55は、電気的に接続した制御基板423を介して、その電力を制御基板423、吸引ポンプ53、表示部51、質量センサ100に供給することができる。なお、バッテリー55の充電は、端子57bを介して電気的に接続されるACアダプタを利用して行うこともできる。
【0045】
[底部43]
底部43は、回収容器2の底面21aに対応した形状であって、回収容器2が安定して載置される。底部43の上縁部には、回収容器2の取っ手21bに対応した逃げ凹部43aが形成されており、回収容器2の載置位置が自動的に決定されるようになっている。
【0046】
また、底部43には、載置された回収容器2の質量を測定するための質量センサ100が設置されている。図2においては、質量センサ100の本体を底板432中央の切欠部に埋め込むように固定し、質量センサ100のセンサ部分を底部43中央に形成された孔部から上方に露出させている。
【0047】
なお、質量センサ100は、底部43に載置された回収容器2の質量を測定できれば特に限定されるものではなく、例えば、静電容量式、ばね式、天秤式、ロードセル式、音叉振動式、弦振動式、ジャイロ式、電磁力平衡式、磁わい式等、従来公知の質量センサ100を利用することができる。
【0048】
また、質量センサ100の種類に応じて、適宜受け皿431を用いることができる。例えば、受け皿431は、回収容器2の荷重を均等に分配して質量センサ100に伝達するために用いられる。なお、受け皿431を用いる場合には、受け皿431の形状を回収容器2の底面21aに対応させることが好ましい。
【0049】
[タンクカバー44]
タンクカバー44は、不透明な部材からなり、使用者のプライバシーに配慮して透明(または半透明)な回収容器2を覆うものである。回収容器2の取っ手21bに対応する部分には、タンクカバー44に逃がし部が形成されている。
【0050】
[ポンプ格納部5]
ポンプ格納部5には、主に、吸引ポンプ53が格納されている。
吸引ポンプ53は、空気を吸引することができれば特に限定されるものではないが、例えば、ロータリポンプにより実現することができる。ロータリポンプは、一対のロータを回転させることで、回収容器2内の空気を吸引するポンプであり、小型で大きな吸引力を発揮し、かつ、駆動音が静かであるといった特性を有している。
吸引ポンプ53は、その図示しない吸引口がゴム(弾性部材)を介して図示しない連絡パイプに接続され、この連絡パイプは上部フレーム411の回転軸411aから露出したL字パイプ414aと接続している。また、吸引ポンプ53の吐出口53aは、略L字型のパイプ53cを介して自動収尿装置1の底部に連通している。
また、吸引ポンプ53下部のモータ53bは、ラバー状の振動吸収体(弾性部材)54を介してポンプ格納部5の側壁に接合されている。そのため、吸引ポンプ53から発生する騒音や振動は、主に振動吸収体54で吸収されることとなる。
【0051】
さらに、ポンプ格納部5は、その上部が表示部51を取り付けるための取付部5aとして形成されるとともに、その下部が外部端子57を収容するための端子収容部5dとして形成されている。
【0052】
表示部51は、操作パネル51aと、スイッチ逃がし部51bと、スイッチ基板51cとで構成されている。図4に示すように、操作パネル51aは、その表面に適宜文字が施されたシール状の部材であり、スイッチ逃がし部51bの上面に貼り付けられるようになっている。スイッチ基板51cには、操作パネル51aに適宜施された文字に対応するスイッチや、表示窓、ランプ等が設けられており、スイッチ逃がし部51bは、それらを表示させるための逃がし部を備えて形成されている。
【0053】
図4に示すように、本実施形態に係る表示部51の操作パネル51aは、具体的に、電源のON・OFFを示すランプ511、吸引ポンプ53の作動状態を示すランプ512、便センサS2の作動状態を示すランプ513、尿センサS1の作動状態を示すランプ514、計測した回収容器2内の尿の量を示す表示窓515、自動制御で吸引ポンプ53のモータ53bを駆動させるための自動モード駆動スイッチ516、および、手動で吸引ポンプ53のモータ53bを駆動させるための手動モード駆動スイッチ517を備えている。
【0054】
表示窓515は、使用者がすぐに尿量を判断しやすいようにデジタル表示であることが好ましい。また、表示窓515は、100ml毎に区画して表示すれば実用上充分である。例えば、表示窓515は、回収容器2の実効容量が1lの場合には、0〜10の11段階表示である。また、本体部3に回収容器2が収容されていない場合には、表示窓515に「−(マイナス)」が表示される。
また、尿が満水に近づいた場合(例えば、満水1Lに対して600ml以上)には、デジタル表示を点滅させることで、使用者に注意を喚起させる構成としてもよい。
これらの制御は、表示部51および質量センサ100と電気的に接続された制御基板423によって容易に実現できる。
【0055】
外部端子57は、揮発性メモリに記録された尿の量のデータ等をパソコンやプリンタ等の外部装置に出力するための端子57aと、ACアダプタを接続するための端子57bとを含み、これらはポンプ格納部5の下部に形成された端子収容部5dに設置される。また、外部端子57を使用しない場合には、端子収容部5dはカバー5cによって閉じられる。
【0056】
フック59,59は、自動収尿装置1をベッドや車椅子等に掛けるためのものであって、本体部3の背板60上にそれぞれ回動自在に設置されている。具体的には、フック59はU字型に湾曲しており、その湾曲した部分でベッドや車椅子等のパイプに掛止され、フック59の一端は水平方向に回動自在に設置される。このように、フック59が回動自在に設置されていることによって、ベッドや車椅子等のパイプの厚さが異なる場合でも、回動角度を調節することにより、自動収尿装置1を水平にしてパイプに掛けることができる。さらに、背板60の下部に厚さが可変なスペーサー(図示せず)を設置することによって、自動収尿装置1が水平になるように調整することができる。
【0057】
転倒防止板70は、自動収尿装置1の転倒を防止するものであって、本体部3の底面と略同じ形状の平板が本体部3の底面に対して摺動可能に取り付けられている。転倒防止板70を使用する場合には、転倒防止板70を背面方向に引き出すことによって、自動収尿装置1の底面の面積を増加させる。使用しない場合には、転倒防止板70を前面方向に押し込んで、自動収尿装置1の底面と重なるようにして保持される。なお、転倒防止板7の形状および大きさは、自動収尿装置1の転倒頻度を低減できればよく、前記したものに限定されない。
【0058】
<自動収尿装置1の動作>
次に、本実施形態に係る自動収尿装置1の動作について説明する。
【0059】
自動収尿装置1を使用するにあたって、使用者は、まず、施蓋した回収容器2を本体部3の底部43に載置し、本体蓋部41を閉じる。このとき、容器蓋23は回動体415bの内側に位置している。
そして、使用者が本体蓋部41のレバーLを操作して回動体415bを回動させると、容器蓋23の係合爪23cと回動体415b内周のねじが螺合して、容器蓋23と本体蓋部41とが連結する。このとき、本体蓋部41における尿流路413および空気流路414の接続端が、それぞれ容器蓋23の導入口23aおよび吸気口23bに密接に接続し、回収容器2内部と連通することとなる。このような状態では、質量センサ100は、回収容器2の質量と本体蓋部41の質量とを合わせた質量を測定することになるが、回収容器2にまだ尿が入っていない場合、制御基板423はこのときの質量(初期値)を0(ml)として表示部51に表示させる。
また、本体部3に回収容器2が収容されていない状態では、質量センサ100に回収容器2も本体蓋部41も荷重としてかからないので、測定された値は初期値よりも低くなる。制御基板423は、このように測定された値が初期値よりも低いときには表示部に「−(マイナス)」を表示させる。
【0060】
以下、自動収尿装置1の動作の一例として、自動モードにおける動作を説明する。
まず、患者Mが尿を排泄すると、その尿の水分が尿センサS1で検知され、その信号が本体部3に送信される。本体部3内の制御基板423は、尿センサS1からの信号を受け取ると、吸引ポンプ53を所定時間だけ駆動させる。
そして、吸引ポンプ53の駆動によって、回収容器2内の空気が、容器蓋23の吸気口23b、本体蓋部41の空気流路414、図示しない連絡パイプを介して吸引されると、回収容器2内が減圧されることとなる。
そして、このように回収容器2内が減圧されることによって、チューブT、本体蓋部41の尿流路413、容器蓋23の導入口23aを介して尿レシーバRから回収容器2内へと尿が吸引されて回収される。
そして、制御基板423は、吸引ポンプ53を稼動させてから所定時間経過すると、吸引ポンプ53を停止させる制御を行う。
【0061】
このように回収容器2に尿が溜まった状態では、制御基板423は、質量センサ100により測定された値から初期値を減算し、尿の質量を算出する。次に、この尿の質量に所定の係数(例えば、平均的な成人の尿の比重)を乗算することで、尿量を算出する。そして、制御基板423は算出した尿量を表示部51に表示させる。
ここで、単に尿の廃棄を目的とする場合等には、必ずしも所定の係数を厳密に決定する必要はなく、例えば、水と同等の比重として計算しても特に差し支えはない。一方、検査等の目的でデータを精確に取得したい場合には、所定の係数もできるだけ適切に決定されることが好ましい。
【0062】
さらに制御基板423は、測定された尿量の判定を行う。
尿量の判定の結果、満水に近いと判定した場合には(例えば、回収容器2の実効容量の60%以上)、制御基板423は、表示部51のランプを点滅させる制御等を行うことによって、使用者に注意を喚起する。
尿量の判定の結果、満水であると判定した場合には(例えば、回収容器2の実効容量)、制御基板423は、吸引ポンプ53に対して停止信号を送信しつつ、図示しない警報手段により警報を鳴らす制御を行う。
【0063】
なお、制御基板423が行う自動収尿装置1の制御は、前記した自動モードには限定されない。例えば、図4に示す表示部51に表示したモードやランプに対応する制御は公知技術を用いて容易に行うことができる。以下、例をあげて、制御基板423が行う他の制御を示す。
【0064】
例えば、制御基板423は、手動モード駆動スイッチ517等の操作パネル51aからの信号に応じて吸引ポンプ53を駆動させる制御等を行うことができる。
【0065】
また、制御基板423は、所定時間尿センサS1からの信号を受信しない場合には、吸引ポンプ53を間欠運転する制御を行うことができる。このような構成とすることによって、レシーバ内の換気を行ってムレを取り除き、使用者を快適にすることができる。具体的には、例えば、15〜60分毎に10秒間、自動的に吸引ポンプ53を動作させる制御を行う。
【0066】
また、制御基板423は、手動運転で吸引ポンプ53を動作させた場合には、所定時間経過後に吸引ポンプ53の動作を停止させる制御を行う。このような構成とすることによって、吸引ポンプ53の過剰な運転を防ぎ、吸引ポンプ53を保護することができる。
【0067】
以上、本発明を説明したが、本発明は本実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0068】
本実施形態では、タンクカバー44を、図示しないヒンジ部を介した開閉式で設置したが、本発明はこれに限定されず、例えば、使用しないときには本体部3内部に格納しておき、使用時にはスライドさせて使用するようなスライド収納式のタンクカバー44としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】自動収尿装置の使用時の状態を説明するための斜視図(a)と、自動収尿装置の本体部と回収容器とを分解させた状態を示す分解斜視図(b)である。
【図2】自動収尿装置の構成部品を示す分解斜視図である。
【図3】回収容器の容器蓋の構成を説明するための縦断面図である。
【図4】自動収尿装置の操作パネルを示す平面図である。
【図5】本実施形態の自動収尿装置を備えた自動収尿システムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0070】
1 自動収尿装置
2 回収容器
3 本体部
5 ポンプ格納部
22a 開口部
23 容器蓋
23a 導入口
23b 吸気口
23c 係合爪
23f 飛散防止部材
41 本体蓋部(連結部)
42 容器支持部
43 底部
44 タンクカバー
51 表示部
53 吸引ポンプ
59 フック
70 転倒防止板
100 質量センサ
231 吸気停止手段
411a 回転軸(接続部)
411b チューブカバー
413 尿流路
414 空気流路
415 容器蓋連結機構
423 制御基板
515 表示窓
D オムツ
L レバー
R 尿レシーバ
S1 尿センサ
S2 便センサ
T チューブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿レシーバからチューブを介して送られてくる尿を溜めておくための回収容器および前記回収容器を支持する本体部を備えた自動収尿装置において、
前記尿レシーバ内に設けられ患者から排泄された尿を検知する尿センサと、
前記本体部に設けられた前記尿レシーバで受けた尿を吸引して前記回収容器まで搬送する吸引ポンプと、を備え、
尿が検知された場合、前記吸引ポンプを稼動させて前記尿レシーバから前記回収容器内へ尿を吸引し、
尿が所定時間検知されない場合、前記吸引ポンプの間欠運転を繰り返して行い、前記尿レシーバ内の換気を行うことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動収尿装置において、
前記間欠運転の繰り返しは、15〜60分毎に10秒間、前記吸引ポンプを動作させることを特徴とする自動収尿装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動収尿装置において、
前記回収容器の材質は、当該回収容器内に溜まった尿の尿量が視認可能なプラスチックとされていることを特徴することを特徴とする自動収尿装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動収尿装置において、
前記回収容器は、所定の深さを有する略有底円筒状のタンク部と、
前記タンク部の上部に延設される上面部に形成され、前記タンク部の直径よりも小さく形成された開口部と、
前記タンク部の側面に形成された取っ手と、
を備えたことを特徴することを特徴とする自動収尿装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動収尿装置において、
前記本体部は、
尿流路および空気流路を有した回動自在の本体蓋部と、
前記回収容器を収容するための半円筒状の逃げ凹部を有する容器支持部と、
前記回収容器を覆うタンクカバーと、
内部に吸引ポンプを有した略柱状のポンプ格納部と、
を備えたことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動収尿装置において、
尿流路および空気流路を有し背面側に形成された回転軸で回動自在に設置され開閉可能とされた本体蓋部と、
前記本体蓋部と導入パイプを介して前記回収容器に接続される前記チューブと、
前記本体蓋部の上部に設けられ前記チューブを前記回動軸の近傍で固定するチューブカバーと、
を備えたことを特徴とする自動収尿装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−34549(P2009−34549A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293044(P2008−293044)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【分割の表示】特願2006−178070(P2006−178070)の分割
【原出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】