説明

自動収尿装置

【課題】吸引ポンプの信頼性を向上できる自動収尿装置を提供すること。
【解決手段】自動収尿装置1は、尿レシーバで受けた尿を回収して溜めておくメインタンク20と、メインタンク20を支持する本体ケースと、空気流路を通してメインタンク内の空気を吸引することにより、尿レシーバで受けた尿を尿流路を通してメインタンク20内に吸入する吸引ポンプ53と、尿を検出する尿センサと、尿センサの検出結果に基づいて制御指令を出力する制御装置と、を備えている。尿センサはメインタンク20に溜められた尿の上部に存在する泡を検出可能なメインタンク用赤外線センサS31を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動収尿装置に係り、特に、寝たきりの患者や老人等が排泄した尿を自動的に回収するための自動収尿装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、寝たきりの患者や老人等が排泄した尿を自動的に回収するための自動収尿システムが知られている。この自動収尿システムは、一般に、患者等の局部にオムツ等を介して装着された尿レシーバと、この尿レシーバにその一端が接続されるチューブと、このチューブの他端に接続される自動収尿装置とで主に構成されている。そして、この自動収尿装置としては、従来、尿レシーバからチューブを介して排出される尿を溜めておくための回収容器と、前記尿レシーバに溜った尿を吸引して回収容器まで搬送するための吸引ポンプとを備えたものが知られている。
【0003】
従来のこの種の装置として、例えば特開2003−126242号公報(特許文献1)に示された尿吸引装置がある。この特許文献1の尿吸引装置は、尿レシーバから吸引管路を通して尿を吸引する吸引ポンプと、尿溜め容器に溜められる尿の上限量を検出する検出装置と、吸引ポンプを制御する制御装置と、を備えて構成されている。そして、検出装置は、永久磁石を内蔵する浮子と、磁気センサとからなり、浮子を尿溜め部内の尿中に浮かすと共に磁気センサを尿溜め部の蓋部の上面に設け、尿が上限のレベルに達したときに磁気センサから出力を発生する。また、制御装置は、尿溜め容器内の尿の量が上限値にまで達したときに磁気センサから出力される信号に基づいて、吸引ポンプを停止させたり、警報を発したりする制御を行う。
【0004】
また、従来の自動収尿装置として、例えば特開2008−5975号公報(特許文献2)示されたものがある。この特許文献2の自動収尿装置は、尿レシーバから尿流路を介して送られてくる尿を溜めておくための回収容器と、この回収容器を支持する本体部を備えて構成されている。この本体部は、回収容器内の空気を空気流路を通して吸引することにより、尿レシーバで受けた尿を尿流路を介して吸引して回収容器まで搬送するための吸引ポンプと、回収容器内に溜った尿の質量を測定する質量センサと、測定された質量に基づいて尿の容量を算出する制御基板と、算出された尿の容量を表示する表示手段と、を備えている。そして、制御基板は、尿量の判定の結果、満水に近いと判定した場合には(例えば、回収容器の実効容量の60%以上)、表示部のランプを点滅させる制御等を行うことによって使用者に注意を喚起し、さらに、尿量の判定の結果、満水であると判定した場合には(例えば、回収容器の実効容量)、吸引ポンプに対して停止信号を送信しつつ、警報手段により警報を鳴らす制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−126242号公報
【特許文献2】特開2008−5975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の尿吸引装置では、尿溜め容器に溜められた尿の上部に存在する泡について配慮されていない。尿レシーバから吸引管路を通して吸引される尿には多くの泡が伴っており、尿溜め容器に尿が回収して溜められる際に、溜められる尿の上部に泡が形成される。一般的には浮子はこの泡によって浮くことが困難であるため、特許文献1の尿吸引装置では、尿の水位が上昇して上限のレベルに達する前に、尿の上部の泡が吸引管路(尿溜め容器内の空気を吸引する空気流路)の吸気口に達し、この泡が尿溜め容器から吸引管路を通して吸引ポンプに吸込まれ、吸引ポンプの故障を招くおそれがあった。
【0007】
また、上述した特許文献2の自動収尿装置でも、回収容器に溜められた尿の上部に存在する泡について配慮されていない。一般的には質量センサはこの泡の存在および泡の高さを測定することが困難であるため、特許文献2の自動収尿装置では、尿量が満水であると判定する前に、尿の上部の泡が空気流路の吸気口に達し、この泡が回収容器から空気流路を通して吸引ポンプに吸込まれ、吸引ポンプの故障を招くおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、吸引ポンプの信頼性を向上できる自動収尿装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するための本発明の第1の態様では、尿レシーバで受けた尿を回収して溜めておくメインタンクと、前記メインタンクを支持する本体ケースと、空気流路を通して前記メインタンク内の空気を吸引することにより、前記尿レシーバで受けた尿を尿流路を通して前記メインタンク内に吸入する吸引ポンプと、尿を検出する尿センサと、前記尿センサの検出結果に基づいて制御指令を出力する制御装置と、を備えた自動収尿装置において、前記尿センサは前記メインタンクに溜められた尿の上部に存在する泡を検出可能なメインタンク用赤外線センサを備えていることにある。
【0010】
係る本発明の第1の態様におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)前記メインタンクに溜められた尿の廃棄を警告するための報知手段を備え、前記メインタンクは前記本体ケースに着脱可能に設置され、前記制御装置は前記メインタンク用赤外線センサの検出結果に基づいて前記報知手段を制御すること。
(2)前記(1)において、操作スイッチ及び表示ランプを配置した操作パネルを前記本体ケースに備え、前記報知手段は点滅して警告する前記表示ランプと音で警告するアラームとで構成され、前記操作スイッチは前記アラームの動作を停止する一時消音スイッチを備えていること。
(3)前記本体ケースはタンク収納凹部を有し、前記メインタンクは、前記タンク収納凹部に着脱可能に設置されると共に、赤外線を透過する半透明の樹脂材料で形成され、前記メインタンク用赤外線センサは前記メインタンクの両側に当該メインタンクを介して対向するように配置された発光部及び受光部を備えていること。
(4)前記尿センサは、前記メインタンク用赤外線センサと、前記メインタンクの尿の水位を検出するメインタンク用水位センサとを備えていること。
(5)前記(4)において、前記メインタンク用水位センサは、前記メインタンク内の尿の水位が上昇すると浮き上がるフロートと、前記フロートの浮き上がりにより前記空気流路の吸気口を閉鎖するボール弁と、前記吸引ポンプの駆動モータの電流変化を検知する検知手段とで構成されていること。
(6)前記(4)または(5)において、前記メインタンクに溜められた尿の廃棄を警告するための報知手段を備え、前記メインタンクは前記本体ケースに着脱可能に設置され、前記制御装置は、前記メインタンク用赤外線センサの検出結果に基づいて前記報知手段を制御すると共に、前記メインタンク用水位センサの検出結果に基づいて前記吸引ポンプの運転を停止または前記報知手段による警告を発するように制御すること。
(7)前記空気流路の途中に当該空気流路に流入した尿を溜めるサブタンクを備えていること。
(8)前記(7)において、前記尿センサは、前記メインタンク用赤外線センサと、前記サブタンクの尿を検出するサブタンク用センサとを備えていること。
(9)前記(8)において、前記サブタンク用センサは前記サブタンク内に流入された泡を検出可能なサブタンク用赤外線センサで構成されていること。
(10)前記(9)において、前記サブタンクは赤外線を透過する半透明の樹脂材料で形成され、前記サブタンク用赤外線センサは前記サブタンクの両側に当該メインタンクを介して対向するように配置された発光部及び受光部を備えていること。
(11)前記(8)において、前記メインタンクに溜められた尿の廃棄を警告するための報知手段を備え、前記メインタンクは前記本体ケースに着脱可能に設置され、前記制御装置は、前記メインタンク用赤外線センサの検出結果に基づいて前記報知手段による警告を発するように制御すると共に、前記サブタンク用センサの検出結果に基づいて前記吸引ポンプの運転を停止するように制御すること。
(12)前記メインタンクは、尿を溜めるメインタンク本体と、前記メインタンク本体の上面中央部に着脱可能に設置されると共に前記尿流路及び前記空気流路の一部を構成する開口部を隣接して設けたメインタンク蓋と備え、前記尿流路は前記メインタンク内で水平方向に分岐され反対方向に開口されたT字吐出管を備えていること。
(13)前記メインタンク内に開口する前記空気流路の吸気口を覆うように泡避けネットを備えていること。
(14)前記(13)において、前記尿センサは、前記メインタンク用赤外線センサと、前記メインタンクに溜められた尿の水位を検出するメインタンク用水位センサとを備え、前記メインタンク用水位センサは、前記メインタンク内の尿の水位が上昇すると浮き上がるフロートと、前記フロートの浮き上がりにより前記空気流路の吸気口を閉鎖するボール弁とを備え、前記泡避けネットは、前記空気流路の吸気口、前記フロート及び前記ボール弁を覆うように筒状に形成されていること。
(15)前記吸引ポンプの排気側に脱臭フィルタを備えていること。
(16)前記(15)において、前記空気流路の途中に当該空気流路に流入した尿を溜めるサブタンクを備え、前記脱臭フィルタは前記本体ケースの背面下部に横長に設置され、前記サブタンクは前記本体ケースの背面の前記脱臭フィルタの上方空間に設置されていること。
【0011】
また、本発明の第2の態様では、尿レシーバで受けた尿を回収して溜めておくメインタンクと、前記メインタンクを支持する本体ケースと、空気流路を通して前記メインタンク内の空気を吸引することにより、前記尿レシーバで受けた尿を尿流路を通して前記メインタンク内に吸入する吸引ポンプと、尿を検出する尿センサと、前記尿センサの検出結果に基づいて制御指令を出力する制御装置と、を備えた自動収尿装置において、前記空気流路の途中に当該空気流路に流入した尿を溜めるサブタンクを備え、前記尿センサは、前記メインタンクに溜められた尿を検出するメインタンクセンサと、前記サブタンクの尿を検出するサブタンク用センサとを備えていることにある。
【0012】
また、本発明の第3の態様では、尿レシーバで受けた尿を回収して溜めておくメインタンクと、前記メインタンクを支持する本体ケースと、空気流路を通して前記メインタンク内の空気を吸引することにより、前記尿レシーバで受けた尿を尿流路を通して前記メインタンク内に吸入する吸引ポンプと、尿を検出する尿センサと、前記尿センサの検出結果に基づいて制御指令を出力する制御装置と、を備えた自動収尿装置において、前記メインタンク内に開口する前記空気流路の吸気口を覆うように泡避けネットを備え、前記尿センサは、前記メインタンクに溜められた尿を検出するメインタンクセンサと、前記メインタンクの尿の水位を検出するメインタンク用水位センサとを備え、前記泡避けネットは前記空気流路の吸気口及び前記メインタンク用水位センサのフロートの両方を覆うように筒状に形成されていることにある。
【発明の効果】
【0013】
係る本発明の自動収尿装置によれば、メインタンクに溜められた尿の上部に存在する泡が吸引ポンプに吸引されることを防止でき、吸引ポンプの信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の自動収尿装置を用いた自動収尿システムを示す構成図である。
【図2】図1の自動収尿システムの制御系を示す構成図である。
【図3】図1の自動収尿装置の分解斜視図である。
【図4】図1の自動収尿装置の正面斜視図である。
【図5】図4の自動収尿装置の背面斜視図である。
【図6】図4の自動収尿装置の縦断面図である。
【図7】図4の自動収尿装置のメインタンク部を取り出した状態の正面斜視図である。
【図8】図4の自動収尿装置の操作パネル部の平面図である。
【図9】図1の自動収尿装置の動作例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態の自動収尿装置1を用いた自動収尿システムSを図1および図2を参照しながら説明する。図1は本実施形態の自動収尿装置1を用いた自動収尿システムSを示す構成図、図2は図1の自動収尿システムSの制御系を示す構成図である。
【0017】
自動収尿システムSは、図1に示すように、患者Mから排泄される尿を一時的に受けるためにオムツ(パッド)Dに装着される尿レシーバRと、この尿レシーバRで受けた尿をチューブTを介して自動的に回収する自動収尿装置1とを備えて構成されている。チューブTは可撓性を有するシリコーンゴムまたは塩化ビニルからなるチューブで形成されている。なお、チューブTは尿レシーバRで受けた尿をメインタンク20内に吸入する尿流路の一部を構成している。
【0018】
また、オムツD内には、患者Mから排泄される尿を検知するためのレシーバ用尿センサS1と、患者Mから排泄される便を検知するためのレシーバ用便センサS2とが設けられ、これらのレシーバ用尿センサS1およびレシーバ用便センサS2で検知した信号は、自動収尿装置1の制御基板423に送信されるようになっている。なお、レシーバ用尿センサS1およびレシーバ用便センサS2は、ともに水分を検知するセンサであり、設置場所に違いを持たせることでレシーバ用尿センサS1とレシーバ用便センサS2とに使い分けられている。
【0019】
自動収尿装置1は、尿レシーバRからチューブTを介して送られてくる尿を回収して溜めておくためのメインタンク部2と、このメインタンク部2を保持する本体部3とを備えて構成されている。
【0020】
自動収尿装置1には、図2に示すように、制御基板423が備えられている。制御基板423は、CPU(Central Processing Unit)等の制御装置423aと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ423bと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ423cとを含んで構成され、不揮発性メモリ423bには各制御に必要なプログラムやデータが格納されている。そして、制御装置423aがメモリにプログラムを読み出して演算処理を実行することにより、各処理が実現される。
【0021】
制御装置423aには、レシーバ用尿センサS1、レシーバ用便センサS2、尿センサS3、不揮発性メモリ423b、揮発性メモリ423c、吸引ポンプ53の駆動モータ53a、バッテリー、操作パネル部47の表示ランプ511〜515、操作スイッチ516〜518およびアラーム519等が電気的に接続されている。制御装置423aは、レシーバ用尿センサS1、レシーバ用便センサS2、尿センサS3および操作スイッチ516〜518等から送信されてくる信号に基づいて、吸引ポンプ53の駆動モータ53aおよび操作パネル部47等の各種機器を制御する。なお、尿センサS3は、メインタンク用赤外線センサS31、メインタンク用水位センサS32およびサブタンク用赤外線センサS33を備えて構成されている。
【0022】
揮発性メモリ423cには、レシーバ用尿センサS1、レシーバ用便センサS2、不揮発性メモリ423b、揮発性メモリ423c、メインタンク用赤外線センサS31、メインタンク用水位センサS32、サブタンク用赤外線センサS33により検出された結果等が記録される。この揮発性メモリ423cには、自動収尿装置ID、使用者名、使用者ID、日時、検出結果等が関連づけて記憶される。
【0023】
制御基板423、吸引ポンプ53および操作パネル部47への電力はACアダプタ(図示せず)またはバッテリ55から供給する。また制御基板423は外部端子57を備えており、揮発性メモリ423bに記録された運転履歴データ(排尿回数や各種センサの検出時刻など)をパソコンやプリンタ等の外部装置に出力することができる。
【0024】
次に、図3から図9を参照しながら、自動収尿装置1について具体的に説明する。図3は図1の自動収尿装置1の分解斜視図、図4は図1の自動収尿装置1の正面斜視図、図5は図4の自動収尿装置1の背面斜視図、図6は図4の自動収尿装置1の縦断面図、図7は図4の自動収尿装置1のメインタンク部2を取り出した状態の正面斜視図、図8は図4の自動収尿装置1の操作パネル部47の平面図である。
【0025】
メインタンク部2は、メインタンク20、尿吐出パイプ230、吸気停止手段231および泡避けネット232等を備えて構成されている。
【0026】
メインタンク20は、尿レシーバRで受けた尿を回収して溜めておく回収容器を構成するものであり、所定の深さを有するメインタンク本体21と、メインタンク本体21の上面21aに形成された開口部22を密閉するメインタンク蓋23とを備えて構成されている。メインタンク本体21は、その内部が吸引ポンプ53の吸引作用で減圧されることから、所定の強度を得るために略有底円筒状に形成されている。本実施形態では、メインタンク本体21は、その最大容量が1400mLであり、その実効容量(満水容量)が1000mLである。
【0027】
メインタンク本体21の上面21aは、中心を頂点とする略半球状に形成され、その頂点部分には、メインタンク蓋23により密閉される開口部22が形成されている。このように、上面21aを水平面ではなく、所定の角度を設けた略半球状に形成したことによって、メインタンク本体21を傾斜する角度が少なくても開口部22から尿の廃棄をすることができる。なお、上面21aは、メインタンク本体21の他の部分と一体成型されることが好ましいが、別々に成型した後に接続する構成としてもよい。
【0028】
開口部22は、メインタンク本体21の側面21bの直径よりも小さく形成されている。このような構成とすることによって、満水時のメインタンク20を持ち運びするとき等において、尿が外部へこぼれ出ることを防ぐことができる。さらに、押圧するメインタンク蓋23のパッキン232を小さくすることができる。これによって、パッキン232押圧時の押圧むらが少なくなるために、吸引ポンプ53によるメインタンク20内部の減圧が容易になる。
【0029】
また、開口部22の縁に沿って立ち上げられたねじ部22aは、メインタンク蓋23内周の雄ねじ(図示せず)と螺合可能な雌ねじを有している。
【0030】
メインタンク本体21は、ポリカーボネートやポリプロピレンに代表されるプラスチックのように、持ち運びしやすい重量と所定の強度とを同時に満たす樹脂材料で形成されている。また、メインタンク本体21は、メインタンク本体21の内部に溜められた尿の容量(以下、「尿の量」または「尿量」という)を使用者が把握可能で、しかも赤外線を透過可能な半透明の樹脂材料で形成されている。メインタンク本体21を半透明とした場合には、尿量をメインタンク本体21の外側から視認可能としつつも、使用者のプライバシーに対して配慮することができ、しかも、尿を廃棄する際にどの程度メインタンク20を傾斜させればよいか確認することができる。
【0031】
なお、自動収尿装置1の使用状態では、使用者のプライバシーを考慮して、メインタンク本体21をタンクカバー44で覆うことができるようになっている。タンクカバー44の中央には、タンク尿量確認窓44aが設けられているので、この確認窓44aを通してメインタンク本体21内の尿量を視認することができる。この確認窓44aは透明な部材または単なる穴で構成されている。
【0032】
また、メインタンク本体21の側面21bには、使用者による持ち運びを補助する取っ手21cが形成されている。この取っ手21cは、メインタンク20を本体部3に収容する際の位置決めにも利用される。
【0033】
メインタンク蓋23は、メインタンク本体21の開口部22を密閉するための有天円筒状の部材である。メインタンク蓋23の内周には、メインタンク本体21の開口部22に設けられたねじ部22bの雌ねじが螺合される図示しない雄ねじが形成されている。
【0034】
メインタンク蓋23の上面には、チューブTと連通し尿をメインタンク本体21内に導入するための導入口23aと、吸引ポンプ53と連通しメインタンク20内の空気を吸引するための吸気口23bとが形成されている。導入口23aは尿流路の一部を構成し、吸気口23bは空気流路の一部を構成する。
【0035】
メインタンク20の中央部に位置する導入口23aの下側には、導入口23aから導入された尿をメインタンク20内に吐出するための尿吐出パイプ230が設けられている。この尿吐出パイプ230は、メインタンク蓋23から下側に吊り下げられている。また、尿吐出パイプ230は、導入口23aに連通して下方に延びる吐出導管230aと、この吐出導管230aの下端に連通されると共に水平方向に分岐され反対方向に開口されたT字吐出管230bとを備えて構成されている。T字吐出管230bの横幅(両側の開口間の距離)はメインタンク20の開口部22の径よりも若干小さく設定されている。
【0036】
このような尿吐出パイプ230によれば、チューブTから導入口23aを介して尿がメインタンク20内に吐出される際に、尿が滴下する流速を遅くすることができる共に、二箇所に分散してメインタンク20内の外周に近づくように滴下することができる。これによって、尿の飛散を緩和することができると共に、溜められる尿の上部の泡の高さを全体として低くすることができる。特に、T字吐出管230bを用いたことにより、尿の上部に形成される泡は、小さな2つの山状に形成されるので、吐出口が1つの場合に比較して泡の山の高さを半分以下にすることができる。
【0037】
これらによって、飛散した尿が吸気口23bから吸引されることを抑制できると共に、尿の上部に形成される泡が吸気口23bから吸引されることを抑制できるために、吸引ポンプ53および空気流路が泡で汚染され、吸引ポンプ53の機能が低下するおそれを減らすことができると共に、これらの部分からの悪臭の発生を防止することができる。
【0038】
メインタンク20の中央部に位置する吸気口23bの下側には、メインタンク20内の尿が満水になったときに吸気を停止するための吸気停止手段231と、吸気口23bから泡が吸引されるのを防止するための泡避けネット232とが設けられている。
【0039】
吸気停止手段231は、吸気口23bを直接封止するためのボール弁231aと、上端が受け皿状に形成された棒状の部材からなり、その上端でボール弁231aを支持するボール弁支持部材231bと、ボール弁支持部材231bの途中を上下運動自在に保持する収容部底蓋231cと、ボール弁支持部材231bの下端に接続されると共に、水位の変動に伴って上下動するフロート231dと、ボール弁231aが内部で上下運動するための空間を備えたボール弁収容部23eとを備えて構成されている。収容部23eはメインタンク蓋23の吸気口23bの周縁から下方に突出する部分で形成されている。なお、収容部底蓋231cまたは収容部23eには、吸気口23bとメインタンク20の内部とを連通させる連通路が形成されている。
【0040】
このような吸気停止手段231によれば、尿の水位が満水になると(尿の容量が実効容量の1000mLになると)、フロート231dが上方に押し上げられ、ボール弁支持部材231bを介してボール弁231aが吸気口23bを下側から封止する。すなわち、満水時にはそれ以上の吸気が行われなくなり、尿のメインタンク20への導入を停止することができる。すなわち、満水時に吸気口23bから尿が吸引されることを防止できるために、吸引ポンプ53および空気流路が尿で汚染され、吸引ポンプ53の機能が低下するおそれを減らすことができると共に、これらの部分からの悪臭の発生を防止することができる。
【0041】
吸気停止手段231はメインタンク用水位センサS32の一部を構成している。換言すれば、メインタンク用水位センサは、メインタンク20内の尿の水位が上昇すると浮き上がるフロート231dと、このフロート231dの浮き上がりにより空気流路の吸気口23bを閉鎖するボール弁231aと、吸引ポンプ53の駆動モータ53aの電流変化を検知する検知手段とを備えて構成されている。
【0042】
泡避けネット232は、吸気口23b及び吸気停止手段231を覆うように筒状に形成され、メインタンク蓋23から下側に吊り下げられている。このような泡避けネット232によって、吸気停止手段231の動作を阻害することなく、メインタンク20内の尿の水位の上昇に伴って泡が上昇しても泡が吸気口23bに至ることを防止できるので、吸引ポンプ53および空気流路が泡で汚染され、吸引ポンプ53の機能が低下するおそれを減らすことができると共に、これらの部分からの悪臭の発生を防止することができる。
【0043】
また、泡避けネット232は、全面的に網目を有する側面232aと、網目を有しない板状の底面232bとを備えて構成されている。この網目は1インチ当たり40〜50メッシュで構成されている。泡網目を有しない板状の底面232bとしたことにより、メインタンク20内の尿の水位の上昇に伴って泡が上昇してきた場合、底面232bで泡が押えられ、泡の上昇を抑制することができるので、泡が吸気口23bに至るのを抑制できる。また、本実施形態では、板状の底面232bに小径の孔232cを設けているので、メインタンク蓋23と共に泡避けネット232をメインタンク本体21から取り外す際に、泡避けネット232内の尿を孔232cよりメインタンク本体21内に流出させることができる。
【0044】
本体部3は、尿流路パイプ413および空気流路パイプ414を備えた開閉自在の本体蓋部41と、メインタンク20を収容するタンク収納部42と、メインタンク20が載置される本体底部43と、使用者のプライバシーに配慮してメインタンク20を覆うタンクカバー44と、内部に主に吸引ポンプ53を備えた略柱状のポンプ格納部45と、タンク収納部42およびポンプ格納部45の背面を覆う本体背面カバー46と、操作パネル47aを備えた操作パネル部47と、自動収尿装置1を搬送する際に使用する提げ手48と、空気流路パイプ414の途中に設けられたサブタンク6と、吸引ポンプ53の排気側に設けられた脱臭フィルタ7とを備えて構成されている。なお、本体蓋部41、タンク収納部42、ポンプ格納部45および本体底部43を形成するケースにより本体ケースが構成されている。また、タンク収納部42は、メインタンク20を収容するための半円筒状のタンク収納凹面42aを備えている。ポンプ格納部45を形成するケースの一部は、タンク収納部42のタンク収納凹面42a形成する部分と共用されている。
【0045】
本体蓋部41は、基部となる上部フレーム411および下部フレーム412と、メインタンク蓋23の導入口23aに接続可能な尿流路パイプ413と、メインタンク蓋23の吸気口23bに接続可能な空気流路パイプ414と、メインタンク蓋23を連結するための蓋連結機構415とを主に備えて構成されている。
【0046】
開閉自在の本体蓋部41が閉じた状態の場合には、尿流路パイプ413および空気流路パイプ414の接続端がそれぞれメインタンク蓋23の導入口23aおよび吸気口23bに接続し、本体蓋部41が開いた状態の場合には、尿流路パイプ413および空気流路パイプ414の接続端が導入口23aおよび吸気口23bから離間するように構成されている。
【0047】
以下、特に記載のない場合には、本体部3にメインタンク部2が収容されて本体蓋部41が閉じた状態であるものとして説明する。
【0048】
上部フレーム411は、本体蓋部41の上壁および側壁を構成するものであって、平板状の上壁の縁部から下方に向けて略全周にわたってリムが形成された構成となっている。上部フレーム411の平面視における大きさは、メインタンク蓋23より大きく、メインタンク蓋23の外周部は上部フレーム411の縁部よりも内側に位置している。上部フレーム411の背面側には複数の回転軸が形成され、これらの複数の回転軸がタンク収納部42の複数の回転軸溝に回動自在に係合され、本体蓋部41の開閉を実現している。
【0049】
下部フレーム412は、本体蓋部41の下壁を構成するものであって、基本的には上部フレーム411に対応する形状で形成されている。
【0050】
尿流路パイプ413は、その一端がメインタンク蓋23の導入口23aに接続され、その他端がチューブTに接続されており、チューブT、導入口23aおよび尿吐出パイプ230と共に尿流路を構成している。この尿流路は、尿レシーバRの内側空間とメインタンク20の内側空間とを連通する流路のことである。
【0051】
空気流路パイプ414は、本体蓋部41に配置された第1空気流路導管414aと、本体背面カバー46の背面に配置された第2空気流路導管414bとを備えて構成されている。第1空気流路導管414aは、その一端がメインタンク蓋23の吸気口23bに接続され、その他端がサブタンク6のサブタンク蓋62に接続されている。第2空気流路導管414bは、その一端がサブタンク蓋62に接続され、その他端が吸引ポンプ53に接続されている。空気流路パイプ414は、吸気口23bおよびサブタンク6と共に空気流路を構成している。この空気流路は、メインタンク20の内側空間と吸引ポンプ53とを連通する流路のことである。
【0052】
空気流路パイプ414およびサブタンク6は、本体部3から取り外し可能に設置され、容易にメンテナンスできるようになっている。特に、第1空気流路導管414a、第2空気流路導管414b、サブタンク本体61およびサブタンク蓋62の各構成要素が取り外し可能となっているので、これらの内部を容易に清掃することができる。
【0053】
蓋連結機構415は、本体蓋部41とメインタンク蓋23とを連結させることによって、本体蓋部41に形成された尿流路パイプ413および空気流路パイプ414と、メインタンク蓋23に形成された導入口23aおよび吸気口23bとを接続させるものである。
【0054】
タンク収納部42は、メインタンク20を収容するための半円筒状のタンク収納凹面42aを備えているので、メインタンク20がバランスを崩した際の転倒を防止することができる。タンク収納凹面42aは、メインタンク20の側面21bの形状に沿った形状となっている。
【0055】
タンク収納部42には、メインタンク用赤外線センサS31、制御基板423およびバッテリーが格納されている。メインタンク用赤外線センサS31は、メインタンク20に溜められた尿の上部に形成される泡を検出可能なメインタンク用尿センサであり、メインタンク20の両側に当該メインタンク20を介して対向するように配置された発光部421及び受光部422を備えて構成されている。
【0056】
発光部421及び受光部422は、タンク収納凹面42aに形成された孔からタンク収納凹面42a内を臨むように設置されている。発光部421及び受光部422は、所定高さで、水平に対向するように配置され、発光部421から赤外線が発せられ、受光部422でその赤外線を受けるように設置されている。
【0057】
メインタンク20内の尿の水位の上昇に伴って泡が上昇し、その泡が発光部421と受光部422との間に達すると、発光部421から発せられた赤外線が泡によって屈折、吸収され、受光部422での赤外線の受光量が減少するので、メインタンク用赤外線センサS31は尿の泡の検出を行うことができる。
【0058】
また、泡が検出されないで、尿の水位が発光部421と受光部422との間に達すると、発光部421から発せられた赤外線がその尿によって屈折、吸収され、受光部422での赤外線の受光量が減少するので、メインタンク用赤外線センサS31は尿の検出を行うことができる。この尿の検出位置がメインタンク本体21の実効容量(満水容量)以下(例えば実効容量1000mLに対して800mL)となるように設定されている。
本体底部43は、メインタンク20の底面21dに対応した形状であって、メインタンク20が安定して載置されるようになっている。本体底部43の上縁部には、メインタンク20の取っ手21cに対応した逃げ凹部43aが形成されており、メインタンク20の載置位置が自動的に決定されるようになっている。本体底部43の背面部には、後方に延びる転倒防止部43bが備えられている。この転倒防止部43bは、自動収尿装置1の転倒を防止するためのものである。
【0059】
ポンプ格納部45には、主に、吸引ポンプ53が格納されている。吸引ポンプ53は、空気を吸引することができれば特に限定されるものではないが、例えば、ロータリポンプにより実現することができる。ロータリポンプは、一対のロータを回転させることで、メインタンク20内の空気を吸引するポンプであり、小型で大きな吸引力を発揮し、かつ、駆動音が静かであるといった特性を有している。
【0060】
吸引ポンプ53は、ポンプ本体53a、駆動モータ53b、振動吸収体53c、ポンプ連結部材53d、ポンプケース53eを備えてユニット化され、交換可能に設置されている。これによって、吸引ポンプ53が万一故障した場合には容易に交換することができる。
【0061】
ポンプ本体53aの吸引口はポンプ連結部材53dを介して空気流路パイプ414および空気排出パイプ54と接続され、ポンプ本体53aの排気口はポンプ連結部材53dを介して空気排出パイプ54と接続されている。空気排出パイプ54は脱臭フィルタ7の入口に連通されている。従って、吸引ポンプ53の排気は脱臭フィルタ7に導入される。
【0062】
吸引ポンプ本体53aの下側に駆動モータ53bが配置され、この駆動モータ53bの下側にラバー状の振動吸収体(弾性部材)53cが配置されている。振動吸収体53cを備えたことによって、ポンプ本体53aおよび駆動モータ53bから発生する振動は、主に振動吸収体53cで吸収されることとなる。ポンプ本体53a、駆動モータ53b、振動吸収体53c、ポンプ連結部材53dは、2分割されたポンプケース53eに収納されている。
【0063】
ポンプ格納部45の上部は、操作パネル部47を取り付けるための取付部45aと、外部端子57を収容するための端子収容部45bとを備えている。
【0064】
操作パネル部47は、操作パネル47a、パネル台47bおよび制御基板423を備えて構成されている。操作パネル47aは、その表面に適宜文字が施されたシール状の部材であり、パネル台47bの上面に貼り付けられている。パネル台47b内には、制御基板423が配置されている。制御基板423には、センサケーブル424を通してレシーバ用尿センサS1およびレシーバ用便センサS2が接続される。
【0065】
制御基板423には、操作パネル47aに適宜施された文字に対応する操作スイッチや表示ランプ等が設けられており、パネル台47bには、それらの操作スイッチや表示ランプの操作や表示を可能とするための逃がし部を備えている。
【0066】
操作パネル部47は、図8に示すように、電源のON・OFFを示す表示ランプ511、吸引ポンプ53で採尿中を示す表示ランプ512、パッド交換を警告する表示ランプ513、タンクの点検を警告する表示ランプ514、各種センサが検出した様々な状態を識別して表示する7セグメント式表示ランプ515、満水等のエラー状態を使用者が解除するための満水クリアスイッチ516、手動で吸引ポンプ53のモータ53bをオンオフさせるための手動入/切スイッチ517、アラーム519の出力を一時停止する一時消音スイッチ518を備えている。
【0067】
サブタンク6が空気流路パイプ414の途中に接続されているので、万一、吸気口23bから尿が空気流路パイプ414に流入した場合には、この流入した尿をサブタンク6に溜めることができる。また、尿の湯気により空気流入パイプ414やサブタンク6の内部が結露することがあり、この結露水もサブタンク6に溜めることができる。よって、吸引ポンプ53が尿や結露水で汚染されて機能が低下するおそれを減らすことができる。そして、サブタンク6は、本体部3から取り外し可能に設置されているので、尿で汚染された場合には、取り外して清掃することができる。
【0068】
サブタンク6は、縦長で円筒状のサブタンク本体61と、このサブタンク本体61の上面に形成された開口部を密閉するサブタンク蓋62とを備えて構成されている。
【0069】
サブタンク本体61は、その内部が吸引ポンプ53の吸引作用で減圧されることから、所定の強度を得るために略有底円筒状に形成されている。本実施形態では、サブタンク本体61の実効(満水)容量は50mLである。メインタンク本体21は、内部に尿が流入したことを使用者が把握可能で、しかも赤外線を透過可能な半透明の樹脂材料、例えばポリカーボネートやポリプロピレンに代表される樹脂材料で形成されている。
【0070】
本体背面カバー46には、サブタンク用赤外線センサS33が設置されている。サブタンク用赤外線センサS33は、サブタンク6に流入した泡を検出可能なサブタンク用尿センサであり、サブタンク6の両側に当該サブタンク6を介して対向するように配置された発光部461及び受光部462を備えて構成されている。
【0071】
発光部461及び受光部462は、本体背面カバー46の背面より後方に突出して設置されている。発光部461及び受光部462は、所定高さで、水平に対向するように配置され、発光部461から赤外線が発せられ、受光部462でその赤外線を受けるように設置されている。
【0072】
メインタンク20からサブタンク6に流入された泡が発光部461と受光部462との間に存在すると、発光部461から発せられた赤外線が泡によって屈折、吸収され、受光部462での赤外線の受光量が減少するので、サブタンク用赤外線センサS33は尿の泡の検出を行うことができる。
【0073】
また、泡が検出されないで、尿の水位が発光部461と受光部462との間に達すると、発光部461から発せられた赤外線がその尿によって屈折、吸収され、受光部462での赤外線の受光量が減少するので、サブタンク用赤外線センサS33は尿の検出を行うことができる。この尿の検出位置がサブタンク本体61の実効(満水)容量以下(例えば実効容量50mLに対して20mL)となるように設定されている。これはサブタンク用赤外線センサが尿の水位を検知して吸引ポンプ53を停止させても、サブタンク6内部の負圧が大気圧に戻るまで尿がさらに流入してくることがあるので、満水容量以下の水位に設定することが望ましい。
【0074】
脱臭フィルタ7は転倒防止部43bの上に取り外し可能に載置され、サブタンク6は脱臭フィルタ7の上方空間に配置されている。この配置構成によって、装置全体をコンパクトなものとすることができる。この脱臭フィルタ7は、本体ケースを構成する本体背面カバー46の下端部背面側に接して横長に設置されている。この脱臭フィルタ7の左右方向の一側端部に近い上面部分に入口7aが設けられ、他側端部に近い背面部分に出口7bが設けられ、内部に脱臭部材が収納されている。
【0075】
次に、図9を参照しながら、本実施形態に係る自動収尿装置1の動作の一例として、主としてメインタンク用赤外線センサS31、サブタンク用赤外線センサS33、メインタンク水位センサS32の動作を説明する。図9は図1の自動収尿装置1の動作例を示すフローチャート図である。
【0076】
自動収尿装置1に電源が投入され、制御装置423aの動作がスタートされると、メインタンク用赤外線センサS31がメインタンク20内の尿を検知したかを判定する(ステップS1)。メインタンク用赤外線センサS31による尿の検知は、上述したように、メインタンク20内の尿の水位の上昇に伴って上昇する泡の存在の有無によって行う。
【0077】
ステップS1によりメインタンク用赤外線センサS31でメインタンク20内の泡を検知した場合には、メインタンク20の点検を警告する表示ランプ514を点滅すると共に、アラーム519による警告を行う(ステップS2)。これによって、使用者は、メインタンク20内の泡の状態を把握することができるので、メインタンク20内の尿を廃棄することにより、メインタンク20内の泡が吸引ポンプ53へ吸引されることを防止できる。なお、泡の検知が行われずにメインタンク20内の尿の水位がメインタンク用赤外線センサS31の位置に達し、メインタンク用赤外線センサS31がそれを検知した場合にも、ステップS2に進む。
【0078】
そして、吸引ポンプ53がONしているかを判定する(ステップ3)。ここで吸引ポンプ53がONするのは、レシーバ用尿センサS1がONして自動で吸引ポンプ53がONしたり(自動運転)、手動入/切スイッチ517が押されて手動で吸引ポンプ53がONしたり、全てのケースが該当する。この自動運転とは、患者Mが排泄する尿をレシーバ用尿センサS1で検知すると、吸引ポンプ53を所定時間だけ駆動し、吸引ポンプ53の駆動によって、メインタンク20内の空気がメインタンク蓋23の吸気口23b、本体蓋部41の空気流路パイプ414を介して吸引されると、メインタンク20内が減圧されることとなる。このようにメインタンク20内が減圧されることによって、チューブT、本体蓋部41の尿流路パイプ413、メインタンク蓋23の導入口23aを介して尿レシーバRからメインタンク20内へと尿が吸引されて回収される。吸引ポンプ53を稼動させてから所定時間経過すると、吸引ポンプ53を停止させるものである。
【0079】
ステップ3により吸引ポンプがONした場合には、サブタンク用赤外線センサS33がサブタンク6内の尿を検知したかを判定する(ステップS4)。サブタンク用赤外線センサS33による尿の検知は、上述したように、サブタンク6内の泡の存在の有無によって行う。
【0080】
ステップS4によりサブタンク用赤外線センサS33でサブタンク6内の泡を検知した場合には、吸引ポンプ53を停止する(ステップS5)。これによって、吸引ポンプ53が泡で汚染され、吸引ポンプ53の機能が低下するおそれを減らすことができる。なお、泡の検知が行われずにサブタンク6内の尿や結露水の水位がサブタンク用赤外線センサS33の位置に達し、サブタンク用赤外線センサS33がそれを検知した場合にも、ステップS5に進む。ここで、ステップS5では吸引ポンプ53を停止すると同時に、サブタンク6の点検を警告するため、表示ランプ515を点滅しアラーム519を鳴動する。このとき警告の種類を識別するために表示ランプ515には特定の数字や記号を表示する。そして使用者が満水クリアスイッチをONするのを判定し(ステップS6)、満水クリアスイッチがONしたらステップS4に戻りサブタンク用赤外線センサS33の検知が解除されるまで吸引ポンプ53を停止したまま表示ランプ515とアラーム519による警告を継続する。
【0081】
ステップS4でサブタンク用赤外線センサS33が検知しない場合は、メインタンク用水位センサS32がメインタンク20内の尿を検知したか判定する(ステップS7)。メインタンク用水位センサS32による尿の検知は、上述したように、メインタンク20内の尿の水位が満水まで達したかを検知することによって行う。ステップS7によりメインタンク用水位センサS32が満水を検知した場合には、吸引ポンプ53を停止する(ステップS8)。ここで、ステップS8では吸引ポンプ53を停止すると同時に、メインタンク20の点検を警告するため、表示ランプ515を点滅しアラーム519を鳴動する。このとき警告の種類を識別するために表示ランプ515には特定の数字や記号を表示する。そして使用者が満水クリアスイッチをONするのを判定し(ステップS9)、満水クリアスイッチがONしたらステップS10に進みメインタンク用赤外線センサS31が検知しているか判定する(ステップS10)。これは、メインタンクに貯留した尿が廃棄されないままでエラーが解除されることを防止するためである。メインタンク用赤外線センサS31が検知している場合は、ステップS8に戻りメインタンク用赤外線センサS31の検知が解除されるまで吸引ポンプ53を停止したまま表示ランプ515とアラーム519による警告を継続する。
ステップS10でメインタンク用赤外線センサS31が検知していない場合は、吸引ポンプ53を駆動し(ステップS11)、メインタンク用水位センサS32が検知するか再判定する(ステップS12)。ここで吸引ポンプ53を駆動するのは、本実施例ではメインタンク用水位センサS32は吸引ポンプ53の駆動モータ53bの電流変化を検出して満水を検知するためである。そしてステップS12でメインタンク用水位センサS32が再び検知したらステップS8に戻り吸引ポンプ53を停止し表示ランプ515とアラーム519による警告を継続する。
ステップS12でメインタンク用水位センサS32が検知しない場合には、吸引ポンプ53を停止して始めの制御に戻る(ステップS13)。ここでステップS11からS13までの間は、ステップS12でのメインタンク用水位センサの検知判定のため吸引ポンプ53を駆動することになるが、この時間は2秒間程度が適当である。
なお、ステップS2、S5、S8で発した表示ランプ514、515とアラーム519による警告は、各々の状態が解除されると同時に警告も解除する。
また、メインタンク用赤外線センサS31およびサブタンク用赤外線センサS33で使用する発光部421、461では、連続的に発光しても良いが、間欠的(例えばパルス状)に発光するよう制御しても良い。間欠的に発光することで、連続的に発光するのに比べて発光素子の寿命を延ばすことができる。さらに、受光部422、462で非発光時の受光量を検出することにより、外部からの赤外線(例えば太陽光からの赤外線や室内灯からの赤外線)の量が発光部421、461から発する赤外線の量よりも多過ぎてセンサが正常に働かない状態を検知して警告することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…自動収尿装置、2…メインタンク部、3…本体部、6…サブタンク、7…脱臭フィルタ、20…メインタンク、21…メインタンク本体、21a…上面、21b…側面、21c…取っ手、21d…底面、22…開口部、23…メインタンク蓋、23a…導入口、23b…吸気口、23e…ボール弁収容部、41…本体蓋部、42…タンク収納部、42a…タンク収納凹面、43…本体底部、43a…逃げ凹部、43b…転倒防止部、44…タンクカバー、45…ポンプ格納部、46…本体背面カバー、47…操作パネル部、47a…操作パネル、47b…パネル台、53…吸引ポンプ、53a…ポンプ本体、53b…駆動モータ、53c…振動吸収体、53d…ポンプ連結部材、53e…ポンプケース、54…空気排出パイプ、57…外部端子、61…サブタンク本体、62…サブタンク蓋、230…尿吐出パイプ、231…吸気停止手段、231a…ボール弁、231b…ボール弁支持部材、231c…収容部底蓋、231d…フロート、232…泡避けネット、413…尿流路パイプ、414…空気流路パイプ、415…蓋連結機構、421…発光部、422…受光部、423…制御基板、423a…制御装置、423b…不揮発性メモリ、423c…揮発性メモリ、511〜515…表示ランプ、516…満水クリアスイッチ、517…手動入/切スイッチ、518アラーム、519…一時消音スイッチ、D…オムツ、R…尿レシーバ、S1…レシーバ用尿センサ、S2…レシーバ用便センサ、S31…メインタンク用赤外線センサ、S32…メインタンク用水位センサ、S33…サブタンク用赤外線センサ、T…チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿レシーバで受けた尿を回収して溜めておくメインタンクと、
前記メインタンクを支持する本体ケースと、
空気流路を通して前記メインタンク内の空気を吸引することにより、前記尿レシーバで受けた尿を尿流路を通して前記メインタンク内に吸入する吸引ポンプと、
尿を検出する尿センサと、
前記尿センサの検出結果に基づいて制御指令を出力する制御装置と、を備えた自動収尿装置において、
前記尿センサは前記メインタンクに溜められた尿の上部に存在する泡を検出可能なメインタンク用赤外線センサを備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記メインタンクに溜められた尿の廃棄を警告するための報知手段を備え、
前記メインタンクは前記本体ケースに着脱可能に設置され、
前記制御装置は前記メインタンク用赤外線センサの検出結果に基づいて前記報知手段を制御する
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項3】
請求項2において、
操作スイッチ及び表示ランプを配置した操作パネルを前記本体ケースに備え、
前記報知手段は点滅して警告する前記表示ランプと音で警告するアラームとで構成され、
前記操作スイッチは前記アラームの動作を停止する一時消音スイッチを備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記本体ケースはタンク収納凹部を有し、
前記メインタンクは、前記タンク収納凹部に着脱可能に設置されると共に、赤外線を透過する半透明の樹脂材料で形成され、
前記メインタンク用赤外線センサは前記メインタンクの両側に当該メインタンクを介して対向するように配置された発光部及び受光部を備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記尿センサは、前記メインタンク用赤外線センサと、前記メインタンクの尿の水位を検出するメインタンク用水位センサとを備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記メインタンク用水位センサは、前記メインタンク内の尿の水位が上昇すると浮き上がるフロートと、前記フロートの浮き上がりにより前記空気流路の吸気口を閉鎖するボール弁と、前記吸引ポンプの駆動モータの電流変化を検知する検知手段とで構成されている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記メインタンクに溜められた尿の廃棄を警告するための報知手段を備え、
前記メインタンクは前記本体ケースに着脱可能に設置され、
前記制御装置は、前記メインタンク用赤外線センサの検出結果に基づいて前記報知手段を制御すると共に、前記メインタンク用水位センサの検出結果に基づいて前記吸引ポンプの運転を停止または前記報知手段による警告を発するように制御する
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記空気流路の途中に当該空気流路に流入した尿を溜めるサブタンクを備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記尿センサは、前記メインタンク用赤外線センサと、前記サブタンクの尿を検出するサブタンク用センサとを備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記サブタンク用センサは前記サブタンク内に流入された泡を検出可能なサブタンク用赤外線センサで構成されている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記サブタンクは赤外線を透過する半透明の樹脂材料で形成され、
前記サブタンク用赤外線センサは前記サブタンクの両側に当該メインタンクを介して対向するように配置された発光部及び受光部を備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項12】
請求項9において、
前記メインタンクに溜められた尿の廃棄を警告するための報知手段を備え、
前記メインタンクは前記本体ケースに着脱可能に設置され、
前記制御装置は、前記メインタンク用赤外線センサの検出結果に基づいて前記報知手段による警告を発するように制御すると共に、前記サブタンク用センサの検出結果に基づいて前記吸引ポンプの運転を停止するように制御する
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記メインタンクは、尿を溜めるメインタンク本体と、前記メインタンク本体の上面中央部に着脱可能に設置されると共に前記尿流路及び前記空気流路の一部を構成する開口部を隣接して設けたメインタンク蓋と備え、
前記尿流路は前記メインタンク内で水平方向に分岐され反対方向に開口されたT字吐出管を備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項14】
請求項1において、
前記メインタンク内に開口する前記空気流路の吸気口を覆うように泡避けネットを備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記尿センサは、前記メインタンク用赤外線センサと、前記メインタンクに溜められた尿の水位を検出するメインタンク用水位センサとを備え、
前記メインタンク用水位センサは、前記メインタンク内の尿の水位が上昇すると浮き上がるフロートと、前記フロートの浮き上がりにより前記空気流路の吸気口を閉鎖するボール弁とを備え、
前記泡避けネットは、前記空気流路の吸気口、前記フロート及び前記ボール弁を覆うように筒状に形成されている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項16】
請求項1において、
前記吸引ポンプの排気側に脱臭フィルタを備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項17】
請求項16において、
前記空気流路の途中に当該空気流路に流入した尿を溜めるサブタンクを備え、
前記脱臭フィルタは前記本体ケースの背面下部に横長に設置され、
前記サブタンクは前記本体ケースの背面の前記脱臭フィルタの上方空間に設置されている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項18】
尿レシーバで受けた尿を回収して溜めておくメインタンクと、
前記メインタンクを支持する本体ケースと、
空気流路を通して前記メインタンク内の空気を吸引することにより、前記尿レシーバで受けた尿を尿流路を通して前記メインタンク内に吸入する吸引ポンプと、
尿を検出する尿センサと、
前記尿センサの検出結果に基づいて制御指令を出力する制御装置と、を備えた自動収尿装置において、
前記空気流路の途中に当該空気流路に流入した尿を溜めるサブタンクを備え、
前記尿センサは、前記メインタンクに溜められた尿を検出するメインタンクセンサと、前記サブタンクの尿を検出するサブタンク用センサとを備えている
ことを特徴とする自動収尿装置。
【請求項19】
尿レシーバで受けた尿を回収して溜めておくメインタンクと、
前記メインタンクを支持する本体ケースと、
空気流路を通して前記メインタンク内の空気を吸引することにより、前記尿レシーバで受けた尿を尿流路を通して前記メインタンク内に吸入する吸引ポンプと、
尿を検出する尿センサと、
前記尿センサの検出結果に基づいて制御指令を出力する制御装置と、を備えた自動収尿装置において、
前記メインタンク内に開口する前記空気流路の吸気口を覆うように泡避けネットを備え、
前記尿センサは、前記メインタンクに溜められた尿を検出するメインタンクセンサと、前記メインタンクの尿の水位を検出するメインタンク用水位センサとを備え、
前記泡避けネットは前記空気流路の吸気口及び前記メインタンク用水位センサのフロートの両方を覆うように筒状に形成されている
ことを特徴とする自動収尿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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