説明

自動心肺蘇生デバイス

本発明は、患者の胸部を周期的に圧迫するための自動心肺蘇生(CPR)デバイスに関する。当該CPRデバイスは、前部構造であって、当該前部構造に沿って前後に移動する第1の可動ユニット及び第2の可動ユニットを備えた前部構造と、患者の背中の後ろに位置決めされ、当該患者の背中に対して固定された位置に前記前部構造を保持する背中の支持部と、胸部パッドと、各々の一端が前記胸部パッドと回転可能に連結された2本のアームであって、当該アームの各々が前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットのそれぞれ1つに回転可能に連結されている2本のアームと、作動時には、前記胸部パッドが前記患者の胸部を周期的に圧迫するよう、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットを前後に駆動させるよう配置された駆動手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は患者の胸部を周期的に圧迫するための自動心肺蘇生デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
心肺蘇生(CPR)は、応急手当の良く知られた有益な方法である。CPRは、心臓発作、感電、胸部損傷、及び多くの他の原因の後に心停止で苦しんでいる人々を蘇生させるために用いられる。心停止の間、心臓は血液を汲み出すのを止め、心停止を被っている人は、脳への血液供給がないために脳損傷を程なく被ることであろう。したがって血液を体へと圧送するために、CPRは、心臓及び胸腔を圧迫するための反復的な心臓マッサージを必要とする。特に心停止の直後に行われた場合、CPR及び心臓マッサージは心停止の犠牲者を救えることが広く知られてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
心臓マッサージは、心臓マッサージを提供する人が1分間につき80乃至100回の割合で犠牲者の胸骨を反復して押すことが必要である。しかしながら、心臓マッサージが長時間必要とされる場合、心臓及び胸郭の適切な圧迫を維持することは不可能ではないとしても困難である。経験豊かな救護隊員さえ、適切な心臓マッサージを数分間以上維持することはできない。
【0004】
CPRの品質が患者の生存のために非常に重要であるので、信頼性が低い長時間の手で行う心臓マッサージと置き換えるために、機械的な自動CPRデバイスに対するニーズがある。これらのデバイスは、被験者の胸部を周期的な態様で圧迫し、解放する。斯様な自動CPRデバイスが欧州特許公報EP 1915980に記載されている。伝達デバイスが、交互に回転するエレメントの交互の回転動を直線状の往復動へと蘇生デバイス中で変換する。交互に回転するエレメントは、回転エネルギを例えば電気モータ又は油圧システムから入力する。欧州特許公報EP 1915980の大きな欠点は、モータが最適な動作領域の近くで動いていないということである。これは、自動CPRデバイスにとっては最適解ではなく、モータ特性と人間の胸郭特性のミスマッチに起因して電力消費が最適ではない。何故ならば自動CPRデバイスは持ち歩けることを必要とするので、重量及びエネルギ効率が重要な要因だからである。以下が考慮されねばならない。
【0005】
自動CPRを適用するには、所望する特定の台形状の変位プロフィールによって胸郭が押圧されることを必要とする。斯様なプロフィールの例が、図1に描かれている。これは、1分間につき90回の圧迫頻度に対して所望される圧迫波形である。図1の圧迫波形を得るために必要な力が、図2に示されている。
【0006】
人間の胸郭の力対圧迫の関係が図3に示されている。圧迫の最初の3 cmまでは胸部はかなり剛性に富み、比較的小さな力で充分である。より大きな圧迫深さに対しては胸部は非常に固くなり、必要な力は大きく増す。
【0007】
図1に示されている必要な圧迫プロフィールを得るための電力消費の重要な態様は、モータの反復する加速度及び減速度である。通常、モータは回転数をほぼ0 rpmからほぼ5000 rpmまで変えねばならず、次に0 rpmまで減速しなければならず、更に反対方向に再び5000 rpmまで加速せねばならず、再び0 rpmまで制動しなければならない。大きな角加速度は大きなトルクを必要とし、これ故大きな電流を必要とし、出来るだけ小さな慣性モーメントを必要とする。慣性モーメントと、特定の圧迫プロフィールに対する必要角速度及び角加速度とを最小化することは、電力消費が減じられるという成果がある。
【0008】
最初に、所与の定電圧型の電流制御サーボアンプにより駆動されるDCブラシレス・モータを有するシステムを考慮しよう。最高rpm及び最高モータトルクは、最大電圧及び最大電流で決定される。モータ角又はモータ回転数と胸部パッドの位置Xとの間の伝達比Tは一定と看做す。Tが小さい場合、モータは非常に高いrpm nで回転し、小さなトルクをもつ。したがって、胸部パッドの速い加速が可能であるが、大きなモーメント及び大きな力は働くことができない。これは小さな圧迫深さに対しては許容できるが、しかし、より大きな圧迫深さでは、反力及び反動モーメントが非常に大きいことであろう。したがってモータは、この高いトルクを効率的に供給することが出来ず、所望の圧迫深さが実現されず、一方、非常に大きな電流が消費される。これ故、モータの動作は非効率的である。
【0009】
大きなTに対しては、モータは、低いrpm nで回転することであろう。これ故、胸部パッドの加速度は低く、高いモーメント及び高い力が供給されることができる。高い加速度に対しては、高いモータ電圧が必要とされ、モータは自身の最も効率の良い領域にはない。最適効率のためには、モータは自身の最大角速度の約80乃至85%で動作しなければならないことが示された。しかしながら高性能なCPRに対しては、ほぼ100 msの短い立ち上がり時間をもつ圧迫パルスが必要とされ、これゆえ、大きなTは許容できない。
【0010】
上記から、正しいTの選択が簡単ではないことが明白である。加速度と必要な力との間のトレードオフが必要とされ、この結果、人間の非常に非線形な機械的な負荷に対して、固定された伝達率は最適でない。更に、胸郭特性が人によって非常に異なるので、最適なTは人によって著しく変動する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、より最適な動作領域内で機能する、即ち、よりエネルギ効率の良い自動CPRデバイスを提供することである。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、患者の胸部を周期的に圧迫するための自動CPRデバイスは、
−前部構造であって、当該前部構造に沿って前後に移動するよう配置された第1の可動ユニット及び第2の可動ユニットを備えた前部構造と、
−患者の背中の後ろに位置し、患者の背中に対して固定された位置に前記前部構造を維持するよう構成されている背中サポートと、
−胸部パッドと、
−各々の一端が胸部パッドに回転可能に連結された2本のアームであって、各々のアームがそれぞれ第1の可動ユニット及び第2の可動ユニットへと回転可能に連結されている2本のアームと、
−動作時に、胸部パッドが周期的に患者の胸部を圧迫するよう第1の可動ユニット及び第2の可動ユニットを前後に駆動するための駆動手段と、を有する。
【0013】
本発明によるCPRデバイスが有する複数の長所がある。胸部パッドの上部位置から始まって、当該胸部パッドの垂直変位は可動ユニットの水平変位よりも大きい。これはモータの加速に好都合である、何故ならば、胸部パッドの比較的大規模な動きを得るために、比較的小さなモータ角度の変化しか必要としないからである。トレードオフとしては、垂直方向の力が対応して減じられるということである。胸部パッドの垂直変位が増すと、2本のアームの間の角度は減少し、この結果、垂直変位と水平変位との間の比率が減じ、垂直方向の力と水平方向の力との間の比率が増す。このように伝達率は、変位と力との間で圧迫深さの関数として変動する関係がある。小さな圧迫深さでは小さな力と高い加速度が実現され、より大きな圧迫深さでは、要望通り、より大きな供給される力と低い加速度とが実現される。このように伝達比は、圧縮の最初のフェイズでは小さく、圧迫深さと共に増大する。伝達比が連続的な態様で圧迫深さの関数として変化するので、この場合これは連続可変な伝達として説明されることができる。斯様な伝達は、人間の非常に非線形な機械的な負荷に対してより良く適合し、異なる胸郭特性もつ人の治療を容易にする。このように、CPRデバイスはより最適な動作領域で機能している。即ち、よりエネルギ効率が良く、より少ない電力を消費する。これ故、より小さなバッテリしか必要とされず、このように、本発明によるCPRデバイスの重量及びサイズを節約する。このV字型の伝達構造は、これ故自動CPRデバイスの伝達に対するニーズを満たす。
【0014】
好ましい実施例では、自動CPRデバイスの前部構造は、ネジが切られ駆動されるスピンドルを有し、前記第1の可動ユニット及び第2の可動ユニットが、前記前部構造に沿って前後に動くように、ネジが切られたスピンドルに係合するよう配置される。ネジが切られたスピンドル又はネジ状の構成を使用することによって、可動ユニットの迅速且つ正確な制御が可能になり、これ故、患者の胸部に対する胸部パッドの迅速且つ正確な制御が可能になる。このように、例えば回転モータにより駆動されるスピンドルの回転運動が、胸部パッドの並進運動又は直線運動に変換される。必要に応じて、この実施例は、可動ユニットが複数のスピンドルと係合することを可能にする。
【0015】
他の好ましい実施例ではスピンドルは、前記第1の可動ユニット及び第2の可動ユニットを反対方向に動かすよう、逆の先導方向をもつ2つの部分を有する。都合がよいのは、逆ネジを有する2つの部分をもつ1本のスピンドルを使用することで、この結果、ある方向にスピンドルが回転されると可動ユニットをお互いに近づける向きに動かし、反対方向に回転されると可動ユニットをお互いに遠ざける向きに動かす。これに対応して、胸部パッドが患者の胸部を圧迫し、解放する。重量及びコストを節約する1本のスピンドルのみを使用することによって、1本のスピンドルを動かす1つのモータを備えた単純な構造が可能となり、2本のアームの同期した動きを容易にし、したがって、患者の胸部に対する胸部パッドの対称で所望される動きを容易にする。
【0016】
他の好ましい実施例では、自動CPRデバイスの前部構造は、ベルトとプーリとを有するベルトシステムを有し、当該ベルトは巻き付いたプーリにより駆動されるよう配置されており、前記第1の可動ユニット及び第2の可動ユニットが、前記前部構造に沿って前後に移動するよう前記ベルトに連結されている。都合のよいことに、ベルト駆動システムは、より安価で、より低い摩擦を有し、スピンドル構造よりもより低い機械的なノイズをもたらす。より低い摩擦は、より少ない発熱量及びより少ない消費電力に至り、これ故、より少ないバッテリ容量及びより小さな駆動手段、即ちモータしか必要としない。更にまた、スピンドル及びネジ係合された可動ユニットを省略することは、より少ない重量及びより低い重心を有する非常にコンパクトな組み立て高さにも至る。
【0017】
別の好ましい実施例では、ベルトシステムは、ベルトが巻き付けられる別のプーリを有し、当該ベルトシステムが前部構造に沿って延在し、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットが、お互いが反対方向に動くよう、ベルトシステムのそれぞれ相互にある専用の側に連結されるよう各々配置される。都合のよいことに、ある方向にベルトが回転されると、可動ユニットをお互いに近づける向きに動かし、反対方向に回転されると、お互いを遠ざける向きに動かす。これに対応して、胸部パッドが患者の胸部を圧迫し、解放する。
【0018】
他の好ましい実施例では、これまでの2つの実施例にて説明されたベルト及びプーリの代わりに、チェーン及びスプロケットが使用される。これは、耐久性及び剛性があるという長所がある。スプロケットに対するチェーンの如何なる滑りも防止し、したがって速い応答時間をもち、正確である。
【0019】
別の好ましい実施例では、前部構造は、前記第1の可動ユニット及び第2の可動ユニットを前記前部構造に沿って前後に案内するための剛性のある手段を有する。スピンドルの構造よりも幾らかフレキシブルな構造を有するベルトシステムに起因して、例えば可動ユニットの動きを案内するためのある種のレールを使用することが好都合である。
【0020】
別の好ましい実施例では、駆動手段は、電磁モータ、空圧モータ、又は油圧モータからなるグループから選択され、これらは回転力又は直線力の何れかを提供する。本発明は回転運動又は直線運動を都合よく利用し、当該力を、胸部の向きにある胸部パッドの並進運動又は直線運動に変換する。電磁モータ、特にサーボ制御された電磁モータを使用する1つの長所は、所望の圧迫波形に対して、最適な力パルスが得られることである。即ち、力が特定の患者及び彼の体/胸郭特性に対してカスタマイズされることである。
【0021】
別の自動CPRデバイスは、米国特許公開公報US 2004/0230140に記載されているLUCASマシンである。このデバイスは、被験者の胸部を機械的に圧迫/解放するよう胸部接触パッドを往復動させる空気圧駆動のコンプレッサユニットを含む。被験者は、CPR施与の間は背臥位に置かれる。当該コンプレッサユニットは、胸部接触パッドが被験者の胸骨の周りの胸部と機械的な接触をするよう、被験者の胸部の上に垂直に機械的に支持されている。当該発明の利益となるよう、より良く制御された圧迫深さを提供することが説明されていた。即ち当該発明は、よりカスタマイズされた圧迫力を提供し、より少ない重量及びより下部にある重心に起因してより安定且つ安全で、よりエネルギ効率が良いのでより長い動作時間を有し、そして、より少ない音響ノイズを生じる。
【0022】
本発明の実施例が、図面を引用して例の態様のみにて説明されることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】所望する圧迫波形の線図を示す。
【図2】図1の圧迫波形を得るために必要とされる力の線図を示す。
【図3】平均的な人に対する弾性力対圧迫深さの線図を示す。
【図4】本発明の一実施例による自動CPRデバイスの概観的な正面図を示す。
【図5】本発明の一実施例による自動CPRデバイスの斜視図を示す。
【図6】本発明の一実施例による自動CPRデバイスの3つのステージの概観的な正面図を示す。
【図7】2つの異なる伝達部をもつシステムの、シミュレーションされた電力消費の線図を示す。
【図8】本発明の一実施例によるベルト駆動された自動CPRデバイスの、ベルトシステムの概観図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図4は、患者の胸部を周期的に圧迫するための自動CPRデバイスの概観図を示す。当該CPRデバイスは、患者の背中の後ろの位置決めをするための背中サポート41を有する。2本の直立した柱42a、同42bが、背中サポート41の下部に取り付けられている。前部構造43が、直立した柱42a、同42bの上部に接続されている。患者の背中に対して背中サポート41が前部構造43を固定位置に保つよう、又は比較的固定位置に保つように配置されている。背中サポート41が無いと、作動した場合、CPRデバイス全体が患者の胸部から動いていってしまう傾向がある。前部構造43は、当該前部構造43に沿って前後に動くよう配置された第1の可動ユニット及び第2の可動ユニット44a、同44bを有する。CPRデバイスは、患者の胸部に接触して同部を圧迫/解放するよう配置された胸部パッド46を更に有する。胸部パッド46は、胸部エリアに印加する力を有し、又は力を胸部エリア上に分散させるよう配置される。より良く患者の胸部に取り付けるために、接着層が胸部パッド46に塗布されてもよい。2本のアーム 45a、同45bが、一端を胸部パッド46に回転可能に各々連結され、各々のアームは、第1の可動ユニット及び第2の可動ユニット44a、同44bのそれぞれ1つに回転可能に連結されている。2本のアーム45a、同45bが、胸部パッド46の別々の箇所か、又は好ましくは共通の回転軸若しくは回動軸をもつ単一の共通の箇所で、回転可能又は回動可能に胸部パッド46へと連結されている。CPRデバイスは更に、動作した場合、胸部パッド46が患者の胸部を周期的に圧迫するよう、第1の可動ユニット及び第2の可動ユニット44a、同44bを前後に駆動するよう配置された駆動手段47、同48(及び図5の51、52)を有する。当該駆動手段は、回転力を印加する電磁モータ48、又は、より具体的にはブラシ(レスの)DCモータを好ましくは有するが、しかし、可動ユニット44a、同44bが必要とする動きを提供するために、空圧手段又は油圧手段が配置されることもできる。モータ48は好ましくはサーボ制御される。バッテリがモータ48に電力を供給する。モータ48は歯車、はめば歯車、又はプーリ47を回転させるよう配置され、これらは順にスピンドル又は軸51、同52を駆動する。2本のアーム45a、同45bが、スピンドルに対して少ない摩擦をもつボールネジを介して接続されてもよい。好ましくはスピンドルは、逆の先導方向を有する2つの部分51及び52に分割されている。モータ48が例えば時計方向に回転する場合、可動ユニット44a、同44b、及びアーム45a、同45bは内側へと動き、モータ48が例えば反時計方向に回転する場合、可動ユニット44a、同44b、及びアーム45a、同45bは外側へと動く。
【0025】
図6では、自動CPRデバイスの3つのステージの正面図が示されている。待機位置においては、第1の可動ユニット及び第2の可動ユニット44a、同44bは前部構造43の外側の部分の位置にあり、これ故胸部パッドは一番上の位置にある。患者は、彼の背中を背中サポート41の方へ向けて置かれ、彼の体の正面部分を前部構造43に面して置かれる。モータ48がスピンドル51、同52を回転させ始め、第1の可動ユニット及び第2の可動ユニット44a、同44b、アーム45a、同45bがこの場合一緒に内側へと駆動され、したがって、パッドが胸部と接触するまで胸部パッド46は患者へ向かって進み、このように開始位置へと到達する。2本のアーム間の角度は約140度である。胸部パッドは次に、開始位置と終端位置との間を移動する。モータ48は次に反時計回りに回転し、全体の動きは逆になり、開始位置に再度達する。この態様にて、胸部パッド46は患者の胸部を周期的に圧迫する。モータ48の回転運動が、このように胸部パッド46の並進運動へと変換される。
【0026】
通常必要とされる圧迫深さは4 cm及び6 cmの間であり、必要とされる力は800 Nの大きさのことがある。計算上は、モータの回転運動の並進運動への変換が約1000 Nを供給できることを示す。図7では、2つの異なる伝達部を有するシステムのシミュレーションされた消費電力が示されており、一つは本発明によるV字アームをもつ伝達部(VCPR)であり、もう一つは一定の最適歯車比1.67を有する伝達部(CCPR)をもつものである。シミュレーションは、テストシステムの実験データで校正されて、実験値の10%以内の誤差が認められる。両方の事例に対して伝達部のパラメータはPID制御と同様、最小電力に対して最適化されていた。明らかに、本発明による可変伝達部を有するデバイスは、圧迫深さ4乃至5cmに対して約30乃至40%低い、著しく減じられた消費電力を示している。ここで全ての他のファクタは等しい。本システムの更なる長所は、垂直方向のみの運動を保証し、またV字アームに沿って力を分配するCPRデバイスの左右対称性である。
【0027】
図8では、本発明の一実施例によるベルト駆動された自動CPRのベルトシステムの概観図が示されている。上側の図を引用すると、モータ及びギア・システム(図示せず)がプーリの内の1つ82aを時計回りの方向84に駆動する。1本のアーム45aが第1の可動ユニット83aへと連結されており、当該ユニットはベルトシステムの専用の側81aでベルトに連結されていて、この場合、右へと動くことであろう。別のアーム45bが第2の可動ユニット83bへと連結されており、当該ユニットはベルトシステムの別の専用の側81bでベルトに連結されていて、この場合、左へと動くことであろう。したがって、胸部パッド46は患者へ向かって下に移動する。下側の図を引用すると、モータの回転方向85を逆転させることは、アーム45a、同45b及び胸部パッド46を反対方向に移動させることになろう。好ましくは、プーリが水平に回転するよう、即ち患者の背中と平行な面内で回転するよう、ベルトシステムが構成される。しかしながら、プーリが垂直に回転するよう、即ち患者の背中に対して直角な平面内で、前部構造43の延在部に沿った平面で回転するよう、ベルトシステムが構成されることもできる。この場合、アーム45a、同45bの内の1つは、他のアームよりも長い。ベルトは、好ましくはポリマ材でできている。本発明は、好ましくは歯の形をした、即ちタイミングベルト及びタイミングプーリを使用する。ベルトは、プーリの周囲にある噛み合い溝にフィットする等間隔に置かれた横歯をもっている。
【0028】
チェーン・システムでは、動作原理は前述の実施例と類似しており、プーリ及びベルトが、それぞれスプロケット及びチェーンと置き換えられるという差がある。
【0029】
開示された実施例の特定の具体的な詳細が、限定目的よりもむしろ、本発明の明白で完璧な理解を提供するよう、説明目的のために記載されている。しかしながら本発明が、本開示の趣旨及び範囲から著しく逸脱すること無く、本願明細書で記載された詳細に精確に合致しない他の実施例において実践されるかも知れないことが当業者により理解されよう。例えば本発明は、2本のアームのみ、2つの可動ユニットのみ、2つのプーリのみ、又は2つのスプロケットのみを有するCPRデバイスを請求することに限定されない。更に、この意味において、及び簡潔さ及び明快さのために、周知の装置、周知の回路、及び周知の方法論の詳細な説明は、不必要な詳細と、考え得る混同とを回避するために省略された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の胸部を周期的に圧迫するための自動CPRデバイスであって、
−前部構造であって、当該前部構造に沿って前後に移動する第1の可動ユニット及び第2の可動ユニットを備えた前部構造と、
−患者の背中の後ろに位置決めされ、当該患者の背中に対して固定された位置に前記前部構造を保持する背中の支持部と、
−胸部パッドと、
−各々の一端が前記胸部パッドと回転可能に連結された2本のアームであって、当該アームの各々が前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットのそれぞれ一つに回転可能に連結されている2本のアームと、
−作動時には、前記胸部パッドが前記患者の胸部を周期的に圧迫するよう、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットを前後に駆動させる駆動手段と、
を有する自動CPRデバイス。
【請求項2】
前記前部構造が、ネジが切られ駆動されるスピンドルを有し、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットが、前記前部構造に沿って前後に移動するよう当該ネジが切られたスピンドルに係合していることを特徴とする、請求項1に記載の自動CPRデバイス。
【請求項3】
前記スピンドルが、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットを反対方向に動かすよう、逆の先導方向をもつ2つの部分を有することを特徴とする、請求項2に記載の自動CPRデバイス。
【請求項4】
前記前部構造が、ベルトとプーリとを有するベルトシステムを有し、当該ベルトが、巻き付けられた当該プーリにより駆動され、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットが前記前部構造に沿って前後に動くよう、前記ベルトに連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動CPRデバイス。
【請求項5】
前記ベルトシステムが、前記ベルトが巻き付けられる別のプーリを有し、当該ベルトシステムが前記前部構造に沿って延在し、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットが、お互いに反対方向へと動くよう前記ベルトシステムのそれぞれ相互にある専用の側に連結されていることを特徴とする、請求項4に記載の自動CPRデバイス。
【請求項6】
前記前部構造がチェーンとスプロケットとを有するチェーン・システムを有し、当該チェーンが当該プロケットに巻き付けられることにより駆動され、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットが、前記前部構造に沿って前後に動くよう前記チェーンに連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動CPRデバイス。
【請求項7】
前記チェーン・システムが、前記チェーンが巻き付けられる別のスプロケットを有し、当該チェーン・システムが前記前部構造に沿って延在し、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットが、お互いに反対方向へと動くよう前記チェーン・システムのそれぞれ相互にある専用の側に連結されていることを特徴とする、請求項6に記載の自動CPRデバイス。
【請求項8】
前記前部構造が、前記第1の可動ユニット及び前記第2の可動ユニットを前記前部構造に沿って前後に案内するための剛性がある手段を有することを特徴とする、請求項4乃至7の何れか一項に記載の自動CPRデバイス。
【請求項9】
前記駆動手段が、回転力を提供する電磁モータ、空気圧モータ、又は油圧モータのグループから選択されることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか一項に記載の自動CPRデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−507326(P2012−507326A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533864(P2011−533864)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054692
【国際公開番号】WO2010/049861
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】