説明

自動搬送台車の走行試験装置

【課題】自動搬送台車を、工場や倉庫内に敷設した実際の走行レールへ搬入設置することなく、各種試験項目の確認、異常原因の調査等を簡易迅速に、確実に行うことができるようにした自動搬送台車の走行試験装置を提供すること。
【解決手段】自動搬送台車OHVを搭載し、固定可能とした試験台車1上に、自動搬送台車OHVの駆動側車輪W1、W1を回動可能に支持するようにした2個一対の車輪受けローラ21r、22rを配し、かつ各車輪受けローラ軸21、22にトルク制御器3を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送台車の走行試験装置に関し、特に、液晶や半導体の製造工場や自動倉庫内を走行して被搬送物を搬送するようにした自動搬送台車を、稼働状態にした工場や倉庫内に敷設した実際の走行レールへ搬入設置することなく、静止位置での各種試験項目の確認や異常原因の調査等を行うようにした自動搬送台車の走行試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶や半導体の製造工場或いは自動倉庫内の所定位置に敷設した走行レールRに沿って、特に限定されるものではないが、例えば、図9に示すような自動搬送台車OHVを走行するようにし、かつ部品等の被搬送物を収納したカセット(図示省略)を自動搬送台車OHVに搭載してカセットの受け渡しを行う所定のアドレス位置まで自動搬送するようにしている。
この自動搬送台車OHVの走行は、特に限定されるものではないが、例えば、図8に示すように、ループ状の走行レールRに沿ってカセットの受け渡しを行う複数のアドレス位置Sを配設し、地上側に配設したコントローラCより走行レール上を走行する各自動搬送台車OHVに無線通信にて指令を送るようにし、アドレス位置Sを指定して走行させ、かつ指定アドレス位置でカセットの受け渡しを行うようにしている。
【0003】
ところが、新設或いは改装した工場や倉庫の稼働前に、すなわち、自動搬送台車OHVを走行させて被搬送物の搬送開始前に、各自動搬送台車が正常に搬送、稼働するか否かを試験する必要がある。
この自動搬送台車OHVの試験は、現場の工場や倉庫内に敷設した実際の走行レール上を走行させて、予め定められた複数項目の試験を行うようにしている。
【0004】
しかしながら、走行レール上に搬入する自動搬送台車の試験項目が多く、また台数も多いため、自動搬送台車OHVを1台づつ走行レール上を走行させて試験を行うには多大の労力を要するとともに、自動搬送台車OHVの走行中には不具合が発見できても自動搬送台車OHVがメンテナンス或いは調整を行える箇所まで搬送した後でなければ調整を行うことができないので、多大の時間を要するという問題があった。
また、高所での走行試験作業であるため、危険が伴うという問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、自動搬送台車の走行試験の有する問題点に鑑み、自動搬送台車を、工場や倉庫内に敷設した実際の走行レールへ搬入設置することなく、各種試験項目の確認、異常原因の調査等を簡易迅速に、確実に行うことができるようにした自動搬送台車の走行試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動搬送台車の走行試験装置は、自動搬送台車を搭載し、固定可能とした試験台車上に、自動搬送台車の駆動側車輪を回動可能に支持するようにした2個1対の車輪受けローラを配し、かつ各車輪受けローラ軸にトルク制御器を配設したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、自動搬送台車の前後の駆動側車輪を、それぞれ2個1対とした車輪受けローラ間にて回動可能に支持できるように形成するとともに、前後の車輪受けローラ軸間を連動するように構成することができる。
【0008】
また、車輪受けローラを車輪受けローラ軸と一体に形成することができる。
【0009】
また、トルク制御器を、外部から視認できる各車輪受けローラ軸の軸端に取り付けることができる。
【0010】
また、自動搬送台車を、試験台車にラッシングベルトを用いて固定するようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動搬送台車の走行試験装置によれば、自動搬送台車を搭載し、固定可能とした試験台車に、自動搬送台車の駆動側車輪を回動可能に支持するようにした2個1対の車輪受けローラを配し、かつ各車輪受けローラ軸にトルク制御器を配設することにより、自動搬送台車を走行レール上に配設することなく、定位置の静止状態で配置した試験台車上に搭載するだけで、自動搬送台車を直接或いは地上側に配備したコントローラからの信号にて、各種の試験を行うことができるので、作業者による試験結果の視認が簡易に、確実に、迅速に行えるとともに、調整も静止位置で容易に行えるため、試験すべき自動搬送台車が多くあっても短時間で行うことができる。
【0012】
また、自動搬送台車の前後の駆動側車輪を、それぞれ2個1対とした車輪受けローラ間にて回動可能に支持できるように形成するとともに、前後の車輪受けローラ軸間を連動するように構成することにより、前後の車輪の回転数を同じにすることができる。
【0013】
また、車輪受けローラを車輪受けローラ軸と一体に形成することにより、該車輪受けローラ上に支持される車輪の回転駆動が正確に伝達することができる。
【0014】
また、トルク制御器を、外部から視認できる各車輪受けローラ軸の軸端に取り付けるようにすることにより、外部から視認が正確に、簡易に行うことができる。
【0015】
また、自動搬送台車を、試験台車にラッシングベルトを用いて固定するようにすることにより、駆動側車輪の高速回転時或いは急停止時でも安定して支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の自動搬送台車の走行試験装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図7に、本発明の自動搬送台車の走行試験装置の一実施例を示す。
本発明の自動搬送台車の走行試験装置Tは、試験台車1と、該試験台車1上に配備され、かつカセット等を搭載するようにした自動搬送台車OHVの前後の駆動側車輪W1、W1を支持する車輪受け装置2と、従動側車輪を静止状態で支持するようにした車輪受け台13とより構成する。
この試験台車1は、自動搬送台車OHVを搭載可能とした大きさを備え、必要に応じて可動できるように下部にはアジャスタ付キャスター11、11を備え、前後位置には移動させるときの手摺12、12を突設するとともに、試験台車側部上には、図6に示すように、自動搬送台車OHVの従動側車輪W2、W2を静止状態で支持する車輪受け台13、13を設けて構成する。
なお、試験台車上に搭載する自動搬送台車OHVと試験台車1との固定は、図2に示すように、特に限定されるものではないが、例えば、試験台車1の手摺12と自動搬送台車OHVとの間にラッシングベルト4、4を締結するようにして行うか、他の方法で自動搬送台車OHV上から脱輪、落下しないよう固定するようにする。
【0018】
車輪受け装置2は、図1〜図5に示すように、自動搬送台車OHVの左右いずれかの片側に配設した前後2つの駆動側車輪W1、W1をそれぞれ支持するようにするもので、各駆動側車輪W1、W1の支持は、前後近設し、対峙するようにして平行配設する2本の車輪受けローラ軸21、22の両端部を軸受け23、23を介して試験台車1のフレームに回転可能に支持するとともに、この各車輪受けローラ軸21、22の一端側、例えば、外部から視認し易い側面にトルク制御器3、3を取り付け、これを各駆動側車輪W1、W1の支持する位置に配設して構成する。
【0019】
また、この2本1対とする車輪受けローラ軸21、22には、トルク制御器3と反対側にプーリー24、25を取り付けるとともに、前後の車輪位置に、車輪受けローラ軸21、22の軸径よりも大径とした車輪受けローラ21r、22rを配設する。
そして、内側に配設する車輪受けローラ軸21、22のプーリー24、24間及び外側に配設する車輪受けローラ軸22、22のプーリー25、25間に、それぞれベルト26、27を張架して、2本の車輪受けローラ軸21、21及び車輪受けローラ軸22、22が同期するようにする。
なお、このベルト26、27の張力を張設するために、図7に示すように、張架ベルトの中間位置に張力調整装置、例えば、テンションプーリー26p、27pを配設することができる。
そして、この車輪受けローラ21r、22rの中間部上方に駆動側車輪W1を搭載するようにして支持し、これにより駆動側車輪W1の回転が車輪受けローラ21r、22rに伝達されるようにする。
【0020】
なお、自動搬送台車OHVは、特に限定されるものではないが、例えば、図9に示すように、走行レールRに沿って自走するように構成するとともに、上部にカセットを搭載する台DとアンテナAを、側部には表示灯Lと表示器及び操作スイッチVFDとを備え、コントローラCより発信される無線指令をアンテナAにて受信し、内蔵した制御回路(図示省略)にてその指令に応じて走行レールRに沿って走行駆動し、指定されたアドレス位置Sでのカセットの受け渡し等を行うようにする。
表示灯Lでは、赤色、黄色などの点灯にて異常、手動動作時、自動動作時等を表示して外部からも容易に視認できるようにし、またVFDの表示器部分でメインメニュー表示、エラー表示、アドレス表示等を行い、操作スイッチでアドレス指定をして走行させるようにする。
【0021】
次に、本発明の自動搬送台車の走行試験装置の作用について説明する。
走行試験装置Tは、自動搬送台車の製造工場或いは自動搬送台車OHVを配備する製造工場や自動倉庫内の試験を行い易い位置に静止状態で配設し、この走行試験装置T上に試験をする自動搬送台車OHVをリフタ或いはクレーンにて搭載する。この場合、自動搬送台車OHVの駆動側車輪W1、W1は車輪受け装置2の車輪受けローラ21r、22r間上に、従動側車輪W2、W2は車輪受け台13、13上に搭載されるようにする。
なお、既に自動搬送台車OHVが走行レールR上に配設されている場合には、メンテナンスシフタ或いはメンテナンスリフタにて試験をする自動搬送台車OHVを走行レールR上から外し、走行試験装置T上に移すようにする。
【0022】
走行試験装置T上に配設された自動搬送台車OHVを締結具、特に限定されるものではないが、例えば、ラッシングベルト4、4を用いて走行試験装置Tの手摺12と自動搬送台車OHVを締結固定し、試験時に受ける振動等にても安定して支持できるようにする。
【0023】
静止、固定された走行試験装置T上で、自動搬送台車OHVを手動でのスイッチ類の動作確認、表示灯の点灯確認などを行うとともに、コントローラCより発信される無線指令にて走行駆動時と同じようにして駆動側車輪を回転駆動する。これはコントローラCより発信される無線指令をアンテナAにて受信し、内蔵した制御回路にてその指令に応じて走行させるようにすると、駆動側車輪W1、W1は、車輪受け装置2の車輪受けローラ21r、22r間で支持され回転駆動する。この場合の駆動側車輪W1、W1の駆動状況は、車輪受けローラ21r、22rより車輪受けローラ軸21、22に配設したトルク制御器3、3にてトルクを調整することにより、自動搬送台車OHVが走行する際の負荷を再現することができる。
【0024】
また、この自動搬送台車OHVの試験項目としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動搬送台車OHVの電源投入の良否、非常停止ボタンの動作確認、VFDによる原点復帰画面表示及び移動画面表示、リモコンによる走行前ボタン、走行後ボタン、原点復帰ボタンの動作確認、VFDによる各アドレスの原点復帰、移動動作確認、さらにはコントローラによる原点復帰、自動運転切り替え動作確認、通信ログ確認等を行うが、これらはすべて固定された走行試験装置T上で行うことができるので、作業者による視認が確実で、かつ各種の試験項目も迅速に行うことができる。
【0025】
以上、本発明の自動搬送台車の走行試験装置について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の自動搬送台車の走行試験装置は、工場や倉庫内に敷設した実際の走行レールへ自動搬送台車を搬入設置することなく、静止状態で各種試験項目の確認、異常原因の調査等を行えるという特性を有していることから、新たに製作或いは修理をした自動搬送台車を静止位置で試験する用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の自動搬送台車の走行試験装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】同側面図である。
【図4】車輪受けローラによる駆動側車輪の支持部の詳細図である。
【図5】車輪受けローラ軸の詳細図である。
【図6】従動側車輪の支持部の詳細図である。
【図7】前後の車輪受けローラ軸間の連動説明図である。
【図8】自動搬送台車が走行する製造工場や自動倉庫内の説明図である。
【図9】自動搬送台車の外観説明図である。
【符号の説明】
【0028】
T 走行試験装置
A アンテナ
C コントローラ
S アドレス位置
L 表示灯
R 走行レール
W1 駆動側車輪
W2 従動側車輪
OHV 自動搬送台車
VFD 表示器及び操作スイッチ
1 試験台車
12 手摺
13 車輪受け台
2 車輪受け装置
21 車輪受けローラ軸
21r 車輪受けローラ
22 車輪受けローラ軸
22r 車輪受けローラ
23 軸受け
24 プーリー
25 プーリー
26 ベルト
27 ベルト
3 トルク制御器
4 ラッシングベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動搬送台車を搭載し、固定可能とした試験台車上に、自動搬送台車の駆動側車輪を回動可能に支持するようにした2個一対の車輪受けローラを配し、かつ各車輪受けローラ軸にトルク制御器を配設したことを特徴とする自動搬送台車の走行試験装置。
【請求項2】
自動搬送台車の前後の駆動側車輪を、それぞれ2個一対とした車輪受けローラ間にて回動可能に支持できるように形成するとともに、前後の車輪受けローラ軸間を連動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の自動搬送台車の走行試験装置。
【請求項3】
車輪受けローラを車輪受けローラ軸と一体に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の自動搬送台車の走行試験装置。
【請求項4】
トルク制御器を、外部から視認できる各車輪受けローラ軸の軸端に取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の自動搬送台車の走行試験装置。
【請求項5】
自動搬送台車を、試験台車にラッシングベルトを用いて固定するようにしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の自動搬送台車の走行試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−101993(P2008−101993A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284021(P2006−284021)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)