説明

自動温度衝撃試験システム

【課題】搬送動作が単純で信頼性が高く、更には長時間に渡る低温試験を行うことができる、自動温度衝撃試験システムを得る。
【解決手段】製品を搬入する搬入口及び搬出する搬出口と、搬入された製品を装置内に一定時間維持すべく製品を上下方向及び左右方向に循環移動させるエレベーターユニットと、当該装置内を所定の低温度に冷却する冷却コイルユニットとを具備した冷却試験装置と、製品を搬入する搬入口及び搬出する搬出口と、搬入された製品を装置内に一定時間維持すべく製品を上下方向及び左右方向に循環移動させるエレベーターユニットと、当該装置内を所定の高温度に過熱する加熱コイルユニットとを具備した加熱試験装置とを連続配置させてラインに組み込む。冷却コイルユニットは、冷却試験装置内において2機設置し、一方の冷却コイルユニットの運転中において他方の冷却コイルユニットの除霜を行い、前記動作を交互に繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の温度衝撃試験装置に関し、特に低温から高温までの温度試験をインライン化して自動且つ連続で行うことができる、自動温度衝撃試験システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の性能評価試験として温度試験が行われている。該温度試験は、従来は一般的に恒温槽と呼ばれる温度試験装置の中に製品を収納し、所定の温度(高温又は低温)にて一定時間維持した後、製品を取り出して動作検査を行うものである。該温度試験装置にあっては、試験処理を一度に複数行うバッチ方式となり、製造ラインに組み入れて連続的に温度試験を行うことができなく、動作検査時での温度にばらつきが生じてしまうという欠点があった。
【0003】
また、コンベア形式の温度試験装置として、所定の温度(高温又は低温)に維持したトンネル内を、コンベアに製品を載置して通過させることにより温度試験を行うものもある。該温度試験装置にあっては、製造ラインに組み入れて連続的に温度試験を行うことができるが、製品の数量が多い場合又は試験時間を長く取る場合には装置が大型化してしまうという欠点があった。
【0004】
上記欠点を解決すべく、特開07−174688号公報の『恒温試験装置』では、製品を格納するための格子状の製品格納棚と、所定温度の空気を供給するための空気供給装置と、前記製品格納棚の各々に対して前記空気供給装置から供給される熱量が等しくなるように空気を分配する分配板とを設けた恒温試験装置において、製品格納棚の製品を自由に搬送移動できる搬送ロボットを内蔵させ、更にシャッターを設けた搬入搬出口を装置に開け、コンベアにて製品の搬入搬出が行えることを特徴とした温度試験装置について記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平07−174688
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特開平07−174688号公報に記載のものは、製品を格納するための製品格納棚が格子状に固定されており、各々の製品格納棚に供給される空気の熱量を均一にするための分配板を設けても物理的な位置が異なるため、熱量を完全に均一にすることは困難であった。また、搬送移動をX−Y方向に移動する搬送ロボットで行うため、物理的に位置が異なる製品の搬送時間が各々異なり時間制御が複雑であった。更には前記搬送ロボット自体が低温又は高温の装置内で動作を行うため動作不良の危険性があるという、幾つかの問題点があった。
【0007】
また、上記公報を始め従来の温度試験装置において低温試験を行う場合、冷却装置より発生した冷却空気を装置内に送風しているが、低温試験を長時間連続して行うと前記冷却装置に霜が付着して運転が停止してしまい、24時間連続運転等の長時間に渡る低温試験が行えないという問題点があった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解決するために成されたものであり、電子機器の温度試験装置に関し、特に特に低温から高温までの温度試験をインライン化して自動且つ連続で行うことができる温度衝撃試験装置において、温度試験時及び動作検査時での温度を均一にすることができ、搬送動作も単純で信頼性が高く、更には長時間に渡る低温試験を行うことができる、自動温度衝撃試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の自動温度衝撃試験システムは、ラインより製品を搬入する搬入口及びラインに製品を搬出する搬出口と、搬入された製品を所定温度に設定した装置内に一定時間維持すべく製品を上下方向及び左右方向に循環移動させるエレベーターユニットと、当該装置内を所定の低温度に冷却する冷却コイルユニットとを具備した冷却試験装置と、ラインより製品を搬入する搬入口及びラインに製品を搬出する搬出口と、搬入された製品を所定温度に設定した装置内に一定時間維持すべく製品を上下方向及び左右方向に循環移動させるエレベーターユニットと、当該装置内を所定の高温度に過熱する加熱コイルユニットとを具備した加熱試験装置とを連続配置させてラインに組み込む。
【0010】
上記エレベーターユニットは、複数個の製品を一列に載置したトレーを複数段架け渡して上昇させる上昇エレベーターと、複数個の製品を一列に載置したトレーを複数段架け渡して下降させる下降エレベーターと、前記上昇エレベーターの最上部において当該位置にあるトレーを下降エレベーターの最上部に移動させる移動手段と、前記下降エレベーターの最上部に移動したトレー上の製品を当該トレー上において一個ずつ隣に移動させる移動手段と、前記下降エレベーターの最下部において当該位置にあるトレーを上昇エレベーターの最下部に移動させる移動手段とを具備して構成する。
【0011】
上記冷却コイルユニットは、冷却試験装置内において2機設置し、一方の冷却コイルユニットの運転中において他方の冷却コイルユニットの除霜を行い、前記動作を交互に繰り返して冷却コイルユニットの運転を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動温度衝撃試験システムによれば、低温から高温までの温度試験をインライン化して自動且つ連続で行うことができる温度衝撃試験装置において、温度試験時及び動作検査時での温度を均一にすることができ、搬送動作も単純で信頼性が高く、更には長時間に渡る低温試験を行うことができるという絶大なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を図を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の自動温度衝撃試験システムを構成する冷却試験装置及び加熱試験装置の平面断面模式図であり、図2は本発明の自動温度衝撃試験システムを構成する冷却試験装置の側面断面模式図である。該図に示すように、本発明の自動温度衝撃試験システムは、冷却試験装置1と加熱試験装置19を製造ラインや検査ライン等に組み込んでインライン化し、製品を一個ずつ自動且つ連続的に温度衝撃試験を行うことができるものである。
【0015】
冷却試験装置1は、断熱筐体で組まれた装置の前面において、ラインより製品36を搬入する搬入口13及びラインに製品36を搬出する搬出口16を設け、前記装置内において、搬入された製品36を所定温度に設定した装置内に一定時間維持すべく製品36を上下方向及び左右方向に循環移動させるエレベーターユニット9と、当該装置内を所定の低温度に冷却する冷却コイルユニット2,3とを具備して構成する。
【0016】
上記搬入口13の前面には装置内の設定温度を維持すべくエアシリンダー29により開閉を行う搬入口シャッター14を設け、同様に搬出口16の前面には搬出口シャッター17を設ける。更に、前記搬入口13より搬入された製品36をエレベーターユニット9まで移送する搬入移送機12及びエレベーターユニット9より製品36を搬出口16まで移送する搬出移送機15を、搬入口13及び搬出口16とエレベーターユニット9との間に設ける。
【0017】
また、上記冷却コイルユニット2,3は、各々後方ダンパー4と冷却コイル5と再熱ヒーター6と冷却ファン7及び前方ダンパー8を連接して構成する。該冷却コイルユニット2,3は、冷却試験装置1内において冷却コイルユニットA2と冷却コイルユニットB3の2機設置し、例えば一方の冷却コイルユニットA2の運転中において他方の冷却コイルユニットB3の除霜を行い、前記動作を交互に繰り返して冷却コイルユニット2,3の運転を行う。
【0018】
図5は本発明の自動温度衝撃試験システムを構成する冷却試験装置内のダンパー動作説明図であり、(a)は除霜中の状態を示し(b)は冷却運転中の状態を示している。冷却コイル5に付着した霜の除霜を行う場合、(a)で示したように後方ダンパー4及び前方ダンパー8内の各ルーバー37を閉じ、冷却コイル5内の図示しないヒーターに通電することにより行える。除霜により発生した水は図示しないドレーンにより装置外に排出される。また、除霜動作が終了して冷却運転を開始する場合、(b)で示したように後方ダンパー4及び前方ダンパー8内の各ルーバー37を開け、冷却コイル5及び冷却ファン7を動作させることにより行える。
【0019】
なお、冷却コイルユニット2,3内の再熱ヒーター6は、装置内の温度が設定値以下に下がった際に通電して下がり過ぎた温度を上げて温度調整を行うために使用され、図示しない温度センサ及び制御装置により装置内の温度を設定した低温度に維持することができる。
【0020】
加熱試験装置19は、断熱筐体で組まれた装置の前面において、ラインより製品36を搬入する搬入口24及びラインに製品36を搬出する搬出口26を設け、前記装置内において、搬入された製品36を所定温度に設定した装置内に一定時間維持すべく製品36を上下方向及び左右方向に循環移動させるエレベーターユニット9と、当該装置内を所定の高温度に過熱する加熱コイルユニット20とを具備して構成する。
【0021】
上記搬入口24の前面には装置内の設定温度を維持すべくエアシリンダー29により開閉を行う搬入口シャッター25を設け、同様に搬出口26の前面には搬出口シャッター27を設ける。
【0022】
また、上記加熱コイルユニット20は、加熱ファン21とヒーター22及び吹出グリル23を連接して構成する。
【0023】
上記エレベーターユニット9は、複数個の製品36を一列に載置したトレー35を複数段架け渡して上昇させる上昇エレベーター10と、複数個の製品36を一列に載置したトレー35を複数段架け渡して下降させる下降エレベーター11と、前記上昇エレベーター10の最上部において当該位置にあるトレー35を下降エレベーター11の最上部に移動させる移動手段と、前記下降エレベーター11の最上部に移動したトレー35上の製品36を当該トレー35上において1個ずつ隣に移動させる移動手段と、前記下降エレベーター11の最下部において当該位置にあるトレー35を上昇エレベーター10の最下部に移動させる移動手段とを具備して構成する。
【0024】
上記上昇エレベーター10は、エレベーターユニット9の上部に設置された上昇用モーター30にて駆動され、下降エレベーター11は、エレベーターユニット9の上部に設置された下降用モーター31にて駆動される。なお、前記上昇用モーター30及び下降用モーター31は、低温又は高温の装置内でも安定動作を行わせるべく断熱保護される。
【0025】
図3は冷却試験装置及び加熱試験装置に内蔵するエレベーターユニット内の上昇エレベーター動作説明図であり、上記上昇用モーター30にて回転駆動される左右のギア33のチェーン32に固定された受け金具34に、複数個の製品36を載置したトレー35を複数段架け渡した状態を示している。該図において、上昇エレベーター10が図示しない制御装置にて上昇指令を受けると、上昇用モーター30にてギア33を図中矢印方向に回転させることにより、トレー35が上方(Y方向)に一段分上昇移動する。次に、最上部にあるトレー35は図示しないエアシリンダーにて後方(Z方向)すなわち下降エレベーター11の最上部に水平移動する。
【0026】
次に、図4は冷却試験装置及び加熱試験装置に内蔵するエレベーターユニット内における製品の移動状態説明図であり、上昇エレベーター及び下降エレベーターによるトレー35の移動状態と、前記トレー35に載置した製品36の移動状態を説明する。
【0027】
まず(I)に示すように、例えば加熱試験装置19のエレベーターユニット9において、トレー35aが加熱試験装置19の搬入口24と搬出口26の前面にあるとき、ラインに設置された搬入用のエアシリンダー及びエアチャック等により試験前の製品36aが搬入口24よりトレー35aの右端部に載置される。該位置は常に製品36が無い状態となっている。また、搬出用のエアシリンダー及びエアチャック等により試験済の製品36bが搬出口26よりトレー35aの左端部より搬出される。このとき、別のトレー35bは上昇エレベーターの最上部の1つ前にあり、トレー35cは下降エレベーターの最下部の1つ前にあるとする。
【0028】
次に(II)に示すように、上記操作後に搬入口24及び搬出口26を閉じ、上昇エレベーターを1段分上昇させると共に下降エレベーターを1段分下降させる。このとき、トレー35a,35bは1段分上昇移動し、特にトレー35bは上昇エレベーターの最上部に位置し、トレー35cは1段分下降移動して最下部に位置する。
【0029】
次に(III)に示すように、上昇エレベーターの最上部にあるトレー35bをエアシリンダー(図示せず)にて下降エレベーターの最上部に水平移動させ、下降エレベーターの最下部にあるトレー35cをエアシリンダー(図示せず)にて上昇エレベーターの最下部に水平移動させる。
【0030】
次に(IV)に示すように、下降エレベーターの最上部に移動したトレー35bに載置された複数の商品36を当該トレー35b上において一つずつ隣に移動させる。
【0031】
その後(V)に示すように、下降エレベーターを一段分下降させると共に上昇エレベーターを一段分上昇させる。このとき、図示しない新たなトレー35が搬入口24と搬出口26の前面に来る。そして、上述の一連の操作が再び行われ、製品36が一個ずつ連続して試験されることになる。
【0032】
なお、図1のラインにおいては冷却試験装置1の次工程に低温試験台18が設置され、加熱試験装置19の次工程に高温試験台28が設置されている。前記低温試験台18は冷却試験装置1から搬出された低温度試験済の製品36の動作試験を行い、高温試験台28は加熱試験装置19から搬出された高温度試験済の製品36の動作試験を行うためのものである。従って、冷却試験装置1及び加熱試験装置19内にて動作試験が行えるように動作試験装置を内蔵すれば、前記低温試験台18及び高温試験台28は不要となる。
【0033】
以上のようなシステム構成によれば、予め低温度に設定した冷却試験装置1と予め高温度に設定した加熱試験装置19をインライン化し、前記装置内に製品36を搬入搬出させるだけで低温から高温までの温度変化の急峻な温度衝撃試験を自動且つ連続で行うことができる。また、動作検査も連続で行えるため、検査時の温度を均一させて行える。また、搬送動作もエレベーターユニット9及びエアシリンダーにより単純で信頼性が高く、更には2機の冷却コイルユニット2,3の交互運転により長時間に渡る低温試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の自動温度衝撃試験システムを構成する冷却試験装置及び加熱試験装置の平面断面模式図である。
【図2】本発明の自動温度衝撃試験システムを構成する冷却試験装置の側面断面模式図である。
【図3】冷却試験装置及び加熱試験装置に内蔵するエレベーターユニット内の上昇エレベーター動作説明図である。
【図4】冷却試験装置及び加熱試験装置に内蔵するエレベーターユニット内における製品の移動状態説明図である。
【図5】本発明の自動温度衝撃試験システムを構成する冷却試験装置内のダンパー動作説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 冷却試験装置
2 冷却コイルユニットA
3 冷却コイルユニットB
4 後方ダンパー
5 冷却コイル
6 再熱ヒーター
7 冷却ファン
8 前方ダンパー
9 エレベーターユニット
10 上昇エレベーター
11 下降エレベーター
12 搬入移送機
13 搬入口
14 搬入口シャッター
15 搬出移送機
16 搬出口
17 搬出口シャッター
18 低温試験台
19 加熱試験装置
20 加熱コイルユニット
21 加熱ファン
22 ヒーター
23 吹出グリル
24 搬入口
25 搬入口シャッター
26 搬出口
27 搬出口シャッター
28 高温試験台
29 エアシリンダー
30 上昇用モーター
31 下降用モーター
32 チェーン
33 ギア
34 受け金具
35 トレー
36 製品
37 ルーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインより製品を搬入する搬入口及びラインに製品を搬出する搬出口と、搬入された製品を所定温度に設定した装置内に一定時間維持すべく製品を上下方向及び左右方向に循環移動させるエレベーターユニットと、当該装置内を所定の低温度に冷却する冷却コイルユニットとを具備した低温試験装置と、ラインより製品を搬入する搬入口及びラインに製品を搬出する搬出口と、搬入された製品を所定温度に設定した装置内に一定時間維持すべく製品を上下方向及び左右方向に循環移動させるエレベーターユニットと、当該装置内を所定の高温度に過熱する加熱コイルユニットとを具備した高温試験装置とを連続配置させてラインに組み込むことを特徴とした、自動温度衝撃試験システム。
【請求項2】
上記エレベーターユニットは、複数個の製品を一列に載置したトレーを複数段架け渡して上昇させる上昇エレベーターと、複数個の製品を一列に載置したトレーを複数段架け渡して下降させる下降エレベーターと、前記上昇エレベーターの最上部において当該位置にあるトレーを下降エレベーターの最上部に移動させる移動手段と、前記下降エレベーターの最上部に移動したトレー上の製品を当該トレー上において一個ずつ隣に移動させる移動手段と、前記下降エレベーターの最下部において当該位置にあるトレーを上昇エレベーターの最下部に移動させる移動手段とを具備して構成することを特徴とした、請求項1に記載の自動温度衝撃試験システム。
【請求項3】
上記冷却コイルユニットは、低温試験装置内において2機設置し、一方の冷却コイルユニットの運転中において他方の冷却コイルユニットの除霜を行い、前記動作を交互に繰り返して冷却コイルユニットの運転を行うことを特徴とした、請求項1に記載の自動温度衝撃試験システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−292708(P2007−292708A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143355(P2006−143355)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(506175035)企業組合ヒーバックシステム (2)
【Fターム(参考)】