説明

自動焦点機能付コンパクトカメラ

【目的】 撮影者が視認するファインダー視野内の測距範囲と、合焦位置検出部での測距範囲が一致するようにし、また、被写体が水平方向あるいは垂直方向だけの形状パターンの場合でも正確に測距することができる自動焦点機能付コンパクトカメラを提供する。
【構成】 ファインダー光学系3の対物レンズ系6と接眼レンズ系7の間に、対物レンズ系6に入射される光束Mを2方向に分割するハーフミラー17を配設し、ハーフミラー17で分割された光束M1 の光軸S1 上に接眼レンズ系7を配設すると共に、ハーフミラー17で分割された光束M2 の光軸S2 上に合焦位置検出部4を配設した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、撮影光学系とファインダー光学系が独立して配置され、撮影光学系による被写体に対しての合焦位置を位相差検出方式で検出する合焦位置検出手段を備えた自動焦点機能付コンパクトカメラに関する。
【0002】
【従来の技術】最近のレンズシャッタ−付きのコンパクトカメラは、一般に自動焦点(オートフォーカス)機能を備えている。従来、コンパクトカメラのオートフォーカス方式としては、三角測距に基づいて赤外光を被写体に発してその反射光を受光して被写体までの距離を測定する、いわゆるアクティブ方式が一般に多く用いられている。また、最近ではこのようなコンパクトカメラでも、一眼レフカメラのオートフォーカス方式のように位相差検出方式(パッシブ方式)を用いている機種もある。図5は、従来の位相差検出方式によるオートフォーカス方式を備えたコンパクトカメラを示す概略図である。この図に示すように、このコンパクトカメラ100は、撮影光学系101と、ファインダ−光学系102と、合焦位置検出部103が、それぞれ別体でカメラ本体104に配置されている。合焦位置検出部103は、被写体に対しての合焦位置の検出を位相差検出方式で行なう。また、合焦位置検出部103に備えられる合焦位置検出センサー(CCD)(図示省略)は、水平方向に配置されている。
【0003】そして、ユーザがファインダー光学系102を通して被写体をのぞき、シャッタ−ボタン105を半押しすることにより、合焦位置検出部103で合焦位置の検出を行なって撮影光学系101の駆動量を演算し、シャッターボタン105をさらに押すと撮影光学系101の駆動及び撮影が行なわれる。位相差検出方式による合焦位置の検出原理は、図6に示すように、被写体Nからの光束を、セパレータレンズ110a,110bにより2つの光束M1,2 に分割する。そして、この2つの光束M1,2 は、焦点が合ったところでは、水平方向に複数配置されている受光素子(CCD)111a,111bの同一点S1,2 で合致するが、焦点が合ってないとずれを生じる。すなわち、位相がずれることになる。そして、受光素子(CCD)111a,111bでこの時の状態を電気信号に変換して演算することにより、焦点の合致、前ピン、後ピンを検出することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記したコンパクトカメラ100は、ファインダー光学系102と、合焦位置検出部103が所定の距離をおいて別々に配置されているので、撮影者がファインダー光学系102で見る被写体の像と、合焦位置検出部103に入射される被写体の像の位置には空間的パララックスが生じる。このため、特に近距離の場合においては、ファインダー光学系102に表示されている測距範囲マーク(フォーカスマーク)と、合焦位置検出部103での測距範囲とが一致しなくなる場合がある。また、前記したコンパクトカメラ100は、合焦位置検出部103の合焦位置検出センサー(CCD)(図示省略)が水平方向に配置されているので、例えば、被写体が水平方向だけの同一形状パタ−ンの場合には位相のずれの検出が困難になり、精度のよい測距ができなかった。
【0005】本発明は前記事情に鑑み案出されたもので、本発明の目的は、ファインダー光学系に表示されている測距範囲マークと、合焦位置検出部での測距範囲が一致するするようにし、また、被写体が水平方向あるいは垂直方向だけの同一形状パターンの場合でも正確に測距することができる自動焦点機能付コンパクトカメラを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、撮影光学系とファインダー光学系が独立に配置され、前記ファインダ−光学系は被写体の光束が入射される対物レンズ系とこの対物レンズ系からの光束を中継し、撮影者の視界内へ導く接眼レンズ系を備え、前記撮影光学系による被写体に対する合焦位置を位相差検出方式で検出する合焦位置検出手段を備えた自動焦点機能付コンパクトカメラにおいて、前記ファインダー光学系の対物レンズ系と接眼レンズ系の間に、前記対物レンズ系に入射される光束を直交する2方向に分割するハーフミラーを配設し、前記ハーフミラーで分割された光束の第1の光軸上に前記接眼レンズ系を配設すると共に、前記ハ−フミラ−で分割された光束の第2の光軸上に前記合焦位置検出手段を配設したことを特徴としている。
【0007】また、本発明は、前記接眼レンズ系には前記ハーフミラーで反射された光束が入射されるようにした。また、本発明は、前記合焦位置検出手段には前記ハーフミラーを透過した光束が入射されるようにした。また、本発明は、前記合焦位置検出手段に備えられる合焦位置検出センサーが、水平方向と垂直方向にそれぞれ配設されているものとした。また、本発明は、前記ファインダー光学系と、ハーフミラーと、合焦位置検出手段が、1つのユニットで構成されいるものとした。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施例に係る自動焦点機能付コンパクトカメラを示す概略図である。この図に示すように、この自動焦点機能付コンパクトカメラ1は、撮影光学系2と、ファインダー光学系3と、合焦位置検出部4がカメラ本体5に備えられている、いわゆるオートフォーカス(AF)付コンパクトカメラである。図2は、ファインダー光学系3と合焦位置検出部4の構成を示す説明図である。この図に示すように、隣接して配設されるファインダー光学系3と合焦位置検出部4は1つのユニットで構成されており、カメラ本体5の上部に配設されている。
【0009】ファインダー光学系3は、対物レンズ系6と接眼レンズ系7で構成されており、合焦位置検出部4は、補正凹レンズ8と、光束絞りマスク9と、セパレータレンズ10と、受光部11で構成されており、被写体に対しての合焦位置を図6に示した位相差検出方式で検出する。接眼レンズ系7は、ピント板12と、プリズム13と、レンズ14で構成されている。受光部11には、水平方向に2つのCCD15a,15bが並設されている。また、ピント板12には、図3に示すように、CCD15a,15bの測距範囲に対応したフォーカスマーク16が表示されている。
【0010】対物レンズ系6と合焦位置検出部4は直線的に配列されており、対物レンズ系6と合焦位置検出部4の補正凹レンズ8間には、ハーフミラー17が配置されている。ハーフミラー17は、対物レンズ系6を通して入射される被写体(図示省略)の光束Mの光軸Sに対して水平方向に45度の角度で配置され、ハーフミラー17により対物レンズ系6を通して入射される光束Mの大部分を、接眼レンズ系7側に反射させる。対物レンズ系6に入射する光束Mは、ハーフミラー17で反射して接眼レンズ系7側に入射する光束M1 と、ハーフミラー17を透過して合焦位置検出部4側に入射する光束M2 に分割される。対物レンズ系6に入射する光束Mの光軸Sと、ピント板12に入射する光束M1 の光軸S1 と、合焦位置検出部4に入射する光束M2 の光軸S2 は、ほぼ同一平面上に位置している。
【0011】ピント板12に入射される光束M1 の光軸S1 は、接眼レンズ系7のプリズム13で折り曲げられてレンズ14に導入され、撮影者が被写体(図示省略)の像を見ることができる。合焦位置検出部4の受光板11と、接眼レンズ系7のレンズ14は、近接して並設されている。
【0012】本実施例に係る自動焦点機能付コンパクトカメラは上記のように構成されており、撮影者がシャッター18を半押しすることにより、被写体(図示省略)の光束Mがファインダー光学系3の対物レンズ系6に入射され、ハーフミラー17で接眼レンズ系7側に反射される光束M1 と、合焦位置検出部4側に透過する光束M2 に分割される。接眼レンズ系7側に入射した光束M1 は、ピント板12、プリズム13を介してレンズ14に導入されることにより、撮影者はピント板に表示されているフォーカスマーク16で被写体に対する測距範囲を見ることができる。
【0013】また、合焦位置検出部4側に入射した光束M2 は、補正凹レンズ8で結像補正され、光束絞りマスク9、セパレータレンズ10で2つに分けられて受光板11のCCD15a,15bに受光する。そして、CCD15a,15bで受光した光を電気信号に変換し、図6に示した位相差検出方式によって被写体までの距離を演算して、撮影光学系2を所定位置に移動させ、シャッターボタン18をさらに押すと撮影が行なわれる。このように、合焦位置検出部4のCCD15a,15bに入射する光束M2 は、ファインダー光学系3の対物レンズ系6に入射する光束Mを利用しているので、接眼レンズ系7のピント板12に表示されているフォーカスマーク16と、合焦位置検出部4のCCD15a,15bの測距範囲は、ずれることなく正確に対応し、ファインダー視野内において、撮影者が視認する測距範囲が実際の測距範囲と一致する。
【0014】次に、本発明の第2実施例について説明する。図4は、本発明の第2実施例に係る自動焦点機能付コンパクトカメラの要部を示す該略図である。尚、図1,図2で示した第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明する。本実施例においては、合焦位置検出部20の受光部21に水平方向と垂直方向の直交両方向にそれぞれ受光素子であるCCD22a,22b,22c,22dを配置した構成であり、他の構成は前記した第1実施例と同様である。
【0015】このように、本実施例では合焦位置検出部20の受光部21にCCD22a,22b,22c,22dをそれぞれ水平方向と垂直方向に配置したことにより、位相差検出方式により測距で誤距しやすい水平方向または垂直方向だけの同一形状パターンの被写体でも、精度よく位相差を検出して測距することができる。また、前記した第1、第2実施例のファインダー光学系3と、合焦位置検出部4,20は1つのユニットで構成されているので、実装密度が小さくなりカメラ本体5の小型化を図ることができる。
【0016】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明によれば、撮影光学系とファインダー光学系が独立して配置され、前記ファインダー光学系は被写体の光束が入射される対物レンズ系とこの対物レンズ系からの光束を中継し、撮影者の視界内へ導く接眼レンズ系を備え、前記撮影光学系による被写体に対する合焦位置を位相差検出方式で検出する合焦位置検出手段を備えた自動焦点機能付コンパクトカメラにおいて、前記ファインダー光学系の対物レンズ系と接眼レンズ系の間に、前記対物レンズ系に入射される光束を2方向に分割するハーフミラーを配設し、前記ハーフミラーで分割された光束の第1の光軸上に前記接眼レンズ系を配設すると共に、前記ハーフミラーで分割された光束の第2の光軸上に前記合焦位置検出手段を配設した。
【0017】そのため、ファインダー光学系の対物レンズ系に入射する被写体の光束を、ハーフミラーを利用して接眼レンズ側と、合焦位置検出手段に入射させることができるので、撮影者が視認するファインダー視野内の測距範囲と、合焦位置検出手段による測距範囲が一致することにより、空間的パララックスが生じることなく測距範囲に対して正確に測距を行うことができる。また、本発明は、合焦点位置検出手段に配置される合焦位置検出センサーを水平方向と垂直方向に配設置した。そのため、水平方向または垂直方向だけの同一形状パターンの被写体でも、精度よく位相差を検出して測距することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動焦点機能付コンパクトカメラを示す該略図である。
【図2】本発明の第1実施例に係るファインダー光学系と合焦位置検出部の構成を示す説明図である。
【図3】接眼レンズ系に表示されたフォーカスマークの説明図である。
【図4】本発明の第2実施例に係るファインダー光学系と合焦位置検出部の構成を示す説明図である。
【図5】従来の自動焦点機能付コンパクトカメラを示す概略図である。
【図6】位相差検出方式による合焦位置の検出原理の説明図である。
【符号の説明】
2 撮影光学系
3 ファインダー光学系
4 合焦位置検出部
6 対物レンズ系
7 接眼レンズ系
11,21 受光部
12 ピント板
15a,15b,22,22B,22C,22D CCD
16 フォーカスマーク
17 ハーフミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 撮影光学系とファインダー光学系が独立して配置され、前記ファインダー光学系は被写体の光束が入射される対物レンズ系とこの対物レンズ系からの光束を中継し、撮影者の視界内へ導く接眼レンズ系を備え、前記撮影光学系による被写体に対する合焦位置を位相差検出方式で検出する合焦位置検出手段を備えた自動焦点機能付コンパクトカメラにおいて、前記ファインダー光学系の対物レンズ系と接眼レンズ系の間に、前記対物レンズ系に入射される光束を2方向に分割するハーフミラーを配設し、前記ハーフミラーで分割された光束の第1の光軸上に前記接眼レンズ系を配設すると共に、前記ハーフミラーで分割された光束の第2の光軸上に前記合焦位置検出手段を配設した、ことを特徴とする自動焦点機能付コンパクトカメラ。
【請求項2】 前記接眼レンズ系には、前記ハ−フミラ−で反射された光束が入射される請求項1記載の自動焦点機能付コンパクトカメラ。
【請求項3】 前記合焦位置検出手段には、前記ハ−フミラ−を透過した光束が入射される請求項1または2記載の自動焦点機能付コンパクトカメラ。
【請求項4】 前記合焦位置検出手段に備えられる合焦位置検出センサーは、水平方向と垂直方向にそれぞれ配置されている請求項1、2または3記載の自動焦点機能付コンパクトカメラ。
【請求項5】 前記ファインダー光学系と、ハーフミラーと、合焦位置検出手段は、1つのユニットで構成されいる請求項1、2、3または4記載の自動焦点機能付コンパクトカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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