説明

自動着脱カプラ及びその制御方法

【課題】雄コネクタ及び雌コネクタのコネクタ軸が大きくずれている場合であっても、コネクタ軸のずれを自動的に調整し、連結することを可能とした自動着脱カプラを提供する。
【解決手段】雄コネクタ2と雌コネクタ3を有するカプラ1において、前記雄コネクタ2及び前記雌コネクタ3に電磁石6を設置し、前記電磁石6の磁力により前記雄コネクタ2と前記雌コネクタ3を吸着して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、港湾や内陸地のコンテナターミナルなどで、コンテナの荷役に使用される門型クレーンの給電線を接続するカプラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾や内陸地等のコンテナターミナルでは、岸壁クレーンや門型クレーンによって、船舶及びトレーラ間のコンテナの荷役を行っている。
【0003】
図6にコンテナターミナル60の1例を示しており、コンテナターミナル60では、コンテナ船61に搭載されたコンテナ62を、岸壁クレーン65で荷揚げし、トレーラ63に搭載する。トレーラ63に搭載されたコンテナ62を、タイヤ式門型クレーン(以下、RTTという)50により各レーン64のコンテナ載置ブロック66に載置する。
【0004】
このRTT50は、環境への影響や燃料費高騰の問題により、ディーゼル発電機によるエネルギー供給から、陸電供給型に切り替えられてきている(例えば特許文献1参照)。RTT50への給電は、コンテナターミナル60に設置された給電設備から、走行給電台車53を介して給電を行っている。ここで、走行給電台車53はRTT50に追従して走行方向xに移動可能に構成している。
【0005】
また、RTT50は荷役量の少ないレーン64から荷役量の多いレーンへ移動するレーンチェンジを行い、荷役効率を高めるように構成されている。レーンチェンジの際に、RTT50はレーン64の端部に移動し、搭載している自家発電装置を起動するか、蓄電装置からの給電に切り替えるか、あるいは横行給電台車54からの給電をうけ、横行方向yに移動し、移動先レーンまで移動するように構成されている。
【0006】
このとき、レーン64の端部では、RTT50と走行給電台車53を電気的に接続しているカプラを解除する作業が必要となる。さらに、自家発電装置や蓄電装置を私用しない場合はRTT50と横行給電台車54を電気的に接続する連結作業も必要となる。この連結作業は、作業員により行われており、コストがかかる問題と、流れている電流が高圧なため、感電事故の危険性が問題となっている。なお、RTT50へ供給する電気の電圧は、国や地域により規定が異なるが、例えば日本では600V以下であり、給電台車53、54にトランスを設置していない場合は、3300〜11000Vとなる。
【0007】
そのため、RTT50と給電台車53、54を連結する電源ケーブルのカプラを、自動で着脱したいという要求があり、大電流用の自動着脱コネクタの考案が開示されている(例えば特許文献2参照)。特許文献2に記載のコネクタは、大型電気機器と電源側取付部の位置合わせを、ガイド筒にガイドロッドを嵌挿して行い、その上で、フレキシブル導体に接続したプラグをソケットに自動的に嵌合するように構成している。このとき、プラグのソケットに対する相対的な多少の位置のずれは、プラグの水平方向の摺動により自動的に矯正するように構成されている。このコネクタは、ドッキングする大型電気機器と電源側取付部の軸線が精度よく合っていることが前提となっており、雌雄一対のコネクタ軸も精度が±数mm以内に保たれている。
【0008】
しかしながら、コンテナターミナル60におけるRTT(タイヤ式門型クレーン)50と給電台車53、54の相対位置は、RTT50の走行位置のずれ等により雌雄一対のコネクタ軸のずれは、およそ±300mm程度となり、既存の技術でRTT50のカプラを自動着脱することは困難となる。また、カプラの平面方向の位置ずれが合ったとしても、
ねじれ方向のずれが発生していることもあるため、これを調整しなければカプラを接続することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−223805号公報
【特許文献2】実公平7−53258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、雄コネクタ及び雌コネクタのコネクタ軸が大きくずれている場合であっても、コネクタ軸のずれを自動的に調整し、連結することを可能とした自動着脱カプラを提供することを目的とする。さらに、コネクタ軸を一致させ、雄コネクタ及び雌コネクタのコネクタ軸に対する回転方向の位置を自動的に調整し、連結することを可能とした自動着脱カプラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明に係る自動着脱カプラは、雄コネクタと雌コネクタを有するカプラにおいて、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタに電磁石を設置し、前記電磁石の磁力により前記雄コネクタと前記雌コネクタを吸着して接続する構成としたことを特徴とする。
【0012】
上記の自動着脱カプラにおいて、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタに複数の前記電磁石を設置し、かつ、前記複数の電磁石を配列して磁極パターンを形成し、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタの双方の磁極パターンが対応した位置で接続する構成としたことを特徴とする。
【0013】
上記の自動着脱カプラにおいて、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタを、電源ケーブルに設置し、前記電源ケーブルが複数の電線を有していることを特徴とする。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明に係る自動着脱カプラの接続方法は、複数の電磁石をそれぞれ設置して、複数の電線からなる電源ケーブルに接続した雄コネクタ及び雌コネクタの接続方法において、前記複数の電磁石の磁力により、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタを接近させコネクタ軸をあわせる軸合わせステップと、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタに、前記複数の電磁石で磁極パターンを形成し、前記磁極パターンが対応した位置で前記雄コネクタ及び前記雌コネクタを接続する接続ステップを有していることを特徴とする。
【0015】
上記の自動着脱カプラの接続方法において、前記接続ステップが、前記磁極パターンを対応させ、前記雄コネクタと前記雌コネクタの複数の電線の位置を互いに対応させる位置合わせステップと、前記雄コネクタと前記雌コネクタを固定装置で固定するカプラ固定ステップと、前記雄コネクタと前記雌コネクタの電線の端子をそれぞれ接触させる通電ステップを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動着脱カプラによれば、雄コネクタと雌コネクタのコネクタ軸のずれが大きい場合であっても、電磁石の磁力で自動的に誘導し、接続することができる。なお、雄コネクタ及び雌コネクタのうち、少なくとも一方は磁力の影響により自在に移動可能に構成している。
【0017】
また、各コネクタに複数の電磁石を設置し、N極とS極の磁極パターンを形成し、この双方の磁極パターンが対応する位置でコネクタを接続することができるため、コネクタ軸のみならず、コネクタの回転方向の向きも合わせて接続することができる。特に、コネクタが複数の電線を有した、例えば3相3線式又は3相4線式の電源ケーブルに設置されている場合、各電線の端子の位置を正確に合わせて接続することができるため、ショートやモータの逆回転等の事故を防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る自動着脱カプラの制御方法により、電源ケーブルの雄コネクタと雌コネクタの接続を、各電線の位置を合わせて確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態の自動着脱カプラを示した図である。
【図2】自動着脱カプラの接合面の模式図である。
【図3】自動着脱カプラの接合面の模式図である。
【図4】自動着脱カプラを門型クレーンに適応した際の概略図である。
【図5】自動着脱カプラの回転方向の位置合わせを示した図である。
【図6】従来のコンテナターミナルの概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態の自動着脱カプラについて、図面を参照しながら説明する。図1に、自動着脱カプラ1(以下、カプラという)を示しており、カプラ1を給電側機器41(例えば給電台車)から、受電側機器40(例えばタイヤ式門型クレーン)に給電を行う電源ケーブル7に利用した様子を示している。
【0021】
雄コネクタ2は、電源ケーブル7と接続した本体4aと、本体4aの周囲に設置した枠体5aで構成しており、受電側機器40に設置したアーム42からチェーン43により移動自在に支持されている。また、アーム42は、スプリング44を有しており、このスプリング44により揺動可能に受電側機器40に設置されている。なお、矢印SWはアーム42の揺動方向を示している。
【0022】
雌コネクタ3は、電源ケーブル7と接続した本体4bと、本体4bの周囲に設置した枠体5bで構成しており、本体4bは、給電側機器41に設置した昇降装置46により昇降自在に支持されている。また、枠体5a、5bにはそれぞれ電磁石6を設置しており、この電磁石6の引力により、雄コネクタ2は、雌コネクタ3上に誘導され自動的に接触するように構成している。
【0023】
なお、カプラ1は雄雌を逆に設置してもよく、また、本体4a、4bにキー溝等を設けてもよい。
【0024】
図2に、雄コネクタ2と雌コネクタ3の接続面の模式図を示している。雄コネクタ2は、三相4線式の電源ケーブル7と接続した本体4aを有しており、本体4aは、R、S、T、Gで示したそれぞれの電線の端子8を有している。また、本体4aの周囲には枠体5aを設置しており、枠体5aには、5つの電磁石(21〜25)を設置し、N極及びS極により磁極パターンを形成している。同様に、雌コネクタ3も、本体4bと枠体5bを有しており、枠体5bの5つの電磁石(31〜35)も磁極パターンを形成している。
【0025】
ここで、雄コネクタ2及び雌コネクタ3の磁極パターンは、互いに引力を発生するように構成しており、即ち電磁石の21と31、22と32、23と33、24と34、25と35が引き合うように対応している。つまり、雄コネクタ2を接続移動方向Lに移動す
ると、ちょうど雌コネクタ3と正しい位置で接続するように構成している。この構成により雄コネクタ2及び雌コネクタ3の回転方向Mの位置が、電磁石の作用で自動的に合うため、電線の端子8の順序を合わせて接続することができる。
【0026】
なお、電磁石を永久磁石としても同様の作用効果を得られるが、磁力の強さや磁極を制御できる電磁石の方が望ましい。
【0027】
図3に、電磁石6の設置個数を増やし、さらに、異なる磁極パターンを形成した際の例を示している。例えば、雄コネクタ2を雌コネクタ3に接近させる(接続移動方向Lに移動させる)と、雄コネクタ2が、磁力の働きで正しい位置に回転し、雌コネクタ3と接続する。
【0028】
ここで、電磁石6の個数を多くすることで、回転方向の位置決めの精度を向上することができる。また、電磁石6の磁力を強化すると、雄コネクタ2と雌コネクタ3の間の引力が強くなるため、コネクタ軸のずれが大きい場合でも自動的に接続することができる。
【0029】
図4に、カプラ1をRTT(タイヤ式門型クレーン)50と給電台車53、54の電源ケーブルを接続する際に使用した例を示す。受電側機器40となるRTT50は、走行輪51と、給電台車53、54との連結具52a、52bを有しており、給電側機器41である給電台車53、54は、給電ベルト55を有している。
【0030】
ここで、給電ベルト55は、筒状体を複数連結して構成した多関節ベルト57の内部に給電ケーブル56を通して構成し、コンテナターミナル60の給電設備から供給される高圧電気を給電台車53、54に供給するように構成している。また、給電台車53、54は給電ベルト55から供給された高圧電気を、トランスにより変換して低圧電気としてRTT50に供給する構成である。なお、高圧電気は例えば3300〜11000V程度であり、低圧電気は例えば600V以下である。
【0031】
次に、図1及び4を参照して、カプラ1の制御を説明する。RTT50がレーンチェンジを行う際、RTT50は、まず図4に示す横行給電台車54に接近して連結部50bを連結する。その後、図1に示す様に、雄コネクタ2は、アーム42の可動及びチェーン43の揺動と、電磁石6の引力により、雌コネクタ3に接近し(軸合わせステップ)、それとともに、雄コネクタ2が、複数の電磁石のN極及びS極により形成した磁極パターンが対応するように回転方向Mに回転する(位置合わせステップ)。
【0032】
雄コネクタ2と雌コネクタ3のコネクタ軸と回転方向Mの位置が共に合った後に、ロックラッチ(固定装置)45で雄コネクタ2と雌コネクタ3を固定し(カプラ固定ステップ)、雌コネクタ3の本体4bを昇降装置46で上昇して、それぞれのコネクタ2、3が有する端子8を接続して(接続ステップ)、カプラ1の自動接続の制御を行う。
【0033】
なお、昇降装置46は、本体4bを上下する機構を有していればよく、シリンダ装置、ピニオンギア等を利用することができる。また、昇降装置46及びロックラッチ45の可動は、クレーン操作室等でセンサ等により位置合わせ完了を感知し、クレーンオペレータのスイッチ操作又は自動制御により行うことができる。
【0034】
その後、RTT50は、図4の走行給電台車53との連結を解除し、横行給電台車54から給電され、レーンチェンジを行う。そのため、これまでは人力を介して行っていた電源カプラの着脱が無人で行え、省人化を実現できるとともに、カプラ着脱作業に伴う感電事故のリスクを低減することができる。
【0035】
なお、カプラ1の連結解除は、クレーン操作室等からのスイッチ操作で行うことが可能であり、連結解除指示信号を受信したカプラ1は、昇降装置46の降下と、ロックラッチ45の解除を行い、連結の解除を行う。枠体5の接合解除は、RTT50の移動等の外力により行ってもよいが、電磁石6への通電を停止して、電磁石6間の引力を消滅させて接合解除する方が望ましい。
【0036】
図5に、位置合わせステップにおける雄コネクタ2の回転の様子を示している。電磁石の磁極パターンを図3に示す様に構成し、雄コネクタ2にN極領域10を、雌コネクタ3にS極領域11を形成している。
【0037】
図5Aに、雄コネクタ2と雌コネクタ3のコネクタ軸Hを合わせたときに、回転方向Mのずれが生じている様子を示している。N極領域10とS極領域11は対応する磁極であり、引力が発生するため、移動自在に支持している雄コネクタ2側が回転方向Mに回転して、図5Bの状態を経て、N極領域10とS極領域11が一致する状態となる。
【0038】
ここで、図5ではコネクタ軸Hの軸合わせが完了後、回転方向Mの位置合わせを行っているが、この軸合わせと位置合わせを同時に行うことも可能であり、同時に制御した方がカプラ1の接続作業時間が短縮され、かつ、制御が容易となる。
【0039】
なお、軸合わせステップにおいて、例えば雄コネクタ2の電磁石を全てN極とし、雌コネクタ3の電磁石を全てS極として、コネクタの軸合わせを行い、コネクタ軸があった後に、位置合わせステップとして、各コネクタ2、3の電磁石への通電方向を制御して、磁極パターンをそれぞれ形成し、コネクタ2、3の回転方向Mの位置合わせを行ってもよい。この構成により、軸合わせステップにおける電磁石の引力を大きくすることができるので、コネクタ軸のずれが特に大きな場合には有効である。
【0040】
ここで、位置合わせステップで採用する磁極パターンは図3及び5に示したパターンが望ましく、このパターンにより、回転量が最小となる回転方向Mが1つに決まり、効率的に回転方向Mの位置を合わせることができる。
【0041】
以上、クレーンの電源カプラの着脱に関して説明を行ったが、この自動着脱カプラ1は、クレーンの電源カプラへの利用に限られず、他の自動着脱を必要とする電源カプラへ利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 カプラ
2 雄コネクタ
3 雌コネクタ
4 本体
4a 本体(雄)
4b 本体(雌)
5 枠体
5a 枠体(雄)
5b 枠体(雌)
6 電磁石
7 電源ケーブル
8 電線
21〜25 電磁石
31〜35 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄コネクタと雌コネクタを有するカプラにおいて、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタに電磁石を設置し、前記電磁石の磁力により前記雄コネクタと前記雌コネクタを吸着して接続する構成としたことを特徴とするカプラ。
【請求項2】
前記雄コネクタ及び前記雌コネクタに複数の前記電磁石を設置し、かつ、前記複数の電磁石を配列して磁極パターンを形成し、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタの双方の磁極パターンが対応した位置で接続する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のカプラ。
【請求項3】
前記雄コネクタ及び前記雌コネクタを、電源ケーブルに設置し、前記電源ケーブルが複数の電線を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のカプラ。
【請求項4】
複数の電磁石をそれぞれ設置して、複数の電線からなる電源ケーブルに接続した雄コネクタ及び雌コネクタの接続方法において、
前記複数の電磁石の磁力により、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタを接近させコネクタ軸をあわせる軸合わせステップと、
前記雄コネクタ及び前記雌コネクタに、前記複数の電磁石で磁極パターンを形成し、前記磁極パターンが対応した位置で前記雄コネクタ及び前記雌コネクタを接続する接続ステップを有していることを特徴とするカプラの接続方法。
【請求項5】
前記接続ステップが、
前記磁極パターンを対応させ、前記雄コネクタと前記雌コネクタの複数の電線の位置を互いに対応させる位置合わせステップと、
前記雄コネクタと前記雌コネクタを固定装置で固定するカプラ固定ステップと、
前記雄コネクタと前記雌コネクタの電線の端子をそれぞれ接触させる通電ステップを有していることを特徴とする請求項4に記載のカプラの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228838(P2010−228838A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76357(P2009−76357)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)