説明

自動給油チェーン

【課題】潤滑油供給装置の着脱を容易かつ確実とするとともに、自動給油チェーンを駆動することによる潤滑油供給装置の振動を緩和して騒音や油漏れや潤滑油供給装置の破損を防止し、潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とする自動給油チェーンを提供すること。
【解決手段】潤滑油供給装置120が、潤滑油流出口を有する突出部121を連結ピン110の中空部112の底部113に設けられた凹嵌部114に密着嵌合され、蓋部材130によって中空部112内に押圧密封されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラチェーン、ブシュチェーン、ブシュレスローラチェーン(ブシュを用いず連結ピンに直接ローラが外嵌されたチェーン)等の自動給油チェーンに関し、特に、鉄鉱石、石炭などを荷揚げするためのバケットチェーン、自動車などの重量物を搬送するための大荷重用チェーン、粉粒体のフローコンベヤチェーン等として好適に用いられる自動給油チェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも一対の外リンクプレートの前後の連結ピン孔にそれぞれ連結ピン両端部を嵌入固定した外リンクと少なくとも一対の内リンクプレートの前後のブシュ孔にそれぞれブシュ又はローラが遊嵌されたブシュを嵌入固定した内リンクとがブシュに連結ピンを交互に遊嵌することで多数連結されるとともに、連結ピンの長手方向中央部に連結ピン内部から連結ピン外周面に開口する給油孔が形成され、連結ピンの一方側端部から連結ピン長手方向中央に底部を有する中空部が形成され、該中空部に潤滑油供給装置が着脱可能に装着されて給油孔から連結ピン外周面に潤滑油を供給するように構成された自動給油チェーンが公知である。
【0003】
この公知の自動給油チェーンの連結ピン510は、図7に示すように、長手方向略々中央部に連結ピン内部から連結ピン外周面510aに開口する給油孔511が形成され、給油孔511から連結ピン外周面510aに潤滑油を供給可能となっている。
また、連結ピン510の内部には、連結ピン510の一方側端部が開口し連結ピン長手方向略々中央に底部513を有する中空部512が連結ピン長手方向に亘って形成されるとともに、この底部513に給油孔511に連通する潤滑油流入口514aを有する凹嵌部514が形成されている。
【0004】
前記中空部512には、中空部長さに略々匹敵する長さの潤滑油供給装置520が着脱可能に装着される。
潤滑油供給装置520の先端には潤滑油流出口521aを有する突出部521が形成され、潤滑油供給装置520が中空部512に装着されたとき、突出部521が凹嵌部514に螺合して密着し、突出部521の潤滑油流出口521aと凹嵌部514の潤滑油流入口514aとが接続されて潤滑油貯留室522と給油孔511とが連通する。
【0005】
潤滑油供給装置520には、潤滑油を潤滑油流出口521aから徐々に流出させる流出機構523が内蔵されており、潤滑油貯留室522内の潤滑油を給油孔511から連結ピン外周面510aに供給する。
潤滑油貯留室522内の潤滑油がなくなった場合、潤滑油供給装置520を交換することで潤滑油の補給を行う(例えば、特許文献1、図5、6参照)。
【特許文献1】特開2007−246234号公報(第4頁乃至第5頁、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この公知の自動給油チェーンの連結ピン510は、潤滑油供給装置520が中空部512に挿入され潤滑油供給装置520の突出部521が中空部512の底部513の凹嵌部514と螺合することにより密着固定されるため、潤滑油供給装置520の着脱に際して潤滑油供給装置520全体を回転させる必要があり着脱作業に手間がかかるという問題があった。
また、着脱のために潤滑油供給装置520と中空部512とは僅かな間隙を介して遊嵌されているため、外部から異物が混入する虞があるとともに、自動給油チェーンを駆動することよって潤滑油供給装置520が中空部512内で振動し、該振動により騒音が発生したり、突出部521と凹嵌部514との螺合が緩んで中空部512の入り口側への潤滑油漏れが発生したり、振動による衝撃で潤滑油供給装置520が破損したりする虞があった。
さらに、潤滑油供給装置520の端面が連結ピン510の端面に露出しているため、搬送物等が直接衝突して破損する虞があった。
【0007】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、本発明が解決しようとする課題、すなわち、本発明の目的は、潤滑油供給装置の着脱を容易かつ確実とするとともに、外部からの異物の侵入を防止し、自動給油チェーンを駆動することによる潤滑油供給装置の振動を緩和し、騒音や油漏れや潤滑油供給装置の破損を防止し、潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とする自動給油チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、少なくとも一対の外リンクプレートの前後の連結ピン孔にそれぞれ連結ピン両端部を嵌入固定した外リンクと少なくとも一対の内リンクプレートの前後のブシュ孔にそれぞれブシュ又はローラが遊嵌されたブシュを嵌入固定した内リンクとが前記ブシュに前記連結ピンを交互に遊嵌することで多数連結されるとともに、前記連結ピンの長手方向中央部に連結ピン内部から連結ピン外周面に開口する給油孔が形成され、前記連結ピンの一方側端部から連結ピン長手方向中央に底部を有する中空部が形成され、該中空部に潤滑油供給装置が着脱可能に装着されて前記給油孔から連結ピン外周面に潤滑油を供給するように構成された自動給油チェーンにおいて、前記中空部が、前記底部に前記給油孔に連通する凹嵌部を有しており、前記潤滑油供給装置が、潤滑油流出口を有する突出部を前記凹嵌部に密着嵌合されているとともに前記連結ピンの一方側端部側において蓋部材によって前記中空部内に押圧密封されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された自動給油チェーンの構成に加えて、前記潤滑油供給装置の突出部が、前記凹嵌部との間に底部Oリングを介在させることで密着嵌合されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された自動給油チェーンの構成に加えて、前記連結ピンが、前記中空部の側端部側に該中空部より大径の蓋収容凹部を有し、前記蓋部材が、外周に雄ネジ部を有し前記蓋収容凹部の内周部に設けられた雌ネジ部に螺合するとともに、開口部Oリングを介して前記潤滑油供給装置を前記中空部内に押圧密封するように構成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された自動給油チェーンの構成に加えて、前記外リンクプレートと内リンクプレートとに挟まれたディスタンス部材が前記連結ピンの周りに設けられるとともに、前記内リンクプレートとディスタンス部材の間にオイルシールが設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項5に係る発明は、請求項4に記載された自動給油チェーンの構成に加えて、前記オイルシールが、前記ディスタンス部材側に少なくとも2つのリップを有し、該リップの間が潤滑油溜まりとして機能するように構成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0013】
本請求項6に係る発明は、請求項4または請求項5に記載された自動給油チェーンの構成に加えて、前記ディスタンス部材が、前記内リンクプレートと微少間隔で対向するとともに、前記オイルシールと接する面が、内周側に段付加工されて設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動給油チェーンは、少なくとも一対の外リンクプレートの前後の連結ピン孔にそれぞれ連結ピン両端部を嵌入固定した外リンクと少なくとも一対の内リンクプレートの前後のブシュ孔にそれぞれブシュ又はローラが遊嵌されたブシュを嵌入固定した内リンクとがブシュに連結ピンを交互に遊嵌することで多数連結されるとともに、連結ピンの長手方向中央部に連結ピン内部から連結ピン外周面に開口する給油孔が形成され、連結ピンの一方側端部から連結ピン長手方向中央に底部を有する中空部が形成され、該中空部に潤滑油供給装置が着脱可能に装着されて給油孔から連結ピン外周面に潤滑油を供給するように構成されていることにより、潤滑油供給装置を交換することで潤滑油の補給を容易に行うことができるとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0015】
すなわち、本請求項1に係る発明の自動給油チェーンは、中空部が、前記底部に前記給油孔に連通する凹嵌部を有しており、潤滑油供給装置が、潤滑油流出口を有する突出部を凹嵌部に密着嵌合されているとともに連結ピンの一方側端部側において蓋部材によって中空部内に押圧密封されていることにより、潤滑油供給装置を回転させることなく挿入、引抜きを行うことで着脱でき、潤滑油供給装置の着脱をさらに容易かつ確実に行うことができるとともに、潤滑油供給装置の端面を連結ピンの端面に露出させることなく搬送物等が直接衝突して破損することを防止することができる。
【0016】
そして、本請求項2に係る発明の自動給油チェーンは、請求項1に係る自動給油チェーンが奏する効果に加えて、潤滑油供給装置の突出部が、凹嵌部との間に底部Oリングを介在させることで密着嵌合されていることにより、外部から凹嵌部への異物の侵入を防止でき、自動給油チェーンを駆動することによる振動によって突出部と凹嵌部との嵌合がゆるんだり潤滑油漏れが発生したりすることを防止できるとともに、潤滑油供給装置の振動を緩和し騒音や潤滑油供給装置の破損を防止することができ、潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とすることができる。
【0017】
また、本請求項3に係る発明の自動給油チェーンは、請求項1または請求項2に係る自動給油チェーンが奏する効果に加えて、連結ピンが、中空部の側端部側に該中空部より大径の蓋収容凹部を有し、蓋部材が、外周に雄ネジ部を有し蓋収容凹部の内周部に設けられた雌ネジ部に螺合するとともに、開口部Oリングを介して潤滑油供給装置を中空部内に押圧密封するように構成されていることにより、蓋部材を螺合する動作で潤滑油供給装置を押圧密封することができるため、潤滑油供給装置の着脱を容易にかつ確実に行うことができ、外部からの異物の侵入を防止でき、開口部Oリングにより潤滑油供給装置の振動を緩和して騒音や潤滑油供給装置の破損を防止することができるとともに、開口部Oリングにより連結ピンの外部に潤滑油が漏れることを防止することができ、潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とすることができる。
【0018】
また、本請求項4に係る発明の自動給油チェーンは、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る自動給油チェーンが奏する効果に加えて、前記外リンクプレートと内リンクプレートとに挟まれたディスタンス部材が連結ピンの周りに設けられるとともに、内リンクプレートとディスタンス部材の間にオイルシールが設けられていることにより、ディスタンス部材のみを機械加工等で最適な形状や表面仕上げを施すことができ、隙間を極小とすることができるとともに、オイルシールを設けることで潤滑油の無駄な流出を抑制でき、また、外部から異物が混入することを防止できるため、潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とすることができる。
【0019】
また、本請求項5に係る発明の自動給油チェーンは、請求項4に係る自動給油チェーンが奏する効果に加えて、オイルシールが、前記ディスタンス部材側に少なくとも2つのリップを有し、該リップの間が潤滑油溜まりとして機能するように構成されていることにより、オイルシールの寿命を延長するとともに、潤滑油の無駄な流出を抑制でき、また、外部から異物が混入することを防止できるため、さらに潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とすることができる。
【0020】
また、本請求項6に係る発明の自動給油チェーンは、請求項4または請求項5に係る自動給油チェーンが奏する効果に加えて、ディスタンス部材が、前記内リンクプレートと微少間隔で対向するとともに、オイルシールと接する面が、内周側に段付加工されて設けられていることにより、段付部分がラビリンス構造となり、外部から異物が混入することを防止できるため、さらに潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の自動給油チェーンは、少なくとも一対の外リンクプレートの前後の連結ピン孔にそれぞれ連結ピン両端部を嵌入固定した外リンクと少なくとも一対の内リンクプレートの前後のブシュ孔にそれぞれブシュ又はローラが遊嵌されたブシュを嵌入固定した内リンクとがブシュに前記連結ピンを交互に遊嵌することで多数連結されるとともに、連結ピンの長手方向中央部に連結ピン内部から連結ピン外周面に開口する給油孔が形成され、連結ピンの一方側端部から連結ピン長手方向中央に底部を有する中空部が形成され、該中空部に潤滑油供給装置が着脱可能に装着されて給油孔から連結ピン外周面に潤滑油を供給するように構成された自動給油チェーンにおいて、中空部が、底部に前記給油孔に連通する凹嵌部を有しており、潤滑油供給装置が、潤滑油流出口を有する突出部を凹嵌部に密着嵌合されているとともに連結ピンの一方側端部側において蓋部材によって中空部内に押圧密封されており、潤滑油供給装置の着脱を容易かつ確実となるとともに、外部からの異物の侵入を防止でき、自動給油チェーンを駆動することによる潤滑油供給装置の振動を緩和し、騒音や油漏れや潤滑油供給装置の破損を防止し、潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とすることができるという効果を発揮するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0022】
すなわち、本発明の自動給油チェーンは、ローラチェーン、ブシュチェーン、ブシュレスローラチェーン等の連結ピンの外周面に潤滑が必要なチェーンであれば如何なる形式のチェーンであっても良い。
また、本発明の自動給油チェーンはいかなる用途に使用されるものであっても良く、特に鉄鉱石、石炭などを荷揚げするためのバケットチェーン、自動車などの重量物を搬送するための大荷重用チェーン、粉粒体のフローコンベヤチェーン等のチェーンにかかる荷重が大きい用途に使用されるのが好適である。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例である自動給油チェーンについて、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例である自動給油チェーンの一部断面平面図であり、図2は、本発明の一実施例である自動給油チェーンの側面図であり、図3は、図1のA−A断面図であり、図4は、図3の正面図であり、図5は、図3のB部分の拡大図であり、図6は、図3のC部分の拡大図である
【0024】
本発明の一実施例である自動給油チェーン100は、図1、図2に示すように、一対の外リンクプレート101の前後の連結ピン孔103にそれぞれ連結ピン110の両端部が嵌入固定され、一対の内リンクプレート102の前後のブシュ孔104にそれぞれローラ105が遊嵌されたブシュ106が嵌入固定され、ブシュ106に連結ピン110を交互に遊嵌して多数連結されて構成されている。
【0025】
連結ピン110は、図1、図3に示すように、その長手方向中央部に連結ピン110の内部から連結ピン外周面110aに開口する給油孔111が形成され、連結ピン110の一方側端部から連結ピン110の長手方向中央に底部113を有する中空部112が形成されており、該中空部112に潤滑油供給装置120が着脱可能に装着され、給油孔111から連結ピン外周面110aに潤滑油が供給され、連結ピン110とブシュ106が円滑に回転摺動するように構成されている。
【0026】
連結ピン110の中空部112は、図3乃至図6に示すように、その底部113に給油孔111に連通する凹嵌部114を有しており、連結ピン110の側端部側には該中空部112に連なる大径の蓋収容凹部115が設けられている。
【0027】
潤滑油供給装置120は潤滑油流出口を有する突出部121を有し、連結ピン110の中空部112の底部113に設けられた凹嵌部114に挿入され、底部Oリング123を介在させることで密着嵌合される。
【0028】
また、蓋収容凹部115の内周部には雌ネジ部が設けられ、外周に雄ネジ部を有する蓋部材130が螺合することにより、潤滑油供給装置120が開口部Oリング124および押圧用Oリング125を介して連結ピン110の中空部112内に押圧密封される。
【0029】
蓋部材130は、螺合の際に工具が嵌合する係合穴131が設けられるとともに、潤滑油供給装置120を連結ピン110の中空部112内に押圧密封する位置まで螺合した時に連結ピン110の蓋収容凹部115に段差なく収容される形状に形成されている。
【0030】
以上の構成により、潤滑油供給装置120から供給される潤滑油は底部Oリング123により中空部112側に漏れ出すことなく給油孔111から連結ピン外周面110aに供給されるとともに、潤滑油供給装置120は連結ピン110との間に底部Oリング123、開口部Oリング124および押圧用Oリング125を介して固定されることとなるため、自動給油チェーン100を駆動することによる振動によって突出部121と凹嵌部114との嵌合がゆるむことなく、潤滑油供給装置120に伝達される振動が緩和され騒音や潤滑油供給装置120の破損を防止することができるとともに、外部からの異物の侵入を防止でき、チェーンを長寿命とすることができる。
【0031】
また、蓋部材130を蓋収容凹部115に螺合する動作で潤滑油供給装置120を連結ピン110の中空部112内の蓋収容凹部115の方向に押圧することができるので、潤滑油供給装置120の着脱を容易かつ確実に行うことができるとともに、潤滑油供給装置120の端面を連結ピン110の端面に露出しないため、搬送物等が直接衝突して破損することを防止できる。
【0032】
連結ピン外周面110aに供給された潤滑油は、連結ピン110とブシュ106の回転摺動摩擦を軽減する潤滑剤と作用しつつ、ブシュ106の軸方向の両端部に設けられたシール構造によって外部への潤滑油の無駄な流出を阻止されている。
【0033】
該シール構造は、図3に示すように、外リンクプレート101と内リンクプレート102に挟まれたディスタンス部材140と、内リンクプレート102とディスタンス部材140の間に設けられたオイルシール150からなる。
【0034】
ディスタンス部材140は、外リンクプレート101側が平面形状をなし外リンクプレート101と一体に連結ピン110の外周に嵌合されるとともに、内リンクプレート102側には段部141が設けられ段部141より外周側が内リンクプレート102と極めて小さな間隙で対向している。
【0035】
一方、ブシュ106は、両端がほぼディスタンス部材140の段部141の高さ分突出するように内リンクプレート102のブシュ孔104に嵌合されており、ディスタンス部材140の段部141より内周側と内リンクプレート102との空間にオイルシール150が2つのリップ151がディスタンス部材140に摺接するように設けられている。
ディスタンス部材140は機械加工されているため、その表面はシールに最適な平滑面となっている。
【0036】
以上の構成により、潤滑油供給装置120から供給され連結ピン110とブシュ106の回転摺動を潤滑する潤滑油は、機械加工により平滑な表面を持つディスタンス部材140に十分な押し付け力を持ったオイルシール150のリップを摺接させることによってシールされ、その流出量は自動給油装置により吐出される油量のみとなるとともに、外部から異物が混入することを防止できる。
【0037】
また、オイルシール150の2つのリップ151の間が潤滑油溜まりとして機能し、オイルシールの寿命が延びるとともに、ディスタンス部材140とブシュ106の微小間隙、オイルシール150およびディスタンス部材140と内リンクプレート102の微小間隙と続く潤滑油の排出ルートがラビリンス構造となるため、外部から異物が混入することを防止でき、さらに潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とすることができる。
【0038】
ディスタンス部材140は、引張強度が要求される外リンクプレート101および内リンクプレート102とは別の独立した部材とで構成されるため、摺動やシール性能に特化した材料を選択することができ、また、ディスタンス部材140のみを加工することで、外リンクプレート101および内リンクプレート102の形状を変更したり加工する必要がないため、容易に製作が可能である。
【0039】
以上述べたように、本発明によれば構潤滑油供給装置の着脱を容易かつ確実となるとともに、自動給油チェーンを駆動することによる潤滑油供給装置の振動を緩和して騒音や油漏れや潤滑油供給装置の破損を防止し、潤滑油を連結ピン外周面に安定して供給しチェーンを長寿命とすることができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例である自動給油チェーンの一部断面平面図。
【図2】本発明の一実施例である自動給油チェーンの側面図。
【図3】図1のA−A断面図。
【図4】図3の正面図。
【図5】図3のB部分の拡大図。
【図6】図3のC部分の拡大図。
【図7】従来の自動給油チェーンの連結ピンの断面図。
【符号の説明】
【0041】
100 ・・・自動給油チェーン
101 ・・・外リンクプレート
102 ・・・内リンクプレート
103 ・・・連結ピン孔
104 ・・・ブシュ孔
105 ・・・ローラ
106 ・・・ブシュ
110、 510 ・・・連結ピン
110a、510a・・・連結ピン外周面
111、 511 ・・・給油孔
112、 512 ・・・中空部
113、 513 ・・・底部
114、 514 ・・・凹嵌部
514a・・・潤滑油流入口
115 ・・・蓋収容凹部
120、 520 ・・・潤滑油供給装置
121 521 ・・・突出部
521a・・・潤滑油流出口
522 ・・・潤滑油貯留室
123 ・・・底部Oリング
124 ・・・開口部Oリング
125 ・・・押圧用Oリング
130 ・・・蓋部材
131 ・・・係合穴
140 ・・・ディスタンス部材
141 ・・・段部
150 ・・・オイルシール
151 ・・・リップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の外リンクプレートの前後の連結ピン孔にそれぞれ連結ピン両端部を嵌入固定した外リンクと少なくとも一対の内リンクプレートの前後のブシュ孔にそれぞれブシュ又はローラが遊嵌されたブシュを嵌入固定した内リンクとが前記ブシュに前記連結ピンを交互に遊嵌することで多数連結されるとともに、前記連結ピンの長手方向中央部に連結ピン内部から連結ピン外周面に開口する給油孔が形成され、前記連結ピンの一方側端部から連結ピン長手方向中央に底部を有する中空部が形成され、該中空部に潤滑油供給装置が着脱可能に装着されて前記給油孔から連結ピン外周面に潤滑油を供給するように構成された自動給油チェーンにおいて、
前記中空部が、前記底部に前記給油孔に連通する凹嵌部を有しており、
前記潤滑油供給装置が、潤滑油流出口を有する突出部を前記凹嵌部に密着嵌合されているとともに前記連結ピンの一方側端部側において蓋部材によって前記中空部内に押圧密封されていることを特徴とする自動給油チェーン。
【請求項2】
前記潤滑油供給装置の突出部が、前記凹嵌部との間に底部Oリングを介在させることで密着嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載の自動給油チェーン。
【請求項3】
前記連結ピンが、前記中空部の側端部側に該中空部より大径の蓋収容凹部を有し、
前記蓋部材が、外周に雄ネジ部を有し前記蓋収容凹部の内周部に設けられた雌ネジ部に螺合するとともに、開口部Oリングを介して前記潤滑油供給装置を前記中空部内に押圧密封するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動給油チェーン。
【請求項4】
前記外リンクプレートと内リンクプレートとに挟まれたディスタンス部材が前記連結ピンの周りに設けられるとともに、前記内リンクプレートとディスタンス部材の間にオイルシールが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動給油チェーン。
【請求項5】
前記オイルシールが、前記ディスタンス部材側に少なくとも2つのリップを有し、該リップの間が潤滑油溜まりとして機能するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の自動給油チェーン。
【請求項6】
前記ディスタンス部材が、前記内リンクプレートと微少間隔で対向するとともに、
前記オイルシールと接する面が、内周側に段付加工されて設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の自動給油チェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−84899(P2010−84899A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256505(P2008−256505)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)