説明

自動給湯装置

【課題】従来のものでは入浴者の個体識別のために水位センサを用いているが、水位センサによる個体識別は精度が悪く、そのため、誤った個体識別をする可能性があり、このような誤った個体識別結果に基づいて自動運転を停止させると、本来停止させるべきでないタイミングで自動運転が停止され、あるいは逆に停止させるべきタイミングで自動運転が停止されない。
【解決手段】浴槽に入浴した状態で顔面が正対する位置に撮像カメラを設け、浴槽内の入浴者の画像から入浴者の個体識別を行い、最終入浴者が入浴を完了した時点で上記自動運転を停止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内の湯温および湯量を自動的に保持する自動運転機能を備えた自動給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より給湯装置には浴槽への給湯に関して自動運転モードが設けられており、この自動運転モードを選択すると、浴槽への湯張り、湯量が減少した際の追加給湯、浴槽内の湯温の保持等の操作を自動で行うように構成されている。なお、自動運転モードが解除されるまで給湯装置は湯量や湯温を保持するため、入浴者全員の入浴が完了した時点で自動運転モードの解除操作を忘れると、無駄に保温等が継続されエネルギーが浪費されるという不具合が生じる。そのため、自動運転モードを選択した時点から、例えば8時間程度のタイマー(以下、長時間タイマーという)を作動させて、長時間タイマーがタイムアップすると自動的に自動運転モードが解除されるように設定されている。
【0003】
ただし、このように長時間タイマーが設けられていても、例えば4時間程度で全員の入浴が完了した場合には、残りの4時間にわたって自動運転モードが継続し、そのためさらなる省エネ効果が望まれる。
【0004】
そこで、浴槽内の湯量を検知するための水位センサを用いて、水位の変化から入浴者を個体識別し、全員の入浴が完了すると長時間タイマーがタイムアップする前でも自動運転を停止させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−351497号公報(段落0019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のものでは、入浴者の個体識別のために水位センサを用いているが、水位センサによる個体識別は精度が悪く、例えば大人と子供とでは識別可能であっても、体重が近似していれば相互に個体識別することは非常に困難である。そのため、誤った個体識別をする可能性があり、このような誤った個体識別結果に基づいて自動運転を停止させると、本来停止させるべきでないタイミングで自動運転が停止され、あるいは逆に停止させるべきタイミングで自動運転が停止されないという不具合が生じ、いたって使用勝手の悪いものとなる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、適正なタイミングで自動運転を停止させることができ、その結果、省エネ効果に優れた自動給湯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明による自動給湯装置は、浴槽内の湯温を自動的に保持する自動運転機能を備えた自動給湯装置において、浴槽に入浴した状態で顔面が正対する位置に撮像カメラを設け、浴槽内の入浴者の画像から入浴者の個体識別を行い、最終入浴者が入浴を完了した時点で上記自動運転を停止することを特徴とする。
【0009】
本発明では入浴者の個体識別を、入浴者の顔面の画像を撮像し、その画像を基に個体識別を行うようにした。個体識別のためには確実に顔面の画像を撮像する必要があるが浴室内では入浴者毎に個々の姿勢になる。そこで、浴槽内では一般に同じ入浴姿勢になることに着目して、浴槽に入浴した状態で顔面が正対する位置に撮像カメラを設け、入浴者の顔面の画像を確実に撮像できるようにした。
【0010】
上記最終入浴者としていくつかの設定が可能である。例えば、入浴者全員を予め登録しておき、実際に個体識別された入浴者を順次排除していき、最後に個体識別された入浴者を上記最終入浴者とすることができる。
【0011】
あるいは、最終入浴者を予め決定しておき、他の入浴者が未入浴であっても、この予め決定された最終入浴者が入浴を完了した時点で自動運転を停止させるように制御してもよい。
【0012】
なお、撮像された画像は入浴者の裸体であるため、いたずらに長時間保存したり、各所にコピーや転送することは望ましくない。そこで、上記撮像カメラおよび個体識別を行う個体識別手段を浴室に取り付けられた浴室テレビに内蔵させると共に、個体識別の結果を浴室テレビから給湯装置本体に送信すると共に、個体識別の判定結果が出ると直ちに撮像カメラで撮像した画像データを消去することが望まれる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、水位センサで入浴者の個体識別を行う従来のものと比較して、個体識別を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が適用される浴室内を示す図
【図2】撮像した画像を浴室テレビに表示した状態を示す図
【図3】本発明の構成を示すブロック図
【図4】浴室テレビ内での制御を示すフロー図
【図5】給湯装置内での制御を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、1は浴室内に設置された浴槽である。この浴槽1は手前側の端部11に頭部を位置させ、奥側の端部12につま先を位置させるように入浴するように設計されている。そして、入浴した状態で入浴者の顔面と正対する位置に浴室テレビ2が設置されている。浴室テレビ2がこの位置に設置されているので、入浴中にリラックスした姿勢で浴室テレビ2の画像を鑑賞することができる。なお、この浴室テレビ2の操作は赤外線式のリモコン21によって行われる。3は風呂リモコンである。
【0016】
図2を参照して、浴室テレビ2に撮像カメラ23を取り付けた。また、24は赤外線の受光部である。
【0017】
図3をあわせて参照して、浴室テレビ2には撮像カメラ23で撮像した画像を基に浴槽1に入浴中の人間の顔の画像から個体識別用のデータを生成する個体識別データ生成手段61を備えている。また、アイコンとして用いるための複数のキャラクタのデータおよびそのキャラクタと1:1で関連づけられた個体データとが格納されるメモリ6を備えている。62はマイコンであり、撮像カメラ23で入浴者が撮像されると、個体識別データ生成手段61が出力するデータとメモリ6内の個体データとを比較し、例えば入浴者がAであると識別する。そして、その識別結果は給湯装置4の制御部7へと出力される。
【0018】
ところで、メモリ6内には初期状態では個体データが格納されていない。そこで、初期設定操作として、入浴者は最初に自己の個体データをメモリ6内に記憶させる必要がある。リモコン21に初期設定スイッチを設けて、その初期設定スイッチを押すと自動的に個体データを取り込むようにした。個体データを取り込む際に図2に示すように実際に撮像された画像を浴室テレビ2の画面22に表示させることとした。表示された画像中に入浴者Hの顔面Fが存在すると、その顔面Fを中心に必要最小限の範囲Eが取り込まれ、個体識別データ生成手段61によって個体データが生成される。そして、初期設定時にはその個体データはメモリ6に格納される。次に、リモコン21を操作して取り込まれた個体データに個体名を関連づける。個体名は名前、ニックネーム、記号等、特に制限しない。本実施の形態では仮にA,B,C,Dのいずれかを用いる。
【0019】
次に、後述する台所リモコン5で表示するアイコンとなるキャラクタと個体データとを関連づける。キャラクタは予めメモリ6内に用意しておき、初期設定している入浴者が所望するキャラクタを選択する。ただし、予め格納されたキャラクタの中に気に入ったキャラクタがない場合には、個体データ作成時に用いた実際の顔面の画像からキャラクタを作成してメモリ6に格納することもできる。あるいは、携帯電話などの赤外線通信機能を備えた通信デバイスを介してアニメのキャラクタの画像などを受光部24から取り込み、そのキャラクタをアイコン用のキャラクタとしてメモリ6に記憶させてもよい。
【0020】
このように、人物Aに対して個体データと名前とキャラクタとが相互に関連づけられると、制御部7を介して台所リモコン5にキャラクタデータと名前データとを送信し、台所リモコン5の表示部51にアイコンI1からI4として表示できるようにした。なお、本実施の形態では4人家族を想定しているのでアイコンは4種類であるが、入浴する家族全員分のキャラクタおよび名前のデータを台所リモコン5に送信しておく。なお、41は水位センサであり、浴槽1に接続されている循環用の配管に取り付けられており、浴槽1内の湯面の高さを検知する圧力式のセンサである。
【0021】
上記構成で、図4を参照して、自動運転が開始されると浴室テレビ2側では個体識別をいつでも行えるようにスタンバイ状態になる(S101,S102)。スタンバイ状態とは撮像カメラ23で常時撮像している状態である。その状態で入浴者Hが浴槽1に入浴すると、入浴者Hの顔面Fが撮像される。すると、上述のようにマイコン62は個体識別を行い、識別された情報を給湯装置4の制御部7に送信する(S103)。識別情報を送信したあとは撮像された生データは不要であるため撮像データを削除する(S104)。これにより、撮像データが浴室テレビ2から外部に出力されることがなく、また、浴室テレビ2内にも残存しない。
【0022】
図5を参照して、給湯装置4の制御部7では自動運転が開始されるとすべてのタイマーをリセットしたあと(S201)、長時間タイマーをスタートさせる。この長時間タイマーは従来の自動運転時に用いられていたものと同じもので、自動運転スタート時点から例えば8時間経過すると自動的に自動運転を停止させるためのものである。
【0023】
従って、長時間タイマーがタイムアップすれば自動運転は停止される(S203,S210)。長時間タイマーがタイムアップするまでは浴室テレビ2からの識別情報を受信するまで待機する(S204)。上述のように、浴槽1に誰かが入浴すると制御部7は入浴者の識別情報を受信する。ここで、例えば4人家族で識別情報がA〜Dの4種類あるとした場合、これら4人のうちのいずれか特定の者を最終入浴者として事前に登録しているか否かを判断する(S205)。各家庭によってライフスタイルが相違する。家庭によっては最終に入浴する者がほぼ決まっている場合がある。そのような家庭では予め最終入浴者として例えばAを最終入浴者として設定しておく。また、誰が最終に入浴するか決まっていない家庭では最終入浴者を事前に設定しておかない。
【0024】
最終入浴者が予め設定されている場合には、その時点で入浴している者が設定されている最終入浴者かどうか判断する(S206)。最終入浴者でなければS203に戻るが、最終入浴者であった場合、S207に進む。
【0025】
S207では、最終入浴者の識別情報の入力が停止してから10分間のタイマーを作動させる。識別情報の入力が停止すると言うことは浴槽1から入浴者が出たことを示す。ただし、入浴中は複数回浴槽1に出入りするので、浴槽1から入浴者が出てから10分間の間に再度入浴者が浴槽1に入らなければ入浴が完了したものと判断することとした。
【0026】
次に、特定のものを最終入浴者として設定していない場合には、S205からS208に進む。ここで、個体識別された入浴者を全入浴者リストから順次削除する(S208)。そして、最後の一人が入浴すると、リストの残人数は0になるので、そのときの入浴者が最終入浴者であると判断することができる。そして、最終入浴者であると判断すると、上述のようにS207に進み、入浴が完了するまで待って自動運転を停止するようにした(S207,S210)。
【0027】
なお、入浴者が順次入浴していくと、図3に示すように、台所リモコン5の表示部に入浴を完了した者のアイコンI1等を表示し、入浴中の場合にはそのアイコン、本実施の形態ではアイコンI4を点滅させるようにした。ところで、本実施の形態では台所リモコン5にアイコンを表示させているが、必ずしも台所リモコン5に表示させる必要はない。そして、台所リモコン5にアイコンを表示させない場合には、初期設定時にアイコンを選択する必要がないので、メモリ6にアイコン用のキャラクタデータを格納する必要もない。
【0028】
ところで、上記実施の形態では、浴槽1から入浴者が出たことを、識別情報が制御部7に入力されないようになることによって判断したが、水位センサ41を用いて、浴槽1の湯面の水位の変化から、浴槽1への入浴者の出入りを水位センサ41の検知信号を基に判断するようにしてもよい。
【0029】
そして、このように水位センサ41を併用すると、例えば水位センサ41の検知信号では入浴者が浴槽1に入っているはずであるが、入浴者の画像を撮像できない場合には、例えば入浴者に事故が生じているおそれがあるため、風呂リモコン3および台所リモコン5の双方から警告音を発するようにしてもよい。なお、このように入浴者に事故が生じたと判断する場合に、単に水位センサ41の検知信号と入浴者が撮像されないこととから判断してもよいが、季節や湯温、あるいは入浴者の年齢等のデータを加味して判断するようにしてもよい。すなわち、季節が冬で湯温が高く、入浴者が高齢であれば故障発生と判断する基準を下げることが考えられる。
【0030】
また、撮像される画像から入浴者が浴槽1に入っていることは確認できるが、一定時間入浴者が動かない場合、特に目を閉じた状態で動かない場合などには風呂リモコン3から第1警報音を発し、それでも動かない場合には台所リモコン5から第2警報音を発するようにしてもよい。
【0031】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0032】
1 浴槽
2 浴室テレビ
3 風呂リモコン
4 給湯装置本体
5 台所リモコン
7 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内の湯温を自動的に保持する自動運転機能を備えた自動給湯装置において、浴槽に入浴した状態で顔面が正対する位置に撮像カメラを設け、浴槽内の入浴者の画像から入浴者の個体識別を行い、最終入浴者が入浴を完了した時点で上記自動運転を停止することを特徴とする自動給湯装置。
【請求項2】
入浴者全員を予め登録しておき、実際に個体識別された入浴者を順次排除していき、最後に個体識別された入浴者を上記最終入浴者とすることを特徴とする請求項1に記載の自動給湯装置。
【請求項3】
最終入浴者を予め決定しておき、他の入浴者が未入浴であっても、この予め決定された最終入浴者が入浴を完了した時点で自動運転を停止させることを特徴とする請求項1に記載の自動給湯装置。
【請求項4】
上記撮像カメラおよび個体識別を行う個体識別手段を浴室に取り付けられた浴室テレビに内蔵させると共に、個体識別の結果を浴室テレビから給湯装置本体に送信すると共に、個体識別の判定結果が出ると直ちに撮像カメラで撮像した画像データを消去することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−257058(P2011−257058A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131815(P2010−131815)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】