説明

自動販売機の熱輸送加熱装置

【課題】冷却ユニット装置の圧縮機からの廃熱を商品収容庫の加熱に熱輸送することにより、電熱ヒータの運転率を下げて消費電力量低減を図る。
【解決手段】自動販売機の商品収容庫5を冷却する際に発生する冷却ユニット装置の圧縮機10からの廃熱を、加熱室として使用する商品収容庫5に熱輸送するために、圧縮機10の表面に設けられその廃熱を受熱するための受熱部18と、加熱室として使用する商品収容庫5に配設された放熱部20と、前記受熱部18と放熱部20との間に設けられ、前記受熱部18で受熱した熱を前記放熱部20に伝熱若しくは遮断するための熱切替部19と、から構成された熱輸送加熱装置を設け、加熱室として使用する商品収容庫5に配設された冷却/加熱ユニットの電熱ヒータ15を熱輸送加熱装置による加熱が不足する場合の補助として電熱ヒータの運転率を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は冷却・加熱を行なう自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば缶入り飲料やペットボトル飲料等の商品を販売する自動販売機では、断熱材によって包囲された筐体の内部が、複数の商品収容庫に仕切られ、収納している商品や季節に応じて、冷却されたり、加熱されたり適宜切り替えられている。すなわち冷却/加熱を行なう自動販売機においては、公知の冷凍サイクルを実現する冷却/加熱ユニット装置が搭載されており、冷却/加熱ユニット装置を構成する庫内熱交換器の吸熱によって商品収容庫の冷却が行なわれている。また、商品収容庫に電熱ヒータを設置し、電熱ヒータを通電させることにより加熱を行なっており、この種の自動販売機としては図9に示すものが一般的に知られている。
【0003】
図9は自動販売機の内部構造を示す側面図であり、図において、本体キャビネット1の前面には、外扉2及び内扉3が設けてある。外扉2は、本体キャビネット1の前面開口を開閉するためのものであり、外扉2の前面には、図示しないが販売商品の見本を展示する商品展示室、販売する商品を選択するための商品選択ボタン、貨幣を投入する貨幣投入口など、商品の販売に必要となる部品が配置してある。内扉3は、商品収容庫5の前面を閉塞し、商品収容庫5に収納されている商品Sを保冷、保温するものであり、断熱部材により構成された開閉可能な構造体である。
【0004】
上記商品収容庫5には、商品収納ラック7、商品搬出機構7a及び商品搬出シュート9が設けてある。商品収納ラック7は、商品Sを上下方向に沿って並ぶ態様で収納するためのものである。商品搬出機構7aは、商品収納ラック7の下部に設けてあり、この商品収納ラック7に収納された商品Sの最下位にある商品Sを1つずつ搬出するためのものである。
【0005】
そして商品搬出シュート9の下方域には、庫内熱交換器13、庫内ファン14、電熱ヒータ15からなる冷却/加熱ユニット27が配設してある。庫内熱交換器13は循環ダクト16の前面側に配設してあり、機械室6に配設された圧縮機10、凝縮器11、庫外ファン12、膨張機構28からなるコンデンシングユニット26と冷媒配管31を通じて順次接続された冷却/加熱ユニット装置として冷凍サイクルを形成している。
【0006】
圧縮機10は、吸引口を通じて冷媒を吸引し、吸引した冷媒を圧縮して高温高圧の状態(高温高圧冷媒)にして吐出口より吐出するものである。凝縮器11は、通過する冷媒を凝縮させるものである。より詳細に説明すると、圧縮機10で圧縮され、かつ吐出口から吐出されて冷媒配管31を通じて送出された冷媒を周囲空気と熱交換させて凝縮させるものである。膨張機構28は、通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものである。
【0007】
これら冷凍サイクルで冷媒を循環させることにより、圧縮機10で圧縮された冷媒が凝縮器11で凝縮され、その後に膨張機構28で断熱膨張されて庫内熱交換器13を通過する。冷媒が庫内熱交換器13を通過する際に、該庫内熱交換器13が配設された商品収容庫5の内部空気との間で熱交換が行われて、自身が蒸発して内部空気を冷却する。蒸発した冷媒は圧縮機10に吸引される。
【0008】
冷却された内部空気は庫内ファン14の駆動により商品収容庫5の内部を循環し(図示点線矢印)、これにより該商品収容庫5の商品収納ラック7に収納された商品Sは所望の温度(例えば5℃)に冷却されることになる。
【0009】
電熱ヒータ15は、庫内ファン14の前方域に配設してある。この電熱ヒータ15は通電状態となることにより周囲空気を加熱するものである。電熱ヒータ15により加熱された空気は、庫内ファン14の駆動により商品収容庫5の内部を循環し(図示点線矢印)、これにより商品収容庫5の商品収納ラック7に収納された商品は所望の温度(例えば55℃)に加熱されることになる。
【0010】
また、商品収容庫に庫内熱交換器を追加装備して、前記圧縮機、庫外熱交換器と接続し凝縮器として使用し、当該凝縮器の熱を庫内の加熱に利用することにより電熱ヒータの運転率を下げて消費電力低減を図っているヒートポンプ方式の自動販売機や、余熱配管を有した冷却/加熱ユニット装置を構成し、自動販売機筐体の側面部分または背面部分にその余熱配管を配し、その余熱配管に流入した冷媒の残存温熱により加熱室の保温に利用したり、余熱配管に吸熱部が接続され、前記筐体の側面部分または背面部分に放熱部が接続されたヒートパイプを設けて保温に利用することで電熱ヒータの運転率を下げ、消費電力量低減(省エネルギー化)を図った自動販売機も知られている。(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−102683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら省エネを目的としたヒートポンプ方式の冷却/加熱ユニット装置においては、ヒートポンプ方式専用の冷却/加熱ユニット装置で構成され、また上記特許文献1のように余熱配管を有した冷却/加熱ユニット装置においては、冷却/加熱ユニット装置自体の構造の複雑さ、余熱配管を筐体に配する構造など、従来の冷却/加熱ユニット装置に対し、組立の煩雑さ、部品点数増大といった課題がある。
【0013】
本発明は上記課題に鑑み、電熱ヒータを用いた冷却/加熱ユニット装置においても省エネ化を実現させることを目的とし、冷却/加熱ユニット装置を変更することなく電熱ヒータの運転率を下げて消費電力量低減(省エネルギー化)を図った自動販売機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するために、請求項1に係る発明は、断熱筐体として形成された本体キャビネットの庫内が断熱仕切板によって左右方向に複数の商品収容庫に仕切られ、前記複数の商品収容庫の少なくとも一つが冷却/加熱兼用の商品収容庫として冷却/加熱される自動販売機であって、
前記冷却/加熱兼用の商品収容庫に配設された庫内熱交換器と電熱ヒータからなる冷却/加熱ユニットと、機械室に配設されるとともに前記冷却/加熱ユニットと冷媒配管を介して接続されたコンデンシングユニットを形成するところの、冷媒を圧縮する圧縮機,冷媒を冷却する庫外凝縮器,冷媒を膨張する膨張機構とを備えた自動販売機において、
前記圧縮機の廃熱を受熱するための受熱部と、前記冷却/加熱兼用の商品収容庫に配設した放熱部と、前記受熱部と放熱部との間に設けられ、前記受熱部で受熱した熱を放熱部に伝熱若しくは遮断するための熱切替部とからなる熱輸送加熱装置を設けたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に係る発明は、前記熱輸送加熱装置の受熱部は、前記圧縮機の廃熱を受熱する受熱板および当該受熱板に接続された受熱用ヒートパイプからなり、
前記熱輸送加熱装置の放熱部は、前記冷却/加熱兼用の商品収容庫に配設された放熱フィンおよび当該放熱フィンに接続された放熱用ヒートパイプからなり、
前記熱輸送加熱装置の熱切替部は、前記受熱用ヒートパイプに接続された受熱プレートと、前記放熱用ヒートパイプに接続された放熱プレートと、前記受熱プレートと放熱プレートとを接触若しくは離反させる切替操作手段からなることを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に係る発明は、前記熱切替部を自動販売機の商品収容庫の外部に配したことを特徴とする。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、前記受熱プレートと前記放熱プレートは熱伝導性部材からなることを特徴とする。
【0018】
また、請求項5に係る発明は、前記熱輸送加熱装置を、放熱部の放熱用ヒートパイプを前記冷却/加熱ユニット装置の冷媒配管に沿って引き回すとともに放熱部の放熱フィンを前記冷却/加熱ユニット装置の庫内熱交換器と前後方向に並べて配設した1つの組立部品としてモジュール化し、冷却/加熱ユニット装置に追加装備可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る自動販売機によれば、圧縮機の廃熱を受熱するための受熱部と、前記冷却/加熱兼用の商品収容庫に熱を放出するための放熱部と、前記受熱部と放熱部との間に設けられ、前記受熱部で受熱した熱を放熱部に伝熱若しくは遮断するための熱切替部とからなる熱輸送加熱装置を設けたことにより、従来の冷却/加熱ユニット装置を変更することなく、従来では自動販売機の外部へ放出していた圧縮機の廃熱を、加熱室として使用する商品収容庫の加熱に利用することができるので、電熱ヒータの運転率を下げて消費電力量低減(省エネルギー化)を図ることができるという効果を有する。
【0020】
本発明の請求項2に係る自動販売機によれば、前記圧縮機の廃熱を受熱する受熱部と、受熱部から伝達された熱を放出する放熱部において、ヒートパイプにより熱輸送を行うという簡単な構成よって圧縮機の廃熱を加熱室として使用する前記商品収容庫に熱輸送する熱輸送加熱装置を得ることができるという効果を有する。
【0021】
本発明の請求項3に係る自動販売機によれば、熱輸送加熱装置に設けられた前記熱切替部を自動販売機の前記商品収容庫の外部に配したことにより、前記商品収容庫の冷却、加熱の切り替えの際、前記商品収容庫の前面にある断熱用の内扉を開閉することなく、前記受熱プレートと前記放熱用プレートを接触させたり、離反させることができるため、冷却または加熱された庫内が外気温の影響を受けることなく前記商品収容庫内への熱輸送、熱遮断の切り替えを行なうことができる。
【0022】
本発明の請求項4に係る自動販売機によれば、熱輸送加熱装置に設けられた前記熱切替部にある前記受熱プレートと前記放熱プレートをアルミニウムまたは銅合金などの熱伝導性部材とし、前記受熱プレートと前記放熱プレートを密着させることにより、前記受熱プレートと前記放熱プレートそれぞれに接続されたヒートパイプの熱伝達を効率良く行なうことができるという効果を有する。
【0023】
本発明の請求項5に係る自動販売機によれば、熱輸送加熱装置はモジュール化された1つの組立部品として構成されており、既に自動販売機に搭載されている冷却/加熱ユニット装置への取り付け、取り外しも可能となることから、省エネ対応用のオプション部品として提供できる共に、既に設置されている自動販売機への後付け対応も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である自動販売機の本体内部構造を正面から見た図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態である自動販売機の熱輸送加熱装置の取り付け状態を示した本体内部構造の側面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態である自動販売機の熱輸送加熱装置の全体外観図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態である自動販売機の熱輸送加熱装置を、冷却/加熱ユニット装置に取り付けた状態図である。
【図5】図5は、受熱部の詳細図を示し、(a)が受熱部を圧縮機に当接した状態図、(b)が受熱部の構成部品を示した取付分解図である。
【図6】図6は、熱切替部の詳細図を示し、(a)が受熱プレートと放熱プレートが密着された状態図、(b)が受熱プレートと放熱プレートが切り離されている状態図である。
【図7】図7は、熱切替部における受熱(放熱)プレート、と受熱(放熱)ヒートパイプの取付分解図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態である自動販売機の熱輸送加熱装置における熱伝達の流れを示した模式図であり、(a)が熱輸送時、(b)が熱遮断時を示す。
【図9】図9は、従来の自動販売機の本体内部構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る自動販売機の熱輸送加熱装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態である自動販売機の本体内部構造を正面から見た図であり、本体キャビネット1は、前面が開口した断熱筐体として形成されている。本図においては、本体キャビネット1の内部には2つの断熱仕切板30によって仕切られた3つの独立した商品収容庫5が左右に並んだ態様で設けてある。この商品収容庫5は、缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を所望の温度に維持した状態で収容するためのもので、断熱構造を有している。なお、3つの独立した商品収容庫5は、例えば、正面視左側の商品収容庫5が冷却専用の商品収容庫、中央及び右側の商品収容庫5が冷却/加熱兼用の商品収容庫として構成されている。
【0027】
図2は、本発明にかかる熱輸送加熱装置17(図3参照)を配した自動販売機の内部構造を示す側面図である。なお、この例では図1における右端側の商品収納庫5の内部構造を示しており、図9(従来の自動販売機の本体内部構造の側面図)と同一部品においては図9と同じ符号にて説明する。
【0028】
図2に示した本発明の実施の形態の自動販売機が図9に示した従来装置と相違する点は、図2の太い実線で示した熱輸送加熱装置17であり、その他の構成は従来装置と同一である。前記熱輸送加熱装置17は、受熱部18、熱切替部19、放熱部20から構成されている。前記受熱部18、熱切替部19、放熱部20の具体的構造については後述するが、前記受熱部18は受熱板18bと受熱用ヒートパイプ18aからなり、熱切替部19は受熱プレート19a、放熱プレート19b、切替レバー19cからなり、放熱部20は放熱用ヒートパイプ20a及び放熱フィン20bからなる。
【0029】
前記受熱部18及び、熱切替部19は、機械室6に配されるコンデンシングユニット26に干渉しない位置に配設されている。また、放熱部20における放熱フィン20bは、庫内熱交換器13の前方へ配置され、庫内ファン14、商品搬出シュート9に干渉しない大きさで形成されている。放熱部20における放熱用ヒートパイプ20aは、前記機械室6に配されるコンデンシングユニット26と庫内熱交換器13を接続する冷媒配管31に沿って、前記商品収容庫5内へ導入され、放熱フィン20bに差し込まれ熱的に結合されている。
【0030】
そして、商品収容庫5を加熱室として使用する際(加熱モード)には、庫内ファン14の駆動により、熱輸送加熱装置の熱切替部にある受熱プレート19aと放熱プレート19bとを密着させることで、圧縮機10の廃熱を加熱室として使用する商品収容庫5へ熱輸送し、放熱フィン20bから放出された熱が送風される。熱輸送加熱装置17による加熱が不足する場合には電熱ヒータ15を通電ONとして所望の温度(例えば55℃)に加熱する。なお、加熱モードの初期に電熱ヒータ15を通電ONとして所望の温度(例えば55℃)に到達するまでの時間を短縮することもできる。
【0031】
商品収容庫5を冷却室として使用する際(冷却モード)には、電熱ヒータ15を通電OFFとし、かつ、熱輸送加熱装置17の熱切替部19にある受熱プレート19aと放熱プレート19bを切替レバー19cを回動させて切り離したうえで、庫内熱交換器13と商品収容庫5の内部空気との間で熱交換が行なわれて、内部空気が冷却され、冷風を送風する。
【0032】
図3は、本発明にかかる熱輸送加熱装置17の全体外観図である。図に示す通り、受熱用ヒートパイプ18a、放熱用ヒートパイプ20aは、図に示すように屈曲加工された形態で受熱部18、熱切替部19、放熱部20が一体的に接続されており、1つの組立部品としてモジュール化(一体化)されている。
【0033】
図4は、本発明にかかる熱輸送加熱装置17が冷却/加熱ユニット装置に取り付けられた状態を示している。熱輸送加熱装置17の構成部品である受熱板18bは、冷却/加熱ユニット装置の構成部品である圧縮機10に当接固定される。また受熱板18bに接続された受熱用ヒートパイプ18aは、冷却/加熱ユニット装置に配置可能な形状に屈曲加工され、冷却/加熱ユニット装置の図示右側に配された熱切替部19の受熱プレート19aへ接続されている。また放熱プレート19bに接続された放熱用ヒートパイプ20aは、放熱プレート19bの図示前面へ向かい、商品収納庫5へ通じる冷却/加熱ユニット装置の冷媒配管31と略同一の形状に屈曲加工され、放熱フィン20bへ熱的に結合されている。放熱フィン20bは冷却/加熱ユニット装置の庫内熱交換器13の前面に配置される。なお、本図においては受熱用ヒートパイプ18a、放熱用ヒートパイプ20aはともに1本ずつで構成され、図示右側の庫内熱交換器13の前面に配されており、図1における右側の商品収納庫5のみを加熱用に利用しているが、中央の商品収納庫5も加熱用に利用する際は、受熱用ヒートパイプ18a、放熱用ヒートパイプ20a、放熱フィン20bを追加装備してそれぞれ受熱プレート19a、放熱プレート19bに差込み保持させて使用することもできる。
【0034】
図5は、受熱部18の詳細図を示し、図5(a)が受熱部18を圧縮機10に当接固定した状態図、図5(b)が受熱部の構成部品とその取付分解図である。
【0035】
図5(a)において、受熱部18における受熱板18bは、圧縮機10の曲面に沿った形状で当接固定され、耐熱性の結束バンド23により圧縮機10の外郭表面に密着固定する。なお、本図においては、受熱部18における受熱板18bを2個並置した場合を示しており、受熱用ヒートパイプ18aが2ヶ所差し込み保持できる構成としている。
【0036】
図5(b)は、受熱部18において受熱板18bにおける部品構成とその取付方法を示し、図においては、2個並置された受熱板18bのうちの下方の受熱板18bにおいてその構成部品を分解したものである。受熱板18bは、圧縮機10に当接する受熱板本体18c、受熱用ヒートパイプ18aを受熱板本体18cに保持固定するための固定金18d、受熱用ヒートパイプ18aを受熱板本体18cと固定金18dの間に差し込み保持するための固定ネジ18eで構成されている。受熱板本体18cは、熱伝導性のアルミニウムや銅合金であり、圧縮機10に当接する面(図示裏面側)は圧縮機10の曲率面と略同一の曲率面を有した凹形状とし、その反対面(図示面側)は、受熱用ヒートパイプ18aを保持する半円状のU溝を中央部に有している。また、固定金18dは、熱伝導性のアルミニウムや銅合金であり、受熱用ヒートパイプ18aを保持する半円状のU溝を中央部に有している。
【0037】
そして、受熱板本体18cのU溝に受熱用ヒートパイプ18aを嵌合させた状態で、受熱用ヒートパイプ18aを固定金18dのU溝に合わせて嵌合させて固定ネジ18eにて固定する。その後、受熱用ヒートパイプ18aと受熱板18bが固定された状態で受熱板本体18cを圧縮機10の外郭表面に当接させて耐熱性の結束バンド23で固定する。
【0038】
図6は、熱切替部19の詳細図を示し、図6(a)が受熱プレート19aと放熱プレート19bが密着している状態、図6(b)が受熱プレート19aと放熱プレート19bが切り離されている状態を示す。なお、本図では受熱プレート19aに差し込み保持する受熱用ヒートパイプ18a、放熱プレート19bに差し込み保持する放熱用ヒートパイプ20aは図示省略してある。図において、19fが受熱用ヒートパイプ18aの差込み孔、19gが放熱用ヒートパイプ20aの差込み孔である。この差込み孔は本図においてはそれぞれ2ヶ所設けてあり、2つの商品収納庫まで対応可能であるが、受熱プレート、放熱プレートを変更することにより、加熱用に利用する商品収納庫の数に応じた対応も可能である。
【0039】
受熱プレート19aと放熱プレート19bは、各々の上下左右の位置決めと脱落防止のために取付台19dに固着された4つの連結ピン19eが貫通する態様で、受熱プレート19aが取付台19dに係止され、放熱プレート19bが上下移動自在に保持されている。また、切替レバー19cは図示手前側の切替用の把手部と、受熱プレート19bの底面に接触するように後方側から手前に折り返した当接部(図示黒丸部はその先端部)までつながった屈曲アーム形状となっており、切替レバー19cは、取付金19hの略U字形状の溝内に差込み保持され、固定ネジ19iにより取付台19dに回動可能に取り付けられている。
【0040】
図6(a)においては、放熱プレート19bの底面に接触している切替レバー19cの当接部(図示黒丸部はその先端部)が放熱プレート19bを押し上げている状態(上方)を示し、放熱プレート19bは受熱プレート19aに密着している。
【0041】
そして、図6(b)に示すように、切替レバー19cの把手部を矢印で示す図示右方向へ回動させると、切替レバー19cの先端部(図示黒丸部)は下方へ移動し、それにより放熱プレート19bは自重により受熱プレート19aから切り離される。ここで、受熱プレート19aと放熱プレート19bの隙間Dは、図6(a)と図6(b)における切替レバー19cの先端部(図示黒丸部)の鉛直方向の移動距離となる。
【0042】
図7は、熱切替部における受熱プレート19a、放熱プレート19bと受熱用ヒートパイプ18a、放熱用ヒートパイプ20aの取付分解図である。図に示す通り、受熱用ヒートパイプ18a、放熱用ヒートパイプ20aは、それぞれ受熱プレート19a、放熱プレート19bのU溝と押え金21のU溝で形成された差込み孔19f、19g(図6参照)内に嵌合保持され、受熱プレート19a、放熱プレート19bは固定ネジ22にて押え金21にて固定する。
【0043】
図8は、本発明にかかる熱輸送加熱装置17の熱伝達の流れを模式的に示した図であり、図において、受熱用ヒートパイプ18aは、一端を熱伝導性の受熱板18bに、他端は、熱伝導性の受熱プレート19aに差し込み保持される。熱伝導性の放熱プレート19bは、前記受熱プレート19aと対峙する位置に配され、受熱プレート19aと同等の面積と厚みを有している。放熱用ヒートパイプ20aは、一端を放熱プレート19bに差し込み保持され、他端は、放熱フィン20bに設けられた差込孔に貫通させて熱的に結合する。
【0044】
熱伝達の流れは、図示の白抜き矢印に示す。圧縮機10の内部は、冷却/加熱運転時には高温高圧の冷媒が流れており、圧縮機10の表面温度も約80℃に達する。その圧縮機10に、受熱板18bを当接させることにより、受熱板18bは圧縮機10の熱を受熱することになる。さらに、受熱板18bに差し込み保持された受熱用ヒートパイプ18aがその熱を受熱し、熱輸送を行なう。受熱用ヒートパイプ18aから熱輸送された熱は、受熱プレート19aで受熱される。
【0045】
図8aの状態(商品収容庫5を加熱室として使用する加熱モードの状態)では、受熱プレート19aと放熱プレート19bが密着しているため、受熱プレート19aで受熱された熱は、放熱プレート19bへ熱を伝達し、さらに放熱プレート19bに差し込み保持された放熱用ヒートパイプ20aがその熱を受熱し、熱輸送を行なう。放熱用ヒートパイプ20aから熱輸送された熱は、放熱フィン20bにより放熱される。
【0046】
図8bの状態(商品収容庫5を冷却室として使用する冷却モードの状態)では、受熱プレート19aと放熱プレート19bが切り離されているため、受熱プレート19aで受熱された熱は、放熱プレート19bへ熱を伝達することができないため、放熱プレート19b、放熱用ヒートパイプ20a、放熱フィン20bには熱が伝達されない。
【0047】
以上に説明したように本発明に係る自動販売機によれば、断熱筐体として形成された本体キャビネット1の庫内が断熱仕切板30によって左右方向に複数の商品収容庫5に仕切られ、前記複数の商品収容庫5の少なくとも一つが冷却/加熱兼用の商品収容庫として冷却/加熱される自動販売機であって、前記冷却/加熱兼用の商品収容庫に配設された庫内熱交換器13と電熱ヒータ15からなる冷却/加熱ユニット27と、機械室6に配設されるとともに前記冷却/加熱ユニット27と冷媒配管31を介して接続されたコンデンシングユニットを形成するところの、冷媒を圧縮する圧縮機10、冷媒を冷却する庫外凝縮器11、冷媒を膨張する膨張機構28とを備えた自動販売機において、圧縮機10の廃熱を受熱するための受熱部18と、前記冷却/加熱兼用の商品収容庫に熱を放出するための放熱部20と、前記受熱部18と放熱部20との間に設けられ、前記受熱部18で受熱した熱を放熱部20に伝熱若しくは遮断するための熱切替部19とからなる熱輸送加熱装置を設けたことにより、従来の冷却/加熱ユニット装置を変更することなく、従来では自動販売機の外部へ放出していた圧縮機10の廃熱を、加熱室として使用する商品収容庫の加熱に利用することができるので、電熱ヒータ15の運転率を下げて消費電力量低減(省エネルギー化)を図ることができるという効果を有する。
【符号の説明】
【0048】
1・・・本体キャビネット、2・・・外扉、3・・・内扉、 5・・・商品収容庫、6・・・機械室、7・・・商品収納ラック、10・・・圧縮機、11・・・凝縮器、12・・・庫外ファン、13・・・庫内熱交換器、14・・・庫内ファン、15・・・電熱ヒータ、16・・・循環ダクト、17・・・熱輸送加熱装置、18・・・受熱部、18a・・・受熱用ヒートパイプ、18b・・・受熱板、19・・・熱切替部、19a・・・受熱プレート、19b・・・放熱プレート、19c・・・切替レバー、 20・・・放熱部、20a・・・放熱用ヒートパイプ、20b・・・放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱筐体として形成された本体キャビネットの庫内が断熱仕切板によって左右方向に複数の商品収容庫に仕切られ、前記複数の商品収容庫の少なくとも一つが冷却/加熱兼用の商品収容庫として冷却/加熱される自動販売機であって、
前記冷却/加熱兼用の商品収容庫に配設された庫内熱交換器と電熱ヒータからなる冷却/加熱ユニットと、機械室に配設されるとともに前記冷却/加熱ユニットと冷媒配管を介して接続されたコンデンシングユニットを形成するところの、冷媒を圧縮する圧縮機、冷媒を冷却する庫外凝縮器,冷媒を膨張する膨張機構とを備えた自動販売機において、
前記圧縮機の廃熱を受熱するための受熱部と、前記冷却/加熱兼用の商品収容庫に配設した放熱部と、前記受熱部と放熱部との間に設けられ、前記受熱部で受熱した熱を放熱部に伝熱若しくは遮断するための熱切替部とからなる熱輸送加熱装置を設けたことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
前記熱輸送加熱装置の受熱部は、前記圧縮機の廃熱を受熱する受熱板および当該受熱板に接続された受熱用ヒートパイプからなり、
前記熱輸送加熱装置の放熱部は、前記冷却/加熱兼用の商品収容庫に配設された放熱フィンおよび当該放熱フィンに接続された放熱用ヒートパイプからなり、
前記熱輸送加熱装置の熱切替部は、前記受熱用ヒートパイプに接続された受熱プレートと、前記放熱用ヒートパイプに接続された放熱プレートと、前記受熱プレートと放熱プレートとを接触若しくは離反させる切替操作手段からなることを特徴とする請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
前記熱切替部を自動販売機の商品収容庫の外部に配したことを特徴とする請求項1に記載の自動販売機。
【請求項4】
前記受熱プレートと前記放熱プレートは熱伝導性部材からなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の自動販売機。
【請求項5】
前記熱輸送加熱装置を、放熱部の放熱用ヒートパイプを前記冷却/加熱ユニット装置の冷媒配管に沿って引き回すとともに放熱部の放熱フィンを前記冷却/加熱ユニット装置の庫内熱交換器と前後方向に並べて配設した1つの組立部品としてモジュール化し、冷却/加熱ユニット装置に追加装備可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自動販売機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−150602(P2012−150602A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7960(P2011−7960)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】