説明

自動車のドアガードバー

【課題】本発明は自動車のドアガードバーに関するものであり、衝突荷重の吸収効率を高めつつ破断の恐れを回避することを目的とする。
【解決手段】ドアガードバー12は鋼板からのプレス加工品であり、両端に一体の取付部(ブラケット部)を備えている。ドアガードバー12は一対の縦壁12-1と、これら一対の縦壁12-1を接続する横壁12-2とからなり、横壁から離間側に開口部15を形成し、断面が実質的にU形状をなしている。そして、横壁12-2は外側ドアパネルに対向し、開口部15は内側ドアパネルに対向するように配置される。横壁12-2に夫々の縦壁12-1に連接されて外側ドアパネルに向け突出する形状のビード部16を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体側面からの衝突に対して乗員の保護のための補強部材である自動車のドアガードバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアガードバーはドアインパクトビームとも称し、車体側面からの衝突に対して変形することにより衝突エネルギを吸収するように機能し、乗員の保護のための補強部材である。ドアガードバーは内側及び外側のドアパネル間の空間に幅方向に延びるように配置され、両端部においてブラケット部にて内側ドアパネルに取り付けられている構造となっている。ドアガードバーによる衝突エネルギの効果的な吸収のため、ドアガードバーを一対の縦壁(ウエブ)と、これら一対の縦材を連結する横壁(中央板部)とを備えて、断面U字状に形成し、断面U字形状の開口部を外側ドアパネルに向け、かつU字形開口部の側に縦材の端部より外方に向けて側部フランジを設けた構造のものが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−56387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドアに対する側面衝突時に、一般の構造のドアガードバーの場合、衝突の当初はドアガードバーの反力は増大していくが、対荷重反力が最大値に達するに至ると反力は低下に転ずるが、特許文献1の構造のドアガードバーは、開口部側で衝突荷重が受け止められ、開口部を挟む一対の縦材は開こうとするが、開口部を挟んで縦材から延出するフランジ部に衝突荷重により変形したドアアウタパネルが強く押し付けられようになるため、縦材の開きは抑制され、対荷重反力が最大値に到達後の反力低下を抑制し、衝突エネルギの吸収特性の安定化をしようとしたものである。
【0004】
ところが、断面形状の開きを少なくすることにより反力を維持しようとすると、そのときにドアガードバーの曲げ応力(ひずみ)は必然的に著しく増大し、衝突荷重が大きい場合にドアガードバーが亀裂破断し、ドアガードバーによる意図通りのエネルギ吸収機能が得られない恐れがある。このような問題点は、ガイドバーの素材として材料強度が高いものを使用することにより、破断時の伸びが少ないときは、顕著である。
【0005】
この発明は以上の問題点の解決を目的としており、衝突荷重の吸収効率を高めつつ破断の恐れを回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明になる自動車のドアガードバーは内側及び外側のドアパネル間の空間に幅方向に延びるように配置され、両端部においてドアパネルに取り付けのためのブラケット部(取付部)を備えており、更に、ドアガードバーは一対の縦壁と、これら一対の縦壁を接続する横壁とからなり、横壁と離間側に開口部を形成し、断面が実質的にU形状をなしている。そして、横壁は外側ドアパネルに対向し、開口部は内側ドアパネルに対向するように配置されており、かつ前記横壁に夫々の縦壁に連接させて外側ドアパネルに向け突出する形状のビード部を形成している。
【0007】
ドアに対する衝突時に外側ドアパネルに対向しているビード部が最初に圧潰され、ビード部の圧潰によりビード部との接続部位において縦壁は横方向(外側)に押し出され、そのため、ビードとの接続部位における縦壁の歪が軽減され、その部位における亀裂を防止することができる。また、衝突時におけるビード部との接続部位における縦壁の押し出しは縦壁の倒れ(断面の開き)を惹起せしめ、大変形時のフランジの引張り方向の歪を著しく軽減し、フランジ部の亀裂を防止若しくはその発生を遅らせすることができる。また、車体に対する過大入力による大変形の対策として、ドアガードバーの素材として低伸張の高強度材を使用した場合にあっても、部品の分断の発生の可能性を低減することができる。
【0008】
前記ビード部の周長Lとし、ビード部の幅をdとしたとき、L−d≧4mmであるのが好ましく、このようにすることによりビード部の圧潰による亀裂防止効果を最大限に発揮せしめることができる。
【0009】
横壁から離間側の縦壁の端部のフランジ部は内側に折り返された形状とすることにより、ストローク後半に反力を生成し、吸収エネルギ増大に寄与せしめることができる。
【0010】
また、前記ブラケット部はドアガードバーと一体に鋼板よりプレス成形されすることにより構成が単純化され、コスト低減を実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
衝突時におけるドアガードバーの変形を局部的な亀裂や破断なしにスムースに惹起せしめることができ、ドアガードバーにより所期の衝突エネルギ吸収を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び図2において、10は内側ドアパネル(インナパネル)を示しており、内側ドアパネル10にドアガードバー12が取り付けられ、ドアガードバー12を挟んで内側ドアパネル10に外側ドアパネル(アウタパネル)13(図2)が取り付けられている。換言すれば、ドアガードバー12は内側と外側のドアパネル10, 13間に配置されている。図1に示すように、ドアガードバー12は幾分傾斜しているが幅方向に延在しており、両端に内側ドアパネル10への取付部(ブラケット部)14を備えており、取付部14はこの実施形態では後述のようにドアガードバー12との鋼板からのプレス成形による一体品である。内側ドアパネル10はウインドウのための開口部10-1より下部における外周部10-2が少し隆起するように形成され、この隆起部10-2にドアガードバー12の両端の取付部14が溶接固定されている。
【0013】
図3から図5は取付部14も含めて鋼板よりのプレス成形品であるドアガードバー12を示す。ドアガードバー12は、一対の縦壁12-1と、これら一対の縦壁12-1を接続する横壁12-2とを具備し、断面でみると図4に示すように、縦壁12-1間における横壁12-2から離間側に開口部15を形成し、横断面において実質的にU形状をなしている。縦壁12-1は横壁12-2に向けて幾分先細に形成される。図2に示すようにドアガードバー12はその横壁12-2 が外側ドアパネル13に近接して対向するように配置され、即ち、ドアガードバー12は、そのU断面形状の閉鎖底面が外側ドアパネル13に対向し、開口面が内側ドアパネル10と対向するように配置されている。従って、衝突時の外力はドアに加わる外力は外側ドアパネル13を介してドアガードバー12に横壁12-2(閉鎖底面)を介して加わり、ドアガードバー12を変形させ、衝突エネルギの吸収を行う。
【0014】
図4に示すように、ドアガードバー12の横壁12-2は左右にビード部16を形成し、ビード部16は外側に突出した実質的に半円形の断面形状をなしており、左右にビード部16間においては、横壁12-2は谷部をなすが、谷部における開口端15からの横壁12-2の高さHは縦壁12-1の高さに実質的に等しくなっている。そして、左右のビード部16は、夫々、左右の縦壁12-1に滑らかに連なっている。図4においてビード部16の幅をd、周長をLにて表している。
【0015】
左右の縦壁12-1は下端においてフランジ部18に連なっており、フランジ部18は横断面において半円形をなし、外方、即ち、外側ドアパネル13の側へ向いた折り返し部18Aを形成している。
【0016】
ドアガードバー12はこの実施形態では鋼板からプレス加工により得られ、左右の取付部14はドアガードバー12と一体化されている。図5はドアガードバー12から取付部14にかけての一体成形部を模式的な斜視図として示すものである。即ち、取付部14はドアガードバー12との連結部から末広がりの形状をなし、ドア上下方向の端縁に沿った返し部以外は実質的に平坦であり、その下面が図1に示すように内側ドアパネル10の隆起部10-2に溶接固定される。そして、取付部14の一般面からドアガードバー12の縦壁12-1が隆起するように形成され、取付部14の一般面から横壁12-2に向けてテーパ状の連結壁12-3が形成されている。このようなドアガードバー12と取付部14との一体構造は鋼板から多段階のプレス加工にて形成することができる。取付部14は以上説明の実施形態の如きドアガードバーとの一体構造に必ずしも限定せず、溶接等によりドアガードバーに連結する構造であっても良く、この別体構造も本発明に包含されることは言うまでもない。
【0017】
この発明の第1の実施形態のドアガードバー12についてその衝突時のエネルギ吸収性能を評価するため負荷子による曲げ試験を実施した。即ち、ドアガードバー12を図6のように離間した一対の支持台20上に載置し、支持台20間の中央部においてドアガードバー12に直交するように下向きの半円形断面の負荷子22を当接させ、負荷子22より垂直荷重をドアガードバー12に加える。ドアガードバー12に対する垂直荷重はドアガードバー12を想像線12´のように曲げ変形させると共に、負荷子22は図7に示すようにビード部16に当接していることからビード部16が最初に圧潰され、ビード部16の圧潰によりそれに接続する縦壁の部位が矢印aのように外側に押し出され、このようなビード部16による材料の押し出しは縦壁12-1におけるビード部16との接続部位に加わる歪を軽減し、さもなければこの部位に生じうる亀裂発生を未然防止する。また、負荷子22の変位量を大きくして行くに従って、ビード部16による材料の押し出しは想像線12-1'に示すように縦壁12-1の倒れ(断面の開き)を惹起せしめ、これに追随してフランジ部18も拡開して行くため、大変形時のフランジ18の引張り方向の歪を著しく軽減し、フランジ部18の亀裂を防止若しくはその発生を遅らせすることができる。また、車体に対する過大入力による大変形の対策として、ドアガードバー12の素材として低伸張の高強度材を使用した場合にあっても、部品分断の発生の可能性を低減することができる。
【0018】
ビード16の設置による亀裂発生抑制を効果的に行わしめるため、前記ビード部16の周長Lとし、ビード部16の幅をdとしたとき、L−d≧4mmとすることにより、良好な曲げ試験結果を得ることができた。
【0019】
図8は別実施形態のドアガードバー112の横断面形状をしており、一対の縦壁112-1と縦壁112-1を接続する横壁112-2とを備えた片面開放の実質的断面U形状であることは第1の実施形態のドアガードバーと同様であるが、横壁112-2が左右のビード部116間において、比較的幅広の平坦面を呈していることのみ相違しており、その他の構成についは実質的に相違がなく、また作用効果的にも実質的な相違はない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はこの発明のドアガードバーを取付けた内側ドアパネルの正面図である。
【図2】図2は図1のII−II線に沿って表される断面図である。
【図3】図3はドアガードバーの拡大平面図である。
【図4】図4は図3のIV−IV線に沿って表される断面図である。
【図5】図5はドアガードバーの取付部の斜視図である。
【図6】図6はドアガードバーの曲げ試験機の概略図である。
【図7】図7は図4と同様であるが曲げ試験中のドアガードバーとの位置関係を示す。
【図8】図8は別実施形態におけるドアガードバーの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10…内側ドアパネル
12…ドアガードバー
12-1…ドアガードバーの縦壁
12-2…ドアガードバーの横壁
13…外側ドアパネル
14…取付部
16…ビード部
18…フランジ部
20…曲げ試験機の支持台
22…曲げ試験機の負荷子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側及び外側のドアパネル間の空間に幅方向に延びるように配置され、両端部においてドアパネルへの取付部を備え、一対の縦壁と、前記一対の縦壁を接続する横壁とからなり、横壁と離間側に開口部を形成した自動車のドアガードバーにおいて、前記横壁は外側ドアパネルに対向し、開口部は内側ドアパネルに対向するように配置されており、かつ前記横壁に夫々の縦壁に連接させて外側ドアパネルに向け突出する形状のビード部を形成した自動車のドアガードバー。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、前記ビード部の周長Lとし、ビード部の幅をdとしたとき、L−d≧4mmである自動車のドアガードバー。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の発明において、横壁から離間側の縦壁の端部は内側に折り返されたフランジ部を形成している自動車のドアガードバー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記取付部はドアガードバーと一体に鋼板よりプレス成形された自動車のドアガードバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−284934(P2008−284934A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129987(P2007−129987)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)