説明

自動車リフト装置

【課題】より汎用性を高めるとともに同時にリフト状態における自動車の高度な安定性が得られる自動車リフト装置を提供する。
【解決手段】自動車の車軸ユニットに取り付けられた車輪を受け入れるために側方に張り出した2対の車輪受けフォーク20a,20bを有するリフト装置からなる自動車リフト装置。側方に張り出した車輪受けフォーク20a,20bのためのリフト装置2,3は、前記車輪受けフォーク20a,20bに受持された車輪の車軸ユニットを、前記車輪受けフォーク20a,20bとは別個に垂直方向に昇降させる車軸用ジャッキ24と組み合わされている。
自動車リフト装置

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピット内に配設される自動車リフト装置であって、少なくとも2台のリフト装置を備え、そのうちの少なくとも1台のリフト装置は自動車のホイールベースに合わせるためにピットの長手方向に走行移動可能であり、そのうちの少なくとも1台のリフト装置は自動車の車軸ユニットに取り付けられた車輪を受け入れるために側方に張り出した2対の車輪受けフォークを有するもの、特にトラック用の自動車リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を下側から挟持して支える車輪受けフォークを有するこの種の自動車リフト装置は、支持領域が比較的離間して外側に位置しているために自動車は非常に安定して保持されるという利点を有している。これにより、自動車をリフトした状態で、自動車にかなりの反作用が生ずる整備修理作業を、自動車の側方への転がりや脱輪の心配をせずに、実施することができる。
【0003】
またその他に、自動車を車輪ではなく、車軸ユニット(車軸ないしは車軸ケース)を介して下側から支える自動車リフト装置も知られている。この種の自動車リフト装置は、リフト時に車輪は自由懸吊状態にあり、したがって自動車をリフトした状態で車輪の取り付け/取り外しが可能であるという利点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術から出発して、本発明の目的は、従来の自動車リフト装置を改良し、より汎用性を高めるとともに同時にリフト状態における自動車の高度な安定性が得られる自動車リフト装置を提供することであり、その際、とりわけコンパクトで安価な構造が実現されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ピット内に配設される自動車リフト装置において、上記課題を解決するため、本発明による装置は、少なくとも2台のリフト装置を備え、そのうちの少なくとも1台のリフト装置は自動車のホイールベースに合わせるためにピットの長手方向に走行移動可能であり、そのうちの少なくとも1台のリフト装置は自動車の車軸ユニットに取り付けられた車輪を受け入れるために側方に張り出した2対の車輪受けフォークを有し、前記側方に張り出した車輪受けフォークのためのリフト装置は、前記車輪受けフォークに受持された車輪の車軸ユニットを、前記車輪受けフォークとは別個に垂直方向に昇降させる車軸用ジャッキと組み合わされている。
【0006】
これにより、自動車はたとえば前車軸ユニットが車輪受けフォークのリフトによって支えられる一方で後車軸ユニットは車軸用ジャッキによって支えられることができるため、自動車の安定性を損なうことなく、後車輪の取り付け/取り外しを容易に行うことができるという利点が得られる。この場合、自動車はたとえば前方の車輪受けフォークと後方の車軸用ジャッキとによってリフトされることが可能であるし、あるいはまた、自動車は先ず前方も後方も共に車軸用ジャッキによってリフトされ、次いで後方の車輪受けフォークが降下されて、後方の車輪受けフォークによって車重を負担するといったような、種々の動作形態が可能となる。いずれの場合にも自動車の安定性は一方の車軸ユニット側がより長いスパンをもって、つまり安定して車重を支えることができる車輪受けフォークによって保証されている。
【0007】
車輪受けフォークと車軸用ジャッキとの組み合わせについては基本的に種々相違した構造的可能性が考えられるが、特に好適なのは、車軸ユニットに対応した車輪受けフォークが1本の共通のリフトマストに配置され、このリフトマストが車軸用ジャッキ用の昇降運動ガイドを有することである。これにより、特に車軸用ジャッキが車輪受けフォーク用リフトマストの内部に支持されていれば、非常にコンパクトな構造が実現される。
【0008】
リフトマストと車軸用ジャッキとは、リフトマストはその上昇運動時に車軸用ジャッキを強制的につれ動きさせるが、車軸用ジャッキもまた必要に応じ車輪受けフォーク付きのリフトマストよりもさらに上方へ上昇運動できるように相互連係した形態で構成されるのが好適である。これにより、車軸用ジャッキは車輪を持ち上げておくために最下ポジションからスタートする必要はなく、すでに多かれ少なかれリフトされた車輪受けフォークのレベルからスタートすることができるという利点が生ずる。
【0009】
本発明の特に好適な実施形態の1つでは、車輪受けフォークは車輪を受持する領域に車軸ユニットとほぼ平行に延びる車輪用すべりガイドを有している。これにより、車輪をこのすべりガイドで受けながらホイール孔を車軸ユニットの取付けボルトに嵌め込みまたは取付けボルトから取り外すことができることになり、その際に車輪重量を何らかの外的な部材で受け止めておく必要はない。したがって、たとえば新たに取り付けようとする車輪を降下された車輪受けフォークに載せ、次いでこの車輪受けフォークを車軸ユニットの高さまで上昇させ、こうして車輪のホイールを車軸ユニットの両側に嵌め込むことができる。これによって車輪の取り付け/取り外しは非常に容易になる。
【0010】
当業者にはすべりガイドを形成するさまざまな構造的な可能性が公知である。すべりガイドは昇降対象となる車軸ユニットに対してほぼ平行に延びる水平回転軸を有した少なくとも1個のローラとして構成し、このローラをさらに軸方向にスライド可能に車輪受けフォークを構成するそれぞれのアームに取り付けると好都合である。これによって、車輪を僅かな力で車軸ユニットの方へ水平に寄せ付けまたはそれから引き離し、また同時に車輪を回転させて正しいポジションに位置決めすることができる。
【0011】
車軸用ジャッキの好適な具体構成としては、それが側方に配置された2つの車軸ユニット受けを有し、これらの車軸ユニット受けの間に車軸ユニットのデフケースが位置し得るスリット又は切り欠きが形成されるとよい。この場合、これらの車軸ユニット受けは、異なった車軸寸法に適合し得るように、車軸ユニットとほぼ平行にスライド可能に車軸用ジャッキに取り付けられると良い。
【0012】
2台のリフト装置−つまり、前車軸用リフト装置と後車軸用リフト装置−しか備えていない自動車リフト装置にあっては、いずれのリフト装置も側方に張り出した車輪受けフォークと車軸用ジャッキとを有しているのが好適である。ただし、3台のリフト装置を備えた−つまり、6輪車両用の−自動車リフト装置では、一般に2台のリフト装置にのみ車軸用ジャッキを設ければ十分である。
【0013】
本発明のさらに別な好適実施形態において、リフト装置は同期制御装置によって動作制御され、その際、自動車がリフトされている状態において、一方の車軸ユニットの車輪のための車輪受けフォークの下降のみを可能にすると同時にこの車軸ユニットのための車軸用ジャッキと他方の車軸ユニットの車輪のための車輪受けフォークとを固定するような同期制御を実行することができる。これによって自動車は常に1つの車軸ユニット側が車輪受けフォークによって支えられることになる。
【0014】
さらに、同期制御装置によって一方の車軸ユニットのための車軸用ジャッキが他方の車軸ユニットの車輪のための車輪受けフォークと同じ速度で昇降するように制御することも好都合である。これによって自動車は常に水平レベルに保たれることになる。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は図面に基づく実施形態の下記説明ならびに図面自体から理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜4にはそれぞれ、2台のリフト装置2,3が配設された、修理工場フロアに設けられたピット1が模式的に示されている。一般に、一方のリフト装置−本実施形態において、リフト装置2−は詳細不図示の走行レール上を水平に走行移動することができ、他方のリフト装置3−本実施形態において、リフト装置3−は固定されて作業ピット内に配置されている。自動車は車軸ユニットの一方(例えば前車軸ユニット)が固定式リフト装置上方に位置するようにしてピットに乗り入れられる。次いで、走行移動可能なリフト装置2は自動車の他方の車軸(例えば後車軸ユニット)の下に位置するように移動させられる。
【0017】
各々のリフト装置は、それぞれが1個の自動車車輪に対応する、2つの車輪受けフォーク20a,20b(図2および4を参照)ないし30a,30bを有している。つまり、車輪受けフォークは図1と3においては図面の紙面に対して垂直方向に張り出しており、または、自動車リフト装置を走行方向から眺めた図2と4においては、左右方向に張り出している。
【0018】
図5から明らかなように、車輪受けフォーク20a,20bはそれぞれ、互いに平行に延びた1対のアーム21a,22aないし21b,22bから成っており、該アームの間にそれぞれ1個の自動車車輪を受け入れるためのスリットないしは切り欠きスペースが設けられている。
【0019】
1台のリフト装置の双方のフォーク20a,20bは1本の共通のリフトマスト23に設けられている(図5を参照)。このリフトマストは油圧式またはその他の方法で垂直方向に昇降運動することができる。
【0020】
ここで重要な点は、リフトマスト23は中空形材として形成されており、その内部に車軸用ジャッキ24が装備されていることである。リフトマスト23と車軸用ジャッキ24とは、それらが垂直中心軸周りに互いに相対回転し得ないように、それぞれ方形断面を有している。車軸用ジャッキ24はリフトマスト23とは別個に垂直方向に昇降運動することができる。つまり、リフトマスト23は好適にはその上昇運動時に車軸用ジャッキ24を連れ動かしするが、車軸用ジャッキ24もまたリフトマスト23とは別個にさらに上方へ移動し、また再び車輪受けフォークのレベルにまで下降することができる。
【0021】
また、車軸用ジャッキ24をリフトマスト23とはまったく独立に制御することも本発明の範囲に含まれることは言うまでもなく、これは特に、車軸用ジャッキがリフトマストの内部ではなく、リフトマストの側面において、垂直方向に昇降運動し得るように支持されている場合に当てはまる。
【0022】
車軸用ジャッキ24はその上端に、側方に−つまり昇降運動方向に対して横断方向に −張り出した車軸ユニット受け24a,24bを有している。これらの車軸ユニット受けは好適には昇降運動方向に対して横方向にスライド可能なように車軸用ジャッキに取り付けられおり、これによって、車軸ユニット受けを昇降すべき自動車の車軸ユニットの下方で好適な支持ポジションに移動させることが可能である。
【0023】
こうして、車輪受けフォーク20a,20bおよび30a,30bによって持ち上げられた自動車を、車軸用ジャッキ24の上昇運動によってであれ、リフトマスト23の下降運動によってであれ、あるいは双方の手段のコンビネーション運動によってであれ、車軸ユニットによって持ち上げて車輪受けフォークから引き離すことが可能である。この場合に重要な点は、リフト装置2,3が油圧式または電動式に互いに同期されており、車軸ユニットが車輪受けフォークによって保持されるかまたは車軸用ジャッキによって保持されるかにかかわりなく、その自動車が基本的に水平な姿勢を維持していることである。
【0024】
図6に示した構造は、フォーク20aのアーム21a,22aならびにフォーク20bのアーム21b,22bのそれぞれの自動車車輪を受持する領域に車軸ユニットと平行な軸を有したすべりガイドとしてのローラ31a,32aないし31b,32bが支持されている点で、図5に示した構造と基本的に相違している。このローラの上で、車輪を回転させてホイール側の孔が取付けボルトまたは車軸側の孔と整列するような角度位置に容易にもたらすことができる。
【0025】
さらに、上記のローラは長手方向にもスライドすることができる。そのために、ローラはローラよりも長い軸41a,42aないし41b,42bに支持されており、しかも、車輪受けフォーク20a,20bのアームにはそれぞれローラの軸方向に適切なスペースが設けられているために、ローラは回転し得るだけでなく、軸方向にスライドすることができる。この軸方向スライドはローラ両側の当たり面とアーム21a,22a,21b,22bに設けられた切り欠きスペースを作り出す端面とによって規定される。これにより、車輪を軸方向において自動車から容易に引き離したりあるいは自動車に容易に近寄せたりすることができるという利点が得られる。車輪交換はこの対策によって非常に容易になる。
【0026】
ローラが容易に回転し得るとともに軸方向に容易にスライドし得るように、ローラは好適には直動玉軸受けによって軸支される。
【0027】
総じて上述した発明の利点は、一方で、車輪受けフォークによって自動車をそれぞれ車軸部で安定的に支持し得るとともに車軸ユニットを車軸用ジャッキによって持ち上げて車輪を浮かすことができる点にあり、他方で、車輪の取り付け/取り外しに際して修理工場フロアから車軸ユニットの高さにまで車輪を引き上げまたはその逆に車輪を取り下ろすために車輪受けフォークを使用し得る点にある。
【0028】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】2台のリフト装置を備える自動車リフト装置が降下ポジションにある場合の模式的な側面図
【図2】図1に示した自動車リフト装置を走行方向から見た模式図
【図3】リフト装置がリフト状態にある場合の図1と同じ模式的な側面図
【図4】図3に示した自動車リフト装置を走行方向から見た模式図
【図5】単独のリフト装置の拡大透視図
【図6】別な実施態様を示す図5と同じ拡大透視図
【符号の説明】
【0030】
1 ピット
2 リフト装置(走行タイプ)
3 リフト装置(固定タイプ)
20a,20b 車輪受けフォーク
23 リフトマスト
24 車軸用ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピット(1)内に配設される自動車リフト装置であって、少なくとも2台のリフト装置(2,3)を備え、そのうちの少なくとも1台のリフト装置(2)は自動車のホイールベースに合わせるためにピットの長手方向に走行移動可能であり、そのうちの少なくとも1台のリフト装置(2,3)は自動車の車軸ユニットに取り付けられた車輪を受け入れるために側方に張り出した2対の車輪受けフォーク(20a,20b)を有するものにおいて、
前記側方に張り出した車輪受けフォーク(20a,20b)のためのリフト装置(2,3)は、前記車輪受けフォーク(20a,20b)に受持された車輪の車軸ユニットを、前記車輪受けフォーク(20a,20b)とは別個に垂直方向に昇降させる車軸用ジャッキ(24)と組み合わされていることを特徴とする自動車リフト装置。
【請求項2】
前記車輪受けフォーク(20a,20b)は1本の共通のリフトマスト(23)に設けられ、このリフトマスト(23)は前記車軸用ジャッキ(24)の昇降運動ガイドを形成いることを特徴とする請求項1に記載の自動車リフト装置。
【請求項3】
前記車軸用ジャッキ(24)は前記リフトマスト(23)の内部に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車リフト装置。
【請求項4】
前記車輪受けフォーク(20a,20b)は、車輪を受持する領域にその車輪の車軸ユニットに対してほぼ平行に延びる回転軸を有した少なくとも1つのガイドローラ(31a,32a,31b,32b)を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車リフト装置。
【請求項5】
前記車輪受けフォーク(20a,20b)は、車輪を受持する領域にその車輪の車軸ユニットに対してほぼ平行に延びる少なくとも1つのすべりガイドを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車リフト装置。
【請求項6】
前記すべりガイドは車軸ユニットに対してほぼ平行に延びる回転軸を有した少なくとも1つのローラ(31a,32a,31b,32b)からなり、このローラは軸方向にスライド可能に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の自動車リフト装置。
【請求項7】
少なくとも1つのローラ(31a,32a,31b,32b)はボールベアリングを介して軸支されていることを特徴とする請求項6に記載の自動車リフト装置。
【請求項8】
前記車軸用ジャッキ(24)は側方に配置された2つの車軸ユニット受け(24a,24b)を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の自動車リフト装置。
【請求項9】
前記車軸ユニット受け(24a,24b)は車軸ユニットに対してほぼ平行にスライド可能なように設けられていることを特徴とする請求項8に記載の自動車リフト装置。
【請求項10】
前記リフト装置(2,3)が2台備えられ、各リフト装置が側方に張り出した2対の車輪受けフォーク(20a,20b,30a,30b)を有することを特徴とする請求項1に記載の自動車リフト装置。
【請求項11】
前記複数のリフト装置(2,3)は同期制御装置によって動作制御され、自動車重量を負担している一方のリフト装置(2)の車輪受けフォークまたは車軸用ジャッキは、自動車重量を負担する他方のリフト装置(3)の車輪受けフォークまたは車軸用ジャッキと同時に、同一の昇降速度で、同一の方向にのみ昇降運動することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の自動車リフト装置。
【請求項12】
前記複数のリフト装置(2,3)は同期制御装置によって動作制御され、前記制御装置により、自動車がリフトされている場合に、一方の車軸ユニット側の車輪受けフォークの下降のみが可能とされ、同時に、この車軸ユニットを受持している車軸用ジャッキと他方の車軸ユニット側の車輪受けフォークとは固定が維持されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の自動車リフト装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−119255(P2007−119255A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291046(P2006−291046)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(591126677)オットー・ヌスバウム・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー (2)
【氏名又は名称原語表記】OTTO NUSSBAUM GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG & COMPAGNIE KOMMANDIT GESELLSCHAFT