説明

自動車用の空気案内デバイス

【課題】 自動車用の空気案内デバイスを提供する。
【解決手段】 自動車用の空気案内デバイスであって、自動車の横方向に延びるスポイラリップ(12)と、スポイラリップ(12)用の作動デバイス(28)とを備え、作動デバイス(28)によって、スポイラリップ(12)が、引っ込んだ非動作位置と最大延出位置との間で移動可能であり、ここで、スポイラリップ(12)がアダプタデバイス(34)に取り付けられ、アダプタデバイス(34)が固定デバイス(38)に接続され、アダプタデバイス(34)および固定デバイス(38)を介して空気案内デバイスが自動車のフロントパネル(40)に接続可能である空気案内デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の自動車用の空気案内デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の前段の特徴を備える空気案内デバイスは、(特許文献1)および(特許文献2)により知られている。そこでは、前記空気案内デバイスは、スポイラリップを備え、スポイラリップは、車両の前部で車両の横方向に延び、作動デバイスによって、引っ込んだ非動作位置と最大延出位置との間で移動可能である。これにより、特に自動車の出力値を最適化することを目的とする空気力学的効果が生じる。作動デバイスは、可撓性の膨張可能な管として設計され、この管に空気を満たしたり管から空気を排出したりすることによって、スポイラリップを引っ込んだ非動作位置と最大延出位置との間の様々な位置に動かすことができる。充満操作中に、空気圧アクチュエータのエラストマーが弾性変形され、それにより復元力が生み出され、排気操作中に、この復元力がスポイラリップを非動作位置の方向に再び戻す。
【0003】
(特許文献1)および(特許文献2)によれば、特定の空気案内デバイスのスポイラリップが、その一端で自動車のフロントパネルに直接接続される。例えば損傷により、特定の空気案内デバイスのスポイラリップを交換しなければならない場合、従来技術によるスポイラリップの交換は比較的複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1 935 764 B1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第101 60 748 B4号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のことを出発点として、本発明の目的は、自動車用の新規の空気案内デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、特許請求項1による空気案内デバイスによって実現される。
【0007】
本発明によれば、スポイラリップがアダプタデバイスに取り付けられる。ここで、アダプタデバイスが固定デバイスに接続され、アダプタデバイスおよび固定デバイスを介して空気案内デバイスが自動車のフロントパネルに接続可能である。
【0008】
本発明においては、スポイラリップをフロントパネルに直接固定するのではなく、アダプタデバイスを介して間接的に固定することが提案される。このために、スポイラリップがアダプタデバイスに取り付けられる。ここで、アダプタデバイスが固定デバイスに接続され、アダプタデバイスと固定デバイスの両方が自動車のフロントパネルに接続可能である。
【0009】
以上の構成により、第1に、空気案内デバイスを自動車のフロントパネルに確実に接続することができ、第2に、例えば損傷により、スポイラリップを交換しなければならないときにはいつでも、さほど複雑さを伴わずにスポイラリップを交換することができる。
【0010】
特にアダプタデバイスと、固定デバイスと、作動デバイスと、スポイラリップとを備えるスポイラリップモジュールは、予め完全にモジュールの形態に組み立てて、試験することができる。次いで、このスポイラリップモジュールを、例えば故障しているスポイラリップモジュールの交換品として、自動車のフロントパネルに単純かつ迅速に取り付けることができる。
【0011】
アダプタデバイスは、スポイラリップモジュールひいては空気案内デバイスに、作動デバイスからアダプタデバイスを介してスポイラリップに向かう力の流れに対する理想的な剛性を与える。固定デバイスは、スポイラリップモジュールに、理想的な横方向の剛性を与える。
【0012】
好ましくは、アダプタデバイスとスポイラリップは、第1のクリップ接続手段によって接続される。好ましくは、アダプタデバイスは、第2のクリップ接続手段によって自動車のフロントパネルに接続可能である。ここで、アダプタデバイスおよび固定デバイスは、ねじ接続手段によって自動車のフロントパネルに接続可能である。上記のように、2つのクリップ接続手段と1つのねじ接続手段を使用してスポイラリップを自動車のフロントパネルに間接的に接続する方法は、単純であり、かつ確実である。空気案内デバイスは、単純かつ確実に、予めモジュールの形態に組み立てることができ、モジュールの形態でフロントパネルに固定することができる。
【0013】
有利な一発展形態によれば、アダプタデバイスおよびスポイラリップに磁石が配置されている。この磁石によって、スポイラリップが、引っ込んだ非動作位置でアダプタデバイスに対して保たれる。この磁石によって、スポイラリップを引っ込んだ非動作位置で所定の様式でアダプタデバイスに対して保つことができる。
【0014】
本発明の好ましい発展形態は、従属請求項および以下の説明から明らかになる。本発明の例示的実施形態を、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はそれらの例示的実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による空気案内デバイスを設けた自動車のフロント領域の斜視図である。
【図2】図1の本発明による空気案内デバイスの第1の断面図である。
【図3】図1の本発明による空気案内デバイスの第2の断面図である。
【図4】図1の本発明による空気案内デバイスの第3の断面図である。
【図5】図1の本発明による空気案内デバイスの第4の断面図である。
【図6】図1の本発明による空気案内デバイスの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、自動車のフロント部分2を示す。フロント部分2は、側部ウィング4と、側部ウィング4間に配置されたエンジンフード6ないしトランクカバーと、エンジンフード6およびウィング4の前に取り付けられたフロント部品8とを備える。フロント部品8は、自動車のフロント部分2の前端部を成す。
【0017】
本発明による空気案内デバイス10がここではフロント部品8の下に配置されており、この図では空気案内デバイス10のスポイラリップ12のみを見ることができる。この図では、スポイラリップ12は、引っ込んだ非動作位置にある。スポイラリップ12は、実質的に車両の横方向FQに延び、その自由端14、16で、またはフロント部品8の側部長手方向区域18の下側で終端する。
【0018】
図2〜図5は、本発明による空気案内デバイス10の領域での、図1の自動車のフロント部分2を通る様々な断面を示す。ここで、図2〜図4の断面は、自動車の長手方向に延びており、自動車の横方向FQで見るとそれぞれ互いに平行にずれている。
【0019】
本発明による空気案内デバイス10のスポイラリップ12は、好ましくはエラストマーで製造され、図示した非動作位置から延出位置に動く間に車両の横方向FQで長さが変化する。
【0020】
スポイラリップ12は、その自由端20に隣接する位置にチャネル22を有する。チャネル22は車両の横方向FQに延び、チャネル22内には、可撓性を有する弾性ロッド部材24が挿入される。可撓性を有する弾性ロッド部材24は、移動可能な状態でガイドデバイス26内に案内される。ここで、ガイドデバイス26は、好ましくは、スポイラリップの全長にわたって延びる、長手方向に弾性を有するストリップ(Keder)からなる。
【0021】
可撓性を有する弾性ロッド部材24は、ガイドデバイス26内で最小の静止摩擦力および摺動摩擦力で案内することができるように、好ましくはPTFE、GFRP被覆PTFE、または別のプラスチックで製造される。
【0022】
前記可撓性を有する弾性ロッド部材24の詳細は、例えば(上記特許文献2)から知られている。
【0023】
引っ込んだ非動作位置と延出位置との間でスポイラリップ12を動かすために、空気案内デバイス10は作動デバイス28を有する。作動デバイス28は、好ましくは空気圧作動デバイス28として設計される。
【0024】
このタイプの空気圧作動デバイス28は、少なくとも1つの空気圧アクチュエータ30を有し、空気圧アクチュエータ30に空気を満たしたり、そこから空気を抜いたりすることができる。空気供給モジュール(図示せず)に結合された空気管32を用いて、該または各アクチュエータ30に空気が供給されるか、あるいは該または各アクチュエータ30から空気が除去される。
【0025】
本発明による空気案内デバイス10はアダプタデバイス34を有する。ここで、スポイラリップ12は、自由端20とは反対側の加硫端36によってアダプタデバイス34に取り付けられる。スポイラリップ12の前記加硫端36とアダプタデバイス34は、第1のクリップ接続手段42によって接続される。
【0026】
アダプタデバイス34に加えて、本発明による空気案内デバイス10はさらに固定デバイス38を備える。ここで、第1に、アダプタデバイス34と固定デバイス38が互いに接続され、第2に、アダプタデバイス34および固定デバイス38を介して空気案内デバイス10が自動車のフロント部品8のフロントパネル40に接続可能である。
【0027】
アダプタデバイス34は、ねじ接続手段(図示せず)によって固定デバイス38に接続される。すなわち、アダプタデバイス34の後部区域において、作動デバイス28または作動デバイス28のアクチュエータ30がアダプタデバイス34と固定デバイス38との間に部分的に配置される。図4によれば、アダプタデバイス34と固定デバイス38は、嵌合式の位置合わせ手段52によって互いに位置を合わせられ、中心を合わせられる。
【0028】
さらに、アダプタデバイス34および固定デバイス38は、ねじ接続手段46によってフロントパネル40に接続される。ここで、ねじ接続手段46の領域において、アダプタデバイス34がフロントパネル40と固定デバイス38との間に位置決めされる。このねじ接続手段46も同様に、アダプタデバイス34の後部区域に配置されている。
【0029】
アダプタデバイス34は、さらに第2のクリップ接続手段44によってフロントパネル40に接続される。ここで、アダプタデバイス34とフロントパネル40との間の前記第2のクリップ接続手段44は、スポイラリップ12とアダプタデバイス34との間の第1のクリップ接続手段42と同様に、アダプタデバイス34のフロント区域に配置されている。
【0030】
アダプタデバイス34と、固定デバイス38と、作動デバイス28と、スポイラリップ12とを備えるスポイラリップモジュールは、予め完全にモジュールの形態に組み立てて、試験することができる。次いで、このスポイラリップモジュールを、例えば故障しているスポイラリップモジュールの交換品として、自動車のフロントパネル40に単純かつ迅速に取り付けることができる。
【0031】
アダプタプレートとして具現化されたアダプタデバイス34は、スポイラリップモジュールひいては空気案内デバイス10に、作動デバイス28からアダプタデバイス34を介してスポイラリップ12に向かう力の流れに対する理想的な剛性を与える。固定デバイス38は、スポイラリップモジュールに、理想的な横方向の剛性を与える。
【0032】
図4から、アダプタデバイス34には磁石48が配置され、スポイラリップ12には磁石50が配置されることが把握できる。磁石48、50によって、スポイラリップ12が、図示される引っ込んだ非動作位置でアダプタデバイス34に対して保たれる。ここで、このタイプの複数の磁石48、50は、車両の横方向FQで見ると、スポイラリップ12がその引っ込んだ非動作位置で、空気案内デバイス10の広がり全体にわたってアダプタデバイス34に対して所定の通りに当接することを確実にするように設けられる。
【符号の説明】
【0033】
2 フロント部分
4 ウィング
6 エンジンフード
8 フロント部品
10 空気案内デバイス
12 スポイラリップ
14 自由端
16 自由端
18 長手方向区域
20 自由端
22 チャネル
24 ロッド部材
26 案内デバイス
28 作動デバイス
30 アクチュエータ
32 空気管
34 アダプタデバイス
36 端部
38 固定デバイス
40 フロントパネル
42 クリップ接続手段
44 クリップ接続手段
46 ねじ接続手段
48 磁石
50 磁石
52 位置合わせ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の空気案内デバイスであって、前記自動車の横方向(FQ)に延びるスポイラリップ(12)と、前記スポイラリップ(12)用の作動デバイス(28)とを備え、前記作動デバイス(28)によって、前記スポイラリップ(12)が、引っ込んだ非動作位置と最大延出位置との間で移動可能であり、前記スポイラリップ(12)がアダプタデバイス(34)に取り付けられ、前記アダプタデバイス(34)が固定デバイス(38)に接続され、前記アダプタデバイス(34)および前記固定デバイス(38)を介して前記自動車のフロントパネル(40)に接続可能である空気案内デバイス。
【請求項2】
前記アダプタデバイス(34)と前記スポイラリップ(12)とが、クリップ接続手段(42)によって接続される請求項1に記載の空気案内デバイス。
【請求項3】
前記アダプタデバイス(34)と前記スポイラリップ(12)との間の前記クリップ接続手段(42)が、前記アダプタデバイス(34)のフロント区域に配置されている請求項2に記載の空気案内デバイス。
【請求項4】
前記アダプタデバイス(34)が、クリップ接続手段(44)によって前記自動車の前記フロントパネル(40)に接続可能である請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気案内デバイス。
【請求項5】
前記アダプタデバイス(34)と前記フロントパネル(40)との間の前記クリップ接続手段(44)が、前記アダプタデバイス(34)のフロント区域に配置されている請求項4に記載の空気案内デバイス。
【請求項6】
前記アダプタデバイス(34)と前記固定デバイス(38)とが、部分的に前記作動デバイス(28)を間に挟んで接続される請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気案内デバイス。
【請求項7】
前記アダプタデバイス(34)と前記固定デバイス(38)とが、位置合わせ手段(52)によって中心を合わせられる請求項1〜6のいずれか一項に記載の空気案内デバイス。
【請求項8】
前記アダプタデバイス(34)および前記固定デバイス(38)が、ねじ接続手段(46)によって前記自動車の前記フロントパネル(40)に接続可能である請求項1〜7のいずれか一項に記載の空気案内デバイス。
【請求項9】
前記ねじ接続手段(46)が、前記アダプタデバイス(34)の後部区域に配置されている請求項8に記載の空気案内デバイス。
【請求項10】
前記アダプタデバイス(34)および前記スポイラリップ(12)に磁石(48、50)が配置され、前記磁石(48、50)によって、前記スポイラリップ(12)が、前記引っ込んだ非動作位置で前記アダプタデバイス(34)に保持される請求項1〜9のいずれか一項に記載の空気案内デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−56660(P2013−56660A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−190094(P2012−190094)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【出願人】(512226158)アポロ フェレデステイン ベースローテン フェンノートシャップ (1)
【氏名又は名称原語表記】Apollo Vredestein B.V.
【住所又は居所原語表記】Ir.E.L.C. Schiffstraat 370, 7547 RD Enschede, Netherlands