説明

自動車用サッシュドア

【課題】自動車用ドアのサッシュドアを安価軽量にできる技術の提供を課題とする。
【解決手段】サッシュ本体は複数の板状の枠構成材24,25,26,27を互いに接合してなる枠部材で、複数の枠構成材はドアインナパネルに取付けられる下枠材24とこの下枠材の上に位置する上枠材25とこれら下枠材24の前端部24bと上枠材25の前端部25bを連結する前枠材27と下枠材24の後端部24aと上枠材25の後端部25aを連結する後枠材26からなり、前枠材27は後方へ下部後端部27a、上部後端部27bを延ばした側面視コ字状部材で、該前枠材27の下部後端部に下枠材24の前端部を接合し、該前枠材27の上部後端部に上枠材25の前端部を接合し、後枠材26は前方へ下部前端部26a、上部前端部26bを延ばした側面視コ字状部材で、該後枠材26の下部前端部に下部材24の後端部を接合し該後枠材26の上部前端部に上枠部材25の後端部を接合し形成した自動車用サッシュドア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用サッシュドアに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用サッシュドアは、ドアインナパネルの上部にサッシュ本体を設けるとともに、このサッシュ本体の車外側にアウタサッシュを設けたものである。サッシュ本体とは、ドアガラスを昇降可能に取付けた窓枠(sash)のことである。以下、従来の自動車用サッシュドアを図17に基づき説明する。
【0003】
図17(a)〜(c)は従来の自動車用サッシュドアの説明図であり、(a)は第1従来例、(b)は第2従来例、(c)は第3従来例を各々示す。
(a)に示す第1従来例のサッシュドア100は、プレス成形されたドアインナパネル101の上部に、ロール成形された側面視略コ字状のサッシュ本体102を接合するとともに、ドアインナパネル101の車外側に、プレス成形されたドアアウタパネル103を接合した、ロールサッシュ付きドアである。サッシュ本体102の接合部分の剛性を確保するために、枠補強材104,105を設ける。
【0004】
(b)に示す第2従来例のサッシュドア110は、プレス成形されたドアインナパネル111の上部に、プレス成形された枠状のサッシュ本体112を接合するとともに、ドアインナパネル111の車外側に、プレス成形されたドアアウタパネル113を接合した、プレスサッシュ付きドアである。プレス成形された枠状サッシュ本体112であるから、上記(a)のロール成形されたコ字状サッシュ本体102よりも剛性が大きい。114はガラスラン用ホルダ、115はウエザストリップ用ホルダである。
【0005】
(c)に示す第3従来例のサッシュドア120は、ドアインナパネル121にサッシュ部分122を一体にプレス成形するとともに、ドアインナパネル121の車外側に、プレス成形されたドアアウタパネル123を接合した、フルドアである。124はガラスラン用ホルダ、125はウエザストリップ用ホルダである。
【0006】
しかしながら、上記図17(a)に示す第1従来例のサッシュドア100は、ロール成形されたサッシュ本体102の接合部分の剛性を確保するために、接合部分を枠補強材104,105で補強する必要がある。このため、部品数が増すのでサッシュドア100が高価格になる。
【0007】
一方、上記図17(b)に示す第2従来例のサッシュドア110は、大きな平板素材をプレス成形することで、枠状のサッシュ本体112に加工したものである。大きな平板素材を枠状にするのであるから、平板素材の多くの部分が使われずに残る。これでは、歩留りが悪いので材料費が増す。
さらには、枠状のサッシュ本体112は上・下・前・後の部分毎に必要な剛性が異なる。大きな平板素材を枠状にするので、サッシュ本体112全体の板厚を、最も高剛性にする部分の板厚に合せることになる。これでは、材料費が増すとともにサッシュ本体112の重量が増す。
【0008】
このようなことから、サッシュドア110が高価格になるとともに大重量になる。上記図17(c)に示す第3従来例のサッシュドア120も、第2従来例のサッシュドア110と同様である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、サッシュドアを安価で軽量にできる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、ドアインナパネルの上部にサッシュ本体を接合した自動車用サッシュドアにおいて、前記サッシュ本体は複数の板状の枠構成材を互いに接合してなる枠部材であり、前記複数の枠構成材は、前記ドアインナパネルに取付けられる下枠材と、この下枠材の上に位置する上枠材と、これら下枠材の前端部と上枠材の前端部とを連結する前枠材と、下枠材の後端部と上枠材の後端部とを連結する後枠材とからなり、前記前枠材は、後方へ下部後端部並びに上部後端部を延ばした側面視コ字状部材であって、該前枠材の下部後端部に下枠材の前端部を接合するとともに、該前枠材の上部後端部に上枠材の前端部を接合し、前記後枠材は、前方へ下部前端部並びに上部前端部を延ばした側面視コ字状部材であって、該後枠材の下部前端部に下部材の後端部を接合するとともに、該後枠材の上部前端部に上枠部材の後端部を接合して形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記前枠材及び後枠材の板厚は、前記上枠材及び下枠材よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記サッシュ本体は自動車用のフロントドア用サッシュ本体及びリアドア用サッシュ本体であり、前記下枠材と前記上枠材との間隔が、車体前側になるにつれて小さくなるように構成されるフロントドア用サッシュ本体の前枠材の板厚は後枠材の板厚よりも大きく、前記下枠材と前記上枠材との間隔が、車両後側になるにつれて小さくなるように構成されるリアドア用サッシュ本体の後枠材の板厚は前枠材の板厚よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、前枠材は、後方へ下部後端部並びに上部後端部を延ばした側面視コ字状部材であって、該前枠材の下部後端部に下枠材の前端部を接合するとともに、該前枠材の上部後端部に上枠材の前端部を接合し、後枠材は、前方へ下部前端部並びに上部前端部を延ばした側面視コ字状部材であって、該後枠材の下部前端部に下部材の後端部を接合するとともに、該後枠材の上部前端部に上枠部材の後端部を接合して形成したので、
サッシュ本体は、複数の板状の枠構成材を接合することで構成した枠部材であるから、各枠構成材の大きさ並びに板厚を自由に設定して組合せることができる。このため、それぞれ必要な大きさの枠構成材を組合せることによって、材料のほとんどの部分を使用することができる。従って極めて歩留りが良い。
また、本発明では、前枠材は、後方へ下部後端部並びに上部後端部を延ばした側面視コ字状部材であって、下部後端部に下枠材の前端部を接合線にて接合するとともに、上部後端部に上枠材の後端部を接合線にて接合することができる。また、後枠材は、前方へ下部前端部並びに上部前端部を延ばした側面視コ字状部材であって、下部前端部に下枠材の後端部を接合線にて接合するとともに、上部前端部に上枠材の後端部を接合線にて接合することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、前枠材及び後枠材の板厚は、上枠材及び下枠材よりも大きくした。ドアインナパネルに取付けられる下枠材や、ドアを閉じたときに車体のルーフ側に接する上枠材に比べて、これらの下・上枠材間を連結する前・後枠材は、大きい剛性が必要である。本発明では、比較的低剛性でもよい下・上枠材の板厚よりも、高剛性であることが求められる前・後枠材の板厚を大きく設定することで、前・後枠材に必要な剛性を十分に確保することができる。しかも、下・上枠材の板厚を抑制することができるので、サッシュ本体を軽量化することができる。このようにして、各枠構成材の剛性を合理的にバランス良く設定することができるとともに、サッシュ本体を軽量にすることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、下枠材と上枠材との間隔が、車体前側になるにつれて小さくなるように構成されるフロントドア用サッシュ本体の前枠材の板厚は後枠材の板厚よりも大きく、下枠材と前記上枠材との間隔が、車両後側になるにつれて小さくなるように構成されるリアドア用サッシュ本体の後枠材の板厚は前枠材の板厚よりも大きくしたので、フロントドア用サッシュ本体、リアドア側サッシュ本体のように、下枠材と上枠材との間隔が車両前側、或いは後側になるにつれて小さくなる場合には、前枠材或いは後側の形状の設計の自由度は他の枠部材に比べて低い。このことは、特にプレス成形することでサッシュ本体を構成する場合に、より顕著である。従って、特にプレス成形後に、前枠材を所望の剛性が得られる断面形状にすることは容易でないが、フロントドア用サッシュ本体では前枠材の板厚を大きくし、リアドア用サッシュ本体では後枠材の板厚を大きくしたので、フロントドア用サッシュ本体の前枠材、或いはリアドア用サッシュ本体の後部材に必要な剛性を十分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側、CLは車幅中央(車体中心)を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0017】
図1は本発明に係る自動車用の右側面図であり、この自動車10は、車体11に左右のフロント側サッシュドア20L,20R及び左右のリア側サッシュドア50L,50Rを備える4ドア型式の車両である。なお、左右のフロント側サッシュドア20L,20Rは互いに左右対称形状である他には、同一構造である。左右のリア側サッシュドア50L,50Rも互いに左右対称形状である他には、同一構造である。図中、12はルーフ、13,14はドアガラス、15はドアミラーである。
【0018】
図2は本発明に係る右のフロント側サッシュドアの分解図であり、この右のフロント側サッシュドア20Rは、ドアインナパネル21の車外側にドアアウタパネル22を接合して設け、ドアインナパネル21の上部にサッシュ本体23を接合して設け、サッシュ本体23の車外側にアウタサッシュ41を設け、アウタサッシュ41の車外側にガラスラン42やモール43を設けたドア部材である。
ドアインナパネル21並びにドアアウタパネル22はプレス成形品である。サッシュ本体23は、上記図1のドアガラス13を昇降可能に取付ける窓枠(sash)である。図中、44はアウタフロントパネル、45はアウタピラーパネルである。
【0019】
図3は本発明に係る右のフロント側サッシュドア用サッシュ本体の左側面図であり、右のフロント側サッシュ本体23を車内側から見た構成を示す。
右のフロント側サッシュ本体23は、ドアインナパネル21(図2参照)に取付けられる水平な下枠材24と、この下枠材24の上に位置する上枠材25と、これら下枠材24の後端部24aと上枠材25の後端部25aとを連結する後枠材26と、下枠材24の前端部24bと上枠材25の前端部25bとを連結する前枠材27と、からなる枠部材である。
【0020】
下枠材24は、前後に延びる水平な細長い部材である。上枠材25は、後から前にかけて下がるように湾曲した細長い部材である。後枠材26は、上下に延びる細長い部材である。前枠材27は、後枠材26よりも短い部材である。
これらの下・上・後・前枠材24〜27は、板状の枠構成材である。詳しくは後述するが、枠構成材とは、枠部材(右のフロント側サッシュ本体23)を成す各部材であって、下・上・後・前枠材24,25,26,27を含んでいる。
【0021】
以上の説明のように、右のフロント側サッシュ本体23は、複数の板状の枠構成材(すなわち、下・上・後・前枠材24〜27)を互いに接合し、下枠材24と上枠材25との間隔が車両前側になるにつれて小さくなるようにした枠部材であって、さらに、複数の枠構成材を互いに接合した後にプレス成形した一体成形品である。
【0022】
ここで、下枠材24の板厚をt1とし、上枠材25の板厚をt2とし、後枠材26の板厚をt3とし、前枠材27の板厚をt4としたとき、各板厚をt1<t2<t3<t4の関係になるように設定した。
【0023】
以上の説明をまとめると、サッシュ本体23を、複数の板状の枠構成材(すなわち、下・上・後・前枠材24,25,26,27)を互いに接合してなる枠部材で構成し、複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚を他の枠構成材の板厚と異ならせたので、各枠構成材の大きさ並びに板厚を自由に設定して組合せることができる。
【0024】
このため、それぞれ必要な大きさ並びに板厚の複数の枠構成材を組合せることによって、材料のほとんどの部分を使用することができる。従って極めて歩留りが良い。しかも、複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚が他の枠構成材の板厚と異なるようにしたので、余分な板厚の部分が無い。従って、サッシュ本体23を軽量にすることができるとともにサッシュ本体23の材料費を低減することができる。
さらには、従来のロール成形されたサッシュ本体のように、サッシュ本体の剛性を確保するための枠補強材が不要である。このため、部品数を低減することができる。
【0025】
このようにして、右のフロント側サッシュドア20R(図2参照)を軽量で安価にすることができる。しかも、基盤となるサッシュ本体23を枠状に一体に構成するので、サッシュ本体23にシール材等の各種部品を組付ける際の作業性を高めることができる。
【0026】
さらにまた、サッシュ本体23を、複数の枠構成材を互いに接合した後にプレス成形された一体成形品としたので、従来のように、大きな平板素材をプレス成形することでサッシュ本体23を得る場合に比べて、極めて歩留りが良い。このため、サッシュ本体23をより安価にすることができる。
【0027】
さらに、複数の枠構成材に下枠材24、上枠材25、後枠材26及び前枠材27を含んでいるので、これら下・上・後・前枠材24〜27として必要な大きさ並びに板厚の枠構成材を互いに接合することで、枠部材を構成することができる。
そして下枠材24、上枠材25、後枠材26又は前枠材27として必要な剛性を、個別に十分に確保することができる。余分な板厚の部分が無くなるとともに、部分的に補強材を設ける必要もない。しかも、サッシュ本体23の部分的な剛性を高めるために、サッシュ本体23全体を大型で複雑な構成にする必要がない。
【0028】
一般に、フロント側サッシュドア20Rにおけるサッシュ本体23のように、下枠材24と上枠材25との間隔が車両前側になるにつれて小さくなる場合には、前枠材27の形状の設計の自由度は他の枠部材24〜26に比べて低い。このことは、特にプレス成形することでサッシュ本体23を構成する場合に、より顕著である。従って、特にプレス成形後に、前枠材27を所望の剛性が得られる断面形状にすることは容易でない。
これに対して本発明は、前枠材27の板厚t4を他の枠材24〜26の板厚t1,t2,t3よりも大きくしたので、前枠材27に必要な剛性を十分に確保することができる。
【0029】
さらにまた、一般に、ドアインナパネル21(図2参照)に取付けられる下枠材24や、フロント側サッシュドア20Rを閉じたときに車体のルーフ12(図1参照)側に接する上枠材25に比べて、これらの下・上枠材24,25間を連結する前・後枠材26,27は、大きい剛性が必要である。
これに対して本発明は、比較的低剛性でもよい下・上枠材24,25の板厚t1,t2よりも、高剛性であることが求められる前・後枠材26,27の板厚t3,t4を大きく設定することで、前・後枠材26,27に必要な剛性を十分に確保することができる。
しかも、下・上枠材24,25の板厚t1,t2を抑制することができるので、サッシュ本体23を軽量化することができる。このようにして、各枠構成材の剛性を合理的にバランス良く設定することができるとともに、サッシュ本体23を軽量にすることができる。
【0030】
下枠材24はドアインナパネル21に取付けられるので、上枠材25、後枠材26並びに前枠材27よりも剛性が小さくてすむ。低剛性でよい下枠材24の板厚t1を上・後・前枠材25〜27の板厚t2,t3,t4よりも小さくすることで、各枠材24〜27の剛性を合理的にバランス良く設定することができるとともに、サッシュ本体23をより軽量にすることができる。
【0031】
図4は本発明に係る右のフロント側サッシュドア用サッシュ本体の後部右側面図であり、右のフロント側サッシュ本体23の後部を車外側から見た構成を示す。
後枠材26は、前方へ下部前端部26a並びに上部前端部26bを延ばした側面視コ字状部材であって、下部前端部26aに下枠材24の後端部24aを接合線W1にて接合するとともに、上部前端部26bに上枠材25の前端部25aを接合線W2にて接合することができる。
【0032】
図5は本発明に係る右のフロント側サッシュドア用サッシュ本体の前部右側面図であり、右のフロント側サッシュ本体23の前部を車外側から見た構成を示す。
前枠材27は、後方へ下部後端部27a並びに上部後端部27bを延ばした側面視コ字状部材であって、下部後端部27aに下枠材24の前端部24bを接合線W3にて接合するとともに、上部後端部27bに上枠材25の後端部25bを接合線W4にて接合することができる。
【0033】
図6は図3の6−6線断面図であり、上枠材25の縦断面構造を示す。上枠材25は、車外側に開放した略U字状断面体であり、上枠材25の上端の縁から車外側へ延長部25cを延ばし、この延長部25cの先端に第1フランジ25dを形成し、さらに上枠材25の下端の縁に第2フランジ25eを形成したものである。上枠材25の車外側に、想像線にて示すアウタサッシュ41を設けることができる。
【0034】
図7は図3の7−7線断面図であり、後枠材26の平面断面構造を示す。後枠材26は、車外側に開放する略U字状断面体であり、車体のセンタピラー側(図右側)へ延びる平坦な延長部26cと、前後方向両端に2つのフランジ(上の第1フランジ26dと下の第2フランジ26e)を一体に形成した部材である。後枠材26の車外側に、想像線にて示すアウタピラーパネル45を設けることができる。アウタピラーパネル45は、ガラスラン42(図2参照)を取付けるためのホルダ部45aを有する。
【0035】
図8は図3の8−8線断面図であり、後枠材26において下端から前方へ延びた、下部前部26aの縦断面構造を示す。後枠材26の下部前部26aは、左右に比較的平坦な部分であって、車内側に想像線にて示すドアインナパネル21の上部を接合することができる。
【0036】
図9は図3の9−9線断面図であり、下枠材24の縦断面構造を示す。下枠材24は、左右に比較的平坦な部分であって、上端にフランジ24cを形成し、フランジ24cの車内側に想像線にて示すドアインナパネル21の上部を接合することができる。
【0037】
図10は図3の10−10線断面図であり、前枠材27の下部の縦断面構造を示す。前枠材27の下部に、左右に比較的平坦な延長部27cを設け、この延長部27cの車内側に、想像線にて示すドアインナパネル21の上部を接合することができる。
【0038】
図11は図3の11−11線断面図であり、前枠材27の上部の縦断面構造を示す。前枠材27の上部は、車外側に開放する略U字状断面体であり、下方へ延びる平坦な延長部27cと上端のフランジ27dを一体に形成した部材である。前枠材27の車外側に、想像線にて示すアウタサッシュ41を設けることができる。
【0039】
次に、上記構成の右のフロント側サッシュドア20Rの製造方法について、図2、図12並びに図13に基づき説明する。
図12(a)〜(c)は本発明に係る右のフロント側サッシュドアの製造方法説明図(その1)である。(a)は複数の枠構成材の配列を示し、(b)は(a)のb−b線断面を示し、(c)は(a)のc−c線断面を示す。
先ず、(a)に示すように互いに異なる平板から複数の枠構成材31〜34を型取りする(第1工程)。下の枠構成材31はサッシュ本体の下枠材に相当する板材であり、上の枠構成材32はサッシュ本体の上枠材に相当する板材であり、後の枠構成材33はサッシュ本体の後枠材に相当する板材であり、前の枠構成材34はサッシュ本体の前枠材に相当する板材である。すなわち、これらの枠構成材31〜34は、上記図3に示すサッシュ本体23の下・上・後・前枠材24〜27を製造するのに必要な形状に切断された部材である。
【0040】
(b)及び(c)に示すように、下の枠構成材31の板厚はt1であり、上の枠構成材32の板厚はt2であり、後の枠構成材33の板厚はt3であり、前の枠構成材34の板厚はt4である。各板厚の関係はt1<t2<t3<t4である。例えば、下の枠構成材31の板厚t1を0.6mm、上の枠構成材32の板厚t2を0.7mm、後の枠構成材33の板厚t3を0.9mm、前の枠構成材34の板厚t4を1.4mmとする。
【0041】
図13(a)〜(d)は本発明に係る右のフロント側サッシュドアの製造方法説明図(その2)である。
(a)において、板材からなる複数の枠構成材31〜34を並べて準備する(第2工程)。
次に(b)において、各枠構成材31〜34を溶接線W1〜W4で互いに接合して、枠部材35を成形する(第3工程)。このような平板素材からなる枠部材35は、板厚の異なるシート(枠構成材31〜34)同士を予め接合したところの集合ブランク材である。複数の枠構成材31〜34同士の接合は、YAGレーザ溶接法で実施する。
【0042】
ここで、「YAGレーザ溶接法」とは、YAGレーザ光線を利用した周知の溶接法であって、精密な溶接ができる。「YAG」とは、イットリウム・アルミニウム・ガーネットの略称であり、光学特性に優れている。
【0043】
次に(c)において、上記枠部材35をプレス成形してサッシュ本体23を得る(第4工程)。
【0044】
次に上記図2において、サッシュ本体23にアウタサッシュ41、アウタフロントパネル44、アウタピラーパネル45を接合する(第5工程)。
さらに、ドアインナパネル21の上部にサッシュ本体23を接合するとともに、ドアインナパネル21の車外側にドアアウタパネル22を接合する(第6工程)。
次に、サッシュ本体23並びにアウタサッシュ41にモール43を取付けるとともに、ガラスラン42やウエザストリップ(図示せず)等の弾性部材を取付け、ドアガラス13やドア附属品を取付けて、右のフロント側サッシュドア20Rを完成させる(第7工程)。
【0045】
本発明は、このように右のフロント側サッシュドア20Rの製造工程に、板材からなる複数の枠構成材31〜34を互いに接合して枠部材35を成形する工程と、この枠部材35をプレス成形してサッシュ本体23を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0046】
それぞれ必要な大きさ並びに板厚の複数の枠構成材31〜34を準備し、これらの枠構成材31〜34を互いに接合することで、任意の形状且つ大きさの枠部材35を容易に成形することができる。その後に、この枠部材35をプレス成形することでサッシュ本体23を容易に製造することができる。
【0047】
枠部材35は、板厚の異なる平板素材同士を接合したところの集合ブランク材である。この集合ブランク材をプレス成形することでサッシュ本体23を製造するのであるから、材料のほとんどの部分を使用することになる。このため、極めて歩留りが良いので、材料費を低減することができる。
さらには、板厚の異なる平板素材同士を接合して、枠部材35を得るのに必要な大きさの集合ブランク材を製造するようにしたので、余分な板厚の部分が無い。
【0048】
このようにして、軽量な右のフロント側サッシュドア20Rを安価に且つ容易に製造することができる。
さらにまた、従来のロール成形されたサッシュ本体のように、サッシュ本体23の剛性を確保するための枠補強材が不要である。そして、枠補強材を成形する成形用型も不要である。
【0049】
また、複数の枠構成材31〜34同士の接合を、精密な溶接ができるYAGレーザ溶接法で実施するようにしたので、プレス成形前の枠部材35をより精度良く製造することができる。
【0050】
次に、上記図1に示す右のリア側サッシュドア50Rの構成について説明する。右のリア側サッシュドア50Rは、右のフロント側サッシュドア20Rと同様の構成であって、ドアインナパネルの車外側にドアアウタパネルを接合して設け、ドアインナパネルの上部にサッシュ本体を接合して設け、サッシュ本体の車外側にアウタサッシュを設け、アウタサッシュの車外側にガラスランやモールを設けたドア部材である。サッシュ本体は、ドアガラス13を昇降可能に取付ける窓枠である。以下に、右のリア側サッシュ本体について説明する。
【0051】
図14は本発明に係る右のリア側サッシュドア用サッシュ本体の左側面図であり、右のリア側サッシュ本体53を車内側から見た構成を示す。
右のリア側サッシュ本体53は、ドアインナパネルに取付けられる水平な下枠材54と、この下枠材54の上に位置する上枠材55と、これら下枠材54の後端部54aと上枠材55の後端部55aとを連結する後枠材56と、下枠材54の前端部54bと上枠材55の前端部55bとを連結する前枠材57と、からなる枠部材である。
【0052】
下枠材54は、前後に延びる水平な細長い部材である。上枠材55は、前から後にかけて下がるように湾曲した細長い部材である。後枠材56は、短い部材である。前枠材57は、後枠材56よりも細長い上下に延びる部材である。これらの下・上・後・前枠材54〜57は、板状の枠構成材である。枠構成材とは、枠部材(右のフロント側サッシュ本体53)を成す各部材であって、下・上・後・前枠材54,55,56,57を含んでいる。
【0053】
以上の説明のように、右のフロント側サッシュ本体53は、複数の板状の枠構成材(すなわち、下・上・後・前枠材54〜57)を互いに接合することで、下枠材54と上枠材55との間隔を、車両後側になるにつれて小さくなるようにした枠部材であって、複数の枠構成材を互いに接合した後にプレス成形された一体成形品である。
【0054】
下枠材54の板厚をt11とし、上枠材55の板厚をt12とし、後枠材56の板厚をt13とし、前枠材57の板厚をt14としたとき、各板厚をt11<t12<t14<t13の関係に設定した。
すなわち、後枠材56の板厚t13を、下枠材54の板厚t11、上枠材55の板厚t12並びに前枠材57の板厚t14よりも大きくした。
さらには、下枠材54の板厚t11並びに上枠材55の板厚t12よりも、後枠材56の板厚t13並びに前枠材57の板厚t14を大きくした。
さらにまた、低剛性でよい下枠材54の板厚t11を上・後・前枠材55〜57の板厚t12,t13,t14よりも小さくした。
【0055】
下枠材54の縦断面構造は、上記図9に示す下枠材24の縦断面構造と概ね同一であり、車内側にドアインナパネル21(図9参照)の上部を接合することができる。上枠材55の縦断面構造は、上記図6に示す上枠材25の縦断面構造と同一であり、車外側にアウタサッシュを設けることができる。後枠材56の縦断面構造は、上記図10に示す前枠材27と概ね同一である。前枠材57の縦断面構造は、上記図7に示す後枠材26と概ね同一である。
【0056】
後枠材56は、下部前端部56a並びに上部前端部56bを前方へ延ばした側面視コ字状部材であって、下部前端部56aに下枠材54の後端部54aを接合線W11で接合するとともに、上部前端部56bに上枠材55の後端部55aを接合線W12で接合することができる。
【0057】
前枠材57は、下部前端部57a並びに上部前端部57bを前方へ延ばした側面視コ字状部材であって、下部前端部57aに下枠材54の前端部54bを接合線W13で接合するとともに、上部前端部57bに上枠材55の前端部55bを接合線W14で接合することができる。
【0058】
このような右のリア側サッシュドア50Rの構成であるから、上記図3に示す右のフロント側サッシュドア20Rと同様の作用、効果を有する。
さらには、一般に、リア側サッシュドア50Rにおけるサッシュ本体53のように、下枠材54と上枠材55との間隔が車両後側になるにつれて小さくなる場合には、後枠材56の形状の設計の自由度は他の枠材54,55,57に比べて低い。このことは、特にプレス成形することでサッシュ本体53を構成する場合に、より顕著である。従って、特にプレス成形後に、後枠材56を所望の剛性が得られる断面形状にすることは容易でない。
これに対して本発明は、後枠材56の板厚t13を他の枠材54,55,57の各板厚t11,t12,t14よりも大きくしたので、後枠材56に必要な剛性を十分に確保することができる。
【0059】
次に、上記構成の右のリア側サッシュドア50Rの製造方法について、図15並びに図16に基づき説明する。
図15(a)〜(c)は本発明に係る右のリア側サッシュドアの製造方法説明図(その1)である。(a)は複数の枠構成材の配列を示し、(b)は(a)のb−b線断面を示し、(c)は(a)のc−c線断面を示す。
先ず、(a)に示すように互いに異なる平板から複数の枠構成材61〜64を型取りする(第1工程)。下の枠構成材61はサッシュ本体の下枠材に相当する板材であり、上の枠構成材62はサッシュ本体の上枠材に相当する板材であり、後の枠構成材63はサッシュ本体の後枠材に相当する板材であり、前の枠構成材64はサッシュ本体の前枠材に相当する板材である。すなわち、これらの枠構成材61〜64は、上記図14に示すサッシュ本体53の下・上・後・前枠材54〜57を製造するのに必要な形状に切断された部材である。
【0060】
(b)及び(c)に示すように、下の枠構成材61の板厚はt11であり、上の枠構成材62の板厚はt12であり、後の枠構成材63の板厚はt13であり、前の枠構成材64の板厚はt14である。各板厚の関係はt11<t12<t14<t13である。例えば、下の枠構成材61の板厚t11を0.6mm、上の枠構成材62の板厚t12を0.7mm、後の枠構成材63の板厚t13を1.4mm、前の枠構成材64の板厚t14を0.9mmとする。
【0061】
図16(a)〜(d)は本発明に係る右のリア側サッシュドアの製造方法説明図(その2)である。
(a)において、板材からなる複数の枠構成材61〜64を並べて準備する(第2工程)。
次に(b)において、各枠構成材61〜64を溶接線W11〜W14で互いに接合して、枠部材65を成形する(第3工程)。このような平板素材からなる枠部材65は、板厚の異なる平板素材(枠構成材61〜64)同士を突き合せて予め接合したところの集合ブランク材である。複数の枠構成材61〜64同士の接合は、YAGレーザ溶接法で実施する。
【0062】
次に(c)において、上記枠部材65をプレス成形してサッシュ本体53を得る(第4工程)。
【0063】
次に、上記図2に示す右のフロント側サッシュドア20Rと同様に、サッシュ本体53にアウタサッシュ、アウタフロントパネル、アウタピラーパネルを接合し(第5工程)、さらに、ドアインナパネルの上部にサッシュ本体53を接合するとともに、ドアインナパネルの車外側にドアアウタパネルを接合し(第6工程)、次に、サッシュ本体53並びにアウタサッシュにモールを取付けるとともに、ガラスランやウエザストリップ(図示せず)等の弾性部材を取付け、ドアガラス13やドア附属品を取付けて、右のリア側サッシュドア50Rを完成させる(第7工程)。
【0064】
本発明は、このように右のリア側サッシュドア50Rの製造工程に、板材からなる複数の枠構成材61〜64を互いに接合して枠部材65を成形する工程と、この枠部材65をプレス成形してサッシュ本体53を得る工程と、を有することを特徴とする。従って、上記右のフロント側サッシュドア20Rを製造する場合と同様の作用、効果を有する。
【0065】
なお、上記本発明の実施の形態において、左のフロント側サッシュドア20Lも右のフロント側サッシュドア20Rと同様の構成、製造方法であり、同じ作用、効果を有する。また、左のリア側サッシュドア50Lも右のリア側サッシュドア50Rと同様の構成、製造方法であり、同じ作用、効果を有する。
【0066】
ところで、本発明において、ドアインナパネルの上部にサッシュ本体を接合した自動車用サッシュドアにおいて、サッシュ本体は、複数の板状の枠構成材を互いに接合してなる枠部材であり、該複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚が他の枠構成材の板厚と異なるものであり、複数の枠構成材は、ドアインナパネルに取付けられる下枠材と、この下枠材の上に位置する上枠材と、これら下枠材の前端部と上枠材の前端部とを連結する前枠材と、下枠材の後端部と上枠材の後端部とを連結する後枠材とを含み、下枠材と前記上枠材との間隔を、車両後側になるにつれて小さくなるように構成し、後枠材の板厚を前記下枠材、上枠材並びに前枠材の各板厚よりも大きくした。
これにより、ドアインナパネルのサッシュ本体を、複数の板状の枠構成材を互いに接合してなる枠部材で構成し、複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚を他の枠構成材の板厚と異ならせたので、各枠構成材の大きさ並びに板厚を自由に設定して組合せることができる。
このため、それぞれ必要な大きさ並びに板厚の複数の枠構成材を組合せることによって、材料のほとんどの部分を使用することができる。従って極めて歩留りが良い。しかも、複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚が他の枠構成材の板厚と異なるようにしたので、余分な板厚の部分が無い。従って、サッシュ本体を軽量にすることができるとともにサッシュ本体の材料費を低減することができる。
さらには、従来のロール成形されたサッシュ本体のように、サッシュ本体の剛性を確保するための枠補強材が不要である。このため、部品数を低減することができる。
このようにして、サッシュドアを軽量で安価にすることができる。しかも、基盤となるサッシュ本体を枠状に一体に構成するので、サッシュ本体にシール材等の各種部品を組付ける際の作業性を高めることができる。
また、上・下・前・後枠材として個々に必要な大きさ並びに板厚の枠構成材を互いに接合することで、枠部材を構成することができる。
そして上枠材、下枠材、前枠材又は後枠材として必要な剛性を、個別に十分に確保することができる。余分な板厚の部分が無くなるとともに、部分的に補強材を設ける必要もない。しかも、サッシュ本体の部分的な剛性を高めるために、サッシュ本体全体を大型で複雑な構成にする必要がない。
さらに、例えば、リア側サッシュドアにおけるサッシュ本体のように、下枠材と上枠材との間隔が車両後側になるにつれて小さくなる場合には、後枠材の形状の設計の自由度は他の枠部材に比べて低い。このことは、特にプレス成形することでサッシュ本体を構成する場合に、より顕著である。従って、特にプレス成形後に、後枠材を所望の剛性が得られる断面形状にすることは容易でない。
これに対して本発明では、後枠材の板厚を他の枠材の板厚よりも大きくしたので、後枠材に必要な剛性を十分に確保することができる。
【0067】
また、本発明において、ドアインナパネルの上部にサッシュ本体を接合した自動車用サッシュドアにおいて、サッシュ本体は、複数の板状の枠構成材を互いに接合してなる枠部材であり、該複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚が他の枠構成材の板厚と異なるものであり、複数の枠構成材は、ドアインナパネルに取付けられる下枠材と、この下枠材の上に位置する上枠材と、これら下枠材の前端部と上枠材の前端部とを連結する前枠材と、下枠材の後端部と上枠材の後端部とを連結する後枠材とを含み、前枠材の板厚並びに後枠材の板厚を、下枠材の板厚並びに前記上枠材の板厚よりも大きくする。
これにより、それぞれ必要な大きさ並びに板厚の複数の枠構成材を組合せることによって、材料のほとんどの部分を使用することができる。従って極めて歩留りが良い。しかも、複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚が他の枠構成材の板厚と異なるようにしたので、余分な板厚の部分が無い。従って、サッシュ本体を軽量にすることができるとともにサッシュ本体の材料費を低減することができる。
さらには、従来のロール成形されたサッシュ本体のように、サッシュ本体の剛性を確保するための枠補強材が不要である。このため、部品数を低減することができる。
このようにして、サッシュドアを軽量で安価にすることができる。しかも、基盤となるサッシュ本体を枠状に一体に構成するので、サッシュ本体にシール材等の各種部品を組付ける際の作業性を高めることができる。
また、上・下・前・後枠材として個々に必要な大きさ並びに板厚の枠構成材を互いに接合することで、枠部材を構成することができる。
そして上枠材、下枠材、前枠材又は後枠材として必要な剛性を、個別に十分に確保することができる。余分な板厚の部分が無くなるとともに、部分的に補強材を設ける必要もない。しかも、サッシュ本体の部分的な剛性を高めるために、サッシュ本体全体を大型で複雑な構成にする必要がない。
さらに、ドアインナパネルに取付けられる下枠材や、ドアを閉じたときに車体のルーフ側に接する上枠材に比べて、これらの下・上枠材間を連結する前・後枠材は、大きい剛性が必要である。
これに対して本発明では、比較的低剛性でもよい下・上枠材の板厚よりも、高剛性であることが求められる前・後枠材の板厚を大きく設定することで、前・後枠材に必要な
このような右のリア側サッシュドア50Rの構成であるから、上記図3に示す右のフロント側サッシュドア20Rと同様の作用、効果を有する。
さらには、一般に、リア側サッシュドア50Rにおけるサッシュ本体53のように、下枠材54と上枠材55との間隔が車両後側になるにつれて小さくなる場合には、後枠材56の形状の設計の自由度は他の枠材54,55,57に比べて低い。このことは、特にプレス成形することでサッシュ本体53を構成する場合に、より顕著である。従って、特にプレス成形後に、後枠材56を所望の剛性が得られる断面形状にすることは容易でない。
これに対して本発明は、後枠材56の板厚t13を他の枠材54,55,57の各板厚t11,t12,t14よりも大きくしたので、後枠材56に必要な剛性を十分に確保することができる。
剛性を十分に確保することができる。しかも、下・上枠材の板厚を抑制することができるので、サッシュ本体を軽量化することができる。このようにして、各枠構成材の剛性を合理的にバランス良く設定することができるとともに、サッシュ本体を軽量にすることができる。
【0068】
さらに、本発明では、ドアインナパネルの上部にサッシュ本体を接合した自動車用サッシュドアにおいて、サッシュ本体は、複数の板状の枠構成材を互いに接合してなる枠部材であり、該複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚が他の枠構成材の板厚と異なるものであり、該複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚が他の枠構成材の板厚と異なるものであり、複数の枠構成材は、ドアインナパネルに取付けられる下枠材と、この下枠材の上に位置する上枠材と、これら下枠材の前端部と上枠材の前端部とを連結する前枠材と、下枠材の後端部と上枠材の後端部とを連結する後枠材とを含み、下枠材の板厚を上枠材、前枠材並びに後枠材の各板厚よりも小さくした。
このため、それぞれ必要な大きさ並びに板厚の複数の枠構成材を組合せることによって、材料のほとんどの部分を使用することができる。従って極めて歩留りが良い。しかも、複数の枠構成材のうち、少なくとも一つの枠構成材の板厚が他の枠構成材の板厚と異なるようにしたので、余分な板厚の部分が無い。従って、サッシュ本体を軽量にすることができるとともにサッシュ本体の材料費を低減することができる。
さらには、従来のロール成形されたサッシュ本体のように、サッシュ本体の剛性を確保するための枠補強材が不要である。このため、部品数を低減することができる。
このようにして、サッシュドアを軽量で安価にすることができる。しかも、基盤となるサッシュ本体を枠状に一体に構成するので、サッシュ本体にシール材等の各種部品を組付ける際の作業性を高めることができる。
また、上・下・前・後枠材として個々に必要な大きさ並びに板厚の枠構成材を互いに接合することで、枠部材を構成することができる。
そして上枠材、下枠材、前枠材又は後枠材として必要な剛性を、個別に十分に確保することができる。余分な板厚の部分が無くなるとともに、部分的に補強材を設ける必要もない。しかも、サッシュ本体の部分的な剛性を高めるために、サッシュ本体全体を大型で複雑な構成にする必要がない。
さらに、下枠材はドアインナパネルに取付けられるので、上枠材、前枠材並びに後枠材よりも剛性が小さくてすむ。低剛性でよい下枠材の板厚を上・前・後枠材の板厚よりも小さくすることで、各枠構成材の剛性を合理的にバランス良く設定することができるとともに、サッシュ本体をより軽量にすることができる。
【0069】
さらにまた、本発明は、サッシュ本体は、複数の枠構成材を互いに接合した後にプレス成形された一体成形品とすることで、従来のように、大きな平板素材をプレス成形することで、サッシュ本体を得る場合に比べて、極めて歩留りが良い。このため、サッシュ本体をより安価にすることができる。
【0070】
また本発明は、下枠材と上枠材との間隔を、車両前側になるにつれて小さくなるように構成し、前枠材の板厚を下枠材、上枠材並びに後枠材の各板厚よりも大きくしたので、例えば、フロント側サッシュドアにおけるサッシュ本体のように、下枠材と上枠材との間隔が車両前側になるにつれて小さくなる場合には、前枠材の形状の設計の自由度は他の枠部材に比べて低い。このことは、特にプレス成形することでサッシュ本体を構成する場合に、より顕著である。従って、特にプレス成形後に、前枠材を所望の剛性が得られる断面形状にすることは容易でない。
これに対して前枠材の板厚を他の枠材の板厚よりも大きくしたので、前枠材に必要な剛性を十分に確保することができる。
また、リア側サッシュドアにおけるサッシュ本体のように、下枠材と上枠材との間隔が車両後側になるにつれて小さくなる場合には、後枠材の形状の設計の自由度は他の枠材に比べて低い。このことは、特にプレス成形することでサッシュ本体を構成する場合に、より顕著である。従って、特にプレス成形後に、後枠材を所望の剛性が得られる断面形状にすることは容易でない。
これに対して本発明は、後枠材の板厚を他の枠材の各板厚よりも大きくしたので、後枠材に必要な剛性を十分に確保することができる。

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のサッシュドアは、自動車用サッシュドアのフロントドア用のサッシュ本体及びリアドア用のサッシュ本体に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る自動車用の右側面図
【図2】本発明に係る右のフロント側サッシュドアの分解図
【図3】本発明に係る右のフロント側サッシュドア用サッシュ本体の左側面図
【図4】本発明に係る右のフロント側サッシュドア用サッシュ本体の後部右側面図
【図5】本発明に係る右のフロント側サッシュドア用サッシュ本体の前部右側面図
【図6】図3の6−6線断面図
【図7】図3の7−7線断面図
【図8】図3の8−8線断面図
【図9】図3の9−9線断面図
【図10】図3の10−10線断面図
【図11】図3の11−11線断面図
【図12】本発明に係る右のフロント側サッシュドアの製造方法説明図(その1)
【図13】本発明に係る右のフロント側サッシュドアの製造方法説明図(その2)
【図14】本発明に係る右のリア側サッシュドア用サッシュ本体の左側面図
【図15】本発明に係る右のリア側サッシュドアの製造方法説明図(その1)
【図16】本発明に係る右のリア側サッシュドアの製造方法説明図(その2)
【図17】従来の自動車用サッシュドアの説明図
【符号の説明】
【0073】
10…自動車、 20L,20R,50L,50R…サッシュドア(左右のフロント側サッシュドア及び左右のリア側サッシュドア)、 21…ドアインナパネル、23,53…サッシュ本体、 24,54…下枠材、24a,54a…下枠材の後端部、 24b,55b…下枠材の前端部、 25,55…上枠材、 25a,55a…上枠材の後端部、 25b,55b…上枠材の前端部、 26,56…後枠材、 27,57…前枠材、 31〜34,61〜64…枠構成材、 35,65…枠部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアインナパネルの上部にサッシュ本体を接合した自動車用サッシュドアにおいて、
前記サッシュ本体は複数の板状の枠構成材を互いに接合してなる枠部材であり、
前記複数の枠構成材は、前記ドアインナパネルに取付けられる下枠材と、この下枠材の上に位置する上枠材と、これら下枠材の前端部と上枠材の前端部とを連結する前枠材と、下枠材の後端部と上枠材の後端部とを連結する後枠材とからなり、
前記前枠材は、後方へ下部後端部並びに上部後端部を延ばした側面視コ字状部材であって、該前枠材の下部後端部に下枠材の前端部を接合するとともに、該前枠材の上部後端部に上枠材の前端部を接合し、
前記後枠材は、前方へ下部前端部並びに上部前端部を延ばした側面視コ字状部材であって、該後枠材の下部前端部に下部材の後端部を接合するとともに、該後枠材の上部前端部に上枠部材の後端部を接合して形成した、
ことを特徴とする自動車用サッシュドア。
【請求項2】
前記前枠材及び後枠材の板厚は、前記上枠材及び下枠材よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の自動車用サッシュドア。
【請求項3】
前記サッシュ本体は自動車用のフロントドア用サッシュ本体及びリアドア用サッシュ本体であり、前記下枠材と前記上枠材との間隔が、車体前側になるにつれて小さくなるように構成されるフロントドア用サッシュ本体の前枠材の板厚は後枠材の板厚よりも大きく、前記下枠材と前記上枠材との間隔が、車両後側になるにつれて小さくなるように構成されるリアドア用サッシュ本体の後枠材の板厚は前枠材の板厚よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の自動車用サッシュドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−15690(P2007−15690A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292785(P2006−292785)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【分割の表示】特願2001−266657(P2001−266657)の分割
【原出願日】平成13年9月4日(2001.9.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000175766)三恵技研工業株式会社 (50)