説明

自動車用ドアガードバー

【課題】本発明は自動車のドアガードバーに関し、所期のエネルギ吸収特性を確保しつつ軽量化を実現すること目的とする。
【解決手段】ドアガードバーは外力入力側の第1の横壁14とドアに取付側の第2の横壁16とを備え、これらの第1及び第2の横壁14, 16に交差し、第1及び第2の横壁14, 16を連結する離間した一対の縦壁18, 20によって連結して構成される。第1及び第2の横壁14, 16を連結する一対の縦壁18, 20は第1の横壁14から第2の横壁16に向け拡開構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体側面からの衝突に対して乗員の保護のための補強部材である自動車のドアガードバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアガードバーはドアインパクトビームとも称し、車体側面からの衝突に対して変形することにより衝突エネルギを吸収するように機能し、乗員の保護を図るための補強部材である。ドアガードバーは内側及び外側のドアパネル間の空間に幅方向に延びるように配置され、両端部において内側ドアパネルに取り付けられている構造となっている。ドアガードバーによる衝突エネルギの効果的な吸収のため、ドア面に実質的に平行な外力入力側の第1の横壁とドアに取付側の第2の横壁とを備え、これらの第1及び第2の横壁をドア面に実質的に直交した離間した一対の縦壁によって連結したドアガードバーが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3029514号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドアに対する側面衝突時に、外側の横壁が外力の入力側となり、圧縮を受け、内側の横壁は引張を受け、共に恒久変形することにより衝突エネルギ吸収が行われる。この場合、引張を受ける内側の横壁は外向きの湾曲形状に変形傾向をとり、一対の縦壁は内側の横壁との接続部位において相対的に内側に引張られ、外力により座屈を受け易くなるためエネルギ吸収はその分減少する。その対策として、特許文献1の技術では外側の横壁と比較して内側の横壁の幅及び厚みを大きくとることにより、曲げ入力によって断面内に働く応力中立軸位置を引っ張り側に移し、一対の縦壁の内側の横壁との接続部位における内側への引張りを抑制し、エネルギ吸収量を保持している。しかしながら、外側の横壁と比較して内側の横壁の幅及び厚みを大きくしているため、重量が嵩み、また、レイアウトが難しい部位で周辺部位への影響の懸念がある。
【0004】
この発明は以上の問題点に鑑み、所期のエネルギ吸収特性は確保しつつ重量削減を得ることができるようにすること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の自動車用ドアガードバーはドア面に実質的に平行な外力入力側の第1の横壁とドアに取付側の第2の横壁とを備え、これらの第1及び第2の横壁に交差し、第1及び第2の横壁を連結する離間した一対の縦壁によって連結しており、前記一対の縦壁は第1の横壁から第2の横壁に向け拡開構造となっていることを特徴とする。
【0006】
ドアガードバーに外力が加わった場合に、圧縮を受ける外側の第1の横壁より一対の縦壁を介し、内側の第2の横壁が引張を受け、恒久変形が進むことにより内側の第2の横壁は外向きに開いてゆき、一対の縦壁は元々は第1の横壁から第2の横壁に向け幾分下開きであったことから、変形により一対の縦壁は直立状態に近くなる。そのため、荷重に対しては縦壁による突っ張り寧ろ機能を高めることができ、結果的にエネルギ吸収効率を高めることができる。
【0007】
この発明において、前記一対の縦壁の少なくとも一方は第1の横壁を第2の横壁に対し3〜6°の傾斜角度にて連接せしめるようにすることが好適である。
【発明の効果】
【0008】
変形時におけるドアガードバーのエネルギ吸収効率を高めることができ、要求エネルギ吸収量に対するドアガードバーの断面積をその分小さくすることができ、素材の使用量が減少するため材料コストの低減を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1及び図2において、10は内側ドアパネル(インナパネル)を示しており、内側ドアパネル10にドアガードバー12が取り付けられ、ドアガードバー12を挟んで内側ドアパネル10に外側ドアパネル(アウタパネル)13(図2)が取り付けられている。換言すれば、ドアガードバー12は内側と外側のドアパネル10, 13間に配置されている。図1に示すように、ドアガードバー12は幾分傾斜しているが幅方向に延在しており、両端部12-1, 12-2が内側ドアパネル10への取付部を構成している。内側ドアパネル10はウインドウのための開口部10-1より下部における外周部10-2が少し隆起するように形成され、この隆起部10-2にドアガードバー12の両端部12-1, 12-2が溶接等により固定されている。
【0010】
ドアガードバー12はこの発明の実施形態ではアルミニューム若しくはアルミニューム合金を素材とし、図3に示す断面形状をなすように押し出しにて形成される。即ち、ドアガードバー12はドア一般面に対して平行に延びる第1の横壁14と、第1の横壁14より幾分幅の狭い第1の横壁14に平行な第2の横壁16と、これらの第1の横壁14及び第2の横壁16に交差し、第1の横壁14及び第2の横壁16を連結する一対の縦壁18, 20とから構成される。図2に示すように第1の横壁14は外側ドアパネル13側(外力の入力側)に、第2の横壁16が内側ドアパネル10側に位置している。そして、ドアガードバー12は第2の横壁16において内側ドアパネル10に溶接等により固定される。即ち、第2の横壁16の両端部が内側ドアパネル10の外周部10-2への固定部12-1, 12-2となる。他方、第1の横壁14は外側ドアパネル13に面してはいるが固定にはなっていない。即ち、ドアに外力が加わった場合に、外力は外側ドアパネル13を変形させることで、外側ドアパネル13は第1の横壁14に接触し、その結果外力は第1の横壁14より縦壁18, 20を介し第2の横壁16(内側ドアパネル10に固定)により受け止められ、その際のドアガードバー12の変形によって外力の吸収が行われるという仕組みになっている。
【0011】
この発明によれば、図3に示すように一対の縦壁18, 20は第1の横壁14から第2の横壁16に向け幾分の拡開構造となっている。縦壁18, 20は第1及び第2の横壁14, 16に対して3〜6度の角度θにてスムースに連接している。 図4は特許文献1に開示の従来のドアパネルの断面形状を示しており、第1及び第2の横壁14A, 16Aと、第1及び第2の横壁14A, 16Aを接続する一対の縦壁18A, 20Aを備えていることは本発明と同様である。しかしながら、図4に示す従来のドアパネルにおいては、第1及び第2の横壁14A, 16Aと一対の縦壁18A, 20Aとは直交しており、他方本発明において一対の縦壁18, 20は第1の横壁14から第2の横壁16に向け幾分の拡開構造をなしている点で相違する。このような本発明のドアガードバー12の構造は曲げ試験における反力性能(衝突時のエネルギ吸収性能)を向上させ、その分軽量化を実現することができる。
【0012】
ドアガードバー12についてその衝突時のエネルギ吸収性能を評価するための曲げ試験に際しては、ドアガードバー12を第1の横壁14を上に第2の横壁16下にして図5のように曲げ試験機の離間した一対の支持台21上に載置し、支持台21間の中央部においてドアガードバー12に直交するように下向きの半円形断面の負荷子22を当接させ、負荷子22を下降させて行くことにより垂直荷重をドアガードバー12に加える。変形の過程において負荷子22に当接する上側の第1の横壁14は圧縮を受け、第1の横壁14に一対の縦壁18, 20を開始し接続された第2の横壁16は引張を受け、これらを恒久変形(塑性変形)に至らしめる。負荷子22を下降によりドアガードバー12に加わる変形はある変形量までは反力を増大させてゆくが、限界を超え座屈若しくは破断に至ると、反力は最早それ以上増大することができず、これが最大衝撃吸収量になり、この値によりドアガードバー12の衝撃吸収性能の評価が行われる。そして、所期の衝撃吸収性能を維持しつつよりドアガードバー12をより軽量化することが希求されている。
【0013】
本発明においては、図4に示す第1及び第2の横壁14A, 16Aに対して縦壁18A, 20Aとを直交させた従来のドアガードバーの構造に対して図3のようには上下の一対の縦壁18, 20を第1の横壁14から第2の横壁16に向け幾分拡開させた下開きの構造とすることにより所期の衝撃吸収性能を維持しつつドアガードバーをより軽量化を実現している。即ち、図5において負荷子22を想像線22´のように変位させることによりドアガードバー12は長手方向において想像線12´のように中央部が撓んでゆき永久変形領域に入る。他方断面においては、図6において、負荷子22が直接接触する第1の横壁14は圧縮を受け、この圧縮力が第1の横壁14の両端部における一対の離間した縦壁18, 20を介し第2の横壁16の両端部に加わり、第2の横壁16は第1の横壁14は引張力を受ける。変形状態でのドアガードバー12の形状は想像線にて示しており、圧縮を受ける第1の横壁14は想像線14´にて示すように幾分下向きに反り、引張を受ける第2の横壁16は想像線16´のように上向きに反る。その結果、一対の縦壁18, 20は、想像線18', 20'にて示すように上側に開くような変形を受ける。即ち、一対の縦壁18, 20は荷重の前は、上が狭く下が広い状態(下開き状態)にあったが、荷重を受けることにより下が狭く、上が広くなるように変形し、換言すれば、一対の縦壁18, 20は図6で実線に示す変形前の下開き状態から、変形後は想像線18', 20'に示すように直立状態に近くなる。そのため、荷重に対しては縦壁による突っ張り機能は高められる。これに対して、従来構造のドアガードバーの場合の変形形状は図7の想像線にて示し、荷重により圧縮を受ける第1の横壁14Aは想像線14A'にて示すように幾分下向きに反り、引張を受ける第2の横壁16Aは想像線16A'のように上向きに反る。その結果、一対の縦壁18A, 20Aは、想像線18A', 20A'にて示すように上側に開くような変形を受けることは同様である。しかしながら、従来の場合は変形前の縦壁18A, 20Aは荷重に平行な方向であるも、荷重により想像線18A', 20A'のように鉛直外側に倒れてしまうため、縦壁による突っ張り機能はむしろ低下する。その結果、本発明の構造(図6)により従来構造(図7)より勝ったエネルギ吸収機能を得ることができる。本出願人による有限要素法によるモデル実験での解析結果によると、第1及び第2の横壁の長さ及び厚みについて本発明14, 16と従来14A, 16Aとで同一とし、縦壁についてもその厚みを本発明18, 20と従来18A, 20Aで同一のサンプルに対して、本発明と従来とで、同一のエネルギ吸収量としたとき、本発明のドアガードバー12の断面積を従来のドアガードバー14のそれに対して1.0%縮小させることができることが確認できた。即ち、本発明のドアガードバー12(図3)の構造は縦壁18, 20が下開きであるため従来のドアガードバー(図4)の縦壁18A, 20Aより長さの値としては大きく、これは断面積を増加させる要因である。しかしながら、本発明における縦壁18, 20の下開き構造は鈍角となる接続部a, b(図3)の曲率半径はその値が大きいためその減少代を大きく取ることができる。鋭角となる接続部c, dでは曲率半径は増加するが、元々その値は小さいためその増加は小さく、トータルではR部における断面積は減少する。そして、R部におけるトータルの断面積分減少分>縦壁18, 20の下開き構造による断面積増加分であるため、トータルの断面積としては本発明のドアガードバー(図3)<従来のドアガードバー(図4)とすることができる。
【0014】
図8の実施形態では第1の横壁114と第2の横壁116とを一対の縦壁118, 120で接続していることは第1の実施形態と同様であるが、一対の縦118, 120を第1の横壁114から第2の横壁116に向け下開きとするため、一対の縦118, 120を外側に湾曲形状としたものである。
【0015】
図9の実施形態も第1の横壁214と第2の横壁216とを一対の縦壁218, 220で接続していることは第1の実施形態と同様であるが、一対の縦壁218, 220は内壁面は第1及び第2の横壁214, 216と直交であるが、縦壁218, 220の肉厚を第1の横壁214から第2の横壁216に向け徐々に大きくすることで、外壁面は下開きに傾斜させたものである。従って、一対の縦壁218, 220の中心線は下開きとなっており、この実施形態においても一対の縦壁218, 220は第1の横壁214を第2の横壁216に傾斜した状態(縦壁218, 220の中心線お鉛直方向に対する傾斜角度=θ)で連接させており、第1の実施形態と同等の作用効果を実現することができる。
【0016】
図10の実施形態も第1の横壁314と第2の横壁316とを一対の縦318, 320で接続していることは以上の実施形態と同様であるが、一対の縦壁のうち一方の縦壁318は垂直であるも、他方の縦壁320は傾斜しており、これにより、一対の縦318, 320を第1の横壁314から第2の横壁316に向け下開きとした構造を実現しており、先に挙げた実施形態に準じた作用効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1はこの発明のドアガードバーを取付けた内側ドアパネルの正面図である。
【図2】図2は図1のII−II線に沿って表される断面図である。
【図3】図3は図2におけるドアガードバーの拡大断面図である。
【図4】図4は従来技術におけるドアガードバーの断面図である。
【図5】図5は曲げ試験機によるドアガードバーのエネルギ吸収量の試験装置の概略構成図である。
【図6】図6は図3と同様であるが、この発明のドアガードバーの曲げ試験中の変形状態を模式的に示す。
【図7】図7は図4と同様であるが、この発明のドアガードバーの曲げ試験中の変形状態を模式的に示す。
【図8】図8はこの発明の別実施例におけるドアガードバーの断面図である。
【図9】図9はこの発明の別実施例におけるドアガードバーの断面図である。
【図10】図10はこの発明の別実施例におけるドアガードバーの断面図である。
【符号の説明】
【0018】
10…内側ドアパネル
12…ドアガードバー
13…外側ドアパネル
14…ドアガードバーの外側(外力入力側)横壁
16…ドアガードバーの内側(ドア取付側)横壁
18, 20…ドアガードバーの縦壁
21…曲げ試験機の支持台
22…曲げ試験機の負荷子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア面に実質的に平行な外力入力側の第1の横壁とドアに取付側の第2の横壁とを備え、これらの第1及び第2の横壁に交差し、第1及び第2の横壁を連結する離間した一対の縦壁によって連結した自動車用ドアガードバーにおいて、前記一対の縦壁は第1の横壁から第2の横壁に向け拡開構造となっていることを特徴とする自動車用ドアガードバー。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、前記一対の縦壁の少なくとも一方は第1の横壁を第2の横壁に対し3〜6°の傾斜角度にて連接せしめることを特徴とする自動車用ドアガードバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−83459(P2010−83459A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257992(P2008−257992)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)