説明

自動車用油圧式ジャッキ

【課題】 車体の最低地上高が低い自動車に使用可能にする。
【解決手段】 両側板1間に後端を取り付けた持上げアーム3を油圧式駆動機構21で回転すると、持上げアーム3前端に取り付けた受部材10がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する自動車用油圧式ジャッキにおいて、持上げアーム3は下降状態で上面が前下がりに傾斜し、受部材10は昇降状態に拘わらず上端が持上げアーム3前端より高く位置させ、両側板1は、持上げアーム3後半部を挟む部分では下降した持上げアーム3後半部上面の高さに一致させ、持上げアーム3前半部を挟む部分では下降した受部材10上端とほぼ同じ高さにし、持上げアーム3の前後半部を挟む部分の上端に補強用折り曲げ片41を設けた。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、自動車の端を持ち上げる油圧式のジャッキに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガレージジャッキとも言われる自動車用油圧式ジャッキは、前後方向に長い左右の両側板の間に持上げアームを前後方向に配置し、持上げアームの後上端を、両側板の中央部上端の間に左右方向に掛け渡したアーム軸に回転可能に取り付け、持上げアームの前端に左右方向に取り付けた受台軸に受台の中央部を回転可能に取り付け、受台の下端に左右方向に取り付けた軸にリンク棒の前端を回転可能に取り付け、リンク棒の後端を、側板の中央部に左右方向に取り付けた軸に回転可能に取り付けている。受台の上には、自動車の車体下面のジャッキポイントに当る受部材を取外可能に取り付けている。
【0003】
両側板の前半部の間に前後方向に配置した持上げアームをアーム軸の回りに回転し、持上げアームの前端を上後方に移動すると、受台とその上の受部材がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する平行クランク機構を構成している。
【0004】
両側板の後半部の間には、油圧でピストンが押し出される油圧式駆動機構を配置し、油圧式駆動機構の後端を、両側板の後端の間に左右方向に掛け渡した軸に回転可能に取り付け、油圧式駆動機構の前端に突出したピストンの前端を、持上げアームの後下端に左右方向に取り付けた軸に回転可能に取り付けている。
【0005】
油圧式駆動機構のピストンが押し出されると、持上げアームがアーム軸の回りに回転して受台と受部材がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する。
【0006】
両側板の外側位置には、それぞれ、前輪と後輪を取り付けている。
【0007】
このジャッキは、主に車庫において使用され、受部材が下降した状態で、前半部を自動車の車体の下に配置し、油圧式駆動機構で受部材を上昇させ、自動車の車体下面のジャッキポイントに受部材を当て、自動車の端を持ち上げる。
【0008】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、上記のような従来の油圧式ジャッキは、側板の最大地上高と受部材の最低地上高が高く、例えば、質量が2トン以下の自動車用である場合、側板の最大地上高が180mm位、受部材の最低地上高が130mm位であるので、車体の最低地上高が130mm位より高い自動車にしか使用することができない。
最近多くなった車体の最低地上高が130mm位より低い自動車、例えば最低地上高が90mm位の自動車には、使用することができない。
【0009】
【課題を解決するための着眼と工夫】
上記のような油圧式ジャッキにおいて、車体の最低地上高が低い自動車に使用可能にするには、ジャッキの全体、少なくとも、受部材を含む前半部の高さを低くすることが考えられる。ところが、ジャッキの高さを単純に低くすると、ジャッキの強度、特に側板の強度が低下し、持上げ可能な自動車の質量が小さくなる。そこで、ジャッキの強度を維持しつつジャッキの高さを低くする工夫をした。
【0010】
上記のような油圧式ジャッキにおいて、持上げアームは、下降した状態で、上面が前下がりに傾斜する構成にする。受部材は、昇降状態に拘わらず、上端が持上げアームの前端より高く位置する構成にする。
【0011】
両側板は、持上げアームの後半部を挟む部分では、下降した持上げアームの後半部上面より高いと、ジャッキが高くなり、下降した持上げアームの後半部上面より低いと、ジャッキが弱くなるので、下降した持上げアームの後半部上面の高さに一致させ、その部分の上端を、下降した持上げアームの後半部上面に沿って前下がりに傾斜させる。
【0012】
また、両側板は、持上げアームの前半部を挟む部分では、下降した受部材の上端より高いと、ジャッキが高くなり、下降した受部材の上端より低いと、ジャッキが弱くなるので、下降した受部材の上端とほぼ同じ高さにし、その部分の上端を、ほぼ水平ないし前下がりの緩い傾斜にする。
【0013】
その上、両側板は、少なくとも、持上げアームの後半部と前半部を挟む部分の上端に補強用の折り曲げ片を設ける。
【0014】
このようにすると、油圧式ジャッキは、側板の最大地上高を130mm位、受部材の最低地上高を85mm位にすることができ、車体の最低地上高が90mm位で質量が2トン以下の自動車に使用可能にすることができる。
【0015】
【課題を解決するための手段】
1)2)左右の両側板の間に後端を取り付けた持上げアームを、両側板の間に取り付けた油圧式駆動機構で回転すると、持上げアーム前端に取り付けた受部材がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する自動車用油圧式ジャッキにおいて、 又は、左右の両側板の間に掛け渡したアーム軸に持上げアームの後上端を取り付け、持上げアームの前端に取り付けた受台軸に受台を取り付け、受台に取り付けた軸にリンク棒の前端を取り付け、リンク棒の後端を、側板に取り付けた軸に取り付け、受台の上に、自動車の車体下面に当る受部材を取り付け、持上げアームをアーム軸の回りに回転して受台を上後方に移動すると、受部材がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する平行クランク機構を構成し、 両側板の間に油圧式駆動機構を取り付け、油圧式駆動機構の前端に突出したピストンの前端を持上げアームの後下端に連結し、油圧式駆動機構のピストンが押し出されると、持上げアームがアーム軸の回りに回転して受部材がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する構成にした自動車用油圧式ジャッキにおいて、 持上げアームは、下降した状態で、上面が前下がりに傾斜する構成にし、受部材は、昇降状態に拘わらず、上端が持上げアームの前端より高く位置する構成にし、 両側板は、持上げアームの後半部を挟む部分では、下降した持上げアームの後半部上面の高さに一致させ、その部分の上端を前下がりに傾斜させ、持上げアームの前半部を挟む部分では、下降した受部材の上端とほぼ同じ高さにし、その部分の上端をほぼ水平ないし前下がりの緩い傾斜にし、 また、両側板は、持上げアームの後半部と前半部を挟む部分の上端に補強用の折り曲げ片を設けたことを特徴とする。
【0016】
3)上記の自動車用油圧式ジャッキにおいて、 両側板は、下端に補強用の折り曲げ片を設けたことを特徴とする。
【0017】
4)上記の自動車用油圧式ジャッキにおいて、 受部材の最低地上高を85mm位にし、側板の最大地上高を130mm位にしたことを特徴とする。
【0018】
【考案の効果】
本考案においては、車体の最低地上高が低い自動車、例えば車体の最低地上高が90mm位で質量が2トン以下の自動車に使用可能にすることができる。
【0019】
【考案の実施の形態】
ガレージジャッキとも言われる自動車用油圧式ジャッキは、図1〜図3に示すように、前後方向に長い左右の両側板1を複数の間隔保持棒2を挟んで並列している。
【0020】
両側板1の前半部の間には、図1と図2に示すように、先細の持上げアーム3を前下がりの前後方向に配置し、持上げアーム3の後上端を、両側板1の中央部上端の間に左右方向に貫通して掛け渡したアーム軸4に回転可能に取り付けている。
【0021】
持上げアーム3の前端には、図1と図3に示すように、受台軸5を左右方向に貫通して取り付け、受台軸5に受台6の中央部を回転可能に取り付け、受台6を両側板1の間に配置している。
【0022】
受台6の下端には、図1に示すように、軸7を左右方向に貫通して取り付け、軸7の両端にそれぞれリンク棒8の前端を回転可能に取り付け、図1と図3に示すように、左右のリンク棒8の後端を、それぞれ、同側の側板1の中央部に左右方向に貫通して取り付けた軸9に回転可能に取り付け、各リンク棒8をそれぞれ同側の側板1と持上げアーム3の間に配置している。
【0023】
自動車の前端又は後端のジャッキポイントに当てる受部材10は、図4に示すように、丸皿形状の本体11の下に取付軸12を突出し、取付軸12にピン孔13を貫通している。受台6は、図3に示すように、縦断面が門形状であり、その天板に貫通した取付孔に受部材10の取付軸12を貫通し、受台6の水平な天板の上に受部材10の本体11を水平に載せ、受部材10の取付軸12のピン孔13に抜け止めピン14を貫通し、受台6の上に受部材10を取外可能に取り付けている。
【0024】
即ち、前下がりの前後方向に配置した持上げアーム3をアーム軸4の回りに回転し、図5に示すように、持上げアーム3の前端を上後方に移動すると、受台6とその上の受部材10がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する平行クランク機構1、3〜9を構成している。
【0025】
両側板1の後半部の間には、図1と図2に示すように、油圧式駆動機構21を配置し、油圧式駆動機構21の後端を、両側板1の後端の間に左右方向に貫通して掛け渡した軸22に回転可能に取り付け、油圧式駆動機構21の前端に突出したピストン23の前端を、持上げアーム3の後下端に左右方向に取り付けた軸24に回転可能に取り付けている。
【0026】
油圧式駆動機構21は、後部の上に揺動可能に取り付けたソケット25に棒のハンドル26を連結し、ハンドル26を上下動させると、ソケット25の揺動で油圧プランジャポンプ27が作動し、内蔵タンクの油が内蔵シリンダに供給され、内蔵シリンダに嵌合したピストン23が油圧で前に押し出される。ピストン23が押し出されると、図5に示すように、持上げアーム3がアーム軸4の回りに回転して受台6と受部材10がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する。
【0027】
油圧式駆動機構21は、内蔵シリンダに供給された油を内蔵タンクに戻す逃し弁28を設けている。持上げアーム3の後端と側板1の間には、図1と図2に示すように、受台6の上昇によって伸張する螺旋ばね29を取り付けている。
【0028】
受台6と受部材10が上昇した状態で、逃し弁28を開放すると、伸張した螺旋ばね29の弾性力と、持上げアーム3、受台6、受部材10やリンク棒8などの自重によって持上げアーム3がアーム軸4の回りに回転して受台6と受部材10がその姿勢を維持したまま下前方に下降し、内蔵シリンダに供給された油が開放中の逃し弁28を経て内蔵タンクに戻り、図1に示す原位置に復元する。
【0029】
両側板1の前端と後端の外側位置には、それぞれ、前輪31と後輪32を取り付けている。
【0030】
持上げアーム3は、図1に示すように、下降した状態で、上面が前下がりに傾斜する。受部材10は、昇降状態に拘わらず、上端が持上げアーム3の前端より高く位置する。
【0031】
両側板1は、図1に示すように、持上げアーム3の後半部を挟む部分では、下降した持上げアームの後半部上面の高さに一致させ、その部分の上端を、下降した持上げアームの後半部上面に沿って前下がりに傾斜させ、持上げアーム3の前半部を挟む部分では、下降した受部材10の上端とほぼ同じ高さにし、その部分の上端をほぼ水平ないし前下がりの緩い傾斜にしている。下降した受部材10の上端は、それを挟む両側板1の部分の上に僅かに突出している。
【0032】
また、両側板1は、図1〜図3に示すように、持上げアーム3の後半部と前半部を挟む部分の上端に補強用の折り曲げ片41を外側に突出して設け、また、前端と後端を除く部分の下端に補強用の折り曲げ片42を外側に突出して設けている。
【0033】
両側板1は、図2に示すように、最大地上高が130mmである。受部材10は、図3に示すように、最低地上高が85mmで、最大地上高が330mmである。受部材10の中心と両側板1の最大地上高部分の間は、前後方向水平距離が230mm位である。使用可能な自動車の最大質量は、2トンである。
【0034】
この自動車用油圧式ジャッキは、主に車庫において使用され、受部材10が下降した状態で、前半部を自動車の車体前端の下に配置し、油圧式駆動機構21で受部材10を上昇させ、車体前端の下面のジャッキポイントに受部材10を当て、自動車の車体前端を持ち上げる。自動車の車体後端を持ち上げる場合も、同様である。
【0035】
車体の最低地上高が130mm位より低い自動車、例えば車体の最低地上高が90mm位で質量が2トン以下の自動車に使用することができる。
【0036】
自動車の車体の左端又は右端を持ち上げる場合は、前後端持上げ用の受部材10を受台6から取り外し、左右端持上げ用の受部材16を受台6に取り付ける。
左右端持上げ用の受部材16は、図6に示すように、本体17が溝形状であり、ピン孔13を貫通した取付軸12が前後端持上げ用におけるのと同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施形態における自動車用油圧式ジャッキの手前側の側板を取り外した状態の側面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1のB−B線断面図。
【図4】同自動車用油圧式ジャッキの前後端持上げ用受部材の図、(a)は縦断正面図、(b)は平面図。
【図5】図1において受部材を上昇した状態の側面図。
【図6】同自動車用油圧式ジャッキの左右端持上げ用受部材の図、(a)は縦断正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【符号の説明】
1 側板
3 持上げアーム
4 アーム軸
5 受台軸
6 受台
7 軸
8 リンク棒
9 軸
10 受部材
1、3〜9 平行クランク機構
21 油圧式駆動機構
23 ピストン
41 補強用の折り曲げ片
42 補強用の折り曲げ片

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 左右の両側板の間に後端を取り付けた持上げアームを、両側板の間に取り付けた油圧式駆動機構で回転すると、持上げアーム前端に取り付けた受部材がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する自動車用油圧式ジャッキにおいて、持上げアームは、下降した状態で、上面が前下がりに傾斜する構成にし、受部材は、昇降状態に拘わらず、上端が持上げアームの前端より高く位置する構成にし、両側板は、持上げアームの後半部を挟む部分では、下降した持上げアームの後半部上面の高さに一致させ、その部分の上端を前下がりに傾斜させ、持上げアームの前半部を挟む部分では、下降した受部材の上端とほぼ同じ高さにし、その部分の上端をほぼ水平ないし前下がりの緩い傾斜にし、また、両側板は、持上げアームの後半部と前半部を挟む部分の上端に補強用の折り曲げ片を設けたことを特徴とする自動車用油圧式ジャッキ。
【請求項2】 左右の両側板の間に掛け渡したアーム軸に持上げアームの後上端を取り付け、持上げアームの前端に取り付けた受台軸に受台を取り付け、受台に取り付けた軸にリンク棒の前端を取り付け、リンク棒の後端を、側板に取り付けた軸に取り付け、受台の上に、自動車の車体下面に当る受部材を取り付け、持上げアームをアーム軸の回りに回転して受台を上後方に移動すると、受部材がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する平行クランク機構を構成し、両側板の間に油圧式駆動機構を取り付け、油圧式駆動機構の前端に突出したピストンの前端を持上げアームの後下端に連結し、油圧式駆動機構のピストンが押し出されると、持上げアームがアーム軸の回りに回転して受部材がその姿勢を維持したまま上後方に上昇する構成にした自動車用油圧式ジャッキにおいて、持上げアームは、下降した状態で、上面が前下がりに傾斜する構成にし、受部材は、昇降状態に拘わらず、上端が持上げアームの前端より高く位置する構成にし、両側板は、持上げアームの後半部を挟む部分では、下降した持上げアームの後半部上面の高さに一致させ、その部分の上端を前下がりに傾斜させ、持上げアームの前半部を挟む部分では、下降した受部材の上端とほぼ同じ高さにし、その部分の上端をほぼ水平ないし前下がりの緩い傾斜にし、また、両側板は、持上げアームの後半部と前半部を挟む部分の上端に補強用の折り曲げ片を設けたことを特徴とする自動車用油圧式ジャッキ。
【請求項3】 両側板は、下端に補強用の折り曲げ片を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用油圧式ジャッキ。
【請求項4】 受部材の最低地上高を85mm位にし、側板の最大地上高を130mm位にしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の自動車用油圧式ジャッキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【登録番号】実用新案登録第3068056号(U3068056)
【登録日】平成12年2月2日(2000.2.2)
【発行日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【考案の名称】自動車用油圧式ジャッキ
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平11−7662
【出願日】平成11年10月7日(1999.10.7)
【出願人】(393011061)株式会社サンバードオート電機 (1)