説明

自動車

【課題】 事故の際にボンネットを起こしたときに、ボンネットの振動が小さい自動車を提供する。
【解決手段】 本発明は、歩行者などとの事故の際にボンネットを起こすアクチュエータ装置を備えた自動車に関する。本発明にとって必須なことは、(a)アクチュエータ装置が、ボンネットを起こす少なくとも2つのアクチュエータを有し、(b)少なくとも2つのアクチュエータを作動させる制御ユニットが設けられ、前記制御ユニットは、事故の際に少なくとも2つのアクチュエータを時間をずらして作動させるか、または(c)少なくとも2つのアクチュエータを作動させる制御ユニットが設けられ、前記制御ユニットは、事故の際にアクチュエータを同時に作動させるが、アクチュエータは威力が異なるように設計されることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による、歩行者などとの事故の際にボンネットを起こすアクチュエータ装置を備えた自動車に関する。本発明はまた、自動車と歩行者との事故の結果を軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該タイプの自動車は、例えば、特許文献1から公知であり、この特許文献1では、アクチュエータ装置が、ボンネットの横後端部にそれぞれ配置された2つのアクチュエータを有する。ボンネットを調整(駆動、始動)するときに、抑制するのに必ず困難を伴う揺動動作、すなわち振動をこの場合に制御するために、円滑化ユニットがアクチュエータの連結部に配置されるのが好ましく、前記円滑化ユニットは、例えば、事故の際のボンネットの調整時に対抗力を発生させ、それによって、ボンネットの振動挙動に好ましい影響を及ぼす。
【0003】
当該タイプの別の自動車は、特許文献2から公知であり、特許文献2では、アクチュエータと、起こされるべきボンネットの下側との間にエネルギ吸収体が配置され、それによって、調整動作時のボンネットの振動挙動に好ましい影響を及ぼす。
【0004】
最後に、さらなる自動車が特許文献3から公知であり、特許文献3では、ボンネットの調整時に起こり得る振動を吸収要素が減衰させる。
【0005】
一般的には、自動車で実証されているが、事故の際の調整時に、所定の変形長さ(経路)がもはや保証され得ないようにボンネットが揺動する、すなわち振動することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2 025 565号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 712 426号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1 818 224号明細書
【特許文献4】独国特許公告第10 2005 048 328 B3号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第100 21 143 A1号明細書
【特許文献6】特開2006−224890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、当該タイプの自動車の代わりに、特に安全性が強化されたことを特徴とする改良された、または少なくとも代替の実施形態を示すという課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項の対象により本発明に従って解決される。有益な実施形態は従属請求項の対象である。
【0009】
本発明は、事故の際の不意の調整でのボンネットの振動挙動に対して、アクチュエータ装置の個々のアクチュエータが互いに対して時間をずらして作動されるか、あるいは個々のアクチュエータが、威力が異なるように、したがって、前記アクチュエータが、たとえ同時に作動した場合でも、起こされるべきボンネットに威力が異なる起こし力を作用させることができるように設計されるかのいずれかによって、好ましい影響を及ぼすという概念に基づく。この場合に、アクチュエータ装置は、特に歩行者との事故の際にボンネットを起こすように機能し、したがって、前記歩行者については、ボンネットにぶつかったときに変形長さが長いために、結果として負傷はあまり深刻なものにならないと予想される。この場合に、アクチュエータ装置は通常、ボンネットを起こすための少なくとも2つのアクチュエータを有し、本発明による前記アクチュエータは、事故の際に時間をずらしてか、あるいは威力が異なるように設計された形でかのいずれかでこのとき作動され、それにより、振動が大幅に低減され、その結果として、事故の結果を軽減するために必要な所定の変形長さが確実に保証されるのを可能にする。2つのアクチュエータは、例えば、いずれの場合も進行方向で見てボンネットの後方横端部に配置することができて、2つのアクチュエータが作動したときに、ボンネットが一様に起きるのではなく、例えば、最初に左後端部で起きて、次いで時間を置いて右後端部で起き、これは、ボンネットの振動挙動に好ましい影響を及ぼす。この場合に、構造上同じアクチュエータを使用するのが好ましい。それに代わる代替の実施形態は威力が異なるアクチュエータを使用し、これらのアクチュエータは、事故の際に、例えば、同時に発火して実際に作動するが、威力が異なるように設計されるため、同様にボンネットの個々の後方横端部が異なる速度で起こされ、その結果、振動が望みどおりに低減される。ボンネットが調整されるのが後部であるか、前部であるか、またはその両方であるかは本発明にとって問題ではない。アクチュエータが設定時間の態様か、または威力が異なる態様かのいずれかで作動することにより、アクチュエータの調整位置で位相がずれることが重要である。
【0010】
本発明による問題解決手段の有益な発展形態では、アクチュエータの少なくとも1つは、発火して、または機械式スプリングを用いて起動することができる。発火で起動できるアクチュエータは、コンパクトに構築でき、機械式スプリングと比較して、重量の点でかなり有利であるという利点をもたらし、爆発作動により、歩行者との事故の際にボンネットが迅速に起きることが可能になる。それに対して、機械式スプリングを使用することにより、状況によっては、例えば、アクチュエータ内の火工装薬に点火する電気式作動装置よりも故障しづらい完全な機械式起動機構も可能になる。さらに、機械式スプリング要素を備えたアクチュエータは、起動後に不必要に交換されるのではなくて、例えば、再度取り付けることもできるという大きな利点をもたらす。これは、事故後の点検または修理にかかる費用を少なくする。
【0011】
本発明のさらに重要な特徴および利点が、従属請求項、図面、および図面を参照した図の関連説明から明らかになる。
【0012】
上記の特徴および下記にさらに説明されなければならない特徴を、それぞれの決まった組み合わせだけでなく、別の組み合わせまたは単独でも使用することができるのは言うまでもない。
【0013】
本発明の好ましい例示的な実施形態が図面に示され、下記の説明でさらに詳細に説明され、同一の参照符号は、同一または同様または機能的に同一の部品を示す。
【0014】
各図面は、いずれの場合も概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】起こすことができるフロントボンネットを有する、本発明による自動車を示している。
【図2】事故の結果を軽減する方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1によれば、本発明による自動車1は、特に歩行者との事故の際に、進行方向で見てボンネット3の後端部を起こすアクチュエータ装置2を有する。この場合に、本発明によるアクチュエータ装置2は、ボンネット3を起こす2つのアクチュエータ4、5を有する。起こし動作中のボンネット3の振動挙動を少なくとも弱め、それによって、所定の最小量だけは確実に起きるようにするために、ここでは制御ユニット6が用意され、この制御ユニットは、第1の代替案によれば、事故の際に少なくとも2つのアクチュエータ4、5を時間をずらして作動させ、それによって、ボンネット3が一様に起きるのを防止する。この場合に、2つのアクチュエータ4、5は同一構造とすることができる。これに対する代替案として、威力が異なるように設計された2つのアクチュエータ4、5を設けることができ、たとえ制御ユニット6によって同時に作動された場合でも、威力が異なるアクチュエータ4、5により、ボンネット3の2つの後端部が異なる速度で起こされる。威力が異なるアクチュエータ4、5を設けることにより、開くときのボンネット3の振動傾向が同様に軽減され、したがって、前記ボンネットが、必要とされる最小量だけは起きることを確実に保証することができる。
【0017】
図1によれば、2つのアクチュエータ4、5が設けられているが、3つ以上のアクチュエータを設けることも当然可能であり、これらのアクチュエータは、この場合も同様に、強さが異なるように設計されるか、あるいは時間をずらして起動できるかのいずれかである。2つのアクチュエータ4、5は、例えば、起動機構として火工の、すなわち、発火性の装薬か、あるいは機械式スプリングを有することができる。この場合に、火工装薬は重量がかなり軽く、特にスポーツカーの製造に非常に有利であるという大きな利点をもたらす。これに対して、機械式スプリングは、使用後にアクチュエータを再度取り付けることを可能にし、事故後の点検および修理費用を安くすることができる。
【0018】
例えば、制御ユニット6は、事故の際に少なくとも2つのアクチュエータ4、5を時間をずらして作動させることができ、それによって、ほとんど振動がない態様でボンネット3を起こすことができる。2つのアクチュエータ4、5の時間をずらした作動の代替案として、アクチュエータを同時に作動させることもでき、この場合に、威力が異なるアクチュエータ4、5を使用して振動を小さくする。この場合に、前記アクチュエータは、例えば、威力が異なる火工装薬または威力が異なるスプリングを有する。
【0019】
ボンネット3を起こすと、制振効果を有する弾性撓み要素が形成されるので、進行方向で見た後端部でボンネット3を起こすことにより、特に、事故が歩行者にもたらす結果を大幅に軽減することができる。このようにして、特に、頭部が重傷を負う危険性を大幅に減らして最小限にすることができる。この場合に、ボンネット3に作用する、歩行者の衝突エネルギを少なくとも部分的に吸収するために、アクチュエータ4、5を、起動した状態において、少なくとも少しだけシミュレーションすることもできる。図2によれば、自動車1(図1を参照のこと)と歩行者との事故の結果を軽減する、本発明による方法が示されている。
【0020】
方法の最初のステップAで、例えば、センサ装置が起こりつつある衝突を検出し、次いで、方法のステップBで、制御ユニット6がアクチュエータ装置2の2つのアクチュエータ4、5を作動させる。この場合に、個々のアクチュエータ4、5と方法のステップBとの間に示した矢印は長さが異なっており、これは、2つのアクチュエータ4、5の時間をずらした起動を示すことを意図されている。したがって、図2によれば、方法のステップBで、第一にアクチュエータ4を作動させ、アクチュエータ4に対して時間を遅らせて第2のアクチュエータ5を作動させる。方法のステップCで、2つのアクチュエータ4、5は、ボンネット3を起こすという作業を完了し、したがって、事故の結果を軽減する、歩行者のための効果的な保護システムができあがる。
【0021】
威力が異なるアクチュエータ4、5を使用する場合、アクチュエータ4、5の威力が異なる結果として、ボンネット3が一様に起きないので、別法として、方法のステップBで前記アクチュエータを同時に作動させることもできる。
【0022】
2つの別の実施形態により、振動が軽度であることだけは確かな態様でボンネット3を起こすことが可能になり、したがって、前記ボンネットが所定の最小限の量までは支障なく起きるのを確実に保証できるのは、本発明の特有の利点である。この場合に、前記起きあがり量を保証することは、自動車と歩行者との事故の結果を軽減するのに大いに寄与する。
【符号の説明】
【0023】
1 自動車
2 アクチュエータ装置
3 ボンネット
4 アクチュエータ
5 アクチュエータ
6 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者などとの事故の際にボンネット(3)を起こすアクチュエータ装置(2)を備えた自動車(1)であって、
−前記アクチュエータ装置(2)は、前記ボンネット(3)を起こす少なくとも2つのアクチュエータ(4、5)を有し、
−前記少なくとも2つのアクチュエータ(4、5)を作動させる制御ユニット(6)が設けられ、前記制御ユニットは、事故の際に前記少なくとも2つのアクチュエータ(4、5)を時間をずらして作動させるか、または
−前記少なくとも2つのアクチュエータ(4、5)を作動させる制御ユニット(6)が設けられ、前記制御ユニットは、事故の際に前記アクチュエータ(4、5)を同時に作動させるが、前記アクチュエータ(4、5)は、威力が異なるように設計される、
ことを特徴とする自動車(1)。
【請求項2】
2つのアクチュエータ(4、5)が設けられ、これらのアクチュエータの一方は、前記ボンネット(3)の後方右端部に配置され、他方は、ボンネット(3)の後方左端部に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の自動車(1)。
【請求項3】
2つのアクチュエータ(4、5)は、進行方向で見てボンネットの前端部に配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車(1)。
【請求項4】
前記アクチュエータ(4、5)の少なくとも1つは、発火して、または機械式スプリングを用いて起動されることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の自動車(1)。
【請求項5】
前記制御ユニット(6)は、事故の際に前記ボンネットの調整で位相をずらすために、前記少なくとも2つのアクチュエータ(4、5)を時間をずらして作動させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項6】
前記2つのアクチュエータ(4、5)は、威力が異なる火工装薬か、または威力が異なるスプリングを有することを特徴とする、請求項4または5に記載の自動車(1)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動車(1)と歩行者などとの事故の結果を軽減する方法であって、事故の際にアクチュエータ装置(2)がボンネットを起こし、前記アクチュエータ装置(2)は、少なくとも2つのアクチュエータ(4、5)を有し、前記少なくとも2つのアクチュエータ(4、5)を作動させる制御ユニット(6)は、事故の際に2つのアクチュエータを時間をずらして作動させる、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−98718(P2011−98718A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−231351(P2010−231351)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany