自動開閉傘の安全装置及びその安全装置を具備した自動開閉傘
【課題】自動開閉傘の傘軸撥ね出しを防止する。
【解決手段】ラチェット装置とワイヤと制御レバーとから成り、ワイヤの下端はラチェット装置に、上端は傘軸の上端に取り付けられる。制御レバーは、例えば逆L字で、握り柄内に揺動自在に設けられる。傘軸の伸長時制御レバーの下端はラチェット装置のラチェット歯輪から解除される。傘軸を押し縮めるときには、制御レバーの操作面は制御子の先端部から離れ、バネの弾性力により制御レバーの下端はラチェット歯輪をロックする。
【解決手段】ラチェット装置とワイヤと制御レバーとから成り、ワイヤの下端はラチェット装置に、上端は傘軸の上端に取り付けられる。制御レバーは、例えば逆L字で、握り柄内に揺動自在に設けられる。傘軸の伸長時制御レバーの下端はラチェット装置のラチェット歯輪から解除される。傘軸を押し縮めるときには、制御レバーの操作面は制御子の先端部から離れ、バネの弾性力により制御レバーの下端はラチェット歯輪をロックする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動開閉傘の安全装置に関し、特に、傘軸を押し縮める際にその加圧力が突然失われることによって生じる傘軸の撥ね出しを効果的に防止する安全装置及びその安全装置を具備した自動開閉傘に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている自動開閉傘の傘軸は、握り柄部分に設けた押しボタンを押すことによって傘が開閉するようになっている。
傘を畳むときユーザーは押ボタンを押して傘骨を折り畳んだ後、手で傘軸を圧縮し、傘軸を予め設定されたロック位置まで押し縮める必要があり、そうすることによって、傘を完全に閉じた状態にすることができる。
傘軸を圧縮する過程において、使用者が不用意に傘軸を開放したりすると、傘軸が撥ね戻るようにして伸び、使用者自身や周りにいる人々を傷つけることがある。
以下に、自動開閉傘のそのような撥ね出しを防止する安全装置に関する先行技術について説明する。
【0003】
図1には、中国特許第101642319A号公報(特許文献1)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。この安全装置は、傘軸の撥ね出し防止用ロープ101、ラチェット102、ラチェット基板103、ゼンマイバネ104、撥ね出し防止ストッパ105、復帰バネ106、留め具案内管107、主体部108、押圧片109、銃弾形の留め具110、等々から構成されている。この安全装置における傘軸の撥ね出し防止用ロープ101の上端はプーリー取付座に固定され、また、当該ロープ101の下端は傘軸の内管及び銃弾形の留め具110の内部を通過して、ラチェット102に巻き付けられている。然しながら、上記ロープ101を留め具110の内部に挿通するという構成は、製造工程数を増加させると共に、留め具110の強度を低下させる。更にまた、上記留め具110と撥ね出し防止用ストッパ105は、いわゆる第3種梃子(てこ)を構成している。これは、支点が梃子の一端に存在し、梃子の力点は支点と作用点との間に位置する梃子のことを意味している。そのため、撥ね出し防止用ストッパ105を押してラチェット102からロックを解除するときには、上記銃弾形留め具110を強い力で押し込む必要がある。そのため留め具110は容易に摩耗し易く、撥ね出し防止用ストッパ105も正常位置から変位してしまう。従って、撥ね出し防止効果が失われ、ユーザーは怪我をし易くなる。
【0004】
図2には、中国特許第101438877A号公報(特許文献2)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。この安全装置は、握り柄200、ワイヤ巻取りボビン201、撥ね出し防止用ワイヤ202、ゼンマイバネ203、接離盤204、接離付勢バネ205、はす歯206、ロープ207、留め具208、連動ロッド209、等々から構成されている。この安全装置における撥ね出し防止用ワイヤ202の上端は、傘軸の上端に設けた上ロクロに固定され、ワイヤの下端はワイヤ巻取りボビン201に取り付けられている。然しながら、この装置は、クラッチの配置などに非常に複雑な構造を有し、そのため組立て作業が困難で、時間と労力を消費するものである。そのため製造コストが増大する。更にまた、各部品のそれぞれの動きが部品の摩耗を生じさせ、撥ね出し防止効果を消失させ易くする。
【0005】
図3には、日本特許公開第2009−125581号公報(特許文献3)及び米国特許第2009/0133729A1号公報(特許文献4)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。この安全装置は、握り柄300、ロープ301、巻取りボビン302、傘軸303、等々から構成されている。この安全装置におけるロープ301の上端は、傘の握り柄300の上面に明けた孔を通過して傘軸303の側面に沿って上昇し、上ロクロに取り付けられると共に、ロープ301の下端は、巻取りボビン302に取り付けられる。然しながら、このような構造であると、ロープ同士が絡まり易いという問題がある。また、傘軸303の外面に露出したロープは摩耗し易く、耐用寿命が短くなる。従って、撥ね出し防止効果が失われ易いという問題もある。
【0006】
図4には、中国特許第101653309A号公報(特許文献5)及び中国特許第101438877A号公報(特許文献6)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。これらの特許は同一出願人によるものであるため、ラチェット401及び係止爪402がボビン201及びクラッチと入れ替わっている点を除き、ほぼ同様の構成を有している。この安全装置は、ラチェット401、係止爪402、制御子403、連動部材404、ロープ405、付勢バネ406、等々から構成されている。然しながら、これらの特許における連動部材404と係止爪402とは、いわゆる第3種梃子を形成している。そのため、係止爪402をラチェット401から解除するには、連動部材404に大きな力を加える必要がある。また、制御子403にはロープ405を挿通することのできる挿入孔を設ける必要がある。そのため製造工程数が増加すると共に、制御子403の強度は低下する。更にまた、制御子403の下端には開口部があるため、これと連動部材404の上端の開口部との間に摩擦と摩耗が生じ、耐用寿命は短くなり、撥ね出し防止効果が失われる。
【0007】
図5には、中国実用新案公開第201303659Y号公報(特許文献7)及び台灣特許第M358556号公報(特許文献8)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。この安全装置501は、握り柄500、回転盤502、撥ね出し停止用ロープ503、ゼンマイバネ504、制御片505、等々から構成されている。この安全装置501における撥ね出し停止用ロープ503の連結端部は回転盤502に連結され、巻付け端部は上ロクロ又は連結ユニットの一方と連結されている。然しながら、この発明はその構造が複雑であるため、組立てが困難である。従って、組立て作業は時間と労力を消費し、コスト高となる。更にまた、握り柄500の大きさも増大し、そのため傘のサイズも大きくなる。これは、持ち運びや操作の便利さを損なうものである。
【0008】
以上の如く、の先行技術はいずれも傘軸の撥ね出し防止効果を有するものではあるが、次のような問題点を有している。
1.これらの先行技術に係る装置は、撥ね出し防止装置のない従来品に比べて多くの部品を用いるため、それらを組み立てたときの握り柄のサイズを前と同じに保つためには、各部品のサイズを小さくしなければならない。そのため、各部品の強度が低下し、作動が不安定になり、故障を生じ易くなる。
2.これらの先行技術に係る装置は、より多くの部品を用いるため、製造コスト、例えば成形コストが増加する。
3.これらの先行技術に係る装置は、複雑な構造であるため、組立作業が困難になる。そのため、その組立には労力と時間の消費が増大する。
4.これらの先行技術に係る装置は、各部品間の相対的な動きが多くなるため、摩耗を生じ易く、これにより装置の耐用寿命が短くなり、また、故障を生じ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許公開第101642319A号公報
【特許文献2】中国特許第101438877A号公報
【特許文献3】特開平2009−125581号公報
【特許文献4】米国特許第2009/0133729A1号公報
【特許文献5】中国特許第101653309A号公報
【特許文献6】中国特許第101438877A号公報
【特許文献7】中国実用新案第201303659Y号公報
【特許文献8】台灣特許第M358556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主要な目的は、自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し、従来技術におけるの如き問題点を解決し得る新規な安全装置及びその自動開閉傘を提供することにある。
【0011】
本発明のもう1つの目的は、部品数が少なく、各部品間の連結状態、構造及び動きが単純化された安全装置を具備した自動開閉傘を提供することにある。本発明によれば、安全に開閉でき、握り柄内の制限されたスペースにおいて、各部品のサイズを相対的に大きくすることができ、それによってそれらの部品の強度を増大させた安全装置を具備する自動開閉傘を提供することができる。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、単一のユニットとして組み立てられるため、組立て、分解がし易く、製造コストや修理代金を低減し得る安全装置を提供することにある。
本発明のもう1つの目的は、作動の安定した故障の少ない安全装置を提供することにある。
本発明のもう1つの目的は、握り柄を細く短くでき、持ち運びや操作に便利で、安全な自動開閉傘を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の本発明の目的は、以下のように構成された安全装置により達成される。この安全装置は傘自動制御装置と一体的にユニット化されており傘の握り柄内の収容され、自動開閉傘の傘軸の押し縮め操作時の不時の撥ね出しを防止するものである。
自動開閉傘は、1本の外管と、外管内に順次入れ子状に挿入される少なくとも1本の中間管2−2及び最後の中間管2−2に入れ子状に挿入される1本の内管とから成る多段伸縮式傘軸と、外管の上端に取り付けられた上ロクロと、傘軸に沿ってスライド可能なよう設けられた下ロクロとを有し; これら上ロクロ及び下ロクロは開閉折り畳み自在に構成された傘骨アセンブリにより連結されているものである。
又、外管頂部には、上プーリー取付部材が設けられ、その部材には傘開閉用のワイヤが巻きかけられるプーリーと共に、傘の開閉を制御する芯管が外管と同軸に設けられる。この芯管は内管より細く、内管の中に挿入することができる。
【0014】
この安全装置は、公知の傘自動開閉制御装置に附設されるものであって、制動用ワイヤと、制動用ワイヤが巻き取られるリール付のラチェット装置(以下、単にラチェット装置と言う。)と、ラチェット制御レバー(以下単に制御レバーと言う。)とから構成され、その主要部は傘自動開閉制御装置の一部と共に単一のユニットとして組み立てられ、傘の握り柄内に収納される。
【0015】
この安全装置は、公知の傘開閉制御装置の押ボタン及び制動用ワイヤの一端に設けられ芯管や押ボタンその他の部材により制御される公知の銛形の制御子(以下、単に制御子と言う。)により制御され、傘開閉制御装置と連動する。
そして、当該傘開閉制御装置の作用を妨げることなく追随作動するが、傘の閉傘折畳み行程中の傘軸を押し縮める過程で、使用者が握り柄から手を離したとき等は、傘軸が瞬発的に伸長し傘が開くことを阻止し、そして使用者が再び傘軸を押し縮めようとするときは、通常通り傘軸の短縮を許容するものである。
【0016】
ラチェット装置と制御レバー及び制動用ワイヤの一部は、傘軸の下端、即ち内管の下端に制御管を介して設けられる制御装置本体に押ボタン装置などと共に取り付けられ、一つのユニットを構成しており、このユニットに握り柄が被せられ、制御装置本体と握り柄がネジ止めされ、傘の組立が完了するようになっている。
【0017】
ラチェット装置は、一つの円板の外周面に複数の一方向ラチェット歯を等間隔に形成して成るラチェット歯輪と、そのラチェット歯輪と同軸に一体成型されたゼンマイ室及び制動用ワイヤを巻き込むリールとから成る本体と、ゼンマイ室に収容されるゼンマイと、ラチェット装置を回転自在に支持する固定軸とから成る。
ゼンマイの外周側の端末は、ゼンマイ室の内壁に設けたスリットに挟み込まれ、内側の端末は装置を支持する固定軸に設けたスリットに挟み込まれ固定される。
傘開閉制御用ワイヤ(以下単に傘開閉用ワイヤと言う。)の一端は、傘軸の頂部に固定され、次いで下方へ導かれて下ロクロに設けた折り返しローラーで折り返されたのち上方へ導かれ、更に傘軸の頂部に設けたプーリー取付部材に支持されているプーリーを通過したのち、芯管内を通って下方へ導かれて、その下端には開傘制御用の制御子が取り付けられる。
【0018】
制動用ワイヤの下端部には結び目が形成され、その結び目に隣接する部分がラチェット装置のリールフランジに設けたスリットに挟み込まれて固定され、制動用ワイヤは弛みなくリールの円筒面に巻き付けられる。
制動用ワイヤの上端は傘軸の内部を通過したのち、その上端が外管の上部に形成したスロットとプーリー取付部材に形成したスロットに挟まれて固定される。
【0019】
制御レバーは、制御子により制御される操作アームとラチェットを制御するラチェット制御アームとから成る概ね逆L字形又は7の字形を有し、角隅部には支軸孔が設けられている。制御装置本体には、支軸が設けられており、制御レバーはその支軸穴により、支軸に揺動自在に取り付けられる。
【0020】
操作アームは傘軸の下端近くの位置で制御管9を横切るように水平方向に延びており、これにより制御子が制御レバーの操作アームの先端部操作面に接離し得るよう構成される。かかる構成によれば操作アームの作用点・支点間距離を長くでき、制御レバーを軽微な力で操作できるようにすることができる。
このように制御子が直接操作アームに接離する構成は、本発明の最大の特徴である。
先行技術においては、全て制御子と操作アームの間に、何らかの伝達機構が設けられており、そのため構造が複雑となり、組立てを困難にし、故障を生じ易くする。
而して、本願発明において、上記の如き直接接触が可能となった理由は、制御レバーの形と配置、及びラチェット歯輪の配置にある。
先ず、制御レバーの全体的な形について言えば、その特徴は、力点(制御子の作用点)と作用点(ラチェット歯輪との接触点)の間に支点(枢軸の中心)が存在するタイプの梃子(第一種の梃子)として構成されていること、更に操作アームが長く、制御管を横切って延びていることと、ラチェット制御アームも長く、ラチェット歯輪の中心より下方まで延びていること、即ち、作用点がラチェット歯輪の中心より低い位置にあることなどである。
即ち従来公知の全ての制御レバーでは、一端に支点が、他の一端に作用点があり、その中間に力点があるタイプの梃子が用いられており、そのため、設計上の制約から作用点がラチェット歯輪の中心より高い位置にくることになり、そのためラチェット制御アームの振幅を充分に取るため、支点・作用点間距離を短くしたり、作用点の作動振幅を大きくしたりする必要があるが、これらは制御レバーの作用に無理を生じさせるものである。
本願発明では、ラチェット装置の中心軸を、傘軸中心軸から、傘軸の一半径方向に、リールの制動用ワイヤの平均巻き径程度シフトし、リールに巻かれた制動用ワイヤが、傘軸中心に沿って引き出され、巻き取られるよう構成する。
このようにすれば、制動用ワイヤの移動が円滑、軽快になると共に、装置自体を極めて簡略な構造とすることができ、安価で故障が少なく、安全度の高い自動開閉傘を提供できるものである。
【0021】
傘軸が短縮されているときは、外管と共に芯管が降下し、制御子は芯管に押されて降下し、更に、銛の「あぐ(かかり)」に相当する部分が、内管に接続された制御管の側壁に設けたバネ片の作用で反対側に設けられた窓に引き掛けられており、これにより一方においては傘軸の伸長が阻止され、他の一方においては制御子は操作アームの操作面に当接し、これを押し下げているので、これにより制御レバーが支軸を中心に回動せしめられて、そのラチェット制御アームの下端はラチェット歯輪から外れた状態となり、ラチェットが開放されるので、安全装置用の制動用ワイヤがラチェット装置のリールに巻き取られている。
【0022】
押ボタンが押され、傘軸がその伸長状態に切り換えられるときには、傘軸は圧縮されていた開傘バネの弾性力により伸長する。然しながら、このとき制御子の「あぐ」は依然として制御管の窓に掛けられており、そのため、傘開閉用ワイヤにより下ろくろが上方に引き上げられ、傘が開かれる。
このときは、制御子の先端部は制御レバーの操作アームの操作面を押圧しているので、制御レバーはラチェット歯輪から離れ、ラチェットは回転自在となるので、ラチェット装置のリールに巻き込まれていた制動用ワイヤが、傘軸の伸長に応じて引き出される。
【0023】
再び押しボタンが押されると、制御子の「あぐ」は押ボタン装置の制御バーに押されて制御管の窓から外されるので、傘骨は傘骨アッセンブリに含まれるバネの弾性力によって収縮し、折り畳まれ、同時に下ろくろが下降し、制御子が上昇する。
このときは、傘軸は未だ収縮せず長いままであるので、使用者は自分の手で傘軸を圧縮する必要がある。
【0024】
このときは、制御レバーは制御子から開放され、バネの弾性力によりラチェット制御アームの下端は、ラチェット歯輪に押し当てられており、ラチェットの順方向へ回転を許容すると共に、その逆転を阻止するよう作用するようになっている。
このため,傘軸が押し縮められつつある過程では、ラチェット歯輪はゼンマイの弾性力により順方向、即ち図16などの中で時計方向に回転するので、制動ワイヤは傘軸の短縮に合わせてリールに巻き込まれる。
【0025】
このとき、使用者が傘から一方の手を離したりすると、傘軸が再び伸長しようとするので、制動ワイヤに強い張力が掛かり、リールを逆転させ、制動ワイヤを引き出そうとするが、このときは、制御レバーのラチェット制御アームがラチェット歯輪に押し当てられているので、これによりラチェット装置の逆転が防止され、傘軸の予期しない急な伸長、即ち撥ね出しが防止されるようになる。
上記の如く構成された安全装置及びそれを含む自動開閉傘によるときは、前述の本発明の目的が達成される。
【0026】
ラチェット装置は、握り柄の中心軸から握り柄の半径方向にリールの平均巻き半径程度、変位した位置に設けることが推奨される。
このように構成することにより、制動用ワイヤが傘軸の中心線に沿ってリールから引き出され、又は巻き込まれるようになり、更にラチェット制御アームを充分長く構成し得るようになる。
制御レバーは、その操作アームが制御管の内部を横断して延びるように、そしてラチェット制御アームがラチェット装置のラチェット歯輪に低い位置で接離する位置まで延び、ラチェットの回転を制御できるように構成する。
このため制御レバーは、逆L字形、7の字型、J字形、弓形、C字形、三日月形などの形状とされる。
【0027】
制御管の片側の外周面には、その上端から下端まで、1本の母線に沿って延びる縦溝を形成し、その縦溝内を制動用ワイヤが通過できるように構成することが推奨される。
ラチェット装置のゼンマイ室の外周壁には、ゼンマイの末端部を係止するためのスリットを形成し、また、ラチェット装置のリールの端面フランジには、制動用ワイヤの下端の結び目を保持し固定するスリットを形成することが推奨される。
芯管の下端にスリットを形成し、そのスリットを通じて制動用ワイヤを芯管の内部へ導入するよう構成することが望ましい。
【0028】
制動用ワイヤの上端は、芯管の下端に取り付けることが可能である。
このため、芯管の下端部の外周を僅かに削って小径部を設けると共に、下記の第1管材と、この第1管材を芯管の下端に取り付けるための第2管材を用意する。
第1管材は、芯管と同径の管材の一端部を芯管の小径部と同径に削って小径部を形成すると共に、その管材の外面に一母線に沿って制動用ワイヤを通すための溝を設け、更にその上端に制動用ワイヤの一端に設けた結び目を挟み留めるためのスリットを設けて成るものである。
【0029】
第2管材は、第1管材及び芯管の小径部と同径の内径を有する短い接続用の円管である。
制動用ワイヤは第1管材の側面の溝に納められ、その端部の結び目が第1管材の中に入るようにしてスリットに挟み込まれる。
この状態で、芯管と第1管材の小径部が第2管材の内部に嵌め込まれ、これにより、制動用ワイヤが芯管の下端部に取り付けられる。
制動用ワイヤの他の一方の端部は、ラチェット装置のリールのフランジに設けたスリットに挟み込まれ、制動用ワイヤはリールに巻き込まれる。
【0030】
制御レバーの操作アーム先端部に上向き突出部を形成し、その上向き突出部の上端面を、制御子に当接せしめられる操作面として利用するよう構成することが推奨される。
制御レバーに取り付けるバネは、ピボット止めされた二又バネであってもよいし、或いはまた、コイルスプリングであって、そのコイルスプリングの一端は制御装置本体へ取り付けられ、もう一方の端部はラチェット制御アームに設けたの掛け孔に取り付けられたものであってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、上記の如く構成されるので、下記のような作用効果を達成し得る。
1.本発明に係る安全装置は、基本的に、ラチェット装置と、制動用ワイヤと、制御レバーという少ない部品から構成されるので、握り柄内の制限されたスペースの条件下において、各部品のサイズを大きくすることができ、それによって各部品の強度を増大させ、耐用寿命を延ばすことができる。
【0032】
2.本発明に係る安全装置は、構成部品数が少ないので組立て、分解作業がし易く、更に又、ラチェット装置や制御レバーを傘開閉制御装置と共に1つのユニットとして構成することが可能であるので、組立て、分解を一層容易にでき、製造コストや修理代金を大幅に低減することができる。
【0033】
3.本発明に係る安全装置における制御レバーは、その操作アームとラチェット制御アームとの間に支軸が設けられ、この支軸を中心に揺動する第1種梃子として機能するので、力点(操作アーム上の制御子の作用点)に加える操作力が少なくて済み、部品の摩耗等を防止し得るので、故障が少なく、作動が安定していると共に、耐用寿命の長い安全装置を提供できる。
【0034】
4.本発明に係る安全装置におけるラチェット装置は、握り柄の中心軸から変位した位置に設けられるので、反対側の空いたスペースに制御レバーを配置でき、このため握り柄内のスペースを有効に利用でき、握り柄のサイズを細く短くでき、持ち運びや操作に便利な自動開閉傘を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書においては、傘軸の中心軸をZ軸、Z軸と直交する平面であって、ラチェット装置の中心軸を含む平面上で、ラチェット装置の中心線と平行で、原点Oに於いてZ軸と交わる直線をY軸、Y軸とZ軸の交点、即ち、原点Oで、これらの両軸に直交する直線をX軸とするものとし、又、傘の石突き側を上方、握り柄側を下方として記載するものとする。
【0036】
【図1】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置の一例(特許文献1)を示す握り柄部分の断面図である。
【図2】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置のもう1つの例(特許文献2)を示す握り柄部分の断面図である。
【図3】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置の更にもう1つの例(特許文献3,4)を示す握り柄部分の断面図である。
【図4】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置の更にもう1つの例(特許文献5,6)を示す握り柄部分の断面図である。
【図5】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置の更にもう1つの例(特許文献7,8)を示す握り柄部分の分解斜視図である。
【図6】本発明に係る安全装置を具備した自動開閉傘(傘布は図示されていない。傘骨は一部のみが示されている。)の閉傘時の状態を示す側面図である。
【図7】図6に示した傘の安全装置の要部(握り柄内蔵部分)の構成例を示す分解斜視図である。
【図8】図7に示した安全装置における、傘開閉用ワイヤ及び制動用ワイヤの引き回し経路の一例を示す説明図である。
【図9】図6に示した傘のZX面断面図である。
【図10】図9に示した傘の安全装置の要部(握り柄内蔵部分)の閉傘時における状態を示す拡大ZX面断面図である。
【図11】図10に示した傘の安全装置の要部の拡大YZ面断面図である。
【図12】図9に示した傘が開いた状態を示すZX面断面図である。
【図13】図12に示した傘の安全装置の要部の拡大ZX面断面図である。
【図14】図12に示した傘の安全装置の要部の拡大YZ面断面図である。
【図15】傘骨が閉じた状態を示すZX面断面図である。
【図16】図15に示した傘の安全装置の拡大ZX面断面図である。
【図17】図15に示した傘の傘軸を押し縮めるときの状態を示す拡大ZX面断面図である。
【図18】図17に示した実施例の握り柄部分の拡大YZ面断面図である。
【図19】本発明に係る傘の安全装置の制御レバーの上記とは別の実施例を示す斜視図である。
【図20】は、図19に示した制御レバーの傘軸短縮過程の作動状態を示す拡大ZX断面図である。
【図21】図19に示した制御レバーの傘軸短縮時(完全閉傘時)の作動状態を示すZX面断面図である。
【図22】本発明に係る傘の安全装置のロープを芯管の下端に固定した上記とは別の実施例を示すZX面断面図である。
【図23】図22に示したロープの固定用部品のアセンブリを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る自動開閉傘の安全装置の構成について具体的に説明する。
本発明に係る自動開閉傘の安全装置は、3段折畳み傘のような折畳み傘に適用されるが、必ずしも3段のものに限定されるものではなく、4段又はそれ以上の折畳傘にも適用できるものである。ただし、本明細書で示す実施例においては、専ら3段折畳み傘を例にとって説明する。
又、添付図面においては、傘骨機構を傘軸の左側に一組しか描かず、他の傘骨機構については省略してある。
【0038】
又、本明細書において、「ワイヤ」というときは、金属製ワイヤだけでなく、合成繊維の細い紐やロープ、糸、合成樹脂製の単線等をも包含するものである。
図6乃至図11に示すように、自動開閉傘100は、一般的には、石突側の外管2−1及び外管2−1の下方から順次入れ子状に挿入された中間管2−2と、内管2−3とから成る傘軸2と、外管2−1の上端に固定された上ロクロ601と、傘軸2上に摺動可能なように装着された下ロクロ602と、開閉折り畳み自在に構成された傘骨アセンブリ603と、公知の傘の開閉制御装置とから構成されている。
そして、上ロクロ601と下ロクロ602とは、傘骨アセンブリ603を介して連結されており、下ろくろの上下に合わせて、傘が開閉されるようになっている。
【0039】
本発明に係る安全装置を具備する傘においては、上プーリー取付部材4(図8,図9)が、外管2−1の上端に取り付けられており、上プーリー取付部材4には芯管5が固着され、更に、内管2−3は中間管2−2を介して外管2−1の内部に入れ子状にかつ摺動自在に収容されており、開傘用のコイルスプリング604は、傘軸2内部に収容されている。
傘開閉用ワイヤ6は、図8に示すように、その一端が上プーリー取付部材4に固定され、他の一端は、傘軸2の外周面に沿って引き降ろされ、下ロクロ602に設けた折り返しローラー605において折り返され、再度上方向へ引き上げられて上プーリー取付部材4内に設けたプーリー4−1に巻き掛けられ、傘軸2の内面に沿って引き降ろされ、その端部には制御子7が取り付けられている。
傘軸2の下端には、制御管9を介して、傘開閉制御装置の本体10が取り付けられ、この制御装置本体10には安全装置と傘開閉制御装置の主要構成要素が組み付けられ、これにより傘制御装置ユニット100が構成される。
【0040】
握り柄8は、傘軸2の下端に取り付けられる制御装置ユニット100に被せられネジ110によりネジ留めされ、これにより安全な自動開閉傘1が完成する。
制御管9の上端部は傘軸2の下端部に取り付けられ、制御レバー41の操作アーム41a、押ボタン装置80の押ボタン81で制御される制御レバー82を受け入れ、且つ制御子7の「あぐ」を掛け止めるために用いられる窓9a及びスロット9bが形成され(図7,図10)、制御管9の内面には制御子7を窓9a側に導くため、バネ片50が取り付けられている。
【0041】
制御子7は、芯管5の下端に押され、制御管9内に導かれたときは(図7,図11)、バネ片50が制御子7の先端を窓9aに導くので、その先端の「あぐ」が窓9aの下縁に掛け止められる。
【0042】
一方、制御管9の外周面には1母線の全長に亘って、1本の縦溝91が形成され(図7,図11)ており、制動用ワイヤ30は芯管5の中を通って、制御管9の外部に導かれるが、芯管5の管壁に設けた孔を通って縦溝91内に導かれ、縦溝91内を通って、ラチェット装置200のリール20cに巻き付いている。
【0043】
握り柄8には、自動開閉傘1の開閉を制御するための押しボタン装置80が設けられている。これらの部品の配置は一般的な自動開閉傘と略同様であるので、詳細な説明は省略するが、押ボタン装置80は、押ボタン部81aと、基板部81bとからなる押ボタン81、制御バー82、支軸83及びバネ84から成るものである。
【0044】
傘が折り畳まれている状態で押ボタン81が押されると、傘軸2が伸長し傘が開かれ、この状態で再度押しボタン81が押されると傘骨アッセンブリ603及び傘布が折り畳まれるが、傘軸2は伸長したままである。
それで、使用者が手で傘軸2を押し縮めて、最短状態にロックされるまで短縮する。
【0045】
傘軸の撥ね出し防止のための構成要素は、全て内管2−3の下端に取り付けられた制御装置本体10に取り付けられており、これにより安全装置付きの傘制御装置ユニット100が構成されるようになっている。
この制御装置ユニット100には、全ての所要部品が取り付けられた状態で、底付円筒状の握り柄8が被せられ、握り柄8は止ネジ110でシッカリと取り付けられる。
【0046】
このため、組立の最終段階及び分解の第一段階で、安全装置は傘開閉制御装置と共に一つの制御装置ユニット100として扱うことができ、これに握り柄8を着脱することにより最終組立及び分解が出来、組立のみならず、点検、修理も極めて容易となり、製造コストが大幅に節減できることになる。
【0047】
而して、制御装置本体10の形状は特に限定されないが例えば図7に示されているように、底付円筒状又は樽型の握り柄8の内部にしっくりと納まるような外形形状を有する。
即ち、上端部10aは握り柄8の開口を閉塞する蓋となるよう中心に開口を有するフランジ構造とされる。このフランジの外経は、握り柄8の内径に合わせても良く、外経に合わせても良い。中心に起立する短い円筒部分は、強度の補強と、デザイン上の観点から設けるものであり必ずしも必須のものではない。
【0048】
下端部10bは、握り柄8の底部にしっくりと嵌められる形状となっている。図では円盤状として示されているが、これは、例えば握り柄8の底部の一直径方向の二箇所に位置するの円弧部分のみで握り柄8の内壁に接触させれば充分である。
上端部10aと下端部10bの間の中間部は、できるだけ薄肉の成型品として構成される。
図7中の左前側の一半部には、押ボタン室10c、ラチェット室10d、ラチェット軸支持溝10e及び制御管結合ピン孔10fが形成され、他の一半部、即ち、図7中の右後側の一半部には、図7からは明らかでないが、制御レバー室10g、制御レバー孔10h、押ボタン押戻装置室10i、握り柄取付ネジ孔10jが設けられている。
【0049】
而して、押ボタン室10c、ラチェット室10d、制御レバー室10g及び押ボタン押戻装置室10iは、図10等に示されているように、制御装置本体10の内部で連通しており、それらの室にそれぞれ収容されている押ボタン装置80、クラッチ装置20、ラチェット制御装置40及び押ボタン装置85が相互に連携して作動できるようになっている。
【0050】
又、図7では、この安全装置本体10は、円柱状部材を機械加工したような形状に表示されているが、これは図を簡略にするための便宜上のものであり、実際には薄肉のプラスチック成型品として製造されるものである。
【0051】
以下順次、各部分について説明する。
押ボタン室10cには、押ボタン装置80が収容される。
押ボタン装置80は周知のものと同様で、押ボタン部81aと基板部81bとから成る押ボタン81と、制御レバー82、制御レバー82を支持するため設けられる支軸83及びバネ84から成り、押ボタン部材81は、図9などに示されるように、その押ボタン部81aが、握り柄8の押ボタン孔8bから外方に突出するように、且つ握り柄8の半径方向に進退自在に押ボタン室10c内部に挿入され、バネ84、押ボタン押戻金具86及び復元バネ87により、押ボタン部81aが外方に突出するような弾性力を受けるものである。而して、この押ボタン81は、制御バー82を介して、制御子7を制御する。
【0052】
望ましい実施例においてこのラチェット装置200は、内部にゼンマイ22を収納する円筒状のゼンマイ室20aと、ゼンマイ室20aの底板と同軸の円筒の外周面に等間隔に複数のラチェット歯を配置して成るラチェット歯輪20bと、これらと同軸の鍔付円筒状のリール20cとから成るラチェット装置本体20と、ゼンマイ室20cに収納されるゼンマイ22とから成るが、ラチェット装置200の構成は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0053】
このラチェット装置200は、その中心孔に固定支持軸25を挿通した状態で、ラチェット室10dに挿入され、固定支持軸25の両端部をラチェット室10dの内壁面に設けた軸支時溝10eに嵌め込むことにより、ラチェット室10d内に回転自在に装着される。
ラチェット装置200のラチェット装置本体20は、ゼンマイ22の弾性によってリール20cに制動用ワイヤ30を巻き取る方向へ向かって弾性力を受けるようになっている。
【0054】
このため、ゼンマイ室20aの側壁円筒面には、ゼンマイ22の外側の末端部22aを係止するためのスリット20dを形成する。また、ゼンマイ22の中心側端末は、固定支持軸25の一端に設けたスリット25aに挿入され、固定される。更に、鍔付円筒状のリール20cの鍔には制動用ワイヤ30の下端の結び目31を保持し固定するためのスリット20eを形成する。
制動用ワイヤ30の下端は上記の如く固定され、かつ、制動用ワイヤ30はゼンマイ22の作用によるラチェット装置200の順方向への回転によりに巻き取られるようになっている。
【0055】
他方、制動用ワイヤ30の上端は、制御管9の側壁に形成した縦溝91内を通過し(図7)、芯管5の内部に入り。傘軸2内を上昇し、上プーリー取付部材4と外管2−1により固定される(図8,図9)。
更に詳しく説明すると、上プーリー取付部材4には、プーリー4−1を装着するための窓が設けられ、その窓の下端には制動用ワイヤ30を通すためのスリット4aが設けられている。
一方、外管2−1の上端部には上記上プーリー取付部材4の窓に対応する幅広いスリットが設けられ、そのスリットの下端には、上記スリット4aと協働して、制動用ワイヤ30を通すスリット2−1aが設けられる。
これらのスリット4a及びスリット2−1aは、上プーリー取付部材4が外管2−1の頂部からその内部に挿入され、取り付けられたとき、上プーリー取付部材4の窓と外管2−1のスリットが相対応し、それらのスリット4a及びスリット2−1aは、合致して制動用ワイヤ30の通路となる孔を形成し、その通路は制動用ワイヤ30の結び目32を外側に出した状態で、制動用ワイヤ30を通し、これにより制動用ワイヤ30の一端を固定する。
制動用ワイヤ30の上端のこのような固定形態は、従来技術とは異なるものであり、このような方法によれば、組立作業が極めて容易となり、組立コストが低減できるものである。
【0056】
組立作業において、制動用ワイヤ30と、傘開閉用ワイヤ6とは、いずれも現在市販の組立装置又は工具を用いて組み立てることができる。
制動用ワイヤ30の上端の引き回し、取り付け位置及び取り付け方法に関する構成は、本発明の特徴の一つとするところである。
【0057】
ラチェット装置本体20の配置位置について述べると、ラチェット装置本体20の中心軸方向の位置については、図11に示す如く、制御管9の外壁面に沿って引き降ろされる制動用ワイヤ30の延長線上にリール20cの巻き領域中心が位置するように、そして図10に示すように握り柄8の半径方向の位置については、ラチェット装置本体20の中心が傘軸中心線から握り柄半径方向に、リール20cに巻き取られる制動用ワイヤ30の平均巻き円半径に略等しい距離だけシフトした位置に設けることが望ましい。
【0058】
要するに、リール20cに巻き込まれる制動用ワイヤ30が、なるべく曲折することなくリール20cに巻き込まれるようにすることである。
かかる構成によれば、制動用ワイヤ30の移動に対する摩擦抵抗を最小限とすることができ、制動用ワイヤ30の摩擦による損耗を抑えることが出来る。
【0059】
芯管5の下端にはスリット5aが形成され(図8)、スリット5aを通じて制動用ワイヤ30の上端を芯管5の内部へ導入するようにすることによって、制動用ワイヤ30が制御子7の上端部に接触して、制御子7や制動用ワイヤ30が摩耗するのを回避するようになっている。
【0060】
押ボタン室10cとラチェット室10dの間に設けられたピン孔10fは、この制御装置本体10を制御管9に取り付けるためピンを挿通するため設けたもので、このピン孔10fと制御管9に設けたピン孔9fとに連結ピン92を挿通し、制御装置本体10を制御管9に結合するものである
【0061】
制御レバー室10gには、制御レバー装置40が取り付けられる。
制御レバー装置40は、図7及び10に示すように、制御レバー41と、支軸43と、トング形のバネ44とから成り、制御レバー41は、互いに略直角方向に延びる2本のアーム、即ち、操作アーム41aとラチェット制御アーム41bとから成り、その角隅部には支軸43を通すための軸穴41cを有し、制御装置本体10の中心軸から離れた位置に設けた支軸43によって揺動自在に取り付けられる。
【0062】
制御レバー41は、例えば逆L字型、7の字型等に形成され(図7,図9,図10)、支軸43により揺動自在に支持され、支軸43に取り付けられたバネ44の弾性によって図中時計方向に回転させる方向に作用する弾性力が付与されるようになっており、これにより操作アーム41aに他の外力が作用していないときは、ラチェット制御アーム41bの先端が、ラチェット装置200のラチェット歯輪20bに接触し、ラチェット機能が発揮できるようになっている。
【0063】
然しながら、操作アーム41aの先端にこれを押し上げる方向に外力が加えられると、ラチェット制御アーム41bの先端はラチェット歯輪20bから引き離され、ラチェットは開放され、回転自在となる。
【0064】
この操作アーム41aは、略制御装置本体10を横切る方向に伸び、その自由端部が制御管9の相対向する管壁に設けられた一対のスリットの一方から制御管9の内部に差し込まれ、制御管9の内部を横切って対面に設けられた他の一方のスリットに達するよう配置され、ラチェット制御アーム41bは、略制御装置本体10の長手方向に延び、その自由端が、ラチェット装置200の中心軸より下方でラチェット歯輪20bに接離し得るよう配置されている。
【0065】
又、操作アーム41aの先端部は制御管9の下端近くの位置で、略水平方向に制御管9内に挿入され、閉傘時傘軸2を押し縮める過程では、図16に示すように制御子7は上方に引き上げられており、これによって、ラチェットが機能するので、制動用ワイヤ30が弛むとラチェット装置200のリール20cに巻き込まれるようになっている。
即ち、制御レバー41のラチェット制御アーム41bの下端は、ラチェット装置200のラチェット歯輪20bに当接し、ラチェット作用を果たすようになっている。
図16及び図20に示されているように、ラチェット制御アーム41bの下端は、バネ44又はコイルスプリング45の弾性力により、ラチェット歯輪20bの歯列に押し当てられており、ラチェット歯輪20bが時計方向に回転するときは、ラチェットの歯はラチェット制御アーム41bを押し退けて回転できるが、反対に反時計方向に回転しようとすると、ラチェットの歯はラチェット制御アーム41bの先端で回転を阻止されるのでラチェット装置200は回転できないものである。
そしてここで用いられるバネは、上記の如く支軸43に留められたトング形のバネ44でも良いが図20に示された引っ張りコイルスプリング45とすることが望ましい。このコイルスプリング45の一端は制御装置本体10に取り付けられ、他の一端はラチェット制御アーム41bの略中央に設けた留め孔41fに掛け止められる。
このコイルスプリング45はバネ44に比して柔軟であり故障が少なく、組立ても容易である。
【0066】
一方、使用者が傘軸2を圧縮しつつある間は、制動用ワイヤ30が緩むので、そのワイヤはゼンマイ22の弾性力でリール20cに巻き込まれ、傘軸2は短縮されるが、使用者が傘軸2を開放するときは、傘軸2は開傘用スプリング604の弾性力により伸長しようとするので、制動用ワイヤ30にはリール20cから引き出す方向に力が掛かるが、このときラチェット歯輪20bが回転を阻止されるので、制動用ワイヤ30は引き出されず、従って傘軸2の伸長も阻止されるものである。
なお、制御レバー41の形状は、上記の逆L字形のものに限定されるものでなく、一方の腕が制御子7により制御され、他の一方の腕がラチェット装置200を制御できるような形状及び配置であれば良く、その形状は例えば三日月形などとすることができるものである。
【0067】
図9乃至図11には、自動開閉傘1を閉じた状態が示されている。この場合、制御子7は制御管9内にあり、その先端部71は窓9aに嵌まり込んでロックされている。このとき、芯管5の下端は制御子7の上端に当接し、制御子7の先端部71がラチェット制御アーム41aの操作面41dに当接することにより、制御レバー41のラチェット制御アーム41bの下端を支軸43を中心に反時計方向に回動させ、制御レバー41の下端がラチェット装置200のラチェット歯輪20bと噛み合わないようになっており、制動用ワイヤ30はラチェット装置200のリール20cに巻き取られている
【0068】
次に、図12乃至図14には、押しボタン81を押すことによって自動開閉傘1が開いたときの状態が示されている。傘が開くとき、開傘用スプリング604の伸長力によって、傘軸2は上方向へ伸びるよう駆動される。
この場合、外管2−1と、芯管5と、上ロクロ601と、上プーリー取付部材4とが同時に一体となって上方向へ移動する。
更に、傘開閉用ワイヤ6が引かれることにより下ロクロ602が上ロクロ601へ向けて近づくよう移動し、このため傘骨アセンブリ603が展開される。このとき、上プーリー取付部材4の取り付けられている制動用ワイヤ30の上端は上方向へ移動せしめられ、制動用ワイヤ30はラチェット装置20のリール20bから引き出される。
【0069】
然しながら、この状態においては、制御子7は依然として制御管9の窓9aにロックされたままであり(傘開閉用ワイヤ6が引き伸ばされてピンと張った状態)、制御レバー41のラチェット制御アーム41bの下端はラチェット装置20のラチェット歯輪20bと噛み合っていない。
【0070】
次に、図15及び図16には、図12に示したような開傘状態において、押しボタン81を再度押し、傘軸2は伸びたままの状態で、傘骨603を傘軸2の上端近くへ折り畳んで引き寄せた状態が示されている。
このとき、制御子7は、押しボタン81により制御バー82を介して押されて動き、制御管9の窓9aから外れて傘開閉用ワイヤ6によって上方へ引き上げられ、これにより制御レバー41の操作面41bから離れる。
これにより、制御レバー41はバネ44の弾性復帰力によって回動し、そのラチェット制御アーム41bの下端はラチェット装置200のラチェット歯輪20bに係合してラチェット機能を果たせるようになる。
【0071】
図17及び図18には、伸びた状態の傘軸2が押し縮められた状態に戻されるときの中間状態が示されている。
傘軸2は次第に短くされ、芯管5が制御子7を同時に下方へ移動させる。
傘軸2が押し縮められつつある間、制御レバー41のラチェット制御アーム41bがラチェット歯輪20bに接触していても、制動用ワイヤ30が弛緩するので、ゼンマイ22の弾性によって、ラチェット装置200は順方向へ回転し、これにより制動用ワイヤ30がラチェット装置200のリール20cにしっかりと巻き込まれる。
【0072】
然しながら、傘軸2を押し縮める外力が失われると、開傘用スプリング604の伸長力が傘軸2を伸長する方向に作用するので、制動用ワイヤ30が強く上方に引かれ、ラチェットには、これを逆方向、即ち、図中反時計方向に回転させるようにトルクが掛かる。
然しこのときは、ラチェット制御装置40のラチェット制御アーム41bが、ラチェット歯輪20bに当接しているので、ラチェットの逆回転は阻止され、制動用ワイヤ30は引き戻されず、このため傘軸2の伸長が阻止され、このため傘1が開くことがない。
このため、傘1の使用者が押ボタン81bを押した後の閉傘操作中握り柄8から手を離し、傘軸2を開放しても、不用意に傘軸2が伸び、傘1が開くことはなく、これにより、確実な開傘防止効果が得られ、傘1は安全に開閉される。
【0073】
なお、本発明に係る安全装置におけるラチェット装置200は、図示する如く、握り柄8の中心軸から変位した位置に設けることにより、反対側の空いたスペースに制御レバー41等を配置できるので、握り柄8内のスペースを有効に利用でき、握り柄のサイズを細く短くすることが可能になる。
【0074】
図19乃至図21に示された制御レバー41は、図6乃至図18に示された制御レバー41とは異なった形状をしており、操作アーム41aの先端に上方に延びる突起41eを有する。
このような形状であると、制御子7の先端が当接する作用点41eと、支軸43の中心との距離が、前述のものより長くなるので、制御レバー41の作用が一層好適となるものである。
【0075】
制御レバー41の取付位置は特に限定されず、制御レバー41の形状に応じ図6乃至図18に示したような支軸43によって適宜の箇所に取り付けることができる。
また、バネ44は図19乃至図21に示すような伸縮式スプリング(コイルバネ)などに代えることができ、その場合、スプリングの一端は制御装置本体10へ取り付けられ、もう一方の端部は制御レバー41の支軸43とラチェット制御アーム41bの下端部との間の掛け孔41fに取り付けるようにする。
【0076】
図22には、これまでの実施例のものと類似の構造を有する実施例が示されている。この実施例とこれまでの実施例とが相違する点は、制動用ワイヤ30の上端が制御管9の縦溝91を通過したのち芯管5の下端に固定されている点である。制動用ワイヤ30の下端はこれまでの実施例と同様に、ゼンマイのような弾性部材の作用によりラチェット装置200のリールに巻き取られるようになっている。
【0077】
図23には、図22の実施例において、芯管5の下端に制動用ワイヤ30の上端を簡便に固定するための固定用部品アセンブリ60の一実施例が示されている。
この固定用部品アセンブリ60は、少なくとも1つの管材61を有し、当該管材61の上端にはスリット611が形成され、芯管5の下端に組み付けられる前に制動用ワイヤ30の上端に形成した結び目32をこのスリット611に取り付けるようになっている。
【0078】
図23に示すように、この固定用部品アセンブリ60は第1管材61と、第2管材62とから成る。
第1管材61には、その上端にスリット611と共に、小径部612が形成され、同様に芯管5の下端部にも小径部613が形成される。
組立時には、制動用ワイヤ30の上端の結び目32を第1管材61に沿って引き上げ、第1管材61の上端のスリット611に嵌め入れる。然るのち、第1管材61の小径部612を第2管材62の下端に嵌め入れることにより、制動用ワイヤ30の上端の結び目32を第1管材61と第2管材62の間に堅固に固定する。
第2管材62の上端には、芯管5の下端に形成した小径部613を嵌め入れて組み付ける。
【0079】
本発明の上記以外の利点や変更実施例については、当業者であれば容易に想到し得るであろう。
従って、本発明の技術的範囲は、ここに示し、かつ、説明した具体的な形態及び代表的な装置例に限定されるものではなく、ここに添付の特許請求の範囲によって規定される発明の一般的内容の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲内における各種変更実施例及びこれと同等のものをすべて包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る自動開閉傘の安全装置は、上述の如く構成されるので、下記のような利点、即ち、
(1)従来品に比べて少ない部品から構成されるので、傘の自動開閉装置と共に一つのユニットとして組立てられ、特に小型化された握り柄内の制限されたスペースに収容できるので、握り柄のサイズに比して各部品のサイズを総体的に大きくすることができ、それによって各部品の強度を増大させ、耐用寿命を延ばすことができる。
(2)構成部品数が少ないので組立て、分解がし易く、また、ラチェット装置や制御レバーを1つのユニットとして構成することが可能であるので、組立て、分解を一層容易にでき、製造コストや修理代金を大幅に低減することができる、
(3)制御レバーは、その操作アームとラチェット制御アームとの中間に支軸が設けられ、この支軸を中心に揺動する第1種梃子として機能するので、力点(操作アーム)に加える操作力が少なくて済み、部品の摩耗等を防止し得るので、故障が少なく、作動が安定し、耐用寿命を延ばすことができる、
(4)ラチェット装置が、握り柄の中心軸から変位した位置に設けられるので、反対側の空いたスペースに制御レバー等を配置でき、握り柄内のスペースを有効に利用でき、握り柄のサイズを細く短くでき、持ち運びや操作に便利な自動開閉傘を提供できる、
等々、多くの優れた利点を有するものであるから、これを工業的規模で実施すれば、産業上多大の利益が得られる。
【符号の説明】
【0081】
1 自動開閉傘
100 制御装置ユニット
10 制御装置本体
10a 上端部
10b 下端部
10c 押ボタン室
10d ラチェット室
10e ラチェット軸支持溝
10f 制御管結合ピン孔
10g 制御レバー室
10h 制御レバー枢軸孔
10i 押ボタン復元装置室
10j 握り柄取付ネジ孔
2 傘軸
2−1 外管
2−1a スリット
2−2 中間管
2−3 内管
200 ラチェット装置
20 ラチェット装置本体
20a ゼンマイ室
20b ラチェット歯輪
20c リール
20d スリット
20e スリット
22 ゼンマイ
22a 末端部
25 支持軸
25a スロット
30 制動用ワイヤ
31 結び目
32 結び目
4 上プーリー取付部材
4a スリット
4−1 上プーリー
40 制御レバー装置
41 ラチェット制御制御レバー、制御レバー
41a 操作アーム
41b ラチェット制御アーム
41c 軸孔
41d 操作面
41e 突起
41f 掛け孔
43 支軸
44 バネ
45 コイルスプリング
5 芯管
5a スリット
50 バネ片
6 傘開閉用ワイヤ
60 固定用部品アセンブリ
601 上ロクロ
602 下ロクロ
603 傘骨アセンブリ
604 開傘用コイルスプリング
605 折り返しローラー
61 第1管材
611 スリット
612 小径部
613 小径部
62 第2管材
7 銛状の制御子、制御子
71 先端部
8 握り柄
8a 開口
8b 押ボタン孔
80 押ボタン装置
81 押ボタン
81a 押ボタン部
81b 基板部
82 制御バー
83 支軸
84 バネ
85 押ボタン復元装置
86 押ボタン押戻金具
87 押ボタン復元バネ
9 制御管
9a 窓
9b スロット
9f 連結ピン孔
91 縦溝
92 連結ピン
110 ネジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動開閉傘の安全装置に関し、特に、傘軸を押し縮める際にその加圧力が突然失われることによって生じる傘軸の撥ね出しを効果的に防止する安全装置及びその安全装置を具備した自動開閉傘に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている自動開閉傘の傘軸は、握り柄部分に設けた押しボタンを押すことによって傘が開閉するようになっている。
傘を畳むときユーザーは押ボタンを押して傘骨を折り畳んだ後、手で傘軸を圧縮し、傘軸を予め設定されたロック位置まで押し縮める必要があり、そうすることによって、傘を完全に閉じた状態にすることができる。
傘軸を圧縮する過程において、使用者が不用意に傘軸を開放したりすると、傘軸が撥ね戻るようにして伸び、使用者自身や周りにいる人々を傷つけることがある。
以下に、自動開閉傘のそのような撥ね出しを防止する安全装置に関する先行技術について説明する。
【0003】
図1には、中国特許第101642319A号公報(特許文献1)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。この安全装置は、傘軸の撥ね出し防止用ロープ101、ラチェット102、ラチェット基板103、ゼンマイバネ104、撥ね出し防止ストッパ105、復帰バネ106、留め具案内管107、主体部108、押圧片109、銃弾形の留め具110、等々から構成されている。この安全装置における傘軸の撥ね出し防止用ロープ101の上端はプーリー取付座に固定され、また、当該ロープ101の下端は傘軸の内管及び銃弾形の留め具110の内部を通過して、ラチェット102に巻き付けられている。然しながら、上記ロープ101を留め具110の内部に挿通するという構成は、製造工程数を増加させると共に、留め具110の強度を低下させる。更にまた、上記留め具110と撥ね出し防止用ストッパ105は、いわゆる第3種梃子(てこ)を構成している。これは、支点が梃子の一端に存在し、梃子の力点は支点と作用点との間に位置する梃子のことを意味している。そのため、撥ね出し防止用ストッパ105を押してラチェット102からロックを解除するときには、上記銃弾形留め具110を強い力で押し込む必要がある。そのため留め具110は容易に摩耗し易く、撥ね出し防止用ストッパ105も正常位置から変位してしまう。従って、撥ね出し防止効果が失われ、ユーザーは怪我をし易くなる。
【0004】
図2には、中国特許第101438877A号公報(特許文献2)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。この安全装置は、握り柄200、ワイヤ巻取りボビン201、撥ね出し防止用ワイヤ202、ゼンマイバネ203、接離盤204、接離付勢バネ205、はす歯206、ロープ207、留め具208、連動ロッド209、等々から構成されている。この安全装置における撥ね出し防止用ワイヤ202の上端は、傘軸の上端に設けた上ロクロに固定され、ワイヤの下端はワイヤ巻取りボビン201に取り付けられている。然しながら、この装置は、クラッチの配置などに非常に複雑な構造を有し、そのため組立て作業が困難で、時間と労力を消費するものである。そのため製造コストが増大する。更にまた、各部品のそれぞれの動きが部品の摩耗を生じさせ、撥ね出し防止効果を消失させ易くする。
【0005】
図3には、日本特許公開第2009−125581号公報(特許文献3)及び米国特許第2009/0133729A1号公報(特許文献4)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。この安全装置は、握り柄300、ロープ301、巻取りボビン302、傘軸303、等々から構成されている。この安全装置におけるロープ301の上端は、傘の握り柄300の上面に明けた孔を通過して傘軸303の側面に沿って上昇し、上ロクロに取り付けられると共に、ロープ301の下端は、巻取りボビン302に取り付けられる。然しながら、このような構造であると、ロープ同士が絡まり易いという問題がある。また、傘軸303の外面に露出したロープは摩耗し易く、耐用寿命が短くなる。従って、撥ね出し防止効果が失われ易いという問題もある。
【0006】
図4には、中国特許第101653309A号公報(特許文献5)及び中国特許第101438877A号公報(特許文献6)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。これらの特許は同一出願人によるものであるため、ラチェット401及び係止爪402がボビン201及びクラッチと入れ替わっている点を除き、ほぼ同様の構成を有している。この安全装置は、ラチェット401、係止爪402、制御子403、連動部材404、ロープ405、付勢バネ406、等々から構成されている。然しながら、これらの特許における連動部材404と係止爪402とは、いわゆる第3種梃子を形成している。そのため、係止爪402をラチェット401から解除するには、連動部材404に大きな力を加える必要がある。また、制御子403にはロープ405を挿通することのできる挿入孔を設ける必要がある。そのため製造工程数が増加すると共に、制御子403の強度は低下する。更にまた、制御子403の下端には開口部があるため、これと連動部材404の上端の開口部との間に摩擦と摩耗が生じ、耐用寿命は短くなり、撥ね出し防止効果が失われる。
【0007】
図5には、中国実用新案公開第201303659Y号公報(特許文献7)及び台灣特許第M358556号公報(特許文献8)において開示された自動開閉傘の安全装置が示されている。この安全装置501は、握り柄500、回転盤502、撥ね出し停止用ロープ503、ゼンマイバネ504、制御片505、等々から構成されている。この安全装置501における撥ね出し停止用ロープ503の連結端部は回転盤502に連結され、巻付け端部は上ロクロ又は連結ユニットの一方と連結されている。然しながら、この発明はその構造が複雑であるため、組立てが困難である。従って、組立て作業は時間と労力を消費し、コスト高となる。更にまた、握り柄500の大きさも増大し、そのため傘のサイズも大きくなる。これは、持ち運びや操作の便利さを損なうものである。
【0008】
以上の如く、の先行技術はいずれも傘軸の撥ね出し防止効果を有するものではあるが、次のような問題点を有している。
1.これらの先行技術に係る装置は、撥ね出し防止装置のない従来品に比べて多くの部品を用いるため、それらを組み立てたときの握り柄のサイズを前と同じに保つためには、各部品のサイズを小さくしなければならない。そのため、各部品の強度が低下し、作動が不安定になり、故障を生じ易くなる。
2.これらの先行技術に係る装置は、より多くの部品を用いるため、製造コスト、例えば成形コストが増加する。
3.これらの先行技術に係る装置は、複雑な構造であるため、組立作業が困難になる。そのため、その組立には労力と時間の消費が増大する。
4.これらの先行技術に係る装置は、各部品間の相対的な動きが多くなるため、摩耗を生じ易く、これにより装置の耐用寿命が短くなり、また、故障を生じ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許公開第101642319A号公報
【特許文献2】中国特許第101438877A号公報
【特許文献3】特開平2009−125581号公報
【特許文献4】米国特許第2009/0133729A1号公報
【特許文献5】中国特許第101653309A号公報
【特許文献6】中国特許第101438877A号公報
【特許文献7】中国実用新案第201303659Y号公報
【特許文献8】台灣特許第M358556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主要な目的は、自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し、従来技術におけるの如き問題点を解決し得る新規な安全装置及びその自動開閉傘を提供することにある。
【0011】
本発明のもう1つの目的は、部品数が少なく、各部品間の連結状態、構造及び動きが単純化された安全装置を具備した自動開閉傘を提供することにある。本発明によれば、安全に開閉でき、握り柄内の制限されたスペースにおいて、各部品のサイズを相対的に大きくすることができ、それによってそれらの部品の強度を増大させた安全装置を具備する自動開閉傘を提供することができる。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、単一のユニットとして組み立てられるため、組立て、分解がし易く、製造コストや修理代金を低減し得る安全装置を提供することにある。
本発明のもう1つの目的は、作動の安定した故障の少ない安全装置を提供することにある。
本発明のもう1つの目的は、握り柄を細く短くでき、持ち運びや操作に便利で、安全な自動開閉傘を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の本発明の目的は、以下のように構成された安全装置により達成される。この安全装置は傘自動制御装置と一体的にユニット化されており傘の握り柄内の収容され、自動開閉傘の傘軸の押し縮め操作時の不時の撥ね出しを防止するものである。
自動開閉傘は、1本の外管と、外管内に順次入れ子状に挿入される少なくとも1本の中間管2−2及び最後の中間管2−2に入れ子状に挿入される1本の内管とから成る多段伸縮式傘軸と、外管の上端に取り付けられた上ロクロと、傘軸に沿ってスライド可能なよう設けられた下ロクロとを有し; これら上ロクロ及び下ロクロは開閉折り畳み自在に構成された傘骨アセンブリにより連結されているものである。
又、外管頂部には、上プーリー取付部材が設けられ、その部材には傘開閉用のワイヤが巻きかけられるプーリーと共に、傘の開閉を制御する芯管が外管と同軸に設けられる。この芯管は内管より細く、内管の中に挿入することができる。
【0014】
この安全装置は、公知の傘自動開閉制御装置に附設されるものであって、制動用ワイヤと、制動用ワイヤが巻き取られるリール付のラチェット装置(以下、単にラチェット装置と言う。)と、ラチェット制御レバー(以下単に制御レバーと言う。)とから構成され、その主要部は傘自動開閉制御装置の一部と共に単一のユニットとして組み立てられ、傘の握り柄内に収納される。
【0015】
この安全装置は、公知の傘開閉制御装置の押ボタン及び制動用ワイヤの一端に設けられ芯管や押ボタンその他の部材により制御される公知の銛形の制御子(以下、単に制御子と言う。)により制御され、傘開閉制御装置と連動する。
そして、当該傘開閉制御装置の作用を妨げることなく追随作動するが、傘の閉傘折畳み行程中の傘軸を押し縮める過程で、使用者が握り柄から手を離したとき等は、傘軸が瞬発的に伸長し傘が開くことを阻止し、そして使用者が再び傘軸を押し縮めようとするときは、通常通り傘軸の短縮を許容するものである。
【0016】
ラチェット装置と制御レバー及び制動用ワイヤの一部は、傘軸の下端、即ち内管の下端に制御管を介して設けられる制御装置本体に押ボタン装置などと共に取り付けられ、一つのユニットを構成しており、このユニットに握り柄が被せられ、制御装置本体と握り柄がネジ止めされ、傘の組立が完了するようになっている。
【0017】
ラチェット装置は、一つの円板の外周面に複数の一方向ラチェット歯を等間隔に形成して成るラチェット歯輪と、そのラチェット歯輪と同軸に一体成型されたゼンマイ室及び制動用ワイヤを巻き込むリールとから成る本体と、ゼンマイ室に収容されるゼンマイと、ラチェット装置を回転自在に支持する固定軸とから成る。
ゼンマイの外周側の端末は、ゼンマイ室の内壁に設けたスリットに挟み込まれ、内側の端末は装置を支持する固定軸に設けたスリットに挟み込まれ固定される。
傘開閉制御用ワイヤ(以下単に傘開閉用ワイヤと言う。)の一端は、傘軸の頂部に固定され、次いで下方へ導かれて下ロクロに設けた折り返しローラーで折り返されたのち上方へ導かれ、更に傘軸の頂部に設けたプーリー取付部材に支持されているプーリーを通過したのち、芯管内を通って下方へ導かれて、その下端には開傘制御用の制御子が取り付けられる。
【0018】
制動用ワイヤの下端部には結び目が形成され、その結び目に隣接する部分がラチェット装置のリールフランジに設けたスリットに挟み込まれて固定され、制動用ワイヤは弛みなくリールの円筒面に巻き付けられる。
制動用ワイヤの上端は傘軸の内部を通過したのち、その上端が外管の上部に形成したスロットとプーリー取付部材に形成したスロットに挟まれて固定される。
【0019】
制御レバーは、制御子により制御される操作アームとラチェットを制御するラチェット制御アームとから成る概ね逆L字形又は7の字形を有し、角隅部には支軸孔が設けられている。制御装置本体には、支軸が設けられており、制御レバーはその支軸穴により、支軸に揺動自在に取り付けられる。
【0020】
操作アームは傘軸の下端近くの位置で制御管9を横切るように水平方向に延びており、これにより制御子が制御レバーの操作アームの先端部操作面に接離し得るよう構成される。かかる構成によれば操作アームの作用点・支点間距離を長くでき、制御レバーを軽微な力で操作できるようにすることができる。
このように制御子が直接操作アームに接離する構成は、本発明の最大の特徴である。
先行技術においては、全て制御子と操作アームの間に、何らかの伝達機構が設けられており、そのため構造が複雑となり、組立てを困難にし、故障を生じ易くする。
而して、本願発明において、上記の如き直接接触が可能となった理由は、制御レバーの形と配置、及びラチェット歯輪の配置にある。
先ず、制御レバーの全体的な形について言えば、その特徴は、力点(制御子の作用点)と作用点(ラチェット歯輪との接触点)の間に支点(枢軸の中心)が存在するタイプの梃子(第一種の梃子)として構成されていること、更に操作アームが長く、制御管を横切って延びていることと、ラチェット制御アームも長く、ラチェット歯輪の中心より下方まで延びていること、即ち、作用点がラチェット歯輪の中心より低い位置にあることなどである。
即ち従来公知の全ての制御レバーでは、一端に支点が、他の一端に作用点があり、その中間に力点があるタイプの梃子が用いられており、そのため、設計上の制約から作用点がラチェット歯輪の中心より高い位置にくることになり、そのためラチェット制御アームの振幅を充分に取るため、支点・作用点間距離を短くしたり、作用点の作動振幅を大きくしたりする必要があるが、これらは制御レバーの作用に無理を生じさせるものである。
本願発明では、ラチェット装置の中心軸を、傘軸中心軸から、傘軸の一半径方向に、リールの制動用ワイヤの平均巻き径程度シフトし、リールに巻かれた制動用ワイヤが、傘軸中心に沿って引き出され、巻き取られるよう構成する。
このようにすれば、制動用ワイヤの移動が円滑、軽快になると共に、装置自体を極めて簡略な構造とすることができ、安価で故障が少なく、安全度の高い自動開閉傘を提供できるものである。
【0021】
傘軸が短縮されているときは、外管と共に芯管が降下し、制御子は芯管に押されて降下し、更に、銛の「あぐ(かかり)」に相当する部分が、内管に接続された制御管の側壁に設けたバネ片の作用で反対側に設けられた窓に引き掛けられており、これにより一方においては傘軸の伸長が阻止され、他の一方においては制御子は操作アームの操作面に当接し、これを押し下げているので、これにより制御レバーが支軸を中心に回動せしめられて、そのラチェット制御アームの下端はラチェット歯輪から外れた状態となり、ラチェットが開放されるので、安全装置用の制動用ワイヤがラチェット装置のリールに巻き取られている。
【0022】
押ボタンが押され、傘軸がその伸長状態に切り換えられるときには、傘軸は圧縮されていた開傘バネの弾性力により伸長する。然しながら、このとき制御子の「あぐ」は依然として制御管の窓に掛けられており、そのため、傘開閉用ワイヤにより下ろくろが上方に引き上げられ、傘が開かれる。
このときは、制御子の先端部は制御レバーの操作アームの操作面を押圧しているので、制御レバーはラチェット歯輪から離れ、ラチェットは回転自在となるので、ラチェット装置のリールに巻き込まれていた制動用ワイヤが、傘軸の伸長に応じて引き出される。
【0023】
再び押しボタンが押されると、制御子の「あぐ」は押ボタン装置の制御バーに押されて制御管の窓から外されるので、傘骨は傘骨アッセンブリに含まれるバネの弾性力によって収縮し、折り畳まれ、同時に下ろくろが下降し、制御子が上昇する。
このときは、傘軸は未だ収縮せず長いままであるので、使用者は自分の手で傘軸を圧縮する必要がある。
【0024】
このときは、制御レバーは制御子から開放され、バネの弾性力によりラチェット制御アームの下端は、ラチェット歯輪に押し当てられており、ラチェットの順方向へ回転を許容すると共に、その逆転を阻止するよう作用するようになっている。
このため,傘軸が押し縮められつつある過程では、ラチェット歯輪はゼンマイの弾性力により順方向、即ち図16などの中で時計方向に回転するので、制動ワイヤは傘軸の短縮に合わせてリールに巻き込まれる。
【0025】
このとき、使用者が傘から一方の手を離したりすると、傘軸が再び伸長しようとするので、制動ワイヤに強い張力が掛かり、リールを逆転させ、制動ワイヤを引き出そうとするが、このときは、制御レバーのラチェット制御アームがラチェット歯輪に押し当てられているので、これによりラチェット装置の逆転が防止され、傘軸の予期しない急な伸長、即ち撥ね出しが防止されるようになる。
上記の如く構成された安全装置及びそれを含む自動開閉傘によるときは、前述の本発明の目的が達成される。
【0026】
ラチェット装置は、握り柄の中心軸から握り柄の半径方向にリールの平均巻き半径程度、変位した位置に設けることが推奨される。
このように構成することにより、制動用ワイヤが傘軸の中心線に沿ってリールから引き出され、又は巻き込まれるようになり、更にラチェット制御アームを充分長く構成し得るようになる。
制御レバーは、その操作アームが制御管の内部を横断して延びるように、そしてラチェット制御アームがラチェット装置のラチェット歯輪に低い位置で接離する位置まで延び、ラチェットの回転を制御できるように構成する。
このため制御レバーは、逆L字形、7の字型、J字形、弓形、C字形、三日月形などの形状とされる。
【0027】
制御管の片側の外周面には、その上端から下端まで、1本の母線に沿って延びる縦溝を形成し、その縦溝内を制動用ワイヤが通過できるように構成することが推奨される。
ラチェット装置のゼンマイ室の外周壁には、ゼンマイの末端部を係止するためのスリットを形成し、また、ラチェット装置のリールの端面フランジには、制動用ワイヤの下端の結び目を保持し固定するスリットを形成することが推奨される。
芯管の下端にスリットを形成し、そのスリットを通じて制動用ワイヤを芯管の内部へ導入するよう構成することが望ましい。
【0028】
制動用ワイヤの上端は、芯管の下端に取り付けることが可能である。
このため、芯管の下端部の外周を僅かに削って小径部を設けると共に、下記の第1管材と、この第1管材を芯管の下端に取り付けるための第2管材を用意する。
第1管材は、芯管と同径の管材の一端部を芯管の小径部と同径に削って小径部を形成すると共に、その管材の外面に一母線に沿って制動用ワイヤを通すための溝を設け、更にその上端に制動用ワイヤの一端に設けた結び目を挟み留めるためのスリットを設けて成るものである。
【0029】
第2管材は、第1管材及び芯管の小径部と同径の内径を有する短い接続用の円管である。
制動用ワイヤは第1管材の側面の溝に納められ、その端部の結び目が第1管材の中に入るようにしてスリットに挟み込まれる。
この状態で、芯管と第1管材の小径部が第2管材の内部に嵌め込まれ、これにより、制動用ワイヤが芯管の下端部に取り付けられる。
制動用ワイヤの他の一方の端部は、ラチェット装置のリールのフランジに設けたスリットに挟み込まれ、制動用ワイヤはリールに巻き込まれる。
【0030】
制御レバーの操作アーム先端部に上向き突出部を形成し、その上向き突出部の上端面を、制御子に当接せしめられる操作面として利用するよう構成することが推奨される。
制御レバーに取り付けるバネは、ピボット止めされた二又バネであってもよいし、或いはまた、コイルスプリングであって、そのコイルスプリングの一端は制御装置本体へ取り付けられ、もう一方の端部はラチェット制御アームに設けたの掛け孔に取り付けられたものであってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、上記の如く構成されるので、下記のような作用効果を達成し得る。
1.本発明に係る安全装置は、基本的に、ラチェット装置と、制動用ワイヤと、制御レバーという少ない部品から構成されるので、握り柄内の制限されたスペースの条件下において、各部品のサイズを大きくすることができ、それによって各部品の強度を増大させ、耐用寿命を延ばすことができる。
【0032】
2.本発明に係る安全装置は、構成部品数が少ないので組立て、分解作業がし易く、更に又、ラチェット装置や制御レバーを傘開閉制御装置と共に1つのユニットとして構成することが可能であるので、組立て、分解を一層容易にでき、製造コストや修理代金を大幅に低減することができる。
【0033】
3.本発明に係る安全装置における制御レバーは、その操作アームとラチェット制御アームとの間に支軸が設けられ、この支軸を中心に揺動する第1種梃子として機能するので、力点(操作アーム上の制御子の作用点)に加える操作力が少なくて済み、部品の摩耗等を防止し得るので、故障が少なく、作動が安定していると共に、耐用寿命の長い安全装置を提供できる。
【0034】
4.本発明に係る安全装置におけるラチェット装置は、握り柄の中心軸から変位した位置に設けられるので、反対側の空いたスペースに制御レバーを配置でき、このため握り柄内のスペースを有効に利用でき、握り柄のサイズを細く短くでき、持ち運びや操作に便利な自動開閉傘を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書においては、傘軸の中心軸をZ軸、Z軸と直交する平面であって、ラチェット装置の中心軸を含む平面上で、ラチェット装置の中心線と平行で、原点Oに於いてZ軸と交わる直線をY軸、Y軸とZ軸の交点、即ち、原点Oで、これらの両軸に直交する直線をX軸とするものとし、又、傘の石突き側を上方、握り柄側を下方として記載するものとする。
【0036】
【図1】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置の一例(特許文献1)を示す握り柄部分の断面図である。
【図2】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置のもう1つの例(特許文献2)を示す握り柄部分の断面図である。
【図3】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置の更にもう1つの例(特許文献3,4)を示す握り柄部分の断面図である。
【図4】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置の更にもう1つの例(特許文献5,6)を示す握り柄部分の断面図である。
【図5】自動開閉傘における傘軸の撥ね出しを防止し得るようにした従来の安全装置の更にもう1つの例(特許文献7,8)を示す握り柄部分の分解斜視図である。
【図6】本発明に係る安全装置を具備した自動開閉傘(傘布は図示されていない。傘骨は一部のみが示されている。)の閉傘時の状態を示す側面図である。
【図7】図6に示した傘の安全装置の要部(握り柄内蔵部分)の構成例を示す分解斜視図である。
【図8】図7に示した安全装置における、傘開閉用ワイヤ及び制動用ワイヤの引き回し経路の一例を示す説明図である。
【図9】図6に示した傘のZX面断面図である。
【図10】図9に示した傘の安全装置の要部(握り柄内蔵部分)の閉傘時における状態を示す拡大ZX面断面図である。
【図11】図10に示した傘の安全装置の要部の拡大YZ面断面図である。
【図12】図9に示した傘が開いた状態を示すZX面断面図である。
【図13】図12に示した傘の安全装置の要部の拡大ZX面断面図である。
【図14】図12に示した傘の安全装置の要部の拡大YZ面断面図である。
【図15】傘骨が閉じた状態を示すZX面断面図である。
【図16】図15に示した傘の安全装置の拡大ZX面断面図である。
【図17】図15に示した傘の傘軸を押し縮めるときの状態を示す拡大ZX面断面図である。
【図18】図17に示した実施例の握り柄部分の拡大YZ面断面図である。
【図19】本発明に係る傘の安全装置の制御レバーの上記とは別の実施例を示す斜視図である。
【図20】は、図19に示した制御レバーの傘軸短縮過程の作動状態を示す拡大ZX断面図である。
【図21】図19に示した制御レバーの傘軸短縮時(完全閉傘時)の作動状態を示すZX面断面図である。
【図22】本発明に係る傘の安全装置のロープを芯管の下端に固定した上記とは別の実施例を示すZX面断面図である。
【図23】図22に示したロープの固定用部品のアセンブリを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る自動開閉傘の安全装置の構成について具体的に説明する。
本発明に係る自動開閉傘の安全装置は、3段折畳み傘のような折畳み傘に適用されるが、必ずしも3段のものに限定されるものではなく、4段又はそれ以上の折畳傘にも適用できるものである。ただし、本明細書で示す実施例においては、専ら3段折畳み傘を例にとって説明する。
又、添付図面においては、傘骨機構を傘軸の左側に一組しか描かず、他の傘骨機構については省略してある。
【0038】
又、本明細書において、「ワイヤ」というときは、金属製ワイヤだけでなく、合成繊維の細い紐やロープ、糸、合成樹脂製の単線等をも包含するものである。
図6乃至図11に示すように、自動開閉傘100は、一般的には、石突側の外管2−1及び外管2−1の下方から順次入れ子状に挿入された中間管2−2と、内管2−3とから成る傘軸2と、外管2−1の上端に固定された上ロクロ601と、傘軸2上に摺動可能なように装着された下ロクロ602と、開閉折り畳み自在に構成された傘骨アセンブリ603と、公知の傘の開閉制御装置とから構成されている。
そして、上ロクロ601と下ロクロ602とは、傘骨アセンブリ603を介して連結されており、下ろくろの上下に合わせて、傘が開閉されるようになっている。
【0039】
本発明に係る安全装置を具備する傘においては、上プーリー取付部材4(図8,図9)が、外管2−1の上端に取り付けられており、上プーリー取付部材4には芯管5が固着され、更に、内管2−3は中間管2−2を介して外管2−1の内部に入れ子状にかつ摺動自在に収容されており、開傘用のコイルスプリング604は、傘軸2内部に収容されている。
傘開閉用ワイヤ6は、図8に示すように、その一端が上プーリー取付部材4に固定され、他の一端は、傘軸2の外周面に沿って引き降ろされ、下ロクロ602に設けた折り返しローラー605において折り返され、再度上方向へ引き上げられて上プーリー取付部材4内に設けたプーリー4−1に巻き掛けられ、傘軸2の内面に沿って引き降ろされ、その端部には制御子7が取り付けられている。
傘軸2の下端には、制御管9を介して、傘開閉制御装置の本体10が取り付けられ、この制御装置本体10には安全装置と傘開閉制御装置の主要構成要素が組み付けられ、これにより傘制御装置ユニット100が構成される。
【0040】
握り柄8は、傘軸2の下端に取り付けられる制御装置ユニット100に被せられネジ110によりネジ留めされ、これにより安全な自動開閉傘1が完成する。
制御管9の上端部は傘軸2の下端部に取り付けられ、制御レバー41の操作アーム41a、押ボタン装置80の押ボタン81で制御される制御レバー82を受け入れ、且つ制御子7の「あぐ」を掛け止めるために用いられる窓9a及びスロット9bが形成され(図7,図10)、制御管9の内面には制御子7を窓9a側に導くため、バネ片50が取り付けられている。
【0041】
制御子7は、芯管5の下端に押され、制御管9内に導かれたときは(図7,図11)、バネ片50が制御子7の先端を窓9aに導くので、その先端の「あぐ」が窓9aの下縁に掛け止められる。
【0042】
一方、制御管9の外周面には1母線の全長に亘って、1本の縦溝91が形成され(図7,図11)ており、制動用ワイヤ30は芯管5の中を通って、制御管9の外部に導かれるが、芯管5の管壁に設けた孔を通って縦溝91内に導かれ、縦溝91内を通って、ラチェット装置200のリール20cに巻き付いている。
【0043】
握り柄8には、自動開閉傘1の開閉を制御するための押しボタン装置80が設けられている。これらの部品の配置は一般的な自動開閉傘と略同様であるので、詳細な説明は省略するが、押ボタン装置80は、押ボタン部81aと、基板部81bとからなる押ボタン81、制御バー82、支軸83及びバネ84から成るものである。
【0044】
傘が折り畳まれている状態で押ボタン81が押されると、傘軸2が伸長し傘が開かれ、この状態で再度押しボタン81が押されると傘骨アッセンブリ603及び傘布が折り畳まれるが、傘軸2は伸長したままである。
それで、使用者が手で傘軸2を押し縮めて、最短状態にロックされるまで短縮する。
【0045】
傘軸の撥ね出し防止のための構成要素は、全て内管2−3の下端に取り付けられた制御装置本体10に取り付けられており、これにより安全装置付きの傘制御装置ユニット100が構成されるようになっている。
この制御装置ユニット100には、全ての所要部品が取り付けられた状態で、底付円筒状の握り柄8が被せられ、握り柄8は止ネジ110でシッカリと取り付けられる。
【0046】
このため、組立の最終段階及び分解の第一段階で、安全装置は傘開閉制御装置と共に一つの制御装置ユニット100として扱うことができ、これに握り柄8を着脱することにより最終組立及び分解が出来、組立のみならず、点検、修理も極めて容易となり、製造コストが大幅に節減できることになる。
【0047】
而して、制御装置本体10の形状は特に限定されないが例えば図7に示されているように、底付円筒状又は樽型の握り柄8の内部にしっくりと納まるような外形形状を有する。
即ち、上端部10aは握り柄8の開口を閉塞する蓋となるよう中心に開口を有するフランジ構造とされる。このフランジの外経は、握り柄8の内径に合わせても良く、外経に合わせても良い。中心に起立する短い円筒部分は、強度の補強と、デザイン上の観点から設けるものであり必ずしも必須のものではない。
【0048】
下端部10bは、握り柄8の底部にしっくりと嵌められる形状となっている。図では円盤状として示されているが、これは、例えば握り柄8の底部の一直径方向の二箇所に位置するの円弧部分のみで握り柄8の内壁に接触させれば充分である。
上端部10aと下端部10bの間の中間部は、できるだけ薄肉の成型品として構成される。
図7中の左前側の一半部には、押ボタン室10c、ラチェット室10d、ラチェット軸支持溝10e及び制御管結合ピン孔10fが形成され、他の一半部、即ち、図7中の右後側の一半部には、図7からは明らかでないが、制御レバー室10g、制御レバー孔10h、押ボタン押戻装置室10i、握り柄取付ネジ孔10jが設けられている。
【0049】
而して、押ボタン室10c、ラチェット室10d、制御レバー室10g及び押ボタン押戻装置室10iは、図10等に示されているように、制御装置本体10の内部で連通しており、それらの室にそれぞれ収容されている押ボタン装置80、クラッチ装置20、ラチェット制御装置40及び押ボタン装置85が相互に連携して作動できるようになっている。
【0050】
又、図7では、この安全装置本体10は、円柱状部材を機械加工したような形状に表示されているが、これは図を簡略にするための便宜上のものであり、実際には薄肉のプラスチック成型品として製造されるものである。
【0051】
以下順次、各部分について説明する。
押ボタン室10cには、押ボタン装置80が収容される。
押ボタン装置80は周知のものと同様で、押ボタン部81aと基板部81bとから成る押ボタン81と、制御レバー82、制御レバー82を支持するため設けられる支軸83及びバネ84から成り、押ボタン部材81は、図9などに示されるように、その押ボタン部81aが、握り柄8の押ボタン孔8bから外方に突出するように、且つ握り柄8の半径方向に進退自在に押ボタン室10c内部に挿入され、バネ84、押ボタン押戻金具86及び復元バネ87により、押ボタン部81aが外方に突出するような弾性力を受けるものである。而して、この押ボタン81は、制御バー82を介して、制御子7を制御する。
【0052】
望ましい実施例においてこのラチェット装置200は、内部にゼンマイ22を収納する円筒状のゼンマイ室20aと、ゼンマイ室20aの底板と同軸の円筒の外周面に等間隔に複数のラチェット歯を配置して成るラチェット歯輪20bと、これらと同軸の鍔付円筒状のリール20cとから成るラチェット装置本体20と、ゼンマイ室20cに収納されるゼンマイ22とから成るが、ラチェット装置200の構成は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0053】
このラチェット装置200は、その中心孔に固定支持軸25を挿通した状態で、ラチェット室10dに挿入され、固定支持軸25の両端部をラチェット室10dの内壁面に設けた軸支時溝10eに嵌め込むことにより、ラチェット室10d内に回転自在に装着される。
ラチェット装置200のラチェット装置本体20は、ゼンマイ22の弾性によってリール20cに制動用ワイヤ30を巻き取る方向へ向かって弾性力を受けるようになっている。
【0054】
このため、ゼンマイ室20aの側壁円筒面には、ゼンマイ22の外側の末端部22aを係止するためのスリット20dを形成する。また、ゼンマイ22の中心側端末は、固定支持軸25の一端に設けたスリット25aに挿入され、固定される。更に、鍔付円筒状のリール20cの鍔には制動用ワイヤ30の下端の結び目31を保持し固定するためのスリット20eを形成する。
制動用ワイヤ30の下端は上記の如く固定され、かつ、制動用ワイヤ30はゼンマイ22の作用によるラチェット装置200の順方向への回転によりに巻き取られるようになっている。
【0055】
他方、制動用ワイヤ30の上端は、制御管9の側壁に形成した縦溝91内を通過し(図7)、芯管5の内部に入り。傘軸2内を上昇し、上プーリー取付部材4と外管2−1により固定される(図8,図9)。
更に詳しく説明すると、上プーリー取付部材4には、プーリー4−1を装着するための窓が設けられ、その窓の下端には制動用ワイヤ30を通すためのスリット4aが設けられている。
一方、外管2−1の上端部には上記上プーリー取付部材4の窓に対応する幅広いスリットが設けられ、そのスリットの下端には、上記スリット4aと協働して、制動用ワイヤ30を通すスリット2−1aが設けられる。
これらのスリット4a及びスリット2−1aは、上プーリー取付部材4が外管2−1の頂部からその内部に挿入され、取り付けられたとき、上プーリー取付部材4の窓と外管2−1のスリットが相対応し、それらのスリット4a及びスリット2−1aは、合致して制動用ワイヤ30の通路となる孔を形成し、その通路は制動用ワイヤ30の結び目32を外側に出した状態で、制動用ワイヤ30を通し、これにより制動用ワイヤ30の一端を固定する。
制動用ワイヤ30の上端のこのような固定形態は、従来技術とは異なるものであり、このような方法によれば、組立作業が極めて容易となり、組立コストが低減できるものである。
【0056】
組立作業において、制動用ワイヤ30と、傘開閉用ワイヤ6とは、いずれも現在市販の組立装置又は工具を用いて組み立てることができる。
制動用ワイヤ30の上端の引き回し、取り付け位置及び取り付け方法に関する構成は、本発明の特徴の一つとするところである。
【0057】
ラチェット装置本体20の配置位置について述べると、ラチェット装置本体20の中心軸方向の位置については、図11に示す如く、制御管9の外壁面に沿って引き降ろされる制動用ワイヤ30の延長線上にリール20cの巻き領域中心が位置するように、そして図10に示すように握り柄8の半径方向の位置については、ラチェット装置本体20の中心が傘軸中心線から握り柄半径方向に、リール20cに巻き取られる制動用ワイヤ30の平均巻き円半径に略等しい距離だけシフトした位置に設けることが望ましい。
【0058】
要するに、リール20cに巻き込まれる制動用ワイヤ30が、なるべく曲折することなくリール20cに巻き込まれるようにすることである。
かかる構成によれば、制動用ワイヤ30の移動に対する摩擦抵抗を最小限とすることができ、制動用ワイヤ30の摩擦による損耗を抑えることが出来る。
【0059】
芯管5の下端にはスリット5aが形成され(図8)、スリット5aを通じて制動用ワイヤ30の上端を芯管5の内部へ導入するようにすることによって、制動用ワイヤ30が制御子7の上端部に接触して、制御子7や制動用ワイヤ30が摩耗するのを回避するようになっている。
【0060】
押ボタン室10cとラチェット室10dの間に設けられたピン孔10fは、この制御装置本体10を制御管9に取り付けるためピンを挿通するため設けたもので、このピン孔10fと制御管9に設けたピン孔9fとに連結ピン92を挿通し、制御装置本体10を制御管9に結合するものである
【0061】
制御レバー室10gには、制御レバー装置40が取り付けられる。
制御レバー装置40は、図7及び10に示すように、制御レバー41と、支軸43と、トング形のバネ44とから成り、制御レバー41は、互いに略直角方向に延びる2本のアーム、即ち、操作アーム41aとラチェット制御アーム41bとから成り、その角隅部には支軸43を通すための軸穴41cを有し、制御装置本体10の中心軸から離れた位置に設けた支軸43によって揺動自在に取り付けられる。
【0062】
制御レバー41は、例えば逆L字型、7の字型等に形成され(図7,図9,図10)、支軸43により揺動自在に支持され、支軸43に取り付けられたバネ44の弾性によって図中時計方向に回転させる方向に作用する弾性力が付与されるようになっており、これにより操作アーム41aに他の外力が作用していないときは、ラチェット制御アーム41bの先端が、ラチェット装置200のラチェット歯輪20bに接触し、ラチェット機能が発揮できるようになっている。
【0063】
然しながら、操作アーム41aの先端にこれを押し上げる方向に外力が加えられると、ラチェット制御アーム41bの先端はラチェット歯輪20bから引き離され、ラチェットは開放され、回転自在となる。
【0064】
この操作アーム41aは、略制御装置本体10を横切る方向に伸び、その自由端部が制御管9の相対向する管壁に設けられた一対のスリットの一方から制御管9の内部に差し込まれ、制御管9の内部を横切って対面に設けられた他の一方のスリットに達するよう配置され、ラチェット制御アーム41bは、略制御装置本体10の長手方向に延び、その自由端が、ラチェット装置200の中心軸より下方でラチェット歯輪20bに接離し得るよう配置されている。
【0065】
又、操作アーム41aの先端部は制御管9の下端近くの位置で、略水平方向に制御管9内に挿入され、閉傘時傘軸2を押し縮める過程では、図16に示すように制御子7は上方に引き上げられており、これによって、ラチェットが機能するので、制動用ワイヤ30が弛むとラチェット装置200のリール20cに巻き込まれるようになっている。
即ち、制御レバー41のラチェット制御アーム41bの下端は、ラチェット装置200のラチェット歯輪20bに当接し、ラチェット作用を果たすようになっている。
図16及び図20に示されているように、ラチェット制御アーム41bの下端は、バネ44又はコイルスプリング45の弾性力により、ラチェット歯輪20bの歯列に押し当てられており、ラチェット歯輪20bが時計方向に回転するときは、ラチェットの歯はラチェット制御アーム41bを押し退けて回転できるが、反対に反時計方向に回転しようとすると、ラチェットの歯はラチェット制御アーム41bの先端で回転を阻止されるのでラチェット装置200は回転できないものである。
そしてここで用いられるバネは、上記の如く支軸43に留められたトング形のバネ44でも良いが図20に示された引っ張りコイルスプリング45とすることが望ましい。このコイルスプリング45の一端は制御装置本体10に取り付けられ、他の一端はラチェット制御アーム41bの略中央に設けた留め孔41fに掛け止められる。
このコイルスプリング45はバネ44に比して柔軟であり故障が少なく、組立ても容易である。
【0066】
一方、使用者が傘軸2を圧縮しつつある間は、制動用ワイヤ30が緩むので、そのワイヤはゼンマイ22の弾性力でリール20cに巻き込まれ、傘軸2は短縮されるが、使用者が傘軸2を開放するときは、傘軸2は開傘用スプリング604の弾性力により伸長しようとするので、制動用ワイヤ30にはリール20cから引き出す方向に力が掛かるが、このときラチェット歯輪20bが回転を阻止されるので、制動用ワイヤ30は引き出されず、従って傘軸2の伸長も阻止されるものである。
なお、制御レバー41の形状は、上記の逆L字形のものに限定されるものでなく、一方の腕が制御子7により制御され、他の一方の腕がラチェット装置200を制御できるような形状及び配置であれば良く、その形状は例えば三日月形などとすることができるものである。
【0067】
図9乃至図11には、自動開閉傘1を閉じた状態が示されている。この場合、制御子7は制御管9内にあり、その先端部71は窓9aに嵌まり込んでロックされている。このとき、芯管5の下端は制御子7の上端に当接し、制御子7の先端部71がラチェット制御アーム41aの操作面41dに当接することにより、制御レバー41のラチェット制御アーム41bの下端を支軸43を中心に反時計方向に回動させ、制御レバー41の下端がラチェット装置200のラチェット歯輪20bと噛み合わないようになっており、制動用ワイヤ30はラチェット装置200のリール20cに巻き取られている
【0068】
次に、図12乃至図14には、押しボタン81を押すことによって自動開閉傘1が開いたときの状態が示されている。傘が開くとき、開傘用スプリング604の伸長力によって、傘軸2は上方向へ伸びるよう駆動される。
この場合、外管2−1と、芯管5と、上ロクロ601と、上プーリー取付部材4とが同時に一体となって上方向へ移動する。
更に、傘開閉用ワイヤ6が引かれることにより下ロクロ602が上ロクロ601へ向けて近づくよう移動し、このため傘骨アセンブリ603が展開される。このとき、上プーリー取付部材4の取り付けられている制動用ワイヤ30の上端は上方向へ移動せしめられ、制動用ワイヤ30はラチェット装置20のリール20bから引き出される。
【0069】
然しながら、この状態においては、制御子7は依然として制御管9の窓9aにロックされたままであり(傘開閉用ワイヤ6が引き伸ばされてピンと張った状態)、制御レバー41のラチェット制御アーム41bの下端はラチェット装置20のラチェット歯輪20bと噛み合っていない。
【0070】
次に、図15及び図16には、図12に示したような開傘状態において、押しボタン81を再度押し、傘軸2は伸びたままの状態で、傘骨603を傘軸2の上端近くへ折り畳んで引き寄せた状態が示されている。
このとき、制御子7は、押しボタン81により制御バー82を介して押されて動き、制御管9の窓9aから外れて傘開閉用ワイヤ6によって上方へ引き上げられ、これにより制御レバー41の操作面41bから離れる。
これにより、制御レバー41はバネ44の弾性復帰力によって回動し、そのラチェット制御アーム41bの下端はラチェット装置200のラチェット歯輪20bに係合してラチェット機能を果たせるようになる。
【0071】
図17及び図18には、伸びた状態の傘軸2が押し縮められた状態に戻されるときの中間状態が示されている。
傘軸2は次第に短くされ、芯管5が制御子7を同時に下方へ移動させる。
傘軸2が押し縮められつつある間、制御レバー41のラチェット制御アーム41bがラチェット歯輪20bに接触していても、制動用ワイヤ30が弛緩するので、ゼンマイ22の弾性によって、ラチェット装置200は順方向へ回転し、これにより制動用ワイヤ30がラチェット装置200のリール20cにしっかりと巻き込まれる。
【0072】
然しながら、傘軸2を押し縮める外力が失われると、開傘用スプリング604の伸長力が傘軸2を伸長する方向に作用するので、制動用ワイヤ30が強く上方に引かれ、ラチェットには、これを逆方向、即ち、図中反時計方向に回転させるようにトルクが掛かる。
然しこのときは、ラチェット制御装置40のラチェット制御アーム41bが、ラチェット歯輪20bに当接しているので、ラチェットの逆回転は阻止され、制動用ワイヤ30は引き戻されず、このため傘軸2の伸長が阻止され、このため傘1が開くことがない。
このため、傘1の使用者が押ボタン81bを押した後の閉傘操作中握り柄8から手を離し、傘軸2を開放しても、不用意に傘軸2が伸び、傘1が開くことはなく、これにより、確実な開傘防止効果が得られ、傘1は安全に開閉される。
【0073】
なお、本発明に係る安全装置におけるラチェット装置200は、図示する如く、握り柄8の中心軸から変位した位置に設けることにより、反対側の空いたスペースに制御レバー41等を配置できるので、握り柄8内のスペースを有効に利用でき、握り柄のサイズを細く短くすることが可能になる。
【0074】
図19乃至図21に示された制御レバー41は、図6乃至図18に示された制御レバー41とは異なった形状をしており、操作アーム41aの先端に上方に延びる突起41eを有する。
このような形状であると、制御子7の先端が当接する作用点41eと、支軸43の中心との距離が、前述のものより長くなるので、制御レバー41の作用が一層好適となるものである。
【0075】
制御レバー41の取付位置は特に限定されず、制御レバー41の形状に応じ図6乃至図18に示したような支軸43によって適宜の箇所に取り付けることができる。
また、バネ44は図19乃至図21に示すような伸縮式スプリング(コイルバネ)などに代えることができ、その場合、スプリングの一端は制御装置本体10へ取り付けられ、もう一方の端部は制御レバー41の支軸43とラチェット制御アーム41bの下端部との間の掛け孔41fに取り付けるようにする。
【0076】
図22には、これまでの実施例のものと類似の構造を有する実施例が示されている。この実施例とこれまでの実施例とが相違する点は、制動用ワイヤ30の上端が制御管9の縦溝91を通過したのち芯管5の下端に固定されている点である。制動用ワイヤ30の下端はこれまでの実施例と同様に、ゼンマイのような弾性部材の作用によりラチェット装置200のリールに巻き取られるようになっている。
【0077】
図23には、図22の実施例において、芯管5の下端に制動用ワイヤ30の上端を簡便に固定するための固定用部品アセンブリ60の一実施例が示されている。
この固定用部品アセンブリ60は、少なくとも1つの管材61を有し、当該管材61の上端にはスリット611が形成され、芯管5の下端に組み付けられる前に制動用ワイヤ30の上端に形成した結び目32をこのスリット611に取り付けるようになっている。
【0078】
図23に示すように、この固定用部品アセンブリ60は第1管材61と、第2管材62とから成る。
第1管材61には、その上端にスリット611と共に、小径部612が形成され、同様に芯管5の下端部にも小径部613が形成される。
組立時には、制動用ワイヤ30の上端の結び目32を第1管材61に沿って引き上げ、第1管材61の上端のスリット611に嵌め入れる。然るのち、第1管材61の小径部612を第2管材62の下端に嵌め入れることにより、制動用ワイヤ30の上端の結び目32を第1管材61と第2管材62の間に堅固に固定する。
第2管材62の上端には、芯管5の下端に形成した小径部613を嵌め入れて組み付ける。
【0079】
本発明の上記以外の利点や変更実施例については、当業者であれば容易に想到し得るであろう。
従って、本発明の技術的範囲は、ここに示し、かつ、説明した具体的な形態及び代表的な装置例に限定されるものではなく、ここに添付の特許請求の範囲によって規定される発明の一般的内容の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲内における各種変更実施例及びこれと同等のものをすべて包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る自動開閉傘の安全装置は、上述の如く構成されるので、下記のような利点、即ち、
(1)従来品に比べて少ない部品から構成されるので、傘の自動開閉装置と共に一つのユニットとして組立てられ、特に小型化された握り柄内の制限されたスペースに収容できるので、握り柄のサイズに比して各部品のサイズを総体的に大きくすることができ、それによって各部品の強度を増大させ、耐用寿命を延ばすことができる。
(2)構成部品数が少ないので組立て、分解がし易く、また、ラチェット装置や制御レバーを1つのユニットとして構成することが可能であるので、組立て、分解を一層容易にでき、製造コストや修理代金を大幅に低減することができる、
(3)制御レバーは、その操作アームとラチェット制御アームとの中間に支軸が設けられ、この支軸を中心に揺動する第1種梃子として機能するので、力点(操作アーム)に加える操作力が少なくて済み、部品の摩耗等を防止し得るので、故障が少なく、作動が安定し、耐用寿命を延ばすことができる、
(4)ラチェット装置が、握り柄の中心軸から変位した位置に設けられるので、反対側の空いたスペースに制御レバー等を配置でき、握り柄内のスペースを有効に利用でき、握り柄のサイズを細く短くでき、持ち運びや操作に便利な自動開閉傘を提供できる、
等々、多くの優れた利点を有するものであるから、これを工業的規模で実施すれば、産業上多大の利益が得られる。
【符号の説明】
【0081】
1 自動開閉傘
100 制御装置ユニット
10 制御装置本体
10a 上端部
10b 下端部
10c 押ボタン室
10d ラチェット室
10e ラチェット軸支持溝
10f 制御管結合ピン孔
10g 制御レバー室
10h 制御レバー枢軸孔
10i 押ボタン復元装置室
10j 握り柄取付ネジ孔
2 傘軸
2−1 外管
2−1a スリット
2−2 中間管
2−3 内管
200 ラチェット装置
20 ラチェット装置本体
20a ゼンマイ室
20b ラチェット歯輪
20c リール
20d スリット
20e スリット
22 ゼンマイ
22a 末端部
25 支持軸
25a スロット
30 制動用ワイヤ
31 結び目
32 結び目
4 上プーリー取付部材
4a スリット
4−1 上プーリー
40 制御レバー装置
41 ラチェット制御制御レバー、制御レバー
41a 操作アーム
41b ラチェット制御アーム
41c 軸孔
41d 操作面
41e 突起
41f 掛け孔
43 支軸
44 バネ
45 コイルスプリング
5 芯管
5a スリット
50 バネ片
6 傘開閉用ワイヤ
60 固定用部品アセンブリ
601 上ロクロ
602 下ロクロ
603 傘骨アセンブリ
604 開傘用コイルスプリング
605 折り返しローラー
61 第1管材
611 スリット
612 小径部
613 小径部
62 第2管材
7 銛状の制御子、制御子
71 先端部
8 握り柄
8a 開口
8b 押ボタン孔
80 押ボタン装置
81 押ボタン
81a 押ボタン部
81b 基板部
82 制御バー
83 支軸
84 バネ
85 押ボタン復元装置
86 押ボタン押戻金具
87 押ボタン復元バネ
9 制御管
9a 窓
9b スロット
9f 連結ピン孔
91 縦溝
92 連結ピン
110 ネジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段自動開閉式の傘の握り柄(8)内に、傘開閉制御装置と共に設けられる安全装置(10)であって、下記の構成要素1乃至5を具備することを特徴とする上記の安全装置。
記
[1]ゼンマイ(22)が収容されたゼンマイ室(20a)と、ゼンマイ室(20a)と同軸に設けられるラチェット歯輪(20b)と、リール(20c)とから成るラチェット装置(200)。
[2]ラチェット装置(200)を回転自在に支持する支軸(25)。
[3]操作アーム(41a)と、自由端部がラチェット装置(200)のラチェット歯輪(20b)に当接し得るラチェット制御アーム(41b)とからなり、その角隅部に設けた軸孔(41c)を貫通する支軸(43)の周りに揺動自在に取り付けられるラチェット制御レバー(40)。
[4]ラチェット制御アーム(41b)をラチェット歯輪(20b)に向け押し付ける方向に、ラチェット制御レバー(40)に弾性力を作用するバネ(44)。
[5]一端が傘軸(2)の上端に固定され、傘軸(2)の内部を通って下方に導かれ、他の一端がラチェット装置(200)のリール(20c)に固定され、リール(20c)に巻き取られ、傘軸(2)の伸縮に応じて引き出され、巻き込まれる制動用ワイヤ(30)。
【請求項2】
傘軸(2)の下端に、管壁に相対向するよう窓(9a)及びスロット(9b)を設けた制御管(9)が接続され、制御管(9)の下端部は傘開閉装置と安全装置とが設けられる制御装置本体(10)が結合されており、ラチェット制御レバー(41)の操作アーム(41a)が、スロット(9b)から制御管(9)を横切るよう制御管(9)内に挿入され、窓(9a)に達する位置まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の安全装置(100)。
【請求項3】
ラチェット制御レバー(41)の操作アーム(41a)がその先端部上面に突起(41e)を有する請求項1又は2に記載の安全装置(100)。
【請求項4】
ラチェット制御レバー(41)のラチェット制御アーム(41b)が、そのラチェット制御アーム(41b)の先端が、ラチェット歯輪(20b)の中心軸より低い位置で、ラチェット歯輪(20b)に接離する、請求項1乃至3の何れか一に記載の安全装置(100)。
【請求項5】
ラチェット制御アーム(41b)をラチェット歯輪(20b)に向け押し付ける方向に、ラチェット制御レバー(40)に弾性力を作用するバネ(44)が、ラチェット制御アーム(41b)と、制御装置本体(10)の間に設けられる引張りコイルスプリング(45)である、請求項1乃至4の何れか一に記載の安全装置(100)。
【請求項6】
ラチェット装置(200)が、握り柄(8)の中心軸からリール(20c)の制動用ワイヤ(30)の巻き半径だけ偏倚した位置に設けられた請求項1乃至5の何れか一に記載の安全装置(100)。
【請求項7】
制御管(9)の片側の外周面に、その上端から下端まで真っ直ぐ延びる縦溝(91)が形成され、その縦溝(91)内を制動用ワイヤ(30)が通過し、直進してリール(20c)巻き取られるよう構成した請求項1乃至6の何れか一に記載の安全装置(100)。
【請求項8】
芯管(5)の下端にスリット(5a)を形成し、当該スリット(5a)を通じて制動用ワイヤ(30)を芯管(5)の内部へ導入するよう構成した請求項1乃至7の何れか一に記載の安全装置。
【請求項9】
ワイヤ(30)の上端が、傘軸(2)の内部を上方向へ通過し、芯管(5)の下端に固定された請求項1乃至8の何れか一に記載の安全装置。
【請求項10】
芯管(5)の下端に固定用部品アセンブリ(60)が取り付けられ、その固定用部品アセンブリ(60)は少なくとも1つの管材(61)を有し、当該管材(61)の上端には、制動用ワイヤ(30)の上端に形成した結び目(32)を取り付けるためのスリット(611)が形成され、これにより、制動用ワイヤ(30)の上端を芯管(5)の下端に固定するよう構成した請求項8に記載の安全装置。
【請求項11】
請求項1乃至10項記載の安全装置を具備した多段自動開閉傘。
【請求項1】
多段自動開閉式の傘の握り柄(8)内に、傘開閉制御装置と共に設けられる安全装置(10)であって、下記の構成要素1乃至5を具備することを特徴とする上記の安全装置。
記
[1]ゼンマイ(22)が収容されたゼンマイ室(20a)と、ゼンマイ室(20a)と同軸に設けられるラチェット歯輪(20b)と、リール(20c)とから成るラチェット装置(200)。
[2]ラチェット装置(200)を回転自在に支持する支軸(25)。
[3]操作アーム(41a)と、自由端部がラチェット装置(200)のラチェット歯輪(20b)に当接し得るラチェット制御アーム(41b)とからなり、その角隅部に設けた軸孔(41c)を貫通する支軸(43)の周りに揺動自在に取り付けられるラチェット制御レバー(40)。
[4]ラチェット制御アーム(41b)をラチェット歯輪(20b)に向け押し付ける方向に、ラチェット制御レバー(40)に弾性力を作用するバネ(44)。
[5]一端が傘軸(2)の上端に固定され、傘軸(2)の内部を通って下方に導かれ、他の一端がラチェット装置(200)のリール(20c)に固定され、リール(20c)に巻き取られ、傘軸(2)の伸縮に応じて引き出され、巻き込まれる制動用ワイヤ(30)。
【請求項2】
傘軸(2)の下端に、管壁に相対向するよう窓(9a)及びスロット(9b)を設けた制御管(9)が接続され、制御管(9)の下端部は傘開閉装置と安全装置とが設けられる制御装置本体(10)が結合されており、ラチェット制御レバー(41)の操作アーム(41a)が、スロット(9b)から制御管(9)を横切るよう制御管(9)内に挿入され、窓(9a)に達する位置まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の安全装置(100)。
【請求項3】
ラチェット制御レバー(41)の操作アーム(41a)がその先端部上面に突起(41e)を有する請求項1又は2に記載の安全装置(100)。
【請求項4】
ラチェット制御レバー(41)のラチェット制御アーム(41b)が、そのラチェット制御アーム(41b)の先端が、ラチェット歯輪(20b)の中心軸より低い位置で、ラチェット歯輪(20b)に接離する、請求項1乃至3の何れか一に記載の安全装置(100)。
【請求項5】
ラチェット制御アーム(41b)をラチェット歯輪(20b)に向け押し付ける方向に、ラチェット制御レバー(40)に弾性力を作用するバネ(44)が、ラチェット制御アーム(41b)と、制御装置本体(10)の間に設けられる引張りコイルスプリング(45)である、請求項1乃至4の何れか一に記載の安全装置(100)。
【請求項6】
ラチェット装置(200)が、握り柄(8)の中心軸からリール(20c)の制動用ワイヤ(30)の巻き半径だけ偏倚した位置に設けられた請求項1乃至5の何れか一に記載の安全装置(100)。
【請求項7】
制御管(9)の片側の外周面に、その上端から下端まで真っ直ぐ延びる縦溝(91)が形成され、その縦溝(91)内を制動用ワイヤ(30)が通過し、直進してリール(20c)巻き取られるよう構成した請求項1乃至6の何れか一に記載の安全装置(100)。
【請求項8】
芯管(5)の下端にスリット(5a)を形成し、当該スリット(5a)を通じて制動用ワイヤ(30)を芯管(5)の内部へ導入するよう構成した請求項1乃至7の何れか一に記載の安全装置。
【請求項9】
ワイヤ(30)の上端が、傘軸(2)の内部を上方向へ通過し、芯管(5)の下端に固定された請求項1乃至8の何れか一に記載の安全装置。
【請求項10】
芯管(5)の下端に固定用部品アセンブリ(60)が取り付けられ、その固定用部品アセンブリ(60)は少なくとも1つの管材(61)を有し、当該管材(61)の上端には、制動用ワイヤ(30)の上端に形成した結び目(32)を取り付けるためのスリット(611)が形成され、これにより、制動用ワイヤ(30)の上端を芯管(5)の下端に固定するよう構成した請求項8に記載の安全装置。
【請求項11】
請求項1乃至10項記載の安全装置を具備した多段自動開閉傘。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−183139(P2011−183139A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127866(P2010−127866)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(595079504)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(595079504)
【Fターム(参考)】
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