説明

自己励起式流速センサ

【課題】流体の流れに即した状態で、その流体の流速を直接検出することのできる流速センサ。
【解決手段】流路2内を通流する流体中に周期的に渦を発生させる渦発生部4と、渦の周期的な挙動により振動して電力を発生する自己励起式の発電シート6を備え、発電シート6により発生する電力の周波数に基づいて発電シート6の振動周期を求める振動周期検出手段10が、発電シート6に電気的に接続して設けられ、振動周期検出手段10により検出する発電シート6の振動周期に基づいて流体の流速を導出する流速導出手段11が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路内を通流する流体の流速を測定する流速センサに関する。
【背景技術】
【0002】
このような流速センサとしては、従来から多種多様のものがある。一例を挙げると、カルマン渦の周期的な挙動に基づいて流体の流速を検出する流速センサがあり、通常、その検出した流速を基に流体の流量を検出するカルマン流量計として知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−20618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カルマン流量計に適用される流速センサは、カルマン渦の挙動により圧力差が生じる2箇所の部位の圧力を導圧路などを介して圧力センサに導いて検出する構成を採用しており、流体の流れに即した状態で、つまり、流体中の渦の流れに沿った状態で流速を直接検出する構成ではなかった。
【0005】
本発明は、このような点に着目したもので、その目的は、流体の流れに即した状態で、その流体の流速を直接検出することのできる流速センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る流路内を通流する流体の流速を測定する流速センサの特徴構成は、前記流路内を通流する流体中に周期的に渦を発生させる渦発生部と、その渦の周期的な挙動により振動して電力を発生する自己励起式の発電シートを備え、その発電シートにより発生する電力の周波数に基づいて前記発電シートの振動周期を求める振動周期検出手段が、前記発電シートに電気的に接続して設けられ、前記振動周期検出手段により検出する前記発電シートの振動周期に基づいて流体の流速を導出する流速導出手段が設けられているところにある。
【0007】
上記特徴構成によれば、流体の流速検出のために自己励起式の発電シートを使用し、その発電シートが渦発生部により発生される渦の周期的な挙動によって、その渦に沿って振動して電力を発生するのを利用し、その電力の周波数に基づいて流体の流速を検出するので、流体の流れに即した状態で、その流体の流速を直接検出することができる。
そして、その発電シートが発生する電力の周波数に基づいて、振動周期検出手段が発電シートの振動周期を求め、その発電シートの振動周期に基づいて、流速導出手段が流体の流速を導出するので、発電シートに電力を供給する必要もなく、流路内を通流する流体の流速を流体の流れに即した状態で直接検出することが可能となる。
【0008】
上記特徴構成を備えた流量センサにおいて、前記流路の下方に流体の通流方向に直交する渦発生用溝が設けられ、その渦発生用溝の上方エッジのうちの流体の通流方向上流側に位置するエッジが、前記渦発生部として機能する渦発生用エッジに構成され、その渦発生用エッジに前記発電シートが取り付けられていることが好ましい。
【0009】
上記特徴構成によれば、流体が通流する流路の下方に渦発生用溝を設けることにより、その渦発生用溝の通流方向上流側の上方エッジが渦発生部として機能するので、例えば、流体が通流する流路の内部に渦発生部を設ける場合のように、流体の流れを大きく乱すことなく、流体の流速を検出することができる。
そして、その渦発生部として機能する渦発生用エッジに発電シートが取り付けられるので、渦発生用エッジに予め発電シートを取り付けた状態で、渦発生用溝を流路の下方に配置することが可能となり、流速検出操作の容易化を図ることができる。
【0010】
上記特徴構成を備えた流量センサにおいて、前記発電シートが、前記渦発生用エッジの長手方向の中間位置に取り付けられ、その発電シートの両側に流体が前記渦発生用溝内に流入可能な流体流入部が設けられていることが好ましい。
【0011】
上記特徴構成によれば、流路内を通流する流体が、渦発生用エッジに取り付けられた発電シートの両側から渦発生用溝内に流入するので、発電シートの近くに渦が発生して、発電シートの振動が顕著となり、流体の流速をより一層確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】自己励起式流速センサの第1の実施形態を示す概略構成斜視図
【図2】自己励起式流速センサの第1の実施形態の縦断側面図(図1のII−II線矢視)
【図3】自己励起式流速センサの第1の実施形態の縦断側面図
【図4】自己励起式流速センサの第2の実施形態の縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1の実施形態〕
本発明による自己励起式流速センサの第1の実施形態を図面に基づいて説明する。
第1の実施形態による自己励起式流速センサは、図1から図3に示すように、断面形状が矩形や円形の管路1により形成される流路2内において、その流路2内を通流する気体(例えば、都市ガス)や液体などの流体の通流方向Fに直交して横断する渦発生用溝3が、流路1の下方に位置して設けられている。
その渦発生用溝3は、その上方エッジ4、5のうち、流体の通流方向Fの上流側に位置するエッジ4が、渦発生部として機能する渦発生用エッジ4に構成され、その渦発生用エッジ4によって、流路2内を通流する流体中に周期的に渦を発生させるように構成されている。
【0014】
その渦発生用エッジ4の長手方向の中間位置、より具体的には、渦発生用エッジ4の長手方向の中央部に、薄膜化により柔軟性に優れ、かつ、耐水性や耐衝撃性などを備えた自己励起式の矩形の発電シート6の一辺が、例えば、接着により取り付けられ、その発電シート6の両側には、流体が渦発生用溝3内に流入可能な流体流入部7が設けられている。
発電シート6は、ポリフッカビニリデンに代表される強誘電性高分子からなり、より具体的には、例えば、ピエゾフィルム((株)東京センサ製の商品名)からなり、振動することにより自己励起して高電圧の電力を発生する特性を備えている。
その発電シート6には、2本のリード線8が接続され、そのリード線8の端子8aが、外部へ突出する状態で渦発生用溝3に設けられ、それら発電シート6、リード線8、および、端子8aが、渦発生用溝3に組み付けられてひとつのユニットに構成されている。
【0015】
発電シート6に接続されるリード線8の端子8aには、2本のケーブル9を介して振動周期検出手段10が接続されている。つまり、振動周期検出手段10が、2本のリード線8とケーブル9を介して発電シート6に電気的に接続して設けられ、その振動周期検出手段10が、発電シート6により発生する電力の周波数に基づいて発電シート6の振動周期を求めるように構成され、その振動周期検出手段10に対して、流速導出手段11が接続されている。
流速導出手段11は、予め計測された発電シート6の振動周期と流体の流速との関係データを記憶していて、振動周期検出手段10から送信される発電シート6の振動周期に基づいて流体の流速を導出するように構成されている。
【0016】
このような構成の自己励起式流速センサによれば、流路2内における流体の通流に伴って、渦発生用エッジ4の下流側、つまり、図2に示すように、渦発生用溝3内において、発電シート6の下方横側方に周期的に渦が発生し、その渦が、図3に示すように、渦発生用エッジ4から剥離して渦発生用溝3から上方へ流出する。その渦の周期的な挙動によって、発電シート6が、流体の流れに即した状態で、図2に示す状態から上方へ振動して図3に示す状態へ、さらに、その後、再び図2に示す状態となり、大きく上下に繰り返し振動して発電する。
その発電シート6により発生する電力の周波数に基づいて、振動周期検出手段10が、発電シート6の振動周期を検出し、その検出結果を流速導出手段11へ送信する。
流速導出手段11では、送信されてきた発電シート6の振動周期に基づいて、その振動周期に対応する流体の流速を記憶しているデータから導出し、例えば、その導出した流速を表示装置に表示することになり、当然、その流速から流路2内を流れる流体の流量も求めることができる。
【0017】
〔第2の実施形態〕
本発明による自己励起式流速センサの第2の実施形態について説明するが、重複説明を避けるため、第1の実施形態で説明した構成や同じ作用を有する構成については、同じ符号を付すことで説明を省略し、主として第1の実施形態と異なる構成について説明する。
第2の実施形態による自己励起式流速センサは、図4に示すとおりであり、第1の実施形態と異なる点は、矩形に形成された自己励起式の発電シート6の一辺が、渦発生用エッジ4の長手方向の中央部に取り付けられるのに加えて、発電シート6の他の辺(上記の一辺に対向する辺)も、例えば、接着により下流側のエッジ5に取り付けられ、その状態で発電シート6が振動するように構成されている点である。
この実施形態においても、周期的に発生される渦の挙動により発電シート6が大きく上下に振動し、最終的に、流体の流速を検出することができる。
【0018】
〔別実施形態〕
(1)これまでの実施形態では、発電シート6を渦発生用エッジ4の長手方向の中間位置に取り付けた例を示したが、渦発生用エッジ4の長手方向の一側方に近接して取り付けることもできる。
(2)また、渦発生用溝3の上流側の上方エッジ4により渦発生部を構成した例を示したが、例えば、エッジを有する部材を流路2内へ突出させ、その突出したエッジにより渦発生部を構成することもでき、渦発生部に関しては種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0019】
2 流路
3 渦発生用溝
4 渦発生部(渦発生用エッジ)
6 自己励起式の発電シート
7 流体流入部
10 振動周期検出手段
11 流速導出手段
F 流体の通流方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を通流する流体の流速を測定する流速センサであって、
前記流路内を通流する流体中に周期的に渦を発生させる渦発生部と、その渦の周期的な挙動により振動して電力を発生する自己励起式の発電シートを備え、その発電シートにより発生する電力の周波数に基づいて前記発電シートの振動周期を求める振動周期検出手段が、前記発電シートに電気的に接続して設けられ、前記振動周期検出手段により検出する前記発電シートの振動周期に基づいて流体の流速を導出する流速導出手段が設けられている自己励起式流速センサ。
【請求項2】
前記流路の下方に流体の通流方向に直交する渦発生用溝が設けられ、その渦発生用溝の上方エッジのうちの流体の通流方向上流側に位置するエッジが、前記渦発生部として機能する渦発生用エッジに構成され、その渦発生用エッジに前記発電シートが取り付けられている請求項1に記載の自己励起式流速センサ。
【請求項3】
前記発電シートが、前記渦発生用エッジの長手方向の中間位置に取り付けられ、その発電シートの両側に流体が前記渦発生用溝内に流入可能な流体流入部が設けられている請求項2に記載の自己励起式流速センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−173102(P2012−173102A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34720(P2011−34720)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)